aqua green noon

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2009/08/10

あとがきのようなもの

「メトネ日記第二章」は一応、恋人同士になったところで一段落しましたね。良かった良かった(´∀`)

メトネというキャラは、安易に生まれたキャラだ。
もともとこの話はレイとアルスの話を土台にしているから、世界観は決まっていた。
20年前自分が書いた「聖王伝」ではエイクアルドのレイ・ラシード聖王の下、地上は統一されたところで終わっている。

去年、ちょうど今頃からブログで始めた「みんなで作るゲームのオリキャラ」で、100人のキャラを作るのを目指し、がんがんやってきた。

私は物語にプロットは作らない。世界観は作る。だけどキャラを生み出したら、後はそのキャラを成長させるだけ。後はキャラが勝手に動く方式を取る。
どうせ終わりを決めていても、キャラがごねたら、結果は違ってくるもんだ。

はい、地図、どぞ( ´・ω・`)_且~~ イカガ?

tizu


この話も最初はエイクアルドに滅ぼされるはずのラサイマ公国に、エーギルと言う神官を生んだ時に、このキャラで話を作ろうと思った。
エーギルは力は無いが、非常に繊細で魅力的なキャラだ。そしてエーギルに魔者のユエ・イェンリーをおいた時点で、この国はエイクアルドの脅威を逃れた。
魔者のいる国を相手にするほど、エイクアルドも馬鹿じゃない。

エーギルは全盲のため、公主にはなれなかった。では、公主の座は誰が座る?と、いうわけで、弟、メトネ・レヴィスが生まれた。
この兄弟はホンワカ兄弟で、誰かに支えてもらわなければならない。

ユエが出たら、リュウ・エリアードを出さなければならない。

昔書いた物語のふたりだからだ。
リュウは高校の頃からの付き合いで、自分の分身に近い。(一番の古株はサイアート)
本当はこいつをオリキャラに出すのは躊躇した。
想いが強すぎたから。
リュウは人間である時は、徹底的にドMでやられっぱなしのスナイパーで、ユエに奴隷扱いされている。
それが、魔界に来た途端、今までと打って変わって、ドSに変わってしまった。
恋人だったユエをエーギルに取られた腹いせに、メトネを奴隷にした。

メトネはこの段階で自分では全く動いていないし、どんな性格かも把握していない。
だが、「メトネ日記」と題をうっているんだから、喋ってもらわなきゃならない。
「はい、ちょっと、君ってどんな感じなのかな〜?」と優しく聞くと、めそめそ泣きじゃくる始末。
自分にはない性格。しかし、こういうキャラをリュウは面白がるかも知れない。

そう思って、書き始めたのがこの話。
この後のふたりは、メトネが死ぬまで蜜月を延々と味わうわけだが、それを描いても「おいおい、いいかげんにしろ…ヽ(`Д´)ノ」となるので、遠慮しいしい描こうと思う。

さて、この物語は一段落して次は「ユーリとエルミザード」である。
この話はエイクアルドの首都、イルミナスの士官学院で話を進める。
もちろんBLなのだが、どうも色っぽくはならない気がしている。
頑張って濡れ場シーンでも書こうとは思っているが。

リンミナの方は、慧一兄ちゃんがまだ終わりそうも無い。
というのも、これも最初の予定と大幅に違ってきて、慧一が勝手に動き出したからだ。嶌谷さんが関わると、色々と状況が変わって、話が長くなる。
この後、父親との話。引越しや学校を決めたり、紫乃と再会したりで、彼は忙しい。

紫乃といえば、この人も何とかしたい。たぶん幸せな方向へ結び付けようと思う。

思うにキャラたちは、ちゃんと自分の幸せの為に、自分で動き回るように出来ている。
どんなに葛藤したり苦しんでも自分で結果を出している。
私はそれを掬い上げ、文字にしているだけだと思うのだ。

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さて、これはメトネ日記の次の章の表紙のラフである。
どんな話になるのかは、彼らの行動と私のやる気にかかっている。
そのお話はまたいずれ…


「彼方の海より…」10へ



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2009/08/10

「彼方の海より…」  10

10.
部屋に戻ったリュウは、抱き上げていた私をゆっくりとベッドに降ろしてくれた。
裸のままでは恥ずかしくて、何か着るものをと手を伸ばすが、リュウはそれをさせなかった。
ベッドの端に腰を下ろし、私の腕を取る。

