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2010-11

水川青弥編 最終章「愛する人へ」2 - 2010.11.27 Sat

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2、
 ウリエルから逃げるように、チャペルの中に駆け込んだ。
 教会の中にも先生やお年を召された卒業生の方たちが、幾つかの塊になって、談笑している。
 おれは通路を真っ直ぐに歩き、祭壇へ向かった。
 まだ学院の生徒だった頃、隔週月曜日の朝、礼拝のミサがあった。
 一般の朝礼と変わらないものだったけれど、最後に必ず賛美歌を歌わされていた。
 男子校のしかもほとんどが宗教を持たない生徒ばかりだ。真面目に歌う奴はコーラス部と生徒会ぐらいだった。
 だけど、リンは周囲の目なんか気にせず、高らかに歌っていた。
 サンクチュアリによく通る綺麗なテノール。響くシンプルな祈りの歌詞。
 おれは歌うリンの姿に何度も見惚れ、歌うことすら忘れていた。
 リンは美しかった。
 あれがおれの恋人とは、当人でさえ信じられないほどに、尊いものに見えた。
 それは、リンが望んでいた思いじゃないのはわかっていた。
 だからおれはリンと、対等になりたかったんだ。

 十字架も何も無いシンプルな祭壇は、宗教色の少ないこの学院特有のものだ。そして光を受けて輝くステンドグラスもまた、虹色の鳩が飛翔している姿だけが描かれている。
「あの七羽のハトの意味を知っていますか?」
 後ろから声を掛けられ、驚いて振り向いた。
「鳴海…総長」
 前学長の鳴海先生が立っていた。
 リンが剣舞を演じた際、熱心に指導されたと聞かされていた。遠目には何回も見たことはあったけれど、直々に話すのは初めてかもしれない。
「去年、この学院のすべての職務からも卒業しましてね、今は隠居の身ですよ。ただのじじいです」
「そんな…」
 年は取っていてもこんなに品格のある紳士なんか、早々見当たらない。
 それになんて優しい眼差しなんだろう。聖職者ってみんなこうなら、もっと信仰深くなるんじゃないのかな。
「水川…くんでしたよね」
「あ、はい…光栄です。名前を覚えてもらえたなんて」
「卒業生全員を覚えることはさすがに出来ませんが、優秀な生徒は自然に記憶しているものですから」
「ありがとうございます」
「君は画家になったと聞き及んでいますが」
「どうしてそれを?」
「宿禰君から聞きました。私は海外によく出かけるので、ニューヨークへ行くと宿禰君に連絡をするんですよ。彼は自ら運転して、色んな穴場へ連れて行ってくれる。この学院では君と特に仲が良かったそうですね」
「…はい」
「水川君が画家の道を歩んでいる事を、宿禰君は嬉しそうに話していました」
「…」
 複雑な気がした。おれの知らないところで、リンはおれのことをそんな風に話しているのか…笑いながら話せるものなのか…おれには無理だ。嘘でもリンとの思い出を嬉しそうに話すほど、心の整理は付いてない。
 …付いてないって?
 もう、ずっと前に付けたはずじゃないのか?
 おれははっきりとリンと決別したって…
 そう、思い込んでいるだけなのか?

「あのハトの意味ですが、七つの美徳の意味があります」
「…」
 昔、リンがそんなことを言っていたような気がする。
「純潔、希望、知識、正義…」
 リンは作り話がうまいから、また適当に話しているのだと思ってた。
「勇気、忍耐、そして…純愛です」
 おれはリンの作り話がとても好きで、好きで、何回もねだって…おれは…
「純愛はこの世の理想ですね。欲も得もなくただひたすら愛するという想いは、家族愛でもなかなか難しいものです。他人同士の純愛なら…奇跡かもしれない」
「奇跡?」
「キリスト教では神の力とも言いますが、恋愛する当事者には神は邪魔者でしかないと思いませんか?…これは内密に」
「…はい」
「それよりこれを見てもらえませんか?」
 鳴海先生は、祭壇の左端の壁に置かれてある台におれを案内した。

 白い建築模型だ。
 教会の形をしている。その横には体育館だろうか。モダンな建物の模型がある。
「この教会堂も随分古くなりましたから、そろそろ建て替えの頃だろうと。ついでに生徒が増えたので体育館も新しく建て替えることにして、宿禰くんのアトリエに頼んだんです」
「リンの?」
 思わずリンと呼んでしまった自分の口を押さえた。先生は穏やかに笑みをくれただけだ。
「そうです。凛くんは…彼がそう呼ぶのが好きなので。カテドラルの建築デザインを熱心に勉強していましてね。建築家を目指したのはお母さんとお姉さんの聖堂を作るのが目的のひとつだったそうです。アメリカで彼の設計デザインした教会をいくつか見せてもらいました。彼のひときわ華やかな外見とは全く違う、とてもシンプルで暖かい人々の拠り所であるカテドラルだった。建築家となったこの学院の卒業生もいますが、私は凛くんの教会を見たかったし、体育館との融合を有望なランドスケープデザイナーである慧一君にまかせたかった」
「そうだったんですか…リンは、頑張っているんですね。おれなんか…比べ物にならないほどに…」
「水川君にも頼みたいんですが…」
「え?」
「新しい教会堂に掲げる絵を描いてもらいたいのです。宗教に関係するものではなく、あなた自身が描きたいものを、期待しますが…どうでしょう」
「え?…僕が…そんな、無理です。僕はまだそんな…画家と言っても学生に過ぎません。教会に飾られる絵なんて今の僕では…描けません」
「有名な芸術家の絵を望んではいません。この学院を愛してくれた者にしか描けない絵を、新しい教会堂に飾りたいのです。水川君の絵画だけではありませんよ。この学院を卒業した多くの、芸術家や技能者、研究者…彼らの青春を刻み込んだ思い出の展示も考えているんですよ」
「…」
「水川君の時を刻んで見ませんか?ここで学んで経験した時が、未来の礎(いしずえ)になれば、それが私の喜びとなります」
 鳴海先生の好意は有り難かった。けれど自分に自信が持てなかった。
 リンの建てた教会におれの絵を飾るなんて…
 曖昧に返事をぼかしたまま、その場を後にした。


 家に帰りついたのは十一時過ぎだった。
 あれから寮の同窓会があり、久しぶりに学生気分で楽しめたんだ。
 三上も周りの奴らもリンの事には触れないでくれたから、それも有り難かった。
 みんな大人になり、そして優しくなっていた。人の心を尊ぶとはああいう空間なのかもしれない。
 学生の頃には気づかないことばかりで、驚いてしまうと素直に白状すると、みんな口を揃えて、「俺もそうだよ」と、笑った。

「そうか、良かったな、青弥」
「うん」
 ひとりで晩酌を楽しんでいたのか、ほろ酔い加減の季史さんが機嫌よくおれの帰りを待っていてくれた。
「そうだ。新鮮な鯛のさしみがあるんだ。鯛茶漬けでも食おうか?」
「うん、食べたい」
「じゃあ、用意するから待ってろ」
 台所に立った季史さんにお礼を言い、何気なくテレビをつけてみる。

 チャンネルを変えながらBSのCNNニュースで手を止めた。
 何となくだか、リンの居る国の空気を感じたかったからだ。
 流暢な英語に同時通訳が入ってくる。それも邪魔で通訳を消してみる。
 英語の意味はある程度、理解できる。
 ニュースは政治から世界情勢、そして今日の特集へ移っていった。
 それは突然だった。
 金髪のニュースキャスターが「The SIA prize with the authority was won to Mr.rinichi.sukune, architect. 」と、話し出したのだ。
 同時に画面に映し出されたのはタキシードを着たリンの姿だった。
 そうか…今日、藤宮先生が話していたリンの受賞した話だ。
 おれの鼓動が次第に早くなる…耳元で心臓が破れるぐらいに鳴り響いている。
 息をするのも、瞬くのも忘れ、画面を凝視した。
 特集は5分くらいのもので、リンの日常の仕事の様子と授賞式が主なフィルムだった。
 久しぶりに見るリンは、すっかり大人になっていた。
 気品や艶やかさは昔より増して、いくらか退廃的な影がちらつく色気のある眼差しが、リンの美貌と不思議に調和している。
 映像はニューヨークのリンのアトリエを映し出した。
 一面のガラスから光零れる洗練されたオフィスで、事務所の仲間達と…慧一さんが紹介される。
 慧一さんも当たり前だが、とても綺麗だ。リンと並んで映る姿も絵になっていた。
 なんのしがらみもなければ、綺麗で素敵な兄弟だと思えるのに…心が痛むのは、おれの狭さなんだろう。
 最後にリンの受賞式のメッセージが流された。
 トロフィーを持ったリンが壇上で挨拶をする。
 難しくない英語だったから、おれにもはっきりとわかった。
 受賞の喜びと感謝を込めた言葉。
 最後に…と彼は言った。
「この賞を僕を支えてくれた家族と敬愛するすべての人々に、そして…Eternal loverに捧げます。ミナ、君にだ」
「…」
 …おれは耳を疑った。
 リンは「Eternal lover」と言い、カメラに向かって日本語で「ミナ、君にだ」と、言ったのだ。
 そして、自分の左指にキスをしたんだ。
 薬指には見覚えのある指輪が嵌められていた。おれと誓った指輪…なのか。
 おれは…もう…仰天を通り越して…気を失うかと思った。 

 馬鹿じゃないのか、あいつは!あんな恥ずかしいことを堂々とやってのける奴がこの世のどこにいる!
 世界中に放映されるカメラに向かって…おれの…おれの名を…言うなんて…

「どうした?青弥。顔が茹でタコみたいに真っ赤だぞ」
「あ…な、なんでもない…ご、ごめん、季史さん。お、おれ、お腹一杯で…あ、の…絵、描きたくなったから、アトリエに行くよ」
「はあ」
「折角だから、鯛茶漬け食べてく」
 おれはポカンとしている季史さんを尻目に急いでお茶漬けを搔き込み、母屋を後にした。
 アトリエに入り、パソコンを付けた。
 インターネットの動画サイトで先程のCNNのニュースを探した。
 宿禰凛一で検索した方が早かった。
 しかもリンの動画はいくつもあった。今までおれが全く気づいていなかっただけだ。
 授賞式のリンのメッセージを探し、さっきの言葉を確かめた。
 もしかしたらおれの聞き間違いかも知れない。おれの願望が目の前のテレビの画面におれの目だけに映っていたのかもしれない。
 …だけど、違っていたんだ。
 パソコンに映し出されたリンははっきりとおれに言う。
 「Eternal lover、ミナ、君にだ」と。
 あの頃と変わらないちょっといたずらを思いついたような顔で、おれをいとおしそうに見つめる目で…
 おれは何度も何度も、リピートし続けた。

 段々と涙で画面が見えなくなった。
 それでもおれは繰り返した。
 それはリンの想いだった。
 嘘じゃない。噓つきじゃない。
 リンは…おれを…ずっと、ずっと…

 リン、君は…本当におれに純愛を誓ってくれたんだね。
 見返りなんて求めていない。
 ただ、ずっとおれを愛し続けてくれた。
 ありがとう…ありがとう。

 ありがとう…




rinn44


「愛する人へ…」1へ3へ



慧一の独り言シリーズ - 2010.11.24 Wed

近頃は慧一くんの出番が少ないので…(つーか、本編終わっとる(;^ω^))
ちょっとご機嫌ナナメの模様…
なにやら、愚痴をこぼしております。

慧一3

俺は宿禰慧一。
凛一の実兄だ。
齢32でニューヨークのど真ん中に自分のアトリエ事務所を設けた。
その成り行きについては、自分では不本意なことも多い。
特に援助を申し出てくれた嶌谷さんには申し訳ないが、従弟の宗二朗って奴を俺は全く信用していない。
あの男は何かにつけて、凛にちょっかいを出す。
嶌谷さんなら許せることが、あの男には許せない。
つか、凛一が気を許ししすぎるのが一番の問題なんだ。
凛が尻軽なのはわかっている。あの美貌だから、俺だけに縛り付けておくのは困難。
凛が望むなら、あいつの手に落ちない男も女もいない。
簡単に許せるもんでもないし、
俺だってそんなのは嫌に決まっている。
だけど、凛を責めても、凛は俺達の仕事の為だと言ってきかない。
「別に本気で好きで寝てるわけじゃない。俺が愛しているのは慧だけだ」
と、言われたら、何も言えないじゃないか…
事実、凛の相手は一流の奴ばかりで、後腐れのない付き合いだから、変な心配はないのだが…

