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topimage

2010-01

「そうだ!箱根に行こう!」 - 2010.01.30 Sat

次話が箱根へ行く話なのですが…
ふたり並べたら、観光用ポスターになりました~www
別に箱根町からはなんももらっておりませんが~

宣伝ポスター

箱根温泉はいいお湯です。
またいつか行こう~

水川青弥編 「焦点」 7 - 2010.01.29 Fri


7、
 リンのお兄さんがリン宅に居る間は、おれ達は温室でセックスを楽しんだ。
 と、言っても夏休みは、温室から見える運動場は一日中部活を勤しむ生徒達が見える。こちらから見えるという事は、あちらからも見ろうと思えば見えるわけだ。おまけに温室にエアコンなんて付いているわけもないから、暑さを凌ぐ為に窓を開ける。
 …変な声だって出せない。
 気もそぞろというか、スリルも過ぎると快感より気が散って仕方がない。
 しかし廃屋寸前の温室とはいえ、レトロなレンガ造りでしっかりした造りになっていて、案外外からは見えにくい盲点の場所もある。
 そこに捨てられてあった机と椅子を置いてその上で…

 下半身剥き出しになるのは大体おれの方で、リンはいつも余裕の表情でおれを翻弄する。
 言いように誑かされている気がしてムカつく時もなるが、リンのいわゆる…慣れたテクニックというか、色んな事にはおれは付いていくのが精一杯で言うとおりにするしかないのが実情。
 セックスに関してど素人のおれは当然太刀打ちできるわけがない。。
 リンは一体どれくらいの経験をしてきたのだろう…と、時々リンの過去の相手を妬んだりする。
 リンは過去にやった奴とおれを比べたりしないんだろうか。
 色々悩むというか…悩んでも仕方ないことだが、焦りや憂鬱は減りはしないどころか…
 
 おれはリンにとって一番でありたいと…思っている。
 思ってはいるがまるで中身が伴わないスカスカのカレーパンみたいな感じがする。
「カレーパン?」「そう」「学食の?」「うん…」「ああ、あれ、当たりはずれがあるよな。具がむっちゃ入っている時とスカスカな時」「そうでしょ?」「変なミナ…なんで最中にカレーパンなんだ…笑うぜ」「わ、笑うな!中、か、感じるから」「ミナが笑わせるのが悪い…ほら…」「…あ、んん」
 結局負けるのはおれの方なんだ。でもリンは終わった後、必ず褒めてくれる。
「凄く良かったよ。ミナは最高だ」と。
 リンの言葉は何も持たないおれに難なく勇気と自信を植えつける。それはおれの中で羽を広げ、育っていく。  
 リンという光を受けて、リンに届くように。

 おれとリンが付き合っていることはあまり周りに知られていない。
 同じ2年でもリンとは教室の階は違うし、校内ですれ違う事があってもお互い手を上げるぐらいで話し込んだりは一切しない。
 男子校だから男同士の恋人関係も少なくない気はするが、どのカップルも目立つ事は避けているのだろうか、変にいちゃついている現場に出くわしたことはない。

 一度、クラスメイトからリンのことを聞かれた。
「水川って4組の宿禰と仲いいの?」
「うん、いい友達だよ」
 あまり喋ったことのない興味津々の3人の面々を目の前に、少し顔が引きつったが、おちつけ、平常心だ。
「よく付き合えるな。宿禰って綺麗すぎて近づきにくいっていうか…なんかあいつ怖くねえ?」
「うん、なんかヤバそうな感じがするよな」
「…別に怖くないし、普通にいい奴だよ」
「中学の時のウワサ聞いてるだろ?」
「ああ、あれな、去年の年末凄かったじゃん。生徒会が必死にもみ消したんだよな」
「前の生徒会長は宿禰と出来てたんじゃないかって噂あったしな」
「…」
「なあ、ホントなのか?水川、知ってる?」
「ああいうの信じる方がイカレてる。何なら宿禰を呼んで来て目の前で喋らせようか?」
「え?…い、いや、いいです」
「あんな綺麗な顔で睨まれたら…想像するだけで恐ろしい」
「それにあいつ、腕っぷしも凄いって聞いたし…」
「…」
 肩を竦めた3人の後姿を一瞥したおれはリンの待つ温室へ急ぐ。
 無性に腹が立って仕方なかった。
 涙が滲んだ。
 あんな奴らの言う事を真に受けちゃ駄目なのに。
 リンは今までにどれだけのもっと酷いことを言われてきたのだろうと思うと、心が痛んで仕方なかった。

 温室にリンの姿はまだ無かった。良かった…泣いてるところを見られたら、つまらないことを白状しなきゃならなくなる。
 おれは涙を拭いて温室の花に水を撒いた。
 夕刻になると色を変える酔芙蓉の花が赤くなって萎んでいる。美しい花もいつかは枯れる。
 いつかは…

「ミナ、どうした?」
 背中からリンの声が聞こえて振り返る。少し心配そうなリンに、おれはあわてて笑顔を見せる。
「なんでもない。折角の酔芙蓉が枯れてしまったから、ちょっと残念だ」
「萎んでいるだけだよ。大丈夫だ。明日になればまたキレイに開くよ」
「ホント?」
「本当。それよりさ、いい話があるの」
「え?なに?」
「一昨日兄貴と横浜に買い物に行ってね。抽選があってて、兄貴が箱根温泉一泊ペア旅行券を当てたんだよ」
「へえ~すごいね」
「その当たり券をおれ達にくれるって」
「え?」
「ミナと一緒に行きたかったから丁度良かった。勿論行くだろ?」
「…本当に?すごい…嬉しいよ、リン」 
「箱根なんて珍しくもないだろ?」
「そんなことはない。リンと一緒にお泊りできるんだよ。すごい楽しみだ。でも俺なんかが行ってもいいの?お兄さんに悪い気がする」
「いいんだよ。慧はミナと行きなって言ってくれたんだから」

 リンのお兄さんがおれ達の仲を認めてくれるのは、心強い気がしている。だけど、なんだかそれも気が引けて仕方が無い。
 だってリンのお兄さんへの愛情はひとかたならないものを常に感じていた。普通の兄弟では考えにくい絆の強さがある。勿論それはリンの生まれ育った環境によるものだろうけれど。それとも兄弟のいないおれだから余計それが奇妙に見えるだけなのかな。

「旅行の日程はこっちで決めていいみたい。折角だ。紅葉のきれいな時期にしよう。いい?」
「うん、リンと一緒ならいつでもどこでも嬉しいよ」
「毎度の事だけど…ミナの無意識の殺し文句には参るね」
 そう言っておれの額に軽くくちづけをするリンには到底敵わない。

 10月、体育祭が近づいている。
 リンも応援団の練習で毎日忙しそうだ。
 寮の自室でパンフレットを眺めてみた。
 おれは一組でチームカラーは赤。リンは四組で黒。縦列で別れるから同室の根本先輩はリンと同じ黒組だ。
 先輩はリンと同じく応援団で…と、パンフの文字に俺は息を止めた。
「ええっ?先輩、黒組の応援団長なんですか?」
 おれはベッドで漫画を読みながらせんべいを食べている先輩に向かって思わず叫んだ。
「そんなに驚かなくてもいいと思うけどね。こう見えてもぼくは三年生なんだし、これだけ美人なんだから団長ぐらいは当たり前でしょ」
「…そうですか」
 この人も大声張り上げるんだろうか。
 想像したら笑えた。
 
「みなっちには悪いけど、ぼくとリンくんのラブラブなダンスシーンで会場を魅了するからね。今年は黒組の勝ちだね」
「会場…はは」
 なんかのコンテストか?なんでもいいや。見たくなかったら目を瞑っていよう。

