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2019-10

バレンタインデー 2 - 2013.02.12 Tue

バレンタインデー 2

イラストはサムネイルでアップしております。
大きく見たい方はイラストをクリックしてください。


仁井部漣


バレンタインデー 2

中学二年になり、柊木栄嗣とは別のクラスになったけれど、朝の登校も、帰りの部活帰りも一緒だから仲の良さは変わらない。
栄嗣みたいな完璧な男が、僕みたいなどこから見ても平凡な奴と親友でいることが、きっと周りの同級生は訝っていただろう。だって僕自身がそうだったから。
でも栄嗣は言うんだ。
「俺、こう見えて事なかれ主義というか…案外小心者っていうか…周りの期待を裏切らないようにかっこつけてるんだよな~。でも漣には気を使わずに素直で自分の気持ちを曝け出せる。そういう奴って見つけようとしてもなかなか巡り会えないって思うんだ。だから俺にとって漣は大事な存在だ」
「…なんか…照れるよ」
「ホントだって。でも、俺ばっかりがいい思いしてもそれは親友じゃないよね。俺も漣の為ならなんでも力になるからな。遠慮なく言ってくれよ」
「…うん」
無邪気な笑顔を僕に見せる栄嗣…。本当の僕の気持ちを知ったら、その笑顔は僕に向けられなくなってしまうんだろうか…


二年生の後半からは、バスケ部の部長と生徒会役員の掛け持ちで毎日忙しそうな栄嗣だったけど、僕との友情は変わらず、そして栄嗣の愚痴を聞いたり、励ましたりするうちに、僕は自分自身の人間性が少しずつ成長していることを感じていた。
そして、このままずっと栄嗣の傍に居て、彼に必要とされるよう自分を磨いていきたいと思うようになった。

三年生になると受験が待ちかえている。
当然、栄嗣はこの地域で通える一番レベルの高いA校を受験することにしていた。僕は栄嗣には到底かなう成績ではなかったが、どうしても栄嗣と一緒の高校に行きたかったから必死に頑張った。
同じ高校へ入学できたら、少なくともあと三年間は一緒にいられる。

栄嗣は僕がA校合格の為に必死になっている本当の理由も知らずに、僕の傍でいつも勉強を教えてくれた。
「一緒にA校へ行こうな」と、力強く励まし続けてくれた。
それなのに…
12月になって、栄嗣は突然予想もしていない事を言いだしたのだ。

栄嗣は高等専門学校を受験するというのだ。しかもここからずっと離れた東京の高専だ。
俺は驚いた。そんな話を今までに栄嗣の口から聞いたこともなかった。

「高専を受けるって…なんで急に?」
「そんなに急でもないんだ。本当はずっと前から考えていた。今年の春ごろにちょっと親に言ってみたら、強く反対されてね。特に母親がね。ほら、俺、ひとりっ子だろ?家から離れて寮暮らしなんて、まだ早いし、心配で仕方ないって言うんだ。だから何度も諦めようとしたんだ。でも…やっぱりどうしても行きたいって思ってさ」
「どうして…高専なのさ」
「うん。ほら、この間、すげえ地震があったろ?俺たちは被災しなかったけれど…その後の原発の事故なんかでさ、今でも色々と手間取ってるじゃん。ああいうのさ、なんとかしたいって思うんだよね。人間ができない場所で処理をしているロボットとかの先端技術工学を学んで、もっと早く元の環境にしてやりたいってさ。…そういうの甘いとか言われそうだけど、本気でやってみたいんだ」
「…」
…知らなかった。栄嗣がそんなことを考えているなんて…こんなに近くにいるのに全然気づいてなかった。
僕はなんて馬鹿なんだろう…

