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2010-07

彼の花々 - 2010.07.30 Fri

花々

う~ん、やっぱ横長はネットでは無理だな(;・∀・)
縦にすべきだけど、それでは意味が違ってくるので…

ミナのいいかげんな野の花に…
愛情の掛け方の違いがあるなあ~(;´∀`)

暑くて何も書く気が出ません。

来週までテキスト更新無理ですな。
クリスマスまではあんまり事件もないから読むほうも適当でいいですよ。
さらっと駆け抜けていきます。

しかし…

はあ~あっちい(;´Д`A ```


あ、慧一だけの奴のあぷ
慧一3

彼の憂いは一生続くもの。
だが人生と言うやつは楽しいばかりではなく、対比するように不安と憂いの連続であるから、彼の凛の対する憂いは幸せではないだろうか。(愛する対象が常にあるものとして)

水川青弥編 「フラクタル」 4 - 2010.07.28 Wed

4、
「…水川は俺のことをどう見ている?」
「え?」
「真面目な優等生…って思ってない?」
 どう見たって桐生さんは品行方正にしか見えないけれど…
「はい、思っています」
「今はそう見えるかもしれないけど、高校に入るまでは目も当てられないぐらいに荒んでいたよ。家庭環境の所為もあるけど、どこかで自分を壊したかったんだろう。悪い奴らとつるんで多少の悪事にも加担したり…家出をしては連れ戻され、恨めしいと泣く母の顔を見るのが辛くてまた家出をするの繰り返し。未来なんか見えなかった。…俺を救ったのは社会人の男の人でね。俺はまだ14,5のガキで相手は二十以上も離れた大人ではあったけれど、俺達は愛し合っていた。本物の恋をしていたよ。でも、彼が海外に転勤が決まって…当然別れ話になった。俺はどこまでも付いて行くって必死で頼み込むが向こうは許さない。道理だろうけれど、その頃の俺には彼が居ない世界なんて考えられなかったんだ。高校一年の夏だったよ。捨てられたと思い込んだ俺は自暴自棄になった。寮生だったが学校もサボって街をうろついては誰とでも寝ていた。学校の先輩とも誘われれば抱かれていたよ。そういう俺を美間坂は見るに耐えなかったんだろうな。寮の同室でクラスメイトでもあったから…彼は俺を裏庭に引きずりこんでこう言った。『俺はおまえを軽蔑する。おまえは自分の価値さえ測ろうとせずに自分を貶めるくだらん奴だ。俺の目の先におまえのような奴がいるのが俺には我慢ならん。粛清してやる』って脅すんだ。俺は何されるのかわからずにビビるばかりでね…」
 温和な桐生さんからは想像もできない過去だった。
 綺麗に整った容貌、それでいて控えめで大きな怒号ひとつ声に出すこともない。闊達で有無を言わさぬ美間坂さんの後ろにそっと控えている姿しか俺には思い浮かばない。

「怖くて震える俺に真広はこう言った。『そんなにセックスがしたいのなら、俺がおまえの相手をしてやるから他の奴とはやるな。俺は男は初めてだが、おまえなら勃ちそうだから抱いてやる。俺と付き合ってマトモな人間になれ。俺がおまえを救ってやる』って…」
「…それはすごいな…美間坂さんってそこまで暴君だったんですか?」
「そうだよ。笑えるだろう?でも、俺にはその力が必要だった。だから真広は身を挺して俺を救いあげたんだ。そこに愛はあったんだろうか…いや、真広の思いは俺への哀憐と同情だっただろう。俺だってそうさ、真広を愛して付き合い始めたわけじゃない。その時は真広に救われたけれど、俺は俺を捨てた男をずっと慕っていた。それを白状しても真広はかまわないと一蹴するんだが、俺は真広だけを愛せない自分を責め続けたよ。真広だけに繋がれていたいと願うのに、心のどこかで未だに彼のことを思い続けている…そんな自分が許せなくて別れてくれと頼んだこともあった。けれど真広は決して手を離さなかった。『どんな千尋でも俺は受け入れてみせる』って言うんだ…俺は幸せだと思う?」
「思います。だって本当の愛を桐生さんは与えられている」
「だけど、俺は真広に与えていない。お互いにすべてを与えないと本物じゃないのかな…本物じゃないと一緒に生きられない?」
「…わかりません」
「慈しみあう愛は恋のように激しくは無いが、優しくなれるものだよ、水川。俺はね、昔の宿禰を知っている。
彼を見たのは『サテュロス』っていうジャズクラブだ。昨年の体育祭に来てた連中だけど…知ってる?」
「はい、ちらりと見かけたけど、言葉は掛けられなかった。なんか…太刀打ちできない雰囲気だったから」
「だろ?彼らは独特だもの。でも中学生の宿禰は全く違和感なく溶け込んでいた。と、言うか、他の誰とも違った存在だった。彼は誰も寄せ付けない孤高でありながら、欲をそそる魔女みたいに魅惑的だった。俺も遠目から眺めるだけだったよ。彼は特殊だと言える。あれが水川のことを遊びだと言えばそうだろうと誰もが一笑して終わるような性質(たち)だったよ。だけど、今の宿禰は昔とは違う気がするんだ。水川の言うように百パーセントの愛情ではなくても宿禰が水川を愛しているのなら…それは本物になる可能性もある。勿論先のことは俺にもわからないけれどね…彼を信じ続けられるかどうかは…水川次第だよ。もし傷つくのが怖いなら、水川から別れを切り出せばいい」
「…おれから手を離すなんて…無理です。そんなこと…できやしない」
「…だったら水川、宿禰を信じることだ。もしかしたら、宿禰が求めるものを水川は持っているのかも知れない」
「リンが求めるものって…なんですか?」
「当事者でもない俺がわかるはずもないだろう?それを見つけることが水川のやるべきことだろう。それは君を…救うことになるんだろうからね」
 
 桐生さんのくれた宿題は難題だった。だがおれはそれを解き明かさなければならない。リンを失わずに済む何かを探し出せなきゃならない。
 おれは最後に桐生さんに問うた。
「もし、今、昔の彼が桐生さんの前に現れたら…桐生さんはその人を選ぶんですか?」
「…いや、もう俺には真広の存在の方が大きくなってしまっている。だけど…まだ彼のことを思い出にしてしまう程に整理もついていない。情も潜んでいる。それがいつか結晶になった時、俺の胸からそれを取り出すのは真広の手であって欲しいと願っているんだ」

 
「青弥は彼女でもいるの?」
「え?なに?唐突に」
 夕食のテーブルで母親と向かい合って食事を取る。
 父親はいつもの残業で帰宅するのは10時過ぎだ。
「だって帰ってくるたびどこか大人びてる気がするから」
「…別にいないよ。おれ受験生だよ。勉強でそれどころじゃないし…」
「それはそうだろうけれど…彼女が出来たらお母さんにも教えてね。どんな子か楽しみにしているわ」
 本当のところは…真実なんか何ひとつ聞きたくないんだ…
 言ってもわかるまい。
 おれにもわからないよ。なんでこんなにリンを好きなのかって。


 お盆も過ぎ、寮に帰る日の昼近く、携帯のベルがなる。
 着信音でリンだとわかった。
「リン?」
『ミナ、まだ家に居る?』
「うん」
『今日、寮に戻るんだろ?』
「昼から帰るつもりだけど…」
『俺、おまえの家の近くまで来てるんだけど、今からそっち行っていいかな?』
「え?ええっ!い、家に?」
『うん、で、一緒に鎌倉に帰らないか?…なんか都合悪い?』
「い、いや…いいけど…あ、場所わかる?」
『うん、大体…住所がわかってるから行けると思うよ。じゃあ、次の駅で降りておまえんち探すわ』
 切れた携帯を暫く持ったまま呆然とする。
 リンが…ココへ来る…
 え?
 なにをどうすりゃいい?