どっちにしても俺は凛を見守るしかないのだし、一生彼を守り抜くって決めているから、凛が何をしようと、誰と寝ようと気持ちがぶれることはない。
ただ、凛が…かわいそうで仕方がない。
凛が彼と別れた罪の意識から、解放される日が来るまで、
俺は凛を支えていく。
それだけだ。




なんか、本気モードになった慧一くんでしたね。
軽い漫画描こうと思ったのに~(;´∀`)

つか、慧一を描くのは楽しい。だってノーブルな美形だもん(;´▽`A``

過去の慧一の4コマ漫画。

慧一の憂鬱1

慧一の憂鬱2

温泉卓球

慧一のカルマ


リクあったら叉描くけど…

水川青弥編 最終章「愛する人へ」1 - 2010.11.20 Sat

ミナ大学生

「愛する人へ…」
1.
 M美術大の4年を過ごし、そのまま大学院へ進んだ。
 大学では油彩を専攻し、院では版画に取り組んでいる。
 相変わらず「美桜堂」に居座り、仕事と絵描きで忙しい毎日だ。
 季史さんの画廊「ギャラリー時世」で、完成した油彩や版画を展示してもらい、展示即売もする。
 結構な値段がつき、大学の授業料も親に負担をかけなくなってほっとしている。
 親父はさすがにおれへの将来への夢にも諦めがついたらしく、「たまにはうちに帰って酒の相伴でもしろ」と、言っているのだと母さんが嬉しそうに話していた。

 いくつかの絵画コンクールにも入選した。まだ一流とは言えまいが、画家としての基盤を築くため、一歩一歩直実に進んでいる気がする。
 店の仕事以外は、アトリエに篭って制作していることが多い。そうでなければ、スケッチの為のツーリングへ出かける。
 風光明媚な景勝地や鄙びたなんでもない田舎の風景。どれもが魅力的だ。

 油彩は風景画。版画は植物を描く場合が多く、特にリトグラフは細かな描写もできるから、面白い。
 展覧会や芸術展に追われる時は、二階の自分の部屋で寝ることはあるが、大方、母屋の季史さんの寝室で一緒に寝ることにしている。
 季史さんは充分におれを包んでくれる大人だ。気がきかないおれを色々とサポートしてくれる。
 絵についても、迷った時は的確なアドバイスをくれるし、何よりおれを大切にしてくれる。
 おれはリンとは違う意味で、季史さんに身を委ねる喜びを感じていた。

「青弥、卒業制作は順調かい?」
「うん…」
 いつもの夕飯時、急ぎの仕事がなければ、そのまま何時間も晩酌をすることもある。
「年の瀬には『七星会』の展覧会を上野でやるんだろう?」
 「七星会」とはM美術大学院の仲間、七人で作ったグループで、これまでも3回程、展示会を催している。
 絵画専攻だけではなく、デザイン専攻の院生を交えての展示会は、各自テーマも異なり、それぞれの個性を高めた芸術が作り上げられているから、専門のコレクターや学芸員などの評価も悪くない。
「そうなんだ。就職先が決まった奴もいるし、院に残る奴もいるけど、みんなでやれるのはこれが最後かもしれないって…気合が入っている。おれは連作をやろうと思っているけど…まだ題材が決まってないんだ」
「半年先とは言え、油彩だったらそろそろ制作にかからないといけないな」
「うん、版画の方が評判いいからなあ…迷っている」
 先日、ある公募展で自信があった油彩の風景画が佳作にしか届かなかったことが、気になる。
 
「審査員はなんて言ったんだ?」
「綺麗にまとまってはいるが、パッションが足りないって…」
「白山の景色を描いた油彩だろ?パッションが必要なのか?」
「…おれもそう思ったけれど…若いのに無難にこなすなって言うことかな」
「あんまり気にするな。青弥は素直な良い絵を描いていると思うよ。個性も大事だけどな。まあ、本当に青弥の描きたいものを探しだせたら自ずと個性のある絵は描けるもんだ。今は探索中かな」
「そうだと…いいけど」

 自分の絵に何かが足りない気がしていた。それを情熱だと言われればそうかもしれない。
 おれは一生絵を描き続けたいと思っている。絵を描いてそれを売って生計を立てる。
 その為の多少の兼ね合いは必要だと思うけれど…結局はおれの芸術性の力量の有無だと思う。
 趣味で終わるか、一生を賭けれるか…

「サラリーマンだったら、年金も退職金ももらえるのになあ~」
「なんだ?もう、弱音を吐くのか?」
「ちょっとね…」
「安心しろ。おまえに好きに絵を描かせて食わせるぐらい、俺が見てやっから」
「そこまで季史さんに甘えていいのかなあ…おれ、美味しい食事も作れないし…子供もできないよ」
「ばーか、知ってるよ。俺は青弥がいいんだよ。青弥の才能も青弥自身にも惚れてるんだ…恥ずかしいこと言わせんな!」
 普段は顔色を変えない季史さんが、ガラにもないことを言ったと、顔を赤くする。
 おれは空になったおちょこに日本酒を注いた。
「もう一本つけるね」
 キッチンに立ったおれは一升瓶からお酒を注ぐ。
「それより、青弥。おまえ、今週末は高校の同窓会だろう?」
「うん」
「行くんだろ?」
「一応…出席にしておいたけど…」
「けど?」
「迷ってる」
「なんで…」
「…」

 聖ヨハネ学院高等学校の創立百周年記念に兼ねての同窓会がある。
 懐かしい人に会えるだろうし、今のおれの姿も見せておきたいとも思う。
 だけど…リンとどんな顔をして会ったらいいのか…わからない。
 三上からの電話で、リンが出席することは知っていた。
 リンは建築家として、ニューヨークでお兄さんの慧一さんと建築事務所を構えているらしい。
 おれに宣言したとおり、リンは一人前の建築家になった。
 おれもリンに認められるよう、頑張らなきゃいけない。
 …なんだかおかしい…リンにを引き合いにだして、どうなるわけでもないのに…
 リンなんて、もうおれとは関係ない。

「みんなに久しぶりに会うのも、きっと楽しいだろうから、行って来るよ」
 季史さんはにこりと笑い、頷いてくれた。

 週末、鎌倉の聖ヨハネ学院へ赴いた。
 体育館での記念式は終わり、教室で各回生の同窓会が行われていた。
「お~、水川。久しぶり~」
「三上、連絡ありがとう」
「元気だったか?」
「ああ、三上は…先生だったよな?」
「うん、地元中学の社会の教師だよ。水川も絵の方頑張っているんだろ?売れてるのか?」
「うん、今は院生。来年は卒業だから、そこからが勝負だろうな。まだまだ先は長いよ」
「水川ならやれるさ。なにしろ最優秀のお墨付きだもの」
「やめてくれ。昔のことだ。今は学問の方は全くからっぽだよ」
「しかし、本当に水川が画家になるとは…信じられなかった」
 眼鏡のブリッジを上げながら、高橋がこちらに近づいてきた。
「高橋は…建築士になったのか?」
「ああ、今はT建設の設計課に所属している。10年経ったら自分の家を継ぐつもりだ」
「相変わらずえらそうに言うもんだな。宿禰(すくね)なんかもう自分の会社作っているぞ~」
「宿禰と比べるな!あれは俺達とは違う人種なんだよ。じゃなきゃ、なんでニューヨークで個人の建設事務所やれるっていうんだよっ!まだ25なんだぜ?」
「宿禰はお兄さんと一緒に仕事しているから、ひとりで構えているわけじゃないよ」
「と、言っても高橋と宿禰を比べること自体が間違いだと言える。あれは人間外生物だ」
「真広、口が過ぎるよ」
 後ろを振り向くと桐生さんと美間坂さんが立っていた。
「桐生さん!美間坂さん…お久しぶりです」
「水川の顔を見にこちらに寄ってみたんだ。…元気そうで安心した」
「千尋はこの間おまえのリトグラフを買ったんだぞ。感謝しろ」
「ありがとうございます」
「違うよ。俺の誕生日に真広が俺にプレゼントしてくれたんだよ。わざわざ水川の絵を探してさあ」
「そうなんですか?美間坂先輩ありがとうございます」
「ふん。それより今日は宿禰はどうした。まさか来てないってことはないだろうな」
「それが…あいつ、急に来れなくなってしまって…」
「え?…」
 三上の言葉に驚いたのと安心したのが混じって変な声になった。
「宿禰はアメリカの建築家の賞を受賞してね。授賞式で来れなくなったんだよ」
「藤宮先生」
 リンのお兄さんの友人でもある藤宮先生が、また輪に加わった。
「向こうでは非常に権威のある賞で、ちょっとしたニュースになっているそうだよ」
「そりゃ凄い!」
「そうだったのか…宿禰の奴、急な用事で来れなくなったから、みんなによろしく言っておいてくれってだけ言ってたから、何があったのかって心配したんだけど…そんな凄い賞もらったんなら、ひと言言ってくれればいいのに…」
「より以上にあの美貌が思い上がった態度でいると思うと、憤りも甚だしいな」
「おい、真広、おまえは本当に…好きな奴には素直じゃないんだなあ」

 リンの話題で持ちきりになる空間に居ずらくなってしまった。
 おれはそっと教室から抜け出し、校舎から離れた。
 リンとおれの事について聞かれるのが怖かった。
 それだけじゃなく、一人前の建築家として認められ、権威のある賞を貰っているという事実が、ショックだった。
 素直に喜んでやるのが友達だろう。仮にも恋人だった奴じゃないか。
 心から祝福してあげたいのに…笑うこともできなかった。
 自分自身が情けなくて恥ずかしくて、とてもあの場にはいられなかった。
 リンと比べる方がおかしいってわかっている。
 高橋や美間坂さんが言うように、リンはおれ達とは違う賜物なのかもしれない。だけど、おれはリンと対等でいたかった。あいつと肩を並べて笑いあっていたかったんだ…
 
 そこまで考えて益々自分の愚かさを知った。
 今更なんだ。
 もうリンとの繋がりなんか全くない間柄なんだ。自分なりの決別も出来たはずだ。
 恋人同士だったのは、この学院で過ごした3年間でしかなかった。
 もういい思い出になったんだと、あいつらにそう言えばいいんだ。そして、一緒にリンの健闘を称えれば良かったんだ。
 …そんなこと…できやしない。
 リンを思うだけでこんなにも心が痛い。

 教会の尖塔に立つウリエルを見上げた。その姿がリンに似ていると思った。
 あの日、おれはリンに言ったよね。「ここにくればリンに会えるね」って…

 …会えないよ、リン。
 だって、おれにとって、おまえはあまりにも遠い…




おれが描いたの


フラクタル 16へ
「only one」1へ
リンミナシリーズはこちらからどうぞ。目次へ

「愛する人へ…」2へ







湊・J・カイリ君 - 2010.11.19 Fri

「SIDE CAR」のRoute Mさんが、フリー絵を見てお話を書かれました。

tuki-1.jpg


こちらの 魅せられて です。

感想は敢えて言いませんよ。褒めるの好きじゃないから。(;^ω^)


主人公の湊・J・カイリ君の視線で書かれた話なんですがね~。
上の三人とは違う子なので、せっかくだから主人公の湊・J・カイリ君も描こうか~と、思いさっき描きましたよ。

カイリ2


こんなのはインスピレーションですからね。
ちげーよ!って言われても((((((((o_△_)o サァーシランwww

話は予想してたとおりの運びで、これからのこいつらの距離がどうなるかが、興味深々ってところですね~

Route Mさん、使っていただきありがとうございました~

この子もお納めください。



で、自分のテキストは…来週か~?・・・(゜_゜i)タラー・・・


フリー絵。「タイミング」 - 2010.11.17 Wed

フリー絵です。
インスピレーションなど感じられましたら、自作テキストなどに使われて結構です。
その際、コメント欄にひと言、使用したいとお知らせください。
こちらからのテキストへの直接コメは申し訳ございませんが、遠慮させてください。
フリー絵に関しては、15禁であろうと、18禁であろうと、20禁であろうと、どんなテキストに使われようと全く構いません。




