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2019-10

ダイヤモンドクリスマス 後編 - 2014.12.29 Mon

「人魚姫♂」の尚吾と乃亜の短い物語です。
クリスマス過ぎてしまったけどね…('ε`汗)

ダイヤモンドクリスマス

後編

 今朝から乃亜は悩んでいた。
 ゴミ取集時間に合わせてゴミ袋をまとめている時、ゴミ袋の中から尚吾の捨てた靴下を見つけてしまったのだ。
 乃亜はゴミ袋からそれを取り出し、尚吾が捨てた理由を考えた。
 一度は捨てた靴下を自分が勝手に拾ったからだろうか。
 繕い方が下手だったからだろうか。
 それとも、捨てたはずの靴下を履く気にはならなかったからだろうか…
 どちらにしても、乃亜のおせっかいが尚吾は気に入らなかった…と、いう結論になる。
 でも、それなら一言自分に言ってくれればこんなに気にも留めないものを、何故尚吾は何も話さないでこれを捨てたのだろう。

 RRRと携帯が鳴った。
 乃亜は急いで取る。
『乃亜、元気か?』
「うん、元気だよ。ヨシュア兄さん」
 次兄のヨシュアからの電話だった。
『今、仕事で東京に来ているんだけど、おまえの家には寄らないつもりだよ。イブだし今年は尚吾と二人だけの方が良いだろ?』
「うん…」
『なに?どうかした?…あ、尚吾とケンカでもしたのか?』
「違うよ~。僕達ケンカしないもん」
『ケンカぐらいしないと、本当の恋人同士にはなれないんだぜ』
「え?ホント?」
『嘘だよ~』
 携帯の向こうから朗らかな笑い声が聞こえる。
 乃亜には五人の兄がいるのだから、それぞれに乃亜が心を寄せるジャンルが違っていて、次兄のヨシュアは、気軽になんでも打ち明けられるのは、きっとヨシュアが他の兄たちよりも不良で口が悪く捻くれているからだ。それでいて、ヨシュアは芯が優しい。
 乃亜にとってヴィンセントが父親なら、ヨシュアは母親の役目を背負ってくれる気がする。

「あのね、ちょっと聞いていい?」
『ん~?なんだ?』
「破れた靴下が、ゴミ箱に捨ててあったの。尚吾の靴下…」
『え?…うん』
「それを僕が拾って、まだ履けそうだから繕って元の抽斗に片づけたの」
『うんうん、それで?』
「そしたら、尚吾は僕に何も言わずに、今度は僕に見つからない様にゴミ袋に捨ててあったの」
『…はあ』
「これって…僕が余計な事をしたから、尚吾が気を悪くしたのかな…」
『…』
 ヨシュアには答えようがない。
 乃亜の愚痴はただの惚気にしか聞こえない。だが、天然純真天使乃亜のことだ。こんなつまらないことに本気で悩んでいるに違いない。
『尚吾はそんなに心の狭い男じゃないけど、乃亜が気になるのなら、いい方法があるぜ』
「ホント?」
『それわな~』
 乃亜はヨシュアのアドバイスを喜んで実行することにした。


 クリスマスイブの夜は雲一つない星空だった。
 ホワイトクリスマスは望めないけれど、降るような満点の星空を、庭で尚吾の帰りを待つ乃亜はじっと見上げていた。
 素敵な聖夜にしたいけれど、乃亜の心はこの群青の夜天のようにまだ晴れ渡ってはいない。
 裏庭に自動車のエンジン音がした。尚吾が帰宅したのだ。
 乃亜は急いで裏庭の駐車場へと駆け寄った。

「尚吾、お帰りなさい」
「…乃亜。こんなに寒いのに外で待ってたのか?」
「風がないから寒く無いし、ほら、星がとても綺麗でしょ。だからずっと眺めてたんだ」
「へえ~…確かに今夜の星空は綺麗だな。聖夜だから神さまの贈り物かもな」
「尚吾は僕よりもロマンチストだね、そういうとこ大好き」
「あ…ありがと…。で、クリスマスケーキ買ってきたよ。カップル用の小さ目のヤツな。それと別腹デザートにバーゲンダッツ。乃亜の好きなチョコブラウニーもあるよ」
「…」
「なに?」
「ううん、なんか幸せだなあって…。これ以上望んだら神さまに怒られるね」
「一杯望んでいいよ。俺は乃亜が望む事ならなんでも叶えてあげたいんだから…」
「…尚吾、愛してる」
「うん、俺も愛してるよ。けど…愛し合うのは晩餐が終わってからにしようか。腹も減ったし、乃亜のクリスマスディナーも楽しみにしてたんだ」
 甘えるように寄り添う乃亜を片手で抱きしめ、尚吾はケーキとアイスの紙袋を持ったもう片方の手を乃亜に見せた。
「ごめん、そうだね。尚吾の好物、いっぱい作ったからね」
 乃亜はアイスの紙袋を持ち、夜空を見上げた。
 変だ。同じ夜空のはずなのに、ついさっきとは違う瞬きで輝いているように見えるのは何故なんだろう…。

