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2009-11

宿禰凛一 「Swingby」 8 - 2009.11.04 Wed

8、
 この間のリベンジと言うミナの言葉を本気にしてもいいのか…本当のところ、俺は混乱していた。
「相手の事を一番に考えてやれ」と、言った慧一の言葉は正しい。だからこそ、今度は間違えないように、俺はミナを導かなくてはいけない。

 リビングで落ち着かないミナの様子を眺めながら、こいつはこいつの中で色んな思いと決意を持って、ここまで来たのだろうと思った。
 その勇気に俺は応えなきゃいけない。
 ミナの望みを俺は適えさせてあげたい。

 …ふと思った。
 俺は今まで、他人に対してこんな風に思いやったり考えたりしたことはない。月村さんの時だって、あの人を救いたいとは思っていた。だけど、それは自分と言う存在をあの人に認めさせたくて…俺に救う力があると思い上がっていて…あの人を思いどうりにしたかっただけじゃないのか?でも俺の力なんかちっぽけなもんで、結局あの人は自ら「死」を選んでしまった。俺は自分の無力さを嘆いたけれど、そんな力は初めから持っていなかったんだ…

 …いや、違う。もっと根本的な何か…月村さんは俺に何を求めていた?

「ねえ、リンのお兄さんってリンに良く似てかっこいいね」
 シカゴで撮った写真を、パソコンの画面で眺めているミナが、俺を見る。
 俺は初めてミナに俺の生い立ちを話し始めた。
 亡くした母の事や慧や梓のこと、俺がどんな風に育ってきたかを、今こそ話すべきだろう。
 ミナは本当の俺を知りたがっている。
 
 俺はまだ悩んでいた。俺は…男でも女でも受けでも攻めでも、そのことで自分のプライドが傷つくという経験はない。そこまで考えが及ばないぐらいに俺自身が幼稚だったからだ。
 ミナはどうなんだろう。
 ミナは俺が…ミナを抱いてもいいと思っているのだろうか。男としてのプライドは傷つかないのだろうか。
 俺と繋がりたいと言ったミナを、俺はどういう風にするのが一番いい方法なのだろう。

 一緒に夕食を作って食べて、風呂に入って、ベッドで寝る。
 当たり前の事なのにひとつひとつが嬉しい。ミナといると口元が緩んで仕方が無い。
 少し緊張したミナが俺を見つめる瞳が好きだ。少しむくれて唇を尖らして俺を睨む表情もいい。普段は透き通るように白い肌を真っ赤にして恥らうのもミナには相応しい。
 …俺を見て微笑むミナが、愛しい。
 ミナは俺が思っている以上に俺に癒しをくれる。
 こいつは俺を…愛してくれているのかな…

 裸になったミナの身体を触る。
 ミナは素直に反応を寄こしてくる。
 怯えながらしがみ付くのもたまらなくかわいい。
 大事にしたい。
 怖がらせないように、色々と話をして聞かせると、素直に耳を傾け、一生懸命に答えを探す。
 こいつはとても純粋だ。
 俺がそれに…手をつけてもいいのか…
 それはミナにとって正しい選択なのか…
 この子の人生を狂わすものではないのか…
 俺は、ミナの限りない選択できる未来への道を狭めてはいないだろうか…

 …月村さんが俺を抱かなかった理由…それはこういう事ではなかったのか?
 あの人は自分の死を知っていた。
 だから俺の中に自分を記憶させる事をしなかった…それが…あの人の想いじゃないのだろうか…
 あの人は俺に自分を忘れて欲しいと言った。
 俺の為を想って…そうじゃないのか?

 ミナの身体が俺の下で熱くなる。ミナの手が足が俺に絡みつく。
 熱い…
 ああ、大好きな、大事な、愛しいものを、俺はこの身体で抱きしめ、抱きしめられ、ひとつになっていく。

「リン、好きだ…大す、き…」
 切なさと甘さを孕んだミナの声が耳に響く。
 そうして、何度も俺の名を、呼ぶ。
「リン…リン、おれ、幸せだ、よ…」
 途切れ途切れに吐くミナの言葉に、俺の鼓動が止まる。

 …幸せだったと言った。
 幸せだとあの人は言ったんだ…
 俺は、俺は彼を救った?
 …そうなのか?だったら俺は…

 死んでいった月村さんを俺が救った。そして俺は月村さんの死に縛られてしまった。だけど、違う…月村さんが俺を縛っていたんじゃない。俺が…俺自身が月村さんの「死」から逃れられないでいただけなんだ。

「リン…好き、だ…」
 揺らされながら必死で叫ぶミナがいとおしい。
 この浄化する者…
 ああ、…俺は…
 俺は、ミナに救われている。ミナが俺を救ってくれている。
 ミナの「愛」によって、俺は「死」の鎖からやっと…やっと解き放たれるんだ…

 ミナ…ミナ…俺はどうしようもなく頼りない人間だ…人の気持ちもわからないまま、好き勝手に我侭し放題で生きてきた。それが許されると思い込んでいた。
 それを否定しようとは思わない。だけど…おまえには、おまえだけには、俺は信頼される人間でありたいと願う。
 ミナ…おまえを俺の一生の恋人と…誓ってもいいか?
 
「愛してる…」
 俺はミナの中に自分のすべてを注ぎ込み、そして、「愛」という感情をミナに捧げた。







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