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2009-11

宿禰凛一編 「Swingby」 13 - 2009.11.16 Mon

13、
 「凛一、明日は学校も休みだろう。うちに泊まりなさい。おまえが嫌だと言っても今晩は帰さないからな」と、意味深な言葉を吐く言う嶌谷さんは、回りから大顰蹙を買っていた。
 閉店後、嶌谷さんに連れられて彼の自宅に行く。
 久しぶりの嶌谷さんのマンションは、昔とひとつも変わらない。どことなく清々しい心持ちのする空気が俺は好きだった。

「凛一の為に、とっておきのメルローでも開けようかな」
「結局は嶌谷さんが独りで飲んじゃうくせにさあ~」
 ワイン好きの嶌谷さんが家庭用のワインセラーから高級な赤ワインを出してきた。
 酒に強くない俺が飲めるとしたらワインぐらいなんだか、それは嶌谷さんの影響だと思う。
 勝手知るところで、簡単なつまみをキッチンでこしらえる。
 嶌谷さんとの穏やかな団欒は俺にとって居心地が良すぎる。
 嶌谷さんは月村さんの事は一言も口にしなかった。俺も何も言わない。
 もう少し俺が大人になって、月村さんをちゃんといい思い出にしたら、沢山語り明かしたいと思っている。

「嶌谷さんの部屋ってなんだか安心するなあ~。独り暮らしってどこも一緒かなあって思ったけど、うちの空気とはやっぱり違う」
「凛一は来年には慧一くんが帰ってくるから独り暮らしは返上だろ?俺みたいな万年やもめと比べるな」
「本当に帰ってこれるのかなあ~ちょっと心配なんだ」
「なにが?」
「就職って日本の就活とは違うんでしょう?向こうの企業に就職したら、日本に帰れるかどうかわからないよね。日本で働けたとして、今の自宅に住めるとは思えないし…仕事場が東京なら俺が東京の大学を選べばいいんだけど…俺の都合で慧の仕事先を決めて欲しくはない。慧に言っても、自分が決めるから口出しするなって言う感じだし…。お荷物になっているようで、心持ちが悪いよ」
「慧一くんがそうしたいって言ってるのなら甘えればいいんじゃないか?」
「…」
「なに?」
「以前の嶌谷さんだったら、凛一は甘えている。大学生にもなってお兄さんと暮らす奴は自立心が足りないって言いそうなのに…」
「…慧一くんと色々話して、彼がおまえを大事にしてるっていう気持ちが良くわかったからだよ。それに、慧一くんは凛を長い間独りにしてしまったことを、とても後悔している。少しでもおまえの近くに居て、甘えさせてやりたいって思っているんじゃないのかな」
「そりゃあの頃は…さみしくて仕方なくて、俺も嶌谷さんや兄貴に色々心配かけてしまったけれど、もうどこの誰かとほいほい寝たりはしませんよ」
「凛は危ういからなあ~」
「危ういって…そうかね~嶌谷さんは一度だって俺と寝たいって言わないじゃないか?俺にはそういう色気はあまりないかもなあ~兄貴にいくら迫っても断られるしさあ」
「凛一。おまえは慎みと言うことを学んだ方がいい」
「肝に銘じますよ。と、言っても今は俺、充実してんの」
「へえ~決まったセフレでもいるのか?」
「…慎みなさい。恋人だよ。正真正銘の心から愛してるって思える恋人が出来たの。…男だけどさ」
「…そう、か…」
「同級生なんだけどね、一見軟弱そうに見えるけど、男気がある奴だよ。純情で素直で天邪鬼のクセに甘えん坊でさ。俺、メロメロなんだ」
「へえ~良かったな」
「…なんか」
「ん?」
「今の言い方、あんまり心から喜んでいないニュアンスがあった」
「そうだったか?」
「俺とミナ…そいつの呼び名ね。を、祝福してくれる大人が回りにあまりいなくてさ。ミナは学年トップの優等生だから俺みたいな危ない奴が近づくのを先生方は嫌がっているみたいだし…嶌谷さんなら味方になってくれると思ったのになあ」
「おまえが真剣に誰かを愛することは素晴らしいと思っているよ。…慧一くんは知ってるの?」
「うん、話したよ。慧の助言のおかげで俺たち本当の意味で恋人になれたと思ってる」
「そう…じゃあ、いいんじゃないか」
「それ!心から喜んでいないって感じだ。月村さんの時だって、嶌谷さんは反対したよね。どうしてそんなに厳しいのさ」
「そりゃ…そうだな、凛一を愛してるからな。他意のない嫉妬って奴さ」
「ああ、わかるよ。この間さあ…」
俺は、藤宮との一件と嶌谷さんに話し聞かせた。

「今はなんの関係もないっていうのに、慧がそいつと寝てたって思ったら、やったら腹が立ってしかたなかったんだよ。これって嫉妬だよなあ~兄貴に嫉妬しても仕方ないんだけどさ。別に俺は慧に対して欲情したりはないんだけどね」
「担任が慧一くんの昔の恋人とはね。なんて因縁だ。それにしても凛、おまえは欲情しないっていうけどね、慧一くんに迫るのはどうなんだ?」
「慧が本気にするわけないし、もしそうなっても俺は慧となら寝てもいいと思っているもん」
「本当に寝たいって思っているのか?慧一くんを試して楽しんでいるだけじゃないのか?」
「違うよ…」
「寝てしまったら今までと同じように慧一くんに甘えられるのか?関係が壊れるって思わないのか?簡単に好き勝手に吐いて慧一くんを困らすんじゃないよ、凛」
「…」
「俺はな、親だろうが子供だろうが、そいつを本気で好きなら自分のものにしたいって欲望はどこかにあるはずだと思う。そいつを他人に取られるとなれば嫉妬もするだろう」
「でも、親だったら子供の幸せを喜ぶもんでしょ?」
「勿論だ。だが百パーセントの祝福なんてあるだろうか。親は自分が大事に育ててきたものを取られ、友人は自分と長年暖めた友情に亀裂を感じる。だれもが天使みたいに百パーセント手放しで喜ぶ事は難しい。より愛していればそれはもっと複雑だ。祝福したい気持ちと、自分のものではなくなる寂しさが募るもんだよ」
「…嶌谷さんもそうなの?」
「凛は俺にとっても特別なお気に入りだからね。おまえの幸せを祈ってはいるけれど、嫉妬もするのさ」
「うん…でも俺は嶌谷さんが好きだよ。俺がどんな奴を好きになっても嶌谷さんへの想いは変わらないと思う…だから、嫌いにならないで欲しいよ」
「俺が、凛一を嫌いになれるもんかよ…いつだっておまえを案じているよ。慧一くんの想いには適わないけど」
「慧は…特別だからさ。きっと慧に本当の恋人が出来たら、俺は…泣いてしまう。その時は嶌谷さんが慰めてくれよ」
「じゃあ、その時は…抱いてやろうか?」 
「うん、頼むよ」
 俺となんか絶対しないくせに、そんな風に俺を労わってくれる嶌谷さんが好きで堪らない。
 だが、愛していても所有私欲には拘らないで、そいつの幸せを願う。その寛容さは俺にはない。
 結局は嶌谷さんは大人で、俺はまだ半端者なのだろう。
 いつかは俺も嶌谷さんのような境地に辿り着けるのだろうか…

 そうやって嶌谷さんと朝方まで語り明かし、久しぶりに気持ちのいい酔いに身を任せた俺は、いつの間にか嶌谷さんの膝枕で寝てしまった。





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