「ねえ、見て尚吾。あの冬の大三角の周りね。シリウス、リゲル、アルデバラン、カペラ、ボルックス、プロキオン…あの六角形ってね、冬のダイヤモンドって言うんだって。なんだか見てるだけで裕福になった気がするよね」
 乃亜の言葉に尚吾も南東の空を見上げた。
 色とりどりの星々が煌く夜天に、うずもれることなく煌く星を結んでいけば六角形には見えなくはない。
「冬の…ダイヤモンド…か…。乃亜、本物が欲しい?」
「え?」
「本物のダイヤモンド」
「…」
 乃亜は尚吾が何を言っているのか、わからなかった。
「実はクリスマスプレゼント…まあ、夕食の後に渡そうと思ったけど、はい」
 尚吾はコートのポケットからリボンで飾られた小さな箱を乃亜に差し出した。
 それを受け取った乃亜は、掌に乗せた箱をしばらく見つめていたが、突然玄関に向かって走って行く。尚吾も乃亜の後を追いかけるように駆け足になる。

 玄関の扉を開け、手荷物を上がり框に置き、蛍光灯の下、両手で箱を持って尚吾を見上げた。
「あ、開けてもいい?」
 ここでかよ、と尚吾は少し驚いたが、興奮した乃亜があまりに可愛いから、尚吾は「勿論だよ。だけど期待しないでね」と、言った。
乃亜の行動は予測不能だから、これから何が起こるかと思うだけで、尚吾もワクワクが止まらない。
 尚吾の返事を待って、乃亜はラッピングを丁寧に開けていった。
 箱を開けベルベッドのケースを取り出し、乃亜はゆっくりと蓋を開けた。

「指輪…」
 箱の中には二つ並んだおそろいの指輪。プラチナのウェディングリングだ。
 形はシンプルだが、指輪の裏には「Syogo&Noa」と刻まれていた。
 それを見つけた時、乃亜は自分でも驚くぐらい胸が高鳴って仕方なくなってしまった。すでに目頭が熱くなり、泣きそうだ。

「これ…ホントに僕がもらっていいの?」
「乃亜以外の誰がもらうのさ。さあ、左手の薬指を出して。サイズは大体わかっているから大丈夫だと思うけど…」
 乃亜は尚吾の言葉どおりに左手を差し出した。
 毎日の家事の所為で、初めて触れた頃より乃亜の手はずっと荒れている。尚吾はその手を優しく擦った。
「こんなになるまで頑張らなくてもいいのにさ」
「楽しいんだもん。尚吾に居心地の良い居場所にしたいんだもん。でも…そんなに手荒れが気になる?」
「いいや、とっても愛しい手だよ。でも今度ハンドクリーム買ってこような」
「うん」
 指輪は乃亜の薬指にぴったりと嵌った。
「今度は俺に着けてくれる?」
「うん」
 ぎこちない仕草で乃亜は尚吾に結婚指輪を嵌めた。

「これでいい?」
「うん。実は仕事先で独り者ですか?と、煩くてね。同棲してますと言うと、今度はいつ結婚かと急かされるんだ。結婚指輪をしてたら、そういう嫌味もなくなるだろうし」
「なあんだ。僕へのプレゼントはオマケだったの?」
「…ホントは…乃亜にはダイヤの指輪をプレゼントしようと思っていたんだ。でもさ、それを貰って喜ぶ乃亜を想像してみたんだけど、あんまりピンと来なかった。それよりもきっとこっちの方が喜んでくれるんじゃないかって…やっぱ、ダイヤモンドの方が良かったかな?」
「ううん…これがいい。ダイヤモンドは冬になったら晴れた夜空でいつでも見れるしね」
「そうだな…」
「尚吾」
「ん?」
「本当にありがとう。僕、いいお嫁さんになるね」
「充分にいい嫁さんだよ、乃亜は」
「じゃあ、僕からはこれ」
 乃亜はエプロンのポケットから、長方形の包みを取り出した。

「尚吾へのクリスマスプレゼント」
「…ありがと」
 尚吾はその包みを開けてみた。
 中身は…靴下だ。それもちゃんとした高級ブランドの絹の靴下。
「一応ね、奮発して買ったんだ。一足なのにお値段高くてびっくりしちゃった」
「…」
 いつもなら四足千円の靴下しか買ってこない乃亜だから、相当頑張ってこれを選んだのだと思うと、尚吾は笑いがこみあげて仕方がない。

