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2009-07

宿禰慧一 「イリュミナシオン」 13 - 2009.07.31 Fri

13.
「昔結婚したことがある。俺の実家は戦時中鋼鉄の特需産業で成り上がった、いわゆる戦争成金でね。親戚一同をその企業の配下に置きたがるんだよ。俺も理系の大学院まで行ったんだが、卒業したら有無を言わさず子会社の常務の椅子に座らされた。ついでに嫁さんまでも宛がわれてしまった。俺は自分が同性愛者だと悟っていたし、今更女性と付き合おうなんて思いもよらなかったさ。だけど、その頃は世間にばれるのが怖かったんだね。
今ならどうでもいいことなんだけど、あの頃は他人の偏見や差別が自分のプライドに傷を付けるのが許せなかったんだ。それに、何の取り得も力も持たない俺が、身内の保護も無く生きられるとは思えなかった。だから親の言うとおりに結婚した…すぐに失敗だったと気づいたんだ。だが不思議なもんでね、愛が無くても男と女が交われば子供が出来る。
男の子だった。無邪気な赤ん坊だ。普通なら他人の子でもかわいいと感じる、ただ泣いて寝て笑うだけの小さな赤ちゃんだ。愛情が沸いてもおかしくない。
だが俺には愛情が込み上げてこない。逆に疎ましくなってね。ただ一回や二回のセックスでこの世に産み落とされる生。俺のDNAが埋め込まれた人間。そう思うと愛情より気持ち悪さが先に立ってしまった。このまま夫婦生活を続けるのは無理だと思った。理由を言って離婚して頂いた。向こうも俺に対しての懸念はあったろうからね。…さすがに親も反省したんだろう。諦めてくれた。
慰謝料も養育費も十分補償する為に俺は働いたよ。けれど、2年後、子供が3才になるかならない頃、病気で死んだんだ」
「…」
「堪えたね…自分が殺した気分だった。恐ろしくて気が狂いそうになったよ。結婚なんてしなけりゃ、あの時セックスなんてしなけりゃ良かった…ずっとね、そんな想いに囚われて…子供への同情よりも自分の罪の大きさに砕けてしまった。
どうしてその子に…愛して出来た子ではなくても自分と血が繋がったその子に愛情が注げなかったのか…親としての責任。そんなんじゃない、もっと根本的なモラルを俺は果たせなかった。
俺はすべてを捨てた。家も会社も日本に居ることも嫌になって、世界中を放浪したよ。もう死んでもいいと思って日本を離れたんだ」
嶌谷さんは二本目の煙草を灰皿に捨て、暫く黙ったままジャズの音に身を任せている風だった。
俺はじっと息を殺して次の言葉を待っている。

「…7年前に俺が唯一信用する相手に日本に戻るよう勧められてね、あの店のオーナーなんだが、そいつのおかげでこうやって店の経営をやってるんだ。
ああいう店っていうのは面白いもんでさ。自分と似たり寄ったりの客が付いてくる。傷の舐め合いじゃないけれど、お互いに癒される場所を求めるんだろうね。俺も随分、角が取れたよ。色んな客が来るけれど、凛一みたいな奴は初めてだった。
生きていたら丁度息子と同じ歳だ。天の差し金か、もう一回やり直せって言っているのか?…そんな気分で、自分の亡くした息子の代わりに凛一を愛そうと思った。けどね、見事に裏切られた」
「…」
俺は思わず嶌谷さんを見つめた。
裏切られたとはどういうことだろう。嶌谷さんは俺に何を言おうとしているのだろう。

「凛一と初めて会ったのは、薄暗くて寒いクリスマスの朝だった。
俺の店の外の壁の間に身体を震わせていたんだ。ガキの浮浪者かと思って追っ払おうと声をかけたんだが、顔を見て驚いたね。見事に精錬され過ぎた出来の顔なんだからなあ。あの底知れぬ真っ黒な眼が俺をじっと見つめたんだ。…ああいうのを魔に魅せられるっていうのかな。一瞬で凛一の虜になっちまった。40のゲイのおっさんがさあ13のガキに、一目惚れしちまうんだから、俺も大概哀れなもんだと思ったよ」
「凛一は嶌谷さんの気持ちに気が付いていないんですか?」
「あいつは利口だが、そういう人の気持ちを置き換えることができない楽天家だよ。自分の魅力にもぞんざいだ。何もわかっちゃいないんだからな、自分がどれだけ保護欲をそそる危険人物かって言う事も。他人がどれだけおまえを狙っているのかも…。そのクセ触れようとしたらこっちが大やけどだ。おっそろしい気位の高い女王様だが憎めない」
「…すみません。それは俺にも責任があります」
「いいんだよ、それが凛一だし、それを許されてしまうのも彼の魅力だからね」

「俺は凛一を愛していると思う、だけど、これは性的なものは抜きだ。勿論愛玩してやりたいとも思わない。人間として彼を愛しているし守ってやりたいと思う。だけど慧一君にはとても適わない。凛一から君のことを聞かされる度に、どれほど君と凛一が固く結びついているかを理解してしまうとね、それこそ嫉妬心さえ起こらないもんさ。到底太刀打ちできない」

嶌谷さんの告白に俺は嫉妬や怒りよりも、感情を分け合う者同士と理解した。
この人は俺の告解を聞く聖職者なんだろうか…

「俺は…」深く息を吸いゆっくりと吐き出した。
外の景色は少しずつ白み始めている。さっきまで遠くに見えていた山並みがすでに木々の一本一本がはっきりと見えるまで近づいている。

「俺は凛一を愛している。あなたと違って性欲もあるし。俺だけのものにしたいという独占力や執着心も今やもう妄執と成り果ててますよ。…当たり前だ。あの子が生まれてずっと…この15年間思い続けてきたんだから、今更捨てる場所さえ見当たらない。凛一が居なかったら俺の生きている意味などない…バカらしいと思う。自分の人生だ。自分の為に生きるべきだとも思う。だけど、自分の生は凛を愛するという意味になるんだ。ここまできたら一ミリだって揺るぎやしない。俺も大概アホですよ。適わぬ恋に身をやつしている。でもね、凛一が幸せなら…凛が笑ってくれるなら、俺はどうでもいいんですよ。他人がどうなろうと自分がどうなろうとあいつが幸せそうに笑っていてくれれば、俺は何も求めない」
何も求めない…そう言い切ってしまった自分の言葉を反芻した。
違う…求めていないわけがない。俺はずっと…

「…いや、なにも求めないって言うのは嘘です。俺はどこかで凛一への欲求を抑えきれないでいるのだから…それは見返りを求めていることですよね」
俺は笑った。自嘲ではない。俺は罪を告白した気分でいた。それで救われるとは思わない。救われようとも思わない。
嶌谷さんがどんな敬虔な司祭であったとしても、俺は救いを求めていない。

「凛一を抱きたいという想いを、慧一君は罪だと思っているの?」
嶌谷さんはまるで映画の感想でも聞くかのように俺の根源に語りかける。
俺はゆっくりを顔を上げ、正面の真っ直ぐに伸びていく道路の中央線を見つめた。



                                          text by saiart


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宿禰凛一の過去話「追想」の初めはこちら 


ここを書けたおかげでサクちゃんと決めた最終的な筋書き通りに行く道が見えた気がする。ここからまた慧一の告白は続くと思われ…



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宿禰慧一 「イリュミナシオン」 12 - 2009.07.31 Fri

12.
凛一の最後の電話から、もうまる二日経つ。
あれから嶌谷(とうや)さんは自分が責任を持って凛一と月村という男の居場所を突き止めると言って聞かなかった。
俺も一緒に探させてくれと頼み込んだが、よくよく考えれば、俺とその月村は何ひとつ係わり合いがないんだから、連絡しようにもこっちの身元が信用できないだろう。
だとしても俺も気が気ではいられるはずも無く、何時も気も休めずに携帯電話を睨み続けていた。

その夜遅く、電話が鳴った。嶌谷さんから月村の別荘の住所がわかったという知らせだった。
そこにいるとは限らないが、今から車を走らせるという。勿論俺も乗せてくれと頼み、深夜4時、自宅まで迎えに来た嶌谷さんの車に飛び乗り、俺たちは長野に向かった。

月村の別荘は蓼科の八ヶ岳付近で、車で約4時間弱を要する。
俺は運転の交代を願い出たが、嶌谷さんは車の運転は趣味だといい、断られた。
「今まで仕事だったんでしょう?居眠り運転でもされたら俺が困る。遠慮なく言ってください」
「…おまえら兄弟は本当に他人に甘えるのが下手だね~こういう時は大人にまかせときなって」
「俺は十分大人なんですけどね」
嶌谷さんの物言いはこの間と違ってかなりくだけた言い方になって、俺も自然とひきずられる。
「身体ばっかり大人になっても心はどうだかね~天使系一族じゃないのかい?宿禰家の皆さんは」
「天使と悪魔は二律背反ですよ」
「…慧一君は自分を悪魔とでも言いたいのかい?」
「…そうかも知れない」
俺が天使になんてなれるわけが無い。対岸の果てにいる気がする。
それでは天使の凛一とは永久に逢えない…そういうことなのか…
エンジン音が僅かに高く響いた。高速に乗った車体がスピードを上げる。
最後の闇を楽しんでいるオリオンのペテルギウスと火星の赤色が僅かに見えた。

車のオーディオから静かなジャズが流れる。場所が場所ならジンでもかっくらいたい気分になる。
俺の気を読んだのか嶌谷さんが「慧一君はお酒はいける方?」と聞くので、「ざるですよ」と答える。
「凛一はあまり飲まないね。酒に酔うのが嫌いらしい。凛らしいといえばそうだがね」
「…」
凛一が酒が強くないとは知らなかった。と、いうよりも俺はこの人よりも凛一を事を知らないんじゃないのか。本当の凛一を知るために、この人の話をもっと聞きたいと思った。

「嶌谷さん、凛一がどんな顔であなたの店で過ごしていたのか教えていただけますか?俺はそれを知らなくちゃいけない気がする。凛が連絡先をあなたに指定したのは、俺に知って欲しいという思いもあったんじゃないでしょうか」
嶌谷さんは暫く黙り、そして口を開いた。

「そうだね、話は長くなるけれど、着くまでには終わるだろうよ。眠気覚ましに俺の話でも聞くかい?」
「お願いします。無事故を祈りながらありがたく伺いますよ」
嶌谷さんは口端で笑いスピードを上げ、数台の車を追い越していく。

「俺がゲイなのは知っているよね」
「…はい、雰囲気でわかりました。俺もそうだから」
「慧一君がゲイって話は凛一から聞いていたんだが、君はそんな風には見えないね。相当したたかなのか、気配を隠すのうまいのか…」
「別に隠しているわけじゃないんですが、そうですね。いつも偽りの世界で生きてるようなもんですから」
「偽りの世界ね…多かれ少なかれ誰だってそういうのは持っているもんだが、俺たちはまた特殊かもしれないね…煙草いいかな?」
「ええ、構いませんよ」
嶌谷さんはマルボロを咥え、火をつけた。




                                              text by saiart

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ふたりが勝手にしゃべり始めたので長くなった。まだまだこのおしゃべりは続くと思われます。



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「彼方の海より…」 7 - 2009.07.30 Thu

リュウメトネラブ1

7.
この魔界では昼と夜の区別が付けにくい。
すべての部屋には窓など無く、外の様子はうかがい知れない。
ただ敷き詰められた磨り硝子のような天井が暗くなったり、明るくなったりして、それが夜と昼を区別する手段だろう。
一日の食事は二回で、それは地上と同じなのだが、料理の内容はというと…、殆どが食材の原型をとどめていないので、何を食べているのかわからない。
美味しいから文句は無いのだけれど、この間、リックに赤いスープが美味しいと言ったら「妖魔の血で作ったスープだよ」と、教えられ吐きそうになった。
もう二度と食材を聞くのはよそう。
リュウの為に何か作りたいと思って、料理でもと思ったが、さすがに尻込みしてしまう。

リュウと言えば、近頃は私が素直になったのを訝しがってか、時折疑惑ありげな顔で私を睨む。
私はリュウに抱かれるのが段々と嬉しくなってしまい、思わず甘えてしまうのだが、リュウにはあまり伝わっていないようだ。いや、もしかしたらそういう甘え方をする私を気に入らないのかも知れない。

ある晩の事、リュウが私をひどく痛みつけた。
今までに無いほどに酷いやり方で、私は怯え、泣き叫んで、必死で許しを請う程だった。
それでも、許してもらえず、何度も失神してしまい、その度にリュウは私を起こし、また責めるのだ。
身体中がバラバラになるほど戦慄き、このままでは死んでしまうと遠くなる意識の中で何度も思った。

暗い天井が次第に明るくなっても、拷問のようなそれは続き、終に私は屍のようにベッドに沈み込んだまま、指一本動かせなくなってしまった。
いつもなら傷ついた私の身体を必ずと言って良いほどに、魔力で治癒してくれるのに、リュウは何もせず、痛みで動けない私を冷たく見下すと、ベッドから離れた。
私は無言で部屋を出て行くリュウの背中を見送った。
何故だか、自然と涙が溢れてくる。

赤く鬱血した手首の跡を見た。縛られたわけじゃない。リュウは道具なんて使わないもの。
リュウが…私の手首を骨が折れる程に掴んで離さなかったのだ。なぜこんな事をするのだろう。私が抵抗するはずも逃げるはずもないのに。

もしかしたら私はリュウに嫌われたのだろうか…
それとも私に飽きたのだろうか。
だから私の傷を癒すことすらしなかったんじゃないだろうか…
そう考え出すと、それ以外にはリュウの行動の目的が浮かばず、私は酷く狼狽した。

いつかは飽きられるかも知れない、捨てられるかも知れない。それは覚悟していた。
だって何も取り得の無い人間の私に、リュウを引き止めておく魅力などあるはずも無いのだし、どうせ魔族みたいに長生きも若さを留めておく魔力もないんだ。
リュウは私を見限ったに違いない。
そう思うと、身体だけじゃなく心まで軋むようで辛くてたまらない。
私はそういう風に思いつめる自分が嫌になる。
もうやめよう…そう思い、暗い闇の眠りに誘われるままに眠りこんだ。
見るのは悪夢ばかりであったが…

「メトネ、大丈夫かい?」
私を揺り起こすリックの声で目覚めた。
「…あ…リック」
「酷くうなされてたよ」
「…そう」
「声もガラガラだね。昨晩は凄かったよ、君の声が辺りに響いていたもの」
「…」
羞恥を通り越して青くなった。あんな醜態の声を誰かに聞かれていたと思うと、死にたい気分になってくる。
「身体の方も凄いけど…起き上がれる?」
「…相当な努力がいるけど無理じゃないよ」
私は仕方なしに笑った。ここまで恥を晒してしまえば、隠すものなどないだろう。
裸のままゆっくりと起き上がる。
動くたびに身体のあちこちの骨や筋肉が悲鳴を上げているみたいに痛みが伝わって、思わず声が出る。
「可哀相だな…どうしよう…僕の弱い魔力でもこれくらいなら治癒できるんだけど…」
「かまわないで、リック。そんなことをしたら君がリュウに叱られてしまうよ。いいんだ、リュウが私をこうしたいのなら…それが主人の命なら、受けるしかないのでしょう?」
そういうことなのだ。
私はリュウの下僕でしかなく、私にリュウを愛する権利などないのだ。

