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2019-12

宿禰凛一 「密やかな恋の始まり」 1 - 2009.02.19 Thu

rinmina6

green house 宿禰凛一編 「密やかな恋の始まり」

1、
 折角気分一新で真面目に学生生活を楽しんでやろうというのに…

 伝統と格式のある聖ヨハネ学院高等学校に、兄貴の鬼のような特訓の成果が実ってなんとか合格した俺は、意気揚々と入学式を楽しみにしていたが、思わぬ事故で欠席しなければならなくなった。
 で、2日ほど入院。
 で、今日無事退院。
 一週間ほどシカゴの大学院に戻った兄貴が、今日帰ってきた。
 俺の様を見てかなりショックらしく、さっきまでは不機嫌だったがやっと気を取り直して、ベッドで休む俺の隣で林檎を剥いている。

「ちょっと目を離した隙にそんな大怪我をこさえるなんて…凛一、あまり俺を驚かすな」
 器用に林檎の皮を繋げたまま剥いている俺の九つ違いの兄、慧一は溜息を零す。
「ごめん。でも仕方なかったんだよ。向こうが中学時代のケリを付けるって聞かねえんだから」
「だからって縫うほどに傷つけることはない。折角ここまで奇跡的に無傷にできたものを。おまえはミテクレはいいんだから、もっと大事にしろ」
「…どうせ、出来のいい兄貴とは違って頭はからっぽですよ。5針縫っただけじゃん。箔が付くってもんだろ。それもこっちは一切手を出さなかったんだから、褒めて欲しいくらいだ」
「ほら、林檎。特別に一個だけウサギにしてやったぞ」
目の前にデザートフォークに突き刺された皮付きの林檎を差し出された。
「…食いにくいじゃねーかよっ!」
「そっか?かわいいのに…」と、慧一はその皮付きウサギを自分の口に入れる。
「美味い」
「良かったね」
食い終わった慧一が、またナイフを持って皮のない林檎を一口サイズに切っていく様を、俺は見つめた。
早く食いたいんだがね…

「だけど、凛…おまえ、5針縫ったぐらいで入学式休んだのか?二日も入院だなんて、何やってたんだ?」
「栄養失調で点滴三昧…3日ほど、マトモに食ってなかった」
「一寸待て…俺、一週間前に大学に戻る時、おまえの食事用にピザ一週間分作ったよな!」
「一週間もピザばっか食ってられるかっ!二日で飽きたし!」
「シーフードにバジル風。マヨネーズ味、イロイロ変えてやったじゃないか」
「…いや、飽きるだろ、普通」
「…折角おまえの為に…もう半年間休学伸ばしたのに…俺、シカゴに帰ろうかな~」
「やだっ!帰らないでくれよ、慧っ」
思わず本気で縋ってしまった。すぐに後悔したけど、遅い。
だって本当に、まだひとりにはなりたくないんだよ…

「…嘘だよ。帰らないよ。約束しただろ?凛をひとりにはさせないって。…そんな顔はするな。凛らしくない」
「…かわいい弟をはめるな」
「そんなに寂しいなら、抱っこして寝てやろうか?」
「ありがたいけどね。遠慮しておく。結構腕が痛いんだよ」
「それは残念だ」
 どこまで本気かわからない慧一の話は半分聞いておく。
 
「ほら、アーンしな」
 一口サイズに切った林檎を唇に突かれ、俺は仕方なさげに口を開けた。
「美味いかい?」
「美味くない」
 そう言って俺はもう一度口を開ける。


 入学式が終わって、一週間経った頃、抜糸して身軽になった俺は、漸く聖ヨハネ学院高校の生徒として校門を潜る事になった。
 門を入って中庭の中央にヨハネ像がある。
 洗礼者ヨハネじゃなく、あの「主が最も愛された弟子」のヨハネの方だ。
 ミッションスクールではキリストを抱くマリア像が一般的なのに珍しい為か、目を引く。
 これがまた妙に良くできた彫像で…片膝を跪き、手を組んで祈りを捧げ見上げるヨハネの視線の先が、この学院のチャペルの尖塔の頂で、この頂点の像がこれまた熾天使ウリエルと言う。
 聖典にも認知されていない大天使がここにおわすとは、この学院を創立した奴は相当変わり者だろう。
「我が光は神なり…か?」
 昇る太陽に反射したウリエルの翼が、目を焼きつくすようだ。


 一年四組の教室に行き、自分の机を探す。
 クラスメイトと思われる方々が、俺の様子を伺いながらも声をかける気もなさそうだ。
 好奇の目で見られることに慣れた俺は、それをシカトしながら、人の良さそうな奴に話しかけた。
「ごめん、ちょっといい?」
「あ?うん」
「俺、怪我で休んでいた宿禰凛一って言うんだけど、悪いが、俺の席を知っていたら、教えて頂けるかな?」
 それはそれは、これ以上のいい人間は居ないという、柔らかな物言いで伺った。
「あ…ああ、宿禰君?」
「そう…ですよ~」
「だったら俺の後ろの席だぜ」
「そう…ですか。ありがとう」
 俺はカバンを机に置いて椅子に座った。
「カバンは後ろの棚に自分の名前があるから、そこに置いて」
「わかった」
「俺は三上敏志。よろしく、宿禰」
 いきなり呼び捨てかよ。と、思ったがまあ新参者は大人しくっと…言う事で、
「よろしくな、三上~」
 ちょっと語尾に力入れたら、三上はオーバーに後ろにたじろいたフリをした。

