aqua green noon
こちらはBL妄想小説、及びイラストサイトでございます。
猫日 午前中、その八
午前中 その八
俺達はさっきの会議室に戻って、コンビニで買ってきた昼飯を四人で取った。
ユキには五目御飯と幕の内の煮物とか小さく砕いてあげた。さして苦情も言われなかったから美味かったのだろう。ついでに言うと、ミルクよりはお茶の方が断然好きらしい。
眞人と岬の二人は、もうユキに関して何も言わなかった。本当に信じているかどうかはわかんなかったが。
「で、どうする?麗乃」
「何?」
「昼からの撮影、由貴人が居ないじゃん…まあ居るけどさ」と、テーブルの上で前足を舐めてるユキを見る。
「そうだな…今日は個別に撮るか、別の日に撮るかしてもらうしかねぇよな」
「了解。じゃあ俺ちょっくらマネージャーに言ってくるわ」
「悪い。頼んだ」
言うが早いか、岬は食い終わってない弁当を片して部屋を出た。
残った俺と眞人は黙ったまま、残りの弁当を食う。
食い終わったユキは陽の当たる場所を見つけて、そこで身体を伸ばし寝る態勢に入ってる。
又寝るのかよと思い、呆れながら溜息を付くと、ふいに眞人が「こいつは良く寝るなぁ」と、同じ事を言うので俺は少し笑った。
「なあ、呆れるだろ?昨日もテレビ観ながら俺の膝で寝てたんだよ…」と、つい、馬鹿正直に口に出してしまった。
「由貴人はおまえんちに泊まったのか?」
「…まあ、そう」
「じゃあ、おまえが魔法でもかけたのか?」
眞人にしてはえらいロマンチックな事を言い出すもんだと思ったが、その通りだと言わざるを得ないところが何とも…
俺はコクンと頷いた。
「なんか…目が覚めたら、こうなってた…ホント参る」
「元に戻るんだろうな」
「そうじゃないと困る」
「おまえもだが由貴人が一番困るだろう」
「…ん…」判ってるけど…
「どうすりゃいいのか、わかんねぇ…」
「…」
二人で既に気持ち良さ気に寝ている由貴人を見つめる。
…猫だったら可愛いなぁとは確かに思ったさ。けれど本物の猫になって欲しいとか望んでなかった。
もう猫のユキはかっわいいなとか思わねぇから、人間のユキに戻って欲しい。
「大丈夫なんじゃね」
由貴人を見つめ続けていた眞人が、突然きっぱりと言い切った。
「えっ?」
「なんだかそんな気がする」
「何?…眞人に魔法能力なんぞあったか?」
「馬鹿、そうじゃなくて…おまえの想いが強かったら、きっと由貴人は元に戻る。…そんな気しねぇか?」
「そうなら…いいけどな」
「お姫様の呪いを解くのは王子様のキスだろ?」
「呪いをかけたのは俺なのに?」
「そう、だから解くのもおまえにしか出来ない」
実に真面目に言われたので、冗句で躱す気にはならなかった。
「…俺にしか出来ない…か」
「ユキ自身がどうなのかは判らんけどな」
「判らんって?」
「いや…案外猫の方が心地良かったりしてな」
「まさか」
「さっきも…あの掃除のオジサンにな、連れて行かれそうになったじゃん」
「…ん」
思い出したくもねぇし。
「あん時、ユキ全然嫌がんねぇの。黙ってそのオジサンに首んとこ摘まれてんの。…暴れりゃいいのに」
「…」
「なんかそん時思ったわ。由貴人はもう…なんか猫でもなんでもユキはユキなんだなぁってさあ」
「…うん」
「だからもう、…おまえ絶対離すな、ユキを」
「わかった」
岬が戻って来た。
結局撮影は由貴人無しでも予定通りやる事になったらしい。由貴人だけ別撮りって訳だ。
「ほら、コレ、いいもんあったから貰ってきた」と、岬が目の前にシルクみたいな生地の赤いリボンをぶら下げた。
「何?」
「ユキにすんの。首輪とかしてないから、野良と間違われんの。これでもしときゃ飼い猫だって判るしょ?」
それはいい考えかも知んねぇ。
「由貴人、起きろ」
俺は寝ているユキを起こした。勿論抱いてやって優しくね。
由貴人は顔を上げてにゃあと眠そうに応える。
「ユキ、じっとしてろよ」
岬がユキの首にリボンを掛けて、きつくならない様に注意しながら、背中んとこで蝶々結びにする。
「はい、できあがり!」
「…」
テーブルにお行儀良くお座りをして、ちょっと首を傾けた由貴人はなんか…ちょっと…やばい…
「すげぇ、可愛いじゃん!」
「なんかモデル猫みたいだな」
「写真撮ったらマジ売れるぞ!」
「ふむ…これで猫のユキに萌えたら、俺もおしまいだな」
…おい、すでに終ってる俺はどうすんだ?
しっかし…有り得ねえ程可愛いじゃん。
恐ろしきかな、赤いリボンの魔力。
さっき俺は、猫のユキはもう十分だと思っていたのに…こんなに可愛いともうちょっと猫でもいいじゃん…とか、思っちまうだろうが…
…サイアクだ、俺…ごめんなユキ…やっぱ猫のおまえも可愛いわ…
何でも行動に移すのが早い岬が、カバンからカメラを取り出し、早速由貴人を被写体にし始めた。
「つーか、おまえまたカメラ買ったのか?」
見かけねえ新しい一眼レフカメラを自慢げに見せつけ、格好つけながらシャッターを押しまくる。
ユキは逃げる様に俺に抱きついてきた。言いたい事がありそうなんで頭に乗っけてみる。
『岬、ニタニタしてて気持ち悪いよ。なんであんなに俺撮るの?』
「…」
そりゃおまえが可愛いからだろ?
「気にすんなよ。それよりユキ、午後から撮影で外行くけど、いい?」
『いーよ。なんかね、猫の視点で観んの、面白い』
「そっか」
思いもかけず暢気な調子で言われたので、由貴人は猫の方がよっぽどポジティブじゃないかと、思わず笑った。
「ユキ、絶対俺から離れんなよ」と、言うと、
『麗乃が離さなきゃね』と、頭を叩かれた。
もう絶対離すかよっ!
