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2012-03

This cruel world 3 - 2012.03.30 Fri

asutaroto98.jpg

3、
 神獣「セキレイ」はすくすくと育ち、一年も経つと成獣になった。
 小さき神子ふたりが乗っても充分な大きさだ。
 ふたりは「セキレイ」に乗り、行きたい場所へ飛んでいく。
 クナーアンに住む者は、空を飛ぶ青い神獣を見かけると手を振り、歓声をあげる。
 神の恵みを得んと。

 神子は好奇心旺盛の為、しばしば民の下へ忍び込み、その生活の様子を伺う。
 勿論フードを深く被り、目立たぬように、巷の子供と同じ恰好で、町や村を歩き回るのだ。
 特にアスタロトはそういう冒険じみたことを好み、田を耕す人々の様子を見たり、果実の取入れの手伝いをしたり、実りを祝う祭りを一緒になって歌ったり踊ったり…およそ神子の行動とは思えない有様だ。
 時にアスタロトの正体がばれ、民を驚嘆させることもあったが、大方彼らはそんな神子を愛すべき尊き者として歓迎する。
 この神子が豊穣をもたらすという二重の意味でアスタロトを最高神に奉るのだ。
  
 イールはアスタロトの行動を制したりはせず、かといって常に一緒に在ることもしなかった。
 アスタロトに誘われ、たまに民衆に歓迎されることもあったが、イールはアスタロトとは別の役目を演じなければならない存在だと知っていた。
 アスタロトが民衆に近しい存在の神ならば、イールはもっとも遠い尊厳の神にならなければならない。
 奉るふたつのものを同じ色に染めてはならない。 
 彼はその意義を知っていた。
 
 自分より民に深く広く愛されるアスタロトを、イールは妬かなかった。彼にとってアスタロトは守るべき半身となっていたからだ。
 遊行し、夜遅く帰るアスタロトに世話係や教師の説教を代わりに受けたり、服のままベッドに寝るアスタロトの服を着替えさせたり。
 イールはアスタロトを愛していた。
 彼の好奇心やこの星を愛する誠実な志が、どうしようもなく愛おしくてならない。どうしたらこの半身に自分の心をわかってもらえるのか、悩んでしまう。
 もとよりイールとアスタロトは天の皇尊より祝福された一対の恋人なのだから、愛し合うのは当然だ。だが精神の成長は人と同じで、個々による。
 アスタロトよりイールの方が性の目覚めは早かった。
 イールはまだ目覚めないアスタロトに欲情してしまう自分を悟られるのが嫌だった。
「ねえ、アーシュ。僕達、もうすぐ12になるよ。誓いを立てたらね、契りを結ぶんだよ…君はその意味わかっているのかなあ…」
 すうすうと寝息を立てるアーシュの額に、イールは「早く目覚めよ」と、キスを落とす。



 12歳を迎えたイールとアスタロトは、礼服を纏い、昇殿へ向かった。
 天の皇尊(すめらみこと)の祝福を受ける為だ。
 ふたりにとって天の皇尊との対面は二度目であり、祝詞を戴く最後なのだと言い渡されていた。
 今回は御使いであるミグリが控えていた。
 ミグリとは「セキレイ」を強請った以来、何度も彼を呼びつけ、勝手な無理を願っていたのでふたりにとっては顔馴染みであり、ミグリにとっては世話の焼けるやんちゃ坊主共、であった。
 光輝く天の皇尊の姿は変わらず眩しかったが、当然に魔力のついたふたりにはその姿を伺い見ることは難しくはなかった。
 ただ、ミグリは頭を垂れないアスタロトを手で伏せる様に命じ、アスタロトはしぶしぶそれに従った。

「クナーアンの幸をもたらす神、イールとアスタロトはこれから長き未来を共に歩んでいくのだ。ふたりがお互いを愛し、愛され、慈しみ、敬い、喜び、泣き、そして安らかに眠ることを願う」
 天の皇尊の言葉を疑う必要はなかった。が、アスタロトには胸に収めきれない疑問があった。
「天の皇尊にお答え願う。…私たち神は不死と言う。ならば神の安息の日とは何時なのでしょうか?」
「慎め」
 ミグリはあわててアスタロトの言葉を制した。
 アスタロトは動じなかった。
「御方は幼い私達を両腕にお抱きになられたではないか。私は御方をご尊敬奉る。このハーラル系の一切を知らぬものはない御方なら、私達の行く末も見ておいでになられるのではないのか?人の一生は儚いものだが、意義がある。だからこそ私達の存在もまた尊き者になるのでしょう。では私達はいつまで生きながらえれば良いのか…言葉をたまわりたく存じます」
「黙れ、アスタロト、不遜であるぞ」
 容赦のないミグリの怒りを感じたが、アスタロトは目の前に輝きから、目を逸らせなかった。