ネコ

アナログです。
3,4年前でしょうか。
その頃はまだCGに手をつけたばかりで、思うように色合いができなかったので、アナログばかりを描いてました。
私にはフォトショップよりSAIの方が向いているんですね。
水彩風に簡単に色付け出来るのはSAIです。
今はイラスタも使っていますが、殆どテクスチャのみに使ってますね。SAIが便利です。


話は変わって…自分の書く小説のことですが

ファンタジーっていうのは、一から作り上げることができる。
確かに自分の頭に描いたことを、文章にして読み手にその空想世界を理解してもらうってことは、とても描く力のいる作業なんですが、なにしろ世界を創る神になれるわけですからね。
楽しいですよ。
地形も国も法も魔法も全部作るんですよ。
まあ、色んなゲームや小説からの影響は大きいけれど、自分の世界で遊べるからね。楽しい。
私はヤフーブログに「みんなで作るゲームのオリキャラ」の企画をして、150人ほどのオリキャラを飾っております。そのうちの半分以上は私の考えたキャラです。
これは新しく考えたキャラも多数いますが、レイ・ラシードやアルス、ヴァレリアウスなどは、二十年前以上に作ったテキストのキャラです。リュウもそうですね。
12神もこの企画では他の絵師さんに協力してもらっていますが、自分の12神を持っています。勿論名前つきです。
いつかは書きたいと思っていますが、正直、無理な気がします。
疲れるので…(;^ω^)年なので…(;´Д`A ```

何の話かというと…

私はこの「green house」を書くまでは現代話ってとっても苦手だったんです。
専業主婦で社会との関わりが薄い自分に、今の現状を書くことは無理です。しかも地方に住んでいるのに東京や鎌倉って…(;^ω^)
本当に大変でした。
今はネットを使ってwikiやグーグルでわからないことは瞬時に探し出せます。
アメリカなんて行ったこともないのに、キャラが行っちゃったから書かなきゃならない…
その街について徹底的に調べあげ、グーグルマップでその街の通りを歩き、そして書く。たった二行の街の様子に何日もロケをするみたいなもんです。
だけどそれをしないとキャラがその街で息をしないんですね。
こういう作業のくり返しは楽しいんですが、また難しくもあります。
行った人なら嘘だとばれるとは思うんですがね~(;^ω^)
まあ、BLは一種のファンタジーですから許してもらいましょう。

なので…アーキテクトの賞とかね…嘘ですからwwwもう、そんなの賞ねえよ。って話。
でももしかしてあるの?って騙せたら書き手冥利に尽きますね。

あと、何回で終わるかわからないけれど、確実に終着駅に向かっております。
もし良かったら、お付き合いください。


宿禰凛一編 最終章「only one」2 - 2010.11.16 Tue

石畳

2、
 アメリカでアーキテクト、即ち建築家の資格を取るには、多くの条件がある。
 専門的な知識を得る為の大学、大学院での勉学は勿論、数年間の実務経験と難関といわれる建築家登録試験をクリアしなければ、アーキテクトとして認められない。
 俺は一人前のアーキテクトになるため、寝る間も惜しんでひたすら勉強した。
 気ままな一人暮らしも身の回りどころか飯を取るのさえ億劫になってくる。
 大学の近くに新たに自宅を設けたリュス・ブライアン夫妻の家へちょくちょくお世話になる事も多く、夫妻の薦めもあり、一年後には居候させてもらうことになった。
 エリザベスは本当の孫のように俺を可愛がってくれたし、リュスも色んな相談に乗ってくれる。
 何より食生活の面で心配することがなくなった。
 たまにユニオンシティの社宅で仲良くなった飯田さん達と食事を楽しんだりする。
 休日はオートバイを飛ばして、ニューヘヴンの慧一に会いに行く。
 慧一との仲は変わらず、慧一自身の仕事も充実している。

 大学生活も慣れれば楽しいし、志を同じにしている仲間はお互いを高めあうにはいい刺激をくれる。
 真面目な学生が多いのもこの学科の特徴でもある。
 大学のすぐ近くにある世界一の収容を誇る聖ヨハネ大聖堂には、何故か親しみを感じてよく拝観に行く。
 入学して三年目に鳴海先生がこちらに研修にいらしてて、久しぶりに再会した。
 何故か紫乃も一緒にいたのには驚いたが…思わず、洗礼でも受けたのか?と、尋ねてしまった。
 俺は飛び級をして大学四年生になっていた。
 来年は院に進み、修士を取る予定だ。
 平行して慧一の仕事も手伝うことにしている。

 慧一は、雇い主であるパトリック・ネヴィルの協力も得て、独立してニューヨークに事務所を設立することになった。場所はMPDとチェルシーの境界に位置する14thストリートのビルの二階だ。
 名前は「A.SUKUNE アーキテクツ」と名づけた。
 Aは勿論、母の葵と姉の梓からもらった。
 建前はアトリエ系の建築デザイン製作を中心としたが、個人の住宅設計も積極的に受けることにした。
 慧一は若手では名の知れたランドスケープデザイナーだし、またマスターアーキテクトとしても実績を重ねる努力をしていた。
 俺は慧一の右腕になる為にも、エンジニアとしてもマスターとしても揺ぎ無い知識と経験を早く身に着けなければならなかった。
 事務所はNKコーポレーションを早期定年をした飯田さん、また慧一がお世話になった当時のプロジェクトマネージャーが営業と経営を管理している。パックが慧一の為に遣したサポートと秘書の6人で新しい事務所を開いた。
 勿論約束どおり嶌谷さんが筆頭株主だ。同じく宗二朗さんの援助が大きかった。
 彼の背景にある嶌谷財閥の力は大きい。
 アメリカでの企業進出を増強したい嶌谷カンパニーが、俺たちみたいな新参者をマトモに相手するはずもないから、宗二朗さんは個人での出資だ。
 だが、俺としては貰うだけで、借りを負うのは気に入らない。
 そうでなくても下請けや施工の会社は俺たちだけでは優良な企業を選択する力はない。
 嶌谷カンパニーとの繋がりは生き残る為に必要だ。
 慧一は反対したが、嶌谷カンパニーの広告モデルとして二年間契約した。
 その広告や映像はアメリカ国内だけだったが、充分にクライアントを満足させるものになった。

 それとは別に宗二朗さんとは秘密の契約をしていた。
 一晩だけ寝るという下らないものであれ、事実、肌を交じらせればお互いの弱みを握ることになる。
 俺は宗二朗さんとは対等でありたかった。
 宗二朗さんは嶌谷さんをある種神格化している。その嶌谷さんが守りたいと思っている俺の身体を宗二朗さんに与えておけば、何があっても俺を裏切ることは避けるはずだ。嶌谷さんを泣かすことはしないだろうからな。少なからずとも俺たちの会社を支えてくれるだろう。
 勿論、こちらも思惑も知った上での合意だった。だから正直、宗二朗さんも俺も楽しくもなかった。
 終わった後、「全くこんな胸糞悪いセックスはねえよ。二度とおまえとは寝ないからなっ!」
 宗二朗さんは不機嫌に吐き捨てた。
「こっちからもそう願います。これはあくまでも契約だからね」
「…こんなことばかりしてると、兄貴が呆れ果てるぞ」
「大丈夫だよ。慧は俺が男娼であっても、俺をはねつけたりしないもの」
「…本当にそう思っているのか?」
「信じるということは、そういうことなんでしょ?」
 
 慧一がこのことを知ったかどうかはわからなかった。
 俺はそうやって何人かの契約したトップと求められたら一度だけ寝ることはあったから、宗二朗さんの事も感づいてはいるだろう。
 慧一は何も言わない。
 一度だけ酷い目に合わされて朝方帰ってきた時、血相を変えて俺の傷の手当をした。
 何も言わないでくれと頼む俺に、慧一はただひと言「おまえを愛している。ただそれだけだ」と、真っ青な顔をしてそう言った。
 慧一に対して罪悪感がないわけではない。
 俺は自分をミナへの購いとして身体を他人に許している。嶌谷さんはそれは間違いだと言った。だが、俺は自分がどうしても許せない。そして、慧一も同じように感じている罪悪感は、俺を選んだことへの罪の意識から来ている。
 俺たちは結ばれながらも、共有の罰を味わっている。

 自分にマゾ的思考はないと思っていたけど、ここまでくると変な気分だ。
 慧一の魂の片割れでも入り込んだのかもしれない。
 ともあれ、俺と慧一は、比較的上手くいっている。
 そう思うことにしている。

 大学院を卒業した翌年の夏、研究論文に出した「和風建築と西欧の融合とその機能の合理性」が、SIA建築デザイン賞の新人賞を受賞した。
 合衆国では割と権威のある賞であり、慧一もシカゴ大学院生の頃にこの受賞していることもあって、兄弟揃っての受賞は珍しいとのことで、連日メディアからの記事依頼が殺到した。
 その頃ちょうど、聖ヨハネ学院の創立百周年記念の同窓会もあり、俺も出席することになっていたが、受賞の為仕方なく欠席をした。
 実は学院の体育館と教会の建て直しの契約を事務所が受けていた。
 鳴海先生直々の申し出があり、俺も慧一も全力で設計デザインをすることを約束していた。
 綿密な打ち合わせの為に、何度も学院には出向いていたんだ。
 ほぼ輪郭も決まり、それを皆に報告したかったんだが…

 本当は…一番の目的はミナだった。
 ミナと会えるかもしれない…そう思うだけで心臓が高鳴る。
 高校を卒業して一度も、連絡していない。
 三上や桐生さんたちから、ミナがT大を退学して、美大に入学、そのまま画家の道を目指していると聞いていた。
 そのニュースを聞いた時、とても嬉しかった。ミナが自分の道を見つけたんだと思ったから。
 そしてそれは俺の自慢でもあるんだ。ミナは俺を沢山描いてくれていたから…
 もう六年になる。
 俺なんか忘れて、ミナもいい恋をしているだろう…当たり前だ。
 だけど、少しでも俺を思っていてくれたらって…自分勝手に願ったりしているんだ。

 だから、受賞式にミナと誓った指輪を嵌めて出席した。
 マスコミが来るのはわかっていた。
 もし日本でこの記事を見つけてくれたら、ミナに知って欲しかった。

 今でも愛しい。ミナ、君に恋をしている…のだと…
 





「only one」 1へ3へ  

花々

「聖王伝」プロローグ - 2010.11.15 Mon

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エイクアルド帝国皇帝レイ・ラシード・ヴェルガルドは、帝国騎士団十万を率い、南東に位置するリゴス島を取り囲む島々のひとつに陣営を布いていた。

リゴス島を治める僭主ガイウス・ヴドレックは先王の第一宮廷魔道師の立場を利用し、リゴス島主の座を卑劣な策を用いて奪い取ったのである。
しかし、統治者としてのヴィドックの評価は、高い。
先王ラフテフ二世はかなりの道楽者であり、その生活も派手であったのみならず、不埒な言動が多々あり、重臣以下頭を悩ませていた。
それから比べれば、いかに僭主であろうともヴドレックの政治的手腕は信頼の高いものであり、住民達も諸手を挙げて僭主誕生を喜んだのだ。

エイクアルド軍のリゴス島ルードィア侵略は二月前から行われてはいたが、その実現は未だ日の出を見ない。
神の寵児、地上の覇者レイ・ラシード聖王の今までの百戦錬磨の戦いにおいて、ひとつの国に対し、これほどの時を要しても崩れ落ちない要塞は皆無であった。
それでも帝国の皇帝であるレイ・ラシードはその攻撃の手を緩めなかった。