「…リュウは何か別の考えがあるんだと…思うよ。君はいい子だから、大丈夫。そんなに思いつめるんじゃないよ」
「ありがとう…」
「実はね、ここに来たのは…リュウに君を呼んでくるように言われたんだ」
「リュウに?」
「リュウに来客があるんだ。君を見たいんだって…それで僕が使わされた。でも歩けそうもないんじゃ…」
リュウの命を果たせないとリックがどんな仕打ちを受けるかもしれない。
「だ、大丈夫だよ。待って支度するから…っ!」
私は急いで立ち上がろうとしたが、身体中に激痛が走りその場にへたり込む。
「薬湯に浸かって身体を温めよう。そうすれば痛みは取れるし、大分楽になるよ」
「でも時間が…」
「それくらいは大丈夫だ。どっちにしても君、全身を洗わなきゃ見られたもんじゃないよ」
私の返事を待たずにリックは裸の私を横抱きに抱え上げた。
突然のリックの行動に、私は一瞬痛みを忘れた。
私よりも背は低く、華奢なのにあまりにも軽々と私を抱き上げたからだ。
「リ、リック!降ろして!ひとりで歩けるから」
「なに言ってるの?」
「だって…」
いい大人が年下の子に裸のまま抱きかかえられてる様っていうのはさすがに忍びない。
「メトネをちゃんときれいにしてつれて来いって、言われてるんだ。遠慮しないで」
「そうじゃない…君より身なりの大きい私が抱えられてるっていうことが、幼い子供みたいに思えて身の置き所がない感じなんだ」
「僕にしてみりゃメトネは子供だけどね」
確かにリックも50年以上生きている魔族なのだから、私に比べれば随分大人なんだろうけど…。

始終身を竦ませる私を、あれこれとリラックスさせながら、リックは湯屋へと連れて行ってくれた。




                                         text by saiart  


■「彼方の海より…」  リュウ・エリアードとメトネのお話はここから
プロローグ
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この章の目的地はふたりが恋人になるまで。
さっさとそこに行きたいなあ~そこからまだ長いんだからさあ~ww







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宿禰慧一 「イリュミナシオン」 11 - 2009.07.28 Tue

11.
俺の声に応答はなく、一瞬いたずら電話なのかと疑った。
だが、微かに感じる呼吸が凛一だと確信し、俺は凛一に訴えるようにゆっくりと言葉を続けた。
「凛…どうした。頼むからおまえがどこにいるか言ってくれ。おまえが旅行に行くと言ってもう十日も経つんだ。連絡しようにも…携帯の電源を切っているんだろう?凛」
『慧…は俺が死んだら泣く?』
望んでいた凛一の声音。だが「死」という言葉が俺の頭の中に張り付いてしまった。
「…何言ってるんだ。いい加減にしろよ」
凛一の冗談だと受け流したい気持ちで応答する。
『俺、殺されるかも知れない…けど、恨まないでよね。その人が悪いんじゃないんだ。俺が救えなかった罰だと思ってくれよ、慧』
何をバカなことを言ってる…そう言いたいのに言葉に出ない。凛一は何を言っている。
凛一は本気で…本気で俺に遺書めいたことを口走っている。

バカなことを言うな!おまえが誰かに殺されるものか!殺させやしない。
俺が絶対に。

「おまえが死んだら、俺は許さないから。そいつもおまえも、世の中の奴全てを許さないからなっ!凛、帰ってくるんだ。おまえが居ないと俺の生きる意味はないって…そう言ったはずだ。覚えているだろ?」
俺の傍で聞き耳を立てている嶌谷さんの事など構わずに叫んでいた。
『ごめん、慧』
泣きそうな凛一の俺への謝罪。
そんな声を聞きたいんじゃない、凛一、俺は…
俺は…
「…俺が守るから、戻ってきてくれ、凛…」
俺は祈るように言った。
何もいらないから。おまえが無事であれば、それだけでいい。姿を見せてくれ。
だが、凛一からの通信は俺の思いなど関係なくプツリと途絶えた。

「なんで勝手に切ってしまうんだ、凛一!」
俺は携帯を睨みながら口走った。
殺されるかも知れないって…どういうことなんだ。
どこにいるのかも、誰と居るのかもわからないままで、おまえをどうやって探し出せばいい。
頼むから早まらないでくれ、凛。

「場所がわからないとしたら、この葉書の差出人を片っ端からあたるしかないな…」
独り言のような嶌谷さんの声で俺は我に帰った。
「凛は月村の名前を言ってないのに、何故そんなに自信があるんですか」
「じゃあ、慧一君は他に当てがあるのかい?凛一は誰かを救いたがっている。それは月村以外に考えられない。だったら、月村の知り合いからその場所を割り出すしかないだろう」
「…」
「大丈夫だよ。月村も凛一を巻き込んで無理心中するようなバカなことは考えないだろう」
嶌谷さんの言葉に俺はぞっとして嶌谷さんを見つめた。
「無理心中って…」
「悪い。脅すつもりはないんだ。月村もいい大人だし、そんなバカなことは絶対にないって話だよ」
「だって…凛はそいつに殺されるかもって言ってました。そんな奴を俺は信用できない!警察に連絡しましょう。凛が心配だ」
「落ち着いてくれ、慧一君。警察沙汰になって困るのは凛一だよ。それに月村にそんな度胸もなけりゃ、凛一を手に掛けるなんてできる男じゃない」
「どうして、あなたにそんな事が言い切れるんですか。死を覚悟した人間は、傍にいる誰かを巻き添えにしたがるって言いますよね。そいつもその限りじゃないんですか」
「月村は凛一に救いを求めてる。だけど、それは一緒に死にたいってことじゃない。月村は死ぬ。それは確かだし、その命を誰も救う事はできない。だけど、彼の心は凛一で救われるかも知れないんだ。月村は凛一を見ていると生きている喜びを知ると、俺に言ったんだ。だから…それを信じたい」
凛一を見ると生きている喜びを知る…そんな事を言う男がその好きな奴を手にかけようとしたり、殺されるかもしれないと怯えさせるのか。それは殺したいほど凛一を自分のものにしたいという欲求に他ならないことだろう。
俺はその月村という男に憎悪を覚えた。

「無理だ…俺はそんな、月村っていう男は知らないし、凛一は確かに殺されるかもしれないって言っているんだ。一刻を争う事じゃないんですか?あなたのように悠長にしていられない。凛一はかけがえの無い俺の、たったひとりの弟なんだ」
「俺にとっても大事な…友人だよ」
嶌谷さんのためらいがちな言い方が気になった。この人も凛一を愛しているのだろう。だから尚更…
「だったら止めないで欲しい。俺は凛を失いたくない…」
「月村は慧一君が考えているような軽はずみな男じゃない。だけど、凛一はまだ15歳だ。慢心しているところもある。だから急ごう。俺もしらみつぶしにあたってみる。警察に連絡するにしても居所がはっきりしてからの方がいい」
「わかりました。でも俺は月村って男を信用もしないし、同情も一切しない。その男がどう死のうと俺は構わない。だけど、凛一に何かあったら、凛一が許しても、俺は決して許さない」
静まらない俺の怒りを嶌谷さんは黙って受け止めた。



                                          


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宿禰慧一 「イリュミナシオン」 10 - 2009.07.26 Sun

10.
タクシーを止めて車を出た場所は、細い路地裏の汚いアパートだった。
「確か二階だったと思うけど…」
嶌谷さんは鉄骨の階段をリズム良く上がって行く。俺はその後をついて行った。

「ここだ」
黄ばんだ紙の表札には、やっと読み取れるぐらいに薄くなった文字が書いてある。
「月村…孝道…」
「うん、ふた月ほど前までうちで働いていたピアニストなんだよ。凛一がひどくお気に入りでな。アパートにまで追っかけていきやがる。俺は反対だったけどね」
ノブを回して開かないと知るや、嶌谷さんは錆び付いた郵便受けやガスのメーター箱をガサガサと調べている。
「あった~大体こういう場所に置いてあるもんだ」と、嬉しそうに俺に鍵を見せ、鍵穴に差し込んだ。

狭い部屋の中には誰も居ない。と言うより、人の住んでいた気配が妙に少ない。
本当に凛一は、ここに住んでいた月村という男と知り合いだったのだろうか。
嶌谷さんは窓を開け、新鮮な空気を入れた。
こもっていた空気が少しだけ晴れた気がした。
彼は休みなく「あいつらが行きそうな場所ってどこだろうなあ…それにしても汚くて狭い部屋だなあ~」と、ぶつぶつ言いながら、少ない室内品の箪笥や棚の引き出しを開けては覗いている。
俺も突っ立ているだけじゃ意味が無いと思い、適当に探し始めたが、ふと気になってと嶌谷さんに話しかける。

「嶌谷さんを疑うわけじゃないけれど、本当にその月村さんって人と凛一は一緒にいるんでしょうか。…凛一とその男がどういう関係だったのか、あなたはご存知なんですか?」
「関係ねえ…たぶん、下世話なことを言ってしまえば、セックスはしていないと思う」
「…」
あまりに直接的な言葉で俺は思わず顔を伏せた。そういう風に言って欲しかったわけではないにしても、心を読まれたかと思ったのだ。
「月村はノーマルだから、凛一が誘ってもしないと思うんだ。それに…凛一自身はわかっているかどうかは知れないけど、あいつは自分が相手を好きかどうかじゃなく、相手が自分をどう愛してくれるのかを重要視している気がしてならない。相手の愛情を試すというか…だから心配なんだよ。無鉄砲に挑発するところがあるからね」
「…」
それを聞くと益々不安になってしまう。その月村って男はノーマルだと言ったが、じゃあ何を凛一に求めて付き合っているんだ。

「あ、これがなんとなく臭いなあ」
小ぶりの引き出しから嶌谷さんが出して見せてくれたものは束になった手紙と写真だった。
畳に座り込み、ふたりでひとつひとつしらみづぶしに目を通した。
古びた写真は外国の風景が多かった。
俺は月村という男の顔を嶌谷さんから教えてもらった。

ピアニストというからもっと芸術家風なのかと思ったら、予想に反して普通の男だ。なにかしらの魅力やカリスマも写真からは感じられない。
「意外だって顔しているよ、慧一君」
嶌谷さんは俺の顔を見て揶揄うように笑う。
「いや…ピアニストって言うから、もっとミュージシャンっぽい人なのかと…」
「見た目は冴えないんだが、ピアニストとしての腕は、本物だったよ。それこそ凛一が惚れ込むほどにね」
「…だったって…どういうことですか?さっき言いましたよね。嶌谷さんの店でこの間まで働いていたって…何故、彼は店を辞めてしまったんですか?」
「…それは…たぶん凛一が居なくなったことと関係があると思う」
嶌谷さんは眉間を歪め、低く声を潜ませた。
「…月村さんは…末期ガンでもう長く生きられない身体だった」
「えっ?」
「月村自身もそれは知っていて…だから自ら進んで店を辞めたんだ…」
「…それで凛一は?」
「うん、どうして辞めたのかを追求されて、とうとう口を割らされてしまった。俺も凛一には弱いんだよ。あいつの強引さには恐れ入る。だけどそれは酷く純粋なものだから、俺みたいな汚い大人でも、誤魔化せない」
「…」
嶌谷さんの言いたい事はわかる。凛一が本気で己の感情をぶつける時は、こちら側に一切の繕いや紛らすことを許さない。まさに天からの糾弾のごとくに。

「俺の憶測かもしれないが、凛一は月村に同情して、彼を追って行ったんだと思うんだよ。月村は黙って消えてしまったから、凛一はひどく気にしていたんだ。…俺が凛一をもっとちゃんと引き止めていれば良かったんだが…」
「あなたの所為じゃない。凛一がこうと決めたら俺でも止められないんだから。あんな風に育てた俺に責任の一端は感じてますけどね」
自嘲気味に笑うと、嶌谷さんは思いがけない事を言う。
「それが、宿禰凛一なんだろうね」
「…」
宿禰、凛一…そうだったのか…俺はそういう人間の兄であり、そういう人間を生まれた時からずっと見つめ愛してきたんだ。

凛一がどう思おうがそんなことは関係ない。
俺は凛一を愛したい。守りたい。彼の為に生きたい…
その想いだけで十分に生きられるんじゃないだろうか。

RRR…
腰のポケットの携帯が、凛一からの電話を示す着信音を響かせた。
俺は急いで携帯の画面を確かめる。
間違いない。凛一からの電話だ。ボタンを押すのもわずらわしく、自分でも驚くほどに必死に呼びかけていた。

「凛一か?どこにいるんだ!」



                                              text by saiart


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宿禰凛一の過去話「追想」の初めはこちら 




ユーリとエルミザード イラスト - 2009.07.26 Sun

トップに飾ろうと描いてみました。

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こんな感じの物語になると思う。
 



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宿禰慧一 「イリュミナシオン」 9 - 2009.07.25 Sat

9.
「Satyri」というジャズクラブが、男の指定した場所だった。
電話で話した嶌谷誠一郎という男はこの店のマスターであり、凛一はこの店の常連らしい。
このジャズクラブの建物自体が非常に洗練されており、かつ音響に関して言えば、ニューヨークなどの本場のホールに引けを取らない作りをしていた。
これだけのものをこしらえるには相当の資金が必要なはずだ。
それもこんな袋小路に作るなんて、損得抜きの商売としか思えない。
バックには相当なパトロンか実業家が付いているわけか。

それにこの嶌谷って男も気にかかる。
オールバックにした長い髪をひとつに纏め、歳相当の経験を感じる整った顔なのに瞳だけは無邪気に輝いている。顎には無精ヒゲ、それもこの人の品性を少しも貶めていない。
相当な貫禄としたたかさが伺えるし、さりとて、なぜか相手を安心させるオーラを持っている。
凛一がこの男に懐いたとしてもおかしくないだろう。

俺は複雑な気持ちになった。
「ここまで出向かせてしまってすまなかったね、慧一君」
「いえ…こちらこそ。お仕事中に勝手を言ってすみませんでした」
「いや、ホントのことを言えば、タイミングが良かったんだよ。普段はここに寝泊りはしないし、店は夜からだろ?昼間に店にいることは少ないんだが、今日はちょっと私用があってね、
慧一君の電話に気づいて良かった」
「本当にすみません。弟がお世話になっておきながら、今まで伺わず仕舞いで」
「いいんだよ、そんなことは。早速だが、気になる男って言ったよね。そいつのアパートに向かおう。たぶん居ないと思うが、何かしら手がかりがあるかもしれない」
俺は嶌谷さんと一緒に道で拾ったタクシーに乗り込んだ。

初めて会った男なのに、距離を感じさせない嶌谷さんに、俺は少し気を許し始めていたが、それ以上に別な意味で緊張していた。
正直なところ、凛一とどういう関係なのか、聞かずにはいられなくなっていた。
「凛…弟は、いつもあなたの店にお世話になっているんですよね」
「うん、そうだよ。遅くなるとうちに泊まらせたり…」
「うち?」
「いや、俺のマンション。自宅に帰ってもひとりでつまらんと言ってなかなか帰ろうとしないからね、凛は」
「…すいません」
「…嫌味っぽくなったかな。彼はまだ中学生。そしてもう中学3年だから、お兄さんが目を光らせておく必要はないと思うんだが、たまに、寂しくなるんだよ。俺達大人だってそうだろ?だからそういう時は俺の家へ泊まらせる。変な虫に引っかからなくてもいいしな」
「…そう…ですね」
益々様々な感情がごった返しになる。
どう返していいのかわからなくて、つい口ごもってしまった。
「ああ、変なことは一切していないから心配しないでくれ」
嶌谷さんは僅かに笑って答えた。それは真実だろうと思った。
この人は凛一が信じるに値する大人なのだろう。
「…していませんよ」
俺は静かに答えた。
「そうかな?慧一君は相当に弟さん贔屓だと感じているから、凛一の素行には厳しいんじゃないのかい?」
「…弟は自由なんですよ。俺が何か言った所で、素直に聞きやしない」
「反抗期なんだよ」
「凛一は…あいつは変な遊びなんかはやってませんでしたか?」
「変なって?」
「…女や…男と…」
酷く下世話なことだと思ったが、確かめたかった。
「ああ、そういう遊びね…やってたよ、寂しがりやさんだからなあ~凛は。だが、あれは本当に遊びだったからね。一夜で終わる相手が多かったよ。そういうところは熱くならないんだよ」
「…」
判ってはいても、凛一が遊びで誰とも構わずセックスをしていると聞かされるのは辛い現実だった。
今更あいつが天使とは思わないが、それでも俺にとっては凛一は汚れ無き天使であって欲しいというバカみたいな望みがまだどこかにあった。

