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2009-02

宿禰凛一 「密やかな恋の始まり」 6 - 2009.02.27 Fri

6.
 八月も半ばで、世の中お盆の帰省で街も少し閑散とした頃、俺は隣町の書店へ買い物に出向いた。
 
 二階の輸入書の写真コーナーで目的の本を探し出す。
 西欧を中心とした小さな教会ばかりのフォト集で、どうしても見たい建物があった。

 教会はゴシック建築の壮麗さが見ごたえのあるものだが、地方によって、建築方法も様式も変わってくる。キリスト教の教会と言っても宗派により独自の多様性に満ちたものになっていてそれぞれに面白いんだ。
 俺はロマネスク様式からゴシックに変わる境目のクリアストーリや内陣に興味があり、その諸々の時代の貴重な写真集を探していた。

 輸入書物なんて、人気のない場所だ。
 誰もいない静けさの中、ぱらぱらとページを捲っていると、後ろから「あっ」という声がした。
 振り向くと…なんと!水川青弥が目をぱちぱちしながら立っている。
「ミナ…川…何?おまえもここに用?」
「う、うん。え…と、…そ、その本…」
「これ?」俺は持っていた写真集を閉じて水川の目の前に差し出す。
「やっぱりこれだ…」
「おまえが探してたの?」
「うん。この写真家のフォト好きなんだよ」
「教会の写真だよ?」
「うん、でもなんか心象風景ぽいでしょう。彼の撮り方はいつも何かを観る者に感じさせるんだよね」
 おい、結構ロマンチストじゃないか。益々俺好み。

 待ち焦がれた物に再会するみたいに上気する水川を見て、いいアイデアが浮かんだ。
 思わず口端が上がる。
 この機を逃すバカなんているかよ。
 こういう運命的な接点は遺憾無く利用しなきゃならない。だろ?
「欲しい?」
「え?ああ…この本?」
「何と思ったよ」
「べ、別に…宿禰が先に見つけたんだから、おまえが買えばいい。おれは他で探すから」
 本を閉じ、俺に無理矢理押し付けて踵を返す水川の腕を俺は掴んだ。
 …細い…いや、俺もかわらんから人のことは言えねえんだが。
「待てよ。水川」
「…」
 掴んだ先を睨むから、慌てて離した。
 まだスキンシップは早かったか…
「これ譲るから、おまえが見た後、俺に見せてくれない」
「え?」
「ゆっくりでいいよ。待ってないから。どう?」
「でもそれじゃあ、宿禰に悪い」
「そう思うなら昼飯付き合ってよ。俺まだ食ってないんだ」
「…いいよ。おれも食べてない」
「じゃあ、決まりな」

 俺たちは駅の近くの店で膝を突き合わせてそう美味くもないファーストフードを食べた。
 お盆は実家に帰るのかとか、寮は楽しいのかとか様子を伺うが、水川は短い返事だけで、どうも会話が長続きしない。
 俺に視線を合わせようともしないし、このままじゃ埒が明かない。
「水川」
「なに?」
「俺の事、嫌い?」
「え?…嫌いじゃないよ」
「そう?俺、避けられてる気がする」
「そ、そんな事ない」
「じゃあ…友達にならない?」
 まずは友達からでいいだろ?
 俺の方は早急にでもそういう関係を望んでいないわけではないが、こいつはどうも経験は無いと見た。
 いきなり恋人として付き合ってくれと言っても戸惑うばかりだろう。
「と、友達って?」
「あの温室、俺達だけの秘密にしてさ、色んな話でもしねえかって思って」
「色んな?」
「例えば…この写真集の話とか…どう?」
「…いいけど」
「じゃあ決まりな。来週は…おまえ実家に帰るんだったな。じゃあその後、金曜の夕方、どうかな?」
「…いいけど」
「ミナから借りたタオルも返さなきゃな」
「み…な?」
「ごめん、嫌だった?」
「いや、いいけど」
「じゃあ、俺の事リンって呼んでよ」
「え?」
「凛一だからリンだよ。言ってみろよ」
「…り、ん」
「そう、ミナはいい奴だね」
「…なんかバカにされてる気がする。宿禰は…いつも誰にでもそうなのか?」
 お?それって俺に対する独占欲の兆し?面白い。確かめてやる。
「…」
「なに?」
「リンってゆえよ」
「…ばかばかしい。おれ帰る」
 その反応は計算済み。ミナの行動は案外わかりやすいかも。

「ミナ、約束忘れるなよ」
「…気が向いたらね」
「待ってる」と、片手を振る俺を、ミナは少し頬を赤くして俺を見つめ、そのまま階段を降りていく。
 ほら、ミナって呼ばれるのも嫌がってない。強い拒否も見当たらない。
 これはもしかしてもしかしたら脈あり?

 幸いなるかな この身を信じ 故に愛する者を知ること 光をもってその罪を許さんとす







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宿禰凛一 「密やかな恋の始まり」 5 - 2009.02.26 Thu

5.
「ちょっと雨宿りさせてくれよ」
 そう言って、俺は返事も待たずに水川の傍に近づいた。

 水川は見るからに俺を訝しんで、全身で警戒していた。
 まるで猫が逆毛を立てるみたいに全神経を張り詰めて。
 自己紹介がてら握手を求めても、ちらりと見るだけで返そうともしない。
 余裕の無い奴め…
 意外と純情なのかな。
 …まさかまだ何も知らないって事は…ないだろうな、この顔で。
 本人にその気がなくても周りがほっとかないだろう。
 まあ、確かめりゃすぐわかるけどな。

 スケッチブックと鉛筆を手にした水川は、絵を描こうとしていたらしい。
 続けようかしまいか躊躇っているのを感じて、俺は水川の傍に立ち、彼のスケッチブックを覗く振りをしながら、その表情を見つめた。
 すると水川が俺を見上げて、そのままお互いが見詰め合う格好になる。
 少し紅潮した頬が光と影になり、茶褐色の髪の上に天使のワッカが見える。
 細い銀縁の眼鏡も繊細な顔に良く似合っている。
 変だな…目が離せねえ…

「あ…」
 声にならない水川の口が少しだけ開いた。
 濡れた俺の髪のしずくがスケッチブックの白い紙面を濡らした。
「悪い…」
 思わず後ずさる。
 水川は黙って自分のカバンから小さめのタオルを俺に差し出した。

 …これって俺に対する好意って受け取っていいのか?それとも単なる親切心か…
 まあ、いい。何方道確かめる時間も方法も幾らだってある。
 俺は部屋の隅の目に付いた木箱を運び、水川の斜め後ろに座り、様子を伺うことにした。

 一服しようとしていた事を思い出し、煙草を取り出して火を付けようとするが、さっきの雨で湿気っているのか思うように付かない。
「ちっ…」と、吐き捨てつつ水川の方を見ると、睨みつけられていた。
 え?煙草がダメなのか?それともおまえも一本欲しいのか?
 …まあ普通に考えれば前者だろうな。
「煙草は…よくないよな」箱を仕舞いながら様子を伺うと、
「一応、ここで煙草は吸うなって言われてるから」と、言う。
 気になって「誰に?」と問うと、
「藤内先生」
 トウ…ナイ…ああ、生物の変人の先生か。あれがここの温室を知ってて、水川とも知り合いねえ…
「……水川って藤内と仲いいの?」
「べつにそういうわけじゃない。たまたまここで顔を合わせただけだ」
 …本当にそれだけかよ。あのおっさん、むっつり助平の様相だぜ。ミナおまえ狙われてるんじゃないのか?
 まあ、いい。俺が変な虫が付かないようについでに監視してやるよ。

「なあ、描いてるとこ見てていい?」
 これは単純に好奇心のつもりで聞いてみた。
 何より俺に対するそのピリピリした警戒を解いてやんなきゃ先に進めそうもない。

 俺ってそんなに危険な顔してんのかな~ちょっと自信なくなってきたよ。
 そんな事を考えていると、水川は目の前の鉢の植物とスケッチブックとに交互に目と顔をやり、無心に鉛筆を走らせている。
 …なんつう半端ない集中力。
 さすがに学年一位ってことだけあるな。優等生ミナくん。
 俺が近くにいる事なんて忘れてしまってる?

 そっと近づいて斜め後ろ45度から顔を覗く。
 …少し唇を尖らせて真剣な顔。長い睫毛だ。
 翳る薄曇の日差しが白肌に弱く照り、少しだけ儚げに見える。
 その薄青の翼も今日は静かに閉じているようだ。
 やっぱり幾分憂いの見える姿態だな。
 強引に迫るのは得じゃない。
 そう思い、その細い首に指を当てた。

「な、なに?」
 飛び上がる程に肩が跳ね、理解不能の顔で俺を見る。

 …一応ね、マーキングだよ、ミナ。
 俺の印を付けた。
 俺がおまえを忘れないように。
 おまえが俺を記憶するように。



 数日後、俺達は運命の再会って奴をした。
 あのマーキングが効いたかどうかは知らんが、俺にとってはチャームの魔法だね。
 もうすぐおまえは俺の虜になるんだ。
 なあ、そうだろ?ミナ。



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宿禰凛一 「密やかな恋の始まり」 4 - 2009.02.24 Tue

4.
長い長い夏休みが始まった。

毎日暇を持て余し気味ではあったが、父優一が昨年再婚した女性を連れてくるなり、夏休み中は一緒に同居って事で、何だか嬉し恥ずかし状態での日々に激変。
実は、外交官の父は日本に長期に居ることは少なかったから、久しぶりに会うと俺は結構気を使ったりする。
この新しい母親とも電話で何度か挨拶した程度だ。
去年の俺の問題が色々あったので、再婚したばかりで迷惑をかけるわけにもいかず、事件のことは曖昧にぼかしてあるんだ。

実際会ってみるとこれが素敵にチャーミングなおばさんで、俺も慧一もすぐに気にいった。
料理も上手いし、暇があれば料理やお菓子の作り方など色々と教えてくれる。
「これからは男の子も何でもやらなきゃモテないわよ~慧一君も凛一君も色男だからって胡坐掻いてちゃダメよ。家事が出来てこその色男!私がしっかりと仕込んであげるわ」などと言い、いいように手伝わされている。
実母の記憶は俺にはよく染み付いていないが、母とは違う、全く新しい風を吹き込んでくれるこの母親が俺は好きだ。

学院の方では夏休みの間でも夏期講習があってはいたが、俺は参加しておらず、わざわざ登校する必要はなかったが、時折「詩人の会」の会合があり、仕方無しに片道徒歩15分の校舎まで出向いてやった。

「詩人の会」はクラブ活動としては少々変わっている。
週二回定期的に部員は集合し、毎回テーマを決め、それに沿った詩を探し、一時間以内で気に入ったひとつの詩を覚え、披露するというとんでもない活動内容だった。しかも月の最後の会合では自分の作った詩を一人ずつ壇上に上がって朗読しなければならない。
…過酷なサークルだ。
こんな部活動なんか誰も参加しないと思いきや、三学年合わせて65人もいるんだ!
しかもこの時期三年は受験勉強で忙しいはずにも関わらず、夏休みを除いては、欠勤知らず…恐ろしい事ついでだが、一年生も未だに退部した奴は独りも居ない。
変な教師もいるし、さっさと辞めてやろうと思っていた俺も、三上の再三の引き止めにより未だ部員のまま、こうやって夏休みまでつき合わされている始末だ。
まあ、ここにいる殆どの生徒が推薦狙いっていうんだから、国立エリートコースは初めから望んでおらず、楽に美味しい大学に入ろうっていう魂胆が丸見えなので、ヨハネ学院の中では割と変り種が多い。
俺に言い寄るのも大体がここの先輩方で…
「なあ、宿禰」これもそのひとりで3年の永尾先輩。家が近いからと夏休みも出勤中。
「なんですか」
「今日の藤宮、おまえをやたら色目がちに見てたよな」
「先輩暑気あたりじゃないですか?大体あの人はどの生徒もああゆう目で見てますよね。俺に限ったことじゃない」
「そうじゃなくて…おまえがさっき朔太郎の詩を読んだじゃないか…あの、万有の 生命の 本能の…?」
「孤独なる 永遠に永遠に孤独なる 情緒のあまりに花やかなる…ですよ」
「そう!そのなるだよ!その詩を読んだおまえを見て、藤宮、こう呟いたんだぜ『なるほど凛らしい』って。どうよ」
「…き、気持ちワル…」吐きそうになった、マジで…
「おまえ、名前呼び捨てられてる仲ってことじゃねーのかい?凛一くん?」
「知らないですよ。大体…先輩がそうだからって、俺を勝手にゲイって決め付けないでもらえますか?俺、きゃわゆいおんにゃのこにも萌えますよ」
「あ!にもってゆった~凛一くん墓穴っ~」両手の人差し指を指して笑いこける先輩を無視して教室を出る。