「辛かったか?」
「…はい」
「怒っているのか?オセに抱かせた事」
「…いえ、リュウは私の主人なのだから、私はあなたの命には従わなくてはならないのだと思っています」
「おまえは俺を憎んでいると思っていた。だから、これ以上俺の傍に仕えるのはつらかろうと思ったんだ。オセは人間好きだからな。ああ見えて情は厚い。俺よりもメトネには居心地がいいだろうとな」
リュウが私を思ってオセにやろうとしたのは、結局のところ、私に飽きたという意味ではないだろうか…

「私はもうリュウの傍には置いてもらえないのですか?…私に飽きてしまった?だからオセに私をあてがうの?」
泣きたくないが涙が溢れてしまう。リュウは溢れる涙を指で抑えた。
捨てる身ならばそんなに優しくしないで欲しい。
「…おまえはどうされたい?」
「私は…リュウの傍に居たい」
嘘はつけなかった。リュウの手の平の温かさが、何も纏うなと言っているから。
「ではそうしよう」
リュウの言葉に私は驚いて、リュウを見上げた。
「え?…だって私は役立たずなのでしょう?」
「なんだ、さっきの言葉を気にしていたのか?他の奴に役に立たなくてもいいさ。俺に役に立っていりゃ、それでいい。だろ?メトネは俺好みの身体だからな」
「嘘だ…だって…」あんなに酷い目に合わせて、私をいたぶって…

「俺のつけた傷はまだ残っているな。痛いか?」
「…はい」
リュウは私の両手首を持ち、赤い傷跡を見つめた。
そして、口で呪文を唱えながら唇でそこへ触れた。赤い傷跡は跡形も無く消え去った。同時にじりじりとした痛みも無くなっていく。
「メトネはかわいいからな、つい本気で苛めたくなるんだよ」
リュウは口端だけで笑って私を見る。
可愛いと言われて、私は顔から火が出るように熱くなった。
いい歳の男が、かわいいといわれて嬉しくなってしまうのが自分でもどうしてなのかわからない。でもリュウから言われると宝物みたいに思えて胸が鳴るのだ。

「おまえは俺に心を許していないと思っていた。まあ、おまえの大切なものをすべて奪ったのだから当たり前だ。それなのに、俺はおまえが欲しくて堪らなくなる…俺がおまえみたいなよわっちょろい人間に本気になるのが自分でも不思議で仕方ないがな。おまえのどこが俺を惹きつけるのか、俺にもわからないでいやがる…本当にメトネは変わり者だな」
「…」
夢見たいなリュウの言葉。
私のことを言っているとは思えなかった。
リュウは私をからかっているのだろうか。

リュウは言葉を紡ぎながらも、私の傷ついた身体をひとつひとつ癒していく。
傷ついた心も同じように癒されていくようだ。

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「俺を好きか?メトネ」
「…はい。心から」
「愛していると誓うか?」
「私の命に賭けてリュウを愛していると誓う」
「では、メトネ・レヴィスは今よりリュウ・エリアードの最愛の恋人とする。この誓いはどちらかが生を全うするまで破られぬものだ。
そして、リュウ・エリアードの誓いは、誰にも破る事はできない。メトネにもな。
おまえが俺を裏切る事があったら、躊躇無く殺す。いいな」
「はい。リュウにならいつだって殺されても本望です。だけど、私を置いて死んだりしないで下さい」
「…はは…おまえ、俺にそれを言うのか?俺は心臓に剣を突き刺されても死なない破格の身体なんだよ。こればかりは自分でもどうしようもない…産んだやつを恨んでも今更仕方のない話だしな…」
そういうとリュウは眉を顰め、苦い笑いを浮かべた。

「これも運命だと思っている。そしてメトネを選んだのも俺の運命だ。人間は4,50年の寿命しかない。どう転んでもおまえは俺より早く死ぬ。だが生きている限りは俺がおまえを守ってやる。メトネが年老いて死ぬまでかわいがってやるよ」
「老人の私はみすぼらしくて、きっとリュウは見捨てると思うけど…」
「メトネはじじいになってもかわいいさ。髭を生やしたメトネじいさんと暮すのもまた楽しかろう」
「…ひどい…私は歳をとっても髭なんか生やさない」
口では責めても、情が伝わってくる。
私は嬉しくて幸せすぎて、このまま死んでもいいと思った。

