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「aqua green noon」 へ、ようこそいらっしゃいました。
何のお構いも出来ませんが、ごゆっくりと楽しんでくださいね。 ![]() メインは長編物語「green house」です。 どうぞ、目次から、おはいり下さい。 「aqua green noon」 は、 サイアートが更新いたしております。 純愛がテーマになってくると思います。 激しいものはほとんどありませんが、もし楽しんで頂けるテキストがあれば幸いです。 カテゴリ・目次などでどうぞお好きなものを選んで、楽しんでくださいね。 コメントや感想など、一言でも頂けると、嬉しく思います。 ※ 当ブログでの物語はすべてフィクションです。実際の人物や団体とは一切関係ありません。 ※ 当ブログの文章、及びイラスト等の無断転載は固くお断りいたします。 saiart |
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「R−a guardian sprite」は 「悩まない男」の7月さんとのコラボです。
![]() これまでは青い瞳のルカからのがれたくて姑息にも画策してきたのに、このひとつきといっては複雑にして鬱々たる思いでじりじりつぎの満月を待ちわびたのだ。 津波であれば遭うのは畏怖すべきものだが、この守護番人とのくだりがあってからはどうしても顔を見ずにはいられなくなった。 だいじなルカのために男をとっつかまえずにはいられない心持だった。 槐の根元でルカを抱きしめながら「聞こえているんだろう」と問うたのはまちがいでないと確信していた。 できうるものならルカのなかから男を引っぱり出してやりたかった。 ルカにとっては黒い扉のむこうにあるものについてはいっさい感知しえない、であるのだからこれはないのと同義だ、翻り、青い両目をもつルカにはすべてを重ねあわせて落掌していくことができるのである。 いったいこれが公平か? と考え、それをさらに演繹して追っていこうとして潰えた。 高窓のむこうにぽかりとまるい衛星がうかんでいる。 なじみにして兇悪な月だった。 隣人のいわく、まがまがしい力を地上にむけ好き勝手に突き刺してゆく剣呑な星だった。 いつものように寝台のかたすみにまるまって眠っていたルカのちいさなからだが、やがて半透明にぐらぐらゆらぎはじめる。 白い毛筋の一本一本が哭声をはなち生きた門扉となる。 億と破砕した銀の星屑が夜気と迎合し、いっとき寝台のうえをぎらりとぶっそうに装飾したが、それらが滲みきれいに消滅してしまえば、あとにのこったものはひとか魔かといった明眸皓歯の男だった。 青い目のルカが現出するのをまのあたりにしたのはこれで二度めだったが、やはり息をつめて見まもらずにはいられなかった。 津波ですら端からながめているぶんには美しい形状だった、どうしてそうできない、なぜながめているだけではいけないのだ、この力にまきこまれたが最後、自分は押すも引くも叶わなくなる、いいたいことは甲斐なく摘まれる、それをナルヴィにいっさい許さぬルカであるのなら、かれは絶対にこの男を受け入れられないと思う。 いいたいことがあるんだろう? ときれいな男がちくりと口角をあげたから、やはりルカとのことをすべて承知しているのだとわかった。 いいたいことなら抱えるほどに。 なのにそのことばに囲繞され捕縛され根をはやし、からだを動かすことがかけらも為果せなくなる。 「ないのか、ナルヴィ? おれはあれを聞いていたといったんだ」 長躯の男、妍容の男、ぼんやり振り仰ぐナルヴィのおもてはランプの引き絞られた室内でしらじら浮かびあがり、口唇はその蝶番を優婉にゆるめていたから、どうしたってあいての唇をせつなく待ちわびているようにしか映らなかったろう。 だからそうしたのだ、なにが悪いといいこそしなかったが二度男が瞼を打ち鳴らしたら、急に呪縛を解かれたらしいナルヴィのほそいからだが男の腕のなかからがくんとまろびでた。 壊れかけた顔様にもう涙は品切れなのか、それでも胸腔に息苦しいほど詰まりに詰まっているものが少年をこうまで痛苦においやっている。 ルカは手をのばさなかった。ナルヴィも近寄らなかった。 ほどなく死人の足どりでナルヴィは退き、しずかに家を出た。 あいもかわらず夜空には月がかかっていて落ちる兆しもない。 気温の降下してゆく暗い深更を、とぼとぼ地にのめりこみそうになりながら歩きづめに歩いた。 