topimage

2017-09

top - 2020.04.14 Tue

「aqua green noon」 へ、ようこそいらっしゃいました。
何のお構いも出来ませんが、ごゆっくりと楽しんでくださいね。


「aqua green noon」 は、サイアートが更新いたしております。
純愛がテーマになってくると思います。
激しいものはほとんどありませんが、もし楽しんで頂けるテキストがあれば幸いです。
カテゴリ・目次などでどうぞお好きなものを選んで、楽しんでくださいね。
コメントや感想など、一言でも頂けると、嬉しく思います。

※ 当ブログでの物語はすべてフィクションです。実際の人物や団体とは一切関係ありません。
※ 当ブログの文章、及びイラスト等の無断転載は固くお断りいたします。



〈ブログ名〉aqua green noon
〈管理人〉saiart
〈URL〉http://arrowseternal.blog57.fc2.com/

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2011.4.1

目次 - 2018.04.14 Sat

■「green house」シリーズ 
■宿禰凛一編  <完結>
「密やかな恋の始まり」        7 8 9 10 11 12 13
「kissをしよう」        
「追想」          10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21
「Swingby」          10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27
「HAPPY」1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26
「only one」1 2 3 4 5 6 7 

■水川青弥編  <完結>
「出会い」    
「予感」        
「引力」          10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21
「焦点」          10 11 12 13 14 15 16 17
「フラクタル」 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16
「愛する人へ…」 1 2 3 4 5 6

■宿禰慧一編  <完結>
「イリュミナシオン」          10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26
「オレミユス」          10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20
「ペンテコステ」1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11

■藤宮紫乃編  <完結>
「メタモルフォーゼ」         
「Resolve」  2 3 4 5
「Sonnet」 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 完結
 
純情クリスマス 前編  後編

新春座談会

Silent Night・Holly Night 1 2 3 4


■聖王伝シリーズ
■「彼方の海より…」  <完結> 
リュウ・エリアードとメトネのお話 序文 プロローグ          
「メトネ日記第二章」          10

■ユーリとエルミザードのお話。 <やる気が起きない…>
「黎明」        

■「流れる星の彼方に…」クールでハードな未来物語。<完結> 
1 2 3 4 5 6 7 最終回

■純情シリーズ
■ハル&ミナト  <完結>
「simple」 …恋愛成就までの純粋な道のり。
         10 11 12 13 14 15 
「A WISH STAR]…クリスマスのお話。 前編 後編
夏日憂歌
「Harmony」 1 2 3

■麗乃&由貴人  <完結>
「君の見た夢」…ちょっとSFチックなファンタジー…?
          10 11 12 13 14 15 16 
「僕の見る夢」…続編
          10 11 12 13 14 15 16 17 エピローグ 

■7月さんとのコラボ作品  <完結>
「R-a guardian sprite」 その1 その2 その3
「R-a guardian sprite Ⅱ」 その1 その2 その3

■sensoシリーズ <延々と続くかも…>
Private Kingdom 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26
天使の楽園、悪魔の詩 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25
浄夜 1 2 3 4 5 6 7 8
This cruel world 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17
Phantom Pain 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21
Brilliant Crown 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10

スバル 1  3 4 5 6 7 8 9 10 11
山の神 その一 その二 その三 最終回
愛し子 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13
銀色のRay 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21
Assassin  1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17
天の軌跡と少年の声 1 2 3 4 5 6 7 

色々とお試し中~
■掌の物語シリーズ<一応連載していく…はず…>
「弟」 「呪い」 「野ばら」

破壊者のススメ 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 Platinum Moon

セレナーデ 1 2 3 4 5 フィナーレ アンコール1 アンコール2

バレンタインデー 1 2 3
続・バレンタインデー 1 2 3 4
バイバイ サンキュー

「輪舞曲(ロンド)」 傷心 願い 二十歳 告白 前編 後編

超いいひと 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 
うそつきの罪状 1 うそつきの罪状 2

人魚姫(♂) 1 2 3 4 5 6 7 8 
夏の名残りのばら 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14