「まあ、あいつを相手にする奴は相当に自分に自信のある奴だよ。あいつは専制君主だから、変な奴には付いていかなかった。いくら好かれても自分が気に入らなきゃ乗らないからね。変な意味じゃなく。俺にも最初はやたら寝ようって迫ってくるんだが、その割りに心は許しちゃいない風でね。俺にその気が無いとわかると、すっかり甘えて懐いてしまう。凛一が俺に求めているのはそういう…親に甘えたい感情なのだろうって思えてきてね。ああ、悪い。親父さんはいらっしゃったのに、親代わりなんて勝手な言い草だった」
「いえ、親父はいるには違いないけれど、あまり実感がないんですよ。一緒に居る時間が少ないから…」
「でも君はずっと親代わりとして凛一の世話に明け暮れていたんだろう?」
「…中途半端なんですよ。本当は…俺は凛一に何もしてあげられてはいないのかもしれない」
「…凛一が心の底から求めているのはあんただと思うけどね」
「…」
嶌谷さんの言葉の真の意味を図りかねた。この人は俺の凛一への思いを探りながら話しているように思えて仕方なかった。


                                           text by saiart


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宿禰凛一の過去話「追想」の初めはこちら 



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リンミナ4コマ漫画 1 18禁だと思いますww - 2009.07.24 Fri


一応4コマ漫画は一段落したかな~
まあ、楽しかったし、勉強になったからいいか!


     
        rinmina


しょーもないオチでスマソ。
そしてミナ…こんな性癖にして(m´・ω・`)m ゴメン…
ここまでくるのはまだ先だろうけどねwww

CPで4コマの希望があれば、ネタ思いついたら描きます。





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慧一4コマ劇場 その弐 - 2009.07.23 Thu

慧一兄さんは、基本駄目人間なので、ネタには事欠かないんですが、こういうどうしようもない慧一が大好きでたまらん自分は…やっぱSですか?…そうですね。

慧一好きはS
凛一好きはM
水川好きはドS
紫乃好きは…案外Mじゃないのかね。



    keiiti2



4コマばっかやって肝心な本文を一向に書いていないので、今から頑張ります~(;´▽`A``


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慧一4コマ劇場 その壱 - 2009.07.22 Wed

なんだか4コマ漫画がクセになってきましたよ~
なんせ描き始めて、10分かからないもんね~          

まあ、適当なんですが…

慧一はネタにすると…笑えるんだが…

            keiiti1

相変わらず低レベルでスマソ。
そしてミナ!不細工にしてゴメン!きっと慧一にしてみて見りゃ、凛一以外はこんなもんにしか映っていない…www



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宿禰慧一 「イリュミナシオン」 8 - 2009.07.22 Wed

8.
おぼつかなくやり取りは始まった。
俺と凛一は、積み上げられた泥を少しずつ取り除くことにした。
しかしたまに帰っても、凛一は昔のようには俺に気軽に近寄っては来ない。
警戒したかのように、遠目で俺を見て一言二言話すと、逃げるように俺の前から姿を消す。
その繰り返しで俺も息が詰まる。
なんとか修正しようと試みても、彼が逃げてしまうのでは、仕方がないと諦める他はない。

毎回帰国するたびの凛一との繋がりはこのやり取りだけと言っても大げさでもなく、一向に進歩しない。
俺は「愛している」と言い、凛一は「その資格は無い」と言う。
資格ってなんだ?おまえが弟であることこそ、愛される資格だろう?
それともおまえは…俺がおまえを愛することすらも許してはくれないのか?凛一…
結局、俺は意気消沈してアメリカに戻ることを繰り返す。

院を修了するまで、俺の研修もあと二年を残すのみとなった。
出来ることなら院を卒業したらこちらで就職し、アメリカの建築設計の資格であるAIAを取る為の実践的な仕事をやりたかった。
だが、本当にそれでいいのだろうか。
このまま凛一をひとりにさせてしまっていいのだろうか…せめて凛一が大人になるまでは傍についてやって、家族として見守るべきじゃないのだろうか。
だけど、俺が自分のやりたいことを諦めたとして、俺自身がいつか凛一に対して僅かでも恨みを感じたりしないだろうか。
何よりそういう思いを凛一に覚られた時が怖い。
凛一はそういう気の使い方を嫌う奴だ。
俺は悩んだ。ひとりで決めるのに躊躇した。
父親はともかくとして、凛一だけには話しておいた方がいい。

俺は凛一と今度こそ話し合う機会を得ようと、夏季休暇が始まるとすぐさま帰りの飛行機に飛び乗った。

自宅に帰り、俺は凛一を久しぶりに見る。
毎回帰る度に変わっていく凛一に驚かされるが、今回は凛一は赤く染めていた髪を昔通りの艶やかな黒髪に戻し、表情も穏やかになっている。
何かが彼の中で変わってきている…そう感じた。

凛一は中三になっていた。受験の大事な時期だ。
俺は凛一の中学校に行き、三者面談を受けた。
凛一の素行に幾らかの問題があるとしても、成績は悪くなく、このままなら順調にこの学校の高等部に行けると先生からも太鼓判を押された。
高等部は俺の母校でもある。
出来るなら、このまま行って欲しい。

帰り際、一緒に帰るかと誘うと、凛一は首を振った。
「俺、用事があるから兄貴は先に帰っててよ」
「…わかった」
凛一の態度は取りつく島がない。

心からの許しはまだ当分貰えそうも無かった。

夏休みの前の晩、凛一は一週間ほど友人と旅行に行くからと言う。
止める理由は無かった。
本当は俺の卒業後の身の振り方を相談したかったんだが、凛一の様子はなにか別の方に意識が向いていて、俺の事など眼中にない。
連絡先を聞いて解放した。
凛一は俺といることを居心地悪いと感じているのだろう。
いつもどこかよそよそしい。一度入った亀裂はなかなか元には戻らない。
気長に待つしかない。

留守の間、掃除がてらに凛一の部屋を覗いてみる。
割とマメな凛一の部屋はきちんと整理整頓されていて、どこも荒んだ感じは受けない。
本棚に飾られている懐かしい思い出の写真を見た。
母親と最後に行った花見の時の家族写真、梓と三人でのクリスマス劇の衣装での写真。そしてコラージュのように貼られた俺たち三人だけの写真には、どれを見ても凛一の笑う姿で埋め尽くされ、切なくなる。
俺がこの笑顔を奪ったのだろうか。
凛一の心から笑う顔が見たい。
その為に俺が耐えられることは、耐えてみせよう。


約束の一週間を過ぎても凛一は帰らなかった。
もう一日、二日…待っても帰ってこない。携帯に掛けても応答は無い。
俺は凛一が残した連絡先の番号を見つめた。
凛一の行く予定の長野とはまるで違う、都内の番号だ。
それでもここしか凛一の居所を突き止める手段はない。
俺は受話器を取った。

「もしもし」
「…はい」
大人の、それも相当落ち着いた男の声だった。
「すみません。そちらに宿禰凛一はお邪魔していないでしょうか?」
俺の突然の問いに、相手は暫く沈黙し、そして思い出したようにゆっくりと話した。
「宿禰?…ああ、もしかしたら…凛一のお兄さんの慧一さん?」
俺は驚いた。まさか俺の名前まで知っているとは思わなかったのだ。
それに凛一の事を呼び捨てにするほど親しいのか、この男は…
「そうです、慧一ですが、弟は…」
「凛一はここには来ていないけど…と、言うか、ここんところ来てはいないけど…何かあったんですか?」
「十日前から友人と長野へ旅行へ行くと言って…予定ではもうとっくに帰ってもいいはずなんですが、音沙汰がないものだから、心配になりまして…この番号の連絡先を凛一が残しておいたものだから、伺ったのですが…そちらもご存じない様でしたら、仕方ないです。他を当たります」
落胆して受話器を置こうとすると、向こうから呼び止める声が聞こえた。
「ちょっと、待ってくれ!凛一がどこに行ったが知らないけど、あいつが関わりそうな奴のことは知っているよ。良かったらこちらまで来てくれないか。俺も心配なんだ。凛一は…大事な友人だから」
声音で凛一の事を真剣に心配している様子が伺い取れる。

どんな男が凛一と関わっているのか、俺も確かめたくなって、電話の向こうの男の言う場所へ向かった。



                                              text by saiart


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やっとここまできたよ…この先も長い



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リュウメトネ 4コマ漫画2 - 2009.07.21 Tue

デフォは苦手だがこれも練習と思って描いている。

結構楽しいww

         rm2


メトネなら絶対やりそうだ~。.:♪*:・'(*⌒―⌒*)))


ゆっとくが、魔界はこんなんじゃないからね(; ・`д・´)
ゆわんでもわかっとる |Д´)ノ 》



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閑話休題…ふたつのヒーロー - 2009.07.20 Mon

自分が愛してやまないふたりのヒーローを、自分の描いたイラストで紹介するコーナー…ww
コーナーにしてもいいか?

まずはファンタジーが好きな方なら、大体ご存知の、マイケル・ムアコックの「エルリックサーガ」のマゾヒーロー、メルニボネの皇子、エルリック。

トコトンマゾ思考。愛する従姉妹のサイモリルを自分で殺しておきながら(まあ、剣が意思を持っているので、剣の所為にしているんだがww)自分は呪われた運命だと嘆く。
どうも振り回されるキャラで、女にも男にも剣にもモテるんだが、常に受け身なので、腐の妄想のためには非常に美味しいキャラ。


天野善孝さんの描くエルリックはこんなもんじゃなく、素晴らしいですよ~

エルリック


次はタニス・リーの「闇の公子」アズュラーンだが…

これも作者が腐要素ありの作者だと思う加減あり…
いきなり幼子(男)を人間界から連れ去り、いい按配になったら美味しくいただいております。

完全なサディストですね~苦しめて喜んでるから。でもたまに情けをかけたり、自分が罠に嵌まったり~そういう不完全なアズくんも素晴らしく魅力で、たまりません(^◇^)

アズュラーン


このふたりのキャラは自分の中では、頂点に君臨して未だ、誰も引きずり落とすことができないですね~


あ、因みにアズはエリスファシアのモデルで、エルリックはアルスやレイ・ラシードに投影していますね~





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リュウメトネ 4コマ漫画 1 - 2009.07.19 Sun

リュウとメトネの物語を書いていたら、ネタを描きたくなった。
4コマ漫画なんて久しぶりだけど、結構楽しいので、ネタがあったら今後も描こう!

大したネタではござんせんが、どうぞ~

      mannga

リュウのイメージがどんどん壊れていく気が…www

自分が楽しけりゃいいのだ、こんなもん!




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「彼方の海より…」 6 - 2009.07.18 Sat

6.
もっと色んな話が聞きたくなり、回廊を歩くラシュマーをリュウのいない部屋に呼び込み、話を聞くことにした。

「リックに聞いたのだけど…聞きたいことがあるの?」
「メトネ、私は忙しいんだよ。今じゃなきゃ駄目なのかい?」
「う、ん。少しだけお願い、ラシュマー」
両手を合わせて拝むと、ラシュマーは呆れながらも聞く体制をとってくれた。

「魔界の男性と女性は別れて住んでいるって言うけど、ここの者が、女性の館に簡単に行けたりするの?」
「勿論だよ。でも、そうだねえ~結局自分の遺伝子を継ぐ者。子供が欲しくて伺うことになるのだから、あちらも手放しに喜びはしないさ。余程の魔力を持った者じゃなきゃね。だからあちらに伺ってすぐに子供を作るわけではない。魔族も人間と同じように、それ以上かもしれないが、愛を確かめ合うんだよ。突然に舞い上がったり、じっくりと育てたりとそれこそ詩的なほどに色々と…」
「ステキだ!」
思わず声を出してしまった。だって、ロマンチックだもの。物語でしか呼んだことの無いお伽話みたいで私は浮かれてしまった。

「それでも、まあ、無秩序な奴も結構いる。
男の魔族は好きなだけ種を蒔ける。自尊心のある奴は異世界の奴と目合うことはしないけれど、まれに地上の女、人間だね、そいつと交わって子が出来ることもある。でもこの場合は特別だ。子を作るかどうかはすべて男の魔族の意思で決まる」
「え?どういうこと?」
「セックスする際、子を宿す魔力を子宮に入れ込むんだよ。そうする事で子供を宿すか否かをコントロールできる。だから人間の女と交わってもそうそう子供を作ろうとはしないものさ。そもそも異種との間に出来た子供が、まともな魔族に生まれるのは難しいんだよ。人間か魔者かどっちつかずか、理性のない妖魔になるか…
もし魔族に生まれたとしても何かが違うだろうね。人間の姿をしていても魔界とは異なる神や自然のものに長年触れるうちに気が触れてしまうかもしれない」
「…そんなにリスクが大きいんじゃ…」
「それでも稀に…稀にだよ。人間と恋に落ちて家族になりたがる者もいる。そういう場合は、大体子供は魔界に連れていく」
「なぜ?」
「愛し合って出来た子供は魔力が強いからね。その子はより魔族に近いだろうし、人間界に置いておく方が不憫に思うのかもしれない。人間である母親も魔族の子を育てるのは難しいだろうしね。親心だよ」
「…子供は幸せになれる?」
「そうなるように私たちが育てるんだよ。女子は女の館で、男子は男の邸で、自分の子であってもなくても等しく育てる」
「ベビーシッターも兼ねるの?」
「リュウを育てたのは私とサイアートだよ」
「リュウも…?」
「彼の場合はかなり変わっているけどね」
サイアートという魔者の名前を耳にしたのはこれで二回目だ。どんな方なのだろう。それよりもリュウが変わってるって…

「…ねえ、一年未満で母親は死んじゃうって本当なの?」
「97パーセントという統計が出ている」
「じゃあ、あなた方は誰も母親の顔を覚えてはいないってこと?」
私の質問にラシュマーはふっと笑った。
「以前にも言ったと思うが、魔族は一度見たものを記憶する能力がある。
その能力と関係があるのかはわからないが、一度も顔を見たことがない親の顔をその赤子は記憶に刻み付けているんだよ。顔だけじゃないよ。その親の生き様まで鮮明に蘇らせる事が出来る。覚えたくなくても刻み込まれてしまっているからね~」
「ラシュマーも忘れていないの?もう随分と前のことでしょ?」
「親の顔を忘れる魔族はひとりもいないと言っていい」
「じゃあ、リュウも…リュウの親御さんってどんな魔族だったの?きっとすごく強くて綺麗で…想像もつかないけれど」
「…リュウは特別だと言ったろ?彼には親はいないんだよ」
「どうして?」
「私もリュウの出生は教えられていないんだが、リュウ自身の記憶には全く刻まれていないそうなんだ」
「だって、今言ったじゃない。親の顔を覚えていない魔族はいないって」
「…だから彼も悩んだ時期があったよ。ずっと昔の話だ。自分が誰から生まれたかを知るのは魔族にとっては精神の糧ともなる。血統というのはとても重要視される事だからね」
「…リュウは悩んだの?」
「ひどくね。それでもサイアートが…サイアートと言うのはこの魔界を形作った者なんだが」
「はい、リックから聞きました。」
「或る時、私の目の前に幼いリュウを腕に抱いたサイアートが尋ねて来たんだ。突然ね。リュウとサイアートは良く似た面差しをしている。だから彼が父親だと誰もが認識している。だけど、それは事実じゃない…」
「…」
どういうことなの?じゃあ、リュウの親って…

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「これ以上の話を聞きたかったリュウに直に聞きなさい。私も喋り過ぎたようだ。メトネは話を聞きだすのが上手いから困る。秘密裏な事までつい口が滑ってしまうよ」
「ごめんなさい」
苦笑するラシュマーに、しつこく聞いてしまった自分を恥ずかしく思った。

リュウは親の顔を知らない。すべての魔族が覚えているのに自分だけは記憶にないなんて…すごく寂しいことじゃないのかなあ。
リュウの魔力は恐ろしく強大で、魔界では絶対的な力と権力を持つ。
自ら身体を張ってこの魔界を守ろうとしている。
私はリュウが恐ろしいだけの魔者だと思っていたけれど、そうじゃないんだ。
人間と同じように魔族も恋をして命がけで子供を生み、その子を他の魔族に託して命を全うする。そしてその子たちを育てていくのも魔族の本性。
それを作ったのはリュウと言う。自分はどんな親かも知らないのに…

リュウのことを想うと、なんだか切なくなった。
リュウは寂しくなかった?孤独ではなかった?泣いたりしなかった?
…私はリュウの為に何ができる?


