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2019-10

宿禰凛一編 「Swingby」 18 - 2010.02.25 Thu

18、
 嶌谷さんのマンションで慧一と一緒に寛ぐのは初めてだったから何だか変な気分になっていた。
 リビングの広い幹のテーブルに3人揃って楽しく団欒の時間を過ごすなんて。まるで本当の家族みたいじゃないか。
「嶌谷さん達が来てくれて、本当に嬉しかった。応援っていいね。凄く頑張る意欲に繋がるし。俺こんなに頑張った体育祭なんて今までにないや」
「こっちも子供に縁がないもんだからさ、貴重な経験だよ。他の奴等も凛一にかこつけて本当は自分たちの青春を懐かしんでいたのかもしれないな。みんな心から楽しんでいたからね」
 自分のことのように喜んでくれている嶌谷さんを見て、この人と出会って本当に良かったと思う。

 嶌谷さんと慧はワインとつまみでキリが無さそうだったから、俺は先に風呂に入ってゲストルームで寝た。
「慧、嶌谷さん宅はお客さん用のベッドはひとつしかないから、後で来てくれよ。一緒に寝たい」
「…わかったよ。先にお休み、凛」
 二人手を振って見送られても、何だかすっきりしないや。
 さすがに体育祭の疲れが出てベッドに横に寝ると直ぐに寝つき、慧が隣に来たのも判らなかった。
 明け方近く、一度だけ目が覚め、目を閉じたまま、隣に居る慧一のぬくもりを確かめた。
 良かった。慧はまだ俺の傍にいる…
 一度だけ目を開け、慧の眠る顔を見て、それからまた目を瞑った。

 次に起きた時、慧一の姿がなかったから慌ててベッドから飛び出した。
 ドアを開けてリビングへ行くと、慧はすでに支度を整え、手にはバックを持っていた。
「慧、もう行くの?」
「うん。凛は疲れてるだろ?もう少し寝てていいんだよ」
「空港まで送りたい」
「大丈夫だよ。駅まですぐだから、ここで見送ってくれればいい」
「慧…」
「じゃあ、嶌谷さん。すみませんが、凛の事よろしくお願いします」
「わかってるよ。道中気をつけてな。こっちに帰ってきたときはまた寄ってくれ。慧一くんとはいつでもいいお酒が飲めるから大歓迎だ」
「ありがとうございます」
 玄関で靴を履く慧一の後姿に寂しさが募った。
「じゃあ、凛、元気で…」
「慧…」
 振り向いた慧の肩に俺は凭れた。
「慧…来てくれてありがとう…嬉しかった」
「うん…」
 慧は俺の背中を軽く叩いた。
「いつまでも慧に甘えちゃいけないってわかっているけれど…やっぱり俺には慧が必要だ…」
「凛…」
「キスして」
「…」
 慧は後ろに居る嶌谷さんに目をやり、少し苦笑した後、俺を抱き締めてキスをくれた。
「…いってきます」
「いってらっしゃい、慧」

 玄関のドアが閉まった音の後、去っていく慧の足音に耳を凝らした。
「凛、元気をだしなさい。慧一くんは凛が呼べばすぐに帰ってきてくれるよ」
「嶌谷さん」
「我慢できなくなるほど寂しくなったらうちに来るといい。いつだって俺は凛の味方だよ」
「うん…」
 感傷的な涙が流れてしまい、俺は嶌谷さんに抱きすくめられた。
「こんなにかわいい弟を置いていく慧一くんだって辛いんだからな」
「…」