「よい、ミグリ。私はこの子らが好きなのだ。私が生んだ神々の中で最も美しく、そして人らしく生きるこの子らを愛おしく思うのだ」
 天の皇尊は歩を進め、跪くアスタロトの前で腰を屈め、ふたりだけに聞こえるように囁いた。
「なあ、アスタロト。生まれて12年のそなたに、不死たるそなた達に、死を見せることは私にはできない。私はこのハーラル系を定める者だが、未来を決める者ではない。行く末を案じても、未来は変わるものだと知っておるからだ。故にそなた達の死ぬ時を教えることはできない。森羅万象は美しくなければならない。そなたのように…そして時を生きるにはその順序がある。世の秩序もしかりだよ。今は成人したおまえ達に祝福を与える時なのだ。…これで良いか?アスタロト」
「…わかりました。御方の御心をありがたく戴きます」
 アスタロトは頭を伏せ、天の皇尊の光を身に受けた。
 天の皇尊はふたりの神にそれぞれ宝玉のリングを与えた。
 イールには赤く輝く銀の指輪。
 アスタロトには薄青の金の指輪。
「成人は聖人とも言う。イールとアスタロトは人の聖なる光でもある。クナーアンが久遠の光輝く地であることを祈る」

 昇殿を出たふたりは、神殿に集まる大勢の祝福を受けた。
 イールとアスタロトの神が成人になり、若い惑星クナーアンを豊かに統治する者と天の皇尊が定めたのだ。クナーアンの豊かな繁栄が保証されたことになるのだから、民衆がこぞって喜ぶのは当然だった。
 クナーアンの至る場所で祭りは続き、神殿から見る地上は夜になっても灯りが消えず、人々の歓声が収まることは無かった。
 
 いつもなら誰彼と無く笑いはしゃぎ、共に笑いあうアスタロトであったが、今夜はそんな心境にはなれなかった。
 鬱々とした思いが、この神の口を重くした。
 考えてもどうしようもないと頭でわかっていても、釈然としない。
 彼はまだ諦めをしらない少年だった。
(理想の星とはどんな姿をしているのだろう。僕はこの惑星に住む民を、満ち足りた理想の故郷として導くことができるのだろうか…)

 麗月と瓏月が共に並び、満月の光が夜天を明るく輝かせていた。
「アーシュ、ここにいたの」
 自室のベランダで地上を眺めていたアスタロトを、彼の半身が呼ぶ。
 礼服を脱ぎ、白く丈の長いチュニックに薄い絹の上着を羽織ったイールの長い巻き毛の銀髪が夜空に昇るふたつの月の光に映え、優美な女神に見えた。
 アスタロトは一刻、イールの姿に見惚れた。
「君がいないと宴が盛り上がらないんだって…。皆待ってる」
「うん…」
「マサキも心配している」
「…」
 イールはアスタロトの横に並び、同じようにベランダの手すりに寄りかかった。
 アスタロトもイールと同じような長居を着ている。
 ただイールよりも上着の裾は短く、肩から流れる金の帯が長く垂れていた。イールはその帯の端を掴み、口づけた。求愛のしるしであるのは、アスタロトも知っている。
 イールとアスタロトはお互いの身体をゆるく抱き、キスを交わした。

「…アーシュの憂鬱は知っているし、考えるなとは言わないけれど、僕達は神としての役目がある。今はそれをやり遂げようよ。ねえ、アーシュ、君はひとりじゃない。僕が居るだろ?君の重荷の半分は僕に背負わせて欲しい」
「イール…僕はまだ未熟なんだよ。自分の責任の重さを知るたびに、それを背負う怖さに怯んでしまうんだ。君や周りと不安にさせる自分が…情けなくて恥ずかしい。君はこんな僕でいいの?」
「僕には君しか居ない。君がいいんだよ、アーシュ。君だけに背負わせないから、自分を責めないでくれ、…僕の為に」
「君の為?」
「君を愛している」
「?…僕もイールを愛しているよ」
「君が、欲しいと言っているんだ」
「…契りを結びたいって事だね。…僕に欲情してる?」
「…うん」
「そう、…抱いていいよ」
「君にその気が無いのに、できないよ」
「イール」
「君を愛しているんだ。だから、僕は待てるよ。君が僕を欲しいと思う時まで」
「…」
「天の皇尊は仰っただろ?時を生きるには順序があるって。僕もそう思うから…焦る必要はないもの。僕達は長い時を生きていかなければならないから必然とそうなると思うけれどね…」
 イールはもういちどキスをした。つま先を立て、今度は アスタロトの額に慈愛のキスを。

