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2011-02

藤宮紫乃編 「Sonnet」 7 - 2011.02.26 Sat

yokogao12.jpg

7、
 午後の授業も終わり、ホームルームの後、職員室へ向かう。
 あれから啓介とは顔は合わせたけれど、指導上の話だけで、凛一のことは話せずにいた。
 学年の職員会が終わり、いつものように準備室へと引きこもろうとすると、教頭が呼ぶ。
「この後、実習生の中間報告会を校長を交えて行いますから、よろしくお願いします」
「はい、わかりました」
「あれ?千葉先生は?」
「ああ、きっと準備室でしょう。呼んできます」

 実習生は千葉啓介の他にふたり居る。
 三人のこれまでの実習を指導教員の意見を交えて成果や反省をそれぞれに発表することになっている。大事な会議だ。
 啓介を呼びに準備室へ行くが姿は無かった。他の教師に千葉の居所を尋ねても、首を振るばかり。
「連絡はしていたはずだから、わかっているだろうに。こんな時にどこに行きやがった」
 思いつくままに校舎の屋上へ足を運んだ。

 柵に凭れて校庭を眺めている啓介の姿を見つけ、ほっと息を吐き、近寄った。
「千葉先生。実習成果の報告会の時間だ。遅れないように言ってあっただろ?」
「あ…すいません。すっかり忘れてた」
「おいおい…」
 頭を搔きながら詫びる何の裏もない笑顔に、俺も釣られてしまった。
「何をそんなに真剣に見ているんだ?」
「あ、あれですよ」
 啓介が指差す方向には…凛一の姿が小さく見えた。
 体育館の外側の壁を双眼鏡で覗きながら、細部をカメラで撮り、手元のモバイルに何かを書き込んでいる。
 その一連の動作を、少しずつ歩を進めながら繰り返す。

「…ずっとああやっているんですよ、あの人…宿禰さん」
「それが仕事だからな」
「あの人があの教会を設計したって聞きました。俺とあんまり変わらない歳なのに、凄いとしか言いようがない」
「ああ見えても凛一は26だよ。確かに歳の割に際立った才能と技量を持っているけれど、あいつは人には見せない努力も半端ないからな」
「あんなに柔らかい雰囲気の教会からは、想像もできなかったなあ~。まさに容姿端麗、眉目秀麗…いくら美辞麗句を並べても見劣りしないんだもん」
「プラス才色兼備だろ。しかし、性格が最悪、唯我独尊を地で行く」
「あの容姿じゃあ、誰でも自尊心は高くなるに決まってるよ。紫乃は凄いね」
「何が?」
「平気な風に話すんだもん」
「当たり前だ。教え子だよ。あの顔も見慣れりゃ別にいちいち感服する必要もない。あいつはああ見えて、人懐っこいしな」
「…紫乃はあの人を好きなんでしょ?」
 こちらを向いた啓介の顔に嫉妬心は見えなかった。だから俺も正直に言おうと思った。
「ああ、凛一が好きだよ。あいつは確かに俺が担任した優秀な教え子だし、それ以上に、家族みたいなものだ」
「宿禰さんのお兄さんが体育館のデザインをしたんだよね…紫乃の友人でもあるその人の名前は宿禰慧一さん…」
「…」
 ドキリとする。別に後ろめたい気にならなくてもいいはずなんだが。

「紫乃の大事な人って、あの人のお兄さんなんだ…って、思ったらさ。なんか納得したよ」
「なにが?」
「紫乃がいつまでもその『慧一』って人に拘るわけ。弟があれじゃあ、お兄さんはもっと凄いんだろうね」
「そうでもないさ。凛一よりは人間に近いよ」
「そうか?じゃあ、俺も頑張れば脈ありって思っていい?」
 迷わずに言い放つ無邪気な言葉は、俺に風穴を開ける。心地良い風だ。
 この子の影を俺は見つけることが出来ない。

「そういや、教会の絵に宿禰さんに良く似た天使の絵が飾られてた」
「あれはここの卒業生の画家が、凛一をモデルに描いた絵だよ。だから正真正銘、凛一の姿だ」
「だからかあ~。最初宿禰さんを見たとき、あの絵から抜け出して俺にお告げを下しに来たのかと思った」
「何のだよ」
「千葉啓介よ、汝はこの藤宮紫乃を永遠の恋人として、愛せよ…ってね」
 厳かに芝居めいた口調で言う啓介に、苦笑する。
「おまえ…凛一以上にうぬぼれが過ぎる」
「そうかなあ~。でも本音だよ」
「…」
 こういうさらっと言う言葉の強さがこいつにはある。俺はそれに逆らえない。と言うか快い気持ちさえ沸いて来るから始末が悪い。

「そろそろ校長室に行かなきゃ間に合わなくなるぞ」
 肝心の事項をこちらが忘れそうになった。踵を返し、屋上の扉へ向かった。

「ね、紫乃」
 ドアに向かって歩く俺に、後ろから啓介が声をかける。
 啓介の背中にちょうど夕日が重なって、眩しさに表情は見えなかった。
「なんだ?」
「明日は天気良さそうだから…俺と一緒に出かけないか?」
 明日は第二土曜日で、学校も休みだ。別段俺も用はない。

「ああ、別に構わないが」
「ホント?マジで?よっしゃ~!」
 啓介は急に走り出し、一メートルほどジャンプした…ように見えた。
「めっちゃ嬉しい~っ!じゃあ、俺、弁当作って、車で迎えに行くから、楽しみにしててよね」
「車、持ってるのか?」
「勿論だよ、デートするのに車がないと堂々とラブホに入れないじゃん」
「…」
 さすが今の若者…
 
 その後の会議でも啓介のノリは半端なく、他のふたりを圧倒して独壇場だった。
 ただ帰り際、啓介が俺に言った言葉だけが気がかりだった。
「七時に迎えに行くからね。デートだからって恰好はつけないで身軽な服装でお願いします。出来れば靴もスニーカーで風除けのウインドブレーカーもあればいいかも」
「…」
 山登りか、はたまたトレジャーハンターごっこでもやるのかしら…と、俺は頭を傾げた。
 