午前中 終わり

7へ
一応、午前中はコレで終わりです…こんなの最早BLではないんですが…www
いや、終わりまで考えてはいるんですが、なにしろキスさえないので…猫とはするが〜
そんなわけで、ここからは暫く放置(;^ω^)
そして、すべての更新は一日おきにします〜
イラは…適当に鉛筆で〜すんませんね〜(;´▽`A``

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俺達はさっきの会議室に戻って、コンビニで買ってきた昼飯を四人で取った。
ユキには五目御飯と幕の内の煮物とか小さく砕いてあげた。さして苦情も言われなかったから美味かったのだろう。ついでに言うと、ミルクよりはお茶の方が断然好きらしい。
眞人と岬の二人は、もうユキに関して何も言わなかった。本当に信じているかどうかはわかんなかったが。
「で、どうする?麗乃」
「何?」
「昼からの撮影、由貴人が居ないじゃん…まあ居るけどさ」と、テーブルの上で前足を舐めてるユキを見る。
「そうだな…今日は個別に撮るか、別の日に撮るかしてもらうしかねぇよな」
「了解。じゃあ俺ちょっくらマネージャーに言ってくるわ」
「悪い。頼んだ」
言うが早いか、岬は食い終わってない弁当を片して部屋を出た。
残った俺と眞人は黙ったまま、残りの弁当を食う。
食い終わったユキは陽の当たる場所を見つけて、そこで身体を伸ばし寝る態勢に入ってる。
又寝るのかよと思い、呆れながら溜息を付くと、ふいに眞人が「こいつは良く寝るなぁ」と、同じ事を言うので俺は少し笑った。
「なあ、呆れるだろ?昨日もテレビ観ながら俺の膝で寝てたんだよ…」と、つい、馬鹿正直に口に出してしまった。
「由貴人はおまえんちに泊まったのか?」
「…まあ、そう」
「じゃあ、おまえが魔法でもかけたのか?」
眞人にしてはえらいロマンチックな事を言い出すもんだと思ったが、その通りだと言わざるを得ないところが何とも…
俺はコクンと頷いた。
「なんか…目が覚めたら、こうなってた…ホント参る」
「元に戻るんだろうな」
「そうじゃないと困る」
「おまえもだが由貴人が一番困るだろう」
「…ん…」判ってるけど…
「どうすりゃいいのか、わかんねぇ…」
「…」
二人で既に気持ち良さ気に寝ている由貴人を見つめる。
…猫だったら可愛いなぁとは確かに思ったさ。けれど本物の猫になって欲しいとか望んでなかった。
もう猫のユキはかっわいいなとか思わねぇから、人間のユキに戻って欲しい。
「大丈夫なんじゃね」
由貴人を見つめ続けていた眞人が、突然きっぱりと言い切った。
「えっ?」
「なんだかそんな気がする」
「何?…眞人に魔法能力なんぞあったか?」
「馬鹿、そうじゃなくて…おまえの想いが強かったら、きっと由貴人は元に戻る。…そんな気しねぇか?」
「そうなら…いいけどな」
「お姫様の呪いを解くのは王子様のキスだろ?」
「呪いをかけたのは俺なのに?」
「そう、だから解くのもおまえにしか出来ない」
実に真面目に言われたので、冗句で躱す気にはならなかった。
「…俺にしか出来ない…か」
「ユキ自身がどうなのかは判らんけどな」
「判らんって?」
「いや…案外猫の方が心地良かったりしてな」
「まさか」
「さっきも…あの掃除のオジサンにな、連れて行かれそうになったじゃん」
「…ん」
思い出したくもねぇし。
「あん時、ユキ全然嫌がんねぇの。黙ってそのオジサンに首んとこ摘まれてんの。…暴れりゃいいのに」
「…」
「なんかそん時思ったわ。由貴人はもう…なんか猫でもなんでもユキはユキなんだなぁってさあ」
「…うん」
「だからもう、…おまえ絶対離すな、ユキを」
「わかった」
岬が戻って来た。
結局撮影は由貴人無しでも予定通りやる事になったらしい。由貴人だけ別撮りって訳だ。
「ほら、コレ、いいもんあったから貰ってきた」と、岬が目の前にシルクみたいな生地の赤いリボンをぶら下げた。
「何?」
「ユキにすんの。首輪とかしてないから、野良と間違われんの。これでもしときゃ飼い猫だって判るしょ?」
それはいい考えかも知んねぇ。
「由貴人、起きろ」
俺は寝ているユキを起こした。勿論抱いてやって優しくね。
由貴人は顔を上げてにゃあと眠そうに応える。
「ユキ、じっとしてろよ」
岬がユキの首にリボンを掛けて、きつくならない様に注意しながら、背中んとこで蝶々結びにする。
「はい、できあがり!」
「…」
テーブルにお行儀良くお座りをして、ちょっと首を傾けた由貴人はなんか…ちょっと…やばい…
「すげぇ、可愛いじゃん!」
「なんかモデル猫みたいだな」
「写真撮ったらマジ売れるぞ!」
「ふむ…これで猫のユキに萌えたら、俺もおしまいだな」
…おい、すでに終ってる俺はどうすんだ?
しっかし…有り得ねえ程可愛いじゃん。
恐ろしきかな、赤いリボンの魔力。
さっき俺は、猫のユキはもう十分だと思っていたのに…こんなに可愛いともうちょっと猫でもいいじゃん…とか、思っちまうだろうが…
…サイアクだ、俺…ごめんなユキ…やっぱ猫のおまえも可愛いわ…
何でも行動に移すのが早い岬が、カバンからカメラを取り出し、早速由貴人を被写体にし始めた。
「つーか、おまえまたカメラ買ったのか?」
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ユキは逃げる様に俺に抱きついてきた。言いたい事がありそうなんで頭に乗っけてみる。
『岬、ニタニタしてて気持ち悪いよ。なんであんなに俺撮るの?』
「…」
そりゃおまえが可愛いからだろ?
「気にすんなよ。それよりユキ、午後から撮影で外行くけど、いい?」
『いーよ。なんかね、猫の視点で観んの、面白い』
「そっか」
思いもかけず暢気な調子で言われたので、由貴人は猫の方がよっぽどポジティブじゃないかと、思わず笑った。
「ユキ、絶対俺から離れんなよ」と、言うと、
『麗乃が離さなきゃね』と、頭を叩かれた。
もう絶対離すかよっ!