 慌てて階下へ降りて母親に告げる。
 母親も驚きながらも、訝っている。 
 そりゃそうだろ。おれが友人を家に招き入れるなんて生まれて初めてかも知れないんだから…
 しかも…そいつはおれの恋人で…

「その子ってどういう子?寮の子?クラスメイトなの?成績は優秀なの?志望大学は?お昼は食べるのかしら?ねえ、青弥、何か用意しなきゃならない?てんやものでいいの?それとももっと上等の?」
 あまりにも俗悪な審問にウンザリだ。
 おれはまだ見ぬ客を値踏みする母親を嗤いながら、こっそりと呟く。

 おれのリンはこの世で最も美しく誰にでも誇れる比類ない恋人であり、
 おれ達は不健全性的行為をこの上なく楽しんでいる関係ですよ。

 十分後に玄関に立ったリンの姿に見惚れた母親は、言葉も出なかった。
「これ、つまらないものですが、お盆で実家に行ったので。金沢のお土産です」と、リンは愛想笑いを浮かべて紙袋を母親に渡した。 
 母は恐縮しリンから受け取る瞬間微かに手が触れると、舞い上がった母はお土産の紙袋を落すというTVでしか見たことのない一連のリアクションを披露してくれた。
 おれはもう我慢できすに、声を出して笑い転げた。







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リンミナシリーズはこちらからどうぞ。目次へ

モデル立ち


水川青弥編 「フラクタル」 3 - 2010.07.27 Tue

3、
 その夜、寮に帰ったおれは、夜遅く、同室の三上が眠ったのを確認して、隠しておいたリンの破れたリボンタイをそっと机の引き出しから出してみた。
 
 あれから、俺たちは結び付けられたリボンにお互い身動きが取れないと閉口しながらも、楽しんだ。
 二人並んで座り、おれはスケッチを、リンは読書をしようとする。
 絵を描くにもつい左手を動かすから、そうなると隣で本を読んでいるリンがぎゃっと叫ぶ。ページを開こうとした手が弾かれて、破いてしまったのだ。
「どうする?これ図書館の本だぜ?」
「テープじゃ駄目かな?」
「逆に目立つな。このままにしておくか。破れたといってもちょっとだしな」
「…いや、十センチは重症の部類に入る。だけど、本が本だろ。誰も埴谷雄高なんか読まないよ」
「そうか?コレ、アングラではウケてるって話だぜ。確かに難解だが、俺みたいな異端者には丁度いい」
「…」
 自分のことを異端って言うリンが可愛かった。

 その後、まあ、色んなことをしている最中も、繋がれているリボンが何をするにも邪魔になった。
 片腕しか使えないことの不自由さは勿論、繋がれた方の腕はふたりで協力しなきゃ快感も得られないなんて…やってる最中、なんでこんな不便なことをしているんだ?この縛り付けているものを外すのは簡単じゃないかと、恨めしげに口にしたが、リンは一向に構わなかった。
 片方の腕だけで器用におれの腰を抱くと、そのまま混ざりこんだ。
「手首も身体もお互いを結びつけ欲を食い散らかしている。こういうのを一心同体っていうのかね」と、悪どい顔でねめつけ、おれの目じりを舐める。
 皮肉のひとつもこの状態で言えるわけが無い。
 片方の腕でリンの背中に必死でしがみ付く。
 燃える吐息が夏の最後の夕暮れで紅く見える。
 あれは情念というものかも知れない。

 帰り際、リンとおれを繋いだリボンを解き、リンは一瞥も無くゴミ箱に捨てた。
 おれはリンには黙ったまま、このリボンを拾って自分のものにした。

 今はもう薄っすらとしか残っていない左手首の痕を撫でる。
 明日には消えてしまうものだが、この肌に甘い痕が刻まれてしまったことに違いは無い。
 これだけじゃない。おれの身体の至る所まで、リンという人間の情念が刻み込まれている。
 それに触れるだけで、たちまちのうちにおれの肌は燃え上がる様に、作り変えられたのだ。
 別に後悔はしていない。
 が…
 リンは…一体おれという人間をどうするつもりなのだろう。


 八月になって、おれは世田谷の実家へ戻った。
 両親は久しぶりに息子と暮らす日々を味わいたかったのか、喜びを隠しきれないでいる。
 おれの部屋のエアコンは新しく買い換えられ、部屋の隅にコンパクト冷蔵庫まで置かれてあったのには驚いた。
「階下まで降りなくていいようにね。青弥の勉強の手を止まらせちゃいけないもんね」と、ペットボトルを冷蔵庫の中に入れつつ、母親は自慢げに言う。
 愛情のベクトルが何か間違ってないか?
 …まあ、いいけどさあ…

 こういう場合、家に居ても落ち着いて勉強なんぞしてられるか…と、なるから、朝早く自宅から脱出して図書館へ直行。時間が来れば夏期講習の為に予備校へ通う。終わったら、残って自習か、街をふらつき、夕食ぎりぎりに帰宅する。
 夏期講習には中学の時の同級生の顔がちらほらと見えたりもするが、お互い会話をするわけでもない。それはそうだろう。ライバル関係以外の何者でもないのだから。

 盆も近まった或る日、予備校のロビーで掲示板を見ていたら「水川?」と、声を掛けられた。
 振り向くと懐かしい顔があった。
「桐生先輩!」
「ここの夏季講習を受けていたのか?」
「はい。母親が勝手に申し込んだんですよ。それより先輩はどうしてここに?」
「俺はここのアルバイト講師。折角だし、時間があるなら話でもしないか?昼飯まだだろ?おごるよ」
「はい。ご馳走になります」
 人見知りのおれだけど、穏やかで外連味の無い桐生さんには何故か逆らえない。
 強がる振りも自分を飾ることも、この人には通用しないというか…
 結局は大人ってことなのかな…

 近くのファミレスでランチを食べた。
 先輩の恋人の美間坂さんはお盆が近いので、京都の実家に帰省していると言う。
 美間坂さんの実家は大きな総合病院で、美間坂さんは跡取りなのだが、本人は継ぐつもりはないらしい。
「先のことなんてわからないよ。特に男同士の付き合いなんてさ、証なんて何ひとつないんだから、感情が違えば簡単に別れられる」
「…根本先輩も同じようなことを言ってました。だけど意外だな。桐生さんは美間坂先輩との付き合いをそんな風に考えているんですか?一緒に住んでいるんでしょ?それでも不安になりますか?」
「いつだって不安だよ。世の中に不安のない恋愛なんてあるのかな?それは男女の結婚でも同じだろう?他人同士が愛によって一緒にいるということは、不安定なものなんだよ。それでも男女だったら家族ができる。それは血の繋がりになる。一種の聖域だな。…残念だが俺達には持てないものだ。それでも人は愛を求め、それでしか生きれない俗物でもある。だから、美間坂に愛されている限りは付き合っていくつもりだが…だが、世間の事情って奴が美間坂を壊すというのなら、俺は自ら引くことには拘らないよ」
「…諦めるんですか?美間坂さんを」
「愛を貪っているばかりでは生活は成り立たない。俺だってこうやってバイト費を稼いでいるんだ。授業料以外に親に世話にならなくていいようにね。本当はゲイの息子に授業料だってやりたくないのさ。だけどこんな息子でも血の繋がりがあるのだから、仕方ないのだろうね。幸せになりなさいと言う」
「…」
「充分にありがたいと思っているよ」
「おれは…恵まれすぎているのかな。今の今まで親に有り難味を感じたことはなかったけど…」
「目の前に出された食べ物がどんなに好物でも、押し付けられると美味くは感じない。人とは全く持って複雑だね。水川は間違ってはいないよ。愛情とは自分の感情だ。その感情の表し方は一様ではない。友情、恋、家族愛、憎しみ…どれも愛には違いない。愛するなと言うのは構わないが、それを受け入れるかどうかは本人にしか決められらない。その逆も然り」
「…」
 桐生さんの言葉はどれもこれも俺にはなぞ掛けのようで釈然としない。それでも否定する気が起きないのは、どこかで受け入れてしまっているからだろう。
 この人は大人だ。俺にはわからないこともこの人にはわかるのだろうか…


「桐生さん」
「ん?」
「リン…宿禰のことなんですが…」
「リンって呼んでるんだろ?リンでいいよ」
「おれにはリンがわからない。リンはおれを愛してると言うけど、リンの語る未来におれの姿は無いんです。それって…おれと一緒には生きていく気はないってことでしょ?勿論、桐生先輩の言うとおり、恋に保障なんてない。感情だって移り変わるものだ。だけど、おれは、おれにとってリンは今まで生きてきて一番大事な…何事にも代えられない人で、この感情ももう他にはありえないぐらいリンに繋がれていて…これを失ったらおれは…生きてはいけないぐらいに思っているのに…。リンは違う。おれを愛していると誓うのに、おれみたいに必死じゃない。おれがいなくても…」
 リンには慧一さんがいる。
 切っても切れない血の繋がりだ。しかも家族愛だけではなく、彼らには…愛という情念がある。
 おれは…ふたりの絆の強さにどうしても勝てる気がしないのだ。
 
 



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桐生千尋20です!