「…メトネ、なんて顔してるんだ?」
気が付くと目の前にリュウが部屋に立っていた。私の顔を見て、頭を傾げた。
外から帰ってきたようだ。いつものように服は破れ顔も埃っぽい。
「リュウ…」
自分でも驚いたが、気が付いたら彼の胸に飛び込んでいた。
「ど、した?」
私のリアクションに驚いたリュウが変な声を上げる。
私は構わずしがみ付き、リュウの汚れた頬にキスをした。
「なんだよ、おまえから抱きついてキスするなんて、天地が裂けてもありえんことだと思ったのに」
「…たまには…いいでしょ?あなたの色子なんだから…」
そう言うと、リュウは鼻で笑いながら、私を抱き返してくれた。

私はリュウが好きだ。私の故郷を大事な者を滅した破壊者であろうとも…
この方を好きになるのが私の罪であっても、甘んじてその罪を担うことにしよう。
私はこの方の為に生きたい。

その罪はとても甘い気がしてならなかった。





                                       text by saiart


■「彼方の海より…」  リュウ・エリアードとメトネのお話はここから プロローグ
メトネ日記第二章  5へ / 7へ

エルミザードとの関連性を少しだけ匂わせました。
ちょっとした4コマ漫画を描きましたので明日うp予定。




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「彼方の海より…」 5 - 2009.07.17 Fri

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5.
あれから私はリュウの身支度や部屋の片付けなどの仕事をもらい、ここで暮す意義を少しだけ見つけていた。
リュウがいない時は、リックや他のリュウの世話係りの方に色々と仕事を教えてもらっている。
リュウは私が他の魔族と親しくするのを好まないから、リュウが帰る頃を見計らっては、ひとりで待っていなきゃならない。
帰らない時には3日も4日もいない日もあるけれど、そうでない時は、リュウとはベッドで過ごす時間が多い。

私を抱く時、リュウはワザと私をひどく痛みつけたりするけれど、それも近頃は間隔があくようになった。
私が感じるようになったからかもしれないが、苦痛とも快感ともしれない声を上げたり、泣いてしまったりする私をじっと見ては、それ以上ひどくせずにいかせてくれるようになった。
私は快感に溺れるのが怖い。リュウという恐ろしい魔者に服従され、抱かれるのは私の意志だ。私が弱いから、貢物として差し出されたから、リュウを主人として言うがままになるのは仕方が無いと思っている。
だから、この身体をどんなに痛みつけられようが、犯されようが逆らってはいけないんだ。
でも、リュウからの愛撫には戸惑ってしまう。
彼が私の男根を口に咥えた時は、私は驚きのあまり彼から逃げたほどだ。
私が奉仕するのは構わない。でもリュウがそんな風に私を快楽に包む事をするのは、私はとても…いたたまれないのだ。
自分がリュウによって快感を与えられるのが怖い。
私は間違ってしまいそうだからだ。
リュウが私を好きなのかも知れない…そんな風に私の身体が覚えてしまうかも知れない。
それなのに、もしリュウに飽きられたり捨てられたりしたら、私のこの感情はどうすればいい。

…そんな思いなど知らないで、私の身体も心も揺さぶり、気持ち良くてたまらない行為を教えてくれるリュウが、私は嫌いだ。
…嫌いになれたらと思う。
あの見事なまでに整った美しい冷徹な容貌の、あの薄い紫水晶を光に捧げたような瞳で私を見つめるたびに、私は身体中が熱くなり、その細く長く白い指が私に触れる毎、私はこの魔者に殺されてもいいと、身を委ねてしまうのだ。

リュウは言葉使いは悪いが、心根は案外細やかで、不思議と人当たりもいい。
仲間に対しても上下隔たり無く言葉を交わし、他の魔族も一切謙譲語など使わず、誰もが「リュウ」と呼び捨ててもその響きにはあらゆる信頼の念がこもっているのがわかる。
私に対しても、バカにしたり、嫌味を言ったりとブラックユーモアは欠かさないけれど、よく考えれば、私はそのおかげでリュウに対して卑屈にならずに済んだような気がする。
この人は一体どんな人なのだろう。
どういう風にこの魔界の長として生きてきたのだろう。
私はリュウと過ごすうちにリュウのすべてが知りたくて仕方が無くなってしまう。

人間界にいた頃、回りの者たちは誰もが等しく優しく、私を大事に育ててくれたから、私は優しさに慣れていた。
だけど、リュウは違う。
リュウが優しくないのではなく、リュウは強いのだ。
だからメソメソと泣くだけの私がきっと…きっといつか嫌になるだろう。
私はそれが来るのが怖い…

「メトネ、どうしたの?」
刺繍の手を止めて、ふさぎ込んでいると、着替えを運んできたリックが声をかける。
なんでもないと、笑い、私はまた針を刺した。
「へぇ~上手になったじゃない。綺麗に出来てる。それリュウの帯だろ?」
「…まだ全然駄目…ミズキの作ったものとは比べられないよ」
「ミズキに張り合おうなんて100年は早い。って言ってもメトネは人間だから百年は生きられないけどね」
「そうだね…」
リュウより長く生きられなくて良かったと思う。
リュウの死に顔なんか見たく無いもの。
でも私が死んでもきっとリュウは泣いたり悲しんだりしないのだろう。
リュウからすれば私は興味本位で抱く遊び女ぐらいなものだから。
私は気分を変えるため、日頃からの疑問をリックに聞いてみた。

「ねえ、リック。不思議に思うんだけど、この邸で女性を見たことないけれど…私が会っていないだけなの?」
「いや、この邸には女はいないよ。当たり前のことだよ」
「?」
私は首を傾げた。
女性が居なければ子供は生まれないだろう。
私は幼い魔族の子らを幾度となく見ている。あの子達の母親はどこにいるのだろう。
「メトネは人間だから、男と女が揃って一緒にいるのが普通だろうけどね、根本的に違うんだよ」
「何が?」
「まずね、魔界では女は一生に一度しか子供は産めない。そして産んだその日から一年以内に自分は死んでしまう。これは絶対だと言っていい法則みたいなもんだね」
「一年で?」
「そう、稀に産んでも生き残る女もいるけれど、本当にごく僅かだ。だから女の魔族は子供を産むことは即ち『死ぬこと』と理解する。そうなると簡単に男の魔族とは契らないよね。だって自分の命を賭けるのだもん。だけど、子供は欲しい。だから魔力が強くて丈夫な魔族の男を選びたがるんだ。
そしてここが大事。もし子供が生まれたら、その子は絶対に双子、もしくはそれ以上の数の子供が生まれる。そしてその中のひとりは必ず女だ。女性が三人一緒に生まれる場合だって珍しくない。だから女の魔族は子供を産んですぐ死んじゃうけれど、女性の数は少なくならないんだ」
「不思議だ…」私は驚いて、仕事の手を止めて、リックの話を聞き入った。

「なぜ、この邸に女が居ないのかはね。男の魔族は自分の種を持った子供が欲しいって思うよね。だから女の魔族がいると、すぐに襲いたがるんだよ。ちゃんと恋愛して了解し合って子供を作るのが当たり前なんだけど、そうなると男も愛している女を出産で死なせたくないから、作ろうとしない。その間に他の魔族が強姦したり…そういう話も珍しくないんだ。だからリュウとこの次元の魔界の創始者であるサイアートっていう魔者がね、男と女の住む場所を分けたんだよ。
その地域はヴォルバと呼ばれ、この魔界の中心に点在するんだよ。女魔族の戦士が女達の舘を守る。そしてその回りの四方を、リュウ達四天王が守っているんだ。
子供が欲しいと思う女や、好きな男と安全に暮す場所もリュウ達が作った。秩序は大切だからね」
「安心して暮らせるように法を定めたわけだね」
「法っていうのとは違う気がするけどね~」
リックは首を竦めて私の頭を撫でる。
「メトネは男で良かったね」
「…」
結論はそうなるのかな?

リックの話はとても興味深く私の記憶に残った。
地上とは異質な性の営み。男女区別された生活をする魔界。
その中に住んでいる私という人間もまた異質な存在なのだろう。


                                          
                                             text by saiart

■「彼方の海より…」  リュウ・エリアードとメトネのお話はここから
プロローグ
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BL物語なので、基本女性はでない。でも世界観としては女性がいないのはおかしい。と、いうわけで色々なつじつま合わせを考え、こういう話を考えてみた。しかし、どこかに穴があるかもしれないかもと、戦々恐々たる心持である。(;´Д`)





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宿禰慧一 「イリュミナシオン」 7 - 2009.07.15 Wed

7.
自宅に帰っても凛一は居なかった。もう夜も遅いというのにどこに出かけているのだろう。
俺は凛一をまだ子供だと見くびってやしなかったか?
あいつは幾つになった?13だ。
俺が初めて男を抱いた歳と同じだ。
まさか凛一がそんなことをしようとは思えない。
凛一は綺麗な天使なんだ…
そうじゃなきゃ俺も梓もこれまで大事に育ててきた意味はない…

…違う、俺はなんもしていない。
事実、俺はまだ中一の弟をほったらかしにして、自分の為に生きているじゃないか。
凛一が何をしようと俺になにか言える権限などあるものか…

明け方近く外から帰ってきた凛一を見た。
二週間、いや三週間ぶりだろうか、凛一は見る度に大人になっていく。それも普通じゃない。凛一は他と違う。特別に選ばれた者のように気高く美しい。
俺は凛一を見る度、なぜこうも心が揺さぶられるのか自分でも理解できない怖れを感じてしまう。

「凛一。今頃までどこで何していたんだ。何か事故にあったんじゃないかって心配するだろう」
「…ごめん」
「答えになってないよ」
「ちょっと、友達の家で、遊んでいただけだよ」
嘘を付く様もどことなく蠱惑的に見えて俺の胸がざわつく。
思わず目を逸らすと凛一の両手首に赤く腫れ上がった跡を見つけた。
ひと目で何をされたのかわかってしまう自分が嫌になる。でも、まさか…凛一に?
凛一の腕を掴んで確かめた。間違えようが無い。

Tシャツの襟を肌蹴るとそこにはキスマークと思える跡が残っている。
こうなった以上、その原因を追求しなければならなくなった。
まさに尋問だった。俺がこういう風に凛一を責めるのは初めてかもしれない。
その内容がこれでは笑い事にもならない。
凛一はどういう素行をしているんだ。

「どういうことだ。凛。なんで何も言わないんだ。遊ぶのはいい。でも何してるんだよ。俺に言えないことか?どうなんだ」
自分の言葉がどこか遠い誰かが言っているように聞こえる。俺が凛一を責める権利などありはしないだろう。それでも…

「男と寝てたんだよ。なにか悪い?」
「…」
一番聞きたくなかった言葉だった。
俺は目の前が暗くなり、倒れそうになった。
凛一への尋問ではなくこれでは俺への拷問に等しい。
同時にくだらない事を抜かしている凛一に我慢がならなかった。

考える間も無く俺は拳で凛一の顎を殴っていた。手加減をしたつもりだったが、凛一の身体は床に叩きつけられ、驚くほどの音を響かせた。
凛一は倒れたまま動かない。
俺は自分のしたことが、半分信じられなかった。が、もう半分は殴られて当然だと思った。
どれだけおまえのことを思って、考えてここまで育ててきたと思っているんだ。
おまえは穢れない天使だったんだぞ。
それを…大切に育ててきたその身体を、どこかわけのわからない男に抱かせただと?
おまえはなんて罪なことをしてくれた!
俺をバカにするものいい加減にしろ!
自分の後ろめたさなど忘れていた。凛一が簡単に男と寝るのが俺には許せない!
これは俺の汚い嫉妬だ。おまえを誰にも渡したくないという独占的で傲慢な嫉妬でしかないんだ。だが俺の口は最もらしい言葉を吐く。

「俺と梓がおまえをどんなに大事に育てたか…知ってるはずだろう。それなのに…おまえは、そんな誰とでも寝るような奴になったのか、凛一」
「それが…兄貴の本心かよ」
「何?」
下から俺を見上げる凛一は先ほどまでの怯えは無く、射落とすようなギラリとした黒曜石の瞳で俺を睨み付けた。
「大事に可愛がって育てた身体を、他人とほいほいセックスさせて…それで汚れたから怒っているわけでしょ?兄貴は。だったら…そんなに気に入らないなら、あんたが、捕まえて離さなきゃいいんじゃないか!…俺をひとりにして、ほっといて…俺ひとりでどうやって生きろって言うんだよっ!誰か他の奴を求めたっていいだろ!…捨てたくせに…偉そうに言うなよっ!」

凛一の心からの叫びに俺は言葉もでない。怒りに狂う凛一の叫びは最もだと思う。責められるべきは自分なのだ。
「大体…梓が死んだのも兄貴がこの家から出て行ったからだ。慧が出て行かなかったら、梓だって…」
そうだ。梓が死んだ時、俺はおまえをほったらかしにして、紫乃と寝ていた。俺の所為で梓は死んだのかもしれない。

俺自身の罪悪感に苛まれていると、凛一は思ってもみない事を口にする。
「…違う…俺だ。俺が居なかったら慧も梓も自由でいられた。俺の世話なんかしないで、もっと自由に楽しむことができたはずだ。俺はあんたたちにとって邪魔な存在なだけだった」
「違う、凛」
「そんなことわかってんだって。ずっと前から、俺なんか居なきゃ良かったって…」
「そんな事一度も思ってないっ!」
「失望した?慧。誰とでも寝る俺にこんな風に育てた覚えはないって言ったよね。責任は誰が取るのさ。俺をこんな風にしたのは誰だよっ!」
「凛、おまえひとりを責めているんじゃない!だけど…おまえがこんな風になるのは…見ていられない」
言葉が見つからない。どんな言葉も凛一の叫びの前では繕えない。俺はおまえを救う言葉を見つけることが出来ない。

「じゃあ見るなよ。わかったよ。もういい…慧一を自由にしてやるかから…今後一切、兄貴には俺の面倒は見てもらわない。俺の心配はしなくていい。俺はひとりで大人になるから、もう俺に関わらないでくれっ!」
俺への失望感と怒りに任せた凛一は、泣きながら俺の前から走り去った。

自室に鍵を掛け、泣き続ける凛一に俺は耐えられなくなった。
俺は説明しなければならない。なぜお前を殴ったのか。おまえを一度だって邪魔になんか思わなかった。おまえをずっと愛していることを言わなければならない。

凛一の泣きじゃくる声がいつまでも耳について離れなかった。
彼は俺を許さない。
そう悟った瞬間、俺は凛一の目の前から消えようと思った。


俺は凛一を置いてアメリカに行った。
紫乃と付き合いも勝手に断った。
自虐の果ては投げ遣りになるしかないとはよく言ったものだ。まさに俺がそうだった。
もう何も考えたくなかった。
凛一のいる日本に、一秒でも長く居たくなかった。
父親からは勝手に留学した事に対してひどく叱責された。何とでも言えと思っていた。俺の苦しみなんか誰もわからない。

大学では、俺は完全な異邦人であり、もう自分を取り繕うのもやめてしまった。
誰も俺を知らないし、誰も俺にかかわらない。
ただ勉学に没頭した。
凛一の事だけは今更だとしても、兄としての役目だと思い、メールだけは毎週送ったが、返事がくることはなかった。
無理もない。
俺はおまえを捨てたんだからな。

凛一は俺を憎んでいる。自分を救ってくれなかった兄に怒っている。
当たり前だ。
あいつをああいう風にしてしまったのは俺と梓の罪だ。
梓がいない今、傍にいて償わなきゃいけないのに、追っかけてこられない場所で俺はひとり好きなことをやっているんだからな。
恨まれて当然。