「…だったらハイレベルな高校で普通の勉強をやるより、早く専門的なものを学んだ方が道は早いし、そこからまた近道を選べるかもしれないし。…俺さ、人間の人生ってどれだけ人の為に働けるかで価値が決まるんじゃないかと思うんだ。別に他人に褒められたいわけじゃない。勿論褒めてくれたら嬉しいけどな。俺にとって…大事な人たちを守る為に自分がやれることを見出して、頑張ることが幸せな人生なんじゃないかって…ずっと考えてた…」
「…栄嗣はすごいね。…僕は自分のことばっかりだ」
「そんなことないよ。…ホントはなんども諦めようと思ったけれどね、漣が俺に教えてくれたんだよ」
「え?」
「毎日毎日一生懸命に勉強している漣の姿を見てるとね、俺自身が漣に励まされてる気がするんだ。なあなあでここで自分の想いをはぐらかせて、楽な道を選ぼうとしている俺は、漣みたいに懸命に何かを目指して頑張って生きているのか…ってさ」
「そんなんじゃないよ。僕は…ただ栄嗣と一緒の高校に行きたい。また一緒に三年間を楽しみたいって…ただそれだけだよ」
「その想いが俺にとって、どれだけ誇りになっているかわかる?漣。おまえが俺の為に頑張っている姿に恥じないように、俺も自分に嘘を吐いちゃいけないって思ったんだ」
「栄嗣…」
「漣との約束を破ることが、一番辛かった。一緒に行くって約束したのに、ゴメンな、漣。でも一緒に行けなくてもこれからもずっとおまえと親友でいたいって思ってる。…駄目かな?」
「駄目じゃないよ…駄目じゃない…寂しいけれど…僕も応援するよ、栄嗣。T高専絶対合格しろよ」
「ああ、頑張る。漣に負けないぐらい必死に頑張る。だから絶対合格しような」
「うん」

それから自宅に帰った僕は、自分の部屋のベッドの中で泣き崩れた。
栄嗣の前では我慢したけれど、ホントは泣き喚いて、詰ってやりたかった。
おまえと一緒にいたいから、したくない勉強だって必死に頑張ってきたのに…あれだけ一緒に高校生活を楽しもうって約束したのに…栄嗣の嘘つき、バカ、僕の気持ちなんて少しもわかってないっ!

泣きつかれて涙も枯れてしまった後、なんだか可笑しくなって笑ってしまった。
ただの友情だったら、こんな風に泣いたりしない。合格するように応援してやればいいだけだ。
…片思いっていうものは本当にやっかいなものなんだな…


翌年の二月、滑り止めの私立も合格し、後はお互いの志望校受験を残すのみになった。
日曜日、久しぶりに帰ってきた姉に連れ出され、街に買い物に出た。
「漣と一緒に買い物なんて何年振りかな~」
「お姉ちゃん、僕、受験生なんですけど…」
「たまの息抜きは必要でしょ?それよりあんた、ちょっとチョコ買うから付いてきて」
「チョコ?」
「そうなの。もうすぐバレンタインだから、ここの人気のチョコレートショップに行きたいの」
「お姉ちゃんにチョコをあげる彼氏がいるの?」
「バカね、漣。彼氏ぐらいいるわよ。あんたはどうなのよ。本命チョコを貰う彼女のひとりぐらいはいないの?」
「…」
「…いるわけないよね。漣は控えめだもん。でもあんたのそういうとこ、私は好きだからね」
「お姉ちゃんに褒められてもねえ~」
「義理チョコぐらいは買ってあげるから、さ、行こ」
無理やり姉に腕を惹かれ、女の人で一杯の店の中へ入った。店の中に入った途端甘いチョコの香りに包まれる。
学生っぽい女子はあまり見かけなく、大人の女性が多い。それもそのはずだった。
ケースを眺めたら、綺麗に並べられた小さいチョコひと粒が…え?五百円?こんなに小さいのに?
あまりの衝撃に僕は固まってしまった。
それなのに周りの女性たちは、あたりまえのように指を差し、いくつかのチョコレートを選んで買っていく。
みんなウキウキとした嬉しそうな、そして愛おしそうな顔をして…
姉貴も同じだ。彼氏のことでも想っているのだろうか。いつもとは違い、少し頬を赤らめ、照れながら店員さんにチョコレートの味を聞いている。
そうか…バレンタインのチョコっていうのは、相手を想いながら、その想いをチョコに込めて買うんだな…

