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2019-09

天使の楽園、悪魔の詩 その一 - 2011.06.04 Sat

ベル子供

天使の楽園、悪魔の詩

 その一

 俺がベルという名前を貰ったのはこの「天の王」学園に入学した六歳の時であり、それまではクリストファーと呼ばれていた。
 俺の父、スチュワート・セイヴァリは若い頃から名うての実業家であった。
 貿易会社「セイヴァリカンパニー」を立ち上げ、手段を選ばない商法でみるみるうちにサマシティ一の巨大な会社に成長させた。
 彼はこの街の覇者であり、人々は彼を「黒い孔雀」とも呼んでいる。
 
 スチュワートは有り余る金をぶら下げ、この街の高貴な貴族の娘に片っ端から求婚した。
 彼は貴族の肩書きが欲しかった。それがあれば他所との取引が有利になると思い込んでいた。
 彼に必要なのは愛ではなく金と名誉欲だった。
 貴族なんてものはプライドばかり高く、儲け話に出資しても大体が失敗し頭を抱えることになる。
 俺の母親の実家であるスタンリー家も借金に追われ、仕方なく一人娘のナタリーが父へ嫁ぐことになった。おかげでスタンリー家は贅沢三昧に放蕩したが、生贄の身になった母は勿論憤慨である。
 父と母が愛情を通わせることは一度もなかったであろう。

 俺はこういう両親の間に生まれた。
 初めからその出生を怪しまれたのは当たり前だ。
 父も女遊びには堅気ではなく、貴族はそれについては常識などあったものではない。
 16で嫁いだ母であったが、勿論処女ではなかった。
 母の弟であるエドワード伯父は幼い俺に、母と密通していたと自慢していたくらいだ。
 だから俺はある時期まで、この伯父が俺の本当の父ではないのだろうかと、いつも疑っていた。

 そういうわけで幼い頃から俺は両親から抱かれたことも愛情のこもったキスを受けた事もない。
 そういうものだと思っていたから、こちらも今更責める事もない。
 ただ寂しくはあった。
 多くのメイドの一人であるエリナはこの街の生まれではなく、南からの労働移民だった。 
 この北の街では余り見慣れぬ浅黒い肌とエキゾチックな面差しは混血のメスティーソであり、俺は彼女がお気に入りだった。
 彼女はハウスメイドであり、始終世話をしてくれるわけでもなかったが、俺はこっそり彼女を呼んで、お菓子をあげたりしていた。
 エリナは教養はなかったが充分に賢く、また唯一俺を心から気にかけてくれる人間だった。
 優しさや愛情からかけ離れたこの家で、なんとかマトモな人間でいられたのはこのエリナが俺を見守ってくれたからだろう。

 俺が生まれて間もない頃、高名な占い師が俺を見た。
 何を見るかというと「魔の力」を持っているかどうかである。
 それはこの街では重要な意味を持った。

 確かにこの街は魔法使いの市民権が与えられてはいたが、ノーマルな人間達は彼らの力をどうしても恐れてしまう。
 「力」があっても魔法使いは彼らを傷つけたりしない。魔法使いは人間を助ける為に存在する、と、謳う街の条例は迫害されかねない魔法使いたちの生き残れる許しだったのだ。
 街中では魔法使いは人間に使わされる存在だった。

 占い師は赤ん坊の俺を見てこう言った。
「この子には『力』がある」
 ここで周りの者達は落胆の声をあげたと言う。
「しかし、この子の力は恐れぬに足りん。この家の繁栄をもたらすことであろう…」
 彼女は大嘘を付いたのだ。
 俺を救う為に。

 貴族の子息は貴族しか通えない学校に入学する。
 普通の子供たちとは一線を隔てて育てるのが貴族流らしい。
 俺は「力」を持つ「アルト」だから、「アルト」にうってつけと言われる「天の王」寄宿学校へ入学した。
 実を言うと俺は家から離れられるのが嬉しくて、入学する日を今か今かと待ちわびていたのだ。
 また自分以外の同じ歳が集まる学校という組織は、憧れであった。
 入学前「天の王」の学長と面談の際、俺は学長から「ベル」と言う名前をもらった。
「ここでは貴族もお金持ちも…イルトもアルトも関係なく、生徒は平等です。君が今まで呼ばれていた名前は君の家の物だが、ここでは君に相応しい名前で暮していくことになります。よろしいですか?ベル」
 なんのことかさっぱりだったが俺にはどうでも良かった。
 もともと「クリストファー(救い主)」と、呼ばれることは少なかった。
 
 「ベル」となった俺は学園での生活を楽しんだ。
 とりわけ初めての寄宿生活はとまどいながらも、毎日が楽しくて仕方なかった。
 同い年の子達が6人部屋で過ごす。ここでは貴族もノーマルも関係ない。
 感情がぶつかり合っても決して傷つかない。
 まるで冒険の海へ船出するみたいに毎晩大騒ぎだった。

 授業もなにもかもが新鮮で、知らない知識を得る喜びは、あの意味もなく豪華でただっ広い家の何も得られない空間で過ごした空しさを払拭するようだった。
 週末、家に帰らなければならなかったが、それが近づく金曜になると俺は憂鬱で仕方なかった。
 帰る家のない幾らかの友人達が羨ましくて仕方なかった。
 家に帰っても家族が待っているわけではなかった。
 父は滅多な事では家に帰ってくることはなく、母はパーティと貴族のサロンに入り浸りで、俺の事など眼中になかった。
 学校の生活を知ってしまった俺は、ひとりで食べる食卓の貧しさに暗い気持ちになった。
 日曜の夕方になると、4キロの道のりを急いで、寄宿舎に帰る。
 俺の居場所はここだと思った。
 決して贅沢ではないけれど、みんなと食べる食堂の食事はすべて美味しかった。
 銀の食器のかわりに白い陶磁器の皿に載る野菜と煮豆が、俺にはなんだか心休まるもので、口にしながら俺の求めていたのはこれだったのではないかと、思わず涙が込み上げたほどだった。

 

 学校の生活にも慣れ、入学して半年も経った頃、俺は隣りのクラスに気になるふたり組みを見つけた。
 そのふたりは「アーシュ」と「ルゥ」と言い、いつもまるで双子のようにくっついている。
 見てくれは夜と朝のように違っているのに、仕草はまるで同じで、思わず噴出してしまうほどだ。
 彼らは幸せを体現しているかのように、お互いを見つめあい笑いあう。
 何故だかわからない感情が渦巻いて、俺は彼らから眼が離せなくなってしまっていた。

 俺は幼い感情を満たす為に彼らの友人になりたいと望んでいた。
 彼らも俺と同じように「アルト」だと知り、その感情は益々膨らんだ。

 彼らに近づく方法を俺はずっと考え続けていた。

 二年生になったばかりの夏が過ぎ去った午後だった。
 体育館の後ろの雑木林の手前、尖塔に登る螺旋階段の下、目立たぬ袋小路がある。
 3階の廊下から風で飛ばされた麦わら帽子を探しに雑木林へ行く途中だった。
 何人かの穏やかではない声が聞こえてきた。
 塀に隠れて様子を伺うと、あのふたりの片割れ、金髪の方、「ルゥ」が居た。
 ルゥは五年生の男子から「泥棒ネコ」と攻め立てられていた。
「ロッカーのこいつのバックから財布を盗んだのはおまえだな」
「違うよ」
「見ている奴もいるんだよ」
「おまえ、二年のくせに大胆な事するなあ」
「さすがに保育所上がりの奴はまともじゃない。アルトだからってでかい態度しやがって」
 散々な言われようもルゥは全く動じていないように見えた。