適当な桐生さん…すんまそん(;´∀`)

毎度時間がかかってすんません。もっと短くしたいんだが…なんかこの人も大切なキャラな気がしてしまって…




水川青弥編 「フラクタル」 2 - 2010.07.22 Thu

水川花

2、
 夏休みが近づいた。
 リンと俺は暇があれば顔を合わせる。
 やることは決まっているが、さすがに目の前に迫った受験の嵐には到底逆らえようもなくご他聞に漏れず勤勉になる。
 リンはこちらが引くぐらいに気合を入れて勉学に打ち込んでいる。特に英語への意欲は半端なく、TOEFLのスコアも八割は超えている。
 留学するつもりなのかと問うと、曖昧に「そうなるかも知れない」とかわす。
 大学も一緒に行くと言ったじゃないかと責めると、「勿論そのつもりだよ。でも俺、建築家になりたいんだ。将来は兄貴と一緒に独立した事務所を持って共同でやっていきたいって思っているんだ」と、言う。
 それではおれはどうなる?おれはリンと一緒の仕事はできないし、離れてしまわなきゃならないのか?…リンは困った顔をする。「俺の勝手な予想図だよ。未来なんてわからないだろ?今はミナと一緒にいることが、俺には大事なんだ」
 そう言って柔らかくおれを抱き締めるリンは卑怯だ。
 反論なんか言えなくしてしまうから。


 夏休みが始まった。
 だが生活はあまり変わらない。
 寮と学校への往復の繰り返しだ。
 三年もなると補習は朝から夕方までぎっしりと詰まっていて、余暇なんでまるで無い。
 周りもそれが当たり前のように励むから、おれも取り残されないように机にしがみ付く。
 リンは「ミナは勉強しなくても余裕でトップじゃん」と笑うが、トップはトップなりの意地とプライドがある。
 大体そういうリンがおれにとっては目下一番のライバルなのだ。彼は上位五位以内に食い込むほどに成績が伸びている。
 他の事は置いといても勉強ぐらいはリンに勝っていなきゃおれの存在価値というものが損なわれるというものだろう。

 
 今日も朝から蝉の声をBGMにチャート式を広げる。
 昼からはエアコンが入る教室も、午前中はなんとか凌げるだろうとエコ節電だ。
 いやもう充分汗が流れているんですが…私立のクセにケチるなよ、と隣の奴が愚痴っている。
 右に同じだが、凌ぎやすい午後は大量に眠りの森で遭難するから、こちらの方が受験戦争らしいじゃないか。
 ぼんやりと外を見ると、中庭の噴水も形ばかりだが水を上げている。水不足でもないのに、蛇口を絞めた所為か、今日は勢いがない。勢いは無いが噴水としての責任なのか、暑さを凌ぐ為とばかりにその役目を果たそうとしている。その懸命さがなんとも可笑しくて口元が緩んだ。あれはおれに似ていないか?
 教壇へ目を移す。
 古文の和歌が黒板に書かれ、その横に文法が事細かく記されている。
 理系であっても国立のセンター試験では国語は必須である。あまり得意ではない古文の補習にも参加しなきゃならない。

 教壇の上では古文担当の藤宮先生が和歌集の抜粋をあげて説明をしている。
「きみにより思ひならひぬ世の中の人はこれをや恋といふらむ。この意味は?誰かわかるか?」
 手を上げた生徒を指し、その答えを聞く。
 聞かなくてもこれくらいならわかる。
「…まあそうだな。あなたのおかげで知ることが出来ました。世の中の人はこれを「恋」と言うのでしょうか。と意訳するがこの裏にはもっと深い意味がある。
この作者は在原業平だが、彼は男前で恋多き人だ。女は勿論男にもモテたそうだぞ~。その彼がこの恋こそは真実の恋ではないだろうかと苦しい胸の内を吐くんだ。真実の恋とは突き詰めると苦悩の連続なのかもしれないな」
 藤宮先生は何を思ったか、おれの方をちらりと目をやり、すぐに黒板へ向かった。

 真実の恋は苦悩の連続か…
 おれは…苦しい恋をしているのかな。
 それともまだ苦しみが足りないのかな。
 いや、この恋は真実ではないのかもしれない。
 だとしたら、「真実の恋」になるにはどうしたらいい?
 リンはおれとどうなりたいのだろう。
 リンはおれと歩く未来を想像してはいないのだろうか。
 いや、リンばかりに任せるんじゃない。
 「恋」はどちらかが傾いてはいけない。
 ちゃんと釣り合っていなきゃ、負担になる。
 それは恋の苦悩とは違う苦しみになる。


 週末はリンのマンションに出かけるのも日課となる。
 一緒に食事の用意をするおかげで、おれも料理のレパートリーが増えた。最も主な味付けはリンが担当するから、おれの味とは言えないのだが。
 目の前でおれの作った明太子スパゲティを美味いと喜んでいるリンがかわいい。材料を混ぜただけなんだが…
 
「夏休みはずっとこっちに居ようと思っていたんだけど…」
「どうした?」
「かあさんが勝手に予備校の夏季講習に申し込みやがって、5万もかかったから絶対受けろって言うんだ。横暴すぎるよ。おれはここの補習で充分なのに」
「そんなのは口実さ。かわいい息子に帰って欲しいからに決まっているだろ?たまには帰って顔をみせてやれよ。後で後悔するぞ」
「…リンはいいね」
「何が?」
「自由だもん」
「俺だって心配してもらいたい親が欲しいと思うことがあるよ」
「そりゃ…そうかもしれないけど…親の愛情って重すぎると反抗したくなるよ。縛り付けるなってなる。リンはならない?」
「え?何が?」
「慧一さんはリンをとても愛してるだろ?その思いって親と同じじゃないか。重く感じたりしない?」
「…昔はそういうこともあったね。反抗期だった頃かな。いちいち干渉するなって腹が立ったよ。兄貴は本当に心から俺を心配してくれているのにさ…それをわかっててもその時はうぜえってなってたよ。今のミナと同じだな」
「そうだよな」
「でも…今は俺への愛情がどんなに深くても重荷には感じない。受け入れてしまえる器が出来たって感じかな。居心地いいよ」
「そう…」

 穏やかに笑うリンがいる。
 リンはこんな顔で笑っていたかな…
 その顔を見ていると、なんだか胸が苦しい。
 彼はおれを愛してくれているのだろうか。
 慧一さんの愛を受け入れる器があるといった。
 おれの愛を受け入れる器は…慧一さんよりも大きいのか?
 それとも…
 痛い…苦しい…
 これが真実の恋であるのなら、おれは幸せなのかもしれないな…


 月曜の放課後、温室へ行くとリンがリボンタイを手に持っていた。
 どうしたの?と聞くと、クラスメイトとじゃれていて、倉庫の窓の釘に引っ掛けて破れてしまったんだ、と言う。
「もう使えないな」
「そうだね」
 おれは赤いリボンタイの破けた部分を確かめた。
 縫ったらどうにかなりそうだけど…さすがにリンがミシン掛けをするとは思えない。

「そうだ、いい考えがある。ミナ、手を出してごらん。左手」
「え?」
 リンの言うままに左手を出した。
 リンはおれの手首に破れたリボンを一度巻いて結び、その残りを自分の右手に結んだ。
 繋がれた手を呆然と見ていると、リンはにこりと笑い、
「ほら、運命の赤い糸の代わり、赤いリボンだ。これでミナとは離れられないね…なんてね。ガキっぽい?」
「…」

 窓から差し込む夕日に映えたリンの身体が眩しすぎたのだろう。
 胸が詰まって言葉が出ない。
 こんなもの子供だましだと、とても笑えない。
 おれはただ…
 ふたりを繋ぐ赤いリボンが、一生結びついたままでいたらと…
 それだけを願っていた。

 




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夕日の温室



今週はこれだけ?なのか?…(; ̄ー ̄A アセアセ・・・
イラストの色塗りは…3分かかってねええ!

三周年 - 2010.07.21 Wed

イラストブログ「heavenward」が今日で三周年を迎えました。

その記念イラストです。

記念2

「heavenward」では二年前に「みんなで作るゲームのオリキャラ」という企画で、色んな絵師さんからキャラを作ってもらいました。

その数は130以上にも及び、これからも増えていくつもりです。

その中で私が作ったキャラは70以上はあるでしょうか…数えてないから知らないんですがね(;´∀`)

で、一応物語がはっきり決めてるキャラで今回描きました…え?ひとり企画関係ない奴がいる。

凛は特別参加です(;´▽`A``描き易いからねww

興味がある方は右のリンクからどうぞ~



三年前の今日、ブログというものを始めて立ち上げたのですが、その時の瞬間は今でも鮮やかに目に浮かびます。
その前日まで全くやる気はなく、勢いで始めた気がしました。

親しくさせて頂いていたネットの友人からの薦めがありました。
その方の小説サイトにお邪魔して、色々こちらからも絵やテキストをメールで送らせてもらい、感想を頂いてました。
その時点では自分でネットの世界に飛び込む気持ちは全くありませんでした。
何故なら、全く知らない他人との交流というものを深くするのが非常に怖かった。
知り合っていつかは別れる。それが簡単に出来るネット世界で、どう自分の気持ちを組み立てていけばいいのだろう…自分の中でそれが一番のネックでした。
私は非常に人見知りのない人間ですが、正直者なので、あまり褒めません。持ち上げません。嘘は苦手です。
そういう人はネットには向かない気がします。

しかし、ネットの友人から「このテキストは皆さんに見ていただいてもらったほうがいいのでは?」と、背中を押して頂き、始めたのが「heavenward」でした。
大量にあったイラストを初めはアップしていく中で、いつでも気持ちはいつか小説を載せたいという思いでした。
SAIというソフトに出会い、イラストも色んなやり方や描き慣れていくうち、やっとBL小説ブログに辿りつけました。

イラストありきのテキストブログです。
本来ならブログではなくサイト式にしたかったのですが、まだまだサイトを作る知識が足りません。
サイトのいいところは交流目的ではなく、自分の発表主体ということでしょうか。