 机の中を覗くと、なにやら色々と書かれた用紙が出てくる。
「あ、悪い。なんか説明事項やらなんやら一杯あってさ。俺寮住まいだから、家が近いんなら、おまえの 家に持って行って良かったんだけど、個人情報一切教えてくんなくて…あ、担任から連絡あった?」
「いや、ない」
「電話ぐらいしてやりゃいいのにな。あのジーサンボケてんのか。やる気が見えねえ~」
「担任ってなんつーの?」
「神代(くましろ)って言う日本史の先生。定年間近の窓際先生だよ」
「ふーん」
「でもな、副担任がこれが…」
「起立っ!」
 高音の声が教室に響いた。
 俺は、教壇に立つ噂の窓際先生の姿を初めて拝見した。


「なんだ?あの人集り」
 階段の前の踊り場に目をやると、掲示板の前に生徒の山。
「ああ、あれ、多分この間の校内模試の結果じゃないかな。入学式の翌日にあったんだぜ?おまえ、受けなくて儲けたな」
「美味くねえ儲け話」
「上位百番まで張り出されるって聞いたけど。…おい、長谷川」
 群集から抜け出した奴を捕まえて、三上が聞く。確かクラス委員だった…か?
「トップは誰だよ」
「隣のクラスの水川青弥」
「水川か。まあ妥当なところだろうな」
「なんだ?その言い方。そいつそんなに有名人なのか?」当たり前のように吹く三上の言い方が気になって、聴き返してみる。
「宿禰は知らないんだったな。水川青弥。入学式の新入生代表で宣誓した奴だよ。同じ寮生なんで顔も覚えたし…ああ、ほら、あいつだ。あの真ん中の眼鏡っ子」
 目線と顎で教えてくれた先を見る。
 ちょうど隣の三組の教室から出てきた固まりに、ひとり、際立って白い子がいる。
 眼鏡をした生徒は珍しくもなかったが、そいつは妙に目立つ。
 一言で言えば…物憂い優等生…
 翼に傷でもあるのか?裁かれてみたいもんだね…

 …どういうわけか、俺は勘がいい。ここの受験だって殆どヤマ勘で通ったようなもんだ。
 その俺の第六感が教えてくれる。
 こいつは…俺のもんになる。

 廊下に佇む俺達を横切る瞬間、ずっと見つめ続けていたのを気づいたのか水川青弥は、俺を見た。
 俺は眼鏡の奥のたじろぎを見逃さなかった。



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● COMMENT ●

早っ!

もう始まってる! 
いいっすね~。わくわくする。
これ読むほうが楽しいかも(笑)。

おお!

独特の文章のリズムにドキドキしました!
・・・スミマセン。こだわりがマニアックで。
ハンター目線が小気味いい。(笑)続きが愉しみです~~~。

イラスト見ました~

リコメにあった、リンはその時ミナが温室にいるのを確信して雨宿りしにきた!!これにドッキーン!!
リンさまー。

さくちゃん

そうなのよ~これね、読む方がわくわくするのよ。
多分書いてるサクちゃんと私にだけ通じるわくわく感なのかもしれないけど、次に何が出てくるの?ワクワクどきどき…って感じになるよね。

でもこの文ね、サクちゃんの昨日の文を読んでから書き始めたんだよ~そしたら色々書きたくなって。
ウリエルの話とか余分だよね。
どうでもいい話が多すぎるのが自分の欠点だね~
でもそこが書きたいんだよ。
多分この次はミナに関係ない話が中心になる。
藤宮との話とか…
あ、三上くんは寮生なので、ミナに宜しく言っといて。

おふくさん

こんな拙文を読んでくれてありがと~!
なんも考えないで書いているんです。

>独特の文章のリズムにドキドキしました!
いや~最高の褒め言葉です。嬉しいな~もう変わり者って言われるのが一番嬉しいので~www

>…スミマセン。こだわりがマニアックで。
いや~私もマニアっていつもダーに言われますから~

どうぞ、期待薄で、続きも読んでやって下さい。

アドさん

そうですね~きっとミナに近づく作戦を練っていたんでしょうね~そういう裏のあるような、そんでややこしい奴が好きなんですよ。
こういう奴ですが今後もよろしゅうに( ^^) _旦~~

了解!

ミナによろしく言っときます!

sakuちゃん

連絡!
見直したら、「オレ」か「俺」でごっちゃになってるwww
すんません、「俺」に統一させてください!

了解!

リンが「俺」なら、ミナは「おれ」にします。
とりあえず自分とこのは全部訂正しときます~。

ああ…

すんません。面倒なことさせてしまって。
なんか~オレってカフェオ・レッ!って感じになってしまってですね。
踊っているリンが浮かぶんですよwww
俺がらしいな~と思いまして。
ご面倒かけました~<(_ _)>


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