…ったく、藤宮の奴、ムカつく。こっちがやっと信じてやろうかと情けをかけてやった途端、これだからな。おまえに呼び捨てにされたくねえし…
「おい、凛」背後で呼び捨てられた俺は、気分が悪い所為か思わず声を荒げた。
「だから呼び捨てるなっ!…?な、なんですか?」振り向いた目の前に居たのは元凶たる本人だ。
「おまえん宅、保護者いるか?」こいつは伊達眼鏡を数種類持っていて、今日は紺のカラーフレームの少し色の付いた眼鏡だ。どっちにしても度は入ってないことはあからさまだ。
「…今なら沢山居ますよ、両親も兄も」
「じゃあ、一度家庭訪問に行っていいか?」
「は?…なんで夏休みに?大体高校って家庭訪問ってあるんですか?」
「問題や素行の悪い生徒は親に報告しなきゃならない義務がある。この間の三者面談の時もおまえの保護者は来なかったしな」
「みんな忙しいんですよ。それを言うなら寮に入っている奴なんか、三者面談に親は来てないでしょう。どうして俺にだけ言うんですか?それになんで担任の神代じゃなくて、副担任のあんたなんだ?」
「神代センセは定年後のバケーションプランを念入りにご検討中だ。副担任の俺に一任するとの御沙汰。おまえの家、学院から近いじゃないか。折角だからご両親に会って色々と話したいと思ってね」
「…何の話ですか」
「学校の裏庭でこっそりと一服とか…」
「…」
「言わないけど」
「好きにすりゃいい。けど、俺を名前で呼ぶんじゃねえよ、藤宮…」
「…怖いね」
「俺はあんたとは関わりたくねえんだよ。静かに高校生活を楽しみたいからな」
「…わかっているつもりだよ。だから……まあ、いい。そのうち伺うからって言ってくれりゃいいさ。じゃあな、凛一」
「呼ぶなってつったろっ!」

…腹が立つ…なんだあいつ…全部知ってるみたいな顔しやがって…クソッ!
裏庭に回って腹立ち紛れにムクノキの幹を蹴り、気休めに一服やろうと煙草を探し始めた途端、曇天の空からいきなり土砂降りの雨が降ってきた。
さすがに木の陰でも雨宿りは無理だと思い、例の温室に逃げ込もうと足早に向う。

誰か居る気配を感じ、少し迷いつつも温室の扉を開け、俺は予感したとおりの奴の姿を見つけた。
彼が…水川青弥が振り返り、俺を見た。
突然の珍客に驚き、困惑した眼鏡の奥のキラキラした眼が俺を捕らえて離さなかった。
ああ、こいつは…

…この永遠なる 密やかなる 花やかなる 情緒を讃えよ


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宿禰凛一 「密やかな恋の始まり」 3 - 2009.02.23 Mon

3、
学校にも漸く慣れた頃だった。
珍しく兄が風邪をこじらせて臥せっていた。
「鬼の霍乱って言う奴だね。ずっと部屋にこもっていただろ」
「レポートが間に合いそうに無くて焦ったよ。なんとか合格点はもらえそうなんだけどな」
「休学してんのに、そういうのはやらなきゃ退学なんてさ…一流の大学院は大変だな…熱は…7,5…大分下がった」
「たまに病気になると世話人の優しさが身に沁みていいね。おかゆ美味しかったよ、凛」
「姉貴仕込みだからな」
「…で、学校は?上手くやってんのか?嫌な事とかない?」
「上手くやってなきゃ毎日真面目に行ってないよ。退屈だけど、嫌じゃないよ」
「そうか…なら安心した」
「薬も飲んだし、もう暫く休んでいろよ」
「うん、ありがと」
目を瞑る慧一を確かめて、俺は寝室を出た。

あれから三ヶ月近くになるが、今のところは至って平和な高校生活が送れている。
先輩と思われる奴からのアプローチや、十とはくだらない熱いラブレターも頂くが、完全無視だ。男子校だから珍しくも無いだろうし、その気が無いわけじゃないが、こっちは生まれ変わった気分で学生業やっているんだから、お引取り願うことにしている。
力ずくでこられた時は…俺、小学校卒業まで護身用として空手習わされているからな~実践も結構やってるし…貞操は守る自信はあるつもりだ。
あれだけ俺に仕掛けた藤宮の奴もごく普通に他の生徒と変わりなく接しているので、今のところは問題ない。
俺への信頼を本気で勝ち取る気でいるのかどうかは怪しいが…
あの一件については…慧一には話していない。
これ以上俺の事で心配させたくないし、まだ何も起きてないうちから言うような事でもない。

友達は結構出来た方だ。
この学校は他県からの生徒も多いし、中学の頃の顔見知りが居ない事が俺を安心させた。
しかも、勉学第一主義の真面目なお坊ちゃんばかりだから、プライドが高い割に、俺みたいなちょろっと顔が良くて、適当に話がわかる人間は好まれる。
中学で粋がっていた分、俺はここでは大人しい従順な生徒を心がけた。

それでもたまに息抜きをしたくて、一服できる場所を探しに、あちこちとうろついていると、別館の裏庭にいい休憩所を見つけた。
温室みたいだが、誰も手を入れていないんだろうか…
入ってみると、外観よりもキチンと整理されている。
沢山の鉢に植えられた植物は伸び放題だが、枯れているものはなく、誰かが世話をしているようだ。
園芸部とかかな…
それにしては外からの見た目が悪すぎるだろう。これじゃ廃屋だ。
まあ、一服するには丁度いいオアシスって事にして…

心も肺も癒しながら、西に向かう太陽の光が硝子に差し込んでくるのを眺めた。
近寄って硝子の向こうの景色を見る。
ここからだと、運動場を挟んで校舎の右斜め、レンガ色のチャペルのステンドグラスが見える。
ここのステンドグラスに画かれているのは七羽の白鳩がアーチに向かって飛翔する絵だ。丁度尖塔のウリエルに救いを求めるようにも見えるわけだ。
相変わらずウリエルの翼は、太陽に挑むように神々しく輝いている。

…静かな午後…まどろみの中、ゆっくりと時間が過ぎる。

…あの人のピアノが聴きたい。
こんな陽だまりを知っていれば、あの人も救われたんだろうか…

すべての罪を我が肩に…
そんなもん重くて肩が凝っちまうよ。
両手を広げたその後に、払って落として逃げてやるのが勝ちってもんだ。

その「まどろみのグリーンハウス」と名づけた寂びれた温室は、俺にとっては絶好の息抜き場所となった。
ゆっくり時間を楽しむには最高の隠れ家。
ただ、誰かがいる気配がする時は近寄らないように気をつけた。
ここはあくまでも孤独を楽しむ場所であるべきだ。

日差しが強くなり、制服も夏服に衣変えになった頃、いつものように温室に近づいてみると、誰かがいる。
いつも俺のかわいい植物達を世話してくれる園芸部員の方かな?などと思い、こっそりと様子を伺うことにした。

俺のお気に入りの場所に立って硝子窓から、向こうを眺めている後ろ姿には見覚えがあった。
気がつかないようにそっと回り、横顔を伺う。

…水川青弥だ…
しかもその手には煙草を持って…慣れている風情で銜えやがった。
なんだか可笑しくなった。
学院一頭のいい優等生がこんな寂れた温室で、一服しけ込むとは…なんつう俺好み。
まあ、入学当時から気にはなっていたんだが、隣のクラスとはいえ、系列も違うし、接点もないしな。
何より…向こうが俺を意識してかどうか知らんが、警戒している風にも見える。
あの手合いはいきなりこっちが攻めても逃げるに決まっている。
手に入れるにはその警戒心をゆっくりと解きほぐしてやんなきゃならない。

それに…ああゆう綺麗なのは、見ているだけの方が救われたりするのさ。変に汚しちゃいけないシロモノだってあるからな。

夕陽に映えるその姿を暫く眺めた後、俺はその場を離れた。

水・川・青・弥…
とうとうと隅々まで行き渡る清き水の流れ…鮎かな、山女…いや、あれは流れそのものだ。
流れを遮ってはいけない。大海まで澱み無く注いでいかなきゃならない。

俺はそいつを勝手に「エコミナ」と、名づけた。



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宿禰凛一 「密やかな恋の始まり」 2 - 2009.02.20 Fri

2、
「宿禰、おまえ部活何にする?」
「部活…必須じゃねえだろう?」
「ば~か、形だけでもこの課外活動に参加してりゃ、推薦で大学受ける際、内申点が高くなるだろ?」
「はあ、さいですか」
「俺達みたいな愚民は初めから推薦狙いって手筈でどうっすか?」
「おまえと一緒にするな」
二日と待たず、すっかり打ち解けた三上は、どうしても入りたいサークルがあると、放課後、俺を無理矢理同行させ、入部の手続きに図書準備室へと向かった。

「図書準備室って言っても、要は自習室だよ。試験前だと図書館の方が満員になるから、学年毎に振り分けてるって話なんだ」
三上のどうでもいい話に相槌を打ちながら、目的地に到着する。
…は?
「なんで、こんなに入部希望者が多いんだ?」
入り口に並ぶ生徒の数は二十人以上。中を覗くと三十人はくだらない。
「毎年、ここの部の推薦貰った奴が、いいとこの大学ばっかり合格でさあ。そんで有名私立狙いの奴等が殺到するって話」
そんな嘘くさい話を本気にしてんのか、ここの奴らは。
頭のいい非常識なお坊ちゃんの常識か、これは。
「今年はテストがあるって言ってたな」
「…サークル入るのにテストがあんのか?…俺やめる…」
「待てって!宿禰。な、俺一人じゃ心細いんだよ。今年はここの顧問はうちの副担任だって話だからコネも効くばず!」
「じゃあ、俺、必要ないだろ!」
「頼む!宿禰。俺、詩ってあんまり知らんのだよ」
「…し…詩?」
「そう『詩人の会』」
「…なんだよ、それ…」
「俺もよく知らんが、有名な詩人の詩や自分が作った詩を朗々と朗読する…待って~っ!宿禰っ!」
「勝手にやっとけ!」
「親友だろ?」
「誰がだっ」
「俺、人のいい三上君を助けると思ってさあ」
「…」自分で言ってもこいつには何か嫌味がないから、得だな。
「ね、色男」
「わあったよ、受けるだけだからな。落ちても知らんからな」
「ありがと!親友よ、感謝する!」
昨日知り合ったばかりで親友呼ばわりされるのも…まあ、悪い気はしない。

…昔はそういう奴も少なくなかったけど、事件の後は親友と思っていた友人達はあっさりと離れていった。
そういうもんだろうと、思った。
誰も自分が一番かわいいんだから、不利になるものは排除しなけりゃならない。
十五歳でそこに辿り着かなきゃならないなんて、信仰心が足りなかったか?
俺に羽なんて、とっくに無いんだろうな。