俺は凛一のことを思う時、自分の罪深さを呪い、幸せになる権利など一欠けらもないのだと思った。
誰にも知られず、ひとり郊外の小さな聖堂でミサを聞くと、胸が締め付けられ涙が溢れた。
俺は一体どうすればいいのだろう。
この重すぎる罪悪感を抱いたまま、凛一となにひとつ理解しあえずに生きていかなきゃならないのか…
俺のすべてだと請うあいつと、こんなにも隔ててしまった。
もう元へは戻れないのか…いや、そうじゃない。
こうなったのは俺の凛一への気持ちがあまりにも俗物すぎたからだ。
兄としての想いだけで凛一と対峙する。そういう気持ちへ自分を変えられないものなのか。
凛一の望む慧一になれないものなのか…

クリスマスカードを送った。
兄として、俺はお前を愛していると、綴った。

クリスマスの次の日、凛一から初めてのメールの返信が来た。
短いぎこちない言葉だったが、俺を振り返ってくれている。

凛一の許しに俺は涙が溢れた。







                                        

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宿禰凛一の過去話「追想」の初めはこちら 


「彼方の海より…」 4 - 2009.07.14 Tue

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4.
「リック、待って!」
回廊を足早に歩くリックの背中を追いかけ、呼び止める。
リックは振り向くと驚いた顔をした。その顔に涙は見当たらなくてほっとした。
「メトネ、どうした?」
「私も出てきたんだ。いくらリュウがこの邸の長だとしても、君への仕打ちは我慢できなかった」
「…バカだな~メトネは」
呆れた顔でリックは私を見た。
「リュウは僕にこの邸を出て行けとは言わなかっただろう。それだけで十分だよ。メトネを勝手に手伝わせたのは事実だしね。」
「そんなことは…」
「僕の心配はいらないよ。仕事は沢山あるし、リュウのご機嫌が直れば、またお世話を命じられるかもしれないしさ。それより君のことだよ」
「え?」
「リュウの色子じゃなくなれば、君、無傷じゃいられないぜ。メトネを気に入らない連中も多いしさ、何されるか…僕じゃとてもじゃないが、守りきれないよ」
真剣な顔で腕を組むリックに、私も自分に降りかかっている重大さにやっと気づき始めた。
「…そ、んなに、危ないの?」
「リュウに守られてるから、君は無傷でいられるんだ。リュウが君を捨てたとなったら…」
「…」
リックの言葉を聞くたびに暗い気分になってくる。
「ねえ、すぐにでもリュウに謝罪した方が一番いいと思うよ。メトネはいい子だから、僕も他の奴にやられるとこなんか見たくないしさ。さっさと謝ってこいよ」
「だ、だって…結構大変なこと言っちゃたし…リュウ、きっと怒ってるよ…」
「なんて言ったの?」
「…」
黙り込んだ私を、リックは心配そうに覗き込んでいる。

「こんなところでなんの相談だ?」
声の主の方を二人同じに振り返った。
リュウの軍師であるラシュマーが近づいてきた。
「ラシュマー…」
頼れるのはこのラシュマーしかいないと思ったら、急に涙が込み上げてきた。
「どうした?」
私とリックで事の次第を話した。
ラシュマーは黙って聞いていたが、話を続けるにしたがって、真剣な顔がだんだんと緩み、最後まで聞かないうちに我慢できないという風に声を立てて笑い転げた。
「…笑い事じゃないのに…」
私は今にもこぼれかけてしまう涙を懸命に堪えながら、笑うラシュマーを睨んだ。
「だって…あのリュウに、見損なったや上に立つ器量がないなんて…そんな言葉を吐いた奴は今までいないよ、メトネ、おまえは身の程知らずを通り越して、まるでセフィーだね」
「え?」
「セフィーとは魔界では生命の息吹…生まれたばかりの赤子。即ち怖いもの知らずという意味だよ」
「…それ嫌味なの?」
「とんでもない。褒めているんだよ。リュウがおまえに飽きないのもわかる。目を離したら、何をしでかすかわかりゃしない。こんなに手を焼かすんだからね」
「ごめんなさい」
「自分から蒔いた種だ。リュウに謝りたいのなら、私も付き合うよ。ちょうど用もあったしね。彼、ひどいナリだったろう?」
「…はい。服もひどく破れていて、身体も血塗れでした」
「私も今回は付き従ったのだが、ちょっとした騒動でね。次元の狭間から溢れる妖魔たちに手こずったんだよ。二人の魔族を失ってしまった。それで、リュウも苛立っていたんだと思う」
「…」
彼は本当に命がけでみんなを守っているんだ。素直に胸を打たれた。
そう思ったらなんだか急に自分のした事が罪深く思えてならなかった。

暫くの沈黙の後、リックが言いにくそうに言う。
「ラシュマー、僕はどうすればいい?」
「リックはいつも通りに自分の仕事をすればいい。大丈夫、リュウの事は私にまかせなさい」
「ありがとう!」
パッと顔を明るくしたリックはそのまま手を振って、走り去る。彼は私にウィンクをしながら、がんばれよと口を形どった。

リュウの部屋に戻ると、リュウはひとりで食事を取っていた。
洗い流してきたのだろう。いつもの綺麗な身なりのリュウに戻っていた。

「リュウ、経過報告ですが、無事に次元空間のゲートは封印しましたから、暫くはあの地帯も静かになるでしょう」
「わかった」
「それから、メトネが話したいことがあるそうですが」
「あ、あの…」
ラシュマーの影に隠れていたが、彼が私を押しやり、無理矢理リュウの目の前に立たされてしまった。

「誰だ?そいつは。俺は勝手に出て行った者まで覚える気はない」
リュウは私を一瞥し、表情も変えず無視したまま食事に戻った。
「大人気ないことを言いなさんな。メトネはセフィーなんだから、仕方ないでしょ。あなたが少しずつ教えていけばいいことです。それにメトネにも何か仕事をさせてやればいい。あなたのお相手ばかりじゃ、メトネも飽きるでしょうから」
「おまえ、今さりげな~く俺の自尊心打ち砕いたね。…コロすぞ」
「はは、じゃあ飽きられないようにリュウも頑張ることですね」
「ちっ、もういいからさっさと行け。飯が不味くなるだろ」
「御意。ああ、リックは引き続いてあなたの世話係りを申し付けていますから、よろしくお願いします」
確実に面白がっているラシュマーを見送ると、リュウとふたりきりになってしまった。

「ちっ、何だかんだ言って思い通りにしちまうから、年寄りには勝てねえんだよ」
独り言を言うリュウの様子を伺っても、本当に私を許してくれているのかどうかわからない。
「…あ、の…」
「あ~ん?」
「怪我大丈夫だったの?」
「怪我?」
「血塗れだったでしょ?」
「ああ、返り血だろう。俺に傷ひとつ残るわけないだろう。下らんこと言うな」
「そう…良かった」
心からほっとしてそう呟くと、リュウは乱暴に席を立ち、私を睨んだ。
「心にも無いことを抜かして、心配しているフリなんかするんじゃない!どっちにしてもおまえに心配されるほど、俺は柔じゃない。わかっているだろう」
「…はい、ごめんなさい。でも、本当に心配だったから」
「怪我をして心配している相手にあんな罵声あびせるか?普通」
「…だからごめんなさいってゆっているじゃないですか。だいたいあれは…」
私の悪い癖で、またもやムキになって反論してしまいそうになる。
リュウは口ごもる私をじっと見つめ、そして席を離れた。
「…もう、いい。俺は寝る。さっさと飯を食え!」

私を振り返らずにベッドに消えてしまったリュウの姿を少し悲しく思いながら、冷たくなった料理を口にした。

その夜、ベッドを共にしても、リュウは私を抱かなかった。



                                       text by saiart


■「彼方の海より…」  リュウ・エリアードとメトネのお話はここから プロローグ
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ユーリとエルミザード  「黎明」 3 - 2009.07.13 Mon

3.
エルミザードは自分が好きではなかった。
灰色に見える銀更紗の髪も、すべてが華奢に出来ている肢体も、魔力を使う時、銀の髪が血のように赤く染まるのも。
殊更に気に入らないのは自分の身の上で、エルミザードの父親は魔族の者であった。
魔物と人間の間に出来た子は、異種姦とみなされ、呪われた者として存在すら否定されていた。

ヴァレリアウスもライラスも、この地上の歴史において、魔族との間の子は珍しくないと言うが、エルミザードは幼い頃、母を目の前で殺され、自分も殺されかけた。
まだ6つの頃だ。

村の古臭い信仰が、エルミザードの血を畏れた。
村人の狂った感情が彼ら親子を追い詰め、母を殺されたエルミザードは怒り、嘆き悲しみ、潜在していた魔の力を解き放った。
村はエルミザードの魔力で焼かれ、エルミザードも茫然自失となり、炎の中に立ち尽くしたまま、我を忘れていた。
偶然にも、村の近くを通りかかったヴァレリアウスは、幼いエルミザードを救い、彼をライラスの元に連れてきたのだった。
ライラスの屋敷に向かう途中、ヴァレリアウスは、生きる気力を失したエルミザードに、生きる理由や希望、赦しを授けた。
エルミザードは、ヴァレリアウスという初めて信頼できうる人間に出会い、暗闇に巣食うカーテンを初めて開け放った。
そして、それまで人の目を避け、罪の子と蔑まれてきた過去を、自ら焼き払ったあの村を忘れず、己の力を自制し、正しく生きることを自分に科した。

エルミザードはこのライラスの元で一生、世俗とは関わらずに静かに過ごせたらと思う。
魔族の生きる年月は人間のそれとは違い、より長く生きられるというが、エルミザードの身体にまだその兆候はなかった。
「…だけど、いつか自分は魔物に変わるかも知れない」
それを考えると、エルミザードは自分を殺したくなる。

なぜ母は自分を産もうとしたのだろう。
父を魔物と知って交わったのか。それとも無理矢理に強姦されたのか…それだったら産まれる前に始末すればいい。
母は何も自分に教えてくれなかった。父の名前すら。
いや、魔物の父の名前を今更知ってどうするというんだ。
もし、その魔物が僕を探しだそうとしたら…もし、僕の力があの時のように、この地上の人々に災いを与えたら…

エルミザードの被害妄想癖をライラスはひとつひとつ丁寧に取り除いてくれた。
ライラスは、「誰も己の心を縛る事はできない」と、言った。
「自分自身でさえもだよ、エルミ…」低く通る声に、エルミザードはこの人が本当の父親だったら…と、何度も願った。


ユーリとヴァレリアウスが戻る日が明日に迫った。
エルミザードはひどく残念に思い、力を落とした。
自分と同じ年頃の子と仲良く過ごすのは初めてだったし、エルミザードはユーリの明るさや勘の良さ、とりわけ、自分には無い先導していく光のようなものに憧れた。
自分とは全く違う者に惹きつけられたのはユーリも同じだ。
エルミザードの生い立ちはヴァレリアウスから少しは聞いていたが、世間なれしていない純粋なエルミザードはユーリを和ませた。
日頃、自分の回りは魔術を持った大人たちで大方占められている。
さりとて魔術師となると、自分の魔力に慢心し、自慢したがり、ついでに人を貶めようと企む卑屈な人格が多い。
ユーリは一族の長になるべく幼い頃から選ばれた魔術師として教育されてきた。
自由放埓なところもあったが、その魔力を使いこなす能力も高かったため、気に入らない奴は容赦なく跪かせてきた。
弱者には力を与え、楯突く奴は切り捨てる。それがユーリのモットーだ。
しかしエルミザードは弱者ではない。一見儚げにみえる容貌の奥に、ただならぬ力を感じる。それと相反するようなエルミザードの持つ柔らかなオーラがユーリには心地いい。
ずっと傍にいたいと思わせる者に、初めて巡り会ったと、ユーリは顔を綻ばせた。

夕闇の迫る丘に並んで座った。
「君と過ごせて楽しかったよ、ユーリ。また…機会があったら遊びにきてよ」
「今度はエルミがおいでよ。私の街はこんなに豊かな景色はないが、それなりに楽しめるところだ」
「…僕がここから出るなんて…考えられない」
エルミザードはユーリの誘いを仕方なく断らざるおえないといった風に顔を沈ませた。
ユーリはその様子を見て、意を決したように立ち上がり、エルミザードの前に立った。


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夕日がユーリの背中で遮られ、エルミザードは思わず彼の顔を見上げた。
「君はいつまでライラスに守られて生きていくの?それが君の望みなの?」
「違う」
「じゃあ、ひとりで歩く訓練をしなきゃ」
「訓練?」
「うん、勉強さ。沢山の人と交わり親交を深めて人込みに混じって君の居る場所を見つける」
「そんなこと僕に許される?」
「当たり前だろう。この地上に生きるすべての者は一様にその権利を有する」
「でも僕は…」
「君の親友になりたい」
「親友?」
「そう、親しい友の事。実を言うと私も今窮屈な生活を強いられていてね。そろそろ家を飛び出そうかと思っているんだ」
「え?」
「来年の王立士官学校の試験を受けて見ようと思ってる。逃げ出すにはいい理由だ。まあ、反発は食らうだろうがね。試験は難しいというけど、合格すれば5年は親元の監視もなく遊べる。しかも生活全般国費で賄うんだぜ?真面目に勉強して卒業できりゃそのまま国に雇ってもらえるし」
「でも僕は…」
「ヴァレリアウスも特別教師として鞭を揮うよ」
「え?ヴァルが?」
「やる気になった?」
「…試験は難しいんでしょ?」
「勿論、国中から集まるからね。そうだね、昨年は五千人ほど受験して、二百人の合格者だ」
「とても無理」
「やってみなきゃわからないさ。君は素質があるよ、エルミ」
「…ヴァルから聞いているでしょう?僕は忌むべき者なんだよ、ユーリ。その僕が普通のみんなと同じように生活したり勉強したり、そんな夢みたいな事をしてもいいの?」
「当たり前じゃないか。君の身体の半分の血が魔族の者であっても、君に何の咎があるの?そもそも魔族のすべて者が許さざる者なの?私は出会ったことはないけれど、もしエルミが魔族だったとしても、私はエルミと友達になりたいね」
「…僕は自分の血を畏れている。誰も憎みたくないし、あの力を呼び出させたくない」
「だから勉強さ、エルミザード。私たちはまだ12だよ。これからの長い年月を何の為にどう生きるかなんて決めるのはこれからだ。怯えているばかりじゃつまらないよ。君の力を君自身が使いこなせなきゃ意味がない。ね、せっかく巡り逢えたんだよ、ここで君と別れるのは嫌なんだ」
「ユーリ」
手を伸ばすユーリに、エルミザードは戸惑った。
この手を取っていいものか、それとも目を瞑って静かに薄暮の中で一生を終えるべきなのか…

目を開けると黄昏が逢魔が時に変わっていた。
伸ばされた手はまだ目の前にあった。
エルミザードはその手を掴んだ。
「ユーリ、君と共に生きたいと思う。それが苦しい道でも…」
「苦しみはあろうとも、希望を持って立ち向かい、突き進んでいく。それは意義のある道標となる」
「ミストラルの詩だ」
「そう、理屈っぽいが意義を見い出すにはいい詩だね」
ユーリとエルミザードはお互いを見つめ、笑いあった。

少年たちの語らいは星空が瞬き、その光が何度も夜空を駆け抜けても、終わる事はなかった。



                                              text by saiart


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宿禰慧一 「イリュミナシオン」 6 - 2009.07.12 Sun

6.
大学は建築学科を選んだ。
選んだ理由は、昔、死んだ母の聖堂を作ろうと、梓と凛一で話し合ったことがあったからだ。
母は宗教人では無かったが、多くの慣習のように母の遺骨は父方の墓に入れられた。それは家族の本意ではなかった。父は遺骨を手放すことを嫌がっていた。
そういう姿を見ているからだろうか、俺は俺たちの為の聖堂を小さくてもいいからどこか海の見える丘にでも作りたいと願っていた。
俺たち家族の「死」を、聖堂という「家」で見守り、そして共に眠りたい、と思うのかもしれない。

大学では俺は勉強に打ち込み、そして自由を謳歌した。
凛一と梓に縛られない平日の気ままさは、かつて無いほどに自分自身を舞い上がらせた。
俺は「天文観測の会」というサークルまでにも属し、星空を見上げながら、自分の小ささを笑うのが好きだった。
鬱積した自分の感情や家族へのしがらみ、とりわけ凛一への欲情、そういう自分の見たくないものも宇宙の元では些細なことですらなく、もう、どうだっていいものと思える。
それは気休めでしかなく、現実に戻れば、ありとあらゆる規制に雁字搦めになっているのはわかっていたが、星空の下ではこんな卑しい俺でも許される気がした。