 体育祭には生徒の家族や先輩方が大勢集まり、毎年お祭り騒ぎとなる。
 多くの演目の中でも応援合戦は一番の花形で、各クラスは半年かけて色んな見せ方を仕組んでくるから見ものだ。
 昨日まで雨で案じていた天気も朝にはすっかり晴れ上がった。
 赤組の応援席の大弾幕はおれが中心になって描いたりしたものだから赤組には勝ってもらいたいところだが、いかんせん運動の苦手なおれでは点数は稼げない。応戦席の隅っこでみんなの熱戦を見守る事にしている。
 二年の演目の時、ひときわ大きく「リンくん、頑張って~!」と、叫ぶ声がしてその付近を見ると、なんだか見知らぬ集団が一角を陣取っている。 
 渋いオジサンやらちょっと怖そうな人…明らかにオカマっぽいひと…後で聞いたらリンの行きつけのジャズクラブの店長と常連さんだと言う。違和感ありまくりで笑った。
 その騒がしいグループの中に、ひとりだけ目立つ男の人がいた。
 すぐにわかった。
 リンのお兄さん…慧一さんだ。
 アメリカからわざわざ体育祭の為に来たのかな…
 写真では何度も見ていたが、実際に見る慧一さんはそのオーラもどことなくリンに似ていて、他の人とは存在感が違って見えた。
 見事に調和された美しい人…と言うしか形容できない姿だった。

 それよりももっと驚いたのは、
 彼のリンを見つめる眼差しだった。
 やさしく慈しむ表情とはまた別の…誰にも入り込む余地を見せない強い一途な想い…それが肉親の愛なのかどうかはおれにはわからない。
 わからないが…
 ひとつだけわかったことがある。
 おれが戦わなきゃならないものは、あの人のリンを想う力…なのだ、きっと。







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勿論黒組勝ち!
↑笑うとこ(;^ω^)


痴話ケンカ - 2010.01.27 Wed

リュウとメトネの痴話ケンカはデフォです。
勝ったり負けたりもいつもの事。
ケンカの原因?
しょーもない事です。

結局仲良し

一応リュウは魔界の王ですが、なにか?(;^ω^)


水川青弥編 「焦点」 6 - 2010.01.27 Wed

6、
 直ぐ近くのスタバに入り、おれはラテを、彼女は氷の入ったやつを頼んだ。窓際を避けて、一番奥の静かな席に向かい合わせて座った。
「先週、中学の同窓会があったのよ。青弥来なかったね」
「…学校の補習が忙しくて、こっちに帰っていなかった」
 同窓会の連絡はもらっていたけれど、その気が全くなかったので無視していた。大体中学を卒業して二年も経ってないのに懐かしむも何もないだろう。
「いくら進学校でも日曜は休みでしょ?鎌倉だったらすぐに帰ってこられる距離じゃない。私、青弥と会うの結構楽しみにしていたのに」
「…」
 どういう意味かさっぱりわからず、思わず顔を上げて原田の顔をまじまじと眺めた。
 顔かたちの変化はよく判らないが、髪が…
「髪、切ったんだね」
「あ…うん、うちの高校、規律が厳しいからね。おかしい?」
「え?別に…」
 なんだか髪型がリンに似ているって…そう思ったんだ。
 リンの方がもっと黒くて艶やかな気はするけれど…
 …え?なんでだ?原田は女でリンは男なのに、なんでおれ比べているんだろう…
 それに、リンの方が圧倒的に魅力的だって…はっきりと感じてしまう。
 …だから比べる意味がないだろうよ。バカじゃないのか、おれ。

「…あんまりジロジロ見ないでよ。恥ずかしいじゃない」
「…ゴメン」
 そんなに見ていたつもりじゃなかったが、前に座る原田は赤面しながらおれを睨みつけた。
「青弥って中学の時は、私の顔をまともに見ようとしなかったのに、高校になって随分と男らしくなったみたいだね」
「そうかな…」
「ね、好きな子できた?」
「え?」
「もし居なかったら…私ともう一回付き合ってみない?今度は…ちゃんと青弥を受け止めてあげるから」
「…」
 おれはゆっくりと目を閉じた。
 …何のときめきも高鳴りもない。彼女はもう過去の人でしかなかった。

「ごめん。おれ、付き合ってる相手がいるんだ」
「…そう、なの?」
「うん」
「青弥の高校って男子校だから…てっきり青弥はフリーなのかと思っちゃった」
「結構…多いよ。恋人がいる奴。近くに女子高もあるしね」
「青弥の彼女はその女子高の人?」
 相手が男だっていう事は黙っていよう。色々と説明するのも面倒だ。
「いや、違うけど…とても…」
 言いながらリンの笑った顔が、思いっきり目の前に浮かんだ。おれは思わず口元が緩んだ。
「大好きなんだ」
「…」
「あ、変な話しちゃったね。悪い」
「あ~あ、また振られちゃった~。私の顔をジロジロ見るから、まだ少しは好きでいてくれてるのかもって…期待しちゃった」
「…ごめん」
「いいよ。本当は悔しいけど…でもあの青弥をこんなに変えたのがその彼女なら…諦めるしかないわね」
 それまで負けん気の強さを漂わせていた原田の空気が一気に緩んだ気がした。もしかしたら彼女は彼女なりにおれに対して精一杯虚勢を張っていたのかもしれない。

 おれと原田は店の前で別れた。
「お別れの握手」と、原田が差し出した右手をおれはしっかり握り締めた。
 驚いた事にあの夏に味わった苦さ、惨めさ、自分に対する失望感は、おれの中で思い出として見つめる事が出来るようになっていた。
「元気でね、水川くん」
「うん、原田も」

 初恋の人、君を僕の中でひとつの形にする。
 小さく輝く硝子の欠片。


 お盆休みが終わり、学院に戻った。
 補習が終わると温室へ直行だ。
 リンはすでに温室に居て、植物にホースで水を撒いていた。
 虹色に輝く水しぶきの向こう側で、おれに笑いかけるリンの顔が見える。

「おかえり、ミナ」
「リン…」
 手を伸ばすとリンはホースを地面に落としておれを抱き締めた。
「会いたかった、リン…たった一週間会えないだけなのに、バカみたいに会いたくて仕方なかった」
「同じく俺も」
「嘘だ。リンは家族で温泉旅行を楽しんだんだろ?おれのことなんか忘れて」
「なんだよ、家族にやきもちか?本当は家族で行くよりミナと行きたかった。今度いつかふたりだけで温泉に行こう。露天風呂付きの部屋でしっぽりとさあ…」
「言う事が親父過ぎる。スケベ心丸出しだよ」
「ミナだって欲しくてたまんないって顔してるくせに…やる?」
「…」
 断れるわけがない。
 だって、おれの方が絶対に間違いなく…リンを欲しがっている。
 それを言うとリンは嫌味ったらしく
「ミナの絶対と間違いなくは信用ならない。何故ならば…ミナは肝心なところで降参してしまうからね、この天邪鬼」
 近づいたリンの口唇の熱さにおれは有頂天になる。
 その熱さをおれは「恋熱」と呼んだ。







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原田さんはもう出てこない…(;^ω^)
そして、どうでもいいらくがき…




ミナ挿絵2



水川青弥編 「焦点」 5 - 2010.01.25 Mon

5、
 高校二度目の夏季休暇が始まった。
 去年と同じように、学院の特別講習の受講の為、おれは実家へは帰らず寮から学校に通う毎日だ。
 去年と違うのは授業の選択だ。
 国立大学希望者は文理に関係なく全科目の講習を受ける事になる。
 今年は午前も午後も拘束されるわけだ。 
 温室でリンと会う回数は少なくなるが、仕方がない。
 どっちみち…
 毎週末ではないが、月に二回はリンのマンションへのお泊りコースを選んでいる。