「こいつ、全然反省してねえ」
「痛い目に合わないとわかんねえみたいだな」
 背の高いひとりがルゥの胸倉を掴んで、拳を突き上げた。
 俺は慌てて飛び出した。
「やめろよっ!」
 奴らは一斉に俺を振り返った。
 俺だってケンカの経験もなければ、無謀な争いなんかしたくない。
 正直怖くて仕方なかった。けれど、ここで引き下がるわけにもいかない。

「下級生を大勢で責めるなんて卑怯だろ」
「なんだ、お金持ちのクリスか」
「ここではベルだ」
「そうだったな。おまえに関係ある話かよ。こいつは金を盗んだ。だからとっちめてやる。なにか間違いがあるのか?」
「…お、金なら…僕が返すから、その子に手を出さないでよ」
 俺の言葉に彼らは顔を見合わせた。
「ま、おまえがこいつの代わりに金を返してくれるなら、許してやるよ」
「ありがとう」
「その代わり、二倍にしてもらう。それくらい持ってるだろ?街一番の成金息子なんだから」
 俺は黙ってそいつらの言う金額を支払った。
  
 五年生の姿が消えるのを待って、俺は壁に凭れてじっとしているルゥに近づいた。
「大丈夫?怪我はない?」
 俺の言葉にルゥは、ふっと笑った。
 彼の顔には緊張感は見えない。

「ざんね~ん」
 突然上の方から声が聞こえた。
 螺旋階段から顔を覗かせたのは…褐色の髪をしたアーシュだった。
「う~ん、いいところまで行ったんだけどね」
「まさかあそこで助けが入るとは…というかとんだ邪魔者出現。さすがに予測不可能だ」
 カンカンと階段を下りる靴の響かせたアーシュがルゥの傍に立った。
 二人は並んで俺をジロリと見つめた。
 俺は何のことかまるでわからない。

「でもさ、お金まで出させちゃって悪かったね」
「盗った分を返してやれよ」
「うん」
 ルゥはズボンのポケットから財布を出した。
 俺は彼らのわけのわからぬ話と出された財布に言葉も出てこない。
 結局こいつらが犯人で、俺はピエロを演じたわけだ。
 差し出された財布を受け取るはずもないだろう。
 俺は空しくなってその財布を叩き落した。
「お金なんていらない。僕は…君達と友達になりたかった。だから助けたかったんだ」
 アーシュとルゥは目を見張って感嘆の声をあげた。

「ベル、君ってすごい良い奴だね」
「ホント、おい、ベルを見習えよ。こういう子がまともな魔法使いになれるんだよ」
「…一体何のことだよ」
 俺はなんの話か全くわからない。
「あのね、ベル。僕たち『力』を試したかっただけの。ほら、せいとーぼうえいなら魔力を使っても怒られない、だろ?」
「はあ?」
「だって宝のもちぐされじゃないか。せっかく持っている『力』だもん。たまには使ってみたいって思わない?」
 アーシュは引き込まれそうな深い藍色の瞳を見開いて俺を見つけた。
「勿論、酷いことにはならないように気をつけるけど、ね」
 ウィンクしたルゥは屈託のない笑顔を見せた。

 一瞬にして俺は彼らの虜になったのだ。




アーシュとルゥの子供時代


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天使の楽園、悪魔の詩 その二 - 2011.06.08 Wed

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その二

 この件をきっかけに、アーシュとルゥは俺を友達として認めてくれた。
 それまでは俺の事など視界にも及ばなかったふたりの有様が一変した。
 彼らは一旦心を許してしまうと、新参者の俺にさえ一切の隠し事はしなかった。
 どうやってここで育ったのかを面白おかしく話し続けた。
 俺もまた自分のお家の事情って奴を詳しく話し聞かせてやった。
 彼らは想像もできない別世界だと首を傾げた。
「でも両親がいても愛してくれないのは悲しいね。僕らは初めからいないから仕方ないけどさ。ベルはよく耐えてるよ。えらいぞ」
「えらいよ、ベル」
「そんなことはないけど…」
 こんなことで褒めてもらったことがないから、照れてしまう。
「貴族やブルジョワってちょっと憧れたりもしてたけど、少しぐらい窮屈でもこちらの方がマシってことだね」
「僕にとってはここは楽園さ。それに天使もいるし」
「え?」
「君達のこと」
 俺の言葉にアーシュとルゥは腹をかかえて笑い出した。
 結構本気で言ったつもりだったのだけど…

 勿論彼らは微笑むだけの天使ではなかった。
 規律を潜り抜けては「力」を試し、他愛のないいたずらはしょっちゅうだった。
 中でも校内のあちらこちらを探検することは極めつけの冒険だった。
 古いこの学校のあらゆる隠し扉を開いては、「誰にも内緒だよ」と、人差し指を口に当てて、俺を部屋の中に導く。
 俺にとってまさに「秘密の花園」であり、彼らの言う「秘密基地」の一員に加わった喜びでこの上もなく幸せだった。
 それにふたりを知っていく毎、彼らの屈託のなさに感心した。、
 アーシュもルゥも別段孤立しているわけではなく、誰とでもわけへだてなく交流する。付き合いは俺よりも彼らの方がかなりポジティブだ。
 それまで高慢な貴族の子息、なにかと黒い噂の絶えない「セイヴァリカンパニー」の跡取りと見られていた俺は、表面上は仲良くしていても、心から打ち解けられる友人はいなかった。だが、アーシュとルゥのおかげで、それまで遠巻きに見ているだけだった貴族や資産家の子息達以外の生徒が俺に声をかけてくれるようになった。
 接してみると上流階級の奴らよりも彼らの方が、遥かに賢く、博識であった。
 特にアルトの子は歳若いながらも色々なことを考えている。

 彼らは俺を珍しいと言う。
「貴族で資産家の跡取り息子なんて、まともじゃないと思っていたけど、ベルは良いアルトだ。尊敬するよ」と、あまり付き合いに積極的ではないハイアルトたちも友情の握手を求めた。
 俺は初めて自分の価値を認められた気がして、自分が「ハイアルト」で良かったと、また良い魔法使いになる為に、この学校で懸命に学んでいこうと心に強く願った。


「ベルは良い人すぎるよね」
「まあ、突然変異だね。僕達と似かよっている。ああ、そこの長い板を取ってくれ、セキレイ」
「わかった」
 アーシュはルゥのことを何故か「セキレイ」と呼ぶ。その意味を尋ねたら「僕はアーシュに拾われたの。、その時の記憶がなかった僕を、アーシュは『セキレイ』と呼んだ。だからアーシュにとっては僕は『セキレイ』なんだ」
 よく判らなかったが、これは独占欲を表しているのではないか…と、後になって思ったものだ。
 アーシュはルゥを自分だけのものとして「セキレイ」と呼び、ルゥは「セキレイ」と呼ばれることで、アーシュのものでいられると安心する。