地方に住んでいることでオフ会なども参加できるわけでもなく、またチャットに参加したいわけでもなく、ただ己の道を進んでいくだけの、自己満足の世界ではあります。

いつまで続けられるか先のわからないブログでもあります。

今は「グリーンハウス」に踊らされている自分ですが、これが終わったら、暫くはテキスト書きは休みたいですね。
と、いってもこの話はまだまだ先が長く、今年中に終わらせればいいかな~という感じなのですが…できるだけ早く終わらせられるよう頑張ります。

応援ありがとうございました。

これからもよろしくお願いします。




夏便り - 2010.07.16 Fri

梅雨ももうじき晴れそうです。

暑中お見舞いです。

リュウとメトネです。

いつものバカップルです。

知らん人は、右側の「彼方の海より…メトネ日記」を読んでちょーだい。

いらんとおもうがフリーです。


暑中お見舞い

字と花とサインが邪魔な方用。

リュウメトネラブ1

いつも挿絵を描いているが挿絵を言っても私の場合は絵が出来て話を考える方が圧倒的に多い。
だからどっちかと言うと、漫画で描きたいけどその能力もないし、コマ割するには字が多い…から話と絵を書いている状態だろう。

ずっと絵が好きだったけど、自分の才能のなさにも気づいていたからプロなんて考えもしない。
だが自分が作った物語はいつも自分が描いたキャラでしかなかった。

沢山の小説を読んできたけれど、表紙絵に惹かれ手に取った本は多い。
また、内容は面白いがこの挿絵ではどうも気に入らない、と、いう事も多かった。
そうなるとその小説の価値はグンと下がる。(自分の中で)
だからヘタに小説に絵は描かないほうがいい、と、思った時期もある。
それほど小説に描く絵の存在価値は大きい。

私は自分の物語は自分の描くキャラを前面に出して読んでもらう方式を取っている。
いささかも他のキャラで借り出されないように、自分のイメージを植えつけたい。

キャラは自分の一部分だ。
だから産んで、自己を確立するまでは試行錯誤だ。
だから自分で立って歩いた時はとても嬉しい。

つまり、絵を描く。生み出すということはとてもエネルギーの要ることだ。
私は人様の絵に簡単に絵を描く思いにはならない。
その人の描いた小説にはその人のイメージがあるはずだ。
それを私の手で壊すのは気が引ける。
その人の思い通りに描ける自信などない。
「読んでイメージを掴んで好きに描いていいから」などと言われた日には、ケンカ売っとんのか?と、頭を捻ることもある。
人様のキャラを描くことは、私には非常に重いノルマである。
だから近づくために頼まれた時はできるだけ具体的なイメージが欲しい。
身長は?体重は?歳は?血液型は?性格は?髪型は?受け攻め?家族構成は?
これくらいわかれば大体描ける。
話は読まなくても描ける。
それくらいの力量がなきゃ、人に描いてやる気持ちなんか沸かない。

小説を書く人以外は、その人の100パーのイメージなんて表現できるもんじゃない。
だから近づけるタメの書類を頂戴というわけだ。

勿論、そうではなく、読んで感じたままのイメージを知りたいから描いて欲しいという方もおられるだろう。
しかし、それは欲張りではないか?
「読んでイメージが沸きました。是非描いてみたいです」と、言うのはわかるが、「描いて欲しい」と強請るのは違う。
「描いて欲しい」と「描きました」の意味は180度違うのだ。

まあ、私ひとりが思っていることかも知れんが…






んで、ミナ編一行も書いてねえええ

来週までおやすみください~

つかリュウとメトネもそろそろ書きたいね~


ミナのスケッチブック1 - 2010.07.15 Thu

ミナのスケッチブックには凛のスケッチが沢山あります。
普段は植物や風景しか描きません。
人物は凛だけです。
フィルターかかっているので、モデルの凛くんもえらい美形です。

おれが描いたの



…ミナになりきるとミナのイラストより、ミナの視点で見た凛を描きたくなる。
凛編では凛ばっか描くのになあ~
まあ、凛はナルシストだから仕方ない。

で、ミナ編は時間かかります。
はいったら、時間経過は早いです。
一気にクリスマスまでいくかもしれんな。

宿禰凛一編 「HAPPY」 11 - 2010.07.14 Wed

凛一裸

11、
「腹は減ってないか?」
「…わからない」
「じゃあ、なんか簡単なものを作るから、部屋で休んでいなさい」
「嶌谷さん、店は?もう行く時間じゃない?」
「忘れたのか?今日は定休日だよ」

 いつものゲストルームで用意された部屋着に着替えた。
 しばらくして一人用の土鍋を載せたトレイを手にした嶌谷さんが姿を見せる。

「ほら、おじやだ。ありあわせの即席だけど美味いぞ。これを食べて少し眠りなさい。眠れなかったら安定剤をやるから」
「心配させてしまってごめんね、嶌谷さん」
「俺に気を使う必要はないからな。いつだっておまえの味方だ。今は休みなさい。話は明日ゆっくり聞くから」
「俺、疲れてるのかな…自分ではわからないけど…」
「相当に参ってる顔だな。真っ青だ。本当はな、宗二がおまえと一緒に帰ってくるって言うんで、少し懸念したんだが、今はあいつに感謝だな。おまえを独りにさせないで良かった…さあ、少しでもいいから食べなさい。無理にとは言いたくないが、何か腹に入れておいたほうがいい」
 
 嶌谷さんに勧められるままにお椀によそわれたおじやを口にした。食べる前までは食欲なんか無かったけれど、喉を通った途端、少し食べる気になった。折角俺の為にこさえてくれた嶌谷さんへの感謝の気持ちが大きい。
 食べる様子を安堵した面持ちで俺を見つめる嶌谷さんに、これ以上甘えてもいいのだろうか…
 
 なんとか食べ終わり、安定剤を飲んでベッドに横になる。
「…嶌谷さん、俺ね…俺たちね、したんだ。セックスをした。何回も…数え切れないくらいした…」
「そうか…良かったじゃないか。凛一が望んだことだろう?」
「うん…だけど、はっきりわかったんだ。…俺は慧一から離れられない。慧一もそう…俺たちは依存しあってしか生きられない者って…」
「それは幸せなことじゃないのかい?」
「そうとも言える…でも…でもね、嶌谷さん。俺は…片方の手で慧の腕を掴みながら、もう一方に繋がれた手を、…ミナを離したくないんだ。…俺って強欲でどうしようもなく多情だよな。地獄の火の雨に打たれても文句は言えないね」
「その罰はゲイだったら誰もだろ?凛だけじゃないさ」
 力なく笑う俺を嶌谷さんは優しい目で見つめてくれる。
 
「あさましや こは何事のさまぞとよ 恋せよとても生まれざりけり」
 目を閉じた嶌谷さんは、ふいにそう呟いた。
「…和歌?」
「これは宗二朗がまだ若い頃、高校生だったかな。俺にくれた恋文だよ。源俊頼という歌人の和歌だ。
『これほど人を好きになって、こんなに情けないザマになってしまった。恋をしろと命じられて生まれてきたわけでもなかろうに…』」
「…いい詩歌だね」
「なあ、凛。誰だって自分でもどうしようもなく人に焦がれてしまう時期があるんだよ。前にも言っただろう?
恋をする気持ちに罪はない。人を愛する想いは生きていく糧になるのだからね。だから恐れてはいけないよ。おまえの慧一くんに対する想いも、その恋人への気持ちも本物であるなら、尊いものだと思っていいんだよ。幸いなことにおまえはまだとても若い。辛いことや悲しいことが待ち受けていようと怯むんじゃないよ。勿論回避する道もあるだろうがね…俺の凛はちゃんと立ち向かっていく気概があるんだぜ?負けはしない。悩んで苦しみぬいてちゃんと歩いていけば、道標は見えてくる。…大丈夫だ。宿禰凛一は未来に歩ける者だよ。さあ、お眠り…次に目を開ける時は、おまえの未来はちゃんと輝いている」
 
 俺は何も言えなかった。
 欲しかった言葉をくれる嶌谷さんに感謝するしかなかった。

 
 翌朝、起きてリビングに行くと、嶌谷さんはソファで朝刊を読んでいた。
「おはよ」
「凛、起きたのか?こちらに来てきてごらん」
 近づいて嶌谷さんの横に座った。嶌谷さんは俺の顔を手の平で撫で、にっこりと笑う。
「顔色も随分良くなった。なにか食べるだろ?」
「うん…」
 温めるだけにして用意してくれてたんだろう。食卓につくとすぐに一人用の土鍋が出てきた。
「え?またおじや?」
「いや、鍋焼きうどん」
「なんで?」
「宗二の好物だから。あれが泊まると朝は大抵コレ」
「へえ~そういや宗二朗さんが見えないけど?」
「ああ…帰ったよ。仕事に追われるのがあいつの仕事みたいなもんだからな」
 目の前に座る嶌谷さんは、少し気だるそうに煙草に火をつけた。
 なんとなくだがわかってしまった。