午前中 終わり

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一応、午前中はコレで終わりです…こんなの最早BLではないんですが…www
いや、終わりまで考えてはいるんですが、なにしろキスさえないので…猫とはするが〜
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猫日 午前中、その七
午前中 その七
「じゃあ、俺らちょっと飯買ってくっから」と、ユキを眞人に預けて岬とふたりコンビニへ走った。
「ち、ちょっと、麗乃。そんなに急がなくってもさ…別にマコちゃん、ユキを食ったりしねぇし」
「いや、悪戯ぐらいはやらかすかも知れん。なにしろ眞人だからな」
「どこまで信用してないんですかぁ?」
「…」
信用とかの問題じゃねぇし。ユキが…猫の由貴人が可愛すぎるんだよ。
あれじゃあ誰だって変な気持ちになるって…お、俺だけか?
とにかく、用事を済ませたらさっさとユキんとこに戻るから、待ってろ、ユキ。
走って五分のコンビニのドアを開ける。
「ユキが食べるもんってキャットフード?」
「待て、いくら姿が猫でも中身は人間のユキだ。猫用じゃあんまりだろ」
「じゃあ、パンとかおにぎりとか…味濃くねぇか?」
「弁当の白飯なら味はついてねぇだろ」
「牛乳は?」
「お茶ってわけにはいかねぇか?」
「さっぱり訳わかんねぇし。大体猫になったら味覚変わんのか?」
「わからんし。なんせ猫になったことはねぇ」
乳酸飲料棚から小さめの牛乳パックを手に取る。
「猫に普通の牛乳飲ませたら、腹壊すって聞いた事ある」
「マジで?」
「うん」
「どうする?」
「コレ…おなかに優しい牛乳って奴にすればいいんじゃねぇかな」
「…じゃあ、それで」
ユキと俺達の分の昼飯分を買ってコンビニを出る。いつもなら雑誌見たりのんびりするところだが、事情が事情だからな。のんびりなんかしていられるか。
事務所に戻ってエレベーターを降りようとしたら、眞人とかち合った。なんか慌てている眞人の様子を見て、俺は嫌な気がした。
「由貴人が…」
「ユキがどうしたっ!」
思わず眞人の肩を掴んだ。
「居なくなった」
「…なんでっ!」
「いや、俺がちょっとスタッフに呼ばれて部屋を出たんだよ。ユキ…窓際で気持ち良さ気に寝てたから、そのまんま、部屋に残して…わりぃ」
「ばっか…」
急いでその場を駆け出そうとすると、俺の腕を掴んで岬が冷静な声で眞人に問う。
「で、眞人。ユキはどこに居るかわかる?」
「な、なんか、掃除のオジサンがあの部屋に入ったって情報は掴んだ。猫を抱えて階段下りて行くのを見たってのも聞いた」
「わかった。じゃあそれぞれに分かれて探そう。見つかったら携帯で連絡して。いい?麗乃」
「ああ、わかった」
俺はエレベーターを待てずに階段を下りていった。
なんで…目を離したんだよ。あんだけ由貴人の事頼んどいたのに…
俺は眞人を責めたい気持ちで一杯になる。違う。眞人を責めるのは筋違いだ。元はといえば俺の責任だ。ユキを置いていったのも俺だし、ユキを猫にしたのも俺だから…
もし、…ユキがどっかに連れ去られて、保健所やらに連れて行かれたら…と、思うだけで身体が震えた。
「…っう…」
…呼吸困難で倒れそうになる。
階段を踏み外しそうになり、手すりにしがみついた。
駄目だ。しっかりしろ。俺が由貴人を守るんだ。
八階から一階まで一気に駆け下りて廊下を走ると、エレベーターの前で立つ岬と眞人の後姿を見つけた。
「岬!眞人!」
「あっ、麗乃!由貴人見つけたよっ!」
岬の言葉と同時に、振り向いた眞人の腕に抱かれた白い物体を俺の目が捉えた瞬間、俺は一気に気が抜けてそこにしゃがみ込んだ。安堵するとはこういう事かと身を持って体験した瞬間だった。
ふたりが立ち上がれない俺のところにやってきた。もちろん由貴人を抱えて。
「大丈夫か?麗乃」
「悪かったな」
「…いや、いい。由貴人が居たんなら何も問題ねぇし…どこに居た?」
「丁度ね、オジサンが専用口を出るところだったの。そんで、急いで返してもらったの」
「なんか…野良猫が紛れ込んでると思ったらしい」
アホかっ!なんでこんなにキレイなユキが野良なんだよっ!血統書付きでもこんな可愛い奴はいねぇし!
「まあ、良かったじゃん。ネコ…じゃねぇ、ユキ無事で」
「ほら、心配させて悪かったな」と、眞人がユキを俺に渡した。
「ユキ…」と、呼ぶとニャアと応えた。
ユキが俺に近づいて顔を舐める。
その時初めて俺は自分が泣いてた事を知った。
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「じゃあ、俺らちょっと飯買ってくっから」と、ユキを眞人に預けて岬とふたりコンビニへ走った。
「ち、ちょっと、麗乃。そんなに急がなくってもさ…別にマコちゃん、ユキを食ったりしねぇし」
「いや、悪戯ぐらいはやらかすかも知れん。なにしろ眞人だからな」
「どこまで信用してないんですかぁ?」
「…」
信用とかの問題じゃねぇし。ユキが…猫の由貴人が可愛すぎるんだよ。
あれじゃあ誰だって変な気持ちになるって…お、俺だけか?
