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2019-10

君の見た夢 13 - 2008.11.18 Tue

7. 再生の声


最後の由貴人からの電話は少しも変じゃなかった。
誕生日は一緒に過ごそうって、俺から誘ったんだ。そしたらあいつは嬉しそうに返事をして「今から行くから」って…
それっきり、由貴人は俺の前から消えた。

今は休暇中でメンバー同士連絡を取り合うこともたまにしかなくて、フラリとどこかに旅行に行ってたっておかしくはない。でもあいつが俺に黙って出掛けるなんて絶対在り得ないし、俺の誕生日をすっぽかすなんて…
何か重大な事が起こっていたとしても、簡単に警察沙汰になんかできる筈もない。
どうしたらいいのか焦った。
俺は何も手につかず、ただ、由貴人を待つしかなかった。


岬からユキが戻ったとの連絡をもらったのは、ユキが消えてから三日目の夜だった。
由貴人は自分のマンションに帰っているというので、急いで行ってみると岬も眞人も来ていて、リビングのソファに座る由貴人を囲むように床に座っていた。

由貴人は俺の顔を一瞥してすぐに目を逸らした。
「大丈夫なのか?」
「うん」と、岬が返事した。
「他の奴には?」
「うん、スタッフには連絡したから。急な事情があって親戚んちに行ってたとか、適当に誤魔化しといた」「うん、サンキュ」岬がいつもの調子で笑うから、俺も少し落ち着いた。
「でもな…」眞人がトーンを変えないまま言う。「こいつ、さっきから黙ったままで…なんも言わねーの」
「…」
「…ごめんな、皆な…心配かけてゴメン…」
「なっ?コレばっか」
何があったんだ?
「とにかく麗乃、突っ立ってないでここ座んなよ」
「ああ…」
由貴人の目の前に距離を置いて座る。俯いたユキを眺める。別に怪我とかしてないし、着ているものは俺の知らない服だったけれど、あとは別段変わったところはない。…うん、大丈夫だ…きっと。

「ユキ、何とか言ってくんねぇ?俺もマコちゃんも麗乃もさ、そりゃすげぇ心配したんだから」
「…ごめん。今は…ちょっと説明できない」
「ユキ…」
「そのうち、ちゃんと…ちゃんと話すから…ゴメンナサイ…」
「わかった。由貴人が話せる時まで俺達待つから、今日はもう寝なさい。それでいいだろ?麗乃」眞人が俺を見た。許してやれとでも言うように。
「…ああ」
「俺、寝ても…いい?」
「いいよ。…おやすみ」
ユキは一度も俺を見ないまま、足取りも重そうに寝室に消えていった。

俺達はもう何も話すことはなかった。しばらく経って岬と眞人は帰ることになり、心配だからと俺ひとりは由貴人の側に居るように言われ、くれぐれもユキを刺激しないように念を押された。
それぐらい言われなくてもわかっているけど、よほど俺が動揺しているのがわかったのか、二人は「大丈夫だから」と俺に繰り返した。
何が大丈夫だっ!全然大丈夫じゃねぇよ、俺もユキも…

この三日の間に由貴人に何が起こったのかなんて、俺達がいくら考えてもわかることじゃねーけど、さっきのあいつのあの態度は、笑って許せるような代物じゃねぇってことぐらいは、俺にだってわかってるんだよ。


音を立てないように静かにドアを開けた。ベッドに横たわる由貴人の姿を見た。近寄ってそっと覗くと規則正しく寝息を立てているユキを確認して、やっと安心する。
眠りを妨げないようにずれた毛布をそっと引き上げて…青いパジャマの襟元から覗く白い鎖骨に目がいく。…視力の弱い俺はギリギリまで近づいて、凝視した。
…赤い斑点…キス…の跡?…ゾッとして目を逸らすと耳元から首筋までも幾つかのソレを見つけて…俺はあわてて退いた。
…俺じゃない…違う…俺の付けた跡じゃない…

リビングに戻った俺は眠る事も出来ず、ただ朝が来るのを待った。
何も考えたくなかった…唯、あいつが起きたら俺はどんな顔してあいつに言葉をかけたらいいのか…そればかりを考えていた。


昼前になってやっと由貴人は起きてきた。リビングに居る俺を見るとビックリしたように一歩後ずさったが、何事もなかったように俺の用意したコーヒーを飲んでいた。
急にスタジオに行くと言い出し、そのまま飛び出すユキを追いかけてタクシーに乗る。途中、会話はない。目も合わせてくれない。それは俺にとっても好都合。とてもマトモに話せる状態じゃないのは俺だって同じだからな。

そして由貴人は、スタジオのブースに入ったきり、必要最小限以外は出てこなくなった。
四六時中、ひたすらギターを掻き鳴らし、誰も見ようとしない。
時折、ブースを覗くと、ヘッドホンをしたまま床に寝ていたり、ギターを抱えたまま壁に凭れていたり…その身を音に委ね、音楽の世界に入り込んだまま帰ってこない。名前を呼んでもうつろな目で見るだけで返事もロクにしない。食べるものも促されてしぶしぶ口にする程度。
そうやって由貴人は自分なりに自分を正常化させていたのかどうかはわからないが、一週間もすると、随分と俺達との会話も増えて、食事も一緒に取れるようになった。
それでも時々塞ぎ込み、じっと沈黙したままどこか遠い目をしている時は、俺達は何も言わず、ただ見知らぬフリをした。
誰の助けも借りずに由貴人は自分の居場所を探しているようだった。だからそれを邪魔する事は俺でさえもできない。

そうして二週間も経った頃、四人で遅い夕飯を摂っていると、ユキが思い出を語るような口調で話し始めた…




ここから暫くこっち側の麗乃視点です

● COMMENT ●

どきどき・・・

こっちに戻ってきていきなりキスマークを発見されてしまうなんて!
なんてこったい・・・
ああでもユキくんがかわいい~~

麗乃は

物凄く由貴人の観察をする性質で(ストーカー並)ちょっとでも自分が知らないことがあったら、「どうしたの?」って聞く人です。それを聞かないってことは相当凹んでいるって事でしょうね…www
この後…

もうすぐ終わるよん(^◇^)


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