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2009-10

猫日  午前中、その七 - 2009.10.20 Tue

午前中 その七
「じゃあ、俺らちょっと飯買ってくっから」と、ユキを眞人に預けて岬とふたりコンビニへ走った。
「ち、ちょっと、麗乃。そんなに急がなくってもさ…別にマコちゃん、ユキを食ったりしねぇし」
「いや、悪戯ぐらいはやらかすかも知れん。なにしろ眞人だからな」
「どこまで信用してないんですかぁ?」
「…」
 信用とかの問題じゃねぇし。ユキが…猫の由貴人が可愛すぎるんだよ。
 あれじゃあ誰だって変な気持ちになるって…お、俺だけか?
 とにかく、用事を済ませたらさっさとユキんとこに戻るから、待ってろ、ユキ。

走って五分のコンビニのドアを開ける。
「ユキが食べるもんってキャットフード?」
「待て、いくら姿が猫でも中身は人間のユキだ。猫用じゃあんまりだろ」
「じゃあ、パンとかおにぎりとか…味濃くねぇか?」
「弁当の白飯なら味はついてねぇだろ」
「牛乳は?」
「お茶ってわけにはいかねぇか?」
「さっぱり訳わかんねぇし。大体猫になったら味覚変わんのか?」
「わからんし。なんせ猫になったことはねぇ」
 乳酸飲料棚から小さめの牛乳パックを手に取る。
「猫に普通の牛乳飲ませたら、腹壊すって聞いた事ある」
「マジで?」
「うん」
「どうする?」
「コレ…おなかに優しい牛乳って奴にすればいいんじゃねぇかな」
「…じゃあ、それで」
 ユキと俺達の分の昼飯分を買ってコンビニを出る。いつもなら雑誌見たりのんびりするところだが、事情が事情だからな。のんびりなんかしていられるか。

 事務所に戻ってエレベーターを降りようとしたら、眞人とかち合った。なんか慌てている眞人の様子を見て、俺は嫌な気がした。
「由貴人が…」
「ユキがどうしたっ!」
 思わず眞人の肩を掴んだ。
「居なくなった」
「…なんでっ!」
「いや、俺がちょっとスタッフに呼ばれて部屋を出たんだよ。ユキ…窓際で気持ち良さ気に寝てたから、そのまんま、部屋に残して…わりぃ」
「ばっか…」
 急いでその場を駆け出そうとすると、俺の腕を掴んで岬が冷静な声で眞人に問う。
「で、眞人。ユキはどこに居るかわかる?」
「な、なんか、掃除のオジサンがあの部屋に入ったって情報は掴んだ。猫を抱えて階段下りて行くのを見たってのも聞いた」
「わかった。じゃあそれぞれに分かれて探そう。見つかったら携帯で連絡して。いい?麗乃」
「ああ、わかった」
 俺はエレベーターを待てずに階段を下りていった。

 なんで…目を離したんだよ。あんだけ由貴人の事頼んどいたのに…
 俺は眞人を責めたい気持ちで一杯になる。違う。眞人を責めるのは筋違いだ。元はといえば俺の責任だ。ユキを置いていったのも俺だし、ユキを猫にしたのも俺だから…
 もし、…ユキがどっかに連れ去られて、保健所やらに連れて行かれたら…と、思うだけで身体が震えた。

「…っう…」
 …呼吸困難で倒れそうになる。
 階段を踏み外しそうになり、手すりにしがみついた。
 駄目だ。しっかりしろ。俺が由貴人を守るんだ。

 八階から一階まで一気に駆け下りて廊下を走ると、エレベーターの前で立つ岬と眞人の後姿を見つけた。
「岬!眞人!」
「あっ、麗乃!由貴人見つけたよっ!」
 岬の言葉と同時に、振り向いた眞人の腕に抱かれた白い物体を俺の目が捉えた瞬間、俺は一気に気が抜けてそこにしゃがみ込んだ。安堵するとはこういう事かと身を持って体験した瞬間だった。

 ふたりが立ち上がれない俺のところにやってきた。もちろん由貴人を抱えて。
「大丈夫か?麗乃」
「悪かったな」
「…いや、いい。由貴人が居たんなら何も問題ねぇし…どこに居た?」
「丁度ね、オジサンが専用口を出るところだったの。そんで、急いで返してもらったの」
「なんか…野良猫が紛れ込んでると思ったらしい」
 アホかっ!なんでこんなにキレイなユキが野良なんだよっ!血統書付きでもこんな可愛い奴はいねぇし!
「まあ、良かったじゃん。ネコ…じゃねぇ、ユキ無事で」
「ほら、心配させて悪かったな」と、眞人がユキを俺に渡した。

「ユキ…」と、呼ぶとニャアと応えた。
 ユキが俺に近づいて顔を舐める。
 その時初めて俺は自分が泣いてた事を知った。





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