とにかく、用事を済ませたらさっさとユキんとこに戻るから、待ってろ、ユキ。
走って五分のコンビニのドアを開ける。
「ユキが食べるもんってキャットフード?」
「待て、いくら姿が猫でも中身は人間のユキだ。猫用じゃあんまりだろ」
「じゃあ、パンとかおにぎりとか…味濃くねぇか?」
「弁当の白飯なら味はついてねぇだろ」
「牛乳は?」
「お茶ってわけにはいかねぇか?」
「さっぱり訳わかんねぇし。大体猫になったら味覚変わんのか?」
「わからんし。なんせ猫になったことはねぇ」
乳酸飲料棚から小さめの牛乳パックを手に取る。
「猫に普通の牛乳飲ませたら、腹壊すって聞いた事ある」
「マジで?」
「うん」
「どうする?」
「コレ…おなかに優しい牛乳って奴にすればいいんじゃねぇかな」
「…じゃあ、それで」
ユキと俺達の分の昼飯分を買ってコンビニを出る。いつもなら雑誌見たりのんびりするところだが、事情が事情だからな。のんびりなんかしていられるか。
事務所に戻ってエレベーターを降りようとしたら、眞人とかち合った。なんか慌てている眞人の様子を見て、俺は嫌な気がした。
「由貴人が…」
「ユキがどうしたっ!」
思わず眞人の肩を掴んだ。
「居なくなった」
「…なんでっ!」
「いや、俺がちょっとスタッフに呼ばれて部屋を出たんだよ。ユキ…窓際で気持ち良さ気に寝てたから、そのまんま、部屋に残して…わりぃ」
「ばっか…」
急いでその場を駆け出そうとすると、俺の腕を掴んで岬が冷静な声で眞人に問う。
「で、眞人。ユキはどこに居るかわかる?」
「な、なんか、掃除のオジサンがあの部屋に入ったって情報は掴んだ。猫を抱えて階段下りて行くのを見たってのも聞いた」
「わかった。じゃあそれぞれに分かれて探そう。見つかったら携帯で連絡して。いい?麗乃」
「ああ、わかった」
俺はエレベーターを待てずに階段を下りていった。
なんで…目を離したんだよ。あんだけ由貴人の事頼んどいたのに…
俺は眞人を責めたい気持ちで一杯になる。違う。眞人を責めるのは筋違いだ。元はといえば俺の責任だ。ユキを置いていったのも俺だし、ユキを猫にしたのも俺だから…
もし、…ユキがどっかに連れ去られて、保健所やらに連れて行かれたら…と、思うだけで身体が震えた。
「…っう…」
…呼吸困難で倒れそうになる。
階段を踏み外しそうになり、手すりにしがみついた。
駄目だ。しっかりしろ。俺が由貴人を守るんだ。
八階から一階まで一気に駆け下りて廊下を走ると、エレベーターの前で立つ岬と眞人の後姿を見つけた。
「岬!眞人!」
「あっ、麗乃!由貴人見つけたよっ!」
岬の言葉と同時に、振り向いた眞人の腕に抱かれた白い物体を俺の目が捉えた瞬間、俺は一気に気が抜けてそこにしゃがみ込んだ。安堵するとはこういう事かと身を持って体験した瞬間だった。
ふたりが立ち上がれない俺のところにやってきた。もちろん由貴人を抱えて。
「大丈夫か?麗乃」
「悪かったな」
「…いや、いい。由貴人が居たんなら何も問題ねぇし…どこに居た?」
「丁度ね、オジサンが専用口を出るところだったの。そんで、急いで返してもらったの」
「なんか…野良猫が紛れ込んでると思ったらしい」
アホかっ!なんでこんなにキレイなユキが野良なんだよっ!血統書付きでもこんな可愛い奴はいねぇし!
「まあ、良かったじゃん。ネコ…じゃねぇ、ユキ無事で」
「ほら、心配させて悪かったな」と、眞人がユキを俺に渡した。
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ユキが俺に近づいて顔を舐める。
その時初めて俺は自分が泣いてた事を知った。
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猫日 午前中、その六
午前中 その六
「んなこと言ったって、ホントにユキは喋るもん」
「どれ、俺に貸してみ?」横から眞人が由貴人を抱き上げて、躊躇無く頭に乗せる。
「ユキ、なんか喋ってみな?」
にゃあ
「…」
にゃあ、にゃあと続けざまに由貴人が鳴く。
いや、懸命に喋っている。しかし、肝心の眞人は腕を組んでう〜んと唸ったまま、何も言わない。
「…残念だが…俺にもニャアとしか聞こえねぇな」
「…マジで?」
「うん」
「…ユキ、おいで」両腕を差し出すと、力無くニャアと鳴いて素直に俺の中に戻ってくれた。
…なんであいつらに聞こえねぇんだろ…
俺は由貴人を頭に乗せた。
「ユキ」
にゃあ…
『うん…あいつら聞こえないみたいだね』
ほら、やっぱりユキの声、ちゃんと聞こえるじゃん。
「なんで、俺にしかわかんねぇんだろう」
『やっぱ…原因がおまえだからじゃねぇの?』
…ご尤も…
『後さ、テレパシーとかね、波長が合うとか合わないとかさ、あるんじゃねぇの?』
「波長か…まあ、考えられるけど…」
『まあ、しょうがねぇよ』
「しょうがねぇな」
「あ、あのな、麗乃?…大丈夫か?」と、岬を見れば明らかに怪訝そうに俺を見る。
「そんな顔すんなよ」
「だってさ。なあ、マコちゃん」
「まあな、いくら香月が真剣にゆってもな。簡単にはハイ、ソウデスカっては言えない」
「よく考えろよ。おまえの頭の中で作り上げた妄想話と現実を見間違えてるとか、そういうのもあんだろ?」
「そうくるか…」
そう…なのか?
頭の上のこいつが本当は由貴人じゃなくて、普通の猫で、そんで俺がユキが喋ってるって思い込んで、頭の中で現実を摩り替えてる?…そういうことなのか?
じゃあ、由貴人はどこにいんだよ。
「ユキ…」
誰に言うでもなく力無く呼んでみた。
ニャア…
『レイくんの言いたい事わかるよ。眞人達が言うのもわかるしさ。でもな、やっぱり俺はおまえの頭の上にいる猫だし、俺だってこんなになってんのが信じられないし、無茶苦茶ヘンなんだけど、現実に意識がここにあんだろ?なら、俺は猫なんだって認めるしかないし…それにちゃんとさ、おまえはわかってくれてるだろ?だから…別にいいよ』
そう言うと、由貴人は前脚で、俺の額をポンポンと軽く叩いた。
「…ん」
なんか胸が熱くなった。
すべてを甘受してそんで許してくれてるんだな。ありがと、ユキ。
「…麗乃、そいつ何て言ってんの?」
「うん…信じてもらえなくても俺がわかってりゃいいって」
「…まあ、ユキが言いそうな事ではあるけどさぁ」
「…俺はなんとなくだが、こいつが由貴人なんじゃねぇかなって思えるだよな」
「おい、眞人」
「マジで?マコ、そう思ってくれる?」
「なんかな…似てんだよ、由貴人に。ユキが猫になったらって想像すると、こんなになります!みたいなもんが現物として存在してるみたいな、な。そう思えるちゃー思えるんだがな」
腕を組んだまま左右に頭を振りながら、眞人が続ける。
「…俺も色々猫見てきたけど、こいつなんか相当人間臭いし…まあ、昔から死んだら人間は猫に化けやすいって言うしな」
「おい、由貴人を勝手に死亡させんな」
「つうか、この猫ユキ臭いんだよ」
本当に信じてくれてるのか、眞人っ!。おまえはいい奴だ!男の中の男だ!