「ベル、ほら、しっかり板を持っていてくれよ。釘が打てないだろ」
「ああ、悪い」
 俺達は雑木林の奥にあるデカイ楠木の枝の上に小さな「秘密基地」を作っている。
「できた!」
 嵐が吹けばすぐにでも飛んでいきそうな掘っ立て小屋だ。
 俺達三人が腰を屈めてやっと入れる狭い家だ。

「前の基地よりマシだが…三人が入るにはきつそう」
「仕方ないよ、俺達は成長期だしな。三年もてばいいんだよ。どうせ中等科に行けば、校舎も変わるんだしさ」
「三年も持ちやしないさ」
「セキレイ…出来上がったばかりでテンションが下がる事言うなよ。さあ、入ってみようぜ」
 アーシュを先頭にそのクソ狭い「秘密基地」へ膝を折りながら進んでいく。
「なかなかいいじゃん」
「ああ、思ったよりもずっといい」
「でも…背比べはできないね」
「まあ、カードゲームぐらいなら大丈夫」
「それと…夜天を見るときは便利だ」
 三人並んで寝そべりながら 天上を見上げた。隙間の開いた屋根からは青空が覗いている。
 右側にアーシュ、左にルゥがいる。
 他になにも望めないくらい俺は幸せだと感じていた。
「ずっとこのままでいたいね」
 心に浮かんだ言葉を口にしてしまった。口に出した後、ふたりに笑われるかもしれないと恥ずかしくなる。
 だが、ふたりは笑わなかった。
 アーシュの手が俺の右手を繋ぐ。同時に左手にはルゥの手が繋がった。

「ずっと一緒さ。大人になってもずっと仲良し三人組でいよう」
「僕も賛成だ」
 堪えていた涙が流れる。
 ふたりは俺の両頬にキスをした。
 交互に顔を見合わせ「ありがとう」と、言った。
 微笑むふたりはこだまのように「ありがとう」と応えるのだ。
 


 十一歳の夏、四年生を終え五年生になる長い夏季休暇は辛い思いをした。

 毎年、この時期は憂鬱になる。
 学校が休日ならば当たり前に自宅に帰らなきゃならない。
 誰も待っていない家へ帰ってもつまらないだけだった。
 俺を可愛がってくれたエリナも、俺が知らぬ間にこの家から居なくなった。
 理由を聞くと、母の宝石を盗んだと言う。彼女に限って言えばそれはありえないと思った。
 エリナは俺の知る限り物欲に乏しかった。
「騙されてはいけませんよ。坊ちゃま。ああいう移民は帰る家がないので、かかる責任を負わなくていい。何もしても自分が罰せられればそれで終わりです。私どもはそうは参りません。この家やご主人様を守るという崇高な使命があるのです。ここで働く事は自分の身を投じて尽くすということでございます」
 古くから勤めるバトラーの言葉はちっとも俺の心に響かなかった。
 結局何を言っても求めても、俺がこの家で得られるものは無いに等しい。

 その年は休日の大方を母の実家であるスタンリー家で初めて過ごすことになった。
 街の中心から離れた郊外にその大邸宅はある。
 車で三時間ほど走ると、咽かな田園風景が続き、次第に白樺林が見えてくる。
 その木立を過ぎるとに遠くの山々を背景にした瀟洒な屋敷が現れる。
 アラベスク文様の門を通りぬけ、両側に並んだ潅木の間に鮮やかに咲く花壇の花々を眺めながら、車は玄関アーチへと続く。
 重い扉の奥は広いフロアにスタンリー家の紋章をあしらった、百合とアカンサスの葉をデザインされた毛足の長い絨毯が敷き詰められていた。
 大理石の床と黒檀やマホガニーを存分に使った家具や内装も、セイヴァリ家とは違って上品で嫌味がない。
 すべてが行き届き、安らぎさえ感じた。
 さすがに古き歴史を持つ貴族だと、また自分がその血を受け継いでいる事に少し誇りを持った。
 広間から続くコテージガーデンには彫刻や噴水、人工で作られた滝や池など、子供にとっては厭きのこない遊び場で、アーシュやルゥを連れてこれたらと何度も思った。

 広間では昼間はサロン、夜はパーティが幾度と無く開かれ、母の姿もちらりと見えた。
 母は俺を見ては、目を細めた。
「まあ、クリストファーはあの人に似ないで綺麗に育ったのね。恥ずかしくない容貌だわ。これならスタンリー家に恥じない跡目と言うものでしょう」と、俺にキスをくれた。滅多なことじゃなかったから俺は驚いて後ずさってしまった。
 赤く頬を染めた俺を笑い、母は去っていく。
 きつい香水の匂いだった。それでも、母のキスが嬉しかった。


 主である叔父のエドワードは、屋敷の中ではよく見かけ、俺を見ると指を立てウィンクをしてくれた。
 ひとりで寂しくないようにと食事もたまに付き合ってくれた。
 彼は言う。
「クリストファーは私に良く似ているね」
 確かに俺の容貌は母でも父でもなく、このエドワード叔父に酷似していた。
 だから使用人だけではなく、サロンに来るお客たちも俺の顔を見ては、エドワードと母に意味深な視線を投げかけるのだ。
「甥であるのだから似ていてもおかしくあるまいが、これだけ似ていると、私も自分で問いたくなるね。君は私の息子かい?」
 そう言われても俺は笑うしかない。

 ある夕食の晩、他愛のない学校の話をしながらエドワードは俺に尋ねた。
「クリストファーは幾つになる」
「十一歳です」
「ふ~ん、それじゃあ、セックスは経験した?」
 俺は思わず口に運んだスープを噴いた。
「な、ないです」
「じゃあ、私が教えてあげようか」
「え?」
「スタンリー家主直々に相手をしてやるよ。どっちにしろ、君は私の後を継ぎ、この家の当主となるのだから」
「僕が何故この家を継ぐの?叔父様が結婚したら、そのご子息が後を継ぐのでしょう?」
 この時、エドワードは母とひとつ違いの27歳だった。この歳の貴族なら大方は結婚している。
「私は結婚などしない。ひとりの女と一生暮すなんて考えるだけでぞっとする。恋愛は自由気ままが一番良い。それに他者にこの家の財産を分け与えようとは思わないのでね。私は好きに遊んで贅沢三昧させてもらい、そして充分に放蕩したら、庭の池にでも頭から飛び込んで死んでやるのさ。そして残された物すべてをクリスに譲ってやろう。どうだい?ステキな人生プランだろう」
「…はあ」
 これでは彼がケチなのか、度量が大きいのか、ただのバカなのか分からない。
 しかし、俺はこういう叔父が嫌いではなかった。

