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2009-04

宿禰凛一 「kissをしよう」 1 - 2009.04.23 Thu

rinmina5

green house~ 宿禰凛一編 「kissをしよう」


1.
 俺と水川が付き合うって決めた次の日、兄、慧一がシカゴの大学院へ戻る日が来た。
 俺は高校を休んで、空港まで見送りに行った。
 ターミナルで待つ間、俺は感極まって思わず涙ぐんでしまった。
 だって仕方が無い。この一年ずっと慧一は俺の傍から一時も離れずに面倒を看てくれたんだ。
 ダメになった俺をここまで立ち直らせたのは全部慧一のおかげだから…
 だから、暫く会えなくなる寂しさと、今まで傍に居てくれてありがとうの感謝の意もあってさ。
 熱くなったんだよ。
 そんな俺を見て慧一はかなりショックを受けたみたいで、「凛が泣くとダメだ…後ろ髪を引かれるってこのことなんだね。俺、行けなくなってしまうよ」と、本気で零すから、俺は思わず吹いてしまった。
 マジで弟好きすぎだろうよ、兄貴は。
「慧一の夢を俺も応援したいから、勉強頑張ってくれよ。二年でしっかり終わって帰ってこいよ。それまで俺、心配かけないように良い子にしてるからさ」
「うん、頑張るよ」
いつもは結構なポーカーフェイスなのに、あからさまに寂しげな顔を見せる慧一に、俺も一層寂しさが募ってしまう。
「慧、最後にキスをくれる?軽い奴」
「幾らでも…」
 慧一との別れのキスは、少ししょっぱい味。
 きっと俺の涙の所為だね。

 翌日、昨晩メールで昼休みに水川と温室で会う約束をしてたから、4時限が終わるのを待って学食へ直行。そそくさと昼飯を片付けていると、目の前に三上が悲壮な顔で現れた。
「宿禰…」
「な、なに…」俺の食べ終わったトレイをご丁寧に返却口へ戻した三上は俺の肩を抱く。
「頼みがある…」
 予想外の至極真面目な顔…いや~な予感。
「…おまえの頼みにろくな話はないよな」
「まあ、そう言うな、親友だろ?な?」
「…俺、これから大事な用事があるんですがね」
「俺とその用事とどっちが切羽詰ってるというんだ」
「…おまえの話は知らんわ」
「だから、ものっそ大事な…もういいからほら、こっち来いって」と、同意しかねる俺の腕を強引に引っ張って、学院のチャペルへと連れ出した。

 祈りを捧げるマリア像の御許で三上は俺と向かい合った。
「…なに?神前でなんか誓わされるんか?俺」
「いや、冗談じゃなく、おまえにしか相談できない話だ」
「だから何。早く言えよ。俺も約束があるんだって」
「まあ、待て。俺の話ってのはな」
「はい」
「隣町の女学院の一年生に可愛い子がいてな」
「うん」
「それで思い切ってその子に交際を持ちかけた」
「ふむふむ」
「めでたく承諾の事とあいなって、今度デートするんだが…」
「おめでとう。良かったじゃん」
「ここからが問題だ。今回のデートの最大のミッションがあま~いキスで彼女をメロメロにしようという事らしいんだが」
「らしい…?」
「そう俺の指示でね」
「あ、そう」
「そこだよ、宿禰くん。君の協力がいるのだ」
「だからなに?」
「君にキスのやり方を賜りたい」
「…は?」
「だからこう…メロメロになるようなだな、キスをおまえにご教授願いたいんだよ。おまえ、そういうの慣れてるっていうか…経験豊富だろ?ちょっと、こう…その手練手管をな、希う…たいんだ」
「…あ、そう…別にキスぐらいいいけどさ」
「ホント?」
 面倒臭い。それくらい別になんも考えなくてもできるだろうと思うけど、こいつにとってそんなに大事な事なら別に俺は協力を惜しまない、つか、キスぐらい朝飯前だろうよ。
「で、俺がおまえの役で、三上は彼女でいいわけね。ほら、ご教授してやるから。顔貸せよ」
 俺は一段低い三上の顎を持つとグッと引き寄せた。
「舌まで入れてやっからさ。ちゃんと覚えろよ…」
「…」返事がない三上をじっと見る。
「なに?」
「おまえって…綺麗な肌してんな~睫毛もすげ~長くてさあ、口唇も艶々しててさ」
「…」
 ツヤツヤしてんのはさっき豚カツ定食食ったからだよ。
「宿禰みたいに綺麗だったら女に不自由しないだろうな…」
「男にもしてないぜ。なんだよ、三上。その子から俺に乗り換える気か?」
「ば、ばかっ!俺はユミちゃんが一番だ」
「じゃあ、ほら、ユミちゃんの為にキスを覚えろ。特別に甘い奴な…」
 俺が口唇を合わせようとした瞬間、三上は俺の顔を手の平で押し返した。
「なんだよっ!」
「ごめん、宿禰、やっぱしやめとく」
「なに」
「いや、ここでおまえとキスしたら、彼女との本番の時さ、おまえの顔が頭にチラつく気がめっちゃするわ…それこそヤバいだろ」
「あ、そう…じゃあやめるんだな」
「うん、折角の協力あいすまん」
「俺の貴重な昼休みを返せ」
「悪かった。学食のチケットあげるから」
「A定食な」
「え~Aは五百円もするんだぞ」
「俺の貴重な…」
「わかった、Aで手を打つ」
 ホントに貴重な昼休みだったんだぞ、クソ三上め~


 

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前章「密やかな恋の始まり」の13です。


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