 言われたとおり翌朝七時にエントランスで待っていたら、啓介が車から手を振る。
 赤のSUV、RAV4は、啓介に似合っていた。
 助手席に乗り込むと、紙袋とペットボトルのお茶を持たされた。
 スムーズな運転で、まだ車の少ない県道を南下していく。

「目的地には3時間はかかるから、ゆっくりしててよ。眠かったら寝ててもいいよ」
「俺が寝てたらデートの意味はないんじゃないのか?」
「まあ、そうだけど…」
「ドライブだったら、俺のスポーツカーの方がスピードが出るし、シートも上等だ」
「じゃあ、次は紫乃の車に乗せてもらうよ。それより朝早かったから朝食はまだでしょ?」
「ああ、コーヒーだけだ」
「さっき渡した袋に、おにぎりとサラダ巻きが入っているから食べてください。朝御飯抜きじゃ体力がもたないから」
「体力が必要なデートコースなのか?」
「うん。今日は天気もいいし、風もおだやかだから、飛べると思うんだ」
「飛べる?」
「うん、あ、紫乃、高所恐怖症じゃないよね」
「ああ、それは平気だが…飛ぶってどういうことだ」
「パラだよ。きっと紫乃も気に入ると思うよ」
「パラ?」
「パラグライダー。聞いたことぐらいあるだろ?」
「あの?…空を飛ぶ?」
 そりゃテレビで見たことぐらいはあるけれど。

「啓介はそれをやれるのか?」
「そうだよ。今は気軽にやれるスカイスポーツだし、そんなに珍しいもんじゃないよ。俺も、大学のサークルで始めたんだし」
 そんなのをうちの大学のサークルはやっているのか…侮れんわ。
「それで…俺も、出来るのか?」
「え?」
「飛べるのかって聞いてるの」
「勿論だよ。その為に一緒に付き合ってもらってるじゃない」
「…」
「何?気に入らなかった?」
「いや…何だか期待に胸が膨らむとはこういうことだと…ワクワクしてきた…」
「…紫乃、そんな顔するな。あんまりかわいくてここで押し倒しそうになるじゃんか」
「いや、無事に目的地まで連れて行ってくれ。そうじゃなきゃ、おまえとの付き合いはこれきりにする」
「なんだよ、俺よりもパラの方に夢中になりそうじゃん。とにかく体力がいるから、しっかり食っててよ」

 啓介への返事も曖昧に、俺は期待感で一杯になった腹におにぎりを無理矢理詰め込んだ。
 サンルーフから覗く空はただ青い。
 あの空を飛べるのかと思うと、嬉しさのあまり顔が綻んでどうしようもない。
 とても生徒や凛一たちには見せられたもんじゃなかった。



啓介パラ

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どんどん好きになる - 2011.02.24 Thu

千葉啓介というキャラを育てている。

紫乃の恋の行方は紫乃視点でしか書けない。
が、啓介という人間を知らなきゃ、私も書けない。
紫乃になりきって書くけれど、啓介にもなりきらなきゃならない。
ので、とりあえず描く。描きまくる。
すごく可愛くて純粋で一途な青年が生まれる。

確かに見た目は慧一に似ているが、性質は正反対といっていい。
これから啓介の過去を書いていくけれど、少しも影が無い。
懸命に生きている姿だけだ。
それが読む者にとっては平凡でつまらないものかもしれないけれど、啓介はこういう人間だと示さなきゃならない。
そしてそういう慧一と正反対の啓介に惹かれ、選んでいく紫乃の気持ちを書かなきゃならない。

ワクワクする思いを抑えつつ、慎重に筆を進めて生きたいと思う。
啓介5






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フリー絵。「光」 - 2011.02.24 Thu

フリー絵です。
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その際、コメント欄にひと言、使用したいとお知らせください。
こちらからのテキストへの直接コメは申し訳ございませんが、遠慮させてください。
フリー絵に関しては、15禁であろうと、18禁であろうと、20禁であろうと、どんなテキストに使われようと全く構いません。


ふたりsenn

初めは厚塗りで始めたが、途中で気が変わって線画にした。
厚塗りってのは、キャラへの愛情か、もしくは描きたい~という情熱がないと、なかなか根気が続かない。

↓は厚塗りの途中まで。これはコレで良いと思うんだが…
ふたり

アドさんにあげたものだが、誰が使ってもいいと思っている。
あげたからと言って、他の人に使わせないのも、絵に対して心苦しい。
一度生まれた絵は色々な解釈で求められて良いと思う。
ただし、私の場合、フリーキャラに限る。
私の書いたテキストのキャラのイラストは、フリーではないので、よろしくね。


なんか花粉の所為なのか、目が痛くて…春は好きだけど、この花粉症がなあ~。・゚・(ノД`)・゚・。キツイわ。

追記…アドさんからも、皆さんに使って欲しいというコメントを頂きましたので、遠慮なくどうぞ~






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藤宮紫乃編 「Sonnet」 6 - 2011.02.22 Tue

6、
「おまえ何しに来たんだ」
 廊下を歩きながら凛一に問う。
 昼休みの午後、運悪く凛一の姿を見た生徒達は、悉(ことごと)く赤い顔をして深々とお辞儀をする。
「何って、メンテナンスに決まっているだろう。新しい建物は、地に馴染むまでは細かく点検と手入れをしなきゃならないからね。自分の建てたものは、俺自身の目でキチンと見直しておきたいんだ」
「ひとりでか?」
「そうだよ。本当は体育館は慧一が見るのがいいんだが、あっちも手一杯でね」
 『あっち』とはニューヨークの事務所のことだ。スタッフの人数を増やしたとは言え、仕事の大方を慧一と凛一のふたりで荷っている。決まった休日など殆ど取れないと、慧一も漏らしていた。
「ふたりとも仕事のし過ぎなんじゃないか?身体を壊しては元も子もないぞ」
「俺はおっさんじゃねえんだから心配ねえよ。元より、慧一は35になるんだから、そろそろこれにもメンテが必要かな」
 大事なパートナーにさえ、にべもない。人事とはいえ気に病んでしまうのは、やっぱり歳の所為か。
 俺は頭の片隅にあったわだかまりを確かめたくて、凛一に問う。