大学二年の時、俺は藤宮紫乃という同い年だがひとつ下の学年の男と付き合った。
それまで一度たりとも本気で付き合ったことが無かったこの俺が、曲りなりにとも本当に「恋」をした男だった。
見てくれは高慢で美しく、匂いでお仲間だとわかった。
彼は傷ついた羽を隠そうともしない。
反対に傷つくことさえ厭わない佇まいで、世の中にも自分にも突っ張り、アウトローを気取っていた。
一見俺に似ているのかと思った。だが、違っていた。
紫乃は不器用ながらも純粋な男だった。

俺は自分の汚さを隠すのにあまりに慣れすぎて、品行方正の服を着、誰が見ても一種の高みにいる者を演じていたが、彼は自分の汚さを余すところ無く見せ、そしてすべての矢を自分で受けることを覚悟している。
自分に正直で純粋。まるで俺とは正反対。少しも似てはいない。
こんな俺を愛してくれた男だった。
だが俺は、紫乃のこの尊い好意さえもどこかで嘲笑っていた。

俺は凛一以外の人間を認めるわけにはいかない。
紫乃の優しさや俺への愛情を快く感じ、甘え、其の反面、凛一以上の存在など俺には必要ないと見下し、紫乃を傷つけることさえ厭わなかった。

梓が死んだ時も同じだ。
俺は妹が死んだ事を悲しみ、ただひとりの妹の為に涙したが、それ以上に凛一を独り占めできるという優越感をどこかで感じていた。

俺を監視するものはいない。これで凛一は俺だけのものだ。

だが凛一はそうじゃない。
凛一は梓の死をひとりで相対し、悲しみ、そのショックで極度の拒食症に陥った。
俺は凛一を失うことを恐れた。
凛一を失っては俺の生きる意味など無い。

凛一を慰め、生きる気力を与え、精神的な支えとなる。模範的な兄の役目。
時間が経つと、俺は凛一を手にした喜びは消え去った。

拒食症の凛一は俺の手からじゃないと物を食べない。離れると泣く。学校に行けるわけもなく、遅れないように勉強させなきゃならない。
凛一は異常なほど俺に甘えたし、俺を束縛した。
抱きたいと思っている兄に、一パーセントも疑わずすべてを委ねてしまう弟。
俺は全く身動きが取れない。
梓を亡くし、凛一を手にした俺はその存在の脆さ、大きさ、思い通りにならないジレンマで狂いそうになった。

凛一が少しずつ落ち着き始めると、俺はまた凛一と距離を取った。
気兼ねの無いひとり暮らしを知った俺は、凛一を好きにできないもどかしさから解放されたがった。
一人暮らしには自由がある、静かな空間がある。俺を甘やかしてくれる紫乃がいる。

俺は凛一を自宅にひとり残し、マンションへ戻った。
凛一は俺を恨んだだろう。それもいい。
自分のものにできないならいっそ憎まれたほうがいい…そう考えることすら俺には快感になっていた。

凛一が中学生になると俺はますます帰らなくなった。
ひとつは俺の勉強が多忙を極めたからだ。
建築士や技師の資格を取る為の国家試験、建築デザインのコンペティション、研究レポートに明け暮れた。
いくつかの国内外の大学院からの誘いも受けていた。それはどれも魅力的なもので、とりわけシカゴ大学の総合建築学科には興味があった。
自分の才能を試してみたい。本気で追求し、頭に描いたデザインを三次元に表現してみたい。そして、そこに住む人々の暮らしを想像する。
もしかしたら、今まで味わったことの無い充実感を味わうことが出来るかも知れない。
本当の自由を得られるかも知れない。

だが、凛一を置いてアメリカに行くわけにもいくまい。
何か合ったらすぐにでも帰れる距離だからこその一人暮らしだろう。
今だって凛一と過ごすため、毎週末自宅に帰る。
不貞腐れた凛一は、俺を責めた目で見る。
俺は自分の後ろめたさに怯えながら凛一に笑いかける。
俺は…こんな関係を望んでいるわけではない。

俺は凛一を想い、畏れ、今にも凛一を壊してしまいそうなほど愛していた。
だが、凛一にとっては、俺はたった一人の兄だった。それだけしかなかった。
こんなに苦しく切なく、適うことのない「愛」ならばいっそのこと…と、思う。

俺は凛一と話し合うために、前期の試験が終わるとすぐさま自宅へ帰った。


                                     text by saiart


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宿禰凛一の過去話「追想」の初めはこちら 


自分は慧一が好きなのだが、慧一の何が好きかというと、凛一を神聖視しながら、肉欲を持っている。そして抑制するM的なところと、他人には完全にS的なところなんですが…こういう人はめんどくせえだろうな人( ̄ω ̄;)
慧一の視点からの紫乃は、すごく純粋な人間です。




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リュウとメトネのイラスト - 2009.07.10 Fri

やっと描けた…

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ふたりの関係を表したイラスト。
素材のおかげでいい感じの背景になりましたな(^o^)丿


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「彼方の海より…」 3 - 2009.07.09 Thu

メトネ日記第二章
3.
手伝いといっても、魔力も腕力もない私ができることと言えば、部屋のお掃除や片付けぐらいだった。
リュウにもラシュマーにも言われていることだが、部屋以外にはあまり出歩くなと念を押されている。
他の魔族は私のような非力な人間をリュウが構っていること自体が許せないらしく、彼らから守りきれるか責任を負いかねるということらしい。
それほどまでに魔族が嫉妬深いとは思わなかったけれど、この邸はリュウを頂点にした一個の国みたいなものだから、その王が私みたいな者を遊びといえども色子にしているのが許せないのだろう。

取り敢えず、部屋でできることはできるだけ自分でやる。
着る物は自分で繕う。食事は毎回リックやリュウの世話係りが運んでくれるけど、それも私ひとりの時は自分で片付けるようにした。

着る服といえば、リュウは同じ服を着ない。
仕事から帰ると着ていた服は大概ボロボロになっていて、戦いの凄まじさを十分に想像させるものだった。
そのくせリュウ自身の身体には傷ひとつない。
治癒能力が他の魔族と比較にならないほど、早いのだという。

関係ない話だが…
いつも彼は私を抱き傷つけてはその後治してくれるのだが、だったらあんなことしなければいいのにと思うほど、リュウは私を容赦なく痛めつける。
私は苦痛に何度も気を失ってしまうのだが、気がつくと痛みはなくなっている。
リュウは私が苦しむのを楽しんでいるのだ。
最低な魔者だが、心の底から憎むことはできない自分が不思議でたまらない。
リュウが私を愛してくれているとは思わない。だけど、彼の中に私への執着と言えるものを時折感じるのだ。
ただの思い込みかもしれないけれど…

リュウの服はミズキという魔者がすべて作っているのだという。
食事を作る者はカンナと言う。リックの他にリュウ専用の世話人はふたり。
主に仕事を取り図っている。
そういうひとりひとりの魔族がリュウを崇拝し、彼の為に尽くして働く。
だったら、私もなにかリュウの為に働くのは当然だと思う。

リックに頼み込んで刺繍を教わった。
刺繍なんてやったこともないが、兄エーギルから頂くお守りにはいつもどこかに綺麗な刺繍が施されていたことを思い出しだのだ。
ラサイマ国の北方のリヤックは独特な編み方で編んだリヤック刺繍が名高い。
それには程遠くても、自分で刺した刺繍で何かを作ったら、それは自分が生きているという証拠にもなるんじゃないかなと、思うんだ。

公主だった自分が刺繍なんぞしているとは、エーギルも夢にも思わないだろう…なぜか可笑しくて声をだして笑ってしまった。
向かいのリックは驚いて見ている。
「ゴメン、まだ人間界の自分を捨て切れていないみたいだ。ここでは私はなんの価値もないものなのに…」
「メトネはいい人間だと思う。一生懸命自分のできることをしている。それだけで十分じゃない?」

リックは魔力が弱いというが、他の者を思いやるという点ではどの魔者よりも勝っているのではないかと思う。
「リックが居てくれるおかげで私はここで生きていく自信がなんとなくでも沸いてくる気分だよ。ありがとう」
「…君はいつもそうやって礼を言うけれど、本当に礼を尽くさなきゃならないのはリュウに対してだと思うよ。僕らがこうして平穏に暮らしていけるのも、リュウが命を懸けて戦っているからだ。彼は僕らが考えもつかないほどに大変な労力でこの混沌の魔界をひとつの形にしようとしている。その途方もない戦いを彼は担っているんだよ」
「…」
熱弁するリックの言うことはなんとなく理解できても、私にはやはりリュウは怖い魔者でしかない。


「何をやっているっ!」
突然の怒号に、私とリックは弾かれた様に椅子から立ち上がった。
振り向くと、リュウ・エリアードが部屋の入り口で鬼人の如く立っていた。
「リ、リュウ…」
彼は…彼の服はどこもかしこもひどく破れ、身体中が赤い血や灰まみれ、プラチナの髪は血塗れて顔にまで飛び散っていた。
私は驚いて声も出ない。

「あ、あの…」
「何をしているっと言ってんだよっ!」
「リ、リックの手伝いを…させてもらっていたんです」
「誰がそんなことをしろと言った」
「…」
「リック、俺の色子と仲良くしろと俺が命じたか?」
「いえ…あの…申し訳ないです。僕が軽率でした」
リックも突然の事の成り行きに狼狽している。

「リックの所為じゃない、私が頼んだんだ」
事がリックに及ぶのを警戒して、私はリックの前に立った。
「メトネ、お前は黙っていろ」
私の身体を手で払い、リュウはリックと向かい合った。
怯えているリックを見ていると可哀想でならない。

「リック、俺の世話はもうお前に頼まない。他の奴の仕事をやれ」
リュウの言葉を聞いて私は狼狽した。
「待って!リックは、違う。リックはあなたの為に懸命に仕事をしています。彼が悪いんじゃない。私がリックの仕事を手伝ったのが気に入らないなら、私を罰して下さい」
「…おまえに罰だと?ここの住人でもないおまえに罰など与えるか。何の価値も無いくせに。抱かれる以外に何かできるものがおまえにあるのか、言ってみろ?」
「…」

「とにかくリックは解任だ。さっさと消えろ。メトネ、おまえも早くそのくだらんものを片付けろ」
リュウの言葉にリックは足早に部屋から出ようとする。その目には涙が光っているのが見えた。
私はひどく憤りを感じた。
なにがプレシャスハイガーディアンだ。私に対する小ざかしい苛めじゃないか!
私が必要ないのならもっとはっきり言えばいいものを!

「リュウ・エリアード。あなたを見損ないました。あなたを尊敬してやまない仲間をそんな風に粗略に扱うなんて。上に立つ者としての器量が足らないんじゃないんですか?私はこういうやり方は否です」
「はあ?」
「もういいです。あなたにとって、私はなんの価値もないモノなのだからここにいても邪魔なだけでしょう。私も出て行きます」
「な?おまえ、ここから出て行くって…どういうことかわかっているのか?おい、メトネ!」
リュウの言葉を聞かないまま、私は部屋を出て行くリックを追った。




                                         text by saiart


■「彼方の海より…」  リュウ・エリアードとメトネのお話はここから
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何故に刺繍…ww
そしてお掃除と言うメトネが…かわいいww
時折キレるメトネ…そういうのも新鮮に萌えってなるであろうリュウwww




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ユーリとエルミザード  「黎明」 2 - 2009.07.08 Wed

2.
「エルミ、元気だったかい?」
 長身のヴァレリアウスは、屈みながらエルミザードを覗くように見つめ、その頭を撫でた。
 撫でられたエルミザードは首筋を少し赤くしながら、黙って頷いた。
「背も随分伸びたようだね。ユーリとあんまり変わらない。確か同い年だったよね」
「はい、ヴァルがくれた闘月4日が誕生日です」
「勿論覚えているよ」と、ヴァレリアウスは腰の袋から小さな石を取り出した。
「これは君の誕生石だ」と、東雲色の原石の欠片をエルミザードの手の平に乗せた。
「…綺麗だ」エルミザードは驚きと喜びの入り混じった声を上げ、礼を言った。
 ヴァレリアウスを見上げるエルミザードの信頼のこもった面差しが、自分とはえらく違っているようだなと、ユーリは少しがっかりした。

 その夜、二人のお客人を持て成す為に振舞われた料理をたらふく食べたユーリは、いち早く睡魔に襲われ、席を立つことにした。
「ユーリを客室に案内して」ライラスの言葉に、エルミザードは素直に従い、ユーリを案内した。

「君はまだ居たかったんじゃないのかい?ヴァルとはまだ話し足らないだろう?」
「いいの。明日もあるし…暫くはいるのでしょう?ライラスも僕もヴァレリアウスが好きだから、嬉しいよ」
「…私の事は?」
「…勿論、好きだよ。だってヴァルの甥御さんだもの」
 屈託のない言葉に、ユーリはエルミザードの純粋さ故の残酷さが少し嫌になった。

「エルミ」
「なに?」
 ユーリの休む支度を整えたエルミザードが部屋を出ようとすると、ユーリは声をかけた。
「明日は何か予定ある?」
「うん、お昼まではいつも菜園のお世話をするの。お昼からは…葡萄狩りにでも行く?」
「ご同行させていただいてもよろしいかな?ヴァルばっかりにくっ付いてないで、私の事も忘れなきよう願いたいね」と、半分からかう口調でいうと、
「…忘れないよ」少し拗ねた声で応えた、
 顔を赤らめて膨れた風もエルミらしくていいや、と、ドアを閉めて去っていったエルミザードを見送り、ユーリはベッドに寝転がった。


 ライラスの館の広大な土地は、険しい山の中腹にある。
 厳しい冬や山からの強風など、自然への対応が平地に暮す状況と比べても過酷な為、村の集落は少し下段に偏っていた。
 人を寄せ付けないのは魔術師の得意な本質とするところだが、ライラスは人当たりもいいし、偏屈なところもない。
 ヴァレリアウスはユーリに話して聞かせた。
「あれはもう世捨て人に近い。天上から見ている者と同じ。自分の魔力をこの地上の何事にも関わらせたくないんだよ。…ユーリ、力を持つというのはね、とても怖いことなんだよ。人ひとりの命は偉大だけど、少しの魔力であっけなくその個人の思想や行動、果ては命までも関わってくる。そういうものを知り尽くした者は、もう何もかもをも離れた存在になりたがる。ライラスの姿は何十年後の自分の姿かもしれないって、よく思うよ」

 ユーリは近くの山々や畑をエルミザードの案内で散策して回った。
 初めはユーリに対してもどことなく警戒し、怖気づいていたエルミザードだったが、3日もすると、ユーリにも心を開くようになった。

 エルミザードは強い魔力を持っているがそれを使いこなせない。と、いうヴァレリアウスの言葉が本当なのかどうか、ユーリは一度試そうと、わざと足をとられたフリを演じて、農機具の鎌で腕を切ってみた。
 腕から溢れ出るユーリの血を見たエルミザードは、驚いて躊躇なくその場で止血したのだ。自らの魔力で。
 その魔力の方法、強さとも完璧な治癒法だった。
 咄嗟の出来事にエルミザードは自分の行動を後悔していた。
 彼はできるなら魔術とは一生縁のない所に居たかった。

 偉大なる魔術師ライラス・ジレムと一緒に暮らしていながら、魔法と無縁に生きるとは、またなんて現実味のない話だとユーリは呆れた。
 魔術に縁がない者でも、その魔力を持った者の傍にいればなにがしかの影響はあるはずだ。
 ライラスもヴァレリアウスもそれを知り抜いた上で、自分をここに連れて来た…と、ユーリは感じている。

「自分が言わなくても、どうせ私がエルミを説得するとヴァルは踏んでいる。さすがに当代切っての軍師だけある。自分の手は汚さないんだもの」
 ユーリはエルミザードが自らが丹精込めて育てた赤豆をせっせと捥ぐ姿を目で追いながら、一人で笑っていた。




                                         text by saiart

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背景を書いていないので、何が何やらとお思いでしょうが、このお話は、100パーセント自分の自己満足のために書いてます。
色々な話を後々関連付けていけたら楽しいかな~自分がwww( ^ω^ )



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「彼方の海より…」 2 - 2009.07.05 Sun


rm1


メトネ日記 第二章 2.