入部希望者ひとりひとりを呼んで、知っている詩を諳んじさせる。それを最後まで間違えずに言えたら、合格らしい。
皆、教室の端の教師用の机に居座った顧問の前に立って、四苦八苦している様が見て取れる。
三上が呼ばれ、頭を掻きながら、懸命に喋っている。
暫くして、帰ってきた三上は親指を突き出して、片目を瞑った。
どうやら合格らしい。
『何読んだんだ?』と、小声で呟く。
『みんな違って、みんないい』と、言い、にか~っと笑った。三上らしい選択だ。
テストが終わった者は帰っていいらしく、溢れかえっていた教室も閑散となってくる。

希望者の名簿順なら、三上の次のはずの俺の名前はまだ呼ばれない。
ひとり、またひとりと去り、
そして…残る生徒は俺ひとりとなる。

嵌められたな…と感じた。
確かにあの顧問兼副担任は、俺向きなのかも知れない。向こう側にとって見ればだが。


「宿禰…凛一…いい名前だね。このクラブに興味があったの?」
古文と漢文担当の藤宮紫乃先生は、名簿にペンを落としながら、ゆっくりと俺を見上げた。
伊達だと思われる眼鏡の奥から見つめる目でわかった。
おまえ、兄貴と一緒だろ?
だが安心しろ。俺はおまえを選ばねえから。
「…先生と同じぐらいに関心は無い。が…友人に誘われたんですよ。こんなんで、テスト受ける資格ありますか?」
「別に構わないよ」
一見興味無さそうに見えるがこういう奴が一番性質が悪いんだ。
こいつ、メッシュ入れて、ルビーのピアスまでしてんじゃねえか。
こんなの良く雇ったな。
この学校の事、もうちょっと調べて受けた方が良かったんじゃないのか?
入学早々にこんなに後悔するなんて…最悪だ。

「君の中学時代、少し調べたんだが、興味深いね」
「個人情報の閲覧は禁止じゃないんですか?」
「副担任が自分の受け持ちの生徒の事を知らないんじゃ、信頼関係は作れないだろ?」
「充分不信感で一杯なんですがね」
「俺は先生で君は生徒。親愛の情で結ばれる…美しいだろ?」
「愛も情けもあなたから欲しいとは思いませんね」
「では、そういう詩を聴かせてくれないか?」
「…」
睨みを利かせてもこういう手合いには効かないことは承知だ。
さっさと終わらせて帰ろう。

「…夜と言う妖怪が 闇色の王座によって 悠々とあたりを覆い 
只、堕天使ばかりがうろつく ぼんやりと淋しい道を巡り 
遠く仄暗いチウレから 時間と空間を越えて 
荘厳にひろがる荒涼と 妖しき郷から 
漸くわたしはこの国に着いた…」
俺はそう短くもない詩を澱みなく読み上げた。
死んだ姉から嫌と言うほど聞かされた詩だから、間違えようはない。

「ポオだね…『幻の郷』。この詩が好きなのか?」
「嫌いですよ。ポオは全部嫌ですね。俺は絶望を詠う詩人はあなたと同じくらい信用できないと思ってますよ」
「…ポオは俺も好きじゃないが、凛一君は好きだよ」
「…あんたみたいな奴に名前で呼んで欲しくない」
「君の信頼を裏切らないよう心がけるよ。合格だ。来週からよろしくな。宿禰君」
俺は一刻も早くここから出たかった。
返事もせずに帰ろうとすると、後ろから呟くような声が響いた。

「安心しろ。おまえには六つの羽がある。ひとつぐらい無くしても充分飛翔できるさ」

何も知らないクセに勝手なことを言うなっ!


text by saiart


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宿禰凛一 「密やかな恋の始まり」 1 - 2009.02.19 Thu

rinmina6

green house 宿禰凛一編 「密やかな恋の始まり」

1、
 折角気分一新で真面目に学生生活を楽しんでやろうというのに…

 伝統と格式のある聖ヨハネ学院高等学校に、兄貴の鬼のような特訓の成果が実ってなんとか合格した俺は、意気揚々と入学式を楽しみにしていたが、思わぬ事故で欠席しなければならなくなった。
 で、2日ほど入院。
 で、今日無事退院。
 一週間ほどシカゴの大学院に戻った兄貴が、今日帰ってきた。
 俺の様を見てかなりショックらしく、さっきまでは不機嫌だったがやっと気を取り直して、ベッドで休む俺の隣で林檎を剥いている。

「ちょっと目を離した隙にそんな大怪我をこさえるなんて…凛一、あまり俺を驚かすな」
 器用に林檎の皮を繋げたまま剥いている俺の九つ違いの兄、慧一は溜息を零す。
「ごめん。でも仕方なかったんだよ。向こうが中学時代のケリを付けるって聞かねえんだから」
「だからって縫うほどに傷つけることはない。折角ここまで奇跡的に無傷にできたものを。おまえはミテクレはいいんだから、もっと大事にしろ」
「…どうせ、出来のいい兄貴とは違って頭はからっぽですよ。5針縫っただけじゃん。箔が付くってもんだろ。それもこっちは一切手を出さなかったんだから、褒めて欲しいくらいだ」
「ほら、林檎。特別に一個だけウサギにしてやったぞ」
目の前にデザートフォークに突き刺された皮付きの林檎を差し出された。
「…食いにくいじゃねーかよっ!」
「そっか?かわいいのに…」と、慧一はその皮付きウサギを自分の口に入れる。
「美味い」
「良かったね」
食い終わった慧一が、またナイフを持って皮のない林檎を一口サイズに切っていく様を、俺は見つめた。
早く食いたいんだがね…

「だけど、凛…おまえ、5針縫ったぐらいで入学式休んだのか?二日も入院だなんて、何やってたんだ?」
「栄養失調で点滴三昧…3日ほど、マトモに食ってなかった」
「一寸待て…俺、一週間前に大学に戻る時、おまえの食事用にピザ一週間分作ったよな!」
「一週間もピザばっか食ってられるかっ!二日で飽きたし!」
「シーフードにバジル風。マヨネーズ味、イロイロ変えてやったじゃないか」
「…いや、飽きるだろ、普通」
「…折角おまえの為に…もう半年間休学伸ばしたのに…俺、シカゴに帰ろうかな~」
「やだっ!帰らないでくれよ、慧っ」
思わず本気で縋ってしまった。すぐに後悔したけど、遅い。
だって本当に、まだひとりにはなりたくないんだよ…

「…嘘だよ。帰らないよ。約束しただろ?凛をひとりにはさせないって。…そんな顔はするな。凛らしくない」
「…かわいい弟をはめるな」
「そんなに寂しいなら、抱っこして寝てやろうか?」
「ありがたいけどね。遠慮しておく。結構腕が痛いんだよ」
「それは残念だ」
 どこまで本気かわからない慧一の話は半分聞いておく。
 
「ほら、アーンしな」
 一口サイズに切った林檎を唇に突かれ、俺は仕方なさげに口を開けた。
「美味いかい?」
「美味くない」
 そう言って俺はもう一度口を開ける。


 入学式が終わって、一週間経った頃、抜糸して身軽になった俺は、漸く聖ヨハネ学院高校の生徒として校門を潜る事になった。
 門を入って中庭の中央にヨハネ像がある。
 洗礼者ヨハネじゃなく、あの「主が最も愛された弟子」のヨハネの方だ。
 ミッションスクールではキリストを抱くマリア像が一般的なのに珍しい為か、目を引く。
 これがまた妙に良くできた彫像で…片膝を跪き、手を組んで祈りを捧げ見上げるヨハネの視線の先が、この学院のチャペルの尖塔の頂で、この頂点の像がこれまた熾天使ウリエルと言う。
 聖典にも認知されていない大天使がここにおわすとは、この学院を創立した奴は相当変わり者だろう。
「我が光は神なり…か?」
 昇る太陽に反射したウリエルの翼が、目を焼きつくすようだ。


 一年四組の教室に行き、自分の机を探す。
 クラスメイトと思われる方々が、俺の様子を伺いながらも声をかける気もなさそうだ。
 好奇の目で見られることに慣れた俺は、それをシカトしながら、人の良さそうな奴に話しかけた。
「ごめん、ちょっといい?」
「あ?うん」
「俺、怪我で休んでいた宿禰凛一って言うんだけど、悪いが、俺の席を知っていたら、教えて頂けるかな?」
 それはそれは、これ以上のいい人間は居ないという、柔らかな物言いで伺った。
「あ…ああ、宿禰君?」
「そう…ですよ~」
「だったら俺の後ろの席だぜ」
「そう…ですか。ありがとう」
 俺はカバンを机に置いて椅子に座った。
「カバンは後ろの棚に自分の名前があるから、そこに置いて」
「わかった」
「俺は三上敏志。よろしく、宿禰」
 いきなり呼び捨てかよ。と、思ったがまあ新参者は大人しくっと…言う事で、
「よろしくな、三上~」
 ちょっと語尾に力入れたら、三上はオーバーに後ろにたじろいたフリをした。

 机の中を覗くと、なにやら色々と書かれた用紙が出てくる。
「あ、悪い。なんか説明事項やらなんやら一杯あってさ。俺寮住まいだから、家が近いんなら、おまえの 家に持って行って良かったんだけど、個人情報一切教えてくんなくて…あ、担任から連絡あった?」
「いや、ない」
「電話ぐらいしてやりゃいいのにな。あのジーサンボケてんのか。やる気が見えねえ~」
「担任ってなんつーの?」
「神代(くましろ)って言う日本史の先生。定年間近の窓際先生だよ」
「ふーん」
「でもな、副担任がこれが…」
「起立っ!」
 高音の声が教室に響いた。
 俺は、教壇に立つ噂の窓際先生の姿を初めて拝見した。


「なんだ?あの人集り」
 階段の前の踊り場に目をやると、掲示板の前に生徒の山。
「ああ、あれ、多分この間の校内模試の結果じゃないかな。入学式の翌日にあったんだぜ?おまえ、受けなくて儲けたな」
「美味くねえ儲け話」
「上位百番まで張り出されるって聞いたけど。…おい、長谷川」
 群集から抜け出した奴を捕まえて、三上が聞く。確かクラス委員だった…か?
「トップは誰だよ」
「隣のクラスの水川青弥」
「水川か。まあ妥当なところだろうな」
「なんだ?その言い方。そいつそんなに有名人なのか?」当たり前のように吹く三上の言い方が気になって、聴き返してみる。
「宿禰は知らないんだったな。水川青弥。入学式の新入生代表で宣誓した奴だよ。同じ寮生なんで顔も覚えたし…ああ、ほら、あいつだ。あの真ん中の眼鏡っ子」
 目線と顎で教えてくれた先を見る。
 ちょうど隣の三組の教室から出てきた固まりに、ひとり、際立って白い子がいる。
 眼鏡をした生徒は珍しくもなかったが、そいつは妙に目立つ。
 一言で言えば…物憂い優等生…
 翼に傷でもあるのか?裁かれてみたいもんだね…

 …どういうわけか、俺は勘がいい。ここの受験だって殆どヤマ勘で通ったようなもんだ。
 その俺の第六感が教えてくれる。
 こいつは…俺のもんになる。

 廊下に佇む俺達を横切る瞬間、ずっと見つめ続けていたのを気づいたのか水川青弥は、俺を見た。
 俺は眼鏡の奥のたじろぎを見逃さなかった。



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水川青弥 「出会い」 4 - 2009.02.18 Wed