「おまえ、この間の竣工式の時、水川青弥と仲良さそうに話していたよな」
「あん?」
「まさか本当にヨリを戻したわけじゃないだろうな」
 渡り廊下の手前、午後の日差しが厳しい。それから隠れるように庇のある影へ身を移した。
「なんで?」
 立ち止まった凛一は腑に落ちない顔を向ける。
「去年のクリスマスの時、ミナの美術展を見に行けって言ったのは、他ならぬあんただったよな。その所為でっ!俺たちがヨリを戻したと言ったら、あんたは責任を感じて、慧に許しを請うのか?」
「…」
 確かに俺はあの夜、嶌谷さんの店で凛一に会い、水川の展覧会を観に行けとけしかけた。翌々日、この学院へふたりは揃って顔を見せ、にこやかに微笑んでいた。
 俺はその時、どう思った?
 …この学院を卒業して、ふたりが離れ離れになり、そのまま別れたと知った。
 これで慧一の気持ちがやっと落ち着くだろうと、俺はそれを喜んでいた。だが、一方であれほどの仲だった凛一と水川の絆がこうも簡単に切れてしまうのかと、残念にも思った。
 …いや、どこかで信じたかったのかもしれない。
 この学院で生まれ育った「恋」の行方が、また結びつく事を…。
 同時にそれは慧一を傷つけることにもなる。
 俺の本性の深いところで未だに慧一への遺恨が燻っているとは、考えたくない。
 だが微塵もないとは言いきれないところがもどかしい。

「慧一は…凛一、おまえに関してはこちらが呆れるほどに寛大だよ。だけど俺は…おまえが俺を家族のひとりとして認めてくれるなら…俺は兄として忠告するよ。慧一を不安にするな」
「慧一が不安?ミナと俺の仲を気を揉んで?不安なのはあんただろう。慧一は納得しているよ。俺がミナを愛している事を」
「…」
「…もしあんたの望みとおりに俺とミナの関係を無しにしたいのなら、ミナの存在を、もしくは俺をこの世から消さなきゃならなくなるな」
 凛一の潔さは呆れるくらいだが、この件に関してはまっとうな正論だ。俺は何も言えない。

「この世に愛し合ったふたりっきりで生きていくとして、不安が無いといえるのか?不安という感情は人間であれば誰だだって持っているだろう。俺がミナと付き合っているとしても、俺が慧一を愛していることに翳りはない。俺と慧一の絆がそうである限り、俺達は揺るぎはしない。ミナは…アレだ。TVの中のスターに恋するようなもの」
「TVの中の奴とは普通は寝ないものだがな」
「慧一以外とセックスするのが、紫乃兄ちゃんはそんなに気に入らないのか。こりゃ敬虔な修道士だな。この学院に居すぎて宗旨替えしたのか?」
「ふざけるな。俺は…」
「慧一の為…だろ?」
 こういう歯に衣着せぬところが憎ったらしい事この上ない。

「今もあんたには慧一が第一。一番愛しい人。だけど、慧一には俺しかない」
「おまえほどの自尊心を持った奴を愛した慧一を哀れんでるだけだ。慧一だけじゃ飽き足らなくて、水川とも本物の恋をするという。おまえは慧一の愛情の上に胡坐を搔いているとは思わないのか?」
「まったく思わないね。つまり俺は光みたいなもんだ」
 そう言って、凛一は影から陽の当たる場所へ進んだ。光を背に受けた凛一の輪郭が白く輝く。

「太陽は人を選んで光を注ぐか?俺はね、できればだ、俺を乞うすべてのものに光を与えたいと思う」
「おまえはキリストか?」
「まさか、あんなボランティアスキ~になろうとも思わないけどね。俺はちゃんと選んでいるだろ?ファウストとグレートヒュンを。即ち慧一とミナを」
「…」
「メフィストフェレスに愛されたふたりはどうなった?…天国に行ったじゃないか。大団円だ」
「高慢な悪魔め…」
「悪魔と天使は非常に良く似ているっていう学説が常識になりつつある」
「適当なことを言いやがる」
「俺のことはどうでもいいがおっさん、自分の救いを考えろよ。俺はあんたには手出しはしないんだからな。自分で契約を取り交わせよ」
「言ってる意味がよくわからん」
「シラを切るな。あれだろ?この間、紫乃が寝た相手って」
「え…」
 なんつー勘の良さ。だからこいつは侮れない。って感心している場合か!

「なんで、そう思う?」
「キーワードはいくつかあるよね。千葉、けい、すけ。慧一に良く似た体格。たまたまここの教育実習生だった事。そして紫乃が指導役だった…」
「それだけじゃ決め手にはならんよ」
「じゃあ、俺の予言だよ。紫乃はあの千葉啓介とくっつく」
「…おまえの予言なんて恐ろしすぎて、絶対背きたいものだ」
「俺は紫乃の幸せを願ってやまないんだぜ?お兄ちゃん。千葉啓介、俺も気に入った。あいつを選べよ」
「…簡単に言うな。俺の運命がそうであっても、選ぶのは俺だ」
「勿論だよ。俺はオブザーバーでしかない。だから勝手に言うだけだ。千葉啓介は紫乃の運命の相手だって、さ」
 上目遣いに俺を見つめ(凛一の方が上背があるのにも関わらず)、口端だけを軽く上げる癖。
 見慣れた俺でさえ、見惚れる程艶やかな顔をする。

「ミナとはあんたが想像するような恨めしい事は残念ながら無いよ。こっちにその気があっても、向こうは今あるパートナーを気遣ってキスさえさせてはくれない。律儀で貞節。自分のものだったら有り難いが、人のものだとこうも口惜しい。紫乃、適当な恋歌でも教えてくれよ。ミナに贈り付けてやる」
 少しだけ考えて、百人一首の和歌を詠んだ。
「…今はただ 想い耐えなむ とばかりを 人づてならで いうよしもがな 
(私はあなたことは諦めます。忘れます。でもそのことをあなたに直接会って伝えたい、人づてではなく、私の口から)」
「まあ、俺も諦めの悪い男だが、紫乃には負けるよ。その和歌、慧に贈っておく」
「ヤメロ、人聞きの悪い」
「…紫乃、あんたはいい兄貴だ。幸せになれ」
 そうして、凛一は俺の頬に軽いキスを残し、渡り廊下を飛ぶように走り去って行く。
 …慧一と同じ言葉を吐いて。