 同室の根本先輩は恨めしそうに、
「君たちはいいなあ~恰好のラブホテルがあってさ。時間もお金も気にしなくてもいい。何より親がいないなんてさ。これ以上の環境はないじゃない。真に羨ましい限りだよ」
「先輩は寮全室がラブホテルじゃないですか。節操がないんだから。それに…ケンカでもしたんですか?保井先生、近頃機嫌悪いみたい。とばっちりが来る前に早く仲直りしてください」
「保井は僕を縛り付けたいだけなのさ。僕は敬虔な使徒じゃないもの。移ろいやすいカナリヤさ」
「…カナリヤって、籠の鳥の比喩ですよ。むしろ自由の象徴はカモメでしょう」
「やだよ。みなっち、チェーホフのかもめ知ってる?剥製になるんだよ。自由のために羽ばたいた一羽のかもめが男のために剥製にされる悲しさよ…いつだってか弱く美しい者は虐げられれる運命なんだ」
「…」誰がか弱く美しい…だよ。
 確かに根本先輩はそこらへんのアイドルよりかわいいって言われてるけれど。それに「かもめ」ってそんな話だったか?
 ベッドに突っ伏して泣きまねをする先輩の背中を見ながら、ストーリーを追いかけてみるが思い出せない。いいや、後でリンに聞こう。
 おれはいつものように勉強道具だけを持って部屋を出る。
「じゃあ、行ってきます。届けには実家に帰りますって書いてますのでよろしくお願いします」
「かわいそうなぼくを見捨てていくの~」
 先輩はオーバーにうつ伏せて泣き叫びながら、手を振ってくれた。
 …実にイイヒトだ。
 
 リンのマンションには何度も出向いているけれど、どうしても慣れない。
 いつの整然としててキレイだし、なんだか人が住んでいると滲み出る汚れというものが極端に少ない。それを問うとリンは「こう見えてもおれは案外神経質でね。見えるところに余計なものを置きたくないんだよね。それにひとりだから使う空間も少ないじゃない。俺、家では煙草も極力吸わないしね。だから綺麗なんじゃないかな」
 その言葉の裏に存在するリンの孤独が悲しい。

 晴れた真夜中、広いベランダでふたり寄り添ってよく夜景を見た。
 現実の世界、勉強や受験や家族に縛られている自分自身を解放できる気がする。生きているしがらみにも寄せ付けない別空間にいるようだ。
 それを言うとリンは笑って「縛られていると思っているうちが花。何かに縛られている方が…本当は楽なのかもしれない…」
 そういうリンの横顔は孤独だ。

 おれはいつだってリンの中に孤高ともいえる他の者とはかけ離れた感受性、情感、思考、思想に惹き付けられている。
 誰に対しても物怖じしない天性の人懐っこさは、おれみたいな内気で臆病な人間には輝ける存在だし、それでなくてもあの容貌だ。すれ違う半分の人はリンをもう一度見るために振り返る。
 表情豊かに雄弁に想像と空想世界を語りつくすリンに、おれも同時に飛翔している気分にさせられる。
 それとは逆に、自分の決めた範囲内に決して近づけない距離感。気に入らない者への無慈悲なまでの冷淡さ。
 おれにさえ見せようとしないリンの本当の心の内には一体何があるのだろう。

「8月には兄貴が帰ってくるから、ミナを家には呼べないけど、我慢してくれよな」
 終わった後、リンのベッドで身体をくっつけ合いながらリンは言う。
「わかった。良かったね、お兄さんが一緒ならリンも寂しくないだろう」
「…」
「なに?」
「もっと、寂しがって欲しいっていうか…残念って顔するのかと思ったら、意外だった。本音は解放されて嬉しい?」
「そんなこと、あるわけがなかろう。たださ…」
「なに?」
「…なんでもない」
「言えよ」
「もう眠たいからさ。眠ろうよ。ここに来なくたって、おれ達はいつだって温室で会えるじゃないか」
「見事にはぐらかされた…まあ、いいけどね」
 リンはおれの頭をぽんぽんと叩きながら、サイドテーブルの灯りを消した。

 本当は…嫌だった。
 ここに来れなくなるのも、このままセックスを続けてその果てを見るのも…リンのお兄さんがリンと一緒に過ごすのも、そういう嫉妬を感じる自分も…全部、全部おれは…
 怖くて仕方なかった…

 リンの傍から離れたくない。だけど…しつこくして五月蝿がられる、ちょっとでもおれを煙たがる、そういう素振りをリンがしたらと思うと…とても恐ろしい。
 本当にこんなものを抱えて、おれは一生を過ごさなきゃならないのか?

 こんなに恋焦がれる奴の…おれを抱き締めるこの腕がいとおしくて、いとおしくて怖いんだ…



 お盆休みで一週間ほど実家に帰省した。
 相変わらずの親バカの愛情はほどほど頂いておき、昼間は図書館や街をぶらついた。
 隣町のCDショップでリンに勧められたジャズの曲を探していたところ、後ろから女の声で名前を呼ばれた。
「水川くん?」
 振り向くと、どこかで見た顔。
「?」
 おれは頭を捻った。
「もしかして忘れちゃったの?」
 女は訝るようにおれを睨んだ。…あ、そうだ。
「原田?」
「そう、やっと思い出した?中学卒業してまだ二年も経っていないのに、つれないね」
「…」
「ね、ちょっとお茶でもしようよ。私、青弥のこと、気になっていたんだ」
「…」
 面倒臭いと思いつつも、断る正当な理由も思いつかないおれは、中学時代惹かれていた原田理香子の後ろを付いていく。
 





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逃げちゃ駄目だ!逃げちゃ駄目だ!逃げちゃ駄目だ~!!
と、言うわけで、週3回は更新…2回は更新がんばります(;´▽`A``
さっさと書かないといつまでも終わらんことに気がついた。…おそい。つか早く先進みたい





悩めるミナちゃん
一話に一個、何か描いてみることにした。

結局、過保護… - 2010.01.22 Fri

「彼方の海より…」のリュウとメトネ。

魔界の四天王リュウ・エリアードは魔物からも人間界からも怖れられている魔界の王…のはずだが…

ryuu1

「いいか、メトネ。あそこに見える岩穴には近づくなよ。妖魔が潜んでいるかもしれないからな」
「…はい」
「わかってんのか?」
「だって…リュウの傍に居れば、怖いものはないのでしょう?」
「…」萌え…

ryuu2

リュウとメトネの年齢差は350年ぐらいあるのだが、なんせリュウは人間でいう21歳の外見なので、人間であるメトネ21歳と見かけは同年齢である。


文章も書かなくてこんなことしてて…ごめんちゃい(*゜-゜)ニコッ

水川青弥編 「焦点」 4 - 2010.01.19 Tue

4、
 6月の後半に催される文化祭に、クラスの美術部員から出展が少ないからと、絵を頼まれた。
 それでなくてもこの文化祭のポスターは美術の授業で全員に描かされた文化祭のポスターのうち、おれが描いた絵が選ばれ、印刷されたそれがあちこちの壁に貼られている始末なのに、これ以上美術部に関わるのは、折角歯止めしている絵への執着を再び燃やしかねないと断ったが、顧問の先生にまで頭を下げられ、仕方なく引き受けた。
 休み時間や放課後リンが部活で温室で会えない時は美術室に残って、水彩画を描いてみた。
 回りの美術部員は油彩に取り組んでいて、その存在感の違いに圧倒される。
 はやり水彩と油彩では比較にならない。
 先生は試しに油彩をやってみるように薦めるが、それに手をつけたら後へは引けない気がして躊躇してしまう。
 おれは描きかけの温室の花を水彩で色を塗り、提出した。