夜を駆ける 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10
 
horizon 1 2



天の軌跡と少年の声 7 - 2017.09.20 Wed

7
 イラストはサムネイルでアップしております。
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    アーシュ-7


7、

 トゥエ・イェタルの死は、アーシュをこちらの世界、即ち「天の王」へ縛りつけるための、トゥエ自身が仕込んだ策略ではなかったのか…と、ルシファーは思う時がある。
 彼の意志を継いだアーシュは、その圧倒的な魔力と詐欺師的な手口を操って、聖光革命と声高に叫び、世の中を混乱させようと起こすハールートの騒乱を、ひとつずつ確実に鎮圧していった。
 彼が世界から本格的に「魔王」と呼ばれ、怖れられ始めたのは、この時期からだ。

 その折、ルシファーはクナーアンへひとり還った。
 不測の事態である「天の王」の状態を、イールへ申し伝える為だ。
 一通りの状況を説明したルシファーは、思いのほか不安に顔を曇らせるイールに驚く。こんな事で揺るぐ御方ではないと思い込んでいたからだ。
「アーシュはトゥエ・イェタルを父親の様に慕っていたようだから、愛する者の死に、傷心この上ないだろうな…」と、独り言のように呟くイールを前にして、ルシファーは今更ながら、イールのアーシュへの想いに、打ち震えた。

「イール様の許しがあって、少しの間、君の傍に居ることになった」
 「天の王」高等部を卒業した夜、ルシファーはアーシュに伝えた。
 アーシュはニヤリと笑い「イールの計らいにしちゃ、寛大なギフトじゃん」と、ルシファーの手を取り、ベッドへ押し倒した。
「き、君って奴は。イール様が君の事をどんなに心配しておいでか…。イールさまの信頼を裏切るつもりなのか?」
「イールはセキレイに、俺を慰めろって言っているんだよ。君は従順なイールの僕なんだから、俺と寝るぐらい簡単だろ?元より、君は俺とセックスしたがっている」
「アーシュ…」
「俺もそうだもの。ね、本当に君が欲しいんだよ。昔と同じにはできないだろうけどね。俺、ずっとスケベになってしまったから…」
 ルシファーは怒っていいのか喜んでいいのか、釈然としないまま、アーシュの求めに応じた。

 別れて以来のアーシュとのセックスは、ルシファーにとって驚くばかりだった。
 ルシファーが全く遊ばなかった事も大きいが、アーシュはルシファーの想像を遥かに超え、大胆であり、巧みであり、貪欲であった。
 欲望ならアーシュに負けないと思っていたはずなのに。
 
 『いつから、誰が、君をそんなに?』と、ルシファーは、全く敵わぬ自分が情けなく、プライドを固持しようにも、陥落はあっけなく、快楽の声は絶えず切れず。
「そんなに良かった?」と、相変わらずデリカシーに欠陥気味のアーシュは、ルシファーの涙を躊躇いもせずに舐め上げ。
「達人になった君を、褒める気には全くならないけどね。この涙は悔し涙さ。君をこんなにしたすべての寝男たちへのね」
「そうかい。本音を言えば、イールと寝る前までは、俺も結構純情だったさ。でも、イールときたら、滅茶苦茶床上手でさ。まあ、一千年も生きてりゃ、セックスも極めるんだろうけど。全然かなわないんだもん。情けねえったら、ねえの」
「そんな話は聞きたくない。第一、同衾している僕に失礼だ」
「セキレイが聴きたがったくせに」
 悪びれる風もないアーシュに立腹しながら、ルシファーはこの絆を自ら手放す事を怖れた。