 国語準備室へ戻ったが、啓介の姿は無かった。
「千葉、先生は?」
 他の教師に居所を尋ねる。次の授業の準備の為に社会科準備室へ行ったのだと聞かされた。

 凛一との関係を誤解されなかっただろうか。
 後でいくらでも説明できたはずなのだが、なぜか一時も早く千葉啓介に話しておきたかった。
 宿禰凛一、奴には絶対近づくな、と。



紫乃と慧一
捨てきれぬ慧一への恋慕。若かりし頃のふたり。


凛一のゲスト出演はここまで。以後は出てこないのでご安心を。

「Sonnet」 5へ /7へ





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春爛漫 - 2011.02.20 Sun

紫乃と啓介のお話の季節は夏から秋、冬までの話なので、春のシーンはないのですが、現実、春がまちどうしい近頃。

大学4年の啓介が、自分の将来を悩む季節…かな~
それとも紫乃を待っているのかな?
あ、弁当忘れた(;´Д`A ```

春啓介3


明るい気分の絵が描きたかったの。
気持ちい~いなあ~o(*^▽^*)o~♪

イラスタのサイトで色んな素材があるので、使いたくなるんですよ~(*´∇`*)



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藤宮紫乃編 「Sonnet」 5 - 2011.02.17 Thu

sino12


5、
「こちらから見ると学校全体が良く見えて綺麗だね」
 柵に寄りかかった千葉の隣に近づき、運動場から体育館、教会に繋がる景色を眺めた。
「ああ、そうだな」
「ここの教会も体育館もなんかすごくかっこよくて立派だし、高校って感じしないよね。俺の母校とはえらく違ってて、やっぱり都会だなあ~って思った」
 教育実習生は自分の母校へ実習へ行くのが普通だが、千葉啓介はこの学院の卒業生ではない。
「千葉は確か…北海道だったよな」
「うん、札幌。って言っても岩見沢に近いから田舎だよ」
「北海道は高校の修学旅行で行ったっきりだな。スキー旅行だったから、銀世界の景色しか記憶にないけど」
「そうだね。まあ、雪ばっかりだし」
「じゃあ、千葉もスキーは得意なんだろうな」
「…もう、飽きたかな~物覚えがついた頃からずっと滑ってたから、今は滑りたいとも思わない」
「そういうもんかな~」
「そういうもんよ。それよりさ、あの教会って建ったばかりだろ?」
「ああ」
「新築したばかりのものってどこか、緊張するっていうか…建物もこちらの方も人見知りする気がするけど、あの教会ってびっくりするほど、こちらを受け入れるんだよね。最初見て、中に入った時、なんか暖かい隠れ家に招かれた気がして…俺、教会ってあまり知らないけど、こんな感じは初めてだったんで驚いたよ。よほどの感性の人が作ったんだろうね~」
「…」
 そいつは才能も見た目も神に愛されているが、性格は悪魔だぞ。あの悪魔が感性であれを作ったとすれば、本物の悪魔もああいうものを密かに欲しがっているのだろう…と、俺はあの教会へ行く度にそう感じてしまう。
「それに体育館も同じ感覚があった。周りの風景と溶け合っているっていうか…同じ人がデザインしたの?」
「違うけど…」
 違うがロクでもねえ兄弟だ。
「なんかねえ、ここ、俺の知ってる世界とまるで違って…平和って言うかさ。守られてる気がするよね」
「ミッションだから、神様のテリトリーにあるんだろうよ」
「男子校でもみんな綺麗で素直で良い子ばかりだろ?まさかゲイの巣窟じゃないよね」
「当たり前だ。そういう奴が居ないわけじゃないが、殆どはまっとうな…そうでもないかな」
 苦笑いをする。
「紫乃なんか生徒達にモテて引く手あまた?」
「モテたって、本気になるわけないだろ?お山の大将がいい所」
「そうかなあ~本気で紫乃の事好きな奴だって沢山居るはずだと思うけど…」
「だからってそいつらの好意を全部受け入れるわけにはいかないだろ?」
「…俺、紫乃の事、本気で好きだよ」
 俺を見つめるその目にいつわりが無いとは思えるけれど…まともじゃない。この空間が生み出す魔法でしかない。

「この学校の規則知ってるか?」
「え?」
「教師と生徒、教師同士の恋愛はご法度だ」
「へ~、生徒と恋愛するのは駄目ってのはわかるけど、なんで教師同士で駄目なんだよ」
「…男性教師しか居ないから」
「あ、そう…で、ホモの教師は紫乃だけじゃないだろ?」
「さあ、表面上は何も無いさ。仮にもキリスト教を学ぶ場所だからな。だが、もし生徒と恋愛しても生徒が卒業すれば規則に縛られない。その後くっついたという話は珍しくはない」
「紫乃は?そういう生徒…いた?」
「こちらから生徒には手を出さない。俺も職を失いたくないんでね」
「そう…、じゃあ、学校以外で付き合っている人はいるの?」
「今はフリーかって聞いているのか?」
「そうだよ」
「ずっとフリーだよ」
「けい…いちっていう人は?…紫乃の恋人だろ?それとも振られたの?片思い?」
「しつこいな。それをおまえに話す必要があるのか?」
「あるよ。だって紫乃は最初、俺をその男と間違えたんだから。俺とセックスしている間、あんたは俺を『けいいち』って呼び続けた」
「…」
「聞く権利、あるよね?」
「その件は謝ったつもりだったけどな」
「3万円貰って忘れろって?」
「…」
「じゃあ、返すよ」
 そう言って、千葉は財布を取り出して三万円を差し出した。受け取らない俺の手を取り無理矢理握らせる。
「俺は忘れたくないからね。あんたと寝たのも、『けいいち』っていう男に間違えられたのも、大切な事実だよ」
「金を…出したのは悪気があったわけじゃない。酔っ払った俺が悪いと思ったからだ。千葉に嫌な思いをさせたのなら謝る」
「啓介って呼べよ。それとも『けいいち』って人を思い出すから、呼ぶのに躊躇いがあるの?」
「け、いいちは…俺の昔の恋人だった奴だが…今はいい友人だ。それだけだ」
「…じゃあ、俺の事、啓介って呼べるよね」
「なんでそこに拘るんだよ」
「紫乃が…俺をケイって呼んだ時…俺、すごい感じたの。この人が好きだ。この人を抱きたいって、すげえ思った。だから呼んでもらいたい」
「…」
 あまりに単純すぎて思わず、笑ってしまった。
「お、おかしいか?」
「じゃあ、余計に啓介とは呼べまい。仕事中に卑猥な妄想されても困る」
「…」
 顔を赤らめてそっぽを向く様が、ますますガキで可愛く思えた。
「でも、ふたりの時は啓介って呼んでやるよ。それでいいだろ?」
「!ホント?」
「だからってその気になってもらっても困る。俺たちは恋人でも何でもない。実習生と指導教師だ」
「たったひと月の間だろ?それからは…俺はここには関係ないもの。自由に紫乃を愛せるよね」
「…ああ、そうだね」
 ひと月経てば、きっとおまえも気が付くさ。
 ここは閉ざされた楽園。外へ出ればここであった事なんか忘れてしまうって事を。