「ちょっと雨宿りさせてくれよ」
 こんな寂れた温室に人がいることに驚きもせず、宿禰はそう言った。
 不思議だった。
 普段からこの裏庭は人影が少ない。おそらくここに温室があることを知っている生徒はほとんどいないのではないかと思う。しかも、わざわざ温室の中に足を踏み入れる物好きな人間なんて、おれの知ってる限りでは藤内先生とおれぐらいのものだ。
 この男は裏庭でなにをしていたんだろう。こんな所で雨宿りだなんて。
 返事がないことをたいして気に留めるふうもなく、宿禰は奥にいるおれに近づいてきた。
 おれは思わず身構えた。
「水川はここでなにしてんの?」
 名前を呼ばれてびっくりする。
「おれの名前……」
「ああ、知ってるよ。入学試験を首席で通過した秀才だって有名だもん。俺のことは知ってる?」
 おれは首を横に振った。本当は知っていたけど嘘をついた。
「おかしいな。時々目が合うような気がしてたんだけど」
 見透かされている。おれは手のひらに汗をかき始めた。
「まあ、いいや。俺は文系クラスの宿禰凛一。以後よろしく」
 差し出された手を、おれは握らなかった。
 宿禰はちょっぴり苦笑して、おれの手元を覗き込んできた。
「なに? 水川って絵を描く人なの?」
 身体が触れるか触れないかという距離に宿禰が立つ。おれは全神経でそばにある体温を意識した。けれど、表面的には平静を装う。
「まだ、なにも……」
 鉛筆を削り終えて、これから描こうとしていたときに宿禰が飛び込んできたのだ。スケッチブックはまだ真っ白だった。
 その白い紙に、ぽたりと水滴が落ちた。
 顔を上げると、宿禰の肩まである長い髪から滴ったのだとわかった。
 雨に濡れた宿禰の髪は、まるで烏の羽のように艶やかで複雑な黒色をしていた。見惚れていると、再び髪先から雫が落ちた。
 それに気づいた宿禰が「あっ、悪い」といって身を引いた。
 おれは鞄の中からハンドタオルを取り出し、宿禰に差し出す。
「これで拭けよ」
 一瞬、躊躇したものの、宿禰は礼を言ってハンドタオルを受け取った。そして、隅に避けてあったもうひとつの木箱を持ってきて、少し離れたところに腰を下ろした。ハンドタオルを頭の上に乗せたまま、ろくに拭きもせず両手で制服の胸やズボンのポケットを探る。取り出したのは煙草の箱だった。
 箱を振って煙草の頭が少し飛び出したところを、器用に1本だけ口で咥えて抜く。それからライターに火を点す。この一連の手馴れた動作が、彼が喫煙の常習者だということを物語っていた。
 けれど、この雨で湿気てしまったのか、なかなか煙草に火がつかない。
「畜生っ」
 おれは苛立つ宿禰の指先をじっと見つめていた。長くて形のいい指をしているなと思っていたら、睨まれているのだと勘違いしたらしい宿禰が慌てて煙草をしまった。
「あ、煙草はよくないよな」
 言われておれも思い出す。
「一応、ここで煙草は吸うなって言われてるから」
「誰に?」
「藤内先生」
「……水川って藤内と仲いいの?」
 教師と仲がいいのかなんて、変なことを訊くやつだと思った。
「べつにそういうわけじゃない。たまたまここで顔を合わせただけだ」
「ふうん」
 なにをどう納得したのか、宿禰はそれ以上質問してこなかった。代わりに違うことを訊いてくる。
「なあ、描いてるとこ見てていい?」
 本当はよくなかった。誰かに見られながら絵を描いたことなんて、今まで一度もなかったから、多分、緊張で手が震える。だからといって、見るなと言うのも自意識過剰な感じがして恥ずかしい。
 おれは了承の意味を込めて、宿禰の見ている前でスケッチブックに鉛筆を走らせ始めた。
 心配することはなかった。一旦、絵を描くことに集中してしまえば、宿禰の存在はさほど気にならなかった。いつもの通りに手が動く。葉の1枚1枚、葉脈の1本1本を描きながら、おれは自分の意識が外界から乖離していくのを感じた。それはおれにとって快感に近い感覚だった。
 不意に、首になにかが触れた。
 ぞくりと背筋が震え、おれは反射的に身を引いた。
「なっ、なに?」
 それは宿禰の手だった。
「首、大丈夫だったか?」
 宿禰は手を下ろしながら訊ねた。
「首……?」
 一瞬、なんのことだかわからなかった。
「あんなやつ、適当にはぐらかして逃げればいいのに、水川って頭がいいわりに要領悪いよな」
 おれはようやく、宿禰があの朝の出来事のことを言っているのだと気づいた。ずれてもいない眼鏡に手をやって、彼の視線から逃れる。
「おまえには、関係ない」
 腹を立てたわけではない。やっぱりあのとき宿禰に一部始終を見られていたのだと思うと気まずくて、つい棘のある言い方になってしまう。
「あ、雨あがったみたいだ」
 その声に誘われて外を見ると、すでに雲の切れ間から光が差し込んでいた。
 宿禰は急に立ち上がり、頭に乗せたままだったハンドタオルを手に取った。
「これ、洗濯して返すから」
「いいよ、そんな……」
「いいから。じゃあ、邪魔して悪かったな」
 そう言うなり、宿禰は来たときと同じ唐突さで去っていった。
 おれは閉まったドアを呆然と見つめた。
 妙な男だと思った。
 宿禰と口をきいたのはこれが初めてだった。入学したばかりの頃から彼の存在は知っていたけど、今までこれほど接近したことはなかった。
 それなのに、彼はごく自然におれのテリトリーに侵入してきた。どちらかというとおれはイヤなものはイヤとはっきり言うタイプだけど、なぜだか彼には拒みがたい雰囲気があるというか、するすると入り込まれてしまった。
 迂闊だった。
 気をつけなくちゃいけない。
 ああいう手合いは深入りすると厄介だ。
 それでもしばらくの間、あの黒髪が、あの指が、瞼の裏に焼きついて離れなかった。
 おれはいつか、あの男を描くかもしれない。
 それは、真夏のアスファルトに出現した逃げ水のように不確かな予感だった。



                                           text by sakuta

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水川青弥 「出会い」 3 - 2009.02.17 Tue

 出生率が低下の一途を辿る現在、私学はどこも生徒の獲得に躍起になっている。入学希望者を増やすための人気取りになりふり構わず邁進する。そんな中、最近増加傾向にあるのが“塾いらずの学校”である。
 せっかく高い入学金と授業料を払ってレベルの高い私立校に入れたのに、勉強についていけない我が子のためにさらに高い金を払って塾に通わせる親の経済的負担を減らす、という建前で長期休暇に無償で特別講習を行い、良心的かつ活気のある校風をアピールして人気を集めようというのだ。
 伝統と格式のあるこの聖ヨハネ学院高等学校は、そんな手段を使ってまで人気集めをする必要はなかったが、もともと高い進学率をさらにアップしたいらしく、この夏期休暇中に全学年で希望者のみを対象とした特別夏期講習会を開くことになった。
 これは、休暇中も実家に帰省したくないおれにとっては渡りに船だった。
 受講生の募集が始まってすぐ、おれは実家から有名予備校の夏期講習に通うよう勧める母親を説得し、まんまと寮に残る許可を取り付けた。これで平穏な夏期休暇を過ごすことができる。
 ただひとつだけ誤算だったのは、同室の根本先輩がやはり帰省届けを出していなかったことだ。
 まあ、あの人はどうせいつも部屋にいないんだから関係ないか。
 なにはともあれ、制服を着用して寮と学校を往復するおれの夏期休暇はスタートした。


 朝、身体の上に慣れない重みを感じて目が覚めた。
「お・は・よ・う」
 なんとおれの腹の上に根本先輩が跨っていた。
「朝ごはんにする? それともぼくにする?」
 おれは見えない目を細めた。
「なに朝から馬鹿なこと言ってるんですか」
「あ~、いま馬鹿って漢字で言っただろ。ぼくそうゆうのわかるんだからね」
 ぷっくり頬を膨らませるこの人のどこが先輩に見えるだろうか。
「いいからどいてください」
「ちぇっ、ホントみなっちってつまんない」
「そのみなっちっていうのもやめてください」
「じゃあ、セイちゃん」
「普通に水川でお願いします」
「だったらチュウして。そしたら言うこと聞いてあげる」
「……セイちゃんでいいです」
 先輩がどけると、おれは枕元に置いてある眼鏡をかけてベッドから出た。パジャマから普段着に着替える間も、先輩は「肌きれいだよね」とか「腰細いね」とかセクハラ発言を繰り返していたけど、おれはそれらをことごとく無視して食堂へ向かった。
 寮にはおれと根本先輩以外にも残留組が少なからずいた。夏期休暇中も寮母さんたちはおれたちの食事の世話をしに通ってきてくれる。おかげで1日3回の食事の心配はしなくてよかった。外出するため寮で食べないときは、前もって外出届を提出するときにその旨を伝えることになっている。
 朝食を終えると、根本先輩は早速どこかえ消えた。おそらく外出したんだろうけど、あの人の場合、ちゃんと外出届を出しているのかさえ疑わしい。
 いや、寮の飼い猫だと思えば、誰も彼の自由を阻害する気にはならないかもしれない。
 とりあえず、午後の夏期講習が始まるまでおれの平穏は約束された。
 夏期講習は午前と午後の部に分かれていて、どちらか一方のコースを選択する形で行われている。おれは午後の部の理系クラスを選んだ。午前の部にはあの高橋がいるからだ。あいつは午前中はヨハネの、午後はよその超有名予備校の夏期講習に通っているらしい。本当によくやる。
 おれは温室の草花に水をやりに学校へ向かった。温室は通気用の窓が開けっ放しになっているけど、雨に濡れることはないし室温もかなり上昇するので、夏場は朝夕の2回水やりをしないとすぐに枯れてしまう。ここの管理人の藤内先生は、本当にここの世話をおれに任せっきりにするつもりらしい。さすが古文の藤宮先生とともに問題教師と並び称されるだけのことはある。ヨハネの藤藤コンビといえば知らない生徒はいないくらいだ。
 温室の水やりを済ませて寮へ戻る。静かな部屋で夏期休暇の課題をやったり本を読んだりしながら過ごし、昼食を食べたあと制服に着替えて、おれは再び登校した。
 夏期講習の内容はほとんど1学期のおさらいだった。はっきり言っておれには温い。後半に入ったら難易度を上げていくつもりらしいが、よその予備校の夏期講習と掛け持ちしたい高橋の気持ちもわかる気がした。
 講習が終了し、おれは温室へと急いだ。もちろん、スケッチブックと鉛筆は鞄の中に入っている。たとえ休暇中でも、この習慣を変えるつもりはなかった。
 朝のうちは晴れていたのに、エントランスを出ると空には今にも泣き出しそうな鉛色の雲が立ち込めていた。おれは駆け足で裏庭へまわった。そしておれが温室へ駆け込むのとほぼ同時に大粒の雨が降り出した。
「この降り方ならただの通り雨かな」
 屋根を打つ激しい雨音を聞きながら、おれは今日のモデルを探した。
「よし、今日はおまえにしよう」
 おれは黄色い花を咲かせている鉢を選んだ。花の大きさや形からするとキク科の仲間らしいが、立ち木性ではなくほふく性の強い種類のようで、1メートル以上伸びた茎が棚から垂れ下がっていた。その鉢植えをいつものカウンターに移動させ、空の木箱の椅子に座って鞄からペンケースを取り出す。
 ペンケースの中には芯の柔らかい鉛筆が数本と消しゴム、それからカッターナイフが入っている。おれは鉛筆を1本とカッターナイフを取り出し、慣れた手つきで鉛筆を削り始めた。
 スケッチ用の鉛筆は、鉛筆削りでは削らない。1本1本カッターナイフを使って芯を長めに削り出す。そうやって鉛筆を削りながら、頭の中にこれから描く絵をイメージし、集中力を高めていくのだ。
 だからいつも描く直前に鉛筆を削る。ちょっと大袈裟に言えば、このときの鉛筆の仕上がり具合がその日の絵のできを左右することもある。それくらい鉛筆を削るという作業は絵を描く者にとって大事なことなのだ。
「うん、今日は上手く削れたぞ」
 削り上がった鉛筆を目の高さに掲げて見つめた。絵はともかく、鉛筆を削る腕は確実に上がっている。
 そのとき突然、バタン、と大きな音がした。
 驚きのあまり、せっかく削った鉛筆を落としそうになった。
 すぐにドアが開いた音だと気づいたおれは、戸口に立っている男を見てもう一度驚いた。
 そこには、雨に濡れた宿禰の姿があった。