「…嶌谷さん」
「ん?」
「ココ…首筋にキスマーク残ってる」
「え!…」
 煙草を銜えたまま、あわてて首筋に手をやる嶌谷さんがかわいい。
 でも押さえるところは逆なんだけど…
「嶌谷さんと宗二朗さんってそういう関係なんだってわかっちゃいるけどさ…改めてなんというか…いとおしいね」
「あいつめ…残すなっていつも言ってるのに」
 照れ隠しで宗二朗さんを非難する嶌谷さんもなんともかわいい。
「やっかみだろ?嶌谷さんを俺に寝取られるって思ってるんだよ。嶌谷さんはそんなことしないのにね。宗二朗さんもあの顔でかわいいもんだな」
「…あいつは業が多い奴だ。仕事も家にも縛られてるがそれを受け止める器がでかいのさ。俺には全くないからね。しかし、色も多くてね。気に入ったものは手当たり次第だ。自分は好きなことをやって、それでいて俺には厳しいんだからな。横暴もあそこまで行くと諦めもつく。世知辛い世間を生き抜くにはそれぐらいしたたかじゃないと生き残れないんだろうがなあ…その捌け口にでも俺を頼りにしてくれるなら、こんな俺でも存在価値を見出せるんだよ」
「嶌谷さんは俺にとっても存在価値は大有りだ。これからも頼りにしてもいい?」
「勿論だ。凛になら騙されても憎まないさ」


 新学期が始まった。
 俺はその日の放課後、温室へ直行した。
 色の剥げたドアを開ける。
 いつもの古い椅子に座ったミナがスケッチブックの鉛筆を走らせていた。
 俺を見ると手を止め、立ち上がり、少しはにかみながら微笑んでくれる。

「リン、久しぶりだね」
「…うん」
 その微笑は俺に安らぎをくれた。純粋な感情をくれた。
「なんだか随分会っていない気がするよ」
 俺に近づき、触れようとする手を握った。
「終業式以来だから、半月以上だね…寂しかった?」
 頬を撫で顔を寄せる。ミナの茶色い瞳が俺を捉える。
「え?…そんなこと…ない…こともないかな」
 相変わらずの天邪鬼さも愛おしくて堪らない。

「何笑ってんのさ」
「いや、ミナは何にしてもかわいいと思ってさ」
「かわいいは褒め言葉じゃないから」
「そうか?でも他に表現の仕様が無い。ミナはかわいい。バカが付くほどかわいい」
「バカはつけないで欲しい」
「では、俺のミナはかわいい。愛しい恋人よ。久しぶりの逢瀬を楽しもうか?」
「…うん」
 ミナの背中を軽く抱く。ためらいもせず、すぐに俺の腕の中へと収まる。
 眼鏡を外し、口唇に優しくキスをすると、自ら口唇を開き俺を向かい入れようとする。
 お互いの邪魔なものを脱ぎ、触れたいだけ確かめていく。
 ほっておかれたのが悔しいのは今日のミナは積極的だ。
 何だか可笑しくなった。

「…あさましや こは何事のさまぞとよ 恋せよとても生まれざりけり」
 彼のモノを愛撫しながら、俺は呟く。
 欲にそそらられたミナの顔を見て、少しだけ憐れみを覚えたからだ。
「なに?それ」
「いや…だたの古文の復習」

 嶌谷さん、今の俺の心境はこうだ。

 あさましや こは何事のさまぞとよ ながき恋と言わぬものぞなき

 ねえ、俺は本物のメフィストフェレスになれるんだろうか。



「HAPPY」 10へ /12へ
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恋人たち


「地獄の火の雨」刑罰はダンテの「神曲」から。男色のひとの刑だそう…(;´Д`)

さて、次はミナの番かな~
ちょっと疲れた…そりゃ絵も描くから疲れるわな(;・∀・)

嶌谷さんと宗二朗さんのふたりのお話も気になるっちゃ~なるんだが、書く暇などはない。

宿禰凛一編 「HAPPY」 10 - 2010.07.13 Tue

夜明けのコーヒーでも飲むか


10、
 春休みも、もうじき終わる。
 と、同時に慧一と過ごす時間も終わる。
 やっと思い描いていたとおりに慧一と身体も心も繋ぐことが出来たというのに…
 離れ難い、と言うより、慧と離れて今までと同じよう独りで暮らしていけるのか不安になる。
 慧は俺を守り安心をくれる。何よりも慧とのセックスは俺を虜にした。
 慧はじらしたり、痛めつけたりすることはなく、ただ俺を救い上げ、包み込んだ。
 慧一という大海の中、寄せては返す大波のような快楽だけを俺に与え続けた。
 溺れる寸前になりながら、俺は必死で潜り、慧一の求める真珠を探し出す。
 それを見つけて俺は慧に差し出すんだ。
 俺たちの存在する意味を、形にする為に…

 帰国する前に慧一と小旅行を楽しんだ。
 去年、シカゴで仲良くなった慧一の研究生仲間のジャンの結婚式にも出席し、古いチャペルでの一連の式を体験した時は、さすがに酷く感激してしまった。
 ジャンと、お相手のシーラさんの幸せに満ちた笑顔、そして取り囲むような周りの祝福と喝采に、こちらまで幸せを貰った気になる。
 
 その夜、ホテルのベッドの中、慧一と毛布に包まって今日のことを話した。
「ジャン、幸せそうだったね。シーラさんはニューヨークで仕事をしているんだろ?」
「そう、確か…経営コンサルタントだったと思う。そのうちにジャンと一緒に事務所を手伝うんじゃないだろうか」
「私生活も仕事も一心同体ってわけか…それって究極の形でもあるね」
「上手くいけば理想だろうが…常時顔を突き合わせているのも、飽きてくるっていうからなあ~」
「俺、大学卒業したら慧と一緒に暮らして慧の仕事も手伝いたいって思っているんだけど…飽きる?」
「…いや…それはない」
「ホント?」
「凛を飽きるなんてちょっと考えられないな。こういう言い方は気持ち悪いかもしれないが、俺はおまえが生まれて此の方、おまえの事を考えない日は一日も無かったんだ。だから、これからも無いと思うよ」
 冗談を言う風でもなく、淡々と想いを言葉にする慧一が愛おしくて仕方なかった。
 決して俺に恩を売ろうとかじゃない。ただ彼は俺を愛してくれていたんだ。
 それがいつだって俺を救っていたんだ。
「慧、大好きだよ。ずっと死ぬまで一緒にいよう」

 翌日から丸三日間、慧一とドライブを楽しみながら、各地を巡った。
 とりわけ、ケベックシティのサンタンヌ・ド・ボーブレ聖堂は北米三大巡礼地に相応しく、荘厳で圧倒されるバシリカだ。
「凄いね~」
 天井も祭壇も壮麗で潔い。
「だけど、この建物は五代目なんだよ。火災や老朽化の為に取り壊されたんだ。これはこれで素晴らしいが西欧のカテドラルと比べると赴きが違うね」
「そうだろうね~慧は去年色々見てきたんだろう?俺も見て回りたいよ」
「フランスやイタリア、ドイツの壮麗なゴシック建築もすばらしいがスペイン、ポルトガルの地方の鄙びたカテドラルも俺は好きだな。そうだ。凛一が高校を卒業したら、一緒にヨーロッパ旅行でもしないか?」
「ホント?」
「勿論、旅費は親父にたかろう。会いに行くからと言えば無下にはしないだろう」
「そりゃいいや」

 夜になると車を止め、小綺麗なモーテルへ宿泊する。
 やることは決まっている。
 肉体は正直だ。
 なにが一番気持ちいいのかを知り、それを求めてしまう。
 親鳥が雛を守るような慧一の腕(かいな)に身を委ねるのは、俺の意思でしかない。
 俺は慧一に依存する。
 人間はお互いを求め、依存し合い喜びと為すのは当たり前の愛情表現だというが、セックスでもそうなのだろうか…
 とにかく俺は慧一とやるのがたまらなく好きだ。
 セックスだけじゃない。慧の腕に抱かれているのとこの先なんてどうでも良くなる。
「自堕落になるね」と、慧の胸から顔だけを向ける。
 慧は「そんなに長くは持つまい。凛は飽き性だからね…」と、微かに笑う。
「信用されてないんだな…」
 口唇を尖らす俺に、慧は「信用はしてるけど、凛は一所に留まる性質ではないって事だよ。俺の腕の中で羽を休めるのは今だけだろうね」
「そうかな…俺、ずっとこうしていたいのに…」

 慧の言いたいことがわからない。
 俺はそんなに飽きっぽいのだろうか。
 この温もりを自分から手放そうなんて思ってもみないんだけどな…

 
 旅行から帰ると、俺の春休みも終わる。
 宗二朗さんから携帯に連絡があり、一緒の飛行機で帰らないかと誘われた。勿論二つ返事でOKした。
 慧に伝えたら案の定むっとされた。
 そういう慧一も俺は好きだから気にしてはいない。

 空港まで車で送ってもらい、そのまま仕事に行く慧一を見送った。
 去っていく車に手を振り、車の影が消えてしまった直後、俺は途轍もない喪失感に苛まされた。
 宗二朗さんとラウンジで落ち合うや否や、俺は力が抜けて彼に寄りかかったほどだ。
 心配して声を掛ける宗二朗さんには悪かったが、とても平気な顔をして誤魔化すどころじゃなかった。

 折角のコンパートメントのファーストクラスの空の旅も楽しむどころではない。
 慧と離れてしまった喪失感は、ミナへの罪悪感となって俺の胸を締めつけた。
 帰国して、新学期が始まれば、俺はミナに会わなきゃならない。
 これだけ慧一のものになってしまった俺自身を、どうやってミナの前で恋人として振舞うことができるのだろう。
 ミナが俺に呆れ果て、俺を捨ててしまうのならまだいい。
 だが、俺はミナを諦められるのか?
 慧とのことをミナに白状してしまえるのか?
 ミナはこの真実を知りたいのか?
 アメリカであったことを洗いざらい告白することは賢明なのか?