 だが、それは一年後に突然来る。
 クナーアンから還ったばかりのアーシュが、その夜、いつものように部屋で待つルシファーを抱こうとしたが、有らぬことに全く勃たなくなってしまった。
 アーシュは慌てふためき「二十もならないのに、俺、役立たずになるのか?」と、青ざめ涙目に。
「セキレイ、俺、どうしたらいい?」
「どうしたらって…」
 さすがのルシファーも何と答えたら良いのか、わからず。
「イールに聞いてくる」
 脱いだばかりの服を着始め、アーシュは魔方陣が描かれた円形を手に部屋を出て行こうとする。
「クナーアンに還るの?今来たばかりなのに?」
「だって、このままセックスできないなんて、嫌じゃん!」と、言い切り。
 裸のルシファーをベッドに残したまま、アーシュはクナーアンに還る為、聖堂に走って行く。

「見送りもさせないなんて…。その上、こっちの具合は全く考えてくれない。サイテーの恋人だよ」と、ぼやいても誰も聞く者はおらず。

 三日後、アーシュが「天の王」へ戻った。
 心配するルシファーにアーシュは、淡々と。
「俺、もう完全に人間じゃなくなってしまったんだよ。イールと同じように姿形は歳取らないし、人間ともセックスできなくなっちゃった…。一年前のあの時、ハーラルが俺に仕掛けた魔法は、じっくりと俺を自分の好みの姿に仕立て上げちまうえげつなさ。全くイケズな奴だ」
「…それで、君…どこも…なんともないの?」
「ああ、セックスはイール限定だけど、楽しめる。ちゃんと勃つし。でもなあ…もうセキレイを喜ばせる事は無理かもしれない」
「それは…」
「あ、そうだ!良い事考えた!セキレイが俺に入れる方ならいいじゃん。おまえもたまには責めになって、俺を泣かせてみれば?俺が欲情するかどうかはわからんが」
「君は…君は本当にバカだ!お互いに気持ち良くならないセックスなんて、愛し合っているとは言えないじゃないか。僕がそんな事を望んでると思っているのか?君って奴は…本当に、呆れて、言葉も無いよ」
「…ごめん」
「僕は…僕はね、そりゃ君と抱き合えないのは、寂しいけれどね、こうやって傍に居て、言いたい放題やらかして、ずっとこのまま信頼を重ねていければ…充分幸せなんだよ」
「セキレイ…」
「君が何ともなくて、何よりだ。一緒に年を取っていけないのは、残念だけど、イール様にとって、幸いだと思うし、クナーアンにとっても…本当に…良かっ…」
 溢れる涙をルシファーは止められなかった。
 涙の意味は数え切れない感情の重なりだろう。
 言葉にしたら一晩だって終わらない。
 アーシュと生きた分の想いは、ルシファー本人にも図りきれないから。
 運命は二人を並んで歩かせてはくれない。ならば、それを認めなきゃならない何時かは、きっと今なのだ。
 アーシュは泣きじゃくるルシファーを、抱きしめた。
 時折「ごめんね、セキレイ。愛してるから」と、謝っては、その額にキスを落とす。