                                          text by sakuta



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水川青弥 「出会い」 2 - 2009.02.16 Mon

 おれは夏が嫌いだ。
 蒸し暑いし、汗をたくさんかくし、だるくてなにも考えられなくなる。
 春の間は居心地のよかった温室も、日が高いうちは使えなくなった。長かった梅雨が明けてからは、朝と夕方に水やりをするようにしている。とくに太陽が傾いた放課後が、おれの本格的なくつろぎの時間だった。煉瓦造りの校舎と西に落ちていく太陽が作り出す影に温室が呑み込まれるまで、大抵ここでひとりで過ごしている。
 おれは気持ちの赴くままにスケッチブックに鉛筆を走らせる。そうしていると、その日あったくだらない出来事を忘れることができる。ささくれ立って荒れ果てた心を平らにならし、その上から自分の求める平穏な時間を上書きする。おれにとってそれは毎日の儀式のようなものだった。
 手元が暗くなってきて、おれは植物のスケッチを断念した。鉛筆とスケッチブックを鞄にしまい、南の国の大使館を挟んだ隣の敷地に建つヨハネの学生寮へ帰る。
 寮での生活にプライベートはない。1年生は基本的に4人部屋で、2、3年生になると2人部屋になる。大学の受験勉強に集中させるためと、共同生活に馴染めない生徒が退寮して部屋に空きが出るためらしい。
 けれど、おれは人数の関係で最初から2人部屋を割り当てられた。ほかの1年生は羨ましがるけど、2年生と同室だからおれとしては微妙だ。
 この2年生のルームメイトがまた変わり者だった。
「ぼくのことは猫かなんかだと思って」
 初対面の日、おれよりも頭半分ほど小さくて色白の根本香樹(ねもとこうき)は、全体的に小作りな顔の中でアンバランスなほど大きなつり目をくりくりさせながら言った。
 猫というだけあって、彼の行動はいかにも気ままだった。おれの知る限り、彼が部屋でじっとしていることはほとんどない。もしかしたら本当に縄張りのパトロールでもしているんじゃないかと思うくらいだ。おかげでおれはほぼ1人部屋状態だ。生来、他人とコミュニケーションをとるのが億劫な性格のおれにはむしろ都合がよかった。
 根本先輩が部屋に姿を現したのは、消灯前の点呼の直前だった。
「なんだ、テスト終わったのにまだ勉強してるの?」
 先輩がおれの肩越しに机の上を覗いていた。
 おれは数学の問題を解く手を止めた。そういう先輩が部屋で自習をしているところを、おれはまだ一度もみたことがない。もう2年の夏なのに。ヨハネは進学校だから、この人も一応は大学へ進学するつもりなんだろうけど……。
 そのとき、ドアをノックする音が響いた。ドアが開いて、寮長の3年生が顔を覗かせる。
「お、猫はちゃんと戻ってたか」
「たまにはね~」
 たとえ相手が上級生であっても、根本先輩のマイペース振りは変わらない。ある意味あっぱれだ。
 そういえば、根本先輩が点呼の時間に部屋にいないことなんてざらにあるのに、問題になっている様子がまったくないのは不思議だ。
「いつもこうだと助かるんだけどね。お楽しみも程々にな」
 寮長が形ばかりの点呼を済ませて立ち去ると、根本先輩が話しかけてきた。
「水川はなにも訊かないよね。ぼくに興味がない?」
 突然そんなことを訊かれても……。
「訊いてもいいんですか?」
「いや、困る」
「だったらいいじゃないですか」
「でも丸々無視されてんのも癪に障るな。言っとくけど、ぼくここのアイドルだよ? 同室になって4ヶ月、いまだになんにもないなんて信じられない!」
 おれにはこの人がなにを言っているのかわからない。
「わかった! 堅物な水川となら間違いも起こらないだろうと思ってぼくと同室にしたんだ! もしくはこいつもぼくと同じタイプなのか。そしたら間違いなんか起こりっこないもんな」
「間違いって? タイプって?」
「あいつ、そんなに心配ならぼくに首輪でもつけておけってんだ」
 どうやらおれの声は耳に届いてないらしい。
「ふんっ、ぼくはいつだって自由だ。誰と同室だろうと関係ないもんね」
 そう言って先輩は再びどこかへ出かけていった。
 一体あの人は何者なんだろうか。
 そして、この寮を監督しているはずの教師はなにをやっているのか。


 朝、学校に着くと、廊下に人だかりができていた。先日の期末テストの結果が貼り出されたのだ。
 おれも見にいこうとしたら、群の中から面倒な男がこちらに向かって歩いてきた。
「おはよう、水川」
「……おはよう」
 挨拶をしてそのまま脇を通り過ぎようとしたら腕を掴まれた。
「わざわざ見にいかなくても教えてやるよ。今回、水川は2位だったよ。惜しかったな」
「ああそう」
 腕を引こうとしたが、がっちりと掴まれていて振り解けない。
「もちろん1位は僕だよ。水川、いくらトップの成績で入学しても、そのあと結果を出せないようじゃ意味ないよな」
 同じ理系クラスの高橋は、入試でおれがトップだったことがよほど口惜しかったらしく、なにかとおれに対抗心を燃やしてくる。はっきり言って面倒臭い。
 高橋の言葉を上の空で聞きながら、おれは前方の人だかりに視線をやった。すると、その中のひとりに自然と目がいった。隣のクラス、つまり文系クラスの生徒だ。名前はたしか宿禰とかいったはずだ。取り立てて目立つ存在ではなかったけど、長めの黒髪と端正な容貌が人目を惹く。ひと言で言うならば“色男”というやつだ。
 不意に、宿禰と目が合った。まさか向こうが気づくと思ってなかったおれは、慌てて視線を逸らした。
 おれはあいつを長く見すぎていたのかな。
「おいっ、聞いてるのかよ」
 おれの腕を掴んだままの男を思い出し、おれは視線を高橋に戻した。
「聞いてなかった」
 正直に伝えると、高橋の顔が見る見る赤くなっていく。
「こいつ、バカにしやがってっ」
 高橋は逆上し、おれの制服の襟元を両手で掴んだ。
 おまえが1位だったんだから、それでいいじゃないか。
 そう言ってやりたかったけど、襟を締め上げられてうまく声が出ない。
 周囲の生徒たちもようやくおれたちの異状に気づいたらしく、高橋の友人が止めに入ってきた。
「おい、高橋、やめとけよ。くだらないことで問題を起こすな」
 そのひと言で冷静さを取り戻した高橋は、おれを放して友人と一緒にそそくさと立ち去った。
 残されたおれは壁にもたれて咳き込んだ。
 ふと視線を感じて涙目を上げると、その先におれを見つめる宿禰の姿があった。
 彼がなにを思っているのかはわからないけど、自分の醜態を見られたことが恥ずかしくて、おれは彼に背中を向けてもと来た道を戻り始めた。

                                            text by sakuta



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色子になったメトネちゃん - 2009.02.13 Fri

メトネはこれから成長していきますが、身体はどうもリュウ好みになっていきそうですね~
metone2

一皮剥けた?


線画は一切使わないで、レイヤーはだいたい肌と髪と布と目と背景ぐらいで抑えてます。
約一時間半ぐらいかな~
要領良くやれば、もうちょっと短縮できるね。

「彼方の海より…」 メトネ日記 9 - 2009.02.13 Fri


メトネ日記 9

「決めたのか?」
「はい、これを」
私は今まで着ていたの着物、兄上より頂いたすべての装飾品を外し、それを差し出した。
「ここで生きるには必要ないものだと思い知りました」
「そう、じゃあ、ありがたく受け取ってやる」
「はい」
リュウは私からそれを受け取ると、服と飾りを纏め、天井にほうり投げた。
右手の人差し指で素早く空中に円を描くと、その投げたそれらは空中に止まり、見えない硝子玉に入り込んだような形を作った。
そして、あっという間にその中が炎に包まれすべて燃え尽くされてしまった。
私は魔道士の扱う魔法をこの目で見たことはあるが、リュウの繰り出す魔法は…
呪文も短い詠唱もない。
どうやってこの力を生み出すのだろう。
あっけに取られていると、その火は次第に小さくなり、灰になると、透明な硝子玉から落ちてくるように辺りに舞った。
ゴトっと小さな音がした。黒く煤の付いた塊が背中の足元に落ちた。藍晶石の名残り…
私はそれを拾わなかった。

リュウを見る。
彼はこの一連の様を私に見せて反応を楽しんでいるかのようだった。
私はゆっくりと息を吐いて、彼の前を向き膝を折った。

私は今まで私に向けられた礼をこの魔族の男に取った。
臣下の礼ではなく召使の礼に法り、両膝を付いて頭を下げた。
「どうぞ、この私をリュウ・エリアードの僕として御身に使えることをお許しください。あなたに…この身を捧げます」
「生かすも殺すも俺の好きにしていいという事だな」
「…そうです」私は低頭したまま、ただその声に脅えていた。
リュウの声音にはありありと嗜虐の韻がみえたのだ。
「では、覚悟しろよ」
「…」
「顔を上げろ」
恐々と顔を上げ、リュウを見ると、その手にはキラリと光る細く鋭いナイフがある。
私は息を飲んだ。

「今から公主メトネ・レヴィス・スクルドを殺してやるよ」
彼はそう言うと、私の顔の両側に垂れる長い髪をひとまとめに片手に持ち、そのナイフで一瞬に切り捨てた。
長い金色の髪が床に舞い落ちる。

「これで公主であったおまえは死んだ。何のプライドもなかろう?メトネ」
「は…い。ありがとうございます。あなたの為に尽くすことを誓います」
「俺の為じゃねえよ。おまえ自身の為にここで生きるんだよ」
「…」
「おまえの生きる糧が俺であれば、幸せだろう?メトネ」
「…はあ」
「おまえはまだガキだからわからんか。まあ、いいさ。ほら来いよ。最初からやり直しだ」
「はい」
結局こうなるのか…私は少し落胆しながらも、ベッドの上のリュウに近づいた。
「服は自分で脱ぐか?それともさっきみたいに脱がせた方が好みかい?」
「…自分で脱ぎますよ」
揶揄するように鼻で笑うリュウに少し腹を立てながらも、さっきよりは幾らかマシな気分に思えた。
服を着たままのリュウがいやらしそうな顔をしながら、私に言った。
「言っとくが俺は優しいからな。好きなもんには特別に優しくしてあげるのが礼儀って奴。安心しろよ、メトネ」
「…よろしくお願いします」
仰向けに身体を横たえた私に、リュウは躊躇なく覆いかぶさり、私を奪った。


その後は…聞かないで欲しい。
ひとつだけ宣言するが、リュウ・エリアードはとんでもない嘘つきだった。
私はあのまま死を選んだほうが良かったと何度後悔したかわからない。

魔族の守護者と呼ばれるリュウ・エリアードは最低の男だが、私の唯一の、主になった。



  「メトネ日記」 第一章 終

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今日は時間があったので書き終りました。
一応一段落ついたところまで、きましたね。
しかし、わたしが本当に書きたいのはここから先の話なんです。
魔界の事や色々な事件や…オセやアルスや果てはエルミザードまで関与する話を書きたいんです。
そして最後にこのふたりがどうなるのか…というところまで書きたいのです。
今はまだ愛情は二人の間に全くないからね。
しかし、はっきり言ってこういう話は全くBL的には不向きであると思います。
Hシーンはあっても描く気はないし、途方も無い勝手なファンタジーでしかありません。

ですが、ここまで背景を描けたなら、やれるところまではやりたい気持ちなのです。
なので、ここから先の話は完全に読者さまには失礼だと思いますが、飽きるまで書こうと思います。
申し訳ありません<(_ _)>
勿論リンとミナも平行して、書いていけたら幸いですね。


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メトネ日記の最初はここからです。
プロローグ

第二章はこちらから
「メトネ日記第二章」





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「彼方の海より…」 メトネ日記 8 - 2009.02.13 Fri