 俺は付けていたペンダントを外し、ポケットの中へ押し込んだ。
 俺が俺である為には、慧のものである俺を落さなければならない。

 成田に着いて帰ろうとする俺を、宗二朗さんは有無も言わさず嶌谷さんのマンションへ連れて行った。
「宗二、凛。お帰り」
「嶌谷さん…」
 先に連絡をしていたのだろう。嶌谷さんは俺を見ても驚きはしなかった。
「兎に角こいつを休ませろ。十四時間のフライト中、一度も飯は食わないし、寝てもいないらしい」
「大丈夫だって」
「何が大丈夫だ!人が高い金出してファーストを奢ってやったのに、そんな生気の無い顔しやがって…このまま帰したらこっちの居心地が悪くて仕方ねえだろ。誠を貸してやるから、早いとこ皮肉のひとつでも言える様になっちまえよ」
「宗二、おまえも休んで行くだろう?上がれよ」
「言われなくても泊まらせてもらう」
 俺と嶌谷さんをすり抜けて、宗二朗さんはドカドカと廊下を歩いていく。
「気にするな。あいつはいつもああなんだ」
 いつもの穏やかな嶌谷さんの微笑みに、俺は泣きそうになった。




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凛くんの解体新書


さっさと書かないと~進まねえ~(;´Д`)

宿禰慧一編 「ペンテコステ」 6 - 2010.07.09 Fri

慧一さんの休暇
 
6、
 凛一は見事に整った容貌だった。
 孤高を彫像にした冷酷とも思える容貌が、口元に笑みを浮かべるだけで、光輝く明るさを纏った。 
 いつだって俺は凛に酩酊してしまう。
 ただ見惚れるだけの愚昧な人間に成り下がる。
 俺はこれを胸の中に抱(いだ)き続けることができるのだろうか…

 夜が来ると凛一は俺のベッドへ忍び込む。
 たしなめると「だって慧一としたいんだもん」と、あっけらかんに欲深さを明かす。たじろがないまでも、少しは恥じらいを見せたらどうだと思うのだが、色情は俺の方が上だろう。
 甘い声でせがむ凛がやがてふらふらになり、降参する。
 それを楽しみ、意識を手放すまでいかしてやるのは俺の本性でしかない。
 最もこれくらいで今まで積もり積もった愛欲が簡単に消化されるものではないが。

「凛、おまえが帰る前に3日ほど、車で旅行しないか?休暇も取ってあるんだ」
 少し寝ぼけた凛一と一緒に朝食を取る。朝日が凛の顔を照らすから、眩し気にまばたきをする。
「ホント?行くよ。こちらに来ても観光はあんまりしてないからね。本音を言うともっと沢山色んなものを見たかったんだ」
「ほったらかしにしてたからな。罪滅ぼしじゃないが、色々回ろう。それに実はボストンに用もあるんだよ。明後日がジャンの結婚式なんだ。招待されていたんだが仕事の都合が合わなかったから、保留にしてたけど、折角だから一緒に行こうか」
「え?俺も行っていいの?」
「ジャンに連絡したら、是非凛一にも参列して欲しいって」
「ジャンに会うの一年ぶりかな~楽しみだ」
「ブライアン教授も来られるから、凛の志望を伝えておくといいよ。留学の時に伝(つて)があると選びやすいからね」
「ああ、あの紳士だね。俺、去年話したよ。慧の弟だって言ったら可愛がってくださった」
「…良かったな」
 こいつは本当に誰とでもこうだ。この種の心配は一生付きまとうのだろう。


 式はボストン郊外の古い教会で執り行われた。
 まだ4月初めのボストンは日本とは比較にならないほど寒かったが、薔薇の花びらが舞い散る正午には春を思わせる暖かな日差しに恵まれた。
 ジャンも新妻のシーラも幸せそうだった。
 以前の俺ならそれを心から祝福する気にはならなかったかもしれない。 だが、今は違う。
 Congratulations!と、俺の隣で叫んでいる凛一は俺の一生のパートナーだ。
 神の祝福は受けられなくても、俺たちは全うな愛を誓い合っている。
 人間ってのは利己主義の塊だと言うが、俺もそれには漏れず、自分が幸せに満ちたりているからこそ他人の幸福もやっと願ってやれる。
「おめでとう」と、心からの祝福を明るい友人に捧げた。
 ジャンは俺をじっと見つめ、ニヤリと笑った。
「うん、今日のケイイチはこの真っ青な空みたいに澄み切っているね。…リンイチがいるからなのかい?」
「なんとでも言えよ。今日は反論はしない。君の幸せを心から祈りたい気分なんだ」
「サンクス。俺もケイイチがいつもハッピーでいられるように神に祈るよ。これからも良き友人として付き合えたら嬉しい」
「勿論さ。仕事の方も色々と世話になるよ。郷に入りては郷に従えってね」
「?」
「ジャンを頼りにしているっていう事だよ。ジャン、おめでと~かっこ良かったよ!」
 喜び勇んだ凛一がジャンに飛びつく。驚いたジャンは凛一を抱いたまま腰を抜かした。シーラは驚きながら大笑いしている。
 幸福のハトが大空に舞い上がった。
 手の平で翳した太陽が眩しくて、暖かかった。
 
 翌日にはカナダのケベックまで足を運び、途中気に入った景色や建物があれば足を止め、観光した。
 どこに行っても凛一は喜び、感動しては感嘆の声をあげた。
 暗くなったらモーテルへ泊まり、お互いが求めるままに散々やり、昼近くなるとまた車を走らせた。
「新婚旅行みたいだね」と、凛は屈託なく言う。
 幸福と言う言葉の意味はこういうものだろうと感じていた。
 だが、これからのことを思うと、喜んでばかりはいられない。
 蜜月は長くは続かない。
 そして時を告げる月は、待たずして絶えず形を変えるものだ。

 凛一が帰国する日がとうとう来てしまった。
 帰りの飛行機は嶌谷宗二朗と同乗すると言う。
 丁度、彼も日本に帰る日が一緒だったというが、嘘か真か信用ならない。それなのに凛一は浮かれている。
「宗二朗さんが俺の分までファーストを取ってくれてさ。一応反省してるのかな?でもファースト初めてだから超楽しみ」と、ご機嫌だ。
 俺との別れの名残は一体どうなっているのだか…と不満もあるが、言って聞かせても早々にこいつの性格が変わるわけではない。
「凛、あんまりあの男を信用し過ぎるなよ。嶌谷さんとは違うんだからな」
「わかってるよ。そうだ、嶌谷さんに俺たちのことを話してもいい?」
「そうだな…嶌谷さんだったら大丈夫だろう」
 ひとりぐらい俺たちの味方が居なくては、凛一が可哀相だ。
「これからもお世話になるだろうし、俺からも伝えておくけれど…だけど凛、念を押すけれど、あの男には注意しろよ」
「はいはい、わかったよ。慧は相変わらず過保護」
「それから…」
「何?」
 もうひとつ気になる事があった。
 凛一の付き合っている恋人のことだ。凛はこれからその子との関係をどうするのだろう。
 だが、それは俺が詮索することではない。すべて凛が決めることだ。
「いや…勉強しっかりやれよ。あまり帰ってこれそうもないから…傍にいてやれないけれど…」
「心配しないでよ。浮気はしないよ」
「凛のは充てにならないからな」
「そっちこそ、日照りになっても他の奴とやるなよ」
 自分は棚にあげてか?と言いたかったが、ここまで悪びれないということは、凛の中では俺と水川と言う恋人は全く別次元なのだろう。

 ケネディ空港まで送って、仕事があるからと別れた。
 バックミラーに手を振る凛一の姿が映る。
 すぐに目を逸らした。
 これ以上見ていたら、前が曇って運転など出来そうもなかった。

「元気で。いつでもおまえを想っているよ。愛してる…」
 きっと彼には届かない。
 何故なら、彼は振り向いて生きる者ではないのだから。

 それでも俺は凛一を守る為に生きる。
 凛一を愛すること。
 それだけが俺の生きる意味を持つからだ。



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宿禰慧一のお話はこちら「イリュミナシオン」 
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慧一3