「君の運命の難しさを僕は理解してるから。これからも君の支えになれるように生きて行きたい。…そうさせてくれ」
 それが、ルシファーの精一杯の応え。
 

 あれから十年が過ぎた。
 アーシュは「天の王」学園の学長になり、世界の騒動を忙しなく、それでも持ち前の好奇心は留まることなく、自分の強大な魔力を狡猾に利用しながら、飛び回っている。
 クナーアンではイールの傍らで、民衆からの崇拝を一身に受け、それに見合う豊穣を与え続け。その精神は時と共に成長しているはずだ。
 しかし、彼の姿形は十八歳のまま、少しも変わらぬ。
 そして、年相応に年老いていくルシファーはもうすぐ三十になる。
 鏡を見て嘆きはしないが、アーシュと共に生きたいと願ったあの頃と比べると、姿形が変わるように、想いも変化したのも事実。
 燃えるような情熱は醒め、ただアーシュの信頼に見合う友人であろうと心掛けた。
 要するに大人になったのだ。
 それが悪い事だとは思わない。客観的にアーシュを見ることを学んだし、自分の弱さも少しずつ克服できる。
 ベルからは「いくら神官だからって、聖人君子みたいなルゥは面白みがない。昔みたいに意地っ張りで感情剥き出しの君が懐かしい」と、諭され。
「君だって、サマシティ最大の貿易会社の社長じゃないか。それに、もうじき父親になるなんてね。信じられないよ」
「俺だってさ」
「赤さんが生まれたら、是非、抱かせて欲しい」
「勿論。でも俺が結婚して父親になるなんて…。あのガキたれの頃を思い出すと、全くもって思いもよらない滑稽さ」
「人は…変わっていくもの。それがあるべき姿なんだろうね…」
「だろうけれど…うちらのご主人さまときたら…。姿形も変わらんが、中身も少年のままに純粋…と、言ってよいかどうかわからぬ悪たれ三昧」
「あれは永遠の不良少年である事を楽しんでいるからね。まあ、あれでも神殿ではイール様の手前、大人しくしていらっしゃるんだけどね」
「クナーアンか。懐かしいなあ。今一度行ってみたくもあるが、天上の夢のままであり続けるのが一番良いのかもしれない」
「うん」
「ルゥはどうするんだ?」
「え?」
「ずっとこのまま、あちらとこちらと行き続けるのか?どちらかに落ち着いたりしないの?独り身のままでいいの?」
「ベル、今の僕には答えられないよ。だって、僕は…」
 
 アーシュに繋ぎとめられていたいのだもの…。


「あ!見て、ルシファー!山が、山がみんなオレンジ色だ!凄い!」
 少年の声にルシファーは、我に戻る。
 立ち上がり、バルコニーに駆け寄る神也は、「綺麗だ」と、繰り返す。
 見飽きない夕焼けの光景に、ルシファーは何度も癒された。
 胸の奥に溜まった澱(おり)が、浄化されていくのを、何度も感じた。

 この場所を教えてくれたのは、イール。
 まだアーシュがクナーアンに来る以前、アーシュがイールの半身と知り、諦める他、仕方がないと思いつつ、アーシュへの想いを自身でがんじがらめにしてしまった頃。
 イールはルシファーを誘い、この山に映える夕焼けを見せてくれた。
 我が半身であるアーシュを失った間、イールが、どれだけ苦しい時を過ごしてきたか、ルシファーは想像できる。
 傍らに何も言わず、只佇むイールの姿に、ルシファーは、苦しみに耐えうる力を授かった。
 イールへの崇敬の念は、アーシュへの愛とは違う色でルシファーの魂を覆っている。


「ああ、終わってしまった。明日もまた夕焼け見れるかな。ね、ルシファー」
「そうだね、きっと…。神様のご機嫌が良かったらね」
 そう言って微笑んだルシファーを、神也は眩しく見つめ返し。
「ルシファーは、とても美しい人だ」と、真摯に応え。
 ルシファーもまた、影に浮かぶ神也に光を見る。


「ここに居たのかい。探したよ」
 息を切らして神官長のヨキが姿を見せた。
「すみません、ヨキ。つい神也と長話に興じてしまって。すぐに食事の用意を」
「それは急がず。イール様がお呼びだ。アーシュ様がお戻りになるからご挨拶を、と」
「そうですか。神也、急いでヨキに付いて行きたまえ。お待たせしては失礼だからね」
「うん。…ルシファーも行くのだろ?」
「私は、呼ばれてはいないから」
「ルシファーも一緒に付いておいで。神官長である私の命令だよ」
「…はい」

 陽が落ちた後も、その余韻は辺りをゆっくりと包み、少しずつ色を落とす。黄昏は、働く人々を我が家へと誘(いざな)う合図。
 
 クナーアンの夜は、長い。

天の軌跡と少年の声 6へ

少しずつだけど、進んでいきたい。生まれ育て生きて行くキャラの想いを分かち合わなければ、物語は続かないからね。

アーシュのお話は「senso」全編。
神也のお話は「山の神」から。
スバルは「スバル」から。
それぞれ左のカテゴリから、どうぞ~


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天の軌跡と少年の声 6 - 2017.09.05 Tue