 リビングに戻って差し出されたコーヒーを飲む。
「しかし…あんな別れのシーン見せられると…なんだか映画のワンシーンでも見ている気がして、こっちまで感傷的になってしまう。全くおまえら兄弟と来たら、俳優顔負けのツラしてるし、絵になるねえ~」
「ねえ、嶌谷さん」
「ん?」
「…俺は…慧にとって、弟でしか成りえないのかな?」
 俺は今まで自分の心の奥底に燻っていたものを、この人に打ち明けるべきだと感じていた。
「凛?」
「慧は俺を…弟として、それだけでしか見てはくれていないんだろうか?嶌谷さん、どう思う?」
「どうって…」
「俺を愛していると思う?」
「そりゃ…弟の体育祭の為にアメリカから帰ってくるような兄貴だ。おまえを愛しているに決まっている」
「…俺は…慧一をただ兄ということだけでなく…もっと、深いところで慧を求めている気がする」
「凛一…」
「慧としたい。身体も心も全部結びつきたい。兄弟だから愛し合っちゃ駄目って誰が決めたんだよ。そんなの…関係ない。俺は…慧が欲しいんだ」
「凛…それはおまえの気持ちだ。慧一くんはそうは思っていないから、おまえとセックスしないんだろう」
「俺はセックスの対象にならないってこと?」
「そうじゃない。慧一くんは…」
 嶌谷さんは落ちつかなげに身体を捩り、煙草の箱を手に取った。
 煙草に火を付けて、一服すると、ゆっくり俺の方を向く。
「…もし、慧一くんがおまえとそういう関係になったら、兄弟という絆はどうなる?おまえは慧一くんとセックスをして、その後、慧一くんに今までと同じ弟の顔を見せられるのか?慧一くんにしてみれば…おまえと寝てしまえば、おまえを束縛したいと思う。だが、現実にはおまえと慧一くんは離れて暮らしている。おまえみたいな魅力的で奔放でまだまだ未熟な子供を遠くにおいて、彼は心配でおちおち寝てもいられなくなるだろう。恋人同士とはそういうものだよ。だから遠距離恋愛は難しいのさ」
「…」
「なあ凛、考え方によってはおまえと慧一くんは離れられないとも言えるよな。恋人より兄弟の方がずっと絆は強いし、死ぬまで縁は切れないもんさ。いつか凛は…大人になって独りで生きていくようになる。慧一くんはそれを見守ってやりたいんだよ」
「独りで生きていくってことは…どっちにしたって慧と別れることになるってことだね…。それが慧の望んでいることなのか…」
「おまえにも守る者がいるんだろう?その恋人を幸せにしたいって思うだろう?…誰もが完璧な美しい形で愛し合うわけでもないんだよ。…だから、慧一くんの事を思うなら、おまえはもっと大人にならなきゃいけない」
「…ミナを大切に思っているし、好きだよ。だけど…ミナへの思いと慧への思いは違う。俺は…全く違う思いでふたりを愛しているんだよ」
「凛、こういう考え方はできないか?おまえはそのミナって子に対しては入れる方、言い方を変えれば与える側じゃないのか?」
「…」
 確かに俺が責めだし、ミナが俺を抱くとはとても想像できない。
「おまえが慧一くんとやりたいと思う時は、おまえは受身でしか考えてないだろ?」
「…うん」
「おまえにはふたつの受け取り方の違う『愛』がある。どちらが重いとか深いとか言っても意味が違うのだから、おまえの中で愛することに迷ったりはしないのだろうねえ」
「そりゃ、悩む事はあるけど…」
「だけど、凛一の身体はひとつしかない。与える事も与えられる事も、唯一の人との愛を貫き通すことが、一生の愛じゃないかね。俺たちはいくら愛しても法の下では契れない。だから自由に何をしてもいいという事じゃないと思うんだ。むしろ婚姻という紙で保障されていないからこそ、一生を貫き通すことに意味がある。もし本当に貫き通したい『愛』を求めるのなら、おまえはひとつを選ばなきゃならないと思うよ」
「どうしても?」
「そうでなけりゃ、ふたりとも可哀相だろう?愛し合っているのに、おまえを半分しか手にする事ができないなんて」
「…」
「慧一くんは大人だし、凛の兄でもある。彼が凛一の為に身を引くのは、おまえを愛しているからだと思ってやりなさい。慧一くんを選ばなくても彼は凛の前から消えたりしないんだから…」
「俺は慧を…欲しがったら…駄目って事…なんだね…」
 …わからない。
 わからないけれど涙が止まらなくなった。
 慧を愛している。
 慧は俺を愛している。
 それなのに、身体も心も繋がったらいけない。

 じゃあ、ミナを愛さなきゃ、ミナと別れたら、俺は慧を選べるってことなのか?
 俺と慧は幸せな恋人同士になれるってことなのか?

 違う…慧一は俺が誰を愛そうと、誰を求めようと、俺と繋がる事を、求めはしないだろう。
 …俺の為に…





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凛の苦悩

● COMMENT ●

慧一にいちゃん、凛のために帰って来て、凛のために「我慢の子」で帰っちゃった!

凛…いっつも慧一さんには「抱かれたい」なのね。 「甘えたい」の究極の形に思えるのかな?

都会の描写ですか? 私、ずっとサイさんがどこの人なのか分からなかった!!
書かれている風景がちょうどストーリーにぴったりだったから、途中で知らなかったら、海外のシーンで「向こうの人?」って思ったかも?(笑)

アドさん>ええ~だってうちの住所知ってるじゃんwww田舎モノじゃん(;^ω^)
アドさんは元がアレだからそれこそ色々海外の事を聞きたいぐらいですよ~
それにこれから慧一を描くたび、色んなアメリカの街を描かなくちゃならんのにさああ~
もう想像だけでファンタジーで行くしかないよ~
ダーに出張で行ったニューヨークやロスのこと聞いても「う~ん、飯が不味かった…」ぐらいしか覚えてないんだもん~Y(>_<、)Y ヒェェ!
福岡を舞台にしたら絶対博多弁じゃないと不自然だもんね~でも私は小説っていうのは基本標準語じゃないと読みにくいと思うので、方言は書きたくないですね。

凛は根っこでは受けの子だと思う。
ミナにだけ非常に攻め状態になるんですよ。このミナにだけ!ってところが今後のミソかな


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