頬がぴりぴりと突っ張ったがいっさいふれたくなかったので、両の拳をわきにぶらさげたまま莫迦のように歩いた。 考えていたことがあったはずだった。 自分をああも愛してくれる守護番人のルカを、あのちいさなルカをナルヴィもまた深く愛している。 ナルヴィのためになにかがしたいのだといった。 かれのためにしたいことがあるのだと。 自分はナルヴィのためだったらなんだってするのだからと。 愛するもののために与えてやりたいことがあるのだと。 よくわかる、ルカ、とナルヴィは音のない声を吐息とした。 あの青い両眼のルカはところが自分にいっさいそれをさせない。 強的に波は泡立ち押し寄せそれに太刀打ちできる力をこちらに残させない。 それができたら、とナルヴィは考える、津波に揉まれても潰えることなく対峙する力を得られたら。 ちいさなルカが愛するものにたいしてなにかをしたいのだとせつなく願うように、自分もまたかつえながらそれを欲しているのだと考える。 それができたら、とナルヴィは、皓皓と照り輝く冷えた野原にながい影をしたがえひっそりとたたずんだ。 ふるえる息を二度、三度とのがし、やがて引き結んだ。 ちいさなルカがやろうとしたことだ。ぼくにもできるだろう。 道をみつけてやる、とひとりごちた。 こうべをめぐらし、少年は往路を拾いなおした。 そのさきにはルカがいる。 (R-a-guardian-sprite 2 完結) ![]() その2へ 文章…7月 イラスト…サイアート |
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「R−a guardian sprite」は 「悩まない男」の7月さんとのコラボです。
![]() 喉の渇きと空腹をおぼえ猫は覚醒する。 ナルヴィに使いだとたのまれたはずの行先にみずからがたどりついてもおらず預りものはポシェットにおさまったきり、気づけばいつものやわらかい寝台にくるんとまるまって朝を迎えたのだった。 人型たるルカの記憶をいっさいおのれのうちに留めないルカには、一晩まるごと精神を鑿で削りとられたと思しい。 ぱたりと飛び起き、すぐ横に主人であるナルヴィの死んだように寝入っている小柄なすがたを血の気の引く思いでみとめた。 惑乱のなかたどりついた結論が、たのまれた大事な使いを果たしもせず、放擲したままひとり自分は帰宅してしまったらしいという事実だった。 あれほどいいふくめられていたのに。 渡されていた預りものは時代のついた一冊の厚い本と書簡だった。 かけがえのない品なのだ。 たのむね、とルカの目をのぞきこんだナルヴィの双眸がいつにもまして深い翠色をたたえてきらめいていたから、約束をたがえまいと、ルカはおおきく首肯した。 いってくる、ちゃんと渡してくる、待っててね、ナルヴィ、ちゃんと渡してくるから待っててね。 それがかくも反古になった。 自分のせいで。あれほどいいふくめられていたのに。 大事な約束をたがえてしまったのだ。 うちのめされたルカはよろよろと寝台から抜け出し、扉をすりぬけ蹌踉と我が家をあとにした。 じきそのすがたの見えなくなったことに気づいたナルヴィがこれを追う。 毛という毛をのこらず逆立ててうずくまるちいさな猫を、小高い丘の槐の根元で見つけ、ルカ、としずかに声をかけた。 いつもならぴんと立った耳もいまは伏せたなり、おもむろに尻尾を振り振りいらえも返さない。 いまひとたび「ルカ」と呼びかけ、おそろしく獣じみて映るぶっそうな瞳をのぞきこむ。 ごめんなさい。とうとうルカがぽつり低声でつぶやいた。 「なにが?」 「約束守れなかった。ナルヴィにたのむねっていわれたのに」 吐息をつき、そんなことはかまわないとナルヴィは首をふった。 ルカは承知しない。いつ家にもどったのかまったくおぼえてないんだとつらそうにいいつのった。 「ちゃんと届けるつもりだったんだ。でも気がついたらもうここにもどってた。どうして覚えてないのかぜんぜんわからないんだ」 「もういいよ」 まるい頭のうえにのせられたナルヴィのやさしい手を拒み、いっそう毛を逆立て身をすくめた。 「よくない。ナルヴィのためだったらぼくはなんだってするんだから。しなくちゃならないんだから。ナルヴィのためにしたいことがぼくにはあるんだもの。なのにできなかった、嘘をついた」 涙にかすれてうまくことばがつづかない。「ナルヴィのために……ぼくが……」 いいよといって地べたにはいつくばり香箱をつくっていた守護番人を強引に抱きあげた。 