 その夜、エドワードが俺の寝所に忍び込んだ。
 ベッドに寝ていた俺の横にいつのまにか入り込んできたのだ。
 夢心地でいた俺も流石に驚いて、彼の所業を諌めた。
「エドワード、何用ですか?」
「ひとりじゃ寂しいだろうから添い寝をしてやろう」
「いりません」
「じゃあセックスの指導だ。君が本当に初めてかどうかも気になるところだ」
 手を払う俺の意思を無視したエドワードは、俺の身体を抱え込んだ。間も無く寝着のシャツの裾の中に手を滑り込ませてくる。
「ぼ、ぼくはまだ十歳ですよ。セ、ックスなんてまだ早い」
「私は8つの時に叔父から抱かれた」
「…変態ですね」
「そういう血族なら仕方ない。君も慣れろ」
 身体を撫でるエドワードの指先は思ったよりも不快ではなかった。

「…嫌です。僕は…このスタンリー家を継ぐ気はありません」
「じゃあ、あの趣味の悪いカンパニーの社長になるのかい?」
「…」
「君の父親だってあくどい事には事欠かない最低な人間だぜ。クリスはそういう人間になりたいのかい?」
「どっちも…なりたいとは思わない」
「ひとりじゃ生きていけないくせに我儘なんて言うものじゃない。君が優雅に学校生活を楽しんでいられるのはお金と名誉があるからじゃないか」
「…」
「少しくらい私を楽しませろ、クリストファー」
「だって…」
 少し抵抗して身体を押しやる。エドワードは俺の両手を縛り上げた。

「あまり抵抗するなよ」
「だって、怖いよ、エドワード」
「怖くはないさ。まあ、色々なプレイで楽しむ奴も貴族には多いけれど、私はベッドでも紳士だよ」
 思わず涙ぐむ俺を、エドワードは優しく耳元で囁いた。
「泣きなさんな、クリス。出来る限り優しくする。そりゃ少しばかりは痛いだろうが、大人を踏み出す一歩として考えなさい。君がここで覚えることは損ばかりではないよ…きっとね」

 エドワードの青い瞳には、泣きそうな俺の顔が映っていた。
 それはきっとエドワードの子供の記憶かもしれないと、感じていた。
 だから、俺は彼の求めに応じた。
 抵抗しても逃れられない運命なら、初めから諦める方が、傷は少なくて済む。
 



天使の楽園、悪魔の詩 1へ /3へ


ここはもっと暗くなるシーンだったが、書いていくうちどうしてもエドワードを悪く書きたくなかった。
私は暴力やレイプシーンがとても嫌なので、無理矢理されたにしてもその理由と相手に納得させるように書きたい人です。
世の中、イイヒトばっかりじゃないのは当たり前ですが、私の作る話の中でだけでも、本当の悪人なんていない世界でありたい…と、願うファンタジーだと思ってください。



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天使の楽園、悪魔の詩 その三 - 2011.06.13 Mon

ベル悩み

その三、

 その日から毎晩、エドワードは俺を抱いた。
 最初は痛いだけだった感覚が次第に心地良くなってくるのと比例して、自分の身体が汚泥の中に埋もれていくように感じた。
 もとより…
「貴族に生まれたのがおまえの運命さ。嘆くより慣れろだよ、クリストファー。運命を受け入れて楽しむことだ」と、エドワードは言う。

 ぐったりと沈み込む俺の身体をエドワードは軽々と抱き上げて浴室へ連れて行く。
 シャボンに塗れたバスタブのお湯にふたりで入るのも、くやしいが悪い気分じゃない。
 今まで誰かにこんなに構ってもらったことはなかった。
 俺を愛してくれているのかはわからないが、エドワードは俺を気に入ってくれていた。
「どうだい?随分慣れた様だけど、セックスを楽しめているかい?」
「…思ったほど楽しくはない」
 エドワードは楽しそうにククと笑う。
「だがね、君。官能という力を知っているかい?」
「…官能の力?」
「さて、面白い話をしよう…」
 エドワードはそう言うと、俺を後ろ抱きにして自分の腹に引き寄せた。
「君はアルト、即ち『力』を持って生まれてきただろう」
「…うん」
「力を持たない一般人はその力を恐れる余りに禍々しいものと見るが、そうとも言えない。事実、多くのイルトは良きアルトの力を借りて、運を引き寄せ莫大な財力や名誉を手に入れている。わかるかい?魔法使いの信頼を得ることはこの街で豊かに暮らす者にとって、とても重要なことなんだ」
「アルトは力を持っているのに何故、イルトに服従しなきゃならないの?」
「服従じゃない。信頼って言ったろ?つまりは愛情とも言える。ふたりの間に必要なのは力の源だ」
「みなもと?」
「つまり、官能さ」
「意味がわからない」
「クリスが本物のアルトなら、そのうちに分かるようになる。まあ、簡単に言うなら、セックスを知ることが力になると覚えておけばいいよ」
 さっきから指で俺をいたぶっているエドワードはそれだけでは飽き足らず、俺の中に入りこんだ。
 口唇を噛み締める俺を手の平で撫でる。
「怖がるな。だた感じろ。官能を力にしろ。お前は強くなれる」
 絡まった泡塗れの手の平の中に、僅かに赤い炎が灯るのが見えた。
「…おまえはいい子だよ、クリストファー。いい子にしていれば愛してやるよ」

 その言葉が幾つかの条件を荷ってのことだとしても、俺はエドワードを嫌いにはなれなかった。

 エドワードは貴族の友人達が集まる夜の宴に、毎週末俺を連れて行った。
 勿論この屋敷でもたびたび開かれた。
 淡いランプの灯が照る豪華な調度品に囲まれた一室に色とりどりのカウチが並ぶ。
 人目を気にせず誰とでもまぐわう様式らしい。 
 麝香の甘い香りが当たり一面に漂い、その気が無くても簡単に妖しい気分になり得た。
 勿論性交を楽しむ為に用意されたものであったが、当時の俺よりも小さい子が慣れた風に貴族の青年達の足の間に顔を埋めているのを見てこちらは興ざめした。
 貴族独特の観念は最低限持ち合わせているらしく、狂乱とまではいかない様も、見慣れないこちらとしてはマトモな光景ではなかった。

 エドワードは俺を引き寄せ、耳元で呟く。
「簡単に膝を折るな。見縊られるな。一等上手い奴を選べ」
 そうは言っても俺にはどうしていいかさえわからない。
 取り敢えず同じ年頃の子を誘い、ロココ調のカウチに身体を寄せ合ってみる。
 彼は腰に薄い絹を巻いただけの裸同然の恰好でいた。
 彼は(何故かは知らないが、大抵のサロンは同性だけで集まる)硝子ビンを持ち、そこからホースの付いたマウスピースを俺に差し出した。
「これは何?」
「水煙管(シーシャ)ですよ。ゆっくりと吸ってみて下さい。気持ちいいから」
 言われるままに吸い込んだ。
 薄荷の香りが肺に広がり、何ともいえない高揚感に包まれた。
「ね、気持ちいいでしょ?」
「…君も貴族なの?」
「ええ、そうですが…僕はスタンリー家の遠縁の者です。…恥ずかしい話ですが家が貧しく兄弟も多かったので、人買いに売られるしかなかったのですが、ありがたいことにエドワード様に引き取られ、こちらにお世話になっているのです」
「…そう」
 人買いに売られることとエドワードに飼われることと違いがあるのかと嗤ったが、言わなかった。

