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2009-11

宿禰慧一編 「オレミユス」 3 - 2009.11.30 Mon

3、
 大学院では、都市空間建築家で知られるリュス・ブライアン教授の研究室で指導を受けながら、教授の助手として学生達のレポート採点や指導の手伝いをしている。
 「空間構成を考えた建築デザイン及び、構造技術の性能に関する研究」というテーマで取り組んでいる。まあ、簡単に言えば、想像した建築デザインが環境に適応するように構築できる構造物として快適に生活できる空間を作り上げられるかという話なんだが、環境デザインと建築というものをひと括りで考える建築士を目指している。
 今年は卒院する予定だし、条件のいい企業に就職できればいいと思うが、正直日本で探すとなると難しい気がしてならない。
 
 同じ研究院生であるジャン・エクトールは親の建築事務所を継ぐ予定だが、それはそれで色々としがらみがあって憂鬱で仕方がないと、愚痴をこぼす。
「ケイイチは自由でいいよ。将来は自分で事務所を持つ事も考えているんだろ?」
 小春日和、大学のすぐ脇にある公園を散策しながら、俺はジャンとよく論議しあう事が多い。
「…そう簡単にはいかないよ。資金も後ろ盾もない若造に何ができる?どっかの大企業のいち設計士として埋もれている方が楽に暮らせるのかも知れない」
「コンペで名を売ればパトロンも付いてくるさ。ケイイチの才能は教授も認めているんじゃないか。教授に相談すればいい方向へ導いてくれるんじゃないか?」
「そう簡単にいくかね」

keiiti4


 俺たちはサウスストリート沿いのカフェで昼食を取る。
 いつものウェイターが注文を聞きに来た。
 俺はスコーンとコーヒー。ジャンはハンバーガーとフライドチキンとコーラだ。
 このボストン生まれのフランス系アメリカ人はどうしてもハンバーカーとチキンはセットにしないと気が済まないらしい。よく飽きないなと呆れるどころか、感心する。
 大雑把なアメリカの食事には閉口するが、ジャムは選べば美味いものが多い。
 土産に買っていくと、凛一も喜んで食っている。
 ああ、このカシスのジャムもいけるな~と、食べていると、ジャンが面白そうに口を開く。
「あのウェイター、おまえに必死にアプローチし掛けていたけど、どういう仲だよ」
「…さあ」
「嘘つけ。あの子と何度か公園を歩いていたろ?」
「おまえは探偵か?」
 こんな広い街で、よっぽどヒマだなと呆れてしまった。
「おまえは目立つんだよ。自分ではわからないだろうけど」
「東洋人が珍しいもんでもあるまいに」
「おまえを紹介してくれっていう男も女もいるんだ。ステディがいるそうだって断っているけれど」
「ありがとう。助かるよ」
「で、本当に決まったヒトはいるのかい?ケイイチには」
「…いるよ。たったひとり、ね」
 誰にも言えない最愛の運命の奴がさ…

 あの金髪、碧眼のウェイターはクリスと言った。確か年の頃は17,8。
 何度かあの店に足を運び、話をするようになり、誘われたっけ。
 遊びで4,5回ほど寝ただけなんだが、向こうはどうもこちらに執着がありそうで、何度も誘いかけてくる。
 感情をストレートに表す外国人には珍しく、控えめで多くを求めてはいない子ではあるけれど、恋愛と言う感情には程遠い。
 大体…している最中にだって、俺は相手を凛一と置き換えている場合が圧倒的に多いんだ。そういう奴がマトモな恋愛を望んでは相手に悪かろう。もとより俺には全くその気はない。
 交際を求められたら、セックスだけでいいなら、と、断わりは入れた筈だ。後になって未練があろうがなかろうが俺の知ったことではない。

 冬のシカゴは寒い。ヒーターに暖まった部屋にいる間はなんとも感じないが、一歩外へ出ると、ミシガン湖からの風が水滴の塊の粒を上空から舞い上がらせ、灰色の雲の中に溶け込んでいく。
 独りで過ごす日々は平穏だが何もない。この曇天の空と同じ。

 三月になったばかりの或る日、教授から娘さんの結婚式の招待を頂き、教授の本宅である郊外の家に招かれた。
 断る理由もなく、週末の休日を教授宅にお世話になった。
 教授の家庭は奥さんと兄、弟と妹の5人家族。まるで肖像画のような完璧な家族図であり、飼われている犬さえも幸せそうに見えた。
 こんな家庭に育ったならば、俺も歪んだ気持ちなど生まれはしなかっただろう。
 自分の身の上が切なくなって仕方がない。
 親父は…こんな家庭を夢見ていたんじゃないだろうか。
 妻と娘と亡くし、長男である俺はゲイだ。しかも自分の弟にうつつを抜かしているどうにもならん息子だ。
 俺がゲイである限り、宿禰家に子供はできない。凛一もまたそうであるなら…。
 父は俺たちなど切り捨てて、新しい奥さんと子供を持つ方がよっぽどマシなんじゃないだろうか。

 俺は父の不幸を哀れんだ。
 あの人が望んだ家庭を築けないどころが、失望させてしまう自分自身が情けない。
 こうまで凛一に囚われている自分が恨めしい…
 教授の娘さんの結婚式を祝福した夜、俺は父宛に短い手紙を書いた。


 お父さん、いつも十分な仕送りを感謝しています。
 思えば僕は息子として、あなたに喜びや希望など、なにひとつ残す事ができなかった気がします。
 ここまで育ててくれた恩に対して、あなたを労わり、そして暖かい家庭を示すことこそが、死んだ母さんや梓への報いとなったはずでした。
 ごめんなさい、お父さん。
 俺はもう戻る事はできないよ。
 自分で決めた道を歩いていきます。
 宿禰家を継げなくてごめんなさい。
 どうぞ、お母さんと幸せな人生を送ってください。
 僕に言えることはそれだけです。
                 慧一
   






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宿禰慧一のお話はこちら「イリュミナシオン」 
リンミナシリーズはこちらからどうぞ。目次へ


慧一の手紙を書くつもりは全く無かった。慧一が言わせた言葉だった。
だから自分の書く話は自分が先が読めないんだ…
絵は適当に(;´∀`)かっこいい慧が描きたかったので~


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