「魔者は記憶を忘れることはない。良いことも嫌な事もすべてこの頭の中に残る。だから、メトネと過ごす時間は良い思い出ばかりにしたい。…メトネが死んでも、おまえの記憶は俺の一番大事な場所に刻み込んで置きたいからな」
「はい、リュウ。私はあなたの傍にいて、あなたを幸せにしたいと願っている。私は息を引き取るその時まで、あなたの傍に居ると誓います」
「では、誓いの証にこれをやろう」
リュウは左薬指の青い宝石の嵌め込まれた指輪を私に差し出した。
私はそれをじっと見つめたが、手を伸ばさなかった。

「これでは不服か?」リュウは訝しげに私を睨む。
「違う…私には似つかわしくない物です。それに…リュウがいれば私は何もいらないもの」
「…人間というのもはエゴばかりの強欲な者ばかりだと知っていたが、メトネは物には執着しないんだな。いや、おまえはそれ以上の欲深い者かもしれない。俺を捕まえて、貢がせているのだからな」
「貢がせてなんかいない。リュウは意地悪だ!」
「ムキになるところもかわいく思えるんじゃ、俺の方が分が悪いな。では、これを与えよう」と、言うとリュウは腰に差した短剣を取り出し、自分の手首を少し切った。
リュウの赤い血が指輪の上に零れ、青い宝石が血と混じり、美しい紫色になる。
リュウはその宝石だけを抜き出して、私の心臓の近くに当てた。
片方の指を唇に当て、暫く詠唱を唱えると、宝石は消え、私の胸に小さな百合の花を刻み込んだ。
「これでいい。離れていてもメトネが俺を強く念じれば、俺はすぐにでも駆けつける。おまえを危険な奴からも守れる。おまえに触れたものはすべからく俺がぶっ殺すからな」
リュウの言葉は嬉しくもあり、恐ろしくもあり、なんだか奇妙な感じがして複雑な顔になる。

「あの…リュウの恋人になるということは凄いことなの?」
私は胸に刻まれた紫の百合を指でなぞりながら、問うた。
「メトネは本当にアホだなあ〜俺の恋人になるってことは、この世の誰よりも幸せになるってことなんだぜ。わかったかい?俺のかわいい子」
本当に?と問い返す前に、リュウは私を抱きしめ、口唇を奪った。
そのままベッドに押し付けられた私は、リュウを受け入れる。
私は抵抗などしない。もっとリュウを感じたい。もっとリュウを喜ばせてあげたい。
それが私の一番の望みだからだ。

私の一生がいかに短かろうが、そんな事はかまわない。
ただ、リュウと共に生きる事。
それが、私の望み。


    メトネ日記 第二章 完



                                       text by saiart


■「彼方の海より…」  リュウ・エリアードとメトネのお話はここから プロローグ
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2009/08/08

「彼方の海より…」  9 

9.
「こっちへおいで」
ぼーっとしていたら、オセ・ゲーティアに腕を取られ、無理矢理に隣に座らされた。
何故か肩を捕まえられている。まだ身体のあちこちが痛む感じがするので、腕を引かれたり肩を抱かれたり…とにかく触られるのに敏感になって、思わず顔を顰めた。
「なんだよ、愛想ないなあ〜王様だった人間は魔者の色子になってもプライドが高いと見える」
「そ、んなわけじゃありません。ちょっと…具合が…」
私は向かいのリュウの顔色を伺いながら、なんとかオセ・ゲーティアの腕から逃げようと腰をずらす。
「じゃあ、俺の杯ぐらい受けろよ」
「え?」
顎を捕まえられオセの顔の正面に向けさせられると、瞬時に口を合わせられた。
驚いたが抵抗する間も無く、合わせた口から強い酒が流し込まれる。
「うう…」
熱い液体が喉へ流れ込む。

口唇をやっとの事で離し、あまりに急なことにむせ返っていると、オセはなんだか呆れたように笑う。
「なんだよ、やたらとウブじゃないか?…じゃあ、あっちの方はどうなんだ。試してみてもいいか?リュウ」
「…どうぞ」
なんの話なのか、全くわからなかった。
試すって…どういうこと?
答えを考える間も無く、オセは私の着ている上着の帯を取り、驚くほど簡単に服を脱がせた。
私は何度も目を瞬かせた。
なに?…何をしようとしているんだろう?