感動しているとニャアと由貴人が頭の上で鳴いた。
「…」
「なんて言ってんだ?由貴人は」と、眞人が聞く。
「『また眞人は適当なことばっか言ってやがる』」まんま通訳した。
「ハハッ…ユキならそう言うに違いねぇ」と、岬が笑った。
「しかたねぇな。、まあ、こんなんなったなら早くユキが人間に戻る策でも考えようよ。どっちにしても猫のままじゃバンドも活動できませんから」
殊更におどけながら言う岬が、どこまでこの事実を信じているか分からなかったが、理解しようとしてくれてる思いは嫌でも伝わったので、俺は友情の深さに改めて感謝しつつ、手を合わせて頭を深々と下げた。
…ンニャア!
予測できなかったのか、頭の上の由貴人が床に転げ落ちた。
……ゴメン。忘れてた…
床に転がって両足をばたつかせている由貴人を見て、岬がため息を吐きながらひと言。
「こいつ、やっぱユキだわ」
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にゃあ
「…」
にゃあ、にゃあと続けざまに由貴人が鳴く。
いや、懸命に喋っている。しかし、肝心の眞人は腕を組んでう〜んと唸ったまま、何も言わない。
「…残念だが…俺にもニャアとしか聞こえねぇな」
「…マジで?」
「うん」
「…ユキ、おいで」両腕を差し出すと、力無くニャアと鳴いて素直に俺の中に戻ってくれた。
…なんであいつらに聞こえねぇんだろ…
俺は由貴人を頭に乗せた。
「ユキ」
にゃあ…
『うん…あいつら聞こえないみたいだね』
ほら、やっぱりユキの声、ちゃんと聞こえるじゃん。
「なんで、俺にしかわかんねぇんだろう」
『やっぱ…原因がおまえだからじゃねぇの?』
…ご尤も…
『後さ、テレパシーとかね、波長が合うとか合わないとかさ、あるんじゃねぇの?』
「波長か…まあ、考えられるけど…」
『まあ、しょうがねぇよ』
「しょうがねぇな」
「あ、あのな、麗乃?…大丈夫か?」と、岬を見れば明らかに怪訝そうに俺を見る。
「そんな顔すんなよ」
「だってさ。なあ、マコちゃん」
「まあな、いくら香月が真剣にゆってもな。簡単にはハイ、ソウデスカっては言えない」
「よく考えろよ。おまえの頭の中で作り上げた妄想話と現実を見間違えてるとか、そういうのもあんだろ?」
「そうくるか…」
そう…なのか?
頭の上のこいつが本当は由貴人じゃなくて、普通の猫で、そんで俺がユキが喋ってるって思い込んで、頭の中で現実を摩り替えてる?…そういうことなのか?
じゃあ、由貴人はどこにいんだよ。
「ユキ…」
誰に言うでもなく力無く呼んでみた。
ニャア…
『レイくんの言いたい事わかるよ。眞人達が言うのもわかるしさ。でもな、やっぱり俺はおまえの頭の上にいる猫だし、俺だってこんなになってんのが信じられないし、無茶苦茶ヘンなんだけど、現実に意識がここにあんだろ?なら、俺は猫なんだって認めるしかないし…それにちゃんとさ、おまえはわかってくれてるだろ?だから…別にいいよ』
そう言うと、由貴人は前脚で、俺の額をポンポンと軽く叩いた。
「…ん」
なんか胸が熱くなった。
すべてを甘受してそんで許してくれてるんだな。ありがと、ユキ。
「…麗乃、そいつ何て言ってんの?」
「うん…信じてもらえなくても俺がわかってりゃいいって」
「…まあ、ユキが言いそうな事ではあるけどさぁ」
「…俺はなんとなくだが、こいつが由貴人なんじゃねぇかなって思えるだよな」
「おい、眞人」
「マジで?マコ、そう思ってくれる?」
「なんかな…似てんだよ、由貴人に。ユキが猫になったらって想像すると、こんなになります!みたいなもんが現物として存在してるみたいな、な。そう思えるちゃー思えるんだがな」
腕を組んだまま左右に頭を振りながら、眞人が続ける。
「…俺も色々猫見てきたけど、こいつなんか相当人間臭いし…まあ、昔から死んだら人間は猫に化けやすいって言うしな」
「おい、由貴人を勝手に死亡させんな」
「つうか、この猫ユキ臭いんだよ」
本当に信じてくれてるのか、眞人っ!。おまえはいい奴だ!男の中の男だ!
感動しているとニャアと由貴人が頭の上で鳴いた。
「…」
「なんて言ってんだ?由貴人は」と、眞人が聞く。
「『また眞人は適当なことばっか言ってやがる』」まんま通訳した。
「ハハッ…ユキならそう言うに違いねぇ」と、岬が笑った。
「しかたねぇな。、まあ、こんなんなったなら早くユキが人間に戻る策でも考えようよ。どっちにしても猫のままじゃバンドも活動できませんから」
殊更におどけながら言う岬が、どこまでこの事実を信じているか分からなかったが、理解しようとしてくれてる思いは嫌でも伝わったので、俺は友情の深さに改めて感謝しつつ、手を合わせて頭を深々と下げた。
…ンニャア!