 赤茶色の巻き毛、折れそうなほど細い肢体。あどけない顔をした子だった。
 歳を聞いたら俺よりもふたつも上で驚いた。
 俺は早熟の所為か、同級生達よりも一回り体格が良かったが…このイプリという子はルゥたちよりも華奢だった。
 だが、手管は競うまでも無く、俺が陥落させられた。
「あなたがこのスタンリー家を継ぐお方と知って、なんだか安心しました、クリストファー様」
「様はよしてよ。頼むからクリスって呼んでくれ」
「では、クリス。エドワード様同様にあなたを主人として一生忠義を尽くすことをお許しください」
 深く頭を垂れるイプリに俺は何も言えなかった。
 この子と俺になんの違いがあるというんだ。
 俺は何故この子に尽くされなきゃならない。
 この子の人生を負うなんて…俺には重すぎる。

 人の運命を受け入れるのは苦痛でしかないだろう。自分の運命ですらコントロール出来もしないのに。
 その夜、俺はエドワードにもうサロンに出るのは嫌だと泣いた。
 エドワードは「上に立つ者の使命だと思え」と、言い、許さなかった。

 見知らぬ貴族達にいいようにあしらわれる自分が悔しかった。
 自分が一番なりたくないものに染められていくようで、悲しかった。

 絶望、屈辱、苦悩、嘆き、そして「諦め」が俺の感情のすべてだった。


 長い夏休みが終わった。
 帰り際、エドワードは玄関まで俺を見送り「来年も待っているから、必ずおいで、クリストファー」と、言う。
 俺は何も返事はしなかったけれど、どうせ無理矢理にでも連れて来られるに決まっているんだ。

 家には寄らずに直接学校へ向かった。
 絶望を抱えた俺は、待ち望んだ学校までが、まるで地球の果てから帰るくらい長い道のりだった。

 寄宿舎に帰ると、ルゥとアーシュが俺を迎えてくれた。
「ベル、お帰り!」
「…ただいま」
「ちょうど良かった。今日部屋割りがあってね。今年は俺達三人一緒の部屋なんだ。すごいだろ」
「…ホント?」
「うん、もう、ベルの荷物も新しい部屋に移しておいたからね」
「…ありがと…」
 
 ふたりに両腕を引っ張られて新しい部屋へ連れて行かれた。
 今までは6人部屋だったけれど、五年からは4人部屋になる。
「もうひとりは新学期からの転校生らしいよ」
「…そう」
 俺はスーツケースを置き、ベッドの端に座り込んだ。
「どうしたの?ベル。元気ないね」
 ルゥの水色の瞳が俺を覗き込んだ。
「旅の疲れが出てるんじゃない。ベルは夏休み中、実家で優雅に過ごしていたんだろ?どうだった?楽しかった?」
「…う、ん」
 屈託のないふたりを前にして俺は何だか無性に悲しくなった。

 自分の汚らわしさは勿論、断る勇気も持てなかったこと、嫌っていた貴族という世界を甘んじて受け入れてしまったこと。
 情けなさに涙が出た。

 ルゥとアーシュは驚いて、俺の背中をさすってくれた。
「どうしたの?ベル。なにかあったのかい?」
「な、んでも…ない」
「そんなに辛そうに泣いてるのに何もないはずないだろ?僕達、隠し事は無しって約束したよね。ちゃんと話してよ。ね、ベル」
「…話を聞いたらきっと君達は、僕を軽蔑するよ。…汚らわしい僕を、嫌いになる」
「バカだなあ。なるもんか。絶対にベルを嫌いになったりしない」
「そうだよ。何を聞いても軽蔑したりしないよ。僕もアーシュもベルがどれだけ貴いアルトか知っているもの。それに、親友だろ?僕ら」
「…」
 澄み切ったふたつのまなこが俺を見つめている。何もかも受け入れるよと言っている。
 
 俺は彼らだけには隠し事をしたくなかった。だが、もし俺の話を聞いて俺を軽蔑り、友達をやめると言われたりしたら…そう考えるだけで胸が苦しくなった。
 俺は俺を貶めたエドワードに絶望しても、彼のすべてを嫌いにはなれなかった。
 俺の中の汚い欲望を彼は目の前に突き出して言うのだ。「同じ穴のムジナ」だと。
 彼は自分をどこかで憎んでいる。そういうエドワードの感情が10歳の俺でも理解できた。そして、それさえ平然と受け入れられる自分自身こそが、この純粋なふたりの天使に見られたくない部分なのだ。
 こんな俺を二人が知ったら…
 「ずっと仲間でいようね」と、言ってくれた言葉が俺を救ってくれたのに…

「ベル…君が大好きだよ。僕もルゥも苦しんでいる君を知って、ほってけると思う?君の苦しみはもう君だけのものじゃない。ね、僕達にわけてくれないか?そしたらきっと無くならないにしても三分の一にできると思うんだ」
 アーシュは自分の心に決めた秩序を愛していた。彼の精神は美しかった。
 ルゥを自分の手で拾ったことも、彼を「セキレイ」と呼ぶ権限を誇りとしていることも、俺には眩しすぎた。
 自分達にも痛みを分けてくれと言う彼らの前で、俺は懺悔をせずにはおれなかった。
 クリストファーの俺ではなく、彼らの前ではただの「ベル」でいたい。

 どんなに言いたくないことでも、正直に言ってしまおう。
 それが俺の精一杯の彼らに対する信頼の証だ。

 俺は少しずつ、口ごもりながらも、館であったすべてのことを話した。
 話し終わるとアーシュは拳を握り締めて突然立ち上がった。
「くそったれっ!ベルにそんなことを強いるなんて…ベルの叔父貴でも僕は許さない。『力』を使ってでも絞め殺してやるっ!」
 アーシュは頭から湯気が出るくらいに怒り、今にも部屋から飛び出して伯父を殺しにいきそうだった。
 ルゥは部屋を出ようとするアーシュの腕を捕まえ、「およしよ、君、死刑になっちゃうよ」
「別にかまうもんかっ!」
「ベルが困るだけだよ。その叔父さんが死んじゃったら、ベルがすぐに後を継がなきゃならなくなるもの」
「…うう」
「ねえ、そうだよね、ベル」
「うん…そうなるかも」
「ベルは貴族になりたくないんだよね」
「うん」
「じゃあ、アーシュもベルの叔父さんを絞め殺すのはやめておいた方がいいよ」
「…だけどさ、許せないじゃん。このままじゃベルが可哀想だよ」
「う~ん…」
 ルゥは腕組みをして、首を左右に振った。彼の考える時の癖だ。

「…そうだ。学長に相談してみようよ」
「トゥエに?」
「僕達だけじゃどうしよもないよ。学長から叔父さんに言ってもらおうよ。もうベルは叔父さんの家には行きませんって」
「う~ん、上手くいくかな。どう思う?ベル」
「僕は…君達に話したから少しはすっきりしたよ。もし、これからだってエドワードの相手をしなきゃならなくても…ルゥとアーシュが僕を軽蔑したりしないでいてくれるのなら…我慢できるもの」
「それじゃあ駄目だ。やっぱりトゥエに話そう」