レイ・ラシードのこの国にこだわる最大の理由はヴィドックの提唱する宗教にある。
ただの信仰宗教ならまだしも、この僭主は自分に感応する能力者、魔道を心得る者、幻術師をまねいては何やら妖しげな実験を行っていた。
死人を生き返らせる法術、天候を操る法術、人々への団体催眠など。
この島の中で収まっていればそれはそれで良かったのだが、事は思わぬ事態を起こした。

元来、このルードィア教領とは、エイクアルド国は盟約を結んでいたのだが、レイ・ラシードが帝国皇帝に即いた時、彼はその盟約を破り捨てた。
この黒魔術的要素を持つ国教を毛嫌いしてもいたし、何よりヴドレックの内面のドス黒い野心に、胸糞が悪くなるのだ。
レイ・ラシードは魔術師としての透視能力はその師であるヴァレリアウスさえも舌を巻くほどであった。

しかし、驍勇英武のレイ・ラシード率いる帝国軍をもってしても破られぬ理由がルードィア側にはあった。
ヴドレックは魔界との接触に成功していた。
不幸といえば不幸であった。
その魔界の者が地位の低い魔族であっても、ヴドレックには力を手に入れさえすれば良いことであり、その盟約がいかなる真意なのかは彼にはわからなかったのだ。

その血の盟約により、彼は脅威的な魔力を身につけ、他の魔術師と共謀し、リゴス島全体の強い結界を張り巡らしたのである。
攻撃するでもなく、和平を求めるでもないルードィアの不気味な抵抗は、その魔力がただならぬ恐怖と気味悪さを感じさせ、さすがの帝国軍もその強襲を渋らせた。

元より容易には征服しかねると踏んでいたレイ・ラシードもこの肌触りの悪い結界の異臭には辟易した。

「ヴドレックめ…何を企んでいるのか…」
「ヴドレックの魔力は神々の許すものではありません。隅を突けば脆く崩れるのみ…あとに残るのは魔族どもの恐ろしい見返りだけです。今しばらく時間を下されば、我々が手を下さずともあの僭主は魔界に堕ちることになりましょう」
静かに諭す軍師ヴァレりアウスの言葉を聞きつつも…
窓の外、暗闇に逃げ惑う精霊達の気狂いじみた悲鳴が、レイ・ラシードの耳の奥に響き、あたかも恋人のすすり泣く声にも似ている…そんな気がした。



公式地図完成記念~o(*^▽^*)o~♪
この先は全く書いてませんわ(;・∀・)

「聖王伝」の地図です。 - 2010.11.15 Mon

「彼方の海より…」と「ユーリとエルミザード」の世界の地図は、
アナログで書いていたのですが、
この度、ブロ友のゆずるさんの好意でCG編ができあがりました~


tizu
これ↑がこれ↓になった!

地図

ステキですね~もう感動しちゃったわ~

この地図は、ヤフーブログで私の企画する「みんなで作るゲームのオリキャラ」での世界観をわかりやすくする為に提供したんですが、もともとは私が20年以上前に書いたテキスト「聖王伝」の地図なんですね。

「ユーリとエルミザード」ではエイクアルド国の首都、イルミナスでの物語が語られる予定です(;^ω^)早く書かないとね。

「彼方の海から…」のメトネはラサイマ公国の公主から、魔界へ。
この魔界の地図も描かなきゃね~
頭ではできているので、そのうち描きましょう。

やっぱりこういう風にできあがると、めっちゃ創作意欲が増します。

それから検索からたくさん来られて、ありがたいです。
少しでも楽しんでもらったら嬉しいです。
ありがとうございます。




櫻井季史(きし)さん - 2010.11.13 Sat

ミナの恋人となった櫻井季史さんの紹介コーナー

ミナが20として、季史さんは27
7つ違いね。
感情はあまり顔に出さないタイプ。
ハンサム度は…普通~
年よりも上に見られるのがちょっと不満。
好きな食べ物は鍋物。(簡単で美味しい)
ミナが来てひとりで鍋をつつかなくて良くなったから、うれしい。

ミナと同じくM美大出身。工芸デザイン科。
仕事の暇を見つけて、自作の工芸を作ったりしている。

櫻井季史


「green house」には実際のモデルは居ませんが、主要キャラには声優さんを当てはめてます。
ちょっとばかり声優オタなもので(;´▽`A``

凛一…緑川。これは昔から緑川さんがめっちゃ好きだったから。なんのアニメで好きだったのかも忘れたくらい好き。ww
ミナ…初めは神谷で行こうと思ったが、近頃「銀魂」を見るたび新八の阪口さんの声がミナの声に聞こえてならない…まあ眼鏡だろうねwwだから阪口さんで
慧一…森川。セフィロスだからさ~ww
紫乃…小野。やっぱ小野ちゃんでしょう~
で、季史さんは…まあ苗字からわかるよね。これは声が先にきている。
凛に似ているというキャラを作りたかったから、櫻井さんにした。
昔から緑川さんと櫻井さんを私はよく聞き間違えていたのです。
「FF7」のクラウドを聞いたとき、櫻井さんって緑川さんが改名したの?ってずっと信じていたくらいなのです。
「ものの怪」なので競演されてますが、やっぱり良く似てますね。

あと、嶌谷さんやら宗二朗さんやら…まあ千葉さんや関さんで~

メトネは神谷で、リュウは…これむずいけど…三木真…か遊佐か石田か…間違っても森久保ではないだろう~www



宿禰凛一編 最終章「only one」1 - 2010.11.12 Fri

凛卒業


「only one」
1、
 ミナと別れ、マンションへ帰ってきた俺を、慧一が待っていてくれた。
「お帰り、凛」
「ただいま」
「嶌谷さんの店には予定通り行けるかい?」
「ああ、勿論だよ」
「今晩は嶌谷さんのマンションに泊まって、明日の朝、成田へ行くつもりでいいんだね」
「うん、それでいい」
 ほとんどの家財には埃が付かないようにカバーをかけてあった。
 ラージサイズのスーツケースには俺の荷物が詰め込んである。
「しばらくここへは戻れないと思うけれど…おまえの荷物はスーツケースふたつでいいのか?」
「うん、充分だよ。別にそんなに大事なものはない…」
 言葉に詰まってしまう。本当にこれでお別れなのか…と、思うと涙が出た。
「凛…」
「ばかだね。別にいつでも帰って来れるのに…いざとなるとここを出て行くのが寂しくてたまらないなんてさ…」
 このマンションへの未練だけではないことは、慧一だってわかっていた。だから俺を抱きしめたまま何も言わなかったんだ。

 夕方、「Satyri」へ行く。常連のお客さんやら、バンドのメンバーが俺の為に、豪華な壮行会を催してしてくれた。
「凛ちゃんもとうとう大人ね~じゃんじゃんお酒飲んでね~」
「おいおい、まだ凛くんは未成年だろう。だけど寂しくなるなあ~この店に美少年がいなくなると鑑賞する楽しみが減ってしまう」
「戸田さん、俺、もうすぐ十九になるんですよ。少年じゃあおこがましいや」
「じゃあ、麗人だ」
「あら、麗人って…アタシみたい~」
「…ミコシさんはアングラドラァグクィーンじゃなかった…」
「なんか言った?マスター、意地悪な三田川さんになんか言って!」
「…ミコシさんは充分お綺麗だよ。俺には高嶺の花だがね」
「心がこもってない」
「…バレました?」
「ひどい~凛ちゃん、何か言ってよ~」
「こんなに楽しいのに…しばらくみんなと会えなくなるのが辛くてさ…胸が詰まっちゃうよ」
「…」
「泣かせること言わないの。いつだっていつまでだって、みんなここに居るからね…」
「別れってさ、一生会えない別れとまた会う別れがあるけど、凛くんとは悲しい別れじゃない。今度会う時は美少年じゃない凛くんを見れる。大人の凛くんもさぞかっこいいだろうねえ~また目の保養に預かろうよ」
「凛一はね、アメリカの大学で建築を学ぶんだ。将来は有望な建築家だ。慧一くんと一緒に設計事務所を設立する夢がある。そんで、その会社の筆頭株主になるのが俺の夢だ」
「あ~マスターったら、また自分だけいいとこ取り~。アタシだって凛くんの株主になるもん」
「俺も及ばずながら出資させてもらうよ~」
「俺も」
「俺も」
 みんなの笑顔が嬉しかった。
 三田川さんや戸田さんやミコシさんや色んな人たちがおれを支えてくれたから、俺は今笑っていられるんだ。
 みんなありがとう…みんながHAPPYでいられるように、いつだって願っているから…

 その晩、俺と慧一は嶌谷さんのマンションに泊まった。
「しばらく日本には帰れないから、今日は嶌谷さんと一緒に寝てもいい?」
 俺のおねだりに嶌谷さんはおかしいぐらいに戸惑い「困るよ」と、断った。
「凛が言い出したら引かないことは嶌谷さんが一番良く知ってるじゃないですか。我儘な弟ですが、今日だけは甘えさせてやってください」
 慧一の頼みに嶌谷さんは渋々承知した。

 嶌谷さんのベッドはふたりで寝ても充分に広い。
「宗二朗さんも一緒に寝たりするんだよね。どっちが下?…まあ聞かなくてもわかるけどね。あの宗二朗さんが受けなわけないしね」
「おい、下らないこと言うなら、慧一くんのベッドへ行けよ」
「嶌谷さん、ごめん。今日はちょっとさ…慧一と一緒に寝るのは…辛いんだ」
「…そうか」

 嶌谷さんの胸に身体を寄せる。身長は嶌谷さんより高くなってしまったけれど、俺の方がずっと細いから、やっぱり子供みたいに小さくなれる。
 嶌谷さんはゆっくり俺の背中を抱いてくれた。
「初めて会った時のこと覚えてる?」
 俺は顔を上げて嶌谷さんを仰ぎ見た。
「ああ、勿論だ。クリスマスの朝、おまえは店の外で野良猫のように凍えていた。だけど俺は知ってたよ。汚れていてもおまえが光り輝く獅子だってことを。おまえのその綺麗な見かけだけに惑わされたわけじゃないぞ。俺はおまえの魂に一目惚れしたんだ。おまえを見つけて、おまえを傍で見ていられたことは俺の幸運だったと思ってるよ」
「嶌谷さんに会わなかったら…俺は酷い人間に成り下がっていただろうね。慧一の本当の心もわからず、ミナと恋する感性も持ち得なかっただろう…どんなに感謝してもし足りないぐらいだ」
「凛は俺に出会わなくても、違う誰かがおまえをサポートしていたさ。運がいいのは俺の方なんだよ。俺には宗二朗がいたけれど、あいつは見守る必要のない男だからな。俺は…何かを可愛がりたかったんだ。支えになりたかったんだ。多分、亡くした息子への罪滅ぼしだと思うけれど…だから凛を息子のように思いたかった…」
「うん」
「だけど…結局おまえは息子の代わりじゃなかったよ。俺はおまえが、愛おしかった。俺のものにするには、勇気がなかったんだけどね。おまえは眩しすぎたから」
「嶌谷さん…俺が好き?抱きたいと思う?」
「凛…この状態で俺を誘惑するなよ」
「だって…嶌谷さん、勃ってるじゃん」
「バカ、男の性(さが)だよ」
「俺としては嬉しい限りだよ。まだ嶌谷さんにそういう風に思ってもらえてさ」
「おまえみたいな奴と寝ていて勃たない男はいないさ」
「俺、嶌谷さんになら抱かれていいけど」
「またそういう事を言う」
「だって、愛おしいと思ってくれてる人と寝たいと思って駄目なの?俺だって嶌谷さんの事大好きだし、寝たからって、俺達の関係がどうなるわけじゃない。嶌谷さんも俺も自分達の立場をわきまえてる」
「…凛。ありがとうよ。おまえの優しさというか…自分を与えるっていうサクリファイス的な考え方もわからんじゃないが、傍にいるものは悲しむ。おまえを愛するものはおまえの自己犠牲を自分の罪だと感じる…わかるね、凛」
「…」
 だって、もう…俺も慧一も何重にも罪を犯しているじゃないか。これが俺達兄弟の運命だとして、俺がその罪を購う手段として、自分にできることは他に何がある…