「そんなぽけっとしたかわいい顔するなよ。どうして人間ってのはこうも嗜虐的感覚を高ぶらせるんだろうね〜。まったくどいつもこいつも…哀れといえば哀れだが…」
下着に手がかかり、さすがにどういう行為に望んでいるのか理解した。
私は青ざめ、「離して下さい!」と叫んだ。
…全然聞いてない。
抵抗しようにも力は強いし、どこを掴まれても身体は痛むし、思わず「痛い」と、泣いた。
構わずオセは裸になった私をうつ伏せにして、指を入れる。
私は叫んだ。

回りの魔者たちは私を嘲るように見下し、笑い、楽しんでいる。
遠くにリックが見えた。ただひとり、私を心配する友人の顔は青ざめている。
私はリュウが見れなかった。
こんな痴態を命じ、ほくそ笑んでいるであろうリュウの顔など見たくない。
指が抜かれ、腰を強く掴まれた。すぐに違う質量のものが入ってくる。
私は目を瞑り、歯を食いしばった。
泣き言など言うものか。辱めを受けたとて、今更だろう。
ただ、わけも無く涙が溢れた。
どうして…どうしてリュウは私をこんな目に合わせる。
私は…リュウだけのものになりたかったというのに…

快感など一切なく、必死で痛みに耐えた。
噛み締めた隙間から苦痛にあえぐ声が漏れた。
痛みと悲しみの涙でしゃくり返る。

「やめた!」
突然オセの声が聞こえ、圧し掛かられた身体が私から離れた。
だからといって私は自分の身体を動かす事もできないほどで、ただ泣くばかりだった。

「こいつ全然使えないじゃないか。リュウ、おまえちゃんと躾けたのか?」
「…悪いな、役立たずで」
呆れ返ったオセ・ゲーティアの声に、リュウは答える。

役立たず…その言葉が私の胸に突き刺さった。
やはり私はリュウには必要のないものなのだ。

「口直しに良いのを見繕って、ゲストルームで楽しんでくれ」
「そうするよ。全く、おまえの趣味には付き合えないよ」
オセは私の尻を叩くと、立ち上がって部屋から出て行く。
何人かの取り巻きが彼の後を追っていくのが見えた。

私は向かいのリュウに目をやった。
感情の見えぬ平素な顔をして、私を見つめている。
この私の醜態をどう思っているのだろう。
命令どおりに動かなかった私を、リュウは歓迎していないはずだ。
殺されるんだろうか…私は溢れる涙を拭き、裸の身体を竦ませた。

リュウは立ち上がって私に近づいた。
私はうつ伏せたまま、鳴き声を押し殺した。
これからどうなってしまうのか、恐ろしさに少しだけ震えてしまう。

するとリュウは思いがけない事をし始めた。
自分のマントを私の身体に掛け、そのまま私の身体を両腕で横抱きに抱えたのだ。
彼は私を抱いたまま、客間を後にした。

長い回廊にカツカツと靴の音が響く。
リュウはさっきから一言も喋らない。
リュウのマントで包まれているとはいえ、身体の半分も隠れていない。
リュウの胸と密着した肌が、なんだか熱くなってしまい、私は恥ずかしくなった。
「あ、あの…降ろして下さい」
「身体が痛むんだろ?じっとしていろ」
「…はい」
願いもむなしく取り下げられ、すべからくリュウが身体を引き付けるので私は顔を見られたくなくて、肩に顔を埋めた。

先程のリュウの仕業を私は酷いとは思っても、許せないとは思わない。
この者は私の主人なのだから、抱かれろと言われたらその指示に従わなければならない。
それなのに、私はできなかったのだ。役に立たないと言われても仕方のないことだった。

「嫌なのか?」
「え?」
「オセに抱かれるのは嫌だったのかと聞いているんだ」
「…嫌です。私はあなた以外の者と肌を交わしたくない」
迷ったが私は本当のことを口走った。

リュウの歩が止まった。
私の顔をしばらく見つめ、形の良い眉を顰める。
「メトネ、おまえ変な事を言うなあ」
「何が?」
「その言い方じゃ、おまえはまるで俺を好きみたいじゃないか」
「好きみたいじゃなくて…す、好きなのです…あなたが」
「…おまえは俺を憎んでいると言った」
「それは昔の話です。今は…あなたが好き。好きになってしまったんです」
「…」
リュウは真っ赤になる私をじっと凝視し、それからまた黙って歩き出した。