くすんくすんと泣きだしたルカを両のかいなに抱きしめ、「ごめん」とひとこと引き裂かれる心持で吐き出した。 ほかでもないナルヴィ自身がルカを遠ざけようとして、使いにいってほしいなどとありもしない用事をでっちあげたのだ。 なのにその約束をたがえまいとこの守護番人は必死になり、あげく身におぼえのない理由がためにそれを破ってしまったとこうも傷つく。 畜生とナルヴィはうめいた、ついでだしぬけにいきりたち、 「聞こえてるんだろう。あんた、ちゃんと聞こえてるんだろう。これ以上ルカを傷つけるな。もうかってな真似はやめろ。聞こえてるんだろう、ルカ!」 名指しされたと思ったルカがきょとんと濡れた双眸をあげる。 なんでもないよと守護番人を抱きしめるナルヴィの腕に、いっそうやさしい力がこめられた。 (「R-a-guardian-sprite 2 その3/完結」につづく) その1へ ![]() 文章…7月 イラスト…サイアート |
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「R−a guardian sprite」は 「悩まない男」の7月さんとのコラボです。
前作の続編です。 文章はすべて7月さんの創作です。 この世界感、キャラは私が創造したものだ。 私は今まで他人に自分のキャラで文章を書いてもらったことがない。 もらいたいとも思ってない。 それは私の頭で生み出したキャラを他人が理解できるわけがないと思っているからだ。 キャラが生まれる時、私はそのキャラの一生まで考える。 どんな性格、背格好、どんな風に生きて死んでいくのか… それを私以外の者が、物語にできるのだろうか… このキャラで書いてみないかと誘ったのは私の方である。 7月さんが何かを書きたがっているのは感じていたし、このキャラに非常に興味があるのも知っていた。 だが、果たしてこれを書けるのだろうか… いや、もしかしたら、7月さんなら書けるかもしれない。 そう思わせてしまう文章力が7月さんにはあったからだ。 7月さんの作品はファンタジーも現代文も非常に描写が巧みだ。 巧みであり、音符のように言葉が流れ、ひとつのソナタや協奏曲を奏でる。(交響曲でないところがミソ) 文章は個人の好みである。 そして7月さんの文章は私にとって非常に興味深い。 彼女は見事にルカとナルヴィの物語を作り上げた。 前回の話は出会いであり、その内容に私が驚くことはない。なぜなら私はその話をもうとうに私の頭の中で描いているからだ。 だが、他人がここまで自分の意思と違うなく描写できるものだろうか。違和感と言うものが無い。 ここはこういう感情じゃなくて、もっと違う言葉で言って欲しいのに…と、いうジレンマがまったくなかった。 私の頭の中身をすっぽり盗み見られたような感じなのだ。 だが前作に些細な不満はあった。 猫ルカの描写が自分にとっては足りないと感じていた。 (見返したら充分な分量を書かれているのにもかかわらず) 今回、それを完璧に払拭した。 猫ルカの描写に不覚にも泣いてしまった。 猫ルカがあっての人ルカなのである。 ナルヴィにとっては猫ルカは人ルカよりも(ある意味)重要でなければならない。 今の時点では、である。 間違いなく7月さんの中でこのキャラたちは息づいている。奇跡的にそれは私が思考するキャラたちと寸分違わない形なのである。 つまり私達は現存しないキャラを、あたかも目の前にいるかのように同じ角度で見ているのだ。(これはひとつの奇跡ではないのか?) 今回、7月さんは私に頼まれたわけでもなく、自分の意思、創作力により執筆された。 そしてそれに対応するように私もイラストを描いた。 それが本来の創作であり、コラボであると思うからだ。 創作とは苦悩することだ。苦悩し生み出すことを喜びと知る。そしてまたこれで良かったのかと苦悩する。その繰り返し。 だが生まれてきた作品のキャラたちは、勝手よろしく、息吹の声を上げ、よろよろしながらも自らの足で歩き始める。 私はそれを見守り、それを書いて(描いて)いくのだと思う。 普通なら7月さんに対し、「私のキャラを使って書いてくれてありがとう。感謝の気持ちで一杯です」と、言うところだろう。しかし敢えてお礼は言わない。 代わりにこう言いたい。 私達は自分たちの意思のもとに、ひとつの創作作品を作りあげた。 とても楽しい時間を共有できて、最高だ。 そして、みなさん、 どうぞ、良かったら見てやってください。 ![]() R-a-guardian-sprite 2 みずからは光源を擁さないちいさな衛星が、恒星からの強烈な光を与り、じょじょにそのかたちをあらわしていく。 