 文化祭ではおれらのクラスは珍しくも無い喫茶コーナーだった。
 リンのクラスは焼き鳥やで繁盛していた。リンの姿を辺りに探してもいない。
 「詩人の会」は教室を借りて朗読会をすると言っていたからそこだろうと足を向ける。
 飲み物は出るものの150円も出して詩を聞く奴がいるのかと訝るが、様子を伺ったら人が一杯で驚いた。
 俺はリンから貰ったチケットを出して後ろの方に立った。(実は椅子は全く空いていなかった。しかも父兄というか…ほぼおばさんたちと校外の女生徒らが占領していた…そして壁に張り付く男子学生…おれも含めて…)
 これはもしかしたら…リン狙いじゃないだろうか…と、不信に思っていると、その当人が教壇に恭しく立ち、そして詩集を手にゆっくりと読み始める。
「ジャン・コクトーの詩集から…」
 部屋に広がる心地よいテノールの声…

「嬉しいこともしすぎると 僕らの幸福に傷が付く」
 (彼はここでおれにむかって軽くウィンクをした。)
「僕の命の蜜蜂よ、どんな悪事を君らはしたか?
君らの空ろな蜜房が 罪の棲家である以上
僕はもう 幸福になりたいなどと 願いもしまい…」
 

 6月恒例の三者面談に親は来ない。と、いうか呼んでいない。
 トップでいる奴に先生も親も何かを問う必要があるだろうか。
 あなたたちの望みどおりの大学を受験し、しかも当然合格する一定の成績を持つ俺に、一体何を求めるのだろう。
 担任の藤内先生も親が来ないことに文句を言わない。おれに対しても今までどおり成績を下げる事のないように油断なく頑張れと言われた。
 ただ…「水川は恋に浮かれても、ちゃんとやる事はわかっているから見直したよ」と、韻を含んだ言い方をされた。
「…浮かれてなんかいません」
「そうか?近頃の温室の花はなんだかやけに艶めかしい色をしている気がするけどなあ」
 藤内先生はおれ達が温室で何をしているのか知ってるのか?
 まさかリンとあんな事やってるところまで見られているとは思わないけれど…
 やっぱり学校内でやるのは控えたほうがいいな…
「ちゃんと世話をしているから、花も綺麗に咲くんですよ」
「恋の花も綺麗だろうが、いつか枯れる時が来る。それを見計らっておけよ」
「恋愛の未来を予測して計算どおりにいって、何が見つかるんですか?それはおれが求めているものなんでしょうか?…おれは計算どおりに出した答えを望んではいません。違いますか?」
「いや…驚いたね。水川がそこまではっきり言い切るなんて。恋の力は偉大だな」
「先生。おれはあいつを好きになったことを後悔することはないと思います。もし…花が枯れてしまっても…根があればまた育ち咲くかもしれない」
「そうだね。季節と共に花は姿を変えるが、その花の名前は変わらないもの…水川という花も、自分を失うことなく変わらずに咲き誇って欲しい」

 放課後、温室でリンを待っていると、リンも面談だったらしい。しかも担任の藤宮先生になにか言われたらしくえらく機嫌が悪かった。
 おれが藤内先生に言われたことを言う間も無く、おれにしがみ付いてくる。
 乱暴にキスを求めるリンを責める気には到底なれない。
 おれはリンを抱き締めた。
「ねえ、リン…おまえが好きだよ。どんなリンでも、おまえに触れられていられるだけで、おれは自分の存在価値を見出してしまうんだ…それってある意味究極の幸せって気がしないか?」
 リンは俺を見つめ、そしてゆっくりと見事な笑顔をおれに向けた。

「愛してるよ、ミナ」

 その言葉は俺の中で形になる。
 どんな形にも属さないシンプレクテック多様体。
 さあ、美しい座標を描け。







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藤宮紫乃編 「Resolve」 1 - 2010.01.16 Sat

「Resolve」
1.
  世の中には美しいものとそうでないモノがある。
  そして中身の良し悪しに関係なく、大方の者は見てくれで判断する。
  即ち器量が良ければ、心映えも美しかろうと…
  しかし、その実は美貌を嵩にしたロクデナシという輩が大方。

 ここに器量が悪い上性格も悪い奴と、器量は良いが同じくらい性格が悪いという奴がいるとする。
 さてどちらを取ると言われたら(友達に、恋人に、連れ合いに、ただ一夜の遊びにでも、と、なんでもいい)どちらを取る?
 …いうまでもなかろう。
 それが人間本来の生理的心理というものだ。
 言い換えれば器量の悪い奴はすべからく器量のいい奴よりも人間性はマシだというなのかも知れない。
 (それはそうと、人間性が何かと問われたら…哲学の本でも読んでろ、と、言うしかない。どうせしがない私立高校の国語教師である俺に深い哲学思想など知る由もない)
 そう、美人は三日で飽き、醜女は三日で慣れるそうだからな。
 更々見た目に惑わされなきように…

 さて、結論はでたはずだが、もう一度問おう。

 美しいモノとそうでないモノ、どっちを選ぶ?

 勿論、俺は器量のいい方を…だ。
 まあ、俺も俗人で一生を終わるということだ。

 目の前に開かれたページに写る、紛れもなく神に選ばれたというしかない極めて非の打ち所のない美貌の奴の顔を見ながら、俺は自分のふがいなさを知るわけだ。
 彼はただそこに居る。こちらを向いて瞳を合わせているだけ…
 この深淵なる黒眼の密やかなまことしやかにしめやかなる睡蓮の美。
 男というより女に見えなくはない。薄化粧は施しているが、卑しくは見えず、それが蠱惑さや可憐さ、延いては優雅で上品にさえ見えてくるんじゃ、然もありなん。
 このフォトの目的は理に叶っている…と、言わざるを得ないところが…虚しい。
 そいつの名は「宿禰凛一」
 俺はこいつの担任教師。
 そしてこいつに良く似た美しい兄は、俺の元恋人。
 バカ兄貴の慧一は、この悪魔さえ陥落させそうな美貌の弟に一方通行の懸想をしているわけだ。
 弟の方は、理に従い、その容姿とは裏腹の、性格の捻じ曲がった奴。しかし、残念ながら極めて珍しくその美に敵った翼と一途な心を持ち合わせている。
 それがまた俺にはとりわけ気に入らないところで、バカ兄貴が執着するのもすべて弟の見た目の美だけじゃないという理由になる。
 そして俺は偏執的なブラコンの兄、慧一に未だに未練がありすぎて、誘われでもしたら、いつでも脱ぎます!という覚悟で居る、バカの上をいく大バカ者なのである。
 なげきつつ ひとり寝る夜の 明くる間は…だ。

 時々冷静になり、
「俺はなんという兄弟に取り付かれているんだ?もういい加減おまえらに関わるのは嫌気が差す。やめた!や~めた!」と、叫ぶのだが…(勿論人気のないところで、である)

 一度は手にした男を諦めきらずにいる自分自身にも呆れるが、その上をいく慧一には怖れいる。
 なんせ彼は生まれてからずっと、血の繋がった弟だけを愛してきたという筋金入りのバカである。いやいや、肉親の愛情ならば由としよう。が、彼はこの美貌の弟を自分のものにしたいという甚だ不謹慎極まりない感情を持てあまして26年、大概解脱してもよさそうだが、煩悩は強し。即ち近親相姦という大罪の畏怖と妄想の念に囚われているわけだ。
 男同士であることと兄弟で愛し合うことの二重のタブーに、百戦錬磨の慧一が今更恐れおののいているとは思えないが、彼にとってこの弟、凛一はどうしても開けられないパンドーラの箱なのだろう。
 彼は知っているのだろうか。あの箱に残ったものが何かを…まあ、俺としては 敢えて言う気はサラサラ無いが…
 神よ、どうぞ、あの兄弟にはその美貌に似合った不幸せを…だ。

 そうは言っても。

 学習準備室の扉を叩く音が聞こえ、許可を与える間も無く、ドアが開けられた。
 その生徒は少し不機嫌な顔つきで俺の机に近づき、「何か用?」とぶっきらぼうに尋ねながら俺の前に座った。