 こうと決めたら絶対に曲げないアーシュは、俺を引っ張って学長室へ連れて行く。
 嫌がる俺の背中をルゥが押し続けた。
 俺は掴まれる腕の強さと背中に当てられた手の平の温かさに、涙がでるほど嬉しかったんだ。




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天使の楽園、悪魔の詩 4 - 2011.06.18 Sat

その四

 タイミングよく、学長は部屋で休憩中だった。
 俺達を見ると快く話を聞く姿勢を取ってくれた。
 話しづらい俺の代わりにアーシュとルゥが事の詳細を学長に話した。 
 話を聞いていくうちに学長の顔はこわばり、頭を抱え始めた。

「ねえ、トゥエ。ベルを助けてやってよ」
「その変態叔父さんをベルに近づけさせないでやってよ」
「そういうの性的虐待って言うんだろ?捕まえられないの?檻にでもぶち込んでおけばいいんだ」
「そうだよ。貴族だからって許せないよ。そんな奴死刑にしてよ」
 酷い言われようだ。ふたりの罵倒にエドワードが少し可哀想になってくる。
 ふたりの懸命な訴えに、学長も苦笑している。
「分かったよ。アーシュ、ルゥ。でも少しばっかりベルとふたりで話させてくれないかい。いいかい?ベル」
「はい、先生」

 ルゥとアーシュを学長室に置いて、俺は学長と共に、奥の部屋に入った。
 天井は高いが壁中に張り巡らされた本棚と机があるだけの小さな部屋だった。
 学長は机の上のポットからカップに紅茶とミルクを入れ、俺に飲むように勧めた。

「さて、ベル。アーシュとルゥの話で大体はわかったけれど、肝心の君の気持ちを聞いていません。本当のところはどうなんだろうね。アーシュとルゥの話に間違いはないの?」
「はい。恥ずかしいけれど…すべて本当の事です。貴族なんかに生まれてこなきゃ良かったって…何度も思いました」
「そうか…大変だったね、ベル。心も身体も傷ついただろう」
「…その時はすごく…悲しくて…でも貴族の血を引き継いでいるのなら仕方ないものだと思って…受け入れました。たぶん…僕だけが特別じゃなく…これまでだってみんな…貴族に生まれた者は経験してきたことなんでしょう。だから…大したことじゃないのかもしれない。だけど…僕はここの生活が好きなんです。アーシュやルゥやみんなとここで生きることが僕にはとても大事でそれが普通の生活で…それが望みなんです。あれが貴族の生活というのなら、僕には向いてない…」
 あの屋敷での事が思いだされて、俺はまた涙が滲んでしまった。
 学長はカップを持ったまま震えている俺の両手の拳をそっと握った。

「…わかるよ、ベル。私も、貴族の生まれだからね」
「え?そうなんですか?」
「三男だったから、無理に縛られることもなくて、学校を卒業して色々な国を奔放していました。でも、大人になるまでは…ベルと同じように嫌な思いも沢山しましたよ。…確かにあの趣向はここからすれば随分と異端に感じるかもしれないが、彼らもまたこの学校の生活を覗いたとしたらきっと不思議に思うのかもしれないね」
「どこが?」
「貴族も平民も関係なく、またアルトでもイルトも平等に一つ屋根の下で暮らすことは、世間では難しいのです。法の下では平等でも、見えない壁がありますからね」
 飲み干したティーカップをかたした学長は、今度は引き出しからキャンデーを取り出して、僕の手に握らせ「食べなさい。落ち着くよ」と言った。
 俺はキャンデーをじっと見つめた。アーシュの好きな薄荷味だ。彼にあげたらきっと喜ぶだろう。

「わかります。でもおかしいですよね。平民である僕の父の財産で僕の母の実家は贅沢な暮らしをしている。父を敬ってもいいはずなのに、彼らは軽蔑するばかりだ。生まれが何であろうとも、また父がどんなにあくどい実業家であっても、母やスタンリー家は父に敬意を持ってもいいはずです。僕は父を好きにはなれないけれど、一代で会社を大きくしたその腕を認めています。だって父が居なかったら…僕はここでこんな生活は送れなかったんだから…」
「ベル、君は本当に素直で正しい心の持ち主だね。私は君のような生徒を持つことが出来て嬉しいですよ。では君に理不尽な事を強いた叔父上であるエドワード・スタンリーをどう思っているの?」
「…僕は叔父をかわいそうな人だと思ってます。エドワードは…自分を憎んでいるんです。貴族でしか生きれない自分を…嫌っている。僕にはそういう風に見える。彼が僕にあんなことを強いるのも、自分の苦しみを知って欲しいからなのかもしれない…そんな気がしてなりません」
「そう…、ベルはそこまで理解しているのですか。では…エドワードの話をしても大丈夫ですね」
「え?叔父の?」
 学長は静かに頷いた。

「その前に私もひとつ…」と、トゥエはまた引き出しを開けてキャンデーを口に入れた。
「やっぱり薄荷味が一番心がすっきりするね。…どうしたの?遠慮はいらないよ、ベル。それとも薄荷味は嫌いだった?」
「いえ、大好きです…」
「アーシュの分ならまだあるから、気にしないで食べなさい」
 ああ、何もかもお見通しなのだなあ~、学長には全く敵わないと、俺は安心といくらかの嫉妬心を自覚しながらその薄荷飴を口に入れた。



 キャンデーが口の中で無くなってしまった頃、幾分すっきりした俺は学長の話の続きをじっと待っていた。
「さて、エドワードの話だったね」
「はい」
「エドワードは、この『天の王』の生徒だったんだよ」
「え?」
「彼がこの学校に編入して来たのは中等科の一年の秋だった。私は彼に『ユーリ』と言う名を与えたのです」
「…ユーリ」
「そう、エドワードは…ユーリはここに来てしばらくは酷く憔悴しきっていた。彼は…とても苦しんでいたんだ。敵わない自分の想いを自分の中で整理することもできずに…悩んでいた。また貴族での生活にも矛盾を感じていてね。ああいう中で生きる自分の世界をなんとか変えたいと心から望んでいた。私も何度か悩みを打ち明けられたよ。どうしたらあんな退廃しきった貴族世界をもっと規律正しい生活に変えられるのだろうかと…」
「…」
 エドワードがそんなことを考えてこの学校で過ごしたいたとは、思っても見なかった俺は、なんとも言えない気持ちになった。

「私は彼の目指すものが正しいことだと諭したよ。彼らの生活が長い歴史の中で蓄積されたものであっても、自分がそれに溺れる必要もないと、何度も言った。けれど…彼にはそれを壊せなかった。彼の家の重みが彼を押さえつけてしまったのだね。…ユーリで居る時はまだ良かったんです。しかし休日を過ごしたスタンリー家からここへ戻る度に彼は流されていく自分に苛まされていた。沢山の友人たちに囲まれながらも、彼は孤独だったのだろう。そして…一番大切なものを失った時、ユーリは一晩中泣いていた…」
「一番大切な…」
 エドワードの一番大事なものを失くした…何となくだがそれは俺の母、エドワードの姉であるナタリーが俺の父と結婚した事ではないかと思った。