宿禰凛一編 「HAPPY」 9 - 2010.07.08 Thu

慧凛cp


9、
 慧一の肌は俺のより幾分冷たくて、焦った所為か少々ほてり気味の俺の肌を冷ましてくれた。
 俺の四肢も絡みつく指先も、慧一は丹念にひとつひとつ愛撫し続け、宝物のように扱ってくれる。
 慧一の口唇が触れるたび、欲が乱されていくのがわかるから、堪らなくて口唇を噛んだ。
 要するに…
 どう身構えようと、どんなに媚びようと、慧一には到底敵わない。
 大抵の相手には通じるはずの色仕掛けだって、見破られるに決まっているんだ。
 そりゃ、俺のDNAはすべて同じとは言えないが、慧一と同じようなもんで、そして俺は慧一に育ててきてもらったのだから、変な小細工なんか通用するはずもない。
 だから、
 俺に出来うる精一杯の誠実な愛でもてなそう。
 慧一をずっと愛してきた。
 求めてきた。
 それだけは誤魔化しようもない事実だ。

 BGMなんか無かった。
 お互いの名を呼ぶ声と、身体の中の音と、たまらなく啜りあげる俺の声が響いた。
 目を開けても閉じても映るのは慧の顔ばかりで、その表情が嬉しいのと切ないのがごっちゃになってて、どうしようもない。
 俺は慧の思いに応えられているのだろうかと、不安になる。だけどそれさえも快楽に流されてわからなくなる。
 
 もういいや…なにがなんだかわからんが、流されるのも悪くない。溺れるのもたまにはいい。
 肝心なことは、ただそこに「愛」があること。
 そうだろう?…慧。


 目が覚めた時には、慧一はとっくに仕事に出かけている時間で、俺ひとりベッドに寝ていた。
 裸のままだったが綺麗にシーツも取り替えられているから、慧が全部やっておいてくれたのだろう。
 俺は身体をゆっくり起こして具合を確かめた。
 全体がだるいし、なんか奥が痛いけど、まあこんなもんだろう。なんせ久しぶりだもんな。
 頭を掻いて、昨日の一切を思い出す。

 割と簡単に慧一がその気になってくれたのは良かったが、あれほど凄まじいとは予想してなくて、正直俺も動揺した。前に紫乃が慧一はベッドではSだと言っていたが、俺相手には気を使ってくれたのだろう。
 酷くはされてないが…俺とは比較にならんほどテクニックも容量も上等で、とても敵わない。
 あれが陶酔というのなら、今までのセックスは何だったのだろう。
 とにかく過去の奴らと比べても、慧とのセックスは引力が強すぎる。
「まいったな…誘惑するつもりがやぶ蛇だな。こっちが抜けられないや」と、舌を出す。

 シャワーを浴びて、一通りの家事をこなしていたら、隣の飯田さんの奥さんがやってきた。
 まさかあの声が五月蝿くて眠れなかったなどと、苦情じゃないだろうなあと苦笑しながら応対する。
 ここから30分ほど先の日本輸入専門のスーパーに行くから、一緒に行かないかという誘いだった。
 二つ返事でOKし、買い物に出かけた。

 夕食の支度をしていると、慧一が帰ってくる。
 いつもより帰りが早いのは、きっと昨晩の所為だろうと、思った。
 俺の顔を見た慧はちょっと気まずい表情で目を逸らし、照れていた。それが可笑して笑おうとするが、その気持ちがこちらに伝わってしまった。胸が熱くなって言葉が出ない。
 慧一の想いは俺よりもずっと深く、何重にも重なり続けている。
 今の俺にはそれが今まで以上に理解できる。
 俺は慧一の想いを充分我が身に刻み込まなければならないのだろう。

「ねえ、このカレーどう?」「…日本で食べる味に似てるね」「だろ?今日、お隣の飯田さんと一緒に日本専門店に行ったら、いつも使ってるルーがあったからね、買ってみた。やっぱりカレーはルーで決まるもんね」「おいしいよ」「良かった~」
 
 変わらぬ食卓での会話もどことなく、ふんわりとした空気が漂っていて、俺も兄貴も顔を見合わせては少し恥らいながら笑う。

「凛」「なに?」 「身体…大丈夫か?」「は?…なんともないってメールしたじゃん」「そうだけど…ちょっと無理しすぎたって思ってさ」「慧ってやっぱり大人だと感服した。すげー良かったからさ、今夜もやろう」「え?」「まあ、食べて食べて」「急がせるなよ」
 おざなりに返事を濁した慧一は残ったカレーを口に入れ、俺より上手いよと、カレーを褒めてくれた。

 その夜、俺は慧一の部屋に夜這いに出向き、呆気に取られる慧のベッドへさっさと潜り込んだ。
「おまえは…こんなことばかりして」
「だって、あと一週間も一緒にいられないんだよ。しばらく会えなくなるんだよ。ふたりで居る時は飯以外はセックスしていたいね。慧はそうじゃないの?」
 裸の冷たい肌を摺り寄せる俺を抱き寄せ、慧は「おまえが帰った後を考えると…俺が呼吸を続けられるか不安でしょうがない心持ちだよ」と、苦笑する。
「じゃあ、学校辞めて、ここに住もうかな~」
「出来ないことを言うんじゃない。おまえも俺もまだ沢山のものと触れ合わなきゃならないよ。ふたりだけで閉じこもっているわけにはいかないんだからね」
「わかってるよ。でも…だからいいでしょ?俺が帰るまではふたりきりで閉じこもっていようよ」
 慧一の手が俺の腰を掴まえる。それだけで取り込まれる。慧の口唇が俺の現実を封印する。
 慧は俺の前で容易く跪くけれど、その実、俺が慧に支配されているじゃないのか?
 こんなにも身体をバラバラにされ、きちんと元の形態に構築していくんだからな。
 だから建築家なのか…

 俺はクスリと笑う。何が可笑しい?と慧が聞く。なにも…ただ…慧は俺をうまく育てたもんだと思ってさ。元がいいからだろう。元は同じだ。母さんと父さんの遺伝子だもん。ああ、そうだな…同じ血を分かち合うんだ、俺達は。

 何度だってしたい。
 ずっと触れていたい。
 自分以外の誰かに自己を昇華させられたい。
 それは慧一でなければならない。

 そうでなければ、俺は生きる道を見失う気がする…

 ミナ…君はこんな俺をどう思うんだろうね…


 



凛一ベッド


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絵になる男 - 2010.07.07 Wed

凛くんは美形なので、意味不明の恰好でもカッコいい~(;´∀`)


凛一夏


あ、そ~だ。今思いついた。
リンミナで七夕の恰好させよう~
勿論、織女は凛で、牽牛はミナですが~

今週描けたら描こう~と。

テキストは朝にはアップしますよ~

星明りと共に… - 2010.07.07 Wed

夜がおまえに持ってきたものを

静かに受け取ったと、夜に示すがいい。

お前が夜に入り込んだ時、はじめて

夜がおまえの存在を認めるだろう…

    リルケ

このCPの絵がリンミナより多い件…


こいつらはずっとこんな感じなのか?
堰が崩壊した奴等はやることが一杯~(;´∀`)

4コマ漫画 - 2010.07.06 Tue

昨日、一杯訪問してくれたんで、4コマ漫画描いてみた~♪

面白い?

うん、15分で描いたねwww

またリクあったら描くかも~

宿禰慧一編 「ペンテコステ」 5 - 2010.07.05 Mon

5、
 陽が昇るまで一睡もせぬまま、夜を明かした。
 胸の中にぐっすりと眠る凛は、俺の腕を離そうとしない。
 凛の顔にかかるクセのない髪をそっと掬って、額にキスを落とした。
 ずっと…凛一が赤ん坊の頃から、こうして凛を胸に抱き寄せ、無心に眠るこの子の寝顔を見てきた。
 少しも変わりのない形なのに、俺たちの関係は百八十度違ったものになってしまったんだ。
 お互いに何も着ていない密接した裸の肌の温もりが、俺にはまだ半分信じられない感覚のままで、何度もその実態を確かめずにはいられなかった。
 
 凛を抱いた。
 凛の中に自分を注ぎ込んで、何度も高みへ追いつめ、舞い上がった。
 俺の名を呼ぶ凛一の声はこれまで聞いたこともないほどに、必死で、請い、求め、感じるままに震える叫びも愛おしく…エロティックで官能的な肌は吸い込まれるほどにしっとりと滑らかで、密接したまま離れがたくて仕方がなかった。
 俺を見る凛の濡れた瞳が狂おしい程に、欲情に駆られているのを感じた。それ以上に俺も求めていた。我を見失う程に凛を食い尽くしたかった。
 だが、そこには邪心はないと誓える。
 今までの溜め込んだ嫉妬心や独占欲の妄執、汚らしい猥雑なものすべてを取り払った欲望だけで、凛一を求めた。そうでなければ、俺達はすべての倫理から救われないからだ。