予測できなかったのか、頭の上の由貴人が床に転げ落ちた。
……ゴメン。忘れてた…
床に転がって両足をばたつかせている由貴人を見て、岬がため息を吐きながらひと言。
「こいつ、やっぱユキだわ」
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猫日 午前中、その五
午前中 その五
「レイくん、ここに居たのかよぉ〜」
三十分ほど経って岬と眞人が俺を見つけてやって来た。
「ゴメン、ちょっと一服やってた。ミーティング終った?」
「うん、大丈夫だよ。スケジュール調整が主だったし…それよりさ」と、テーブルに横たわって頭をこっちに向けて俺達を見てる猫のユキを見て岬が口を開ける。
「この猫なんなの?」
「…人から預かった…」
「誰?」
「…お、まえの知らない奴」
「…嘘付くなよぉ。別に文句たれる気ないから、ホントの事言えって」
…ホントの事言って、おまえ信じるのかよ。とも思ったが、こいつらには真実を話しておいた方がいいだろうと思い口を開く。
「…あの、な…」と、言いかけたところでガラスの向こうから人が入ってくるのが見えて、俺は由貴人を抱き上げた。
「話、ちょっと長くなるから、別の部屋行こう」
ふたりは黙って付いて来た。
空室を確認して会議室に入る。
「鍵掛けて」
「えっ?なんかすげぇ話?」
「ちょっと座って」
「…おい、何が始まるんだ?」
「…おまえらを信用して話すから、あの、驚かないで聞いてくれな」
「…なによ、気持ちワル…」
「どうしたんだ?麗乃。なんか悪いもんでも食ったのか?」
「実は…ユキが…」
「そういやユキはまだ来てねぇけど、また風邪かなんかか?」
「だから、俺の話聞けよっ!」
「…はい」
「あのな、こいつが由貴人なのっ!」
俺は腕に抱くユキ猫を岬達に向けながら、二人の顔を見た。
…完全に呆れている。
わかる…
にゃあとユキが鳴いた。
「…あの、こいつって言われても…コレ猫でしょ?」
「だっから、朝起きたら、ユキが…猫になってたんだってっ!」
「…」
「…」
「…」
「おまえ…仕事のし過ぎで…病院…い、家帰った方が良くねぇか?」
「つうかさぁ。もうちょっと真実味のある嘘つけよ。やりすぎていくらユキが寝込んでるからって」
「やってねぇよっ!」
「…じゃあなんで、ユキ来ないんだよ。昨日おまえユキと会ってたんだろ?」
「だから、こいつがユキだっつって言ってんじゃねぇかよ」
「…いくらおまえが真剣に言ってもな…あんまり非現実的だと、頭おかしいんじゃないかってマジで疑われるから、な。もう、いいんじゃねぇか?」
「いや、あのね、ホントの事で…はぁ…」
「…」
にゃあ
「……マジで?」
「は?」
にゃあ
「スマン」
「…何で?」
「知らん」
「うそ」
「いや、マジで」
「この猫がぁ?」
「そう…ユキ」
にゃあ
「…はぁ〜?」
「いやいやいや…困るだろ、それは」
「非常に困ってる」
「…」
「ふ〜む…似てると言えば…似てる…か?」
「ユ、ユキ?」
にゃあ、と、由貴人が岬に近づいて行く。
「ユキ?」
にゃあ
「そうだよって言ってる」
「う、うっそ!」
にゃあ
「おまえ…わかるの?この猫が言ってる事」
「猫じゃねぇ、由貴人だ。ついでに言うと今のは嘘だ」
「だっ!…お、おまえこんな時にふざけんなっ!」
「悪い。おまえの顔が面白かった。つうか、由貴人を頭に乗せたら、話せる」
「あ、たま?」
「うん、ユキの声で喋るから、やってみ?」
「…マジかよ…」
目の前に居る由貴人をおそるおそる抱きながら、岬が自分の頭に乗せる。
ブッ…笑える。
猫を頭に乗せただけでこうも笑える形態になるんだ。
くっくっと笑いを堪えていると、岬が露骨に不機嫌な顔をして俺を睨んでくる。
頭上の由貴人はにゃあにゃあと鳴いている。
「ふざけんなよ、麗乃…なんも聞こえねぇじゃねぇかっ!」
「…なんか話せば?」
「…ユキ?」
にゃあ
「…俺、岬だよ?おまえ…本当にユキなの?…って、わかるかよっ!…なっ!い、いってっ!」
由貴人の前脚が岬の額を軽く引っ掻いた。
「な、何すんだよっ!」
頭を振って振り落とそうとする岬より一瞬早く、ユキが頭上からテーブルに飛び降りた。
怒る岬を尻目に由貴人は走って俺の胸に飛びつく。
「な、なんだよ、こいつ」
「馬鹿にしてる態度が気にくわねぇんだよ、ユキは」
「バカにって…つーか、そいつニャアしかゆってねぇじゃんっ!どこがユキの声で喋るだと?いい加減なことゆうなよっ!」
「…ウソ」
今度は俺が驚く番だった。
「何が?」
「おまえ本当に…ユキの声聞こえなかったの?」
「聞こえるかよ。どー見たってそいつは猫だろ?猫が喋るかよ。大体こいつがユキとかゆうおまえがおかしい、麗乃、ホントに頭大丈夫?」
「…」
俺の頭の世話まで要らぬ心配だが、マジで由貴人の声が聞こえないって…どういう事なんだ?
「岬、本当に聞こえなかったのか?」
「…聞こえねーよ」
真剣な顔だったので、信じる事にした。
で、今度は抱いているユキに目を移してみると、ユキは俺を見て軽く首を傾ける。
…何で?俺には聞こえるのに、岬にはわかんねぇの?
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「レイくん、ここに居たのかよぉ〜」
三十分ほど経って岬と眞人が俺を見つけてやって来た。
「ゴメン、ちょっと一服やってた。ミーティング終った?」
「うん、大丈夫だよ。スケジュール調整が主だったし…それよりさ」と、テーブルに横たわって頭をこっちに向けて俺達を見てる猫のユキを見て岬が口を開ける。
「この猫なんなの?」
「…人から預かった…」
「誰?」
「…お、まえの知らない奴」
「…嘘付くなよぉ。別に文句たれる気ないから、ホントの事言えって」
…ホントの事言って、おまえ信じるのかよ。とも思ったが、こいつらには真実を話しておいた方がいいだろうと思い口を開く。
「…あの、な…」と、言いかけたところでガラスの向こうから人が入ってくるのが見えて、俺は由貴人を抱き上げた。
「話、ちょっと長くなるから、別の部屋行こう」
ふたりは黙って付いて来た。
空室を確認して会議室に入る。
「鍵掛けて」
「えっ?なんかすげぇ話?」
「ちょっと座って」
「…おい、何が始まるんだ?」
「…おまえらを信用して話すから、あの、驚かないで聞いてくれな」
「…なによ、気持ちワル…」
「どうしたんだ?麗乃。なんか悪いもんでも食ったのか?」
