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2009-02

「彼方の海より…」 メトネ日記 2 - 2009.02.03 Tue

メトネ日記 2

魔族であるリュウ・エリアードが「魔界の死神」と呼ばれたのを最初に耳にしたのは、彼の姿を初めて見た瞬間だった。

公主である私と神官長の兄、エーギル・フェネス・スクルドが統治するラサイマ公国は穏やかな肥沃な土地に恵まれ、隣国の巨大国家エイクアルド国のような華やかさも歴史も無いが、緻密な外交により、平和が保たれていた。
私達の両親は私に公主の座を譲ると、地方に隠居したまま、政治とは無関係な地位にある。
私は其れなりの帝王学は受けたつもりだが、この国はまだ若く、なにより私自身が自分が思うよりもずっと無知だった。
それでも…いつも優しくお互いを支えあうように生きてきた兄上と、この国で生きるのは幸せだった。


あの日…宮殿のどこそこから何かの衝撃と地鳴りが足元から響き、同時に多くの人々の叫び声を聞いた。
回廊の扉に急ぎ向かおうとすると、廷臣達が身体を張って止めようとする。
「何が起こっている!」
私は叫んだ。
「わかりません。ただ…何者かが…神殿に…」
「神殿?兄上のおられる神殿に…」
「恐ろしい妖気を感じます。メトネ様はここに居られるように、ユエ殿に命じられております」
「ユエは…」
「エーギル様のおられる神殿へ」
「私も行こう。なにやら嫌な予感がする」
私は臣の手を払い、神殿へ急いだ。

神殿の有様を見て驚愕した。
神殿の扉から北半分が瓦礫の山を築いている。
大きくはないが瀟洒に建てられた私と兄が大好きな神聖なる場所が目を覆いたくなるほどに壊されていた。
竦む足をなんとか前に出しながら、階段を上り詰めて、私は神殿の儀式が行われる祭儀室に向かった。
そこに続く階段、廊下には凄惨な光景が広がっていた。
多くの神官と兵士が血を流し、また身体のどこかが引きちぎられたまま息絶えていた。

気を失いかけながらも私は祭儀室の扉を開け、エーギルの姿を探した。
広間の中央に背中を向けたユエ・イェンリーが剣を構えたまま立っているのが見えた。その背中越しに…白い衣を纏った姿をみとめた。

エーギルは…神官の玉座に凭れるように倒れこんでいる。
「兄上っ!」
叫ぶ私を案じるかのようにユエが私を振り返る。
「メトネっ!此処へは来るなっ!」
「…」
恐ろしい怒号だった。

「別に…いいぜ、俺は。そいつがおまえの大事な奴なら、尚更血祭りにあげてみようか。お前の罪が少しは軽くなるかもしれない」
「やめろ!リュウ・エリアード!死神めっ!」
リュウ・エリアードと呼ばれる者は黒い服に細身を包んで、太陽の逆光に黄金の髪を靡かせてただそこにあった。
影に隠れて面立ちははっきりと見えなかったが、残虐な笑みと傲慢な態度。
それを凌駕する魔力の恐ろしさに身体が震え、私は後ずさりながら壁際に背中を付けた。
立っているだけなのに足の震えが止まらない。

この存在は一体何なのだろう。
いきなりもたらされたこの災いは…
私達はどこかで何か間違った事に気づかないでいたのだろうか…

思わず目を瞑った。
「兄さま…」

エーギルをもう一度確認しようと目を上げた時、その悪魔が私に向かってくるのが判った。
身が竦んだまま動けない私に代わって、ユエが立ちはだかり、リュウ・エリアードに向かって何かを投げつけた。
その…銀のダガーはリュウの左手を貫き、真正面の壁に突き刺さった。

貫かれた左の掌から、赤い血が滴っている。
左手を壁に縫いとめられ、自由が利かないはずなのに、リュウは痛みも感じないかのように、少し笑っている。
まるで楽しんでいるかのように…

「面白いけどなあ~おまえは俺より遥かに弱いんだよ、ユエ・イェンリー…」
彼は自由な右手でゆっくりとタガーを抜くと、血の付いた刃を舐めた。

「ユエ、俺は教えなかったか?敵にトドメを刺す時は、心の臓か、眉間を狙えって。お前は相変わらず甘い男だ。それじゃあ一生俺には勝てないぜ。まあ元々そんな性質じゃあなかったな…」
「リュウ…もうやめてくれ。私の命はやる。だから…」
「おまえの命どうこうじゃないんだよ…大体俺は能無しのおまえにはもう興味がないからな」
リュウはそのダガーを手にしたまま、私に近づいてくる。

私は…恐怖で腰が抜けて、その場にへたり込んだ。
ユエは私を守るように私の前に立ちはだかったままだ。
「…近寄るな。私は私の大事なものの為に命を張る覚悟だ」
「人間にか?…いいさ、好きにやれば。俺も好きにやらせてもらう。この地上でも魔界でも俺が摂理となるわけだからな」
「…」
「だからおまえには痛い思いをしてもらわなければな…」

銀のダガーが輝きを放って私に向かって振り下ろされる…そう感じた瞬間、私は意識を放した。
そうしなければ、私は息絶えていたことだろう。

意識が消える瞬間、「魔界の死神」の凍るほどの冷たい顔が、今まで見たどんな美しいものよりも何故か美しいと、感じていた。




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あ~なんか自分的にはこういう文章懐かしいなあ~
昔はこんなんばっか書いていたんで。
しかし語彙は確実に減っているので表現が全然たりませんね~あははは
BLがない?もうちょっと先かな~
今から芳緑の仕上げにかかって、あと病院だよ~雨降っているんでめんどい


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