「僕は贅沢なんだ。お互いを必要とするのは…天に決められたからじゃ嫌なんだ。君が僕を欲しいと思ってくれないと僕は嫌だから…だから待てるよ、アーシュ」
「イール…」
(待つ必要なんてありはしないのにさ。イールにはそんなに僕が幼く見えるのかな?…まあ、イールの謙虚さは見習うべき良心だと受け取ろう。僕だって早くイールとセックスしたいもの。と、いうか…僕どっちの役をすればいいのだろうか…どっちでもいいって言ったら、イールはきっとどうでもいいんだと解釈しそうだなあ~…僕はイールのしたいようにやって欲しいんだけどさ…)

 考え込むアスタロトの顔にイールはまた憂鬱の虫を起してしまったのかと、少し焦り、機嫌を取ろうと試みた。
「アーシュ、ね。気分転換に明日はセキレイに乗ってどこかに行かないか?ふたりきりの場所を探してみようよ」
「要はそこが快楽を貪る為の秘密の花園ってわけですね。いやらしいなあ~イールは。ああ、セックスだけど、僕は受けでもタチでもどっちでも構わない。イールが好きにしていいからね。遠慮しなくてもいいよ」
 アスタロトの言葉にイールは眩暈がした。
(先程まではあれほど誠実でデリケートに沈んでいたくせに。なんだ、この幼いあからさまな感情は…全くもって…アーシュは子供だ)
「…アーシュ、君が人間をもっと理解したいのなら、デリカシーという言葉を覚えたほうがいいね」
 イールはアーシュの手を払い、くるりと背を向け、部屋から出て行ってしまった。
 何がイールの気分を損ねてしまったか、アスタロトにはさっぱりわからかった。
 


イール・クナーアン33

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This cruel world 2 - 2012.03.27 Tue

kodomo23.jpg

2、
 天の皇尊(すめらみこと)は、惑星クナーアンの新しい統治者に加護を与えた。
 イールには智慧と水(癒し)の護法。
 アスタロトには豊穣と火(浄化)の護法を。
 ふたりはこの惑星の豊かな未来を背負って歩き出した。

 まだ幼いふたりの統治者を助けるべく、それぞれの惑星より、幾人かの世話人が選ばれた。
 ふたりの乳母たちは言うまでも無く、彼らに統治者としての知識を教えるべき教師もいた。
 彼らの理念は高く、ふたりの神子を立派な統治者にすべく、懸命に自身の役目を果たした。
 イールとアスタロトは温かい愛情に守られて育っていく。


 ふたりが即位して間もない或る日、ふたりはいつものように拝謁を受ける為、神殿に祀られた玉座に並んで座っていた。
 その12階段下の広間に、許しを受けた惑星の人々、移民する者達がふたりの神の恵みを受けようと、大勢並び連なる。
 彼らは玉座に座るふたりを畏れ奉りながらそれぞれに自分の願いを請うのだった。
 拝謁は幼いアスタロトには退屈だった。
 何も語らずただ黙って崇められる風景を眺めていなければならないのだ。神の仕事だと言われれば仕方ないものだが、天気の良い時などは、扉の外で遊ぶことばかりで心ここにあらずだ。
(早く午後にならないかな~。今日は天気が良いから、イールと遠くの草原まで冒険に行こう。きっと珍しい生き物を見れるかもしれない)
 隣りのイールに視線を移すと、以心伝心の如く、こちらを向いてニコリと笑う。
 ふたりは微かに指先を動かし、お互いの密約を取り交わした。
 その時、並んでいた後ろの方で幼子が泣き出した。母親は必死であやすがなかなが泣き止まない。周りの者もこの厳粛な神殿での耳障りな泣き声にうんざりとした顔をする。「出て行け」と、言う声すら聞こえてくる始末。
 この神殿は小高い山頂にある。
 ここまで巡礼するには時間も根気もかかる話だ。拝謁するまでもう少しだが、こう泣き喚かれては神もお怒りなるだろう。
 仕方なしに出て行こうとする母子の後姿をアスタロトは眺めた。そしてあっという間に、玉座から降り、12の階段を三歩で飛び降り、驚く人々の間をするりと抜け、その母子の傍らに立った。
 母は畏れ畏まり、平伏す。周りの人々も同じように跪いた。
 立っていたのはアスタロトと彼より少し小さい幼子だった。
 アスタロトは自分のポケットからビスケットを出した。朝食のデザートに出されたものを取っておいたのだ。それを幼子の手の平に乗せ「食べてこらん。美味しいよ」と、笑った。
 泣いていた幼子はしゃくりながら小さき神子の言うとおりに、手渡されたお菓子を口に入れ「おいしい…」と、満面の笑みをこぼした。
 満場の溜息がアスタロトを讃える歓声に変わった。
 