「嶌谷さん、俺は…ミナを捨てた。心から愛していると誓ってくれたミナを…悲しませてしまった。ずっと好きだと勝手な言い草だけを残して…。
慧一を選んだことを後悔しているんじゃない。だけど…この悲しみと罪悪感に俺は負けてしまう…
月村さんの時はこんな感情はなかった。俺は月村さんを好きだったけれど、最後まであの人の傍にいることができた。あの人もそれを感謝してくれた。おれはあの人の死を納得することが出来た。
だけど…ミナには…ミナに非はない。全面的に俺が悪いんだよ…あいつを泣かしたくなかったのに…俺は」
「凛…別れたばかりだもの。辛いのはわかる…だけどな、俺はおまえの味方でありたい。その子がどんなに可哀相であろうと、俺は凛に幸せになって欲しいんだ。だから、何度でも言うよ。傷ついたとしても一時の事だ。時間というのは何よりの良薬となる。良薬口に苦しっていうだろ。今は辛いだろうが、耐えなさい。いいかい、恋愛はどちらにも責任があり、そしてどちらも罪を負わないものなんだよ」
「…」
「わかったね、凛。自分を責めるな。おまえの道を進みなさい。みんなおまえに期待している。それはおまえが大好きでおまえに憧れや輝く未来を見てしまうからなんだよ。俺もおまえが笑っている未来を見たいんだ」
「…ありがとう、嶌谷さん。期待されるってことはきっと…生きる価値があるという意味なんだろう。嶌谷さんやみんなが見守っていることを、心に刻んで、頑張るから」

 時間が経てばミナの傷も癒すことができる。
 「ずっと愛している」と、誓った言葉もミナを癒すものになる。
 そう信じたかったけれど…
 ミナは俺を許さない、きっと。

 誰よりも幸せにしたかった。
 おまえの笑い顔を見ていたかった。
 ミナ…ごめん…


 アメリカでの生活が始まった。
 コロンビア大学に入学の希望を出した後、色々な面接やレポートの提出に追われていた。
 聖ヨハネ学院やリュスの推薦で、聴講生になれたのは五月。
 ニューヨークで一人暮らしを始めた。
 九月には正式に大学へ入学することが決まり、俺と慧一は夏季休暇を利用して、欧州へ旅行へ行った。
 イギリスにいる両親にも会い、大学のことや将来のことを話してきた。
 両親は心から喜び、親父は終いには涙を流し「葵がどんなに喜んでいるだろう。葵は本当に凛一を可愛がっていた。自分の身代わりにお前を産んだようなものだから、一層愛おしかったのだろう。こんなに立派に育った凛一を…一度でいいから見せたかった」と、言われ、俺ももらい泣きをしてしまった。
 
 ホテルに帰って、慧一と二人きりになった時、気になったことを話した。
「親父の奴、あんなに母さんの話してさ、和佳子さん、気を悪くしなかったかなあ」
「俺も母さんがおまえをどんなに愛してたのか知っているからね。父さんと同じ気持ちだよ。和佳子さんだって父さんの気持ちはわかっているさ」
「俺は母さんの思い出はあまり覚えていないけど、梓が生きていたらって…思うよ。梓だったらきっと…俺と慧の事も支えてくれてたと思うから」
「俺は…梓には後ろめたくて、目を合わせられないね。梓は凛を欲しがっていたからね。それを俺が独り占めしてしまったんだから、恨まれるに決まってる」
「まだ言ってるの?」
「凛、これは俺の一生負うべきものだよ。おまえを…弟としてだけ愛していれば、もっと自由にさせていたはずだった。愛だとしてもね、おまえを俺に縛り付けてしまった事への俺の責任は重いと思っている」
「慧…もう言わないって約束したじゃないか。兄弟が愛し合ってしまったからって不幸だって決め付けるのは変だよ。俺は純粋に慧を愛している。欲情を持って慧を求めている。誰が後ろ指を指したって俺は構わないと思っている。ただ、社会的に不利になるなら公言しないと言っているだけだ。慧の言う責任とは負い目だ。世間と俺に対する負い目なんて感じないで欲しい。俺を愛しているなら…」
「わかっているよ、凛。わかっているんだよ。ただ、自分だけがおまえを得た喜びを味わっていいのか…母さんだって梓だって…嶌谷さんや…水川くんだって…おまえを得たかっただろうって…思ってしまうんだよ」
 慧の想いが嫌と言うくらいに理解できた。

 俺達だけが幸せでいいのか。
 色んな愛があったから、結ばれた二人なのに…

 旅行の間、ずっと俺達は確かめ合った。
 ひとつひとつの想いや言い分をまさぐりるように触れ合った。 
 ひとつの感情がどうやって育ち、どういう愛として実らせたのかを、知る必要があった。
 時を違えて同じ腹から生まれたふたりが、ひとつの卵に還るのは、難しくはない気がした。






よあけ



「HAPPY」 26へ
リンミナシリーズはこちらからどうぞ。目次へ
「only one」 2へ


フリー絵。星降る夜に… - 2010.11.11 Thu

フリー絵です。
インスピレーションなど感じられましたら、自作テキストなどに使われて結構です。
その際、コメント欄にひと言、使用したいとお知らせください。
こちらからのテキストへの直接コメは申し訳ございませんが、遠慮させてください。
フリー絵に関しては、15禁であろうと、18禁であろうと、20禁であろうと、30禁であろうと、どんなテキストに使われようと全く構いません。


ジャングルジム3 (2)


色んなシチュが妄想できるようにした。
出会ったばかりなのか、どう告白しようか悩んでいるのか、別れ話なのか…
作り手の自由です。

ジャングルジム3

背景の星空はさとうさんより頂いたフォトを使用いたしました。
まあ、月夜にしようか、雪を降らせようか悩んだんだけどね。




フリー絵。愛し合う - 2010.11.10 Wed

フリー絵です。
インスピレーションなど感じられましたら、自作テキストなどに使われて結構です。
その際、コメント欄にひと言、使用したいとお知らせください。
こちらからのテキストへの直接コメは申し訳ございませんが、遠慮させてください。




ふたり1


構図自体は10年ほど前に描きましたね。それを書き直して三年程前に友人にあげたものです。
このブログの「君の見た夢」のふたりでもあるのですが、
もともとは全く違うキャラで使っていたので、フリーにしてもいいかと思いました。
と、言うより、この構図が自分は非常に気に入っているのです。
イメージもつかみやすいしね。

「greenhouse」のイラストは、絡み絵もかなりあるんですが、キャラが立ち過ぎているのと、私自身が非常に力を入れて描いているので、フリーにするのは無理なんですね。


そして、フリー絵をつかってくださる皆さんにひと言。

今日、とても大事なコメを頂きました。
Rさんありがとうございます。
サイアートさんは18禁のブログの絵は描かないとどこかでお聞きした記憶があるのですが…
…これはいわゆる都市伝説なのか?
世間ではサイアートさんはそういうことになっているのか?(;・∀・)
え~…少ないながらも色んな方にBL絵を提供してるんですが、18禁じゃないテキストは少ないんじゃないかな~
大体今時BLブログに18禁じゃないテキストを探す方が難しいでしょう。
確かにめちゃくちゃ激しいエロテキストや三日に一度は18禁、18禁が一週間続くテキスト…などの小説には挿絵を描きたいと思いませんよ。
ただ挿絵を描くのと、フリー絵を提供するという意味は全くちがいます。

結論…18禁ばっかり続くテキストの挿絵は基本描きません。
出来上がったフリー絵に関しては、15禁であろうと、18禁であろうと、20禁であろうと、30禁であろうと、どんなテキストに使われようと全く構いません。


と、偉そうに言ってもね、自分がイラストが上手いだなんて思っちゃいないのですよ。
使われたら嬉しいし、描いた甲斐があったなあ~なんて喜んでいるのですよ。
ただやっぱね、色んなBL小説があって、好みというものがある。
だから字書きさんも絵描きさんも誇りを持って頑張ろうねって思います。

最後にRさん、貴重なご意見ありがと。
言われなかったら、まったく気づかないことでした。
そんなに気を使わなくても…噛み付いたりしませんから(;^ω^)
これからも気軽に使ってね~




水川青弥編 「フラクタル」 16 - 2010.11.09 Tue

yuki2

16、
 念願であった美大でのキャンパスライフが始まった。
 大学の授業も講義はあるが、大体は各自の制作に時間を費やすことになる。
 芸術家を目指す人たちはとにかく個性の塊みたいな連中ばっかりで、おれみたいな平凡な奴は終始圧倒される。
「おまえ本当に…ここの学生?」と疑心する奴もいる。
 それでもみんな自分の事以外はあまり関心を持たないし、なにしろ全員が芸術家を目指しているから、変な統一感があり、おれも居心地がいい。

 「美桜堂」の手伝いも大変だけど、すぐに覚えた。
 額縁を絵に合わせて縁から作っていく過程も楽しかった。 
 一見ぶっきらぼうな季史(きし)さんは、大らかで非常にフラットな人だ。
 リンに良く似ている声も、慣れてしまえばあまり気にならなくなった。似てはいても言い回しもアクセントも違うし、なにより、リンみたいなこっちが恥ずかしくなる事は言わない。…当たり前だ。
 仕事の教え方も簡潔で、わかりやすい。ミスしても怒鳴らないで、そこに至る失敗の原因を探って教えてくれる。
 最初は三十過ぎだと思ったら、まだ二十六だそうで、それには少し驚いた。
「そんなに老けて見えるか?」と、落ち込む季史さんに
「こんなに立派なお店のご主人だから…そんなに若いなんて思わなかった」
 季史さんのご両親は二年前までここで季史さんと一緒に商売をしていたが、ここを季史さんに任せて、ふたりは九州に新しく画廊を設けたそうだ。
「阿蘇の南の方に小さなペンションを建てて、楽しくやってるそうだ。星が綺麗よ~ってメールが来る。こんな大変な店を息子一人に任せていい気なもんだぜ」
「季史さんひとりでもやれるって思ったから、出られたんでしょ?見込まれてるんじゃない」
「老後の生活を楽しみたいだけだって。老後って言ってもまだ50代だけどな」

 毎日が充実した生活を送っていた。
 とりわけ季史さんのサポートはありがたかった。
 おれは絵を描きだすと夢中になってアトリエに篭ってしまう。
 食事を忘れるのは当たり前で、決められたバイトの時間さえもよく遅刻してしまう。
 あわてて、店に向かうと、季史さんはおれを責めたりしないで、「よお、現実に帰ってきたか?」と、笑う。
 料理も苦手なおれは、結局、手際のいい季史さんの手料理のまかないで毎日、美味い食事にありつけている。
「すいません。いつも季史さんにばっかり用意してもらって…」
「せっかくの独り暮らしだからね、美味いもんを食いたいだろ。覚えるしかねえよ。それに…青弥は本当に料理が下手だしなあ」
「…ごめんなさい」
 一度、朝食に目玉焼きを作ろうとして、焦がしてしまったことがあってから、季史さんはおれに料理を任せなくなった。リンと一緒の時も確かに、あまり火を使わせてもらえなかったから、おれに料理は向いていないのかもしれない。

 年の瀬も近づいていた。
 牡蠣鍋をつつきながら、季史さんと酒を酌み交わす。
 意外と言うか、おれは酒には強いらしく、あまり酔いが回らない。
「顔に似合わないというか…このとんだうわばみめ~」
「そういう季史さんこそ、本当に酒豪なんですね。ウイスキーのボトルがもう半分になってる」
「酒なんてたまに飲むから旨いんだよ。毎日だったら飽きらぁ。それより、青弥は正月はどうする?実家へ帰るのか?」
「はい、お正月ぐらいは家族と過ごさなきゃね。親不孝も過ぎると恨まれるもの」
「そうだな。親が元気なうちに甘えておけよ。そのうち、俺みたいに捨てられるからな」
 そう言っても時間が経てばどちらにも酔いが回って、ふたりとも無駄に饒舌になってくる。