「コレは何だ?」
 俺は今まで眺めていた雑誌の写真をボールペンで指した。
「え?」
 写真よりも幾分健康な男子高校生に見える宿禰は、自分の載った雑誌を見て驚いた声を出した。
「バイトは学校の許可無くしては禁止。無許可でしかもこんなに堂々とエロイ顔しやがって。退学になっても知らんぞ」
「バイトじゃないよ。お金は一円も貰ってない。知り合いの写真家から頼まれてモデルになったけど、雑誌に載せるなんて聞いてない。第一こんなの、慧一が許すわけないだろう」
「…」
 写真の専門雑誌だし、一般の人の目に触れることは少なかろうが、あの慧一の事だ。愛弟のこんな姿が世の中に晒されていると知ったら…目から火が出る。そのとばっちりは確実に俺に来る…損な役回りと来たもんだよ。
「三田川さんったら酷いなあ。職権乱用だ。個人情報勝手に出しやがって…訴えてやる」
 腕を組んで憤慨の剣幕だが、どうも真剣味が足りない。…こいつ役者だ。
 9つも上の大人としてはこんなガキに翻弄されるのは真っ平ゴメンだ。
 バカ兄貴の二の舞にはなるかよ。

「じゃあ、宿禰は知らなかったんだな」
「うん」
「一応この雑誌の会社に連絡して、厳重注意はしておく。今度からこういう事をする時は、学校の許可を得ること。わかったな」
「は~い」
 少しだけ頭を傾げて笑って応えるその顔…参ったね。
 この写真の顔と同じじゃないか…当たり前か、本人だった。

 とてもじゃないか、俺も男だから、綺麗なものには惹かれるさ。
 それが毒であろうと、悪魔の導きであろうと、味わいたくて仕方が無くなる。
 怪我は承知の上。

「用は済んだからもう戻っていいぞ」
 この顔に騙される前にさっさと追っ払うとしよう。
 目も合わさずしっしっと手で帰るように命ずると、宿禰の奴は「慧一から伝言があるよ」と、言う。
「え?」
 俺は思わず顔を上げ、凛一の顔を見た。
 その魅惑的な顔が俺の耳元に近づき、こっそりと囁く。
「なーんつってね」
「!」
 まんまと騙された、この悪党め!
「おまえ…平常点零点だからなっ!」
「慧があんたに用事なんかあるわけないだろう。兄貴にあんまりしつこくすんなよ」
 悪魔は笑いながら去っていった。

 なんというこの忌まわしき世界。
 あいつの顔がちょっとでも曲がっていたら、目が小さかったら、鼻が低かったら、怒りなど沸きやしない。すべてはあの顔が悪い。

 俺は机の上の雑誌を手に取り、宿禰の写ったページを破り捨てようと手にかけた。
 しかし、優美に笑うその写真に何の罪があるだろう…
 あんなガキの挑発に乗ってどうするよ、藤宮紫乃。
 大人は大人らしく狡猾な手を使わしてもらう。
 見てろよ、凛一。
 慧一に逐一バラしてやる… 

 その夜、俺は慧一にメールした。

 ありあけの つれなくみえし 別れより
 暁ばかり 憂きものはなし

 直ぐに返事が来た。

 風さそう 花よりもなほ 我はまた
 君がおもいを いかに問やせむ


 …辞世の句かよっ!


rinniti


「Resolve」2へ
藤宮紫乃編「早春散歩」はこちらからどうぞ。 1へ



癒されろ - 2010.01.15 Fri

腐脳でいつもお疲れさんの皆さん、
たまには浄化されてみてはいかがでしょうかあ~

左から嫁 
ルカの」日記

この漫画はヤフブロのプロフィールに毎日一コマ一こまアップして描いたものだが、描いてて自分が癒される。それはこのルカというキャラがとても優しく純粋に動いてくれるからだ。
このおかげで今自分はまるっきりBL小説を書く気が失せているwwwあかんがな(;^ω^)

一番好きなコマは暗闇の中を懸命に飛んでいるコマ。
彼はバタ足をしないと羽が動かないので、足をばたつかせて飛ぶ。
ナルヴィが心配していることもわかっているから早く帰ろうと懸命だ。
そして家に近づくと、玄関の外でルカの帰りを待つナルヴィ…
ルカは嬉しくてたまらない。
本当はエコカーをナルの従弟にあげたことも謝らなくちゃならないのに、そんなことも忘れてナルヴィの腕に抱かれて幸せだ。

そしてこのルカは…

こいつだ!
ルカたん2

こちらで読めます!
R-a gardian sprite へどうぞ!

それではまたリフレッシュされた腐脳でがんばりくだされ~




宿禰慧一編 「オレミユス」 10 - 2010.01.12 Tue

梓

10、
「…け、い…けい…」
 彼が初めて呼んだのは、俺の名前だった。

 凛一はハイハイもあまりせず、七か月もするとひとりで立ち上がり、さっさと伝え歩きを始めた。
 俺と梓は子育ての本を頼りに凛一を育てていたから、ハイハイをせずに歩き始めると腕の筋力が劣りがちになると本に書かれているのを見つけ、すわと凛一が立ち上がる前にうつ伏せにさせ、ハイハイを強要する。と、凛一は泣きながら座り込み、そのままお尻を上げ立ち上がってしまう有様。仕方がないので多少本と順番が違っていてもいいかと、梓と顔を見合わせ、凛一の思うままにさせていた。
俺たちの心配をよそに、ハイハイを覚えないまま、10ヶ月も経たぬうちに凛一はひとりで歩き始めた。
 
 俺と梓は右と左に別れ、離れて座らせた凛一をそれぞれに呼ぶ。
「凛、こっちにおいで。兄さまはここだよ」
「凛、こっちこっちよ。梓の方がお得よ」
「何がお得なんだよ」
 俺は梓に向かって詰問する。
「そのうちおっぱいがでるわ」
「…」
 いつの話だよ。まだ9つのガキのクセに。
「凛、おいで。梓姉さまのミルクなんて当てにならないよ。僕の方が凛の為になる」
「なんの?」
 今度は梓が納得できないという顔で俺を睨む。
「何回も凛を高い高いできるし、夜中だって梓みたいにすぐ疲れたなんて言わずに、朝まで抱っこしてやれる。お風呂にも大きくなっても一緒に入れる」
「ひどいわ。私だってずっと凛と一緒にお風呂に入るもん!」
「大人になったら男は女とは入りません。凛、男同士仲良くしようね~」
 ヨチヨチ歩きの凛一は、身体全体を懸命に揺らせ、きゃっきゃっとはしゃぎながら、俺の方に向かって歩いてくる。
「ほら、ごらん。やっぱり僕の方が好きなんだよ」
 前方に紅葉のようなかわいい両手を突き出して歩いてくる凛一を抱きとめようと、俺は両手一杯広げる。
「おいで、凛。大好きだよ」

 俺の指先が届く瞬間、リンリンと鈴の音が鳴った。
 凛一は即座にその音のする方を向く。
 梓が凛一のお気に入りの鈴のおもちゃを手にして手招きしている。
「凛、おいで。こっちの水が甘いわよ」
 あと僅かで手に届く凛一の身体はくるりと方向転換。そのまま梓に向かって行った。
 一目散におもちゃへ向かった凛一の身体は、梓の広げた両手にするりと納まった。
「ずるいぞ、おもちゃで気を引くなんて」
 俺は多少本気で憤慨しながら、凛一を抱く梓を睨んだ。
「凛にはお兄様よりこのおもちゃの方が大事ってことだわね。ねえ、凛」
 凛一を抱き締めた梓は凛の頬に嬉しそうにキスをする。
「…」
 おもちゃを手にして喜んでいる凛一を見たら、反論する気が失せた。