 ふたりの神は知った。
 人々を興じさせるのは難しいことではない。が、この単純さが際どいのだと。
 ふたりは知っている。時間と労力をかけ、神殿まで拝謁を賜り、人々が何を自分らに願うのかを。
 それは滑稽でもあり、真摯にも思えた。
 彼らの願いは自分勝手なエゴであり、それは彼らの偽らざる心根である。また人の為に祈ればそれは白々しく不実である、と感じていた。
 彼らを導くための自分達の存在の意義を見つけるのは安易。 
 ふたりの神子は繊細であり聡明であったため、その発端は人々の顔色で勘づいていた。

 神子の日課は細かく区切られている。
 朝、起きて朝食の後に学習。それから拝謁を許された人々に姿を見せる。昼から夕刻までは自由時間だが、夕食を終えてから就寝までは再び学習である。
 イールもアスタロトにとって学習はそれほど退屈なものでもなかった。
 ふたりは何も知らなかったし、それをひとつずつ理解することは楽しかった。
 魔力は身に付いていても、それを使いこなす技量は持ち合わせていなかった為、一から覚えながら、その魔法の意味を教えられた。
 まだ若いハーラル系の歴史や人々を導く為の道徳や信念。魂の豊かさを得るための芸術も習った。
 
 特に第八惑星ファザックから来たセラノという教師は、ふたりのお気に入りであった。
「ねえ、セラノ。どうして星々の集まりとハーラル系と原子の形は似ているの?」
「難しい話ですな~。そうですね。それは…私達の思考がどこか繋がっているように、理想の形というものを或る物体や見たこともない遥かなものに、相似させてしまうからなのかもしれません」
「理想と実体を混合させてしまうってことだよね。僕達神々や人間の思考能力には限界があるってこと?」
「限界があることを知ってしまうことの無意味さを知っているんですよ」
「「…むずかしいね」」
 ふたりは揃って頭を捻る。
「哲学と物理学は似て非なるものといいますが、結局は人が導いたものでしかありません。真理を知ることは難しいのです。…ここにひとつの珠があります」
 セラノはポケットから手の平に乗る位の小さな白い珠を取り出して、神子らに見せた。
「この珠はあるのか?ないのか?どちらでしょうか?」
「あるよ。見えるもの」
「本当に?」と、彼は手を握り締めそしてすぐに開いて見せた。珠は無かった。
「あ、魔法を使ったね」
「それか手品だ。僕らを騙したんだ」
「いえ、珠は最初から無かった。あなた方は幻覚を見たのだ。その両眼が真に見たという証拠さえ不実になり、真理という言葉はあやふやになる」
「どういうこと?」
「あなた方は私達とは違う存在ですが、天の皇尊は人としてあなた方を生ませた。人の限界とはあなた方も同じようなもの。理想と現実は同じではないが、掲げる意義があると申し上げる」
 セラノの目的はふたりの精神教育だった。
 神々が人間に近い精神を持ちえてしまった結果を、彼は懸念していた。
 だが、この幼い神子らが「そのこと」を理解する日はまだ遠い。
 

 或る日、アスタロトは乗り物が欲しいと言い出した。
 言い出しただけじゃなく、イールを連れて昇殿へ昇り、天の皇尊を呼びつけた。
 そう易々と出てくるものかと思し召したのか、天の皇尊は姿を見せてはくれなかったが、代わりに御使いを参らせた。
 白き装束を着た白髪の若者が、幼い神子らを見つめた。
「あなたはだあれ?」
「我が主(あるじ)は多忙である。代わりに私が参った。何か用か?」
「あのね、里の者たちの暮しを見てみたいの。でも僕らの足ではなかなか行けないでしょ?一足飛びで行ける乗り物が欲しいの」
「ペガサスはどうかな?父上と母上が乗っていたよ」と、イール。
「ああ、それいいね。僕の両親は大鷲だった。でも龍みたいなものでもいい」
「ドラゴンは?物語で見たよ」
「モフモフわんわんおがいいな」
「わんわんお…モフモフしてたら気持ちいい」
「んなのでもいいよ、使いの者」
「…ミグリと呼びなされ。幼き神子」
「じゃあ、ミグリ。そういうの下さい」
 不機嫌な御使いの顔色など全く気にしない神子らに、ミグリはチッと舌打ちした。天の使いでも感情はあるものだ。
「天の皇尊はいちいちあなた方の我儘に付き合ったりしないものです。今回だけは我が主の情けにより叶えてあげますが…」
「わーいッ!イール良かったね。なんかくれるって」
「うん。良かったね」
「待て、こら。ちゃんと最後まで話を聞きなさい。いいですか?この卵を差し上げるから、三日三晩、懐で温め、孵しておあげなさい。あなた方を背負うまでには多少時がかかりますが、良い主従関係を持てればあなた方を助ける僕(しもべ)になるでしょう。わかりましたか?」
「わかりました。ミグリ。大事に可愛がります」
 ふたりはミグリから卵を受け取った。
「では、失礼いたします」
「じゃあ、またね。ミグリ」
 笑顔で手を振る神子らに、ミグリはウンザリしながら姿を消した。