「実は…ユキが…」
「そういやユキはまだ来てねぇけど、また風邪かなんかか?」
「だから、俺の話聞けよっ!」
「…はい」
「あのな、こいつが由貴人なのっ!」
俺は腕に抱くユキ猫を岬達に向けながら、二人の顔を見た。
…完全に呆れている。
わかる…
にゃあとユキが鳴いた。
「…あの、こいつって言われても…コレ猫でしょ?」
「だっから、朝起きたら、ユキが…猫になってたんだってっ!」
「…」
「…」
「…」
「おまえ…仕事のし過ぎで…病院…い、家帰った方が良くねぇか?」
「つうかさぁ。もうちょっと真実味のある嘘つけよ。やりすぎていくらユキが寝込んでるからって」
「やってねぇよっ!」
「…じゃあなんで、ユキ来ないんだよ。昨日おまえユキと会ってたんだろ?」
「だから、こいつがユキだっつって言ってんじゃねぇかよ」
「…いくらおまえが真剣に言ってもな…あんまり非現実的だと、頭おかしいんじゃないかってマジで疑われるから、な。もう、いいんじゃねぇか?」
「いや、あのね、ホントの事で…はぁ…」
「…」
にゃあ
「……マジで?」
「は?」
にゃあ
「スマン」
「…何で?」
「知らん」
「うそ」
「いや、マジで」
「この猫がぁ?」
「そう…ユキ」
にゃあ
「…はぁ〜?」
「いやいやいや…困るだろ、それは」
「非常に困ってる」
「…」
「ふ〜む…似てると言えば…似てる…か?」
「ユ、ユキ?」
にゃあ、と、由貴人が岬に近づいて行く。
「ユキ?」
にゃあ
「そうだよって言ってる」
「う、うっそ!」
にゃあ
「おまえ…わかるの?この猫が言ってる事」
「猫じゃねぇ、由貴人だ。ついでに言うと今のは嘘だ」
「だっ!…お、おまえこんな時にふざけんなっ!」
「悪い。おまえの顔が面白かった。つうか、由貴人を頭に乗せたら、話せる」
「あ、たま?」
「うん、ユキの声で喋るから、やってみ?」
「…マジかよ…」
目の前に居る由貴人をおそるおそる抱きながら、岬が自分の頭に乗せる。
ブッ…笑える。
猫を頭に乗せただけでこうも笑える形態になるんだ。
くっくっと笑いを堪えていると、岬が露骨に不機嫌な顔をして俺を睨んでくる。
頭上の由貴人はにゃあにゃあと鳴いている。
「ふざけんなよ、麗乃…なんも聞こえねぇじゃねぇかっ!」
「…なんか話せば?」
「…ユキ?」
にゃあ
「…俺、岬だよ?おまえ…本当にユキなの?…って、わかるかよっ!…なっ!い、いってっ!」
由貴人の前脚が岬の額を軽く引っ掻いた。
「な、何すんだよっ!」
頭を振って振り落とそうとする岬より一瞬早く、ユキが頭上からテーブルに飛び降りた。
怒る岬を尻目に由貴人は走って俺の胸に飛びつく。
「な、なんだよ、こいつ」
「馬鹿にしてる態度が気にくわねぇんだよ、ユキは」
「バカにって…つーか、そいつニャアしかゆってねぇじゃんっ!どこがユキの声で喋るだと?いい加減なことゆうなよっ!」
「…ウソ」
今度は俺が驚く番だった。
「何が?」
「おまえ本当に…ユキの声聞こえなかったの?」
「聞こえるかよ。どー見たってそいつは猫だろ?猫が喋るかよ。大体こいつがユキとかゆうおまえがおかしい、麗乃、ホントに頭大丈夫?」
「…」
俺の頭の世話まで要らぬ心配だが、マジで由貴人の声が聞こえないって…どういう事なんだ?
「岬、本当に聞こえなかったのか?」
「…聞こえねーよ」
真剣な顔だったので、信じる事にした。
で、今度は抱いているユキに目を移してみると、ユキは俺を見て軽く首を傾ける。
…何で?俺には聞こえるのに、岬にはわかんねぇの?
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猫日 午前中、その四
午前中、その四
由貴人を抱いたまま、表通りに出て手を挙げてタクシーを止める。
後ろの座席に乗るなり運転手がユキ…猫を見て「猫かぁ?」と嫌な顔。おまけに舌打ちまでされた。
「大人しいですから、大丈夫です」と、頭を下げると、渋々と発進した。
由貴人を見ると納得いかない顔をしている。心なしか口唇尖ってるし…
猫であっても中身は全く変わってない事に今更ながら感心しつつも自然と顔は綻んでしまう。
そのまま抱っこしてると、話したいのか頭に乗りたがるけど、さすがにココじゃ変な人に思われるのがオチだろう。後でヘンな噂立てられても困る。
小声で「後でね」って言って、でっかい目のすぐ上んとこにキスしたら、ニャーと言って叩かれた。
…一応公衆ではあったな。ゴメン。
事務所のビルに入ると、誰彼もが俺を見る。
…ってゆーか、俺の腕の中の由貴人を見る。
ユキを見ては一往に、皆微笑んだり、手を振ったり、「かわいい」と、声を上げたりしてる。
すげぇな、猫一匹でこんなにも空気が和むんだ。
戦争なんぞしてる状況でも、猫被っていたら、銃なんか向けなくなるんじゃないのか?
なんて、くだらねぇ事まで考えちまったじゃねぇか。
顔見知りの事務所の女の子が寄って来て「香月君、どしたの?かわいい猫ちゃん抱っこして」って、抱いてる由貴人の頭を撫でる。
「うん、ちょっとね」
「うわっ、近くで見ると…ホントすっごくかわいいよね。ちょっと抱っこさせて」
「えっ?」
どうしようと思ったが、腕の中のユキがニャ〜って鳴いて俺にしっかりとしがみついた。
「あら、猫ちゃん嫌がってる…」
「ごめん。あんまり人に懐かないみたいなんで」
「…香月君、なんか嬉しそうだよ」
「そう…かな」
「意外と…束縛するタイプと見た。恋人も絶対人に見せたくないタイプでしょ?」
「そんなことはないと、思うケド…」
「うーむ…そうやってるとさ、その猫恋人みたいよ、香月君の」と、意味深な顔をして笑う。
「…はあ」
「じゃあね」と、彼女には離れていった。
…恋人だって。束縛してるんだって…鋭いな、女って…怖いな、女って…
『おまえが露骨な顔してんだよ』と、由貴人の声が聞こえた気がした。
案の定ユキが呆れ顔で俺を見上げていた。
「すいません。遅れました…」
三十分以上も遅れた事を詫びながら会議室のドアを開けた。
「…」
思ったよりも大人数。二十人近くの人達が一斉に俺の方を見た。
「おっそいよっ!レイくん」
一番奥に座っている岬が大袈裟に手を振る。
「ゴメン、ちょっとゴタゴタしてて」
「えっ、何?その猫」
「あ、これは…」
「つーか、ユキがまだ来てねぇんだけど、レイくん、知らない?」
「えっ…と…」
「いっから、早くこっち来いよ」
「う、うん」