 ちぇっ、おもちゃがなかったら、凛一は僕の方を選んだのに…


 一歳のお祝いを過ぎると、マンマ、ブーブーなど色々な言葉が増えてくる。
 凛一は訳のわからない言葉で俺たちを楽しませてくれた。
「ねえ、かあさま。凛はいつになったら私達の名前を呼んでくれるの?」
 さっきから眠そうな凛一は母に抱かれると、さほどむずがらずにスヤスヤと寝息を立て始めた。
「そうねえ…もうすぐかしら。あなた達も最初は凛一と同じように片言が長かったから、凛もそうかしらね」
「最初にかあさまを呼ぶのは仕方がないとしても、早く私を呼ぶ凛の声を聞きたいわ。そうだわ、にいさま、賭けをしない。にいさまと私、どっちを先に凛が呼ぶか」
「あら、でも梓の名前は言いにくいから、慧一のほうが早いんじゃなくて」
「じゃあ、あーちゃんって呼ばせようかしら。それなら簡単でしょ?」
「あーちゃんって…柄じゃない」
 先に呼んで欲しいからって、そこまで拘るのか?
 妹の負けず嫌いに呆れながらも、最初に俺の名を呼んでくれればいいと、俺は言葉に出さずに祈った。


 家族全員が揃った日曜の午後だった。
 あの頃は、母の身体を気遣って、休暇でも外出などはせず、家の中でのんびりと過ごすのが我が家の休日の過ごし方だった。
 両親と俺たち家庭の団欒の中心にはいつも凛一がいた。

 ひとりで歩くのも随分上手くなり、広いリビングをここやあちらと歩き回る凛一を目で追っていると、ふいに凛一は俺の方を向き、「け、い…けい」と、片言の声を発しながら俺の方に向かって歩いてくる。
 俺は驚いて心臓が止まるかと思った。
 …言葉も出ない。
 凛はニコニコ笑いながら「けい、けい」と何度も俺の名前を呼ぶ。
 夢じゃないかと辺りを見渡す。両親も梓も驚いた様子で凛一の行方を見つめている。

「けい」と、呼ぶあいらしい声音。
「凛…凛一」
 俺はこの小さい身体を、俺に向かって歩く俺の光を受け止め、そして抱きしめた。
「けい、慧…」
「うん、そうだよ、凛。凛一の慧だ。慧だ。大好きだよ、凛…」
 俺の光、愛、希望、喜び…俺のすべて。
 おまえを離さない。

「あら、にいさま、泣いてるの?名前を呼ばれただけなのに」
「そうだよ。だってとても嬉しいから」
 俺はこぼれる涙も隠さずに言う。凛が小さい手を広げ、俺の頬に流れる涙をものめずらしそうに触っている。
「…そうね。きっと…私も凛から名前を呼ばれたら、きっと泣いてしまうわ」
「梓…」
「にいさまが羨ましい」
「梓だってすぐ呼んでくれるわよ」
 母が梓の頭を撫で、優しく宥めている。
「うん」
 母の膝に顔を埋めた梓の頬に光るものは、悔しさの涙だろうか、それとも俺の気持ちと同じように感じていたのだろうか。

「慧、けい」
 俺の腕の中で凛一は何かの呪文のように俺の名前を繰り返し、繰り返し呼んだ。


「…い、ケイイチ」
 背中を叩かれて、俺は夢から覚めた。
 見慣れた風景、書き散らした紙の散らばった机と目の前には真っ黒のスクリーンセーバー。ああ、いつもの研究室だ。
 …いつの間にかうたた寝していたのか。

「連日の徹夜で疲れているようだな、ケイイチ」
 同級生でもあり同じ研究グループのジャンが、目覚まし代わりのコーヒーを差し出した。
「ああ、でも目処はついたよ。あとはたわみの計算を纏めれば来週には提出できる。それはそうと何か用かい?」
「教授がお呼びだよ」
「この時間に?何事だろう」
 俺たちの間で名前を言わずに教授といえば、ブライアン教授を指す。
「悪い話じゃなさそうだったぜ。ご機嫌はよさそうだ」
「じゃあ、この間のコンペに出した近代都市デザインの結果が良かったのかな~。あれはリバティライセンスも兼ねているから、いい点数を貰えたらありがたい」
「就職の話は色々来ているのだろう?」
「ああ、一応心積もりはあるんだが…最終的に決断するのは、もう少しかかりそうだ」
「日本に帰るんだろう?」
「…なるだけね」
 俺は散らかした机の上をあらかた片付け席を立った。机の端に、この間の家族旅行の時に撮った4人揃った写真が飾ってある。俺の隣で穏やかに微笑んでいる凛一がいる。
 つい口元が緩む。
 ドアに向かう俺は、なんだか笑いを堪えているジャンを不思議に思った。

「なに?」
「いや、さっきのおまえの寝顔。嬉しそうな顔していた。なにかいい夢でも見てたのか?」
「別に…忘れたよ」
「そうかい。俺はまた可愛い弟の夢でも見ていたのかと思ってたよ」
[…」
 幸福な午後のまどろみを壊した張本人が言うなよ。

 ドアを閉める間際、机の写真の凛一が俺を呼んだ気がした。
 何も知らぬ赤ん坊の時の声ではなく、少年とも大人とも言えぬ不確かな、そして鮮やかに明瞭な声音で俺を呼ぶ。

「慧、俺の慧、愛してるよ」

 俺は微笑んで応える。

 ああ、俺も…ずっと…おまえが誰を愛そうが、ずっとおまえだけを愛しているよ、凛。

 
 彼が最初に呼んだ名前は、俺の名前だったんだ…






9へ /11へ
宿禰慧一のお話はこちら「イリュミナシオン」 
リンミナシリーズはこちらからどうぞ。目次へ


ただいま~・おかえり~

R-a guardian sprite その3 - 2010.01.06 Wed

「R-a guardian sprite」は 「悩まない男」の7月さんとのコラボ作品です。



るかなる7

大腿奥のほの暗いあわいに男が入りこんできたとき、ナルヴィはひとこと、たすけて、とささやいた、ルカ、たすけて、と。
たったひとりのやさしい守護番人、ナルヴィが生まれたときから守ってきた、かれが泣いているときはかならずそばにいてくれた、ナルヴィを泣かせるやつはぜったい許さないから、ずっとそばにいるから。
ずっと? ずっと。
ぼくが死ぬまで? ナルヴィが死ぬまでずっと。
やさしい、可愛い、守護番人。

ちいさなこどものころは抱き枕のようにかたく抱きしめて眠った。
ある深更、いやな夢を見てとびおきたことがある。
いつもかれにぴったりよりそい眠りをむさぼるルカがこのときどこにもおらず、おさないナルヴィは裸足のままでそとへ飛びだした。
夜陰ともとうてい思われぬ、月がまひるのように煌々と照り輝くあかるい晩だった。
そうだ、きょうのように群青の夜空にぽかりと満月のかかる夜だったのだ。
喬木にもたれ、たたずむひとりの男がいた。
なびく銀の髪、青く深いまなこ、見たこともない人間だったが不安にさいなまれ矢も楯もたまらずナルヴィは畏れ知らずにもその見知らぬ男に問いかけた、(ルカは……)
(ルカ?)男が返す。
(ルカです……ぼくの……)
(いなくなったのか?)