 三日三晩、ふたりは交互に卵を懐に入れ、孵る時を待った。三日めの夜、それは孵化した。
 青い毛に三つの尾、頭に二本の角が生え、顔は狼のようだった。
 神獣は彼らの望んだものとは少し形態は違ったが、彼らは懸命にそれを育てた。
 神獣は「セキレイ」と、名づけられた。


 時が経ち、ふたりの神子は12歳を迎えた。
 12歳とは大人を意味する。
 イールとアスタロトは契りの日を迎えるのだ。





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This cruel world 1 - 2012.03.23 Fri

アスタロト・イール9
1.
 ハーラル系は恒星ハーラルを中心に十二の惑星から成り立つ。
 天の皇尊(すめらみこと)は、この星々に統治する神を二体ずつ宿した。
 惑星間の間には次元をくぐる道があり、民はどの星へ移住しようが構わない。
 良き星の統治とは、民が集う豊かな地上を作り上げることだ。
 神は、その為だけに存在するのだ。


 十一の星の神々は、最後の惑星クナーアンに宿る神の誕生を心待ちにしていた。
 ハーラル系の第三惑星のクナーアンは、他の神々がその星を眺めるたびにうっとりと溜息を漏らすほどに美しかった。
 どの星に比べても瑞々しく青く輝き、また地上の豊かな緑と山地のバランスも絶妙に保たれ、理想の星と謳われた。
 天の皇尊は、ハーラル系の最後を飾る惑星クナーアンを、それまでの集大成として大切に育ててきたのだ。そして、この最良の星の神を産み出すため、第五惑星ディストミアと第二惑星リギニアの女神の腹に彼らを生んだ。
 天の皇尊が愛してやまない人間と同じように、女体の腹から産まれ出ずる者こそ、クナーアンの神である。
 十月十日後、ふたりの神々はそれぞれの惑星で生まれた。
 ディストミアの女神からはイール。
 リギニアの女神からはアスタロト。
 ふたりは五つになるまでそれぞれの親元で育ち、晴れて五歳の暁に、惑星クナーアンを統治する神になるのだった。


 今日の日に五歳を迎えるイールは真新しい神殿の一室で、じっと椅子に腰掛け、時を待っていた。
 扉の向こうに見えるひとつ高い段には大理石に見事な金の細工で縁取られた神の座がふたつ並べてある。その座のひとつに間もなく自分が座るのだと思うと、なんだか不思議な気がしてならなかった。
 そして、もうひとつの座。自分の半身とはどんな見目と精神をしているのだろうかと、不安と期待が小さな胸いっぱいに広がっていた。
 民の惑星空間の移動は、一通りの契約が認められれば容易く選択できるものだが、神々が他の星に行くことは滅多にない。よって、イールも未だ自分の半身の顔すら見たこともないのだ。

「遅いわね。あの子は一体どこまで遊びに行ってしまったのかしら…」
 真向かいに座るリギニアの女神エーリスが困った顔をして隣りの良人であるハウールを見る。ふられたハウールは肩を上げ両手を開き「さあ」と言う顔で返す。
「申し訳ございません。神子(みこ)さまには遠くに行くようなことは強くお止め申し上げておりましたのに…」
 神子の世話人マサキは、人の良さ気な柔和な顔とふくよかな身体をした女性で、緊張の所為か止まらない汗を拭き、ひたすら恐縮している。 
「探してまいります」と、マサキは小走りで出口へ向かう。
 と、扉の向こうから小さな影が飛び込んでくる。
 いや、影ではない。それは光だった。