「おまたせ~」
「欲しいチョコ買えた?」
「うん。ああ、そうだ、漣。せっかく来たんだからあんたもひとつくらい買ってみたら?」
「え?僕がチョコを?」
「そう、バレンタインってね。本当は男も女も関係ないのよ」
「ホント?」
「そうよ。あんたも好きな女の子にここのチョコをあげてみたら?すごく喜ぶと思うよ。ここの店有名だし~」
「そうかな…男の僕が送っても変じゃない?」
「変じゃないよ。想いを込めて送っちゃえ~。シャイボーイ!」

姉貴にそそのかされ、小さなボンボンショコラ二個入り千二百円の箱を買った。
綺麗な箱にシックなリボンに飾られたチョコレート…僕の精一杯の栄嗣への想いを込めたチョコだ。

栄嗣に手渡すことができるかどうかわからないけれど、机の引き出しに大事にしまったチョコの箱を眺めているだけで、何故だか幸せな気分になった。そして考える。
果たして本当に栄嗣にこれを渡すべきなのだろうか…と。
もし、これを渡し、栄嗣に僕の想いを告白してしまったら、僕と栄嗣の親友という絆は、変わってしまうものなのだろうか。
親友でいられなくなるのだろうか…


渡そうかやめようかと悩んでいるうちにバレンタインの日はやってきた。
俺は手の平サイズのチョコの箱を学生服のポケットに忍ばせ、登校した。
学校内は私立入試がひと段落つき、少し前の緊張感が緩和され、チョコを渡す女子と貰う男子たちがどちらとも浮き足立っているようなふわふわとした空気が漂っていた。

栄嗣は勿論数えきれない程貰っていたし、僕も義理チョコだったけど三個もらった。
その日の帰り道、栄嗣とふたり並んで歩いていると、重たげな紙袋を下げた栄嗣が突然言う。
「なあ、漣。このチョコさ、おまえにあげるよ。俺、あんまりチョコレート好きじゃないんだよなあ~。漣は甘いもの好きだろ?」
…そういやそうだった。栄嗣はケーキ類は食べるけど、チョコはあまり食べなかったんだっけ…すっかり忘れていた。
「でも栄嗣がもらったチョコなんだから、僕は受け取れないよ」
「だってこんな一杯あるんだぜ?去年はバスケ部の連中に分けたけどさ…」
「…」
つうか僕の手にあるこのチョコはどうすればいいんだよ~。好きじゃないってわかったのに、今更チョコを渡せるのか?

「なんつうか、バレンタインデーなんてメディアに踊らされてるだけじゃないか。別に本当に好きなら、バレンタインとかチョコとか関係なくいつでも言えばいいんだよ。なあ、漣」
「…」
「ああ、なんかもうメンドクサイからこのチョコ、全部、漣にやるよ。いらなかったら捨ててもいいし…」
「栄嗣っ!」
「え?…なに?」
「面倒くさいからって、僕にあげるとか捨てるとか言うなよ。みんなおまえのことを好きだからプレゼントしたんだよ。義理チョコもあるだろうけれど、本当におまえを好きで、でも打ち明けられなくて…バレンタインデーっていうイベントの力を借りて、やっとおまえに告白した子だっているかもしれないじゃないか。そういうプレゼントを、簡単に捨てるなって言うな」
「…漣」
「チョコが好きじゃないなら全部食べなくていいよ。でも一粒でも、一欠けらでも食べて、これをくれた子たちの想いを感じてもいいんじゃないのかな…そうじゃなきゃ、彼女たちが可哀想だよ」
「…」
僕の言葉に栄嗣はしばらく黙り込んだ。
まずい…つい本気で口走ってしまった。
…いつになく気まずい雰囲気だ。