こどもだったナルヴィにはこのあとの記憶といってはふつりととぎれたなりで、ときおり思い返すも夢かうつつかもはや判断のつかぬありさまになってしまっていた。
ただいちど会ったきりのトルコブルーの両眼を冠する男は、いま自分の奥深くへもぐりこんできた男とどこか似ている、いや、似ているどころか瓜二つだ、そのものだと、身を裂く苦痛に渾身をのけぞらせ吐息もひっそりと殺すなか、とぎれとぎれに考える。
だいじなぼくの守護者なんです、と、こどもであったから本来ならやすやす口にすべきでなかろうことがらを、あのときナルヴィはあっけなくも吐露してしまった。
ぼくのだいじな守護番人なんです、ぼくだけを見て、ぼくのことだけを考えてくれる、ほかにくらべるもののなにひとつない、大好きな、だいじな、ぼくの。
ぼくだけの。

痛い、ルカ、たすけてくれとまたいった。
からだが裂ける、バラバラになってしまう、どこかへ連れていかれてしまう、吐きそうなのか、気持いいのかわからない、熱いのか死んだように冷えきっているのかわからない、なかで動かないで、こころがはじけそうになってしまうからもう動かないで。
「ルカ」またいった。
「なんだ?」つながっている男はいった、ナルヴィ、そうつぶやいていっそう奥の壁を灼けたもので焦らすようにたたいた。
襞をなぞられて、なぜまた「ルカ」とつぶやいたのかナルヴィにはわからない。
そこにいる? ルカ、そこに? と高々と精神を飛翔させながら目をつぶる。
まぶたの裏にいたのはだいじなかれの変わらぬ守護番人であり、さらには背のたかい銀髪の男のようでもあった。

明けてみれば男はどこにもいない、いつものように寝台のかたすみにかれの守護番人がくるんとちいさくまるまって眠りこんでいるきりだった。
わずかにナルヴィが身じろぎしたとたん、やはり猫さながらにルカはぱちりと目をあける。
いつもはきちんと寝巻を着込んで就寝するかれの主人の、けさはどうしたわけかと思わず目をみはらずにはいられない。
はだかの膚のあちこちに赤い鬱血痕が散っていたし、さんざんに爪でひっかかれたようなあとも痛々しく人目をひいた。
敷布をのどもとまでひきよせ膝をおったナルヴィの脚のうえによいしょよいしょとよじのぼってゆき、ようやく膝頭のうえまで到着すると、「どうしたの?」とみどりの両眼をのぞきこんだ。
なんでもないといおうとして口がこわばり、やがて首をふっておもてをふせた。
「痛いの?」
ううん、とナルヴィはぽつんと返した。
「だれかに撲たれたの?」
「ちがうよ」
「痛くないの?」
「痛くない」
ほんとに? とくりかえし、ナルヴィをいっしんに見あげていた。

そのふわふわと丸い頭部のある一画にナルヴィは気づく。
被毛が乱れ、ぬけおちてもいる。
これはナルヴィのやったことだった。
トルコブルーの男にふかく押し入ってこられたとき、ゆれる銀髪をわしづかみにし、たまらずそれにすがったのだ。
あまりにつよく力をこめたので、美しい銀髪のかたまりがいくばくかナルヴィの手のなかにのこったままになった。
だいじな守護番人、とナルヴィはひとりごちる。
ついでいった、「ルカ。ぼくが好きか?」
答ならすぐに返った。
「好き。すき、だいすき。ナルヴィ、大好き」
これまでも、これからも、ナルヴィが死ぬまでくりかえされるルカのただひとつの、それが唯一の告白だった。





るかなる5




何回読んでも、なんともいえない切さといとおしさがつのるなあ~と…
我ながら愛すべきキャラだと思ったり~
これもひとえに7月さんの魅惑的な文章のおかげだと、(^人^)感謝♪感激(*0*;)☆ :::( ^^)T ::: 雨霰( ̄O ̄)パクッ…です。
できれば、続きを…
あ、そのうち自分で書かなきゃならんか?
変態サドルカ対獣人八十吉、最後の戦い!…なんぞww

R-a guardian sprite その2 - 2010.01.05 Tue

「R-a guardian sprite」は 「悩まない男」の7月さんとのコラボ作品です。



るかなる2

ルカ、と舌のうえでひとこと転がし、みずから吐いたその名がとうてい信じがたいものだとでもいうように、汗と涙とでよごれた顔を狂おしくゆがめ首をふった。
くせのないみどりの髪がばらばらちらばる、トルコブルーの男は少年のうえに深々とのしかかっていたから、みどりの髪と銀の髪とが微妙にまざりあい、美しくも繊細な色彩をたたえて敷布のうえを流れてゆく。
「ちがう」少年はつぶやいた、
「ちがう。おれのルカはあんたなんかと関係ない。
ルカはおれだけの守護番人だ……おれひとりだけを好きな守護者なんだから。
どうしてあんたみたいなやつが……おれのだいじなルカの名を騙ったりするな。
畜生、どけよ。はなせよ、腕!」

だしぬけに兇悪な感情がぶわりとふくれあがり、組み伏せられていたナルヴィは猛烈ないきおいで抵抗しはじめた。
肘を曲げ思いきりあいてをはねかえそうとし、腹にちからをこめ膝をおって男の腹部に食いこませようとした、が、それらはことごとく封じこめられそれなりけりになった。
どだい体格に雲泥の差があるので、なにをどう足掻こうがまったく甲斐がない。
からだのしたで暴れ出した少年をおもしろそうにながめていた男は、しまいに平手でぱちんとナルヴィの頬を撲った。
いさめるためにゆるく叩いたにすぎなかったのだが、ナルヴィは衝撃のあまり彫像のようにかちりと凍りついてしまう。
息をつぐのもわすれトルコブルーの両眼につながれたまま、がくりと脱力した。
ちいさな獣さながらだった少年の憑きものが落ちたようなかわりように、トルコブルーの男がまたちらりと笑う。

どうした、と頬をゆがませ、「もう抵抗はやめたのか」
ナルヴィにしてみれば、こんなおとなの男に殴られたことが衝撃だったのだ。
たしかにこの男のふるまいは無法このうえなかったろう、しかし少年もあいてを、というより他者というものを侮っていた、おとなの男というものをあまりに軽んじていた。
愕然とし、ついでかれを襲ったのが恐怖だった。
いまさらのようにさきほどの口付けを思い返す。
みじんも躊躇というものがなかった。
あたかもこれはみずからの所有するものだから、なにをどうしようが嘴をはさまれるいわれはないのだといわんばかりの傲慢な口付けだった。
自分の甲斐のない抵抗を、ほのぐらいランプのあかりを背負ったままさもおかしげに見おろしているこの男は。

男のながい指先がナルヴィののどもとにかかり、ついで襟ぐりからするりと衣の内側へともぐりこんできた。
なにをどう抗弁するいとまもなく、左手で胸もとのしっとりとした膚を味わい、右手でむすばれていた袷の紐を二つ三つとたやすくほどいてしまった。
上着とシャツとをいっしょにはいでしまうと、体温はたしかに維持しているが体液は凍りついてしまったような不均衡きわまりない上体があらわになった。
衣は腕のところでわだかまったままだったから、たくまずしてそれが拘束衣のようなぐあいになっている。
胸もとの赤いちいさな飾りを淫靡に弄られても震えをかこつばかりで動くこともできなかったが、男の口付けが平らかな胸から腹へ、さらにくだって解かれずりおろされたズボンの内側へとうつっていったとき、はじめて「いやだ」といって身をよじり足掻いてみせた。

「なにがいやだ」トルコブルーの男はささやく、「いままであれほどおとなしかったものを、なにをいまさら」
カッと顔面に朱をそそぎナルヴィは敷布の波からずり上がろうとしたが、むろん男の片膝が両の大腿をくいとめていたからかけらものがれようがない。
男は笑った、額の印がますますうっすらと浮きあがって見えたのが怖ろしかった。
「おまえのだいじな……いいか、これはさっきのおまえ自身のことばだ、ナルヴィ。
おまえのだいじなルカがおまえをこうして手をつくして愛してやろうというんだ。
反抗なんざされたいとは思わないね。
それとも、また叩かれたいのか。乱暴にされたいのか。
もっともおれはそれでもいっこうにかまわん。
おまえがなにをどう懇願しようが、おれは自分のしたいことをする」
「ルカじゃない」ナルヴィはうなった、なおもくり返したがそれは耳障りに割れてぱきりと欠け落ちた。
「ルカじゃない、ルカなんかじゃない……おれのルカは……」