私は自分がバカ正直に告白した事を後悔しながら、リュウの腕に抱かれるのもこれが最後と覚悟し始めていた。



                                       text by saiart


■「彼方の海より…」  リュウ・エリアードとメトネのお話はここから プロローグ
8へ / 10へ

ここは重要なシーンだった。
リュウがメトネに対する想いを確認しなきゃならないからね。
次でこの章は終ります。





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2009/08/03

「彼方の海より…」  8

8、
薬湯に浸かったおかげで、身体の痛みは和らいだ。
湯から上がると、リックが拭き布を手に持って私を待っていた。

「どうしたの?いつもの扱いと違うね」
私は私の身体を生真面目に拭くリックをからかうように言った。
「今日は特別。だってあの人が来ているんだもん」
「あの人って?」
私の質問にリックは答えず、代わりにきれいな着物を羽織らせてくれた。

「…凄い刺繍だ」私は着せられたチュニックの繊細な幾何学模様に見惚れた。
以前自分が公主であった頃は、絹や毛織物でこしらえた着物は珍しくなかったけれど、この邸に住むようになって、私の着るものは綿や麻のシンプルな服ばかりだ。
実はそっちの方が着心地が良く、私としては大いに気に入っているのだが。
「ミズキが自ら刺した刺繍だもん。凝ってるさ」
「どうしてこれを私に着せるの?」
「だから言ったでしょ?着飾って来いってリュウが言ったって」
「…」

普段しない装飾品で着飾られ、自分の似合わなさになんだか恥ずかしくなった。
「リック、おかしくない?」
「…良く似合ってる。さすがは地上では王様業していただけのことはあるね」
「それ皮肉にしか聞こえない。私が駄目な公主であることは知っているだろう。国を捨ててここへ来たんだから」
「国を守る為でしょ?上に立つものとしての責任は全うしたって言って良いんじゃない。今がリュウの色子でもさあ、メトネはちっとも卑屈になってないし、凛としている。僕はかっこいいと思うけど」
「…かっこ、いいなんて、生まれて初めて言われたかも」
リックの言葉に思わずおどけると、つられてリックも笑ってくれた。
なんだか少し気が晴れた。

客間までの回廊をリックと歩きながら、私は質問する。
「ねえ、リック。お客様って誰なの?」
「四天王のひとり、オセ・ゲーティアだよ。彼は7年ほど前に南星の地を治める王になったんだ」
「そう…」
四天王というぐらいなんだからリュウの他に3人の魔者の王がいるのは当たり前だ。今まで考えた事も無かったんだけど。
「すごい魔族なんだね」
「うん。彼の師匠っていうのが、サレオス・ラシュハていう四天王でね…、あ、王が次期の座を占める者を決めるのだけど、サレオスは次期王に推していた息子に殺されて、それでオセが四天王の座に就いたんだ」
「息子に?」
「そう」
親子で争うなんて、私には考えられないけど、魔界だからやはり血生臭いんだな。なんだか少し背中が寒くなって身震いする始末。

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「どうしてそんなことになったの?」
「噂話によるとね…そのサレオスの息子っていうのは人間との間の子だったんだ。人間界で育ったっていうんだけど、とても魔力が強くてね。だからサレオスは息子に南星を統べる王になって欲しかった。けれど、そいつは固辞したんだ。怒ったサレオスは息子を殺そうとしたけど、逆に…殺されたって話。可哀相だろう?」
「…うん」
リックの言う可哀相がどちらにかかっているのかは明らかだが、私はその息子の方に同情してしまう。
なりたくないものに無理矢理やらそうとするなんて可哀相だ。それに人間界で育ったのだったらきっとそのままでいたかったはずだ。