「それは…僕の両親…母が原因なのではないんですか?」
「どうしてそう思うの?」
「母の気持ちはわかりません。母と僕との接触は極めて薄いからです。でも…叔父は、エドワードは母を…愛している。そんな気がします」
「君はそれを認めているの?」
「父と母の関係よりもずっと…愛おしい気持ちになれます。だって…確かな愛があるのだもの」

 ふたりの関係を直接聞かされたことはなかった。
 だが、あの母でさえ、エドワードが傍に居る時は傲慢な貴婦人から少女のような笑みを浮かべることがあったではないか。血の繋がった姉だからって、愛してならないという事にはならない。もし俺が…ふたりの子供であっても少しも卑下することもない。

「君が言うとおり、ユーリは君の母上を愛していたんだ。世間の感覚なら血の繋がった姉弟が愛し合うことは罪のひとつでもあるが、貴族は、血の繋がった同士が身体を繋いだとしても大した罪悪感はない。彼らにそういう倫理感はないからね。だけどユーリはね、とても苦しんだよ。稀に見る常識的な人間だった。それに彼はアルトでもある」
「え?エドワードが?」
「必死で隠そうとしていたけれど。自分の力で人の思いを踏みにじるのを恐れてね。ユーリはとても純粋なんだよ。だから姉君を愛しながら、見守るだけでいようと必死に自分に言い聞かせていた。姉君の幸せだけを祈っていた…」

 そうだったのか…エドワードは純粋に母を愛していたんだ。
 もしかしたら姉である為に果たせなかった苦しい想いをその子供である俺にぶつけているんじゃないのか。叶わぬ愛と姉を奪った父の子である俺への憎しみ、切なさ…エドワードが俺を憎まないはずはないじゃないか。

「叔父は苦しんでいたんですね。叶えられなかった想い人を政略結婚とはいえ父に奪われた。そして憎むべき父と愛する母との間に生まれた僕は、エドワード本人に似ている。そんな僕を見て、叔父はどんな気持ちだったのだろう…」
 俺は頭の中のすべてを吐き出すように呟いていた。
 学長の手の平が虚ろに彷徨う俺の目を正すように、そっと頬に触れた。

「卒業が近づいた或る日、ユーリは嬉しそうに私に話してくれました。『先生。僕に甥が生まれました。とても綺麗な金髪でマリンブルーの瞳の美しい赤ちゃんなんです。それに彼はアルトなんですよ』と。これ以上ないほどにユーリは喜んでいました」
「…」
「あなたのことですよ、クリストファー。エドワードは心から君の誕生を喜んでいたのです。そして今もきっと、君を愛している」
「…本当に?」
「本当です」

 エドワードが俺の誕生を喜んでくれた。
 それだけで胸が一杯になった。
 そして、夏の屋敷であった悪夢をすべて許してしまえると俺は思った。
 今はエドワードの愛情が歪んだものであっても、彼は苦しみ、俺を愛してくれた。それは充分な俺の存在意義だった。

「…わかりました。先生。僕はエドワードを許します。決して誰も憎んだりしません。そして彼を救いたい。心から愛していると伝えたいんです」
「ベル、君は他の生徒から比べてもとても大人です。色々な辛さを耐えてきた経験が君を強くしているんでしょう。でも我儘な子でいることも大事ですよ。貴族の生活を強いられることが嫌だったらはっきり言う事も必要でしょう。学校から何か言っても、彼らは聞く耳は持ちませんからね。申しわけないが、力にはなれない」
「はい、わかっています。学校と外の世界の間に干渉はなにひとつとしてはいけないのがこのサマシティの規則ですから」
「だから私に出来る事をしましょう。ベルの支えとなるものを与えられるかもしれません」
「え?」
「『真の名』を今教えましょう。本当なら中等部に入った時に与えるものなんだけどね、特別です」
「…はい」
 「真の名」の意味をその頃はあまりよく判ってなかった。ただ特別な者だけに捧げられる聖名だという事は聞いていた。

「ベルゼビュート・フランソワ・インファンテ。これが君の『真の名』です。覚えておくように」
「はい」
「ただし、人の耳にあまり聞かせてはなりません。『真の名』は必要な時だけに言の葉にするのですよ」
「…わかりました」
 
 ベルゼビュート・フランソワ・インファンテ…俺の本当の名前を聞かされた時、アーシュとルゥの顔が浮かんだ。だから俺は聞かずにはおれなかった。
「先生。『真の名』を授かるのは僕だけじゃありませんよね」
 俺の質問に学長は微笑んで深く一回だけ頷いた。それだけで充分だった。
 俺には仲間がいる。『真の名』を共に受け継ぐ仲間がいる。
 そして、それは力になる。

 エドワードの為し得なかった理想を俺が描けるかもしれない。
 俺の力で守りたいものを守りきることができるかもしれない。
 美しい世界を作れるかもしれない。

 それは、俺の果てのない欲望だった。



hane


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天使の楽園、悪魔の詩 その五 - 2011.06.24 Fri

5、
 学長との話が終わった俺は、ルゥとアーシュが待っている部屋へ戻ろうと立ち上がった。
 部屋を出る際、学長はアーシュ達の分のキャンディーを忘れなかった。
 
 キャンディーを受け取りながら、俺はもうひとつだけ学長に問いかけた。
「先生、『官能』の力とはどういうものなんでしょうか?エドワードはセックスを知ることが力を得ることになると言ったんです」
「そうですか…」
 学長は明らかに困った顔で俺を見つめた。
「君がその意味を知るのはまだ早いと思います。…ベルにとっては間抜けな言葉でしょうが、子供は子供らしく生きなさい。どうせ近い将来そのことを知る日が来ます。その時を待つ子供の時間は無駄じゃない。それだけです」
「…わかりました」
 はぐらかされた…
 「官能」について、これ以上学長から聞き出すのはどうやら無理らしい。
 
 子供は子供らしくか…一刻も早く大人になりたい俺にはホントに間抜けな気休めだ。
 仕方ない。別な手段を考えよう。
 俺の思惑を学長に悟られぬよう、気にもしていないフリをしてお礼を言い、俺は学長室へ戻った。
 ドアを開けた途端、ソファに座っていたふたりが飛び跳ねるように立ち上がって、俺に走り寄る。

「ベルっ!どうだった?」
「トゥエはちゃんと叔父さんに話してくれるって?」
「もう、ベルに酷い事したりしないって約束できるの?」
 俺の腕を取り、ルゥとアーシュは必死に俺の様子を伺う。
 …本気で心配をしてくれていたんた。
 今にも号泣しそうな顔で俺を見つめるふたりを見て、こっちの方が泣きそうだ。