「季史さんは…誰かいい人はいないの?」
「俺か?う~んと、二年前ぐらいに別れた。ここに住んでいた絵描きだったんだが、好きな絵を描きたいってフランスに行っちまった…」
「そう、ですか」
「それで、向こうで有名な芸術展で入選してな。立派な芸術家の仲間入りだ」
 なんだか、おれの境遇に似ていて共感しちゃうな。
「そういう青弥はどうなんだ?おまえ、彼女は…いるようには見えないなあ。デートもする暇もないし、携帯で話し込んでもいねえしな」
「アメリカに留学…してるんです…」
「へえ~、じゃあ、遠距離恋愛か…大変だな」
「恋愛…なのかな」
「え?」
「高校を卒業して、二年近くなるのに、一度も連絡してこない」
「そりゃ…気の毒だな」
 季史さんは拙い事を聞いたと思ってか、それ以上の詮索はせず、違う話に切り替えてくれた。

 風呂も済んで、アトリエに帰る時、季史さんが声を掛けた。
「青弥はクリスマスは空いてるか?」
「はい、大丈夫です」
「じゃあ、なんか美味いもんでも食いに行こうか」
「…いや、いいです。気を使わないで下さい」
 
 アトリエに帰り、自室の二階のベッドに寝転がった。
 枕元の壁には、リンから貰ったドリームキャッチャーのお守りを飾っている。
 願い事が叶うというそれに、おれはリンに会いたいとだけ祈り続けてきた。
 だけど、夢にさえリンは出て気やしない。
 リン、知っているか?ひとりに耐え切れない夜は、おまえからもらったジャケットを抱いて眠るおれを…
 おまえが残してくれた言葉は、おれに希望を与えてくれた。けれど同じ分だけ寂しくてたまらないよ。
 おれはおまえに繋ぐ意味を疑ってしまう。
 リン、おまえがもう一度おれを愛していると言ってくれたら…


 クリスマスは雪が降るほど寒くもなく、一日中、どんよりとした雲が空を覆っていた。
 おれは光の取れるアトリエの場所を選んで、リンの肖像画の続きを描いていた。
 手直しした回数は数え切れないほどだ。だが、まだ満足できる出来ではない。
 カンバスのリンはおれを見ている…

 リンと過ごしたクリスマスを思いだした。
 あんな素晴らしい夢のようなクリスマスはなかった。
 リンもおれも本当に幸せだったんだ。
 なのに…

 リンからの連絡は一切無かった。
 今更だ。去年だって、なかったんだ。
 …卒業して、一度だってメールも電話も手紙も来ないじゃないか。そんなの待ってたって来やしないことぐらいおれだってわかっている。
 リンは…リンには慧一さんがいて、いくらおれを好きだって言ったって、おれの元には帰って来ない。
「一生ミナに恋し続けているから」「ミナは俺の永遠の恋人だよ」
 その言葉が嘘だったとは思わない。だけど、時が経てば感情だって変わるって言ったのはおまえだろ?
 もう二年だ。
 二年間ほっておかれたまんまで…おれが何も求めないでいられるって思っているのか?
 これからもずっとひとりでおまえを想って生きなきゃならないのか?

 …カンバスのリンは本当にこんな顔だったのか?
 リンはどんな顔をしていた?
 …おれにはリンの本当の顔がわからない。
 おれを愛してるって言ったリン。
 おれを抱いてくれたリン。
 おれに生きる希望を与えてくれたリン。
 ずっと一緒に歩いていくって約束したじゃないか…

「噓つき、噓つき、うそつき…」
 急に目の前がぶれてくる。
 胸にたまった澱が堰を切ってあふれ出してしまう…

「おまえなんか…おまえなんか大嫌いだっ!思い出にしないって?おれを捨てて、勝手にアメリカに行って、自分だけ慧一さんに甘えて…
おまえに捨てられたおれはどうなる?
…すっとこうやって、いやしないおまえを思い続けて、おまえの絵を描いて…やりきれないまま生きていかなきゃならないのか?
…リン、おまえが憎いよ。
なぜ、おれを捨てた。なんでおれを選んでくれなかった。
あんなに…あんなに愛していたのに…
リン…ずっと一緒に歩いていけるって、信じてた…本当に…本当に…」

 カンバスに絵筆で大きくバツと描いた。
 もうこんな絵なんか知るもんか…来ないリンを待ってどうする。想い続けてどうする。

 雨の降る庭へ出た。
 首にかけていた鎖を取った。
 お互いにプレゼント交換をしたお揃いの指輪だ。愛していると誓った大切な指輪だ。
 絵を描くと油がついて汚れるから、鎖を通して首にかけていた。一度だって外した事はなかった。
 おれはそれを枯れた芝生に投げつけた。
「リン、おれは、おまえを忘れる。もう…二度とおまえなんか描かないし、おまえのことなんか…知らないっ!」


mina-namida.jpg


 立ったまま泣きじゃくるおれに、後ろから黒い影が覆った。
 季史さんの差す傘だった。
「風邪ひいちまうぞ、青弥」
「季史さん…」
「今頃風邪引いたら、本当に寝正月になっちまう。風呂沸かしてやるから、あったまって…それから鍋でもしようか。せっかくのクリスマスだからな」
「…うん」
 おれは季史さんの胸にすがりついた。
 だって、おれには季史さんの他には、もう誰もいない。

「リンが好きだった。でも、もう忘れてやるんだ。全部…なかったことにするんだ…」
「青弥…無かった事にする必要はねえよ。本当に好きだったんだろ?いい思い出にすればいいんだよ。自分の中の一番綺麗なところに飾ってやればいいんだ…青春って、そういうものなんだって言ってた」
「…誰が?」
「うちの親父」
 そう言ってニコリと笑う季史さんの優しさが、おれには怖くて…離れようとした。
 だけど、季史さんはしっかりおれを抱いて離さない。
「青弥のことを好きになってもいいかい?おまえを守りたいんだ。俺は…青弥から離れたりしないから…」
 その腕を離すことなんか、今のおれには出来ない。
「リンを失った傷を癒す代わりにでもいいですか?季史さん」
 そう言ったおれに、季史さんは黙って頷いてくれた。

 さようなら、リン。さようなら…
 もう、おまえもおれも自由になっていいんだ。
 本当に幸せだった。
 リン…おれはおまえを愛していたよ。





フラクタル 終



 
凛肖像画22


「フラクタル」 15へ 
「愛する人へ…」1へ

水川青弥編 「フラクタル」 15 - 2010.11.08 Mon

minaime-ji.jpg

15、
 翌日、大学に退学届を提出。その後、鎌倉までバイクを走らせ、町田先生に美大を受けたい旨を伝えた。
 町田先生は大学を辞めたことをこそ驚いたが、美大受験に全面的に協力してくれると言ってくれた。
「よろしくお願いします」
「うん、とにかく学力テストの方は問題ないだろうから、後は実技だ。受ける大学にもよるが学科は決めているのかい?」
「一応、M大の油彩学科を目指したいです」
「俺の後輩になる気か?」
「そうなんですか?」
「だったら教えがいがあるな。実技はデッサンと油絵だ。デッサンはとにかく手当たり次第描き続ける事。油絵は六時間という限られた中で自分の絵を仕上げなきゃならない。早く自分なりの絵を探し出すことだ」
「はい、頑張ります」

 高校は夏休みに入ってた。
 しかし進学校であるヨハネでは夏休みといえど、生徒達は毎日の補習で日頃と変わりなく騒がしい。
 「水川!」
 去年の担任だった藤内先生が、廊下の窓から手を振っておれを呼ぶ。
 「今から温室の水撒きに行くが、おまえも来ないか?」
 毎日のように学院へは来ているが、学校の裏手にある温室には近づかなかった。
 あんなところに入ったら、おれは…
「すみません。おれ、用事があるんで、またこの次に」
 そう言って、その場から立ち去った。
 その日はリンと初めて温室で出会った日だったんだ。それを覚えている自分が何故か悔しかった。
 リンは…そんなことなんか、覚えちゃいない、きっと…
 校門を出る時に毎回振りかって見るチャペルの尖塔に聳えるウリエルの像が、今日は憎かった。
 
 秋が過ぎ、冬になった。
 おれはデッサンと油彩のスキル向上に明け暮れる毎日だった。
 独りで過ごすクリスマスも気にしなかった。桐生さんや美間坂さんや何人かの友人達はクリスマスパーティに誘ってくれたりするけれど、到底そんな気にはなれない。
 今、やるべきことをやっておかないと、後悔しそうな気がしてた。
 

 翌春、おれは第一希望のM美術大学に合格した。
 一番お世話になった町田先生へすぐに報告へ行った。
 先生は自分のことのように喜んでくれた。
「先生、お願いがあるんですが…」
「なんだ?」
「おれ、家を出ようと思っています。家から通えない距離じゃないけど、これ以上実家に甘えるのも気が引けるし、通学時間ももったいないから。授業料はともかく、バイトしてでも自分で生活だけはしたいんです。どこか、M大の近くに安いアパートはご存じないでしょうか?」
「あ…うん。ちょっと待ってろ。俺が前に世話になってた人に当たってみるから」
 そう言って、町田先生は携帯電話を手にする。暫く話し込んでいた先生がおれを呼んだ。
「水川、安くていい下宿があるんだが…」
「本当ですか?」
「うん、俺も昔随分お世話になったんだ。もう15年前だったから、物も人も変わってしまっているだろうけれど」
「どんなところでも構いません」
「条件があるそうだ」
「なんですか?」
「そこは画材屋と画廊を営んでてね。二年前に世代が変わって息子さんが経営を継いだそうだ。丁度人手が足りないから、安く下宿させる代わりに店の手伝いをしてくれる学生が欲しいという条件つきだ」
「それなら構いません。画材屋で働けるなら好都合だ。画才も少しは安く買えるかもしれないし」
「向こうは土日も店を開くから、そのつもりで仕事をしてもらえる人じゃなきゃ駄目だって言ってるよ」
「それで結構です。是非お願いします、先生」
「わかった。先方に伝えておこう」
「ありがとうございます」
「確か名刺があった…これだ。水川に渡しておくから、暇なときに挨拶に伺えばいいよ」
「はい」
 受け取った名刺には「美桜堂」という店の名前、裏には「ギャラリー時世」と、あった。


 三月に入っておれは、その「美桜堂」へ向かった。
 M大から歩いて十分もかからない。
 小さな商店街を抜けて、路地を曲がった奥にその家屋が見えた。
 瓦屋根の古い商家風の建物と、その横に外壁を漆喰で固めた土蔵が並んでいる。
 土蔵には「ギャラリー時世」と、商家の二階に掲げられた趣のある看板には「美桜堂」と描いてある。
 おれは格子戸をガラガラと開け、店の中に入った。
 吹き抜けになった天上。黒く塗られた梁は大きく美しい。TVでよく見る記念物の民家みたいだ。
 土間は広く、画材の並べ方ひとつとっても、単に棚に並べるのではなく、壁に沿わせて遠くからでもひと目で探せるように工夫されている。
 知らない人が入ったら、オシャレな喫茶店か何かにも勘違いされそうな、モダンな雰囲気だ。
 だけど、BGMなどは一切なく、通りからも離れている所為か、酷く静かだった。

 しばらく佇んでいたが、誰も出てこない。
 時折、ドンドンと何かを叩く音がする。
 思い切って大声で叫んだ。
「すいませ~ん。あの…こちらにお世話になる水川と言うものですが、誰かいらっしゃいませんか?」
 足音が聞こえ、作業用のエプロンをした男性が、奥の土間から出てきた。
 年は三十ぐらいだろうか…手には金槌を持っている。
「水川?…ああ、町田さんが言ってた新入りか。良かった、ちょうど手が欲しかったところなんだ。手伝ってくれ…何だ?鳩が豆鉄砲食らったみたいにポカンとして?俺の顔に何か付いてるか?…そういやさっきデッサンしてて、炭舐めたから、汚れてたか…おい、なんか言えよ」
 