6
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    ルシファー神官1


6、

 こう見えてルシファーは忙しい。
 あちらとこちらを行き戻りつつ、クナーアンでは神官、「天の王」では臨時教諭。
 「物理学」や「化学」などを教えている。
 彼の授業を受けた神也は、この世が数式や記号を使って解明していく様が面白く、何度も直に問いただす程。
 「あらゆるものが数式で表せるものなら、魔法の力は、どのように解明できるものなのか?」と、神也。それに応えてルシファーは、至極真面目に「数式や分子構造で説明できる場合もあるが、八割方は未だ解明できていないんだよ」
「あちらとこちらを行き来するルシファーにも、わからないものなのか?」
「残念ながら…。私の場合、クナーアンとこの『天の王』のゲートに限られているらしい。それすら理解不能の始末。多分、生まれ地への望郷と、一番大切な場所を繋ぐパワー…なのだろうけどね」
 そう言ったルシファーは、一瞬だけ切ない顔で神也を見て。
 少しだけ微笑んだ。
 
 思い出す限り、ルシファーはその外見のイメージと変わらず、いつも穏やかに、不快な表情を人には見せず、生徒の相談や質問にも、誠意を尽くして応え、人格者と讃えられていた。
 神也は人格者には興味がないが、アーシュを想うルシファーの姿には、些か心惹かれる。
 アーシュと幼馴染みのルシファー。恋人同士だったルシファー。イールの半身であるアーシュを、今も思い続けているルシファー。
 彼の想いは、どこへ行きつくのだろう…。

 神也がアーシュに初めてあった時、彼はすでにクナーアンの神様で、人間ではなくなっていた。つまり、スバルやルシファーと同い年であっても、アーシュだけは少年であり続け、そしてその姿は人外のオーラを纏っていた。

 共に成長した恋人が、自分とは違う者になる事に、ルシファーは戸惑ったのだろうか。苦しまなかっただろうか…。
 昔は考えもしなかった事だけど、近頃の神也は、色々と考えてしまう。

「景色の良い場所を案内しようか」
「うん」
「意外と穴場なんだ」
 いつものように微笑むルシファーに、影は見えない。

 神殿の四方にある階段はそれぞれの角に展望台が用意されているが、北のそれは小さく、長く狭い階段も入り組んでいるためか、来客は少ない。
「でも、落日を拝むにはここが最高なのさ」と、ルシファーは神也を誘う。
 大理石の腰かけにふたり並んで座り、目の前の景色を眺め。
 陽は傾き、柔らかく光る絹雲が薄青空にたなびく。

「日が沈むには、少し時間があるね」
「あれ?目の前の山だけ、白いね。他の山々は緑なのに」
「シトリー山と言って、万年雪なんだ」
「へ?あの山だけ?」
「この星を作った天の皇尊ハーラル様が、あの山だけ、年中雪を降らせているんだ。夜に雪を降らせ、朝になると雪は止み、晴れた青空の下、陽の光で、キララキラと煌いて」
「どうして、そんな事をするのだろう」
「さあ、どうしてだろうね。私が聞かされたのは…この星の神話なのだがね。クナーアンはハーラル系十二の惑星の中で、ハーラル様が一番最後に丹念込めて作られた星。陸と海、山と平地、町と田畑の割合など、事細かく、バランスを考え。他の惑星から移動した民の人選にも、相当に気を配られたそうだよ。この神殿もまた、イール様とアスタロト様の為に、荘厳神聖にその御手で建てられたものなんだ。そして、ふたりの神が、美しい山々をいつも楽しまれるように、シトリー山に毎夜雪を降らせる…との、言い伝え。…ハーラル様は至極ロマンチストな御方なんだろうね」
「神話なのだろう?本当に…存在するの?」
「私は会った事はないけれど、イール様は勿論の事、アーシュも御拝顔されたのだから、この世界では居られるのだよ」
「なんか…凄い話ね。科学的思考では追いつかないや」
「ホントにね。あちらの世界では及びもつかない出来事が、クナーアンでは現実にありえるからね」
「私も神様と煽てられた頃もあったが、本当に無力だったから、周りの者達が、それは気の毒。まあ、比べても仕方のない話だが」
「それでも、神様だった神也のおかげで、心安らぐ者も少なからず居たものだろう。卑屈になる必要はないよ」
「ありがとう。ルシファーはやっぱり優しい先生なのだな。エノクが言っていた。大人になったらルシファーみたいになりたい、と」
「そう…」