啓介g



 昼食時の千葉の手作り弁当は、記録を更新し続けた。
「ねえ、今日の蓮根のきんぴらどう?」
「…普通」
「紫乃先生の普通は美味いってことだから、合格だね」
 無駄に声が弾んでいる。
「紫乃先生はいい実習生をもって幸せだなあ~うらやましいよ」
 おいおい、周りの教師達のいいネタにされてるぞ~
 …げっそりだ。
「千葉先生、僕らにも手作り弁当お願いしますよ」
「それは、無理です」
 おい、即答かいっ!少しは躊躇してみせろよ。
「でも、今度クッキー作りますから、先生方にもおすそわけしますね」
「そりゃ楽しみだ」
 和気藹々とはこのことだろう。千葉がいると周りの空気が和む。


「こんにちは~」
 準備室の戸が開けられると共に、聞きなれた声が弾む。
「おお、宿禰くんか」
「目の保養が来たな~」
「また口が上手いなあ~。はい、これおみやげで~す。皆さんでどうぞ」
 菓子箱を一番年上の教師に渡して、にこやかに愛嬌をふりまく。
 周りの教師に媚を売ることも怠らない奴の性格がうらめしい。

「よう、紫乃。お土産だよ」
 手渡された箱を見る。
「…なんで『ちんすこう』なんだよ」
「沖縄行ったから」
「一昨日、ニューヨークから帰国するとはメールで聞いてたけどな」
「そうだよ。成田からそのまま沖縄まで行ってお仕事だったの。んで、さっき帰ってきてここへ直行~。それよりさ、美味そうな弁当食ってるなあ~どれ」
 許可も得ないまま、俺の弁当箱からきんぴらをつまんで食べやがった。
「なかなか美味いじゃん。…へ?これもしかして手作り?」
「…」
「紫乃先生の昼食は実習生の愛情弁当なんだよ」
 お土産を広げている教師達が、ご機嫌な顔でいらぬことを口走る。
「へえ~そうなんだ」
 まったくもっていい迷惑。ほら、こいつの目が輝きだしたじゃねえか。
 凛一は俺から隣りの千葉啓介の方へ視線を移した。
「こんにちは。宿禰凛一です」
 凛一は例のごとく、首をかしげ千葉にあざとい微笑を向ける。
「…」
 千葉は硬直したかのように目をぱちくりとしたまま動かない。
「…おい、千葉?大丈夫か?」
「…あ、…はい。あ!すいません。え、え~と、こんにちはです。初めまして、千葉、啓介と申します」
 いきなり席を立って、直立不動のまま凛一に向かってお辞儀をする。
「千葉…けいすけ?ふ~ん」
 凛一は、固まった千葉に近づき、頭からつま先まで舐めるようにひととおり眺めると、ニコリと笑う。
「千葉君、いくつ?」
「あ、はい。に、じゅう、に、才です」
「そっか、若いね~ちょっとハグさせてね」
「え…ええ?」
 驚いている千葉にも構わずに、凛一は千葉を思い切り抱き締め、そしてその感触を確かめると満足したように千葉から離れた。
 千葉は倒れそうなぐらい真っ青になっている。
 さすがに気の毒になって、座るように促した。
「凛一、免疫のない奴におまえの挨拶はセクハラなんだよ。少しは手加減しろ」
「へえ~、啓介くんってウブなんだね~。体格も好みだし、気に入ったよ」
 そう言いつつ、不敵に笑う凛一は、椅子に座ったまま顔をあげることができない千葉を執拗に見つめ続けている。
 これ以上、千葉がメドゥーサの魔力に取り付かれたままになっても困る。
 俺は、凛一の腕を引っ張り、準備室から出た。


凛一煙草
↑お久し凛一たん(*´∇`*)

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フリー絵。「橙の男」&「全員集合!」 - 2011.02.15 Tue

フリー絵です。
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フリー絵に関しては、15禁であろうと、18禁であろうと、20禁であろうと、どんなテキストに使われようと全く構いません。



tuki-1.jpg

三日目、最後の一人ですな。
真ん中の橙の髪の子です。

キャラ3
この子は、美人だけどSっ子の受けっぽい気がするが…まあ、なんでもいいか。

三人衆を合わせて描いてみた。
キャラ4-1
わかるだろうが、初めからこの三人の合わせ方を考えてアングルを考えていたので、各自の動きが限られてくる。


この方たちに関しては、私の中では一切話は作らずに、絵だけで楽しんでいるので、書く方も好きにどうぞ。

さて、本格的に紫乃編にとりかかろうかなあ~。
まあラブラブハッピーな話だから、たいした事件もないし、盛り上がりも少ないけどね。
紫乃が幸せになるところを見たいのだよ。私が一番見たい。だからちゃんと書く。
大体あと6話ぐらいだろうけど…私の場合一話の話が長いから短くなるかもしれんな~
紫乃編が終わったら、「グリーンハウス」は完全に終わるから、なにしようか…
う~ん、メトネに行くか、エルミザードに行くか…全く違う奴を考えるか…悩むな(;^ω^)

あ、その前にアドさんにあげるイラストが出来たら、アップするよ~
これは結構良い雰囲気だから、楽しみにしてて良いと思う。
…(; ・`д・´)まあ、描いてないからわからんけど。
お絵かき講座にしてみようと思う。




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フリー絵。「黒い奴」 - 2011.02.14 Mon

フリー絵です。
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フリー絵に関しては、15禁であろうと、18禁であろうと、20禁であろうと、どんなテキストに使われようと全く構いません。


tuki-1.jpg

上の黒いコートの男を描いてみた。

キャラ1

男前ぶっているけど、きっと若造なんだろうなあ~
サングラスはどうしようか悩んだけどさあ~
別に目が悪いわけでもない。
かっこつけたい年頃?