ルカだ、と男はさえぎった、
「おれが、おまえのルカだ。
おまえが生まれたときからそばにいてずっと守ってきた、おまえだけのことを考える、おまえ以外のものなら死のうがどうしようがかまわないと思っている、おまえの命期がつきるときがきたらおそらくともに消滅する道を選択するだろう、おまえだけを求めるルカだ。
おれがルカなんだ。
さあ、これでおれは百遍もくり返したか?」
ナルヴィは力なく首をふる。
かれの大腿がトルコブルーの男の肩に高々とかかえ上げられた。


るかなる4



その3に続く。



ルカはLUKAと書くかもしれないが、敢えてRUKAとしてみた。
だから発音はリュカに近いのかもしれない。
勿論、題名の「R」はルカのRです。


R-a guardian sprite その1 - 2010.01.04 Mon

「R-a guardian sprite」は 「悩まない男」の7月さんとのコラボです。

一昨年、ヤフーブログ「heavenward」で企画した「みんなで作るゲームのオリキャラ」のひとりナルヴィ・セラのお話です。
№89にナルヴィの紹介はありますのでお暇な方はどうぞ。

そのアルター(というか守護霊)のルカとナルヴィのBL的な関係は、キャラが生まれた時から考えていましたが、なにしろルカは変態した「絵にもかけない美しい男」と、自分で言ってたため当時は描けませんでした。

年末、恒例のひとコマ連載「ルカの冒険日記」を描きながら、今なら描けるかもと思って美形ルカを描きました。
皆さんに喜んでもらい、訪問された7月さんも非常に興味をもたれ、色々とお話をしました。

7月さんの書かれる小説は独特な美意識の世界があります。
そして現代、ファンタジー、それぞれに全く違う文体で書かれたり、雰囲気ががらりと変わったりと、万華鏡のように色合いが違う。

ルカとナルヴィのBL話は最初の頃から考えていましたが、これは絶対に18禁になるな~と思い、自分では書けないと諦めていました。
そこで7月さんになら、絶対私が納得できる物語にしてくれるだろうと、お願いしましたところ、快く承諾して頂き、今回、すてきなコラボ小説をお目にかけることができました。

文章はすべて7月さんの創作です。
私の想像通り、またそれ以上にこの世界を魅力的に書かれてあります。

絵と文章を三日間、楽しんもらえたら嬉しいです。

それではどうぞ、お楽しみ下さい。



るかなる1


すき、すき、だいすき、ナルヴィと。
ほんとにすきだと、くりかえしくりかえし可愛い声でたったひとつのことばを、またはそのかわりを愛するナルヴィのために。
ナルヴィのためだけに。
みどりの髪と目とをもつかれの、それはただひとりのやさしい守護番人だった。
生まれたときからともにいた、物心ついたときにはもう猫によく似たこのひとならざる者がみぢかにいてかれを守っていた。
かれを愛して、愛して、愛して、けしてそばを離れない、かれのためだったらなんでもする、ときとして困惑しないでもない、いまでこそ負けん気のつよいナルヴィだが、おさないころはよく泣くいじめられっ子だった。

いじめっ子にしていれば恰好の、こどもならではの嗜虐心をそそるカモだったわけだ。
ナルヴィのために森のきわで薬草を摘んでやっていたこの猫が、どこから聞きつけたものだかかれの泣き声とともにおそろしいいきおいで砂を蹴立ててすっとんできた。
(ナルヴィ、あっちむいてて)猫はかれに命ずる、わけがわからぬなりにすなおに少年は涙でよごれたちいさな顔をくるんとそむける、目をつぶったナルヴィの耳朶にとどくのは男の子たちの息を呑む音、悲鳴と喚声、そしてにぶい音がずんとひびいたと思ったらあとはしんとしたもので、もういいよと猫が声をかければ、いじめっ子たちはあわれななりでそろいもそろってくたりと地によこたわっていた。
猫はナルヴィのためだったらなんでもする。
きっと世界とひきかえにすらしただろう。
それでみじんも後悔しない。

ナルヴィが17になるやならずのころ、この猫のもうひとつのすがたがかれの眼前に提示された。
いまから思えばやや反則的に提示されたといえなくもなかった。
少年にはなにがなんだかわからない。
満月の晩、猫は、猫は、とあわててかけずりまわった、いつもうるさいくらいそばにひっついていた守護番人のすがたが今晩にかぎってどこにも見あたらぬ。
村から森から谷間から泣きそうになりながらふらふらとさがしまわった。
疲れ果て不安に顔をゆがませ村のはずれの一軒家にとぼとぼ帰りついたナルヴィをむかえたのが、銀髪の、すばらしく美しいトルコブルーの両眼を冠する長躯の男だった。
見たこともない男、おそろしくきれいな男。
険のあるきついおもて、ふてぶてしい口唇、眦はこわいほど切れ上がっている。しろい額にはくすんで赤い印がうっとりと記されている。

月の煌々と照り輝く夜空を矩形にきりとった窓框に優艶によりかかり、いまいましいほど高飛車な語調で「どこをほっつき歩いてたんだ」と口角をつりあげた。
なれなれしいことこのうえない男にやっとひとことだけ、だれだ、とつぶやいた。
「『誰』だと?」また、誰だと? と不遜にくりかえした。
しまいになにがおかしいのだかくつくつ笑いだした。
ナルヴィは不審に堪えない。かわいた声音で出ていけと吐きすてた。
トルコブルーの男は肩をすくめ、窓框からながい身をおこし、そまつな寝台のきわにたたずむナルヴィのそばまでけれんもなくすたすたと歩みよってきた。
とんと少年の胸を指先で突き、ぐらりと重心をうしなわせた。
覚えず寝台に倒れこんだ少年にふかぶかとのしかかり、トルコブルーの男はまたも「誰だって?」とくりかえした、容に似合った美しくもふかい響きをもつ声だった。

「おまえの守護番人はいったいどこにいる?」
うたれたようにナルヴィのおもてがゆがんだ。そんなことがあんたになんの関係がある。
「守護番人はどこにいると訊いているんだ」執拗に男はくりかえした。
「これまでつかずはなれずそばにいたおまえの守護番人が、いまおまえのそばにいないと。
そしておれがここにいる。
おまえの守護番人はだれだ? いったいなんという名をもつ?」
少年の唇が凍る。なにがいいたい、とあまりにまぢかにせまるトルコブルーに目眩をおこしそうになりながらやっと息を継ぐ。
こたえを聞くのがおそろしかった、またはこたえならすでに聞いたことがあるような錯覚さえ胸奥で渦巻いていた。
知っている、知っている、自分は知っていたとナルヴィは涙をとじこめたみどりの両眼のおくでちぎれたことばを追いすがった。

「ルカ」やっといった。
そうだ、とトルコブルーの男がいらえをかえすまえにもう口付けが施されていた。


その2に続く。

るかなる3



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新年のご挨拶。 - 2010.01.01 Fri

2010年が始まりましたね。
おめでとうございます。
喪中なのでおおっぴらにできませんが…
お年賀はリュウとメトネで。

リュウメトネ

「彼方の海から…」のリュウとメトネはそのうちに第二部が始まるつもりですが、その時はこんな感じの小説扉絵ですね。
ちょっと色塗ってみました。
本格的な厚塗りはまたそのうちに。

では、今年もよろしくお願いします。





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サイアート

Author:サイアート
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少年愛を中心としたシリアス重視なオリジナル作品でございます。

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