 黒い瞳が、その純真さを一杯に湛えた黒眼が、ルシファーを見つめる。
 アーシュに似た黒髪と黒い瞳を持つ東方から来た少年は、ルシファーを時折苛立させた時もあった。
 神也だけじゃない。
 アーシュが気に入った人間を、ルシファーは手放しには歓迎できなかった。
 「それは幼馴染みとしての、恋人としての、エゴでしかない」と、親友のベルは容赦なく。そして「当然さ。俺も気に入らねえからね」と、悉く同意する。
 ベルの存在にルシファーは、何度も助けられ、傷を癒され、捻くれずに、自分をコントロールする事を覚えた。

 あの頃の自分ときたら…。誰かから羨まれるような人間には遠かった。
 
 アーシュの魔力でルシファーの生まれ故郷クナーアンに送られた時から、ルシファーの運命はアーシュから切り離されてしまった気がした。
 十四の時までは番いの如く、昼も夜も離れずには居られなかったはずなのに。
 夢にまで見た両親との生活は、戸惑うほどに平和で穏やかに。だが、日が経つほどにルシファーは「天の王」が恋しくなった。
 「絶対に帰ってこいよ」との、別れの言葉を忘れようはなかったけれど、アーシュがクナーアンの神で、イールの半身だと知った時、ルシファーは諦めなければならなくなった。
 
 アーシュは自分のものでない。

 イールを前にすると、アーシュへの自分の愛が、ちっぽけなものに見える。
 民が捧げるイールとアスタロトへの信仰や崇拝と、同じ類の感情に思える。
 まぎれもなくルシファーはアーシュと愛し合った仲だが、それはアーシュ自身が何者であるかを知らぬ頃の話であり。
 クナーアンに還り、イールを我が半身と認めた時、アーシュはルシファーの届かぬ遥か遠くへ、と。
 それはクナーアン人としては喜ばしいことだけど、恋人として一緒に生きてきたルシファーには辛く。
 何よりルシファーは、クナーアンの民同様に、二神への絶対的な崇敬がある。その崇敬は、生まれた時から魂に刻み込まれているようなもので、いくらアーシュを個人的に愛していようと、逆らいようがない。
 あの収穫祭の日。神殿の玉座に座る二神の姿は、ルシファーを感涙させた。
 神殿に居たすべてが、仰望し、賛美し、酩酊すると同じように。
 
 アーシュはクナーアンの「神」になってしまった。 
 幼馴染みのアーシュが、ルシファーの信仰になってしまった。

 だが、気持ちは簡単には切り替えられない。
 自分が思うよりもずっと不器用なのだと、ルシファーは初めて自分の脆弱さを呪った。
 イールへの嫉妬で醜くなる前に、彼らから逃れようと「天の王」へ戻る事を決めた。だが、同時に二神への、特に敬愛するイールへの信仰は深く、彼の傍で仕える恩恵も手放せなく、アーシュが「天の王」で暮らす間は、クナーアンでイールに仕える事を望んだ。