メトネ日記 8

口唇から洩れた言葉を、耳にしたのか、それとも願いが通じたのか、リュウは動きを止めた。
私はそっと目を開ける。
天上の光が目映くてリュウの表情は伺えない。

「…にいさまか…そんなにあの神官が恋しいのか?」
「たったひとりの兄を想って何が悪い」
「おまえは本当に…」嘆息を付きながらリュウは、私の右手から首飾りを取り上げた。

「あ…やめて!」
奪った私の宝玉を彼は天上に透かした。
天井の白い光が青い石に乱反射して、薄い虹が出来る。
「…良く出来た藍晶石だが、呪はかかっていない。ただの石だ」
「これは…神の宝玉だ」
「だから言ったろ?こいつには神の意思は見えない。言っとくが俺には見えるんだよ。これにはおまえの兄様とやらの『想い』だけしか見えない」
「兄様の?」
「だがここでは必要ないシロモノだろ?おまえには帰る場所も無いし、『想い』でおまえを守ることは出来ない」
そう言ってリュウはその宝玉を床に投げ捨てた。
薄桃色と白がマーブル状に交わる紋様の床に転がる首飾りを目で追った。
なるほど、宝玉は一片の光の導きすらない。

「…あなたが…全部壊したんだ…」
「人間風に言うなら、それが運命って奴」
「酷い…あなたは本当に、悪魔だ…」
「おまえ、一晩もここに居て、何もわかっていないんだな。一体何を期待してここにいる?この魔界におまえの価値がどこにある。大体あの頂に捨て置いても良かったんだ。おまえの意思で着いて来たんだろ?だったら何をするかぐらいわからんのか?」
「あ、あなたが勝手に決めたことだ。私は…私の国に居たかった」
「今頃エーギルとユエは邪魔者が居なくなったと喜んでいるだろうよ」
「兄上をおまえと一緒にするなっ!おまえに兄様の何がわかるっ!私は…兄様の傍に居られれば…それで良かったんだ」

望むものは本当にそれだけだったんだ…公主の座すら望んだことはなかった。
ただ兄上の為に務めを果たしたかっただけ。
良い公主になろうと心を砕いたのも真実だ。
すべてこの男の所為で私は…

…違う…
この定めを選択したのは私だ。
国と兄上の為ならどうなってもいいからとリュウに従うと決めたのは私だ。

「…メトネ・レヴィス。おまえはどこに居る。おまえという人間は何をする為、生きている?今まで何をしてきた。公主の仕事か?…しかし今はその地位は無い。だったら違う生き方を示せ。ここに居る者は皆自分のやるべき仕事を為している。だから俺もここに居るものを守る為に戦う。ここに居る限り安全だと思わせる。それが信頼だ。おまえはここで生きるしか道はない。ならおまえに何ができる。何の能力もないおまえは俺に情けを乞うしかない。その身体を捧げるしか値打ちがない。違うかい?」
「…」
リュウの言葉は正論過ぎて何も言えなかった。
私には何もなかった。
昔から…
公主になって私が為し得た事は何だ?
すべて有能な側近の働きのおかげであの国は平和を保っていた。
私は…
臣民の信仰が怖かった。私は傀儡の王に過ぎないことはわかっていたから。

「俺のものになりゃその命は保証してやろう。それが嫌なら、あの門の二重の扉を開いて、野地に迷う魔獣か妖魔に食われるがいい」
「私…は…」
「俺の寵を受けたいのなら、その覚悟を示せと言っているんだよ。メトネ」
「…リュウ…」
「後はおまえが決めろ。俺は寝るから、覚悟が出来たら俺を起こせ」
そう言うとリュウは私の身体から離れ、ごろりと横になった。
それから私を見ずに一言だけ放った。
「死にたかったら、特別に楽に殺してやるから、安心しろ」

背中を向けたリュウはそのまま眠ったかのように、そのまま動かない。
私は静かにベッドから離れ、床に撒かれた私の服と首飾りを拾い上げた。

手に持ったまま振り返り、ベッドのリュウを見る。
私は決めなければならない。
自分の生きる道を決めなければならない。

人として公主のプライドを持ったまま、死を選ぶのは間違いではない。
だが、それは私自身が望んでいることなのか?
兄上は私が命を絶つことを望んで、リュウに私を委ねられたのか?
違う…私に生きろと言ったはずだ。
有のままに生きろと…

私は…まだ生きてみたい。それさえもこの魔族の長の心ひとつ次第だろう。
それでも生きるべきではないのか?
どんな辱めを受けても、耐えられなくないのであるなら…

ベッドの脇のチェストの上に服がふたつ綺麗に畳んで並べてあった。
近づいて見比べた。
一目でわかる、どちらがリュウのものであり、どちらが私のものか…
布地の質、デザインや細かな刺繍…すべてに尊敬と心を尽くし丁寧に仕立ててある。
もう一方の簡素な服に手を通した。
青磁色のシャツとズボンだけだが、どちらも柔らかく暖かい感触がする。
仕立てた者の気持ちがわかる気がする。

私は公主だった頃、誰が自分の服を用意し、またその服を作った者に感謝をしたことがあるだろうか。誰かが私のために食事を作り、ベッドを直し、部屋を掃除し…そんな事を気にかけたことがあっただろうか。
ただ出されるものを言われるがまま着、食し、動いていた…それだけだった。
多分それでも許されたのだろう。
でもここで生きるには、私は知らないでは許されない。だから努めよう。
決して身を果敢無んだりせずに…

「リュウ…リュウ・エリアード。起きてください」
私は最初にすべきことを果たす為に、主となる者の名を呼んだ。






昨日、とうとう来てしまいました。
花粉症…最悪な春がまたくるよ~ヽ(τωヽ)ノ



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「彼方の海より…」 メトネ日記 7 - 2009.02.12 Thu

メトネ日記 7

夢を見ていた。
兄様と遊んだレミクスの白い砂浜。
目の見えないエーギルの手を引いて波打ち際を歩き、巻貝を兄様の手に持たせると、エーギルは嬉しそうに、「海の精霊の奏でる音楽が聴こえるよ」と、言った…

うっすらと目蓋を上げると、白んだ目の前にプラチナブロンドの髪が見える。
…兄様の髪と同じ輝きだ…懐かしい…こうやって兄様の胸に抱かれて眠るなんて…ひとりじゃないんだね、私は…
背中に回された腕のぬくもりが心地良い。
もう兄様の傍を二度と離れたくない…



何故か息苦しくて咳き込みながら目を開けたら、あの男が居た。
「な、何をしているんだ!」
「何って…おまえを抱いてやろうって思って」
「は?」
「昨日は忙しくて相手出来なかったからな。しかし…おまえ、叩かれても裸にされても起きないのか?」
「え?」私は自分の姿を見た。
…リュウの言うとおり、何一つ身に付けていない。
「な、な、い、いつ?」
「さっきから剥ぎ取ってるのに…ナイフひとつを目にチラつかせだけで気を失うのに剥き身にされても眠ったままとは…肝が小さいのか座っているのか、ただ鈍いだけのお坊ちゃんなのか…わかんねぇ奴だなあ」
「ふ、服を返して!」
「今から目合うっていうのに、服がいるかよ」
「い、嫌です!」
「何が?」
「あなたとそんな事はしたくない」
「他の奴ならいいのか?」
「そ、そんな意味じゃなくて、好きな相手とするのが道徳的には正しいと言っているんだ」
「…おまえ、ここをどこだと思っているんだよ。勝手に作ったおまえらの心がけっていうもんが通用するか。大体その道徳を守っている人間はどれくらいいるんだ?その道を外れれば、神の怒りに触れて、雷にでも打ち抜かれるのか?」
「…」
「まあ、天上の奴らはそういう性格ねじ曲がっている性質でもあるから、理屈が合わんわけでもないがな。おまえら人間で好きに遊んでやがる」
卑下するように笑うリュウが恐ろしい。
天上の神をそこまで愚弄する奴なんて私は知らない。
「あ、あなたは神々の力が恐ろしくはないのか?」
「あ?恐ろしいわけあるか?そんなこたぁどうでもいいから、ほら、脚開けよ。ガキじゃないんだから、つべこべゆうな」
「や、やめろ…」
本気で蹴り上げてやろうとしても、あっさり両方の足首を掴まれて、引きずられる。
なんて力だ。身体もその手首だって私と変わらないぐらいの痩身だ。なんでこんなに…
リュウの指が触れる。
私は泣き出しそうになった。

「おまえ…初めてなのか?」
初めてに決まっている。そう言いたいのに、動きを止めないから、私は唇を噛んだまま声には出せなかった。
「男も…女も知らない?」
だから、何が悪い。そういう人に出会わなかっただけだ。
愛し合う人と抱き合いたいって思うのは普通の人間の感情だろう。
「ユエはおまえに触れなかったのか?」
ユ…ユエ・イェンリー?
「…何を言ってる?ユエは兄上の恋人だ。私に触れるわけが無いだろう」
「…あの男、人間界で記憶を失ったと言っていたが、性欲も失ったのか?…阿呆らしい」
リュウは横を向いて詰るように唇を歪ませた。

「仕方が無い。初めてにしては、董が立ってはいるが、そこは目を瞑って…ほら、口を開けろって…」
「い、いやだっ…」
私は唯一自由に動く両腕で顔を覆って、出来る限りの抵抗を試みた。
この男に慈悲を請うても無駄なことはわかりきっていた。
ただ私は願うしかなかった。兄上の首飾りを右手に握り締めて。

「にい…さま、兄様、たす、けて…」







寸止めで…つーか入れてないから!メトネちゃんまだ犯られてないから!まだ清い身体だからwww

下はちょっと落書きデス




mannga1

次からは延々とリュウの説教が…www案外うるせ~んだよ、こいつ(^_^;)

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「彼方の海より…」 メトネ日記 6 - 2009.02.10 Tue

メトネ日記 6

浴室に連れてこられたのはいいが、とてもゆっくり身体を癒すことなど出来るわけも無く、誰かが入ってこないかと不安になりながら、入ってこられても抗うことも出来ない自分の非力さも思い相まって、そそくさと浴槽から出る。
部屋着も揃えてあったが、私は着ていた自分の服を着た。
この世界のものに袖を通すのは、こんな身になっても憚われた。

リュウの部屋に案内され、その殺風景な設えに少し面食らいながら、辺りを伺っていると、ラシュマーと呼ばれた魔族が、銀のトレイを持って現れた。
「食事だ。これを食べてリュウが来るまで、ここにいなさい」
「…いりません」
「うむ、人間は一日に2、3食摂るものと見知っていたが、おまえは腹が減らない性質なのか?」
「こんな目に合わされて…食べる気になど…ならない」
「困った貢物だね。しかし…我が主も変わり種に手を付けられたか…物好きなのは親譲りなのか?それにしても服も着替えていないとは…人間は汚いのも平気なのか?…ちょっと近寄りたくないな…」
ブツブツと独り言を呟くラシュマーに何故か親しみを覚えた。
緊張が薄れたのと食べ物の匂いの所為か、私のお腹が音を鳴らした。
「…腹が減っているんなら、素直に言えばいいのに」
「言えない場合もあります」
「この場で強がりは意味がない。おまえは自分の立場をよくよく考えるんだね」
「…」
「おまえの為にひとつ言っておくがリュウを怒らせるなよ。顔はあんなだが、気が荒くて短い」
「知ってる。あんな悪魔か死神みたいな奴を、あなた達は主として認めているなんて、私には信じられない」
「そこそこの世界で者の名は違うものだよ。おまえ達が信仰している天上の神に邪悪な死神はいないのか?彼等はいつもおまえたちを身を挺して守ってくれるか?」
「…」
「リュウ・エリアードはこの魔界の秩序を安寧とする為に、戦っているだけだ」
「…嘘だ」
「ここに居ればいずれわかるだろうが…あの魔宝珠が無くなった所為で、色々と面倒になったのは確かだし、それを人間界から取り戻し得たのはリュウ・エリアードだけだ」
その所為で私の国の何の罪もない人々が命を失った。
その事実はあなた達には何も関係していないと言うのか。
大事なものを取り戻したからあの悪魔の所業は善だと言うのか…