 …倫理…血の繋がった兄弟同士で愛し合うことは禁忌でしかない。それを怖れていた。
 怖れてはいたが、真実の愛である以上、そんなタブーなど下らないものだと自分自身に言い聞かせていた。
 だがどこかで畏れていたんだ。まっとうな恋愛ではないと…
 しかし、凛を抱いた今得られたものがある…凛とのセックスは決して後ろめたいものではなく、これは正々堂々とした『純愛』であると…
 血の繋がりがあるからこそ、凛一を選び、愛しぬいた。
 これから先、俺達兄弟の関係を世間がどう言おうと、微塵たりとも疚(いや)しい気持ちになる必要はないんじゃないか。少なくとも凛をくだらない邪推の目からは守らなくちゃならないにしても、この「愛」を否定する気持ちは微塵も沸き起こらない。

 …凛は満足してくれただろうか…
 どれだけ求めても少しも怯まなかった。
 慣れた娼婦のようでもなく、かといって無垢な天使でもなく、凛一は凛一でしかなかった。それが俺には嬉しくて…たまらなかったんだ。
 俺の欲望をすべて受け入れ、飲み込まれながらも懸命に俺に与えようとする。
 拙いとは言わないまでも、若さだけで味わおうとする身体だ。多少荒削りでもいいさ。こいつが俺を求める限りは、精根尽き果てるまで付き合うだけだ。
 
 俺の贈ったペンダントが朝日を受けて凛一の胸元で輝いている。
 俺は自分の首からペンダントを外し、凛のそれと重ね合わせた。
 太陽の光に当てたモザイクのペンダントは光を通し、シーツに赤い薔薇を描き出した。

「永遠の愛を誓うよ、凛。どんなことがあろうとも、おまえを幸せにするから…」
 俺はまだ眠りから当分覚めそうもない凛の口唇に誓いを立て、ゆっくりと抱きしめるのだ。


 眠る凛一をそのままに、俺は早朝仕事へ出かけた。
 凛の身体のことも心配だったが、仕事だから仕方がない。
 それも相当にきついスケジュールで、先方との打ち合わせから、請負会社の仲介人との連絡、プラン説明など、目が回るようだった。
 それでも合間合間に昨晩の凛との営みを思い出し、心に灯火が点る。
 やんわりと優しい気持ちになれる。
 …こんな柔らかな時間を今まで感じたことがあるのだろうか…と、不思議になる。
 自宅に帰っても凛一は居ないのではないだろうかと、忙殺する時間との競争の中、凛一との事だけが夢幻(ゆめまぼろし)ではないのかと…そんな感覚にさえ陥るのだ。
 
 夕方、猛スピードで自宅へ帰った。
 凛一が待っていると思うと、居ても立ってもいられない。
 口元が緩んでしまう。きっと新婚の夫はこういう気持ちなんだろうと思う自分が、滑稽で仕方ない。だが、その気持ちに偽りは露ほどもないものだから、それさえ愛おしく思えるのだ。
 「どうかしている」と、口に出して笑った。

 駐車場に愛車を片付け、小走りに玄関の戸を開けた。
 リビングの奥のキッチンから顔をのぞかせた凛一が「おかえり」と、笑った。

 目の奥が喜びで痛くなった。
 必死に声が上ずるのを抑え、「ただいま」と、俺は応えた。






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大好きだよ


慧一至福の時…しかしまだ長い…春休み終わらんなあ~(;´Д`)

宿禰慧一編 「ペンテコステ」 4 - 2010.07.01 Thu

4、
 予想はしていたし、予行練習というか…それなりに凛とこうなる場合の仮想は整えてたはずなのに…笑い出すほどぎこちなかった。
 それは凛一も同じで「こういう事に関しては俺はエキスパートだと思ったんだけど…」と言いつつ、パンツの片方に足が絡んでいるのを必死に脱がそうと格闘中だ。
 その様がおかしくて声に出して笑ったら、「笑うぐらいなら脱がしてよ」と、むくれる。
「今日は昼間から誰かに脱がしてもらったんだろ?二度はないよ。クセになる」
 さっきのお返しにと皮肉ってやった。
 凛一は裸になった身体をゆっくりとうつ伏せにしながら、
「慧の焼きもちは少し怖いね。何されるかわかったもんじゃない」と、独り言のように呟く。
「酷くして欲しいって意味なのか?」
「…別に。慧の好きにしていい。どちみち俺はここのところは入れる側ばかりで、ネコになるの久しぶりだもん。自信ないや」
 そう言いつつも二の腕越しにこちらを見る目つきは妖女のように艶かしい。
「できるだけ…傷つかないようにするよ。俺はおまえをマゾヒストに育てる気はないんでね」
 背中の羽にキスを落とし、両腕で細い腰を抱いた。
 あっという微かな喘ぎ。
 片方の腕を伸ばし、その腕に頭を乗せてこちらを見ながら、凛一は俺の愛撫に流されるのを逆らうように口を開く。

こっち見て

「…俺さ、昔ね…男とも女とも関係なく寝てたじゃん…だけど男とするのが一番気持ち良かったの。みんな優しいからね…でもたまに変な奴がいて…そういやサドな奴が居たなあ。俺を鞭かなんかで叩こうとするわけ…で、それに腹が立った俺は逆にその鞭を引っ手繰って思いっきり打ってやった。裸のまんまでさ…そいつびっくりして服も着ずにあわててにホテルの部屋から遁走したんだぜ?笑う話だが、そういうプレイをやりたいなら相手を選べってね…俺を相手にするなんてお門違いだ」
「俺が怒った時は、手首を絞められた痕があったぞ」
 思い出したくはなかったがこの際だと思い、聞いてみた。
「ああ、あの時は…ああいうことしそうにない優しそうな人だったんだ。ちょっと慧に似てたかな…だから両手を出してって言われて…まあ、俺もガキだったしさ」
 すでに遠い過去の話だとわかっているが、こうして本人の口から聞くたびに嫉妬心がむらむらと沸いて仕方がない。俺に似ていようが似てまいがそいつは俺ではないんだから、嗜虐心に火がつくのは容易い。だがこれも凛一の無意識な挑発であるなら、俺は常にコントロールしなきゃならない。
 だったら、こっちから誘い出す。

「美しい少年にはマゾヒズムとナルシズムが共存する…これが昔からの少年愛の論法だからな」
 一切声に感情は出さず、羽から腰の窪みへと口唇を移す。目だけは凛を見つめながら。
「ばかばかしいや…ちょっ…慧…そこ、やだ…」
「どうして?昔からおまえはここを触ると気持ち良さそうだったぜ?」
 左のわき腹から中心に撫でる部分が性感帯なのだろう。凛の息が速くなる。
「…も…むかつく…その余裕…慧は底意地が…わるい」
 眉間に皺を寄せて怒る凛もかわいい。そのまま中心を握ると目を硬く瞑り口唇を噛んだ。

「俺が寝てる間に…色んなとこ、触っていたんだろ?…慧はそういうあくどいところがあるもんな」
「いつまでへらず口が叩けるか。それこそ望むなら酷くしてあげてもいい」
「…」
 僅かな怯えが見えた気がしたが直ぐに消えた。
 凛は自ら身体を捻り、仰向けになったと思ったら上半身を起こして俺に口づける。

「愛のあるセックスの場合は、恐れてはいけない。同等のものを与え、同等のものを得る。違った?」
 頭を傾げ、愛らしい笑みを見せる凛一は昔のままだ。
 その顔に見惚れていると、いきなり凛は俺の立ち上がったものを握り、そのまま、まさぐった。
 思いがけないことをやるのはこいつのデフォだとわかっているけど、全く…

「凛、やめないかっ!」「やだ」「「こらっ、こういう時ぐらい兄貴の命令を尊重しろよ」「思い通りにならないペットほど愛着が沸くってね」「おまえはペットじゃない…」「…っ!慧っ…卑怯だ。力技で締め上げるなんてさ」「9つ上は伊達じゃないだろ?」「…ひで~な。その気になりゃ俺がタチでも良かったのに」「ご冗談を。17のガキの下になるかよ」「もうすぐ18だ」「…そうだな…18になる。俺は18の凛と…」「26の慧と、結ばれるんだ…」

 後庭をなぞり具合を探る。凛はいやいやをしながら、背中を撓らせた。
 彼が望むような「すべてをさらってしまう」程の器が俺に備わっているのかはしらないが、今宵の繋がりが凛の中にどんな形であれ、永遠のものとして刻み込まねばならない気がしていた。
 俺は彼の両足を抱え、凛一にすべてを注ぎ込む…

 凛一の中はまるで処女のようだった。だから慎重に傷つかないように進めた。
 苦しそうな時は休み、OKの合図はアイコンタクトで…お互いの呼吸を合わせてゆっくりとだ。
 あせる必要などなかった。
 凛一が生まれ育ち、それを見守り、これ程までにと呆れるほど辛抱したんだ。
 そして、ついに、求めて欲しくて堪らなかったイノセントを、俺は今初めて味わうことが出来る。
 だから…
 おまえの中にできるだけ長く居られるように、
 おまえを俺で満たして、
 今までの交わった奴らのすべてを浄化するまで、果てはしない。



 

keirin7


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18禁に触れないように書くのはむずかしいにゃ~~~旦_(^‥^=)~
まだ続く…のか?(;・∀・)
では来週…

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