「ゴ、ゴメン。おせっかいだったね。栄嗣のもらったチョコなんだから栄嗣がどうしようと僕が色々言う立場じゃなかった。ゴメン」
そう言うと、栄嗣はくるりと僕の方を向き、いきなり抱きついてきた。
「ちょ…っと、栄嗣」
栄嗣はスキンシップが好きでそれを気にしない奴だ。
バスケの試合なんか、勝っても負けても部員ひとりひとりに抱きついては、喜んだり悔しがったり…みんな、そういう栄嗣が大好きで、こいつの為に一緒に頑張ろうって思わせるんだ。

「…栄嗣、もういいだろ。他人が見たら誤解するかもしれないよ」
「かまうもんか。勝手に誤解してろ」
「…」
「ホントに敵わないよ、おまえには」
「え?」
「漣の言うとおりだ。人を思いやる気持ちがなくて、人に役立つ物作りができるかって…なあ」
「栄嗣」
「漣が俺の居てくれてホント良かった。漣が居なきゃこんな大切なこと、気づかずにいたよ。漣はやっぱり最高の親友だ。ありがとな」
「…そんな…」
栄嗣はやっと抱きしめた腕を緩め、僕の頭を撫でた。

「じゃあ、無理してでも貰ったチョコは食べるようにするよ。ニキビが増えたら漣の所為だからな」
「無理はしなくていいよ…それより栄嗣…」
「なに?」
僕は右のポケットに入れたチョコの箱を握りしめた。ここで渡さなきゃ…今、栄嗣に僕の気持ちを言わなきゃ…
「…」
だけど、僕を見つめる栄嗣の瞳が眩しすぎる。栄嗣のまなこに映る僕は、彼に必要なのは「親友」である仁井部漣なんだと、訴えているようだ。
栄嗣の絶対の信頼を裏切っていいのか?
失望させてもいいのか?
「友情」を捨ててまで「恋心」を打ち明けることが、栄嗣にとって…僕にとって本当に良い選択なのか?

…栄嗣の信頼を、失いたくない。

「あ、見ろよ、漣。雪だ…きれいだな」
「うん…そうだね…」

僕は握りしめたチョコをポケットから出すことを諦めた。
そして、栄嗣の肩に降り積もっていく雪を、空いている片手で払った。

「ありがとう、漣」
「どういたしまして、栄嗣。それより早く帰って、塾の時間まで僕の家で勉強しようよ。本番の試験まで時間がないよ」
「ああ、そうしよう。肉まん買って一緒に食べよ」
「うん」

これでいい。
これで…いいんだ。

僕は自分にそう言い続けた。





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すいません。次で終わらせます。
14日までにはなんとか…( ,,`・ ω´・)がんばるよ~



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● COMMENT ●

バレンタインだからと言って 女子だって チョコを渡すのには 勇気がいるもの!
ましてや 「親友」として 漣に強い信頼を抱いている英嗣に渡す勇気は 漣には無いでしょうね

漣は このまま「友情」を優先するの?

バレンタインになると 思うのですが、
それまで 何かしら接点がある(好感触なら尚の事)異性だったら 渡すのは 「あり」だとは思う
でも 一方的に片思いしている異性に 好きだからと言って 全く接点の無いのに渡すって どんな気持ちなのかしら?
『当たって砕けろ!』でしょうかねー

学生時代の女子友が まさしく ソレで 憧れの人に告って渡すと 聞いた時に 凄い勇気だなぁと感心したのを 覚えてます。 
私は、そんな勇気も そんな気持ちさえも湧かなかったなぁ(笑)
[\チョコ/]ョ〃∀'*)*:;;:*バレンタインDAY*:;;:*...byebye☆

私は…渡そうと思った相手もいないのでwwwwなんとも言えませんが~( `^ω^)=3
いや~、全くもってリアル男に興味がなくて…これもどうかと思うんですけどねえ~
高校からは好きの片鱗さえ感じたことがなかったので…
なんに夢中だったのか…う~ん、高三の時はガンダムのシャアさまだったけど…やっぱ漫画だったのかなあ~
部活でフルート吹いてたから、それに夢中だったかな。あとギター。
売れる前のアリスとか、グレープ解散したばっかりのさだまさしとか…wwww

だから今バレンタインの話を書いている自分が不思議ですわwww


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