結局、私はこの魔界、そしてこのリュウの邸には、居ても居なくても全く価値のない存在であることが悲しいのだ。
公主であった頃は、それが傀儡としても、私には国を計らう権利と守る義務があった。
私の命なしでは、なにも始まらなかった。
勿論回りの者の諸々の介添えがあったからこその、国作りではあるけれど。
無知であることは重々わかっているから、せめて傲慢にはならぬようにと、努力はしていたつもりだった。
でも…リュウに言わせれば、それはきっと自己満足の限りであって、なんの信頼も得ていなかったと言うことだろう。

リュウは魔界では凄い魔力を持つ魔者で、それは私も目の当たりにしているから、知ってはいるけれど、決して心を許せる者ではない。
でも、私には彼だけしか頼るものはないし、彼を主人だと心に決めた。
だけど、リュウが私をどうするかは自由だ。
リュウが私を捨てたら、私はこの地でどう生きていけばいいんだろう。

考えると何も出来なくなりそうなので、身体を動かして暗い明日など考えるのはよそう。
エーギル兄様に見習い、明日はあすの風が吹く。そう考えることにした。

私は普段リュウの部屋で過ごしている。
リュウの部屋は寝室と居間と別にもうひとつ部屋がある。
どの入り口にも扉がないから、誰が入って来てもおかしくないけれど、さすがにリュウの部屋だろうからか、滅多に人は来ない。
来る者はといえば、リュウの部屋を整える者が、2,3人。それとリュウの一番身近にいるラシュマーという魔族。
リュウが最も信頼しているひとりだろう。

私はいつもリュウや私の服を届けに来るリックという魔者と知り合いになった。
この魔者は、一見私よりも若く少年のように見えるので、思わず声をかけたのだが、実は55年も生きているそうで、まさに魔者は見かけで判断してはいけない。
他の魔者にたがわずこのリックも綺麗な魔族で、最初は私を侮蔑するように避けていたが、何度かこちらから声をかけ、一応、存在を認めてもらった。

リックは一度話し出すとおしゃべりで、日頃溜まってる鬱憤を吐き出しては、自責の念に陥るということを繰り返している。
人間らしくて好感が持てる。
リュウの事を神のように尊敬しており、彼の身の回りの仕事が出来ることを幸せに思っているらしい。
「僕みたいな力の弱い魔族は、リュウの仕事を手伝うことは出来ないけどね、運良くこういう具合に身近にお使え出来ることを誇りに思うよ。こういう事は自分のプライドが傷つくんで言いたくないけれど、君を羨ましく思うよ。人間でありなからリュウの色子になっているじゃないか。彼に抱かれたい魔子はそれこそ山の如くだ」
「そうなの?」
びっくりして、頭を傾げた。そんなにモテているんだ、リュウは…当たり前か?『魔界の守護者』プレシャスハイガーディアンだもの。
そう思いながら昨晩のリュウと自分の目合いを思い出すと、急に顔が火照って仕方ないから、思わず両手で顔を隠した。
それを見ていたリックは呆れた声を出す。
「…君って本当に…天然なんだね~。なんか嫉妬したくても諦めついちゃうし、憎むより庇ってあげたくなるもん。リュウが君を選んだのも、少しはわかる気がする」
「リュウはきっと…珍しがってるだけだと思う。私を本気で好きなわけじゃないよ」
「そうかな?…魔族って結構一途な奴が多いんだぜ。人間よりよっぽど情が深いって言うよ」
「ありがとう、リック。慰めてくれて嬉しいよ」
「…面と向かって礼を言われるのは…照れるよ。…嬉しいけどね」
頭を掻きながら屈託なく笑うリックに、私も癒される気がした。
私が今まで生きてきた中での本当の意味での友人は、このリック・アスミルだろう。

役に立たないながらここで生きる為に、私は彼の仕事を手伝うことにした。



                                           text saiart


■「彼方の海より…」  リュウ・エリアードとメトネのお話はここから プロローグ
メトネ日記第二章 1へ / 3へ



PCを新しく作っているので、(ぬこが)
暫く色々引越しが大変で、更新遅れるかも…
しかし、パーツを買って本格的に作ってくれているので、能力は半端なくなりそう…
使いこなせるのか?




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水川青弥 「引力」 4 - 2009.07.04 Sat

 寮内は間近に迫った寮祭の話題で持ちきりだった。毎年、寮生の3年を送る会とクリスマス会を兼ねて大々的なイベントを行うらしい。案内状を渡せば寮生以外の生徒も参加できるというので、おれは迷わずリンを誘った。
 この「迷わず」というところがまったくもっておれらしくない、という自覚はある。
 浮かれていると言ってもいい。
 リンに告白した翌日から、おれはまるで背中に翼でも生えたような気持ちだった。かつてこんなに自由だったことはない。
 誰かと付き合うことに慣れていないおれは、リンの一挙手一投足にいちいち反応して、慌てたり顔を赤くしたりしてしまいがちだけど、それすらも幸福な気分だった。
 これが恋なのだとしたら、おれは今まで本当の恋をしたことがなかった。
 それから、おれはリンの意外な一面を知った。
 ……というか、薄々気づいてはいたけれど、リンはけっこうヤキモチ焼きだった。
 この間なんか藤内先生に嫉妬して浮気するなと言った挙句、おまじないと称しておれの鎖骨の下にきれいなキスマークをつけたのだ。おかげで誰にも見つからないように寮の風呂に入るのに苦労している。


 寮の食堂で根本先輩と一緒に夕飯を食べていると、食事の乗ったトレーを持った3年の桐生先輩が、おれの向かい側で立ち止まった。
「ここいいかな?」
「あ、はい」
 おれは慌てて頷いた。たしか桐生先輩はリンが所属しているクラブの部長だったはずだ。リンの話にも何度か先輩の名前があがっていた。それから、桐生先輩のそばには必ず美間坂先輩の影がある、とも……。
「あれ? 美間坂先輩は一緒じゃないんですか?」
 トレーを置いて席に座った先輩に、根本先輩が躊躇なく訊ねた。桐生先輩が苦笑する。
「あとから来るよ。ところで水川、最近、妙な噂話を耳にしたことはない?」
 おれは首を傾げた。思い当たることはない。
「どんな噂ですか?」
「いや、聞いてないならいいんだ」
 曖昧に濁そうとする先輩に、根本先輩が余計なことを言う。
「先輩、みなっちは目に見えないバリアーで自分を守ってるから、余計なものは近づけないんですよ」
「そのバリアーもつい最近、何者かによって突破されたって聞いてるけど」
「おお、さすが桐生先輩。情報が早い。しかもそのツワモノは真っ先に駆除の対象になりそうな危険人物ですよ」
 おれは居た堪れなくて、それ以上聞いていられなかった。
「ごちそうさま。お先に失礼します」
 そう言っておれは自分のトレーを持って席を立った。
 部屋に戻ると、おれはベッドに仰向けに寝転んだ。ぼんやり天井を見つめながら思う。
 たしかにおれは世間の流行や噂話なんかには疎い。興味がないから耳に入ってこないのだ。
 けれどリンのことは興味がないわけではないから、なにかよからぬ噂が囁かれていることはなんとなく感じていた。
 そんな噂話なんかに振り回されて判断を誤るようなことだけはしたくない。
 だからあえて耳を塞いだ。
 本当のことならリンの口から聞けばいい。
 おれはリンの言葉だけを信じたい。

                                               text by sakuta



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宿禰慧一 「イリュミナシオン」 5 - 2009.07.04 Sat

5.
大学は都内に決めていたし、自宅からの通学は充分可能だったが、敢えて独り暮らしをすることにした。
勿論ふたりから距離を置くことで、自分自身への客観視と抑制を補う為だった。
勝手に決めたことで梓とも揉めるが、俺は決意を曲げなかった。
今に思うとひどい話だ。まだ高校生の梓ひとりに凛一を押し付けて、俺は逃げ出したんだから。
凛一の学校行事は今までも出来るだけ参加していたし、それは引き続き俺が引き受けることにしていた。
親がいないことで凛一に引け目を味あわせたくなかった。それに学校での凛一の様子も見ておきたかったのもある。
彼は学校でも一風変わった存在で、誰にへつらうでもなく、また誰を無視するわけでもなく、友人達とはしゃぎ、笑いあっていたが、明らかに他とは存在感が違う。
ただそこにいるだけで目を引く者だった。
王の如く振舞っているので、心配もしていたが、凛一自身はその違和感すら楽しんでいる風で、全く厭わなかった。
あれだけ回りに気を使わないで闊達に自由に生きていられる性格が、俺みたいな奴から見れば羨ましい。
長い黒髪を靡かせて走る様は、昔観た冒険映画の英雄にも似ていて、人目もはばからず見惚れてしまう。
凛一は俺の憧れでもある。

その凛一と離れることは自分で決めておいて情けない話だが、寂しくてならなかった。
俺は大学に入るとすぐにセックスフレンドを探した。
相手を探す時、俺は凛一に少しも似ていない感じの男を選ぶ。
即ち平凡で、印象の薄い従順な扱いやすい男をだ。
何故ならそういう奴に、俺は絶対本気にはならないとわかっているから。
本当の本気は凛一にだけでいいんだ。

それでも凛一と暫く離れると、恋しくてたまらない。
ちゃんと食べているだろうか。俺を想って泣いていないだろうか。
…俺を忘れたりしていないだろうか。

或る日、梓から連絡をもらった。
凛一が熱を出して、俺を呼んでいると言う。
俺はすぐさま凛一の元へ帰った。
熱を出して息を切らしている凛一は弱り果てて、それを見ていると可哀想でならない。
「慧…慧がいないと寂しいよ…」
涙を一杯に溜めて苦しそうに言う凛一に心が打たれた。
「ごめんね、凛。傍にいるから」
差し出された腕に、身体を差し出し、俺も凛一の身体を抱きしめた。
凛一のすべてを身体の隅々まで行き渡らせた。
キスを求める凛一の応えながら、俺はどんなセックスよりも叶わないほどに満ち足りたものを心に感じていた。
俺を求める、俺を必要とする凛一を、俺はいつか自分だけのものにできるかも知れない。
そんな夢を見ていた。

俺はその秋、父親に自分がゲイであることを告げ、宿禰の長男として、その責任を全うできないことを謝罪した。
父は黙っていた。
俺を責める権利はこの人にはないと、俺は思っている。だからどんなに非難されようとも知ったことじゃない。
だが彼は、暫くの沈黙の後、一言こう言っただけだった。
「慧一の人生だから自分の好きにしなさい…葵なら…母さんなら多分こう言うんだろうね。私にはそこまでの境地には辿り着けないが…結局は、おまえが決めることだしな…」
父親の嘘ではない残念そうなしかめた顔は、彼の自分への愛情だと知った。

程なく俺がゲイだということは凛一にも知れた。この好奇心のかたまりの弟は俺に一切のごまかしも無くズバリと聞いてくる。
「慧はどうして男の人としかセックスしないの?慧が入れる方なの?どうして女の人じゃ駄目なの?」
すべておまえの所為だとは言えるわけなかろう。
俺は苦い顔で「そういう性質だったとしか言えないんだろうけど…」と、言葉を濁す。
こういう会話はやばいんじゃないかと逃げ腰になるが、凛一は追求の手を弱めない。
あれこれと避けようと目論むが、とうとう核心に触れてくる。
「じゃあ、僕は男だから、慧一の恋愛対象にはなるの?」
マジでびびる。心臓の鼓動が早くなる。
俺は胡坐をかいた俺の膝にすわる凛一に気取られないが、心配で仕方なくなった。
「…ならないよ。凛は弟だろう。そういうのは対象外」
「え~そうなの?僕、慧だったら対象者になっても良かったのに。キスしてもダメ?」
「キスはいつでもしてるだろ?そういうの考えて凛とキスしたことないよ。凛もそうだろ?」
「だってキスは愛してるっていう意思確認だよね。梓が言ってた。じゃあ僕とするキスと慧が恋愛対象者にするキスはどう違うの?やることは一緒でしょ?」
これはかなりヤバい状況じゃないのか?俺は本当に困ってしまう。
「…むずかしくて…答えられないよ、凛」
「じゃあ、やってみる」
冗談じゃない!やめてくれ、と、思う前に凛一の口唇が俺の口唇と重なった。
この状況で無理にやめさせたら、それこそ凛一は俺を不信がるに決まっている。
俺は精一杯自制しながらも、凛一を安心させる為にできるだけ優しく応えてやった。
…それにしてもまだ10歳なのになんて甘くていやらしいキスをするんだろう。
全くこの天使に俺は翻弄されっぱなしだよ、凛。

角度を変えながら、何回も舌を絡めては吸いつく凛一の顔をぼおっと見ていた。
しばらくして俺から離れた凛一はその艶めいた口唇で俺にあどけない顔を見せた。
「どう?感じない?」
「…そういうキスは好きな人とやりなさい。俺は対象外」
精一杯の演技で持って、平常心のふりでそう言うと、「ざんね~ん」と大げさにのけぞりそしてまた俺の肩に顔を埋めた。
俺はその髪を撫でながら「…凛一は普通に女の子を選ぶといいよ。俺の真似はするなよ」と、言った。
凛一は僅かに頷きながら、俺を強く抱きしめた。



       keirin8





                                          text by saiart


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宿禰凛一の過去話「追想」の初めはこちら 


挿絵風にしてみました。



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宿禰慧一 「イリュミナシオン」 4 - 2009.07.02 Thu

4.
俺は13で性を体験した。中2になる春だった。
まだ母は生きていた。
その頃の凛一はまだ幼く、さすがに性の対象にはしかねる存在だったが、さりとて彼以上に興味そそるものは少なかった。
俺は自分をもてあましていたこともあり、また思春期特有の反抗心も高じて、日頃の優等生の自分を壊すものになりたがった。

塾に行く必要はなかったが、春の特別受講を友人から誘われ、俺は家から少し離れた塾に二週間ほど通った。
俺のクラスの数学教師は色白で眼鏡をかけた優男風の男で、有名大学のアルバイト講師だった。
教え方も上手く、俺はわからない事があったら授業が終わっても納得するまでしつこく粘った。
勿論、裏はある。
彼はゲイだと思ったからだ。何故そう感じたのかは判らないが、後から考えれば同じ穴のムジナという事になろう。
彼もまんざらでもなく、夜遅くなると家まで送ってくれたりした。
特別受講も終わる日に、俺は授業が終わるとお世話になったお礼を言いに、事務室に向かった。
彼はこのまま塾を続けないかと引き止め、俺は残念だがと、はっきり断る。
彼は暫く考えた後、「ちょっといいかな」と俺の手を掴み、外へ連れ出した。
外は暗く丑三つ時とは言えないまでも、人通りは少なくなっていた。

「考えたんだけど…」
「何を?」
「…宿禰君の事、このまま離すのは辛い」
「…どういう意味かわかりかねますよ、先生。はっきり言って下さい」
「君が好きだから…寝たいってことだよ」
「…いいですよ」
「…本当?」
「でも僕は、下にはなりませんよ。ご覧のとおりプライドが高いんですよ、俺は」
「…わかってるつもりだよ。でもいいのかい?」
「二言は無しですよ、先生。あなたがそういう目で俺を見ていたのは知ってたからね。正直俺も初めてだから判らないことが多いんだ。それもご教授していただけたら、嬉しいね」
「…君って子は怖いね。その美貌に惑わされたのは間違いないけど…つかまったのは僕の方ってわけだね」
「それではあなたの立場はないでしょう。僕はかよわい中学生ですよ、先生」
揶揄するように笑うと、それを見た彼は自分の白い顔を手で撫でた。
俺はその夜、この男を抱いた。