顔アップもよろしく!
クールに見えてきっと優しい人だろう。
…知らんけど。

キャラ1-2



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フリー絵。「赤い奴」 - 2011.02.13 Sun

フリー絵です。
インスピレーションなど感じられましたら、自作テキストなどに使われて結構です。
その際、コメント欄にひと言、使用したいとお知らせください。
こちらからのテキストへの直接コメは申し訳ございませんが、遠慮させてください。
フリー絵に関しては、15禁であろうと、18禁であろうと、20禁であろうと、どんなテキストに使われようと全く構いません。


tuki-1.jpg

以前フリー絵としてアップしたものに、夕華さんとRouteMさんのおふたりがステキなお話を作られました。

で、まあ、気になったのが後ろのふたりなんですなあ~
もしこいつらをちゃんと描いたらどんなかしら~と、思って描いて見ましたよ、フリー絵だしょ。

三日間、この三人のひとりずつのフォトで更新いたす。

最初は後ろの赤い髪の奴。

こいつが一番化けると思ったんだが…やはりめちゃくちゃ化けたね(⌒~⌒)ニンマリ
ほい!
キャラ2
実はこいつが一番影の主役だったりする~

はいアップ!
キャラ2-1

めちゃかっこよくないですか?…かっこいいよね~…かっこ…いい?(;´▽`A``ヘンタイ?



こんな感じで三日間いくけど、勿論フリーなので、先に挙げたおふたり以外でも、使ってもらって結構です。

フリー絵なんてものは、描いてる自分が一番楽しいので、描き上げた時点でほぼ満足しているんだよ。だから、使ってもらうのは、おすそわけみたいなもので、こちらに気を使うこともないし、またこちらも変な気を使ったりしない。
つまり使ってもらってありがたいです~って、へーこらする気もないし、使われる作品に批評することもない。
こういう事はイーブンで楽しんでやるのが、一番だと思うので。
誰彼に気を使う事無く、遠慮なくどうぞ。
勿論版権主は私であることには違いは無いので、よろしく(o^∇^o)ノ
みんな、仲良くやろうぜ!




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藤宮紫乃編 「Sonnet」 4 - 2011.02.11 Fri

sino2

4、
 目を丸くしてこっちを見ていた千葉啓介が、やっとこの世に帰ってきたらしく、にっこりと笑いかける。
 今度はこちらが引きつる番なのか…
 そんな馴れ合いなど一切知らぬ人の良い教頭が、機嫌よく先を続ける。
「千葉君、明日から藤宮先生の指導の下、クラス担当教務に参加してください。今日は挨拶がてら、学校内をひととおり見学するといいですよ。なにか質問はありますか?」
「いえ、ありません。あの、一生懸命頑張りますっ!」
「では、藤宮先生、千葉君の指導等よろしく頼みます。今日は午前中で校務も終わりですから、先生に学校案内を頼んでもよろしいですか?」
 駄目だと言ってもすでに決まっている話だ。ここは事なかれ主義でいかせてもらおう。
「…わかりました」
「では、よろしくお願いします」
「ありがとうございますっ!」
 準備室から出て行く教頭を、いかにも体育会系らしい深々とお辞儀で見送る千葉啓介だった。

 ガタンと戸が閉まるとそいつは俺の方を向き、爽やかな笑顔を見せた。
 畏れるな。たかが二十二のガキじゃないか。一度寝た位で怯む事でもない。
 どんな修羅場も切り抜けてきた俺だろ?
 平常心で付き合えばいい。

「藤宮先生。ふつつか者ですが、どうぞよろしくお願いしますっ!」
 準備室に響きわたる声に、周りの先生の笑う声が漏れる。
 少々呆れるが、こういう実習生は今までも何人か居たし、別段彼が変わっているわけでもない。暗い奴より幾分能天気の方が、こういう職業には合っている。
「じゃあ、千葉先生。こちらの机を使って下さい」
 俺は空いてる右隣りの机を示し、彼を誘導した。
 千葉啓介は「はいっ!」と、元気良く返事をし、一礼をして椅子に座った。
「ここの引き出しも好きに使って良いから。何かわからないことがあったら、遠慮なく聞いてください」
「はいっ!」
 そう言って引き出しを開けようと屈んだ千葉は、俺の右腕を引き寄せた。思わず俺の身体が右に寄れる。
 屈んだ千葉が俺の耳元に囁く。
「こんなとこであんたに会えるなんてさ。これって運命の赤い糸っていう奴?」
「…残念だが、その糸はこちらから切っておいた」
「じゃあ、また結びなおしておくよ。俺、こう見えても裁縫得意なんだ」
「…」
 ジロリと顔を睨んだが、意に介さず微笑を称えたまま俺を見る。
 そんな顔に騙されるかよ。
「用意が出来たら、構内を案内しよう」
「はいっ!よろしくお願いしますっ!」
「…」
 握られた手をわざと鋭く振りほどいたが、奴は顔色ひとつ変えないままだ。
 まったくもって、今の若者は裏表が激しすぎて、ムカつく。
 これ以上ややこしい奴との付き合いはゴメンこうむる。
 それでなくても俺の回りにはトラブルメーカーが多いんだから。
 

