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2009-10

宿禰凛一 「Swingby」 3 - 2009.10.24 Sat

3、
 正月は大晦日から3日まで、箱根で過した。
父と再婚した継母の和佳子さん夫婦と、俺達の四人でこうやってゆっくり温泉を楽しむなんて、正直、夢にも思わなかったことだったから、俺としては違和感ありまくりではあった。が、とにかく和佳子かあさんがとても明るく、くったくのない女性で、今までに出会ったことのないタイプだから、楽しく過せる。
 もっと早くこのお母さんと暮らしていたら、俺の思春期はあんな寂しい思いなんてしなくて済んだのかも…なんて思ってしまった。
 鎌倉に帰宅すると、ゆっくり休む間も無く慧一はシカゴに戻り、父親の優一もストックホルムに帰った。
 和佳子さんは仕事の都合で、もう一週間ほど日本に滞在するらしい。
 マンションには俺と和佳子さんのふたり。なんだか照れくさくて仕方がない。
 お母さんと呼ぶのも慣れなくて、俺は「和佳子さん」と、つい呼んでしまう。

 和佳子さんは自立した女性であり、長年フランスのレスランでスー・シェフをやっていた。父と結婚してからは、各地のレストランでプロデュースをしたりレシピを教えたりと忙しくしている。
 午後のお茶会と称して、和佳子さんの作ったマジで美味いケーキを向かい合って食べながら、俺は色々と聞いてみた。
 親父との馴れ初めや、どこに惹かれたのかなど色々と。
 他人の人生の生き方を聞くのは、責任がない分楽しいものだ。人の物語だからな。

「和佳子さんって他人行儀だなあ」
「じゃあ、お母さんって呼ぶ?」
「ワコちゃんでいいわよ。優一さんもそう呼んでくれるもの」
「…あの親父がね~」
 いつも静かで冗談もあまり言わない親父からは想像できない。
「お父さんの事嫌い?」
「え?いや別に嫌いじゃないよ」
 正直、俺は親父を好きとか嫌いとか…そういう括りで考えたことはない。
「優一さんはすごく気にしてるわよ」
「何を?」
「あなた達を…特に凛一君をほったらかしにして手をかけてやれなかった事を…とってもね、後悔してる」
「…」
「酷い目にあわせてしまったって。仕事を理由にしても離すべきじゃなかった。傍に連れて自分の目の届く場所で育ててやりたかったって…お酒が入ると必ずそれを言うの。よほど凛一君のことが心配なのね。親なら当たり前だけど。まあね、凛一君みたいに綺麗な子は滅多にいないからわかる気がするわ。私が母親だったら、もう絶対離さないもの」
「俺もワコさんが本当の母親だったらいいなって思うよ。でも…もしもなんて言うのは野暮だね。今までの過去があるから今の自分がいるんだから」
「そうね、だから、優一さんにいつも言うの。慧一君も凛一君もあんなにいい子に育っていて、不平を言うべきじゃないって。あなたの子供だからでしょ、ってね」
「俺は…親父を好きでも嫌いでもないんだけれど…あの人が働いてくれてるから、俺達は経済的に恵まれた生活を送っていられてるって感謝しているよ…だけど、それは親に対する尊敬とはまた違う感覚なのかもしれないね。でも…そんな風に親父が思っていたなんて…ちょっと…というか、かなり衝撃だよ。…俺、本当は…親父は俺のことを…憎んでいると思っていたから…」
「どうして?」
「だって…母は身体が弱いのに無理して俺を産んでくれたんだ。逆に言えば、俺を産まなかったら、母はもっと長く生きられたのかもしれない。父さんは母さんを愛していたから…父さんが俺を本気で憎んでいるとは思わない。でも、心のどこかで俺を…許していないかもしれないって…」
「凛一君って、見かけによらずネガティブなんだ。君が思う一ミリだって、優一さんは思ったことはない。これは確信よ。葵さんの写真を見たわ。とっても綺麗で慧一君にも凛一君にも良いところばかり遺伝しているのね~。特に凛一君は葵さんの独特な繊細さを引き継いでいる。その姿も中身も…」
「…」
「って、あなたのお父さんは嬉しそうに私にゆってたわよ」
「そんなことを…親父が…」
 あまりの突然の事に俺は言葉を詰まらせた。親父にそんな風に思われていたなんて…にわかには信じられない。
「…俺、愛されてるって信じていいのかな?」
「勿論よ。優一さんはあなたたち二人をすごく愛しているし、期待もしているわよ。凛一君が大人になったら一緒にお酒を飲みたいって」
「…うん」
「その時はうんと美味しいおつまみを披露するから、私にも相伴させてね」
「勿論だよ」

 その夜は寝付けなかった。
 今まで父の事を深く考えたことはなかった。愛されていようといまいと、あの人はまったく城の外に居る人だった。 でも…違っていたんだ。父はいつも俺を見て、愛してくれていたんだ…そう思うと涙が溢れてくる。
 俺は「愛」には弱い。
 愛されることの喜びは愛するよりも尊いように感じてしまう。同等の重さであるはずなのに…

 6日、ミナと初詣に行く。
 久しぶりに会ったミナは、去年とはまた違った顔で俺を見る。
 何か言うたびに少し恥らいながら俺を見るミナがかわいくていとおしくて、俺はこの尊く、愛する者を大切にしたいと、手を合わせながら祈った。

 二月、バレンタインデーに和佳子さんから教えてもらったチョコケーキをミナに食べさせたくて、俺は張り切って腕を奮った。
 当日、朝から延々と続くプレゼントの攻撃で散々な目に合わされた俺は、さすがにゲンナリしながら、放課後温室に行く。
 ミナは今日が何の日かわかっていない様子だった。
 …世間知らずっていう子は、本当は世間に興味がないということだろう。まあ、かわいいちゃあかわいいが、度を過ぎるとド突きたくなる。
 一緒に食おうと思って思ってきたチョコレートケーキワンホールをミナの目の前に差し出すと、ミナは目を丸くして素直に感動してくれた。
 そこまではいい。合格だ。しかし…
 ケーキを食べるのに、フォークがいるのだの、手が汚れるだの言いやがって手をつけようとしない。
 挙句の果て「持って帰って食えば?」と、皮肉を言ったつもりが、あっさり快諾して、大事そうにしまいやがった。
 …いや、一緒に食べようと持ってきたんだがね…

 こいつの天然ボケは酷すぎるとは思わないでもないが、そこは惚れた弱みもある。
 お礼は後でたんまり貰うとして、今日はキスだけで我慢してやるよ。

 次の日の放課後、ミナは「もうチョコケーキは暫く食べなくていい」と、ぐったりして言う。聞くと、昨日あげたケーキを夕食代わりに食い、一日中胃がもたれて仕方が無いと言う。
 …美味しかったのかどうかがこちらとしては気になるところだったんだが…
 「そんなに無理して食べなくても良かったのに」と、言うと、ミナはムキになって「リンが俺のために作ってくれたケーキは誰にも食べさせないし、一欠片も残さない」と、当然と答えるから、俺は呆れながらも、嬉しくてたまらない。思わずここで犯してやろうと思ったほどだ。
 
 …と、いうか、そろそろやりたくやらねえかねえ~こいつ…








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宿禰慧一のお話はこちら「イリュミナシオン」 
宿禰凛一の過去話「追想」の初めはこちら  


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