猫の爪さながらに弧を描くしらじら尖った月が、くらい夜をひとつまたひとつとかさねてゆくごとにふっくら丸みをおびていき、やがては群青の天窓にその真円を掲示する。 正体をあらわす。露呈するのだといってもいい。 満月になるとなあ、と、払い下げとなった一人乗り飛行艇の修理改造をナルヴィのところへもちこんでいた隣人が、いましも昇らんとしていたくだんの星を高窓のむこうにあおぎながらぽつんと口をきる。 「女房のやつがどうにも情緒不安定になりやがるんだ。 なんだか近寄るのもぶっそうなほどにぴりぴりしてるかと思えば、びしゃりとひっくり返したみたいにだしぬけに上機嫌になる。 たのむよ、気味が悪いんだと釘を刺したらどこがよと笑いながらおれのつらをひっぱたきやがった。 10年もいっしょにいてようやく月との因果関係に気がついた」 感情をどこやらへおきざりにしたまま、へえ、そうなんですかとナルヴィは相槌をうつ。 おまえ信じてないなと隣人は髭面をぴくぴくふるわせ、 「あのクソいまいましい月にはぜったいになにか、得体の知れない力があるんだ。 ふだんはあるかないかわからんぐらいに薄っぺらいくせに、ひとたびそれが円に結ばれてみろよ、隠匿していたぞっとしない代物を嘔吐さながらにまきちらす。 地上にへばりつくおれたちにむけて、そのほそく光り輝く槍が幾千幾万とつきささってくるんだ。 こっちはどこへ逃げられるわけもない。 当然さ、光だもの、どこまでいってもつかまっちまうに決まってる」 どこまでいっても、とナルヴィが問う。 どこまでいってもだと隣人も鬱々とうなずいた。 それでも抵抗はしてみたのだった。 すまないけど使い立てをされてくれないか、けして急がないからねといいふくめ、なんの意味もないささやかな荷をルカに預けた。 この守護番人はひじょうに律儀だからどんなに時間がかかってもきちんとそれをあいてに手渡そうとするだろう、とちゅうで投げだしたりはまずしないだろう。 いまいましい満月が天にかかるころといってはナルヴィの家からすでに遠く距たっている、とうてい一晩かけてもどってこられる距離でない、これでルカを遠ざけておける、そうもくろんだのだった。 みずからの浅はかさをかれはみずからの身をもって思い知ることになる。 ほんとにこの男にはできぬことなどなにひとつないのかとほとんど恐怖した。 あれだけの距離をまさに一跨ぎでもどり、なんでもない顔をして少年を抱いた。 (おれを閉め出せるとでも思ったのか)酷薄な笑みとともにいいわたされことばをなくした。 あてつけででもあるかのように、ことさらに執拗に痛めつけるがごとき、深々とえぐり、乾声になるまであえがせ、おそるべき高みへと少年をいざなっていった。 曙光がさしこむぎりぎりまでその端麗な人型を維持し、一晩まるごとを消費してはげしい交接をつづけ、いくどもナルヴィの精神を分厚い闇にべたりと塗りこめた。 ながい紐に剣呑な結節をいくつも拵えさせられ、そこをまたぐにはこころを呼びもどし、さあと励ましてやらねばならなかった。 これまで五たびにわたってひとのかたちをしたルカとからだを繋げさせられたが、ナルヴィにとってこのひとつきにいちどの情交は、たとえていえば一方的にやってくる津波のようなもので、どうあがこうが回避できるものでなかった。 よるべない木の葉さながらにただひたすら攫われていくだけ、もみくちゃにされ息をうばわれ、涙は血に、血はとろりとした愛液にと転換させられていくのだった。 ナルヴィはといえばひたぶるに男の名を呼んで高腕を宙にさしのばすしかなかったが、自分はいったいだれのことを呼び求めているのかと混濁した意識のうちで首を傾げざるをえない。 この疑問は正しい。 五ヶ月まえまではルカという名にはたったひとつの存在しか意味づけがなされていなかったというに、いまではこれがすっかり変わってしまった、もうひとりの別条たる人格が「おれを認めろ」とナルヴィの視界のあらかたを問答無用で蹴散らしにあらわれたのだ。 自分もまたまぎれもなくルカであると男のいう、しかしながらナルヴィにとってかれらは別個の人格だった、同一ではなかった。 だが(青い両眼をきついおもてに冠した)ルカのいうこともまた真実であるのだと、ずいぶんとあとになって苦渋ととともに諒承するようになる。 (「R-a-guardian-sprite 2 その2」につづく) ![]() 文章…7月 イラスト…サイアート |