 次の日から、教育実習生千葉啓介の本格的な指導が始まった。
 実習期間はひと月半もあり、指導教師はその実習生の教師としての適正能力を見極めるという重要な責任を負うことになる。教職課程を受けたすべての学生が教師になることは少ないが、この聖ヨハネ学院大学からの教員採用試験の合格者は多い。 
 千葉啓介も当然大学の教育学部である。教科は国語、地理歴史を専門にしているが、今回は主に世界史を受け持つ。
 教科が違うとそれだけ顔を合わせる時間も少ないから、こっちとして気が楽になる。
 たとえあの一夜が遊びといえど、肌を交わしたことには違いないのだから。

 千葉啓介は教師として遜色のない優秀な人材だった。
 明るさや物怖じしない人懐っこさは生徒達への交流を意図も簡単にクリアしたし、若さと清潔さが教師達の好感を持って受け入れられた。
 何よりも聡明であり、生徒ひとりひとりへの判断が的確に行われていることに目を見張った。
「まるで先生になる為に生まれてきたみたいだな。俺なんかよりよっぽど先生らしいよ」
 お世辞ではなく本音を言うと、千葉は照れながらもキリッと俺の方を向き「紫乃先生から褒められるなら、俺、もっともっと頑張りますっ!」と、姿勢を正すのだ。
 そうかと言えば、ふたりだけになった途端、雰囲気ががらっと変わるからこちらも気が抜けない。
「紫乃…ふたりの時はそう呼んでいい?」
 生徒にだって呼び捨てにされることも多いんだから、呼び方に拘りは持ってない。
「構わないよ」

 昼休み時、いつものように注文した弁当を食べていると、隣で焼きソバパンにかぶりついている千葉は、不満そうな顔をする。
「やっぱり昼飯は自前で作ろうかなあ~」
「え?」
「俺、料理するの好きなんです。いつも自炊してるし…あ、そうだ。紫乃先生の分も明日から俺が作ってやるから、弁当頼まなくていいよ」
「別に俺は市販の弁当に不満はない」
「だって愛情がこもってないじゃん。俺の愛情たっぷりの手作り弁当を紫乃先生に食べさせてやりたい」
「いや…結構なんだ…が」
「よし!図書館に行って料理本借りて、メニュー考えてこ~」
 残りのパンを口にほおり込んだと思うと、立ち上がって突風のように準備室から出て行った。
 周りの先生方も一緒に、その背中を見送った。
「千葉先生を見ていると、何故だか元気が出ますなあ~」
「あれが今時の弁当男子って言うものですかね。藤宮先生、好かれて結構なことじゃないですか」
「…はあ」
 千葉のような一途な奴も今までに居なくはない。
 いわんや生徒達からの俺へのアプローチは思春期も兼ねてか、むちゃくちゃ激しいものがある。
 「先生好きなんです。付き合って下さい」は可愛いうち。
 「抱いてくれなきゃ死んじゃう」や、マンションの玄関先で何度もインターホンを鳴らし「一晩だけでいいんです。思い出を下さい」とか…ストーカーめいたものも何回もあった。その度に警察や親や学校に頼んで生徒を説得し諦めてもらったんだ。
 そんな彼らでも卒業してしまえば、俺はただの過去の人、甘酸っぱい過去の思い出になってしまうんだから、青春ってマジで一過性の性の爆発なんだろう。
 結局、いくらなだめても赤いコードは切れてしまうわけで…
 次の日から、俺の昼飯は千葉啓介特製の手作り弁当になった。

 千葉は学校から五分とかからないとヨハネの学生寮を寄宿舎としている。
 食堂をオバサンともすっかり仲良くなって、料理も色々と教えてもらっているらしい。
 確かに栄養のバランスもいいし、彩りも申し分ない。
 だけど、俺は弁当に何かを求めてもいないぞ。

「紫乃先生、卵焼き美味い?」「…甘い。卵焼きはダシのほうがいい」「そっか…うちの家は昔から砂糖味だったからなあ。紫乃はダシ派か。じゃあ、明日からはそっちでいくよ。里芋の煮っ転がしはどう?」「…普通」「普通って?」「普通は普通だろ」「なんだよ。素直に美味しいって言えば良いのにさあ…紫乃ってツンデレ?」「おい、俺のどこがデレているのか教えて欲しいもんだ」「だって…ベッドではデレてた…」「おまっ!」「大丈夫だって。誰も居ないから聞こえてません。紫乃ってホント純情なんだから」「…」「まあ、そこが大好きなんだけどね~。あ、明日は唐揚げ作ろう~」
 なんか違う…なんでこうなるんだ…わけがわからん。

 千葉啓介は、変わった男じゃない。むしろ純真であり、且つ一般常識も身に着けている上出来の学生だ。
 彼がゲイであっても、俺に関わってあの子が得をすることなんてひとつもないはずだ。
 若い好奇心をくすぐるちょっと珍しい年上のゲイと遊びたいだけなのだろう。とても本気とは思えない。
 少しだけ甘い蜜を啜って、ひと月後には、この閉ざされた楽園から自由に旅立つのだ。


 放課後、夏の日差しが和らいだのを見計らって校舎の屋上で一服していると、千葉がやってくる。
「今日は部活は無いから、暇ですね」
「そうだな」
 実習生は部活の指導も経験する。千葉は俺が顧問する『詩人の会』を選び、生徒と同じように詩を読んだり、作ったりしていた。
「部活は面白いか?」
「詩なんて作ったの、中学生以来?でも面白いよ。面と向かって言えない事も、詩でなら相手に伝えられる。
『…風に吹かれる葦のように私の心は震えている、
おまえの美しい精悍な腕で、私の身体を抱いてくれ…ただ抱き締めてくれ…』」
 朔太郎の詩だ。
「…大事な言葉を抜かしやがったな」
「え?」
「『女よ』…だ」
「そうだったかな?じゃあ、そこは『紫乃よ』に変えるよ。そして紫乃は俺に言うんだ。『良い子よ、恐れるな、なにものをも恐れなさるな、あなたは健康で幸福だ…』」
「そう言って欲しいのか?」
「…」
「言わなくてもおまえは十分健康で幸福者に見えるよ」
「そうなりたいと、願っているからだよ」
 そう言って、千葉啓介は反対側の柵の方へ歩いていく。
 その背中を見つめながら、お前ほど心根の健康な奴は居ないと思うよ、と、笑う。





昼飯中22

「Sonnet」 3へ /5へ


教育実習は昔経験した。卵焼きはうちは砂糖派。テキスト更新はゆっくりです。絵は出来たらうpする。
来週はフリー絵を更新しようかね



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若き啓介くんの悩み - 2011.02.07 Mon

22歳ってどんな感じ?