「どうして…靴下なの?」
「尚吾、僕が縫い合わせた靴下、捨てたでしょ。ごめんね、余計なおせっかいしちゃって…尚吾の仕事に差し障ったりしなかった?…僕…」
 落ち込んでいる乃亜の顔も可愛いと尚吾は思った。
 ド天然であまり小さいことに拘らないかと思ったら、こういう繊細なところもあるのか…と、乃亜に新しい萌えを発見した喜びさえある。
 尚吾は我慢できずに声に出して笑ってしまった。
 確かにあの靴下は尚吾を惨めな気分にさせてはくれたが、乃亜への新しい魅力を教えてくれたのだから、十分に役目を果たしてくれたのだろう。

「尚吾?」
「いや…もう、乃亜には参るな~って思ってさ」
「え?」
「乃亜は最高に俺を萌えさせてくれる唯一の恋人だってこと。靴下ありがとう。最高のクリスマスプレゼントだ」
「ホント?」
「ああ」
「それヨシュア兄さんが薦めてくれたんだよ。絶対尚吾が気に入るからって」
「…ヨシュアに言ったのか?靴下の事」
「うん…なんか気になっちゃって…。また余計なことだった?」
「いいや。今回は良しとするよ。せっかくのイブにあいつらが邪魔しないことだけでもありがたいからね」
「尚吾ったら」
「クリスマスディナーが終わったら、朝までずっと抱き合っていよう。乃亜のすべてを愛したいから…いいね」
「うん」
 少しはにかんで俯く乃亜が愛しい。

「えっと~、チキンシチューを温めなきゃ」と、照れ隠しで靴を脱いで部屋に入ろうとする乃亜の身体を、尚吾は掴んで引き寄せた。
「アペリティフに乃亜の口唇を…」
 勿論、乃亜も尚吾の要求に異存はない。
 初めからアペリティフは用意していなかったのだから。

 

  ねえ、クリスマスの夜は恋人たちの過ごす時だなんて、誰が決めたのだろうね。
  きっと心優しき独り者の神さまが、夜の儀式を覗き見したがっただけなのさ。


2014.12.29

ai1.jpg

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人魚姫(♂)は、こちらからどうぞ。  1へ 

バカップルに効く薬はないみたいですね。お粗末さまでした~
今年の更新はこれで最後です。皆さま、ありがとうございました。
また来年もよろしくお願いします。
では、みなさん、素敵な年末年始をお迎えくださいね。



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● COMMENT ●

この2人の物語は、ほのぼのします。
安物がばっかり着る尚吾はイメージに合わないので、その分は頑張って欲しいですね。
野亜を傷つかないよう、頑張ってね~

今年ももう終わりですね。
色々楽しませて頂き、ありがとうごさいました。
また、来年もよろしくお願いします。

今年も沢山の応援ありがとうございました~
蝶丸さんに年賀状出そうと思ったけど…住所わかんなくなっちゃって…すいません(( ・´ω`・ )

まあ、年賀状のイラストはこちらでアップするので、いいんですけどね。

こちらこそ来年もよろしくお願いします。

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了解しました。
ちょっと遅くなりますけど、年賀状受け取ってください。

今日は雷と横殴りの雨で珍しい大晦日になってます。
深夜の初詣には晴れるといいんですけど…

良いお年をお迎えくださいね~

今回は、乃亜と尚吾だけの2人きりのクリスマス♪
皆が集まって 賑やかなパーティもいいですけど、やはり 恋人とのしっとり甘い時間を過ごす方がいい!

クリスマス、大晦日、お正月と ずっとイベントが続く此の時期は、一人暮らしの母にとって 淋しさが増すみたいです
骨折後 前よりキビキビ動けないのが 特に その思いを強くさせるようで イベントが無くても 土日曜日は、何かと用事を言って 呼びつけたりしますしねー

でも 子供の誰かと同居するのは、気を遣い 気ままに出来ないから嫌だそうです。
母の したい様にするしかないと・・・(苦笑)

サイアート様、今年も宜しくね♪
(★´∀`)b*★*―+【祝♪謹賀新年】+―*★* d(´∀`★)...byebye☆

けいったんさん>明けましておめでとうございます。
今年もよろしくお願いいたします(*´ω`*)

やっぱり独り暮らしって寂しいんですよ。なんか遣り甲斐とかないとね…。
ダーと二人暮らし私だってそうなんだから、お母様はもっとずっと寂しいでしょうね。
でもけいったんさんは子供や旦那様の世話で忙しいし、自分の暮らしのテンポってものがあるしね。
親って年を取るとどんどん我儘になっていくみたいですね。
仕方ないかもしれんけど、私も子供にとってどんな親にならなきゃならないのかって、近頃よく考えます。

次回はセシルの過去編ですけど、なんかアーシュが活躍したいらしいです。どうなることやら…('ε`汗)

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蝶丸さんへ
え~!今気がついたんですか?…いやいや、こっちがびっくりです('ε`汗)
でもたまにありますね。あの人から年賀状が来てねえ~って思ったら、家族で分けてた他のところに入り込んでいたって…
遅くなっても見つけられて良かったです(*vωv)

こちらこそ、今年もよろしくお願いします(*・`ω´・)ゞ


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