 何か言えって…なにも言えない。
 だって…その人の声は、あまりにリンに似ていて、似すぎてて…
 心臓が止まるぐらいに驚いて、息が詰まって声が出なかったんだもの。

「あ、あの…水川…青弥って言います」
「そう。俺は櫻井季史(さくらいきし)だ。この春からM美大の学生なんだね」
「はい」
「良かったら、持っている絵でいいから見せてくれ」
 おれは持ち合わせのスケッチブックを差し出した。
 櫻井という人はそれを一枚一枚丁寧に捲り、頷きながら眺めている。
「君は何科?」
「油彩学科です」
「そう、じゃあ、今度は油絵も見せてくれよ」
「はい」
「ああ、ここに住むんだからいるでも見れるわけだね」
「そう、なりますか?」
「こちらの条件はわかってる?」
「はい、大学の講義がない時間はできるだけお店の手伝いをする。と、聞きました」
「うん。俺は時々お宝を探しに出かけたりするから、その時も店番を頼みたい。額縁のモールディングもやってるから、個展やらで飯も食えなくなるほど酷く忙しい時期もあるんだ。そういう時も、手伝って欲しい。全くのシロウトより、絵の事を知っている奴の方が助かるしね」
「はい、出来るだけお手伝いさせていただきます」
「じゃあ、こっちに来て」
 うなぎの寝床のような狭い土間から板張りの部屋が奥まで繋がっている。
 違う時代に来たみたいにドキドキする。
「こちらが台所とリビング。二階が俺の寝室。この土間を抜けたら、庭に出る」
 暗い土間から一気に光の降り注ぐ芝生の庭に出た。
 周りを囲んで色んな草木が無造作だけど植えてあるし、何より春の若芽が眩しい。
「あれがアトリエ兼、下宿部屋になる」
 櫻井さんが指を示した先に先程とは違ってコンクリートの近代建築の家がある。こじんまりとしているが、下宿にするには立派過ぎる。
 櫻井さんはそのドアを開けた。
「ここは絵を保管する倉庫に作ったんだ。画廊もしているだろ?どうしても沢山の絵を保管する場所がいるからね。今の画家はやたら号数のデカイ絵ばっかり描きやがるから場所を取っていけねえや。空いてる場所はアトリエに使っていいが、たまに色んな絵描きがここで描き足りたしたりするから落ち着かないかも。二階が君の部屋。と言っても、水屋も大して整ってないから、食事は母屋の台所を使ってくれていいよ。トイレは一階にある。風呂は母屋。バイト代下宿代を相殺してのただ働きになるけど…いいかな?」
「え?ただでいいんですか?」
「勿論水道、電気代込み。食事の材料もうちのあるもん使ってもらって結構だよ。なんかお金に苦労してるって聞いたからさ…働き次第ではバイト代を出すよ」
「あ、あの…本当にただでいいんですか?」
「いいよ」
「が、がんばります。ただで住めるなんて…アトリエも付いてるなんて…夢みたいだ」
「ついでに画材も安く提供しようか?」
「…あ、なんか変なこと企んでいませんよね?」
「へ?…よく判ったね」
「…」
「俺は将来見込みのある奴に唾をつけておくのがめっぽう上手くてね。これが大体ものになる。早くから才能を見込んでおいて、作品を安く手に入れるのさ。そして高値で売りさばく…どう?これ。最新の先物取引」
「リスクが半端ないや」
「芸術家としての才能は俺にはないが、投資家としては外れがないんだ。あんたも俺のお眼鏡にかなった逸材だ。頑張れよ」
「…」

 なんだかね、リンと同じような声音で言われるとその気になってしまうから、癪にさわるし、嬉しくもなる。 
 マジで櫻井さんのことをリンって呼ばないように気をつけなくちゃ。
 
 


季史

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フリー絵。天啓 - 2010.11.08 Mon

フリー絵です。
インスピレーションなど感じられましたら、自作テキストなどに使われて結構です。
その際、コメント欄にひと言、使用したいとお知らせください。
こちらからのテキストへの直接コメは申し訳ございませんが、遠慮させてください。



正面の顔も横顔も、ナナメもとにかく顔を描くのは大好きだ~
毎回微妙なニュアンスが変わるから、同じものと言われても二度と同じに描けないの(;´▽`A``

フリー絵22


フリー絵。運命 - 2010.11.07 Sun

フリー絵です。
インスピレーションなど感じられましたら、自作テキストなどに使われて結構です。
その際、コメント欄にひと言、使用したいとお知らせください。
こちらからのテキストへの直接コメは申し訳ございませんが、遠慮させてください。



ブロ友さんにあげた奴をかなり変えたイラスト。

構図としてはかなり気に入っている。

フリー絵1

髪が長いので現代物には難しいかもしれんが、ファンタジー、時代ものにはどうだろうか…


フリー絵をばんばん出す理由。

一杯絵が貯まったから。
それとそんなに長くブログをやる気もないだろうから。
できることを今やっておきたい。


フリー絵。昼寝 - 2010.11.06 Sat

フリー絵です。
インスピレーションなど感じられましたら、自作テキストなどに使われて結構です。
その際、コメント欄にひと言、使用したいとお知らせください。
こちらからのテキストへの直接コメは申し訳ございませんが、遠慮させてください。



昔描いたアナログです。
水彩絵の具とインクで描いてます。
5年ほど前でしょうかねえ~
Tシャツは…知ってる人は知っている有名なTシャツです(;^ω^)

neru

リンミナに似てますが、あのふたりじゃござんせん。
つか、私は昔から黒髪攻め、茶髪受けがデフォでしたwww

水川青弥編 「フラクタル」 14 - 2010.11.06 Sat

凛肖像画-11

14、
 聖ヨハネ学院高校の校門で単車を止めた。
 期末試験の最中なのか、正午を過ぎたばかりなのに、下校する生徒で一杯だった。
 夏服の半袖シャツに淡い臙脂のトラウザーズ。学年毎に色の違うリボンタイ。
 おれ達が結んでいた赤いリボンタイは今年の一年生に巡っている。
 三年前はあんな幼い顔をしていたんだろうなあ…懐かしく眺めつつ、彼らの傍を通り抜け、美術室へ向かった。
 準備室を訪ねたら、美術部顧問の町田先生がいた。
「先生、こんにちは」
「おや?水川か~ひさしぶりだな。大学生活はどうだ?」
「ふつーです。それより、先生にお願いがあるんですが…」
 おれは、美術部の倉庫に保管している油絵を仕上げたいから持ち帰ってもいいかと尋ねた。町田先生は快く承諾してくれた。
「水川の自宅にはアトリエがあるのか?」
「いいえ」
「じゃあ、油絵を描くのは結構大変だぞ。おまえさえ良かったら、ここで描いていけばいいさ」
「え?いいんですか?おれ、ヨハネの生徒じゃないのに」
「最優秀賞に輝いた卒業生に文句を言う奴はおらんよ。何なら校長に許可を貰ってやるよ。画材の余り物も沢山あるし、心残りなく描くといいよ」
「ありがとうございます」
 その日からおれは大学へは行かず、毎朝鎌倉を目指してバイクを走らせるのが日課となった。

「水川、進み具合はどうだ?」
「…思いどおりに描けなくて…余り進みません」
「そうか…よく描けてると思うがね。無駄にモデルがいい男過ぎると大変だな」
 誰が見てもリンだとわかる肖像画だった。おれも変に誤魔化す気はない。
「目の表情や口元が宿禰のイメージじゃないんです。もっと複雑で…意味がなきゃリンじゃない」
「俺も芸術家の端くれとして、水川ぐらいの気概をもってカンバスにと向き合いたいもんだよ」
「…宿禰…リンに約束したんです。出来上がったらあげるって。でもこれじゃ、いつまでかかるかわからないな…」
「モナリザだな」
「え?」
「ダヴィンチが一生手元から離さなかった肖像画。何度も何度も納得がいくまで描き直して、それでも本当に仕上げられたのか本当のところはわからない。誰の為でもない。自分の為だけに描く絵画は、人の評価なんてどうでもいい。ただ自分を支えるものになるんだろうね」
「…そうかもしれません」
「まあ、その絵は一時筆を休めて、他の絵を描いてみたらどうだ?思い通りに描くってことは自分のスキルをあげてこそなんじゃないのか?」
「そう、ですね」
「カンバスから作り上げてみたらどうだ?下塗りの工程だけでも、発色は随分違うものになるぞ。手探りで自分の絵を導いていくことも大切な過程だよ、水川」
「やってみたいです。先生、教えてくれますか?」
「勿論だ。でも本業は大丈夫なのか?」
「…ああ…まあ、なんとかなります」

 本業…大学生としての義務は全く果たしていない。と、言うより、前期の試験も近いのにノートすらコピーしていない。これ以上大学へ行き続ける気はないのに、やめる勇気が持てないというか…どうやって親を説得していいのかおれにはわからない。
 誰かの助言が欲しいと思い、桐生千尋に連絡を取った。先輩はすぐに時間を取ってくれた。
「水川、元気にしてた?会えて嬉しいよ」
 T大近くのカフェテラスで待ち合わせしたのはいいが、何故か桐生さんの恋人の美間坂真広まで一緒だった。
 ふたりは聖ヨハネ学院の二年先輩で、寮生活でも色々お世話になった恩人だ。桐生さんはK大の法学部、美間坂さんはおれと同じT大の医学部だ。
「水川、おまえ、大学にはほとんど来ていないって聞いたけれど、本当か?」
「すいません。本当です」
「苦労して入った大学だろう。幾ら国立が安いとは言え、親から授業料払ってもらっているんだ。一年のうちに単位を取っておけよ。まさか変な遊びでもやっているんじゃないだろうな」
「真広、水川がそんな奴じゃないことは知っているだろう?それになにか相談があるから、俺たちを呼んだんだよ、なあ」
 相変わらずの温和な表情で笑みを浮かべられると、こちらまで癒されてしまう。
「はい、今日は桐生さん達に相談があって…おれ、どうしたらいいのか、わからないんです。おれのやりたいことはこの大学にはない。リンと一緒に入って大学生活を楽しめたのならこんな風には考えなかった。でも…」
「宿禰がいなきゃ、意味がない」
「全く宿禰も無責任というか…水川を捨てて自分ひとり好きな道を選んだんだからな。呪い殺してやりゃいい」
「真広、口が過ぎるよ。宿禰だってきっと悩んだんだよ。あれだけ水川の事を本気で想っていたんだもの」
「どうだか…今頃ニューヨークで金髪美人と遊んでいるかもしれん」
「リンはそんな奴じゃない。おれはリンがどんな思いで自分の道を選んだのか知っているもの。リンはもう自分の未来を見つけているんです。おれも、自分を誤魔化さないで歩いていきたい。両親の期待を裏切ってしまうし、悲しませてしまうけれど、おれはもう、見つけてしまったんだ」
「…」
「おれは絵を描きたい。納得する絵を描く為に沢山勉強したい。だから…今の大学は辞めます」
「やめてどうする?」
「美大を目指します」
「食える画家なんて一握りしかいないぞ」
「食える食えないじゃない。自分がやりたいことを押さえられないんです。描くこと以外に、今のおれは生きてる意味を感じられない…」
「いいんじゃないか。俺は応援するよ、水川。二十歳もならないのに自分の道を見つけるなんて羨ましい限りさ。俺なんか就職先はどこでもいいって思っているぐらいなんだぜ?」
「千尋は弁護士になれって言ってるだろ?俺が医療ミスしたら、弁護して無罪にしろ」
「弁護士なんてならないって言っているだろ?この世の中で人と人との争いほど醜悪なもんはない。俺みたいな繊細な人間が働く場所じゃないよ」
「自分で繊細と言う人間ほど充てにならないものはない。千尋は繊細と言うより敏感って言う…てっ!叩くな!」
「変なとこを触るからだろ!水川がいるんだぞ」
「あ、そうだった」
「…おれ、お邪魔ですね」
「ごめんね、水川。せっかくの相談だったのに…」
「相談もクソもあるかよ。もうとっくに水川は決めているじゃないか。俺たちは水川の決意を聞かされただけだ」
「…すみません」
 その通りだと小さくなって謝った。
「だが、決意を口にしたが最後、それは目標となり、勇気にもなる。水川、頑張れよ。迷ったらいつでも来い。宿禰にはなれないが、可愛がってやるぞ」
「宿禰と比べたら水川が嫌がるよ。…水川、俺も真広も心から君の役に立ちたいって思っている。もし親御さんが反対して家に居られなくなったら、うちにおいで」
「おい!俺達の愛の巣に他人を入り込ませるつもりか!それとも…千尋、おまえは3Pが望みなのか?」
「…いいね、水川。こいつのことはほっといていいから、何かあったら連絡してくれ」
「は…い」
 無視された美間坂さんが怒っているのにも関わらず、桐生さんは適当にあしらっている。そんな二人を見ていると羨ましくてたまらない。
 家を出ることになっても桐生さん達にはお世話になるまいと心に固く決めた。
 