「その息子さんはどうなったの?」
「知らない。元々半分は人間の血だったんだ。始めからそういう奴を王にしようだなんて思わなきゃ良かったんだ。人間の血が混じった者に魔界の地を統べて欲しくないもの」
「…」
「ごめん、メトネは人間でも好きだからね。怒らないでよ」
「怒ってないよ」私は微笑って答えた。
「私は地上で人間と魔族の混血なんて聞いた事がないけれど、居るんだね」
「殆どの魔族は能力の無い人間の子供など欲しがることは無いと思うんだけどね。人間と交わるのは恥だと思っている魔族も多いんだ…ああ、君は別だから」
「そんなに私のことを気にしなくてもいいけど…」
「いや、なんだかメトネを人間と思うより僕の友人と思ったほうが自然で、つい本音が出てしまう」
「私もリックとは本音で付き合いたいから、遠慮なく」
「とにかくそいつが殺されたって話は聞かないから、きっと生き延びていると思う。見つけたら僕が殺してやりたいくらいだね」
「…」
リックは比較的穏やかな魔者だと思うけど、こういう風な言い方をする時はさすがにちょっと怖い。


客間に辿り着くと、そこには20人ほどの魔者が寛いだ様子で談話している。その中心に設けられた円卓を向かい合ってリュウと…そのお客人が広いカウチに身を投げ出すようにしながら話していた。

明らかにリュウとその客と、回りの雰囲気が違う。
この者がオセ・ゲーティアという魔族なのだろう。
見事に赤く燃える色をした髪、それに相応しい浅黒い肌、秀麗な容貌だが、右目は瞑ったままで額から頬にかけて傷跡が見えた。隻眼の麗人だ。
なんだか見とれてしまって立ち止まっていると、その客人と目が合い、にこりと笑われた。
手で招かれ近づくと、その紅く輝くひとつの瞳が、私の頭から足元までをじっくりと見定めていく。
「これがリュウ・エリアードのお気に入りの色子か。公主様だっていうから、もっときらびやかな子をイメージしていたけど…結構地味…おまえこんなの趣味だった?」
オセのからかいにリュウは「まあな」と言い、苦笑した。

リュウはといえば、鮮やかに赤い短着の上に玉虫色の薄い着物を羽織っている。首元にはいつもの魔力を操る宝石を組み込んだネックレス。その上にある比類なき美貌に目をやった途端、私は俯いた。とても直視できない。
こんな綺麗な魔者に自分が抱かれているのが信じられない気がする。
心臓が鳴り、顔が熱くなった。
結局のところ、私はこの者に魅了されているのだ。



                                       text by saiart


■「彼方の海より…」  リュウ・エリアードとメトネのお話はここから プロローグ
7へ / 9へ

エルミザードに関連する話を盛り込んでみた。




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2009/07/30

「彼方の海より…」 7

7.
この魔界では昼と夜の区別が付けにくい。
すべての部屋には窓など無く、外の様子はうかがい知れない。
ただ敷き詰められた磨り硝子のような天井が暗くなったり、明るくなったりして、それが夜と昼を区別する手段だろう。
一日の食事は二回で、それは地上と同じなのだが、料理の内容はというと…、殆どが食材の原型をとどめていないので、何を食べているのかわからない。
美味しいから文句は無いのだけれど、この間、リックに赤いスープが美味しいと言ったら「妖魔の血で作ったスープだよ」と、教えられ吐きそうになった。
もう二度と食材を聞くのはよそう。
リュウの為に何か作りたいと思って、料理でもと思ったが、さすがに尻込みしてしまう。

リュウと言えば、近頃は私が素直になったのを訝しがってか、時折疑惑ありげな顔で私を睨む。
私はリュウに抱かれるのが段々と嬉しくなってしまい、思わず甘えてしまうのだが、リュウにはあまり伝わっていないようだ。いや、もしかしたらそういう甘え方をする私を気に入らないのかも知れない。

ある晩の事、リュウが私をひどく痛みつけた。
今までに無いほどに酷いやり方で、私は怯え、泣き叫んで、必死で許しを請う程だった。
それでも、許してもらえず、何度も失神してしまい、その度にリュウは私を起こし、また責めるのだ。
身体中がバラバラになるほど戦慄き、このままでは死んでしまうと遠くなる意識の中で何度も思った。

暗い天井が次第に明るくなっても、拷問のようなそれは続き、終に私は屍のようにベッドに沈み込んだまま、指一本動かせなくなってしまった。
いつもなら傷ついた私の身体を必ずと言って良いほどに、魔力で治癒してくれるのに、リュウは何もせず、痛みで動けない私を冷たく見下すと、ベッドから離れた。
私は無言で部屋を出て行くリュウの背中を見送った。
何故だか、自然と涙が溢れてくる。

