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2009-02

「彼方の海より…」 メトネ日記 3 - 2009.02.05 Thu

メトネ日記 3

気が付いた時、目の前には兄上がいた。私を腕に抱き、心配そうに覗き込んでいる。
「メトネ…やっと気が付いたのだね…どこか痛いところはない?」
安心したような顔を見せて兄エーギルは微笑んだ。
私はその目を見て何かが違うと悟った。
「あ、兄上…目が…見えるのですか?」
エーギルの瞳は盲いた時のそれとは違い、はっきりと私の姿を眼に映している。
「…ああ、そう…色々あったんだ。私の中に潜んでいたものを…全部…リュウ・エリアードが抜き取ってくれたんだ。そしたらね…見えるように、なったんだよ、メトネ…」
エーギルの言葉は良く理解できなかったが、私が気絶している間に何かがあって、兄上の目が見えるようになった…その事実は確からしい。

「…そうだったの。良かった…本当に良かった。兄様の目が見えるのは私にとっても何より喜ばしいことです」
私は兄上に笑いかけた。が、兄上は黙ったまま、沈んだ顔で私を見つめるばかりだ。
「何か…あったの?」
私は身体を起し、周りの様子を伺う。

夕暮れの燃える太陽の輝きが割れたステンドグラスの隙間から射し込んでいる。
ステンドグラスの反射と相まって美しい色で私達の身体を映していた。

ゆっくりと起き上がってみると、丁度、壁の影になっているあたりでユエと…リュウ・エリアードが互いに向き合って何かを話している風に見えた。

「兄上、この災いは終わったのでしょうか。あの悪魔はもう私達に危害を加えない?」
「メトネ…それは……そうだね。多分、これ以上は酷くはならないと思う…けれど…おまえが…」
「え?私?…私が何か…」
それ以上続かない言葉が私を不安にさせる。

「はっきり言ってやれ。ガキじゃないんだからなあ」
知らぬ間にリュウ・エリアードが私の目の前に立ち、揶揄するように笑う。
「公主殿。おまえがこの国の犠牲になるって話」

「…言っていることが良くわからない」
「俺がおまえを貰い受ける事で、こいつらもこの国も許してやろうって話だよ。全く時化た話だがな。仕方ない。こちらも急いでいるんだ。おまえで我慢してやるよ」
「…」
リュウの話している事が、何のことかさっぱりわからない。
「兄様、私には良くわからないのですが…」
「メトネ…リュウ・エリアードがおまえを…魔界に連れて行くと言うんだ」
「ただ連れていくんじゃあない。生かすも殺すも奴隷にするも俺の機嫌次第。勝手にするって言っているんだよ。生贄っていうもんはそういうもんだろ」
リュウが嗜虐的に笑う。私は我慢できない気持ちで一杯だ。

「メトネ…おまえに幾ら謝っても許されることじゃない。だけど、私にはそれを止める力がない…すまない、私は無力だ」
「兄上…お願いですから泣かないでください」
「メトネ…この契約は私にとても承服できかねる話だが…今はどうすることもできない。辛抱して欲しい」
「ユエ…」
跪き私に騎士の誓いを立てるユエの姿に、私は自分の決断を知った。

「ふたりとも…心配なさらずとも大丈夫です。私は公主なのですから、この国を守る為に命を投うのは当たり前の事。この身で贖えるのなら喜んで捧げましょう!」
手の震えを押さえながらも、私は精一杯明るい声を張り上げた。







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