 その夜、おれは両親に自分の決意を打ち明けた。
 T大を退学すること、美大を目指すこと。学費は出来るだけ奨学金を貰うようにして、親に負担をかけないこと。
 父親は今まで見たことないくらいに激怒した。胸倉を掴み、怒鳴りつけられた。殴られはしなかったが…。元々暴力には縁がない家庭だ。さすがに躊躇したのだろう。
 どうしても曲げないおれに、父親は最後は涙を見せた。さすがに心が痛みはしたが、それよりもT大に固執する意味がおれには全くわからない。
「父さんはおれにどんな未来を見ているの?T大に行ったからって、将来の保障があるっていうの?ねえ、おれはおれの人生を生きてみたいって思っていけないの?おれは生きがいを見つけたんだ。裕福な生活はできないだろう。幸せな家庭も持てないかもしれない。それでも…おれはきっと納得した人生を生きていけると思う。父さん達の夢を壊して悪いと思っている。ここまで育ててくれた恩を思えば、仇で返したと憎むかもしれない。それでも…息子が自分の道を見つけたと思って、諦めてくれませんか?…たぶん、これ以上の我儘を言う事はないと思うから」
 おれの言葉に父親は「勝手にしろっ!」と、放ち、席を立った。玄関のドアの音が激しく鳴った。

 二階の自室にこもり、不貞寝をしているところに母親が入ってくる。
「青弥も言うようになったわね」
「…ちょっと言い過ぎた。反省しているよ。…父さんは?」
「自棄酒なんじゃないの?期待してた息子が自分の思い通りにならなくて」
「期待に沿えなくて、本当に悪いと思っているよ」
「お母さんは気にしてないわよ。お父さんだって、ちゃんとわかっているのよ。意地っ張りなだけ。親子揃って似ているわね」
「…」
「それより、これ」
「なに?」
 机の上にいくつかの通帳が出された。
「あなた名義の貯金通帳よ。二百万はあるわ。青弥が生まれてからずっと毎月積み立てて、後は入学や卒業のお祝いやお年玉なんかを貯金してた分。これは青弥のお金だから好きに使いなさい」
「え?」
「お母さんは良く知らないけど、美術大学ってお金がかかるんでしょ?絵の具やらなんやら…これじゃ足らないかもしれないけど…あとはバイトして。それでも足りなかったらお母さんのヘソクリも足してあげるからね」
「母さん…」
「青弥の選んだ道だもん。親として応援してあげたいじゃない」
「…なんて言っていいか…我儘言ってごめんなさい、お母さん。おれ、頑張るよ。絶対に悔いのない生き方をする。だから心配しないでね」
「いつまでたっても心配するのが親の義務みたいなもんよ。あなたが幸せならお父さんもお母さんも幸せよ。頑張りなさい、青弥」
「…ありがとう」
 溢れる涙を精一杯堪えて、その通帳を受け取った。
 
 何もわかってくれない、おれの本当の気持ちなんかわかるはずもないと決め付け、頑なに見ようとしなかったのはおれの方だった。
 お父さん、お母さん、今まで育ててくれてありがとう。
 その恩に報いる為にも、おれは自分の道を歩いて行きます。





mina-22.jpg

フラクタル 13へ 15へ 

R.I.P フリー絵 - 2010.11.05 Fri

フリー絵のカテゴリーを作りました。

題して「R.I.P」安らかに眠れ~です。ww

こちらのカテに載せているイラストはフリーですので、
気に入ったものがありましたら、ひと言コメを入れてテキストなどに使われて結構です。

今まで書いた自分のキャラに宛ててもいいし、これから作るものの挿絵にされてもいい。
ssでも長編でも全く問題ない。

リンクも初めの一回だけでいいです。
細かいことは全く気にしていません。

自由に使ってもらうのが一番です。
こちらもコメはしないつもりです。

好きで描いているイラストなので、それを見てもらうだけでもありがたいんですが、もし、何か役に立つのならと考え、フリー絵カテゴリーを作りました。

五月蝿い規定は全くございません。
自由な発想で書いてください。

negai

水川青弥編 「フラクタル」 13 - 2010.11.02 Tue

mina.jpg

 13、
 リンと別れた翌日、リンは日本を旅立った。
 見送りはしなかった。リンには慧一さんが付いている。
 リンはコロンビア大学の九月入学を目指して、SATや小論文の学習力をつけていくと言っていた。
 しばらくは日本へは帰って来ない。半年先なのか、一年後なのか…再会の約束などしなかった。

 卒業式の十日後、T大の合格発表を独りで見に行く。
 掲示板にはおれの番号もリンの番号もあった。連絡をするかしまいか悩んだが、しなかった。
 宝物入れのお菓子の空き箱に、リンの受験票を入れた。
 母さんは「宿禰君は合格だった?」と、聞く。
「勿論だよ」
「じゃあ、一緒に通えるわね」
「宿禰は、アメリカに留学したんだ」
「え?そうなの?…」
「うん、ニューヨークの大学を目指すって」
「そう、残念ねえ。青弥も留学したかったんじゃない?」
 母さんに言われて、ああ、その手があったのかと、気づいた。
 リンと離れたくなかったら、おれがリンを追っかけてニューヨークまで行けば良かったんだ。
 …そう思ったが、思うほど簡単なことじゃない。それにおれがついて行くことをリンが望んでいるはずがない。
 入学までの期間、運転免許を取る為、教習場に通った。オートバイにも乗りたかったから中免を取った。
 理由は簡単だ。
「向こうに行ったら、すぐに車とバイクの運転免許証を取るよ。アメリカに来た時はミナを後ろに乗せてU,Sルートを走ろう」
 そう、リンが言ったからだ。
 リンに張り合うつもりはないんだが、同じ感覚を味わいたい。

 大学生活が始まった。T大へは自宅から通学することにした。
「行ってきます。バイトで遅くなるから夕飯は要らない」
「いってらしゃい…あら?また見かけない服着てるのね?昔は服や靴はお母さんにまかせっきりだったのに、高校に行ったら、すっかり自分の好みになっちゃったのね~」
「おかしいかな~」
「すごく似合ってるわよ。青弥がこんなに服のセンスがいいとはお母さん思わなかったわ」
 服のセンスはおれにはない。私服の半分は高校になってから…それもリンと付き合うようになってから買ったものだ。自分で買った分より、リンのお下がりや贈り物も多い。
 あいつは「俺のお下がりでなんだけど、要らなくなったから、ミナ、着てよ」とか「買ったけど少し小さかったから、ミナにあげる」と、言っておれに色んな服をくれた。
 どれもおれに似合う色やデザインで、わざわざおれの為に買ったものもあったのかもしれない。
 リンはおれに比べて随分と裕福だったから、おれが僻まないように色々と気を配っていた。
 
 実質的なリンとの別れは、おれにとって大打撃にはならなかった。と、言うより、リンが最後にくれた「ミナは永遠の恋人だ」と、言う言葉がおれの生きる輝きとなっていた。
 会えなくて寂しいけれど、悲しくはなかった。
 リンも頑張っているのなら、おれだってリンに恥じないように生きなきゃならない。
 リンにずっと思い続けてもらえる為にも。
 リンがくれた服を着ると、リンに触っていられるみたいで、少し寂しさも癒される。

 大学はつまらないものだった。繰り返される授業も高校で習った事の繰り返しに過ぎなかった。
 それは期待はずれというより、わかっていたことだった。リンがいない場所に意味はない。
 リンと一緒に合格して通学できると思ったから頑張れたんだ。
 ここで何を学ぶにしてもおれの望んだものは見つからない気がしていた。

 同じ学部の奴が声を掛けてきて、「合コンをやるんだが、人数が足らないんだ。水川、悪いけど加勢してくれないか?」と、言われ、別にいいかと思い承諾した。
 十人ほどの集まりで、おれはひとりの女の子と付き合う羽目になった。確かに可愛い子には違いなかった。好みかどうかと言われたら…よく判らない。
 一週間後、その子がラブホテルに誘うから、おれも何事も経験だと自分に言い聞かせて、言われるままにベッドに雪崩れ込んだ。
 しかし、なんというか…全く燃えるどころじゃない。リンは良くおれに「ミナはゲイじゃないから、女の子とも普通に付き合えると思うよ。一回寝てみたらいいよ」なんて軽口を叩いていたが、全く本意じゃない。
 結局最後まで行ったんだが、頭の中でリンとのセックスを妄想させてやっと行けた感じで、後味が悪いったらありゃしない。
 二日後、丁寧なお断りを入れた。
 向こうは口先だけでも残念そうだったから、こちらのプライドもなんとか保てた。
 問題は、じゃあ、おれはやっぱりゲイなのか?と、なる。
 試すにしても誰とでもじゃ節操がない。大体そういう地域に行かない限り、そんなに簡単にゲイの奴を見極められるはずもない。
 合コンに誘ってくれた瀬川という同級生が、お礼にと何回か昼飯をご馳走してくれた。
 付き合った女の子との状況を説明し、別れたと言った。
「悪かったな。水川を無理矢理誘っといて、嫌な思いさせてしまった」
「いや、いい経験になったから、謝ることもないよ」
「水川、変なこと聞くようだけど、男は大丈夫?」
「へ?」
「いや、俺、実はバイなんだ。水川みたいなさらってした奴、好みなんだけど…」
「…」
「どう?」
「どうって?」
「試してみない?」
「何を?」
「セックス」
「…」

 リンに似ていたわけじゃない。リンみたいな完璧で馬鹿みたいにキレイな人間なんかこの世にいないのは判っていた。
 だが、瀬川という男は、清潔な感じがした。敢えて言うならそこがリンに似ていた。だから、寝てみてもいいかなと思った。
 結果…リン以外にオーガズムを感じることはなかった。
 空しいのか悲しいのか全く呆然とする事実だったが、心に残ったもの傷ではなく、喜びだった。
 リンへの「愛」を確信しただけの事。
 それを教えてくれた彼女と瀬川に感謝することにした。

 
 大学に行くのもつまらなくなった俺は単車を買うために、バイトに打ち込んだ。
 中古のオートバイを手に入れ、リンから貰った携帯イーゼルを入れた絵画用のリュックを背負い、どこへともスケッチへ出かけた。
 土手に座りのんびり川の風景を描いていると気分も落ち着く。
 ふと空を見上げ、リンを思った。
 この空がニューヨークに続いているのなら、リンに伝えて欲しい。

 会いたくてたまらなくて仕方ない時は、どうすれば良かったけ?リンならいいアイデアを思いつきそうだ…リン、おれは一体何をしたいのか、判らなくなってしまったよ。物理工学科なんておれのやりたいもんじゃねえもん。親も友人も自分のやりたいことなんてすぐに見つかるわけない。今は何でも吸収することが大事だ…なんていうけれど、リンはもう自分の道を歩いているもんね。凄いよ。リンが傍にいたら、おれはちゃんと、見つけられたんだろうか…
 リン、君に会いたい…

 不意に川風に煽られて、ピンで止めておいた画用紙が散らばっていく。
 おれは慌ててそれを拾った。
 いくつもの風景や草木の絵に混じってリンの素描画が紛れ込んでいた。
 こちらに笑いかけているリンを見た時、途中でほおり投げていたリンを描いた油絵を思い出した。
 無性にあの続きを描きたくて仕方なくなった。
 おれはリュックを背負いバイクに跨った。
 あの絵を完成させよう。
 
 急いで走れば、聖ヨハネ学院高校まで一時間もかからない。





リン素描


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サイアート

Author:サイアート
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