「ただいま~」
 良く通る高い声が部屋に響いた。
「アスタロトさま!一体どこまで遊びにいらっしゃったのですか?父上さまも母上さまもそれはご心配なされておりましたよ。それに…ディストミアの方々も…」
 マサキは申し訳なさそうにイールとその一行に深く頭を下げた。
「…あらまあ、折角の新しい衣服が泥だらけ…」
「うん、あのね、あっちの小川にきれいなお魚が泳いでいたの。つかまえようと思ったら、ころんじゃったの」
「あらまあ~」
 マサキはあわてて自分のエプロンで濡れた神子の髪を拭く。
 ディストミアの男神キュノビアは、豪快に笑い「子供は元気な方が良い。なあ、イール、そなたもそう思うであろう」と、言う。女神スコルは、時間に遅れた神子をいい気持ちで待っていたわけではないが、夫にそう言われては頷くしかない。
「イールも充分健康ですよ、あなた」と、小さく皮肉った。
 イールには両親の言葉など全く気にしなかった。
 小さな自分の半身の一挙手一投足を見つめ、息を飲んだ。
 イールも天の皇尊の恵みにより、誰をもうらやむ美貌と精神を戴いていた。だが、この半身は我が身と比べてもより多くの幸いに満ち溢れているように、イールには感じられたのだった。
 勿論、彼を育てた両親は、血の繋がりはなくとも、我が子の方がより勝っていると誇らしげに胸を張ったのだが…
 
 神子はまっすぐにイールに向かって近づいた。
 透けるほどに白い肌に薄桃色に染まる頬。紅を引いたような赤い口唇。ゆるく波打った黒髪、そしてその深い紺碧の瞳には宇宙が広がっている。
 イールはただ見惚れていた。ディストミアのどこにもこのような美しい人も形も無かった。
 その神子は小さな拳をイールに捧げた。
「はい」
「?」
 イールは小さく頭を傾げた。
「あげる」
 神子はイールの手を取り、その手の平に小さな石を乗せた。
「あのね、おもての階段を降りた向こうの小川で拾ったのよ。すごくきれいだから、イールにあげる」
 嬉しそうに響く澄んだ声音が部屋の空気を一新させる。
 清しい一陣の風が吹きぬけたようだった。
「あ、りがと…」
 イールは少し頬を赤らめ、その小石を見つめた。
 薄い青色をしたラリマーは、イールの瞳の色にそっくりだ。
 自分の目の色を会ったこともないこの神子が知っていたとは思えないが、イールはこの突然のプレゼントを心から喜んだ。
「嬉しい?」
 星を散りばめた瞳がじっと覗く。
「うん、とっても嬉しいよ。アスタロト」
 満面に笑みを湛えたイールを驚きの顔で見つめ、アスタロトは何度も瞬き、そして嬉しそうに笑った。


 正午に儀式は執り行われた。
 神殿の内陣に集まり、白い礼服を着たイールとアスタロトが拝殿から昇殿へ昇り、天の皇尊の祝詞を戴く。
 十二の階段を並んで昇る小さなふたりの神の子は言葉にできないほどに愛くるしく、純真で無垢な美しさに輝いていた。見守るすべての大人たちが幸多かれと願わずにはいられない程に。
 イールは隣りのアスタロトに顔を向けた。
 アスタロトは長いローブに背中を引っ張られながら、転ばないようにと慎重に足元を確かめている。
「あの…ね」
「なあに?」
「仲良くしてね、アスタロト」
「うん、いいよ」
 不思議なことを聞くのだなあと、アスタロトはイールを見る。
 十二階段を上がり終えたふたりは、お互いを見つめ合う。
 これからはこの子と一緒に生きていくのだなあ、と、ふたり同じ思いでいるのがわかった。

「あのね、アーシュでいいよ」
「え?」
「僕の名前。アーシュって呼んでね。僕、好きな人にはそう呼ばれたいの」と、アスタロトは無邪気な笑顔でイールに言う。
 (なにを持ってしてもこの笑顔には勝てないかも知れないな…)と、イールは何事も包み隠さないアスタロトの無垢な魂を少しだけ妬いた。

 昇殿の先に白木で出来た扉がある。手を繋いだふたりは空いた手でそれを開けた。
 扉の先は眩しい光の渦だ。
 ふたりは光に包まれた中に並んで立った。
 声が聞こえた。
 若い張りのある声だ。
「惑星クナーアンの若き統治者、イールとアスタロト。私はそなた等を生んだ者。そなた等にこのクナーアンの未来を託す。良く考え良く話し、分かち合い、良き未来へ導くために生きなさい。私はそなた等を祝福する…」
「あのね…まぶしくて見えないの」
 アスタロトの突然の言葉にイールはギョッとした。
 天の言葉を聞く時はただ頭を垂れ、決して仰ぎ見る事はまかりならぬ。況してや口を利く事など持っての他だと強く教えられていた。
 それなのにアスタロトは顔を上げ、光源をじっと見据えたままだった。
「せっかく僕を生んでくれた御方が目の前にいらっしゃるのに、お姿が見えないのはすごく寂しいもの。ちゃんとお礼を言いたいもの。ねえ、お姿を見ることはできないの?」
 天の皇尊の姿を拝見してみたいなど、イールには考えの及ばない話だっただけに、呆気に取られたままアスタロトの横顔をじっと見つめた。
 しかし、目の前の光のかたまりは次第に輝きが抑えられ、人の輪郭が目に映るようになった。
 アスタロトはイールの手を離し、その人影に走り寄った。
 影はアスタロトを抱き、その頭を撫でた。
 イールは、天の皇尊に抱かれるアスタロトが羨ましくてならなかった。アスタロトと同じようにその影に近づいた。
「イールも私が見たいのか?」
「はい」
 好奇心は決まり事を容易く破り捨てる。
 両手を伸ばし、その影の腕に抱かれた。