俺はこの男と半年程付き合った。
それ以上付き合うと向こうが本気になりそうだったので、頃合を見計らって後腐れなく別れた。と、言っても彼と付き合っている間は、彼の友人の大学生の女や男どもを紹介していただき、いい経験をさせてもらったので、それなりに感謝している。
自分の性癖もはっきりとわかった。
結論としては女とやるより男とやる方が、断然に快感を得られる体質であり、俺はゲイなのだと自分で悟った。
少なからずショックはあったとしても、そう悲観することでもない。
元々結婚にも恋愛にも夢を見てはいない。
俺にはもっと目の前にあるものを守りたいという生き甲斐がある
生き甲斐…もはやそれしかいいようがない。

学校では人当たりもいい誰にでも親切な優等生を演じていた。
何の苦労も無くイイヒトを演じられる自分自身を嘲りながら、見事に人を欺くことを嬉々としてほくそ笑む自分が居た。
部活や生徒活動を勧められても、家庭の事情という事で免除された。
事情を話せば納得どころか同情さえ買うことができる。
俺は凛一以外の奴等にはなんの興味も沸かなかった。

校内の修了のチャイムと共に学校の門から飛び出すのが俺の日課となっていた。
俺は母とその傍らで無邪気に遊ぶ凛一と観ているだけでうっとりとし、俺を見て駆け寄る凛一にこの上もなく高揚するのだ。

或る日、母の傍らで眠る凛一を眺めていると、凛一の頭を撫でていた母が俺に言う。
「慧一はいい子になりたいわけじゃないのに見せたがるのね。長男だから周りの期待に応えようとしちゃうの。でもね、私はわかっているの。あなたが導く者ってことを。だから自分の思い通りに生きていいのよ」
俺は驚いた。今まで母がこんな核心めいた言葉を俺に言ったことはない。
俺は思わず許しの言葉を口にした。
「俺は…間違ってない?」
「全き正しく生きる者よ。手の中の炎を決して消さないでね」
母はそう言うと、眠る凛一を抱き上げ、俺に渡した。
「少し眠るから、凛一をお願い」と、ベッドに横たわり目を閉じた。

それから少し経った後、母は眠るように亡くなった。

あれは俺への慰めだったのか、指針だったのか…腕に眠る凛一の寝顔を見つめながら俺は何度も思い返していた。
俺はこの腕に眠る凛一を愛している。
この子の幸せの為なら、自分の身を犠牲にしても構わない。
何もいらない。この目も耳も足も…この子を抱きとめる腕が残ればそれでいい。
そう願うのは間違った愛なのだろうか…
いや、母は正しく生きるものと言った。ならば…

「大丈夫?慧」
まだあどけなさを残した7つの凛一が、俺の顔を覗いて首を傾げる。
「大丈夫だよ、凛」
「じゃあ、ここの計算問題教えてよ」
当たり前に繰り返される平穏な日常にさえ、俺は抑えきれない感覚に陥ることがある。
こんな幼子に抱く感情じゃない。
どんなエロ本や映画を見たって興奮しないのに、凛一が近づくとただならぬものを感じてしまう。
この信頼を裏切るくらいなら、俺は凛一の前から消えた方がまだ救いがあるんじゃないのか?
なにより梓に知られるのが怖かった。
あの聡い妹は俺が凛一に肉欲を感じていると知ったら、決して許さないだろう。
いや…それは梓も同じなのかも知れない。
あれは兄弟というより同志と言った方が近い。

「兄さんは凛一をどうしたいの?」
「どうしたいって…?」
「…抱きたいの?」
「馬鹿なこと言わないでくれよ」
「別に良いけど…兄さんの想いがどうであろうと構わない。でも凛一を傷つけたら私は許さない」
「…」
「私を失望させないでよね」
「わかっている!」
全うな正論に腹が立った。知っているのなら口に出すなっ!

梓の存在が俺を苛立たせた。
俺と梓は、凛一を取り合うライバル同士と言っても良かった。
最終的にどちらが勝つのか…そんなひどい考えまで頭を掠める時がある。
俺は梓を妹としては愛しつつ、どこかで憎んでいた。
そう感じる自分が嫌でたまらない。

俺は凛一と梓から少しでも距離を取ろうと、家を出ることにした。



                                                text by saiart


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宿禰凛一の過去話「追想」の初めはこちら 


慧一の暗さにこっちがめいるんだが…ww
でもそういう慧一が好きってことは、自分もかなり歪んでいる。




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水川青弥 「引力」 3 - 2009.07.01 Wed

 期末テストではいつもどおりの力が出せた。多分、それなりの結果が出るだろうとは思っていたけど、かつてないほどどテストの結果が気にならなかった。
「水川、廊下に張り出されてる順位表見たか? おまえ、高橋を抑えて1番だったぞ」
「ああ、うん」
 クラスメイトの声に上の空で相槌を打ちながら、おれは机の上に置いたスケッチブックの表紙を撫でた。
 散々迷った挙句、やっぱり自分にはこれしかないと思った。

 放課後、おれは逸る気持ちを抑えきれずに温室へ走った。
 宿禰はまだ来ていない。
 おれはほっと息をついていつもの椅子に腰を下ろした。
 とにかく落ち着こう。
 おれはスケッチブックとペンケースを取り出し、先日、宿禰と一緒に行った園芸店で選んだリンドウの鉢植えを、右へ左へまわしながら眺める。いい感じの向きを見つけてテーブルに置くと、おれは真っ白なページに鉛筆を走らせた。
 うれしいとき、悲しいとき、元気を出したいとき、気持ちを落ち着けたいとき、おれはいつもこうして絵を描いてきた。絵を描きたいと思えるうちは、自分は安心なような気がしている。
 そして今日、おれは絵を描くことに新たな理由を加えようとしている。
 うまく伝えられるかな。伝わるといいな。
 そんな不安も、鉛筆を動かしているうちに遠退いていく。
 いつしかおれは、リンドウを描くことに没頭していった。
 だから、宿禰に声をかけられるまで、彼が温室の中に入ってきたことに気づかなかった。
 2、3言葉を交わしながら、宿禰がおれの手元を覗き込んでくる。
「リンドウ上手く描けた?」
「どうかな」
 宿禰は描きかけのリンドウを見つめながら言った。
「おまえ、美大とか芸大、真面目に考えてみれば? マジ上手いと思うし、描くの好きだろ?」
 おれは驚いた。おれにそんなことを言うのは、藤内先生と宿禰くらいなものだ。両親は勉強の妨げになると言って、おれが絵を描くことにいい顔をしなかった。藤内先生以外の教師やクラスメイトたちも、おれはこのまま理系の大学に進学すると思っている。
 なにより、美大へ進むことの難しさをおれは知っている。
「絵を描くのが好きだとか、ちょっと上手いからといって美大には入れないよ。それに美大で勉強したって才能がなきゃなんになるんだよ。本物の芸術家なんてほんのひと握りだ。絵は……趣味で楽しんでいられればいいよ」
 それは本心じゃなかった。
 でも、そう言って自分を納得させるしかない。
「……そう」
 宿禰は残念そうな顔をしていた。
 そんなことよりも、今はもっと大事なことがある。おれは意を決して宿禰に向き合った。
「それより……おれ、宿禰に相談がある」
「へ? おまえが? ……珍しい。ミナの相談ならなんでもうかがいますよ。ゆってゆって」
 いつもの軽い調子で宿禰が近づいてくる。あまりの至近距離に、落ち着いていたはずの心臓が再び駆け足になる。
「……そんなに近づくな。あ、あのさ」
「なに?」
「おれ、今まで植物とか風景とか、そういうのばっかり描いてきたんだけど……あの……人を描きたいって……宿禰を、描いてみたいって思っているんだ」
 一瞬きょとんとしていた宿禰は、事態を呑み込むとふたつ返事で請合った。
「あ? 俺? ……絵のモデル? いいぜ。裸になる? 俺、ガリであんま裸体に自信はないけど、ミナの頼みだったら脱いじゃう!」
 今にも目の前で脱ぎ出しそうな勢いの宿禰におれは慌てた。
「ばっ……裸にならなくていいっ! なんで絵のモデルで裸になるんだよっ!」
「だってデッサンの練習なら身体の線を描きたいんだろ? 裸になるんじゃないの?」
「おまえの裸なんか、描かないよ!」
 っていうか、宿禰の裸を凝視なんてできない。
「そう……じゃあ、顔モデル? 俺、顔だけはいいからな~」
 だめだ。こんなんじゃ全然伝わらない。
 これだけでどうにか察してもらおうと思った自分が甘かったのかもしれない。
 おれは緊張で湿った手を握り締めた。
「おれはおまえの顔とか身体とかが描きたいわけじゃなくて! おれがおまえを描きたいって意味はさ……おれは今まで誰かを描きたいって思ったことがなくて……おれが自分から描きたいって思ったのはリンが初めてで……だから、その……言わなくてもわかるだろ?」
 どさくさに紛れて宿禰を「リン」と呼んでみた。まだ慣れない。
 顔が熱い。きっとみっともないことになってる。
 おれは少しでも赤くなっているであろう顔を隠したくて、意味もなく眼鏡を押さえた。
 今度こそ伝わったと思ったのに、宿禰は黙ったままだった。おれは怖くて顔を上げることができない。
 早く! 早くなにか言ってくれ!
 おれは心の中で懇願した。
 ところが、やっと彼が口にした言葉はさらにおれを追いつめた。
「なんの話か全然わからない。俺を絵のモデルにしたいのは了解したよ。それ以上のことは伝わらない」
「……わかっているんじゃないか!」
 憤るおれに、宿禰はもっともらしく説く。
「ミナ、言霊って知ってるか? 声に出して初めてその言葉の意味を成すんだよ。言いづらくても自分の言葉ではっきり言わなきゃ俺の心には響かない。それが大事なことなら尚更だよ」
「……リンは意地悪だ」
 理系の男は口下手と相場は決まってる。そのうえ絵を描くことが言語のひとつになってしまっているようなおれに対して、宿禰は「言え」と迫ってくる。こいつは絶対にSだ。
「おまえの本気が見たいのさ。俺ばっか独りよがりみたいじゃないか。ほら、ちゃんと言えよ。ここまで待ってやったんだ。それ相当なご褒美を貰っても罰は当たらないと思うけどね」
 もうこれ以上逃げられないと悟ったおれは、ついに腹をくくった。
「……わかったよ。言うよ。言えばいいんだろ!」
「ちゃんと心から俺に届くように魂を込めて言えよ。俺の扉は頑丈なんだよ。開けるには真なる言葉の鍵が必要だからな」
 それは他人事のような口ぶりで、まるでゲームの攻略法を伝授するかのようだった。
 おれはひとつ深呼吸をしてから口を開いた。
「おれは……どうしても自分に自信が持てなくて、おまえがどうしておれにこだわるのか、いくら考えてもわからなくて……でも、おまえが選んでくれたのならって、そう思ってがんばってみようと思ったんだ。おまえと付き合いたい。友達なんかじゃ足りない。もっとたくさん、いろんなリンを知りたいって思う」
 それから、おれは宿禰の瞳を真っ直ぐに見つめた。
 どうか届いてほしい。
「おれは……リンが好きだよ」
 すると宿禰は幸せそうに微笑んだ。
「ありがとう、ミナ。俺もミナが好きだよ」
 その笑顔が愛しくて、せつなくて、なんだか泣けてきそうだった。


                                               text by sakuta



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ユーリとエルミザード  「黎明」 1 - 2009.07.01 Wed

ユーリとエルミザード

「黎明」
1.

ユーリ・サラディスは、母の弟であるヴァレリアウス・レイヌと並んで、夏の草原を馬で闊歩していた。
目指すはここから見える山間の向こうの小さな村の離れに住んでいる、ヴァレリアウスの師匠の邸だ。

ヴァレリアウスは、エイクアルド大帝国の重臣として長い間信頼され仕えてきたレイヌ家の跡取りで、今も皇太子の世話係として忙殺された日々を過ごしている。にも関わらず、首都イルミナスとは遠く離れた北方まで足を向けている。
ヴァレリアウスには秘密情報の特命も担っており、時折、こうして国の隅々までをも徘徊する仕事に従ているのだ。

「良く重臣の叔父上を自由にさせてくれますね、宮廷の皆さんは寛大だ。それとも大帝国の恩寵に胡坐をかいているのかな」
「ユーリ、来年の士官学校に入りたいのなら、その口の悪さをなんとかするんだね。私も試験官だけど、甘くはしないからね」

今年で12になるユーリ・サラディスは、この気さくな叔父が大好きだ。
性格だけではなく、彼は力のある魔術師、そしてこの地上の大帝国エイクアルドの重臣の中でも極めて重要なポストに位置する第一騎士団長兼軍師といういくつもの肩書きがある。
それなのにヴァレリアウスは、少しも気取らずにこの年少の甥にも礼を尽くす。
自分の知らない豊富な知識は底を知らず、そしてひとつひとつに感銘を受け、学ぶものも多い。

ユーリはヴァレリアウスを尊敬する。いわんや両親よりも信頼は厚く、できるなら傍に付き従い、彼に学びたいほどだ。
将来は彼の元で働きたいというのが、ユーリの希望だが、彼の家はこの地の名だたる魔道士の一族であり、彼はその名を継がなくてはならない身でもある。
それが窮屈なユーリは来年、エイクアルド国の宮廷士官学校の試験を受けるつもりだ。
「叔父上は講師も兼ねているんでしょ?大丈夫なの?皇太子だけじゃなく、その従兄弟のお守りまでしているそうですね」
「お守りではないさ。アルスは育ての親がわりだよ。両親がいないんでね」
「…奇特な人だなあ~忙しい身なのにそんなのまで背負い込んでいちゃ自分の楽しむ暇なんて無いじゃないですか。いくら皇太子の従兄弟だからって叔父上が世話役を引き受ける責などないでしょう。奉公するにも程ってもんがある。自分の幸せは考えていないの?」
「何を持って幸せというかの問題。私はね、レイ・ラシードとアルスの傍でお使えすることが一番の幸せなんだよ」
「じゃあ、なんでこんな辺鄙なところまで情報収集活動なんかやらなきゃならないの?他に沢山人材はいるでしょうに」
「それこそね、好きだからだよ、ユーリ」
片目をチャーミングに閉じて笑うとヴァレリアウスは馬に鞭を打つ。
「さあ、ユーリ、急ごう。日暮れるまでに着かなければ、野宿をする羽目になる」

ヴァレリアウスの師匠というライラス・ジレムの邸に着いたのは、山に落ちる陽が一日の最後の陽光を輝かせる時の頃だった。
ライラスは老人というわけではなく、ユーリの父親よりも若く見えたので、初めて出会うユーリは少し驚いた。
小声でヴァレリアウスに「あなたの師匠というから白髪のおじいさんを想像していたのに、まだ現役じゃない」
「当たり前だ。彼の闇と火の魔法の術に敵う者はいないよ」
微笑んだ後、ヴァレリアウスは師匠に甥を紹介した。

ユーリはその師匠の影に隠れるように佇むひとりの少年を見た。
見た目はユーリと変わらない年の頃。
ああ、あれがヴァレリアウスの言っていたエルミザード・アールか…と、ユーリは思った。
「初めまして、こんにちは。ユーリ・サラディスです」
人見知りという事をあまり知らないユーリは進んで、彼の前に歩み出で、握手を求めて手を差し出した。
暗い部屋の灯りでは灰色にしか見えない銀色の髪が、少し揺れ、彼はユーリをじっと見つめた。
「怖がらなくていいよ、エルミ。彼はおまえと友達になりたいのだよ」と、ライラスが言うと、エルミザードは頷き、おずおずと手を差し出した。
「…エルミザードです。よろしく…」
まだ声変わりしていない澄んだ高い声に、ユーリは容姿に違わずかわいいと思った。



                 text by saiart


2へ


実験的にやれるもんはやっていこうかと、思ってます。
この話は「彼方の海にて…」にも続くし、できるならレイ・ラシードとアルスの方にも手を付けたいと思っているので。
基本この話の更新は週一回ぐらいにしたいです。メトネ日記の方も。
どこまでやれるか…自分でも楽しみです。




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