「ばっかじゃねえの!折角会えたのに、なんで別々に居なきゃならねえの?セキレイは俺と一緒にいたくねえの?」と、不機嫌この上ないアーシュに、ルシファーは苦笑い。
「昔の君と僕の間柄では無くなったのに、昔と同じようにって…。それこそね、君が昔、言った二律背反だよ。僕の気持ちを少しでも考えてくれるなら、そんな事は言えないはずだ」
「俺は今でもセキレイを愛してるよ」
「僕だって…。でも君は神様になっちゃったし、イール様がいるじゃないか。僕はそのイール様の従順な僕(しもべ)として、仕えたいんだ。クナーアンの神官としてね。でもふたりを見るのは、少し辛いんだ。イール様だって、君と一緒にいる僕を見たら、良い気持ちはしないだろう。だから、君の居ない場所で僕は暮らしたい。言っておくが、クナーアンとしての君への信仰も、イール様には及ばずとも持ち合わせてはいるんだからね」
「ぜって~嘘。おまえ、自分でわかってないと思うがね。イールを眺めている時と、俺を見てる時の顔、全く違うから。こっちの方こそ、ジェラシーだぜ。俺より、イールの方にデレデレなんてさ」
「君って…全然変わってないんだから」
 思わず声を出して笑ったルシファーの負け。

 いつだって、敵わなかったね。君は僕の心に特別な感情を生み出すたった一人の…恋人だった。

 クナーアンの神様になってもくれる「愛してる」の言葉が、何より嬉しい。
 だが、現実は、愛を語り合う状況ではなかった。

 アーシュ達がクナーアンから戻った時、「天の王」では、学長のトゥエ・イェタルがテロリストに囚われ、「天の王」は勿論、世界中がこの騒動に震撼していた。
 今では「ホーリー・スピリット・コミュニオン」と、名乗り、イルトを中心とした組織を構成しているが、この頃は、手当たり次第にアルト殺しを繰り返す狼藉者の集団。
 アーシュはスバルとジョシュアを連れ、トゥエ・イェタルを取り戻すために乗り込む。すでにクナーアンで覚醒したアーシュの能力は、想像を超え、彼らを圧倒し、造作もなく、トゥエを助け出したが、時遅く、彼の命は消えていた。
 トゥエを失った事に、「天の王」ばかりではなく、サマシティの人々も混乱と不安を募らせ。そして、彼らは、ヒーローの如く現れたアーシュへ一心の期待を。
 アーシュもその自覚はあったが(クナーアンでの経験が彼を何倍にも成長させてしまった)、卒業もしていない一学生であった為、周りの者達と相談し、エドワード・スタンリーを「天の王」の学長に推薦した。
 エドワードはアーシュの親友であるベルの叔父で、「天の王」の卒業生「愛し子」のひとり。

「いくらアーシュのお願いでもね、私が学長なんてさ…。トゥエが生きていたら何と言って嘆かれるだろう…」
 エドワードは学生の頃は素行の悪さで有名。今も男関係は派手だ。だが同時に有能は実業家でもあり、ベルの父親であるこの街最大の貿易商社を持つスチュワート・セイヴァリの右腕として名を馳せている。
「じゃあ、一晩付き合うからさ。頼むよ、エド。他にちょうど良いのが見当たらないんだ」
「褒めてるようには思えないが、持ち上げられても居心地は良くない。そうだな、おまえが、一晩私を楽しませてくれるなら、考えてやってもいい」
「了解した。では、エドワード、お互いに素敵な夜を、味わうとしよう」と、意味深なウィンクを流し。
「アーシュ!エドワード!君たちは、この非常時に…。学長の座を何と考えてるんだ!」と、叱りつけるベルに構わず、ふたりは約束のキスをした。

 その約束の一晩ときたら…
 ふたりは朝方までポーカーに興じ続け、劣勢なアーシュは幽霊伯爵のイカサマのおかげで、辛くもエドワードを負かし、学長の座を承知させたのだった。



天の軌跡と少年の声 5へ7へ


過去の話は、説明的だが、やっぱりちゃんと書いておきたいので。もう少し、ルシファーの回顧が続きます。
描いてみたら、アラサーのルシファーもかわいいかもな。


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