 天の皇尊の胸に抱かれたふたりは、満面の笑みを浮かべ、口々に「ありがとう」と、何度もお礼を述べたのだ。
 


創世

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次回予告 - 2012.03.20 Tue

さて、次回からは「senso」の新章となる「This cruel world」ですね。
殺伐とした「流れる星の彼方に…」とは打って変わってほのぼの…とはいきませんが、お伽話として読んでいただければ幸いです。

主役ふたりです。
左はアスタロト。「senso」の主役、アーシュ本人ですね。
右が今回の主役の本命中の本命、イール。
作者の愛情いっぱいに苛めてやろうと思っております。

アスタロト・イール1

ふたりは惑星「クナーアン」を司る神なる者たちなのですが、とっても人間ぽく、愛も憎しみもあります。
彼らの愛がどうなっていくのかを描いていこうとおもっています。
相変わらず成り行きでしか書くつもりはありません。
終わりだけは決めているのでそれに向かって、感情を書き連ねるのは今までと同じですね。
この章が終わったら、アーシュたちがルゥを探しにいく旅に出ます…が、いつになるやら…
今はわかんな~い。
GWまでにこの章が終わることを祈って…ます(;´∀`)

kodomo.jpg
子供のアスタロトはアーシュと同じで短髪。とってもかわいいよ。
イールもいい子。
そういうほんわかを書くのも楽しみだなあ~

kiss11.jpg

大人になったら長くするの。
イールがしてしてって言うから。

イール上1

今はひとりぼっちでお留守番。
だってアスタロトはアーシュになって、記憶がないもんだから、イールの事も忘れてるの。(´Д⊂グスン

今週末か、来週から始められたら…褒めてくれ(;^ω^)



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緊急告知! - 2012.03.19 Mon

「流れる星の彼方に…」の無料本差し上げます。

自分の作品は長編ばかりなので、自分で製本するなんて考えたこともなかったのですが、この「流れる星の彼方に…」は比較的短編なので、自分の為に作ってみようかなあ~と思ってやってみたら…
めちゃ簡単なんですね~
製本っていう印刷にクリックすればできるんですねえ~驚いたよ~

と、言うわけで簡単にできるし、ページ数も28ページ(A4が7枚)なので欲しい方に差し上げます。
先着10名さまですが、欲しいな~と言われる方は、内緒コメにて連絡くださればお送りいたします。
送料も勿論無料です。
切手はいつも友人からプレゼントしてもらうので、このような形でお返しできたら切手くんも本望でしょう。

サイズはA5で、表紙込みで30ページです。
製本は私はやるのできっと汚いですけど、記念ですので。

でもこんなに簡単にできるのだったら、…これからも色々やってしまいたいわな。


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流れる星の彼方に…7(最終回) - 2012.03.16 Fri

なんとか終わったよ~
もう原作なんて全く存在しないお話になっちゃて…
エロさを追求していたはずなのに…こんなになっちゃってさ(;´Д`)
でも、私が今書きたいのはこういうものだから仕方ないさ。

えれえ長くなっちゃったから、あんまり無理して読まなくていいよ。
もともとわけわかんないお話だしなあ~

では最終回だすっ!

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7、
 後ろ手に縛られたフランシス・ユージィンが連れられた時、ユエ・イェンリーは自分の不甲斐なさと虚しさに押しつぶされそうになった。