何も言わせない気か、こいつは。と、思いながら岬が呼ぶ方に行こうと思ったら、「ハクション」と、ひとりのスタッフがくしゃみをした。そして、立て続けに何回か繰り返す。
俺は立ち止まってその人の方を見る。
「…すいません。俺、猫アレルギーなんです…」
「えっ!…ああ、す、すいません…ごめんなさい」
「香月君、ちょっとその猫、誰かに見ててもらったらどうかな?」
「はい、そうします」
俺はその猫アレルギーの人の止まらぬくしゃみを耳にしながら、由貴人を抱いたまま即効会議室から出た。
マジか、猫アレルギーって…まあ、そあいう人も居るだろうけれど。
しっかし、どうするかね。誰かにあずけるったって、そんな事できるわけねぇだろ、大事なユキを。
仕方ないのでガラス張りの喫煙室へ向かう。
「はぁ〜」
由貴人を喫煙用のテーブルに載せて一服する。
「疲れた〜」まだ何もしてないけどな。
にゃー。ユキが俺を見て鳴く。
「ユキも疲れた?」
にゃあ…
「ん?」
由貴人は伸びをして手招きする。
抱っこ?…ああ、話したいって事か。
相互理解の為、ユキを抱っこして頭の上に乗せてやった。
…一応周りに人が居ないか確認した上で。
『あの人大丈夫だったかなぁ』
「うん…」
『初めて見る人だった』
「新しいスタッフの人だろうね」
『若かったし…悪い事したね』
「別に、ユキが悪いわけじゃないし…おまえが気に病む事じゃねぇよ」
『…行かないの?』
「ん」
『俺ここで待ってるから、麗乃は行きなよ』
「いい。話は後で岬達に聞くから」
『…』
由貴人はそのまま黙りこくって、俺の頭上から飛び降りた。
…おまえの言いたい事判るけど、俺の気持ちも考えてくれ。
おまえをひとりにして置いてなんか行ける訳ねえだろうが。
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由貴人を抱いたまま、表通りに出て手を挙げてタクシーを止める。
後ろの座席に乗るなり運転手がユキ…猫を見て「猫かぁ?」と嫌な顔。おまけに舌打ちまでされた。
「大人しいですから、大丈夫です」と、頭を下げると、渋々と発進した。
由貴人を見ると納得いかない顔をしている。心なしか口唇尖ってるし…
猫であっても中身は全く変わってない事に今更ながら感心しつつも自然と顔は綻んでしまう。
そのまま抱っこしてると、話したいのか頭に乗りたがるけど、さすがにココじゃ変な人に思われるのがオチだろう。後でヘンな噂立てられても困る。
小声で「後でね」って言って、でっかい目のすぐ上んとこにキスしたら、ニャーと言って叩かれた。
…一応公衆ではあったな。ゴメン。
事務所のビルに入ると、誰彼もが俺を見る。
…ってゆーか、俺の腕の中の由貴人を見る。
ユキを見ては一往に、皆微笑んだり、手を振ったり、「かわいい」と、声を上げたりしてる。
すげぇな、猫一匹でこんなにも空気が和むんだ。
戦争なんぞしてる状況でも、猫被っていたら、銃なんか向けなくなるんじゃないのか?
なんて、くだらねぇ事まで考えちまったじゃねぇか。
顔見知りの事務所の女の子が寄って来て「香月君、どしたの?かわいい猫ちゃん抱っこして」って、抱いてる由貴人の頭を撫でる。
「うん、ちょっとね」
「うわっ、近くで見ると…ホントすっごくかわいいよね。ちょっと抱っこさせて」
「えっ?」
どうしようと思ったが、腕の中のユキがニャ〜って鳴いて俺にしっかりとしがみついた。
「あら、猫ちゃん嫌がってる…」
「ごめん。あんまり人に懐かないみたいなんで」
「…香月君、なんか嬉しそうだよ」
「そう…かな」
「意外と…束縛するタイプと見た。恋人も絶対人に見せたくないタイプでしょ?」
「そんなことはないと、思うケド…」
「うーむ…そうやってるとさ、その猫恋人みたいよ、香月君の」と、意味深な顔をして笑う。
「…はあ」
「じゃあね」と、彼女には離れていった。
…恋人だって。束縛してるんだって…鋭いな、女って…怖いな、女って…
『おまえが露骨な顔してんだよ』と、由貴人の声が聞こえた気がした。
案の定ユキが呆れ顔で俺を見上げていた。
「すいません。遅れました…」
三十分以上も遅れた事を詫びながら会議室のドアを開けた。
「…」
思ったよりも大人数。二十人近くの人達が一斉に俺の方を見た。
「おっそいよっ!レイくん」
一番奥に座っている岬が大袈裟に手を振る。
「ゴメン、ちょっとゴタゴタしてて」
「えっ、何?その猫」
「あ、これは…」
「つーか、ユキがまだ来てねぇんだけど、レイくん、知らない?」
「えっ…と…」
「いっから、早くこっち来いよ」
「う、うん」
何も言わせない気か、こいつは。と、思いながら岬が呼ぶ方に行こうと思ったら、「ハクション」と、ひとりのスタッフがくしゃみをした。そして、立て続けに何回か繰り返す。
俺は立ち止まってその人の方を見る。
「…すいません。俺、猫アレルギーなんです…」
「えっ!…ああ、す、すいません…ごめんなさい」
「香月君、ちょっとその猫、誰かに見ててもらったらどうかな?」
「はい、そうします」
俺はその猫アレルギーの人の止まらぬくしゃみを耳にしながら、由貴人を抱いたまま即効会議室から出た。
マジか、猫アレルギーって…まあ、そあいう人も居るだろうけれど。
しっかし、どうするかね。誰かにあずけるったって、そんな事できるわけねぇだろ、大事なユキを。
仕方ないのでガラス張りの喫煙室へ向かう。
「はぁ〜」
由貴人を喫煙用のテーブルに載せて一服する。
「疲れた〜」まだ何もしてないけどな。
にゃー。ユキが俺を見て鳴く。
「ユキも疲れた?」
にゃあ…
「ん?」
由貴人は伸びをして手招きする。
抱っこ?…ああ、話したいって事か。
相互理解の為、ユキを抱っこして頭の上に乗せてやった。
…一応周りに人が居ないか確認した上で。
『あの人大丈夫だったかなぁ』
「うん…」
『初めて見る人だった』
「新しいスタッフの人だろうね」
『若かったし…悪い事したね』
「別に、ユキが悪いわけじゃないし…おまえが気に病む事じゃねぇよ」
『…行かないの?』
「ん」
『俺ここで待ってるから、麗乃は行きなよ』
「いい。話は後で岬達に聞くから」
『…』
由貴人はそのまま黙りこくって、俺の頭上から飛び降りた。
…おまえの言いたい事判るけど、俺の気持ちも考えてくれ。
おまえをひとりにして置いてなんか行ける訳ねえだろうが。
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