…こんな感じ…で良い。身近にいるから大体わかる。

問題は35歳だ。

35の男ってどんな感じ?

…まあ、芸能人で考えるしか手はない(;´∀`)


綺麗な紫乃さんでいこう~


絵はばんばん描いています。

一生懸命紫乃と啓介を描いてます。

こうやってキャラを育ててます。



千葉啓介23

啓介はかわいくて良い子です。

慧一に似てるけど、性格はこっちが爽やかで素直で良い子です。

付き合うならこっちが良いでしょう~

頑張れよ、啓介(⌒▽⌒)ノP"""" フレー! フレー!



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小説の書き方。 - 2011.02.04 Fri

「小説の書き方」と題しての、弁解つーか言い逃れ?(; ・`д・´)


こういうブログでの小説のアップというのは、一番良いのは全部出来て、見直して完璧に仕上げたものをアップする方法だろう。

うちでいえば最初の頃の「僕の見た夢」などは昔の原稿をアップさせただけだった。

各サイト主さんも色々な要領でアップされていると思うが、私の場合、非常に行き当たりばったり。

筋は頭で描いていても、下書きなど一切せず、PCの前で書きながら、ああ、こういう感じ?と、自分で笑う始末。それで一話分書いたらすぐに更新してほっと一息つくのだから、見直しもまとめもあったもんじゃない。
「green house」なんか、途中何度投げ出したくなったかわからない程だから、先行き不透明どころか、中途半端で終わり?ということにもなりかねない。
まあ、そうならないようにこちらも頭を休め、どこになにがあるのか、こいつの求める物はどんなものなのかめちゃくちゃ考えて、そして必要なものを…ネットを駆使して情報集めに勤しむわけである。

昔…パソコンを使う前は、調べ物をする為に市の図書館で本を借り、大事な部分を自分でノートに書き写していたが…まあ、これこそ汗が沁みているノートで、今でも捨てられない。
私も凝り性なので、黒魔術の本やら、わけのわからぬ童話、人が読まない本などを借りたりしてた。
ヴァイオリンやピアノの歴史などはとてもおもしろく、さりとてその写真をコピーする方法もなく、手で写したり書いたりとそりゃもう…努力でした。
今は、そういう「?」と思う事を、あっという間に調べられるネットワークがあるから、こういう物語が書けるのだと思う。
そしてそれを見つけられるアンテナは、昔の努力があったからだと思う。
「あ、これは必ず生きてくる」と、思ったらすぐにお気に入りにしておく。
なんせこちとら、もう歳の所為で、色々覚えられないもんでww

何を言いたいかというと、紫乃編が遅れているのは、場当たりに作ってしまった千葉啓介のおかげで、今非常に苦労しているという事なんだよ(; ・`д・´)
この啓介くんは、紫乃の恋人になるのだが、最初からどうするのか悩んでいた。
結果はハピエなんだよ。そこへ行く過程は無数にある。それを一本に見定めなきゃならない。

見切り発車で書き始め、紫乃視点なので、紫乃と一緒にこいつってどんな奴?ってなる。
なかなか心が読めない。
ので、彼の過去を考える。(最初に考えておけよ(;´Д`A ```)
そして少しずつ彼の性格を把握していく。
今はそういう状況。
彼の本音が聞こえ始めたら、楽に展開すると思うので、それまではしばらくお待ちを。

まあ、ちゃんとまとめて書いておけば、こういう修羅場にもならんけどさ~
追い詰められないとやらん性格だし、言われたからって、「ああ、そうですか~」ってシラを切るタイプだしさあ~
書ける時はいつかちゃんと来るさ~っていう楽天家だしさ~
出来ないから絵でも描こう~ってタイプだからさ~

あきらめてくれ!アセアセo(^^;o)Ξ(o;^^)oΞo(^^;o)Ξ(o;^^)oドウモ~♪

こういうテキストでも、待っている人がいるっていう事が、なんか非常に恐縮ですな。すまんね、そんでありがとね~

表紙だけ晒しとく。

啓介の抱えているものが、ハッピーアイテムになる予定。

では、また来週!



紫乃と啓介



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お絵かき講座♪ - 2011.02.04 Fri

え~…紫乃編が完全に暗礁に乗り上げておりましてww(;´∀`)
と、言うか、今週がちょっと忙しくて(言い訳~(;^ω^))
急遽、今描いた絵の展開を晒します。

今回は直接デジタルに描きました。
下書きからこの線画まで興します。
SAIを使用。
線画はエアブラシと鉛筆を使ってます。
目は割と早く描く方です。

tannpopo-1.jpg

肌の色をつけました。
厚塗りの場合は物凄く時間をかけて塗りますが、線画が強い場合、もう適当にサクサク塗ってます。

tannpopo-2.jpg

各レイヤーで色分けです。色は適当~。
配色とかまったくいいかげん。彩色とか勉強してたら良かったんですがねえ~(;´Д`A ```

tannpopo-3.jpg

レイヤーに乗算レイヤーをかけてます。あと、素材をオーバーレイ。
クリッピングを使えば楽ですね。
この入れ具合は個人のセンスだと思います。
私も色々試しているところです。

tannpopo-4.jpg


こちらが出来上がり~

「春を見つけた」

かかった時間は、塗りだけなら一時間半ぐらい。
線画を含めて二時間ぐらい?
tannpopo33.jpg

こういう絵は線画の時点で方向が決まってしまうので、色付けは割と楽です。

モデルの凛ですが…
昔、萩尾先生が「私はどんなエドガーも描けますね~」とおっしゃったことがあるんですが、それはエドガーに対する愛情なのだと感動しました。
私も今ならどんな凛一でも描けると思います。
それ程に凛一は私の中に生きているキャラなんですね。

紫乃編がんばりますので、しばらくお待ちくださいね。




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