「おまえ達人間がリュウ・エリアードをどう思おうと構わないが、私達は彼をこう呼ぶのさ。
『魔界の守護者』プレシャスハイガーディアンと」


ラシュマーが去ってひとり残された私は、冷めた食事を取った。悔しいが冷めているにも関わらず、その味は気持ちのこもった優しい味がして、驚いた。
驚いたのはこれだけじゃない。食器にも調度品にも派手さは微塵もないが、すべて調和と安定さに満ちている。
あの男から感じる印象とは全く違うものだ。
それでも怖い。
私は…あのリュウ・エリアードの貢物としてここにいる。
どうなってしまうのだろう。
あの男に酷い目に合わされるのだろうか…
それは、どうやっても抗えない運命なのだろうか…

天蓋付きのベッドに身体を預けた。
優しい肌合いと水面にも似た淡く青い織柄が、昔泳いだレミクスの海を思い出させた。

兄上はどうなされているだろうか…
私を心配して臥せっておられないだろうか…
国を出る時、兄上から頂いた藍晶石の首飾りを手に取った。
兄上が神官長に就かれる折に、前神官長より賜ったものと聞いている。
一時も肌身離さず身に着け、大事にされていた。

天上の神々の御加護があるようにと、兄は昔から側近の者達にだれかれ構わず護符を贈る方だったけれど…困った顔をしながらも、皆一応に兄上のそういう様を愛していた。

寒い日も嵐の夜もひとつのベッドで兄様と手を繋いで眠った幼い頃。
『メトネ、大丈夫だよ。私が傍にいるからね』
彼の声が今でも聞こえてくるようだ。

今はもうエーギルの傍にはユエが居て、私の眠る場所はなくなったけれど…エーギルは変わらず私を愛してくれた。

…戻れないのだ。あの場所には。
そう思うと涙が溢れ、止まらなくなった。

もう…誰も私を慰めてくれる人はいないのだ…








すんません、何も起きませんでした~(^◇^)
これは果たしてBLなのか?ジャンルにも不信感が漂ってます~

こういうシーンは大事に描いていきたい性質なのですが、昔よりは言葉を簡素にしています。
あんまりごちゃごちゃ説明してたら先に進めませんからね。



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魔界の四天王 リュウ・エリアードの素描 - 2009.02.09 Mon

「メトネ日記」のリュウ・エリアードについて。

身長は182ぐらいで62キロ。ガリです。好みです。
つか60キロ以上の男の人って知らないんで、想像できないんですが…
女顔でエロい顔。なので、知らない奴からは大体言い寄られる。で、相手死亡…
性格は粗暴で短気でSでもあるしMでもあるな…。
生まれ持っての能力が半端ないので、幼い頃はそれを抑えるのに苦労した。
育ての親であり、ただひとり師と仰ぐ「サイアート・デュノ」の教えに従い、魔界を管理している。
相当お仕事が忙しい。
受けも攻めもおk。ただ選り好みが激しい。
300年は生きている。

ryu1

雰囲気だけでもざくっといっとこ~

メトネは176センチで57ぐらい…描いてる人がガリにしか興味もてないので…www

「彼方の海より…」 メトネ日記 5 - 2009.02.09 Mon

メトネ日記 5

魔の世界というところをおよそ人間が住めないような混沌の世界だと御伽話程度には聞いていたが、この目で見る情景はそれとは全く違っていた。
リュウ・エリアードの屋敷に着く間、私はリュウの背中に掴まりながら、白夜の風景に心奪われる始末だった。
地上では出会ったことも無い、奇妙なそれでいて整然とした眺めだった。
見たことも無い木々のそよぎに髪を撫でられながら、前方を見つめると、薄暮に仄かに藍く海底のように光る建物が見える。
魔界の四天王と呼ばれるリュウ・エリアードの住処だ。

二重の扉を開けて、部屋に入ると、リュウを出迎える魔族達が、遠巻きにだがそれぞれに安堵の顔を見せ、敬意を払っている。
彼、リュウ・エリアードがどれだけの要人なのか、彼等の態度でわかる。
私も傅かれるのは知っている。けれど、あんな風に存在しただけで、回りの空気が緊張し、畏怖と信頼を込めた視線を浴びたことはない。

リュウは彼等の…統治者なのか?
罪も無い大勢の人々を、躊躇わずに殺してしまえる傍若無人ぶりの悪魔なのに。

「リュウ。ご無事で何より…この度の首尾は?」
銀色の髪を後ろに束ねた壮年の男がリュウに近づき、話しかけた。
「上々…と、言いたいところだが、思ったより時間を食ったな。魔宝は取り返した。ほら…」

手を合わせゆっくりと両方の指をひとつずつ開いていくと、深い紺色の輝きを放ちながら彼の掌に、宝石のようなそれでいて歪な形をした石が現れた。
「皆も良く見ておくんだな。魔界を守る結界石のひとつだ。そう簡単にお目にはかかれない」
「何処に?」
「それを聞くなよ。まあ、簡単に言えぬところだよ」
「ユエ・イェンリーは?」
「それも聞くな。忘れたい名前だよ。あいつは魔族の名を捨てた。それで終わりにしよう」
「では次の四天王を決めなければな」
「…判っているよ。だが、今はこっちが先決。魔宝を示してこなければ」
「お疲れのようでしたら私が行きましょうか?」
「いや、いい。これはこれで扱いがややこしいんだ。他の野暮用もあるし…あ~…たく。面倒!」
「ご苦労様」
大げさに頭を抱えるリュウに、その側近の者が同情するように笑った。
彼等の間に流れる空気は、お互いへの信頼と仲間意識だ。
私は公主として、私の臣達にあんな信頼感を与える器量が果たしてあったのだろうか…

と、突然、何者かが、私の髪を(私は兄上から頂いた髪留めで両脇の長い髪を耳際で留め、長く垂らしていた)いきなり掴んで来た。
「触れるな!」
声を荒げ、手を撥ねると、その黒髪の背の高い魔族が私の手を掴んだ。放そうとしてもビクともしない。
私だって大人の男なのに。
なんだ、このバカ力。
「放せっ!」
「活きのいい人間だが…リュウ、あんたの趣味は変わってるなあ。なんでこんな人間連れてきたんだ?」
「そうそう、連れてくるんならもっと歳若く小さいのがいい。こいつを味合うのは相当な物好きだろう」別の男が私の顎を掴んでまじまじと顔を覗き込んだ。
私は身動きひとつ出来なくなった。

「ゆっとくがな、こいつはこんなんだが、大国を司る王様だよ、一応は」
「それは…珍しいと言えなくはない。可愛がってやってもいいのかい?」
「やめとけよ。俺が貰ったんだからな。…俺の許可無しには触れるなよ」
最後の韻だけリュウ・エリアード凄みを効かせると、私の身体に触れていた者達は舌打ちしながらも私を解放した。

「では、一寸行って片付けてくるから、後は頼んだよ、ラシュマー」
私を一瞥もせず、リュウは片手を挙げて出口の扉へ向かおうとする。
「で、これはどうすればいい?」
振り向いたリュウにラシュマーと呼ばれた男が私を指差す。
「あ?…そうだった。…風呂に入れて適当に飯でも食わせて、俺の部屋で待たせとけ」
「客人扱いで?」
「まさか…役にたたん奴をどうするかぐらい、誰でもわかるだろう」
彼は両手を軽くあげながら、どうでもいい風に笑って扉の向こうに消えていった。




まだまだ初夜は遠い…(^◇^)
話は頭には出来上がってはおりますが、如何せん時間が~
絵も描いてるんでね~どっちも楽しいからいいんですが、もし待たれていたらすいません。
まだまだ長いのでゆっくりしていってね~( ^^) _旦~~



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「彼方の海より…」 メトネ日記 4 - 2009.02.06 Fri

メトネ日記 4

果てしない闇のような夜の空を飛んでいた。
今夜に限って三日月すらない空を恨んだ。
私とリュウ・エリアードを乗せた魔獣は、風のように夜空を飛行した。

リュウの背中にしがみつきながら眼下を見下ろすと、私の愛するもの…国、宮殿、臣下達、兄上の姿はすでに見る影も及ばず、夜天光に淡く光っている。
私は本当にあの場所には戻れない、と思うと、涙が溢れてくる。
食いしばって我慢しても、溢れる涙は止めることも出来ずに泣いていると、リュウの怒号が耳元で鳴った。
「しっかり掴まっていろっ!じゃないと、振り落とされて、この闇に食われてしまうぞっ!」
「…」
あなたと一緒にいるよりマシだと言いたかったが、嗚咽で言葉も出なかった。

後悔していた。
軽はずみで宣言したわけではない。
我が身で購えるならどうなってもいいとさえ思ったのは本心だった。
だが、その悪災の元であるリュウ・エリアードのものにならなくなった自分が恨めしい。いっそこのままこの身を投げ出したいくらいだ。
そんなことをしても仕方が無い。この悪魔を怒らせて、また兄上たちに何かあったら何の意味もない。

私は…耐えるしかないのだ。

魔獣の柔らかい翼が時折、私の足に触れ、私を慰めているように思えた。
そんなことはありえない。こいつもリュウの言いなりの獣なのだ。

私は…どうなるのだろう…

不安と絶望しかない胸中の思いは、涙でしか言葉にすることはできなかった。

いつまで飛んでいるのだろう…そう思った瞬間、突然魔獣の身体が降下した。
冷たい気流が身体を纏う。
すると、ゆっくりと振動も感じないくらいに静かに、岩山の頂に着地した。

黙ったままのリュウが魔獣から降りると、私を振り返った。
「ひとりで降りれるかい?坊ちゃん」
「あ、当たり前です」
私は涙を拭きながら、背の高い魔獣から降りようと飛び降りた。
思わず足がよろけて転びそうになる。
「手を貸してやっても良かったんだぜ」
「いらない。あなたに同情してもらおうとは思わない」
「じゃあ、逆に同情して欲しいね。おまえの涙と鼻水で、俺の肩も背中も驟雨にあったみたいに気持ち悪いんだがね」
「あ、…ご、めんなさい。弁償します」
私の言葉にリュウは呆れたから笑いを発した。
「どうやって弁償してくれるんだ?その身ひとつしかないおまえに、何が出来る?」
「私は」
「ラサイマ国公主か?…昨日まではね。でも今のおまえは何もない。言わせてもらえば俺のお荷物でしかない」
「?」
「ユエの手前、おまえを連れてはきたが、はっきり言ってどうでもいいんでね」
「どういう意味…」
「俺にとっちゃおまえなんか何の価値も無いって話だよ。でもまあ、ここまで来たんだ。魔界に連れてやってもいい」
「行きたくないって言ったら?」
「ここに置いていく。後は好きにしていい。まあ、ここの高さはそれ相当あるから、地上に降りるのは大変だろうが」
「本当に…酷い人だね」
「人じゃない。魔族だよ、ガキ」
「…」
「いいから向こうの空を見ろ」
怒りが治まらなかったが、私は言われた方の暗闇を見つめた。

遠くにうっすらと闇とは違う色の空が見える。
月の無い夜が明けようとしている。

「暁闇だ。ここは俺には不要な人間の世界だが、この暁はいつ見ても心奪われるもんだよ」
「…魔族にそういう趣を解する者がいるの?」半分皮肉で言ってみた。怒鳴られるのも覚悟の上で。
しかしリュウは面白そうに笑った。

「魔族は大抵美しいものが好きなのさ。だから醜いものは排除するんだよ。跡形も無く」





日記なのか?…すでにわからない…あはは


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「彼方の海より…」 メトネ日記 3 - 2009.02.05 Thu