赤く鬱血した手首の跡を見た。縛られたわけじゃない。リュウは道具なんて使わないもの。
リュウが…私の手首を骨が折れる程に掴んで離さなかったのだ。なぜこんな事をするのだろう。私が抵抗するはずも逃げるはずもないのに。

もしかしたら私はリュウに嫌われたのだろうか…
それとも私に飽きたのだろうか。
だから私の傷を癒すことすらしなかったんじゃないだろうか…
そう考え出すと、それ以外にはリュウの行動の目的が浮かばず、私は酷く狼狽した。

いつかは飽きられるかも知れない、捨てられるかも知れない。それは覚悟していた。
だって何も取り得の無い人間の私に、リュウを引き止めておく魅力などあるはずも無いのだし、どうせ魔族みたいに長生きも若さを留めておく魔力もないんだ。
リュウは私を見限ったに違いない。
そう思うと、身体だけじゃなく心まで軋むようで辛くてたまらない。
私はそういう風に思いつめる自分が嫌になる。
もうやめよう…そう思い、暗い闇の眠りに誘われるままに眠りこんだ。
見るのは悪夢ばかりであったが…

「メトネ、大丈夫かい?」
私を揺り起こすリックの声で目覚めた。
「…あ…リック」
「酷くうなされてたよ」
「…そう」
「声もガラガラだね。昨晩は凄かったよ、君の声が辺りに響いていたもの」
「…」
羞恥を通り越して青くなった。あんな醜態の声を誰かに聞かれていたと思うと、死にたい気分になってくる。
「身体の方も凄いけど…起き上がれる?」
「…相当な努力がいるけど無理じゃないよ」
私は仕方なしに笑った。ここまで恥を晒してしまえば、隠すものなどないだろう。
裸のままゆっくりと起き上がる。
動くたびに身体のあちこちの骨や筋肉が悲鳴を上げているみたいに痛みが伝わって、思わず声が出る。
「可哀相だな…どうしよう…僕の弱い魔力でもこれくらいなら治癒できるんだけど…」
「かまわないで、リック。そんなことをしたら君がリュウに叱られてしまうよ。いいんだ、リュウが私をこうしたいのなら…それが主人の命なら、受けるしかないのでしょう?」
そういうことなのだ。
私はリュウの下僕でしかなく、私にリュウを愛する権利などないのだ。

「…リュウは何か別の考えがあるんだと…思うよ。君はいい子だから、大丈夫。そんなに思いつめるんじゃないよ」
「ありがとう…」
「実はね、ここに来たのは…リュウに君を呼んでくるように言われたんだ」
「リュウに?」
「リュウに来客があるんだ。君を見たいんだって…それで僕が使わされた。でも歩けそうもないんじゃ…」
リュウの命を果たせないとリックがどんな仕打ちを受けるかもしれない。
「だ、大丈夫だよ。待って支度するから…っ!」
私は急いで立ち上がろうとしたが、身体中に激痛が走りその場にへたり込む。
「薬湯に浸かって身体を温めよう。そうすれば痛みは取れるし、大分楽になるよ」
「でも時間が…」
「それくらいは大丈夫だ。どっちにしても君、全身を洗わなきゃ見られたもんじゃないよ」
私の返事を待たずにリックは裸の私を横抱きに抱え上げた。
突然のリックの行動に、私は一瞬痛みを忘れた。
私よりも背は低く、華奢なのにあまりにも軽々と私を抱き上げたからだ。
「リ、リック!降ろして!ひとりで歩けるから」
「なに言ってるの?」
「だって…」
いい大人が年下の子に裸のまま抱きかかえられてる様っていうのはさすがに忍びない。
「メトネをちゃんときれいにしてつれて来いって、言われてるんだ。遠慮しないで」
「そうじゃない…君より身なりの大きい私が抱えられてるっていうことが、幼い子供みたいに思えて身の置き所がない感じなんだ」
「僕にしてみりゃメトネは子供だけどね」
確かにリックも50年以上生きている魔族なのだから、私に比べれば随分大人なんだろうけど…。

始終身を竦ませる私を、あれこれとリラックスさせながら、リックは湯屋へと連れて行ってくれた。




                                         text by saiart  


■「彼方の海より…」  リュウ・エリアードとメトネのお話はここから
プロローグ
 6へ / 8へ



この章の目的地はふたりが恋人になるまで。
さっさとそこに行きたいなあ〜そこからまだ長いんだからさあ〜ww







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