「アーシュ、ルゥ…大丈夫、大丈夫なんだよ」
「本当に?」
「もう叔父さんのところに帰らなくてもいいって?」
 真っ直ぐに俺の心に飛び込んでくるふたりの純粋無垢な精神の力。
 凄まじい濁流が俺の心の染みをすべて洗い流していく。
 後に残るのは眩い清いせせらぎだ。
 …なんと言う感情をくれるんだろう。軽蔑や同情でもない、ただひたすらに俺を憂うだけの想う心。
 俺は…その想いにどうやって応えればいい。
 
「…うん、もうね、なにがあったって僕は傷つかないんだ」
 俺は零れる涙を拭いて、明るく笑った。
「…ホント?」
「うん、ホントだよ。全部ルゥとアーシュのおかげだ。ありがとう」
 ありったけの心を込めてそう伝えた。
 その言葉を聞いたふたりは俺に飛びつき、そして泣き出した。
「良かった、良かった」と、叫びながらふたりは泣いた。
 その涙が、その感情こそが、俺を支える「力」になり得るのではないか…
 ふたりを失いたくない。
 ふたりの信頼に値する人間になりたい。
 ふたりを守るためなら、どんなことだって…

 今日から俺はもう泣くだけの子供ではいまい。

三人


 それから俺は休日になっても家には帰らなくなった。 
 この守られた空間で自分を鍛えることが必要だと思ったからだ。
 学長が言うように、まだ子供の俺はあいつらを打ち負かす(または言い負かす)術はない。力と知識を得る時間が必要だった。
 暇があれば図書館へ通った。
 図書館は「天の王」学園の中心である聖堂と隣接している。
 西の中等科からでも北の高等科からでも同じ距離で通える。
 冊数はこの街最大だと言われ、公にできない秘蔵書も多いと聞く。
 簡単には貸し出しは出来ないけれど、この図書館に来れば、年長の生徒からも「力」の秘密を聞けると思ったんだ。
 だが、そんな簡単には事は運ばない。
 俺はまだ初等科だから、図書館へは簡単に入れなかったし、話を聞こうと思っても「せめてその小さなタイがリボンにならなきゃ、理解できないさ」と、軽くあしらわれる。
 性体験だったらおまえらに負けないぞ、と息巻いても、彼らはせせら笑うだけだ。
 仕方がないから、自分のテリトリーに帰る。
 俺の周りに変化はない。 
 皆あどけなく純粋に子供時代を楽しんでいる。
 少しばかりの残虐性はあっても無垢ゆえだと許される時代だった。

 「ベル、冒険に行くよ」
 アーシュとルゥが俺を呼ぶ。
 「うん、わかった」
 彼らの傍にいる時は、俺も無垢な子供でいられる気がする。


 翌年、初等科の最終学年を迎える夏。俺はスタンリー家の屋敷にひとり旅立った。
 広間で待っていたエドワードは、疑心暗鬼の顔で俺を見た。
「まさか、君から来てくれるなんて思わなかったよ、クリストファー」
「だって、あなたが迎えを寄越さないから、ひとりで来るしかなかったんだ」
「嬉々として来てくれるとは思っていないからね」
 エドワードはクッションの深いソファに身を投げ出すように座り込んだ。
 俺は彼をよく見る為に、彼の座った正面に近づいて立った。
 
 去年に比べてエドワードは随分歳を取ったように見えた。まだ28のはずなのに、四十過ぎの人生を見極めた疲れきった親父殿…だが嗜虐に満ちた引き攣った笑いも、今は口元には浮かんでいなかった。
 俺は哀れに思った。
 おかしい話だが、どう考えても俺はこの人を嫌いにはなれない。
 それにどちみち俺がこのスタンリー家を継がなきゃならないのなら、この叔父の力が必要となるはずだ。

「ねえ、エドワード」
「…何だ?」
「僕ね…学長に『真の名』を貰ったんだ」
「え?」
 エドワードの青い瞳に光が戻る。俺はそれを見逃さない。
 エドワードは何回も瞬かせ、俺を凝視した。
 俺と良く似た面差し、目の色、髪、背格好だって、僕が大人になればエドワードと同じくらいにはなるだろう。ねえ、やっぱり俺達は分かち合うべき関係なんだろう?

「エドワードは…『ユーリ』って呼ばれていたんだね。僕ね、色んなことを、学長から沢山聞いたんだ」
「生徒の詳細を漏らすなんて情報漏えいだ。それともモウロクしたのかな、トゥエ学長も」
「僕は聞いて良かったと思っている。だって、エドワードの事をすごく好きになれたのだもの」
「…簡単に騙されるなよ。学校は自分らの好みにコントロールするところだ。それでいて何の責任も負わない。まさに理想だけを押し付ける」
「理想がなければ、人は前を向いて歩けないよ。僕にとって理想は学校で学び、あなたの理想を僕に導いて欲しいと思っているんだけどな」
「簡単に良く言う。…俺が…失敗したことを嗤っているのか?クリストファー」
「笑わないよ。だって、あなたは充分苦しんだ。今だってそう…だけど僕がいる。ひとりじゃないって思えれば苦しみも分けられるでしょ?僕の親友はそう言ってくれた。だから…僕は前を向いて歩けるんだ」
「…」
「エドワード、僕があなたに与えるものは信頼と愛だ」
「信じられない。俺はおまえに…まだ子供のおまえに…」
 エドワードは口ごもり、そして頭を抱えた。
 その時、気がついたんだ。彼は俺を弄んだことを、ずっと後悔していたのだと。
 俺はなんだか可笑しくなった。
 彼は貴族のやり方を俺に教えただけであり、それは彼らの中では当たり前であったのだから、普通の貴族であるなら、気にも留めることもない。
 真面目で純粋なエドワード。トゥエの話す「ユーリ」の頃と少しも変わっていない。

「エドワード、あなたを愛している。信じて。僕は何ひとつ傷ついていない。だからふたりで描いた理想を実現しようよ。その方が自堕落の生活よりも、極めて刺激的な『力』を発揮できるとは思わない?」
「クリス…おまえ、革命家にでもなるのか?」
「僕の真の名は『ベルゼビュート・フランソワ・インファンテ』って言うんだ。…ね、負ける気がしないでしょ?ユーリ」
「…素晴らしいね」
 エドワードは両手を広げて俺を抱き寄せた。
 俺達は誓いのキスをした。決して失望させないとお互いに誓った。
 俺の顔を撫でながら、本当に良く似てると優しく笑う。
 「母に似ていた方が良かった?」と、言うと黙ったまま微笑んでいる。

「ひとつ聞いていいかい?」
「何?」
「なぜ、私を許す気になったんだ?」
「僕が生まれたことを、あなたが喜んでくれたから…それだけで充分だった」
「喜ぶのは当たり前だったよ。ナタリーの血が流れている赤子を、私は愛さずにはいられなかった…」

 その夜、寝室に誘ったのは俺の方だった。
 一年前と違って、エドワードは俺の身体のひとつひとつを丁寧に愛してくれた。
 
「少年の成長とはとてつもないね」と、笑う。
「心?それとも身体?」
「いや、追求する欲と技だ」
 やわらかな微笑みをたたえながら俺の胸を愛撫するエドワードに、もう暗い退廃した影は見えない。
 
 エドワードとの「官能」を楽しみながら、俺はひとつの戦いに勝ったのだと思った。



ベルエドワード



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