メトネ日記 3

気が付いた時、目の前には兄上がいた。私を腕に抱き、心配そうに覗き込んでいる。
「メトネ…やっと気が付いたのだね…どこか痛いところはない?」
安心したような顔を見せて兄エーギルは微笑んだ。
私はその目を見て何かが違うと悟った。
「あ、兄上…目が…見えるのですか?」
エーギルの瞳は盲いた時のそれとは違い、はっきりと私の姿を眼に映している。
「…ああ、そう…色々あったんだ。私の中に潜んでいたものを…全部…リュウ・エリアードが抜き取ってくれたんだ。そしたらね…見えるように、なったんだよ、メトネ…」
エーギルの言葉は良く理解できなかったが、私が気絶している間に何かがあって、兄上の目が見えるようになった…その事実は確からしい。

「…そうだったの。良かった…本当に良かった。兄様の目が見えるのは私にとっても何より喜ばしいことです」
私は兄上に笑いかけた。が、兄上は黙ったまま、沈んだ顔で私を見つめるばかりだ。
「何か…あったの?」
私は身体を起し、周りの様子を伺う。

夕暮れの燃える太陽の輝きが割れたステンドグラスの隙間から射し込んでいる。
ステンドグラスの反射と相まって美しい色で私達の身体を映していた。

ゆっくりと起き上がってみると、丁度、壁の影になっているあたりでユエと…リュウ・エリアードが互いに向き合って何かを話している風に見えた。

「兄上、この災いは終わったのでしょうか。あの悪魔はもう私達に危害を加えない?」
「メトネ…それは……そうだね。多分、これ以上は酷くはならないと思う…けれど…おまえが…」
「え?私?…私が何か…」
それ以上続かない言葉が私を不安にさせる。

「はっきり言ってやれ。ガキじゃないんだからなあ」
知らぬ間にリュウ・エリアードが私の目の前に立ち、揶揄するように笑う。
「公主殿。おまえがこの国の犠牲になるって話」

「…言っていることが良くわからない」
「俺がおまえを貰い受ける事で、こいつらもこの国も許してやろうって話だよ。全く時化た話だがな。仕方ない。こちらも急いでいるんだ。おまえで我慢してやるよ」
「…」
リュウの話している事が、何のことかさっぱりわからない。
「兄様、私には良くわからないのですが…」
「メトネ…リュウ・エリアードがおまえを…魔界に連れて行くと言うんだ」
「ただ連れていくんじゃあない。生かすも殺すも奴隷にするも俺の機嫌次第。勝手にするって言っているんだよ。生贄っていうもんはそういうもんだろ」
リュウが嗜虐的に笑う。私は我慢できない気持ちで一杯だ。

「メトネ…おまえに幾ら謝っても許されることじゃない。だけど、私にはそれを止める力がない…すまない、私は無力だ」
「兄上…お願いですから泣かないでください」
「メトネ…この契約は私にとても承服できかねる話だが…今はどうすることもできない。辛抱して欲しい」
「ユエ…」
跪き私に騎士の誓いを立てるユエの姿に、私は自分の決断を知った。

「ふたりとも…心配なさらずとも大丈夫です。私は公主なのですから、この国を守る為に命を投うのは当たり前の事。この身で贖えるのなら喜んで捧げましょう!」
手の震えを押さえながらも、私は精一杯明るい声を張り上げた。







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「彼方の海より…」 メトネ日記 2 - 2009.02.03 Tue

メトネ日記 2

魔族であるリュウ・エリアードが「魔界の死神」と呼ばれたのを最初に耳にしたのは、彼の姿を初めて見た瞬間だった。

公主である私と神官長の兄、エーギル・フェネス・スクルドが統治するラサイマ公国は穏やかな肥沃な土地に恵まれ、隣国の巨大国家エイクアルド国のような華やかさも歴史も無いが、緻密な外交により、平和が保たれていた。
私達の両親は私に公主の座を譲ると、地方に隠居したまま、政治とは無関係な地位にある。
私は其れなりの帝王学は受けたつもりだが、この国はまだ若く、なにより私自身が自分が思うよりもずっと無知だった。
それでも…いつも優しくお互いを支えあうように生きてきた兄上と、この国で生きるのは幸せだった。


あの日…宮殿のどこそこから何かの衝撃と地鳴りが足元から響き、同時に多くの人々の叫び声を聞いた。
回廊の扉に急ぎ向かおうとすると、廷臣達が身体を張って止めようとする。
「何が起こっている!」
私は叫んだ。
「わかりません。ただ…何者かが…神殿に…」
「神殿?兄上のおられる神殿に…」
「恐ろしい妖気を感じます。メトネ様はここに居られるように、ユエ殿に命じられております」
「ユエは…」
「エーギル様のおられる神殿へ」
「私も行こう。なにやら嫌な予感がする」
私は臣の手を払い、神殿へ急いだ。

神殿の有様を見て驚愕した。
神殿の扉から北半分が瓦礫の山を築いている。
大きくはないが瀟洒に建てられた私と兄が大好きな神聖なる場所が目を覆いたくなるほどに壊されていた。
竦む足をなんとか前に出しながら、階段を上り詰めて、私は神殿の儀式が行われる祭儀室に向かった。
そこに続く階段、廊下には凄惨な光景が広がっていた。
多くの神官と兵士が血を流し、また身体のどこかが引きちぎられたまま息絶えていた。

気を失いかけながらも私は祭儀室の扉を開け、エーギルの姿を探した。
広間の中央に背中を向けたユエ・イェンリーが剣を構えたまま立っているのが見えた。その背中越しに…白い衣を纏った姿をみとめた。

エーギルは…神官の玉座に凭れるように倒れこんでいる。
「兄上っ!」
叫ぶ私を案じるかのようにユエが私を振り返る。
「メトネっ!此処へは来るなっ!」
「…」
恐ろしい怒号だった。

「別に…いいぜ、俺は。そいつがおまえの大事な奴なら、尚更血祭りにあげてみようか。お前の罪が少しは軽くなるかもしれない」
「やめろ!リュウ・エリアード!死神めっ!」
リュウ・エリアードと呼ばれる者は黒い服に細身を包んで、太陽の逆光に黄金の髪を靡かせてただそこにあった。
影に隠れて面立ちははっきりと見えなかったが、残虐な笑みと傲慢な態度。
それを凌駕する魔力の恐ろしさに身体が震え、私は後ずさりながら壁際に背中を付けた。
立っているだけなのに足の震えが止まらない。

この存在は一体何なのだろう。
いきなりもたらされたこの災いは…
私達はどこかで何か間違った事に気づかないでいたのだろうか…

思わず目を瞑った。
「兄さま…」

エーギルをもう一度確認しようと目を上げた時、その悪魔が私に向かってくるのが判った。
身が竦んだまま動けない私に代わって、ユエが立ちはだかり、リュウ・エリアードに向かって何かを投げつけた。
その…銀のダガーはリュウの左手を貫き、真正面の壁に突き刺さった。

貫かれた左の掌から、赤い血が滴っている。
左手を壁に縫いとめられ、自由が利かないはずなのに、リュウは痛みも感じないかのように、少し笑っている。
まるで楽しんでいるかのように…

「面白いけどなあ~おまえは俺より遥かに弱いんだよ、ユエ・イェンリー…」
彼は自由な右手でゆっくりとタガーを抜くと、血の付いた刃を舐めた。

「ユエ、俺は教えなかったか?敵にトドメを刺す時は、心の臓か、眉間を狙えって。お前は相変わらず甘い男だ。それじゃあ一生俺には勝てないぜ。まあ元々そんな性質じゃあなかったな…」
「リュウ…もうやめてくれ。私の命はやる。だから…」
「おまえの命どうこうじゃないんだよ…大体俺は能無しのおまえにはもう興味がないからな」
リュウはそのダガーを手にしたまま、私に近づいてくる。

私は…恐怖で腰が抜けて、その場にへたり込んだ。
ユエは私を守るように私の前に立ちはだかったままだ。
「…近寄るな。私は私の大事なものの為に命を張る覚悟だ」
「人間にか?…いいさ、好きにやれば。俺も好きにやらせてもらう。この地上でも魔界でも俺が摂理となるわけだからな」
「…」
「だからおまえには痛い思いをしてもらわなければな…」

銀のダガーが輝きを放って私に向かって振り下ろされる…そう感じた瞬間、私は意識を放した。
そうしなければ、私は息絶えていたことだろう。

意識が消える瞬間、「魔界の死神」の凍るほどの冷たい顔が、今まで見たどんな美しいものよりも何故か美しいと、感じていた。




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あ~なんか自分的にはこういう文章懐かしいなあ~
昔はこんなんばっか書いていたんで。
しかし語彙は確実に減っているので表現が全然たりませんね~あははは
BLがない?もうちょっと先かな~
今から芳緑の仕上げにかかって、あと病院だよ~雨降っているんでめんどい


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「彼方の海より…」 メトネ日記 - 2009.02.02 Mon

「彼方の海より…」  メトネ日記

魔族の長であるリュウ・エリアードに連れ去られたラサイマ公国の公主だったメトネ・レヴィス・スクルドが、魔界での生活を赤裸々に書き残した日記。

…どうでもいいだろうが…メトネはメモ魔であるが、そうしなければならない理由がある。
では、行き当たりばったりで始めよう…
大体攫われて半年後ぐらい…としようか。

「この世の誰よりも…君を愛す」

私がここ、魔界に来て一番驚いたことといえば、書物の類が一切無いことである。
何故無いのかを、この家の一切を仕切る執事役のラシュマーに尋ねたら、魔族には一度見たらすべてを記憶する能力が備わっていて、必要な時はそれを取り出せばいいので、メモすらしないという。
では、手紙とかは無いのか?と聞いたら、それはあるが紙などは使わないと言う。

そういえば、リュウに仕事の依頼が来る時、光の珠みたいなものが現れて、リュウがそれを受け取り、両の手の平を開くと青白く光が浮かび上がり、リュウの目がチカチカと光る。
何かを読んでいるようだった。それが終わると光は消え、その珠自体も消える。
あれが手紙なのかもしれない。

しかし、私にはそんな能力はないので、ここで自分のすべき仕事は、色々と書き残したいと我儘を言って、雑記帳を作ってもらった。
嬉しそうに書き綴っていると、リュウが横で呆れた口調で言う。
「本当に人間とは非力だ。記憶する。それすら出来ないとは…メトネ、お前らの寿命が短くて良かったな」と。

人間と魔族の寿命は大幅に違う。
人間は60年生きれば長寿な方。魔族は500年以上も生きることも珍しくないという。
しかし、実際はそんなに生きられないらしく(魔物や戦争の為)能力の弱い者は長くは生きられない。
リュウはもう300年は生きているという。
ラシュマーに言わせれば、リュウ・エリアードは初代からの四天王のひとりであり、最も魔力を持った魔族だと言う。他の四天王は代替わりが結構あるみたいだけど。

魔族は年は取るが、その能力で自分の気に入った時期の体型を保つことが出来、殆どの魔族は少年か青年の様な形容をしている。
そういえば此処に来て以来、観る魔族の方達はみんな綺麗だ。今気づいた。遅い…

そのかわり死んだ時は、その年齢の姿に変わり果てるので(魔力が消えるから)干乾びた酷い姿を晒さない為に、死期を悟ればその魔族は姿を消すと言う。
誰にも看取れないで、亡くなるのは一寸可哀想になる。

ラシュマーは人間界での魔法のような力は魔族界では生まれ持った能力であり、呪文すら必要とするものではないと言う。
つまり人間のそれとは比較するな、と、いう事らしい。

魔族の方達は、一応に人間が嫌いなので、私の姿を見るだけで、軽蔑した顔で近寄ってこない。
犯されないだけマシだとラシュマーが教えてくれた。
「おまえはリュウのお気に入りだから、特別なんだよ」

…特別と言われると嬉しいのは、やはり私がリュウを好きだからなのだろう…


今日の日記終り。


こんな感じで好きなだけ書いていきます。


metone1

イラストはラサイマ公国公主の頃のメトネ。お坊ちゃんです。21歳なのだが童貞www


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