 ひと月前、ジャック・エリアードが殺され、その養子であるリュウ・エリアードと組織の一員であるフランシス・ユージィンの姿が消えたとの連絡を受けた。
 ユエ・イェンリーは西方の僻地から三日かけて本部に戻り、その詳細を聞いた。
 そして一ヵ月後、突然フランシスはティラニス本部へ姿を見せ、王を暗殺し、リュウを連れて逃げ、邪魔になったから殺して捨てた、と、自白した。
 ユエにはフランシスが真実を話しているとは到底思えなかった。 
 すべてにおいてあまりに動機が矛盾だらけだ。
「本当の事を言ってくれ、フランシス。そうでなければ…俺はおまえを処罰しなければならない。俺にそんなことをさせたいのか?おまえは…俺の背中を守ると誓わなかったか?何故、嘘をつく」
「…」
「…リュウなのか?リュウを守る為におまえは…」
「ユエ…初めから僕にはリュウを守る資格などなかったんだよ。あの子を守りたかったのは本当だ。だが、僕はね…あの子の信頼を裏切ってしまったんだ。リュウを凌辱し、嫌と言うほどあの身体を貪り続けた。リュウは僕には心を開いてくれなかったよ。僕は君にはなれなかったんだ…」
「だから、リュウの罪をすべて負うと言うのか。おまえは…それでいいのか?何も得ることもなく…死んでいくことになっても」
「僕は心からリュウを救いたいと願ったよ。だけど…僕は…君からリュウを奪いたかった。君の心を支配するあの子を僕のものにしたかっただけなのかもしれない」
「…フラン」
「まだ僕を愛してくれるのなら、ユエ・イェンリー。君の手で僕を殺してくれ。そして君を裏切った僕を…許してくれ」

 引き金を引き、その銃弾がフランシスの眉間を貫いた時、ユエは我が身のやりきれなさに狂った方がマシだと思った。
 得がたい恋人だった。
 この世界で自分より信じることができる稀有な存在だったのだ。なぜユエ自身の手で殺さなければならない。
(すべてはリュウの所為だ…)
 そう思うことでユエはかろうじて正気を保っていられたのかもしれない。
 そして、罪人は今、ユエの腕の中にある。
 ユエがその気になれば、細首を縛り上げ、その命を奪うなど他愛もないことだ。
(いや簡単には死なせはすまい。ジャック・エリアードを殺した罪、フランシスを苦しませた罪、そしてフランシスを殺させた罪…あの身体と心に苦痛だけを与えたい。狂うことも許しはしない。…俺だけを求め、俺だけのものに…)

「う…苦…しい…」
 縛り上げた力が強かったのか、リュウは小さく叫んで意識を失った。
 呼吸が止まっている。ユエは手にした組紐を弛め、リュウの口を塞ぎ、息を吹き込んだ。
 何度か繰り返した後、リュウは息を吹き返し、苦しそうに咳き込んだ。
「…貴様には俺を殺す勇気もないのか?ユエ・イェンリー」
 罵る言葉さえ甘美な肴になる。より一層ユエの心に暗い火を付ける。
「簡単に楽にさせたくないだけだよ、リュウ。俺はまだ、おまえの身体を貪りつくしてはいないからな」
「…哀れだな…俺も同じことを思っていたよ。まだおまえを味わいたいと…」
 窓の向こう、半月の影が、リュウの顔を白く染める。
 青みを帯びた濡れたふたつの宝石がユエ・イェンリーを彷徨わせる。
 ふたりきりで永遠の官能を味わいたいとさえ…

 「君はリュウを愛しているんだよ、ユエ…誰よりもね」
 フランシスの言葉が蘇る。何度否定しようと消え去ってはくれないのだ。

 丹念に残酷さを増して、死の縁へ追い詰める儀式。 
 月に光る髪を振り乱し、身体をくねらせ、ユエの名前を狂おしげに呼ぶ。 
 どれだけ繰り返しても飽きはしない。
 どんなに痛みつけてもしがみつくリュウの指の強さを、ユエは未練だと決めつけている。その力が緩んだ時、ユエはこの生贄を捧げなければならない…
 誰に?フランシスにか?ジャックにか?それとも…
「リュウ、苦しいかい?…おまえの苦しみは俺の喜びになる。俺を飽きさせるな」
 応えるように歪んだ顔のままリュウは、身体を捩らせた。残虐な悦楽を得るために…

 死んだように横たえる身体をいとおしむように撫で、抱き寄せた。
 意識を取り戻したリュウは、ゆっくりとユエの顔を見上げた。
 濡れた黒曜石がリュウを嘲笑っている。
「…おまえは父親に良く似ているよ、リュウ。血の繋がった息子なのだから当前だろうが…」
「ユエは養父と同じことしか言えなくなったのか?あの男は俺を抱くたびにリョウ・アヤセとそっくりだと宣(のたま)い俺を身代わりにした。枕元にそいつの写真を置いてな。そうしないとイケないんだと。笑えるだろう…ああ、おまえも俺がティラニスに来る前はリョウの代わりにお勤めしていたんだっけな。顔が似てなくても、髪が黒けりゃいいのかよ。案外あの親父もぞんざいなものだ」
「口を慎めよ、リュウ」
 リュウの悪口雑言をユエはまたもや首にかけた紐を絞めることで閉じらせた。
「人の想いとは時間など関係なく続くものだ。ジャック・エリアードのリョウ・アヤセへの情愛は本物だった。おまえにそれを笑う資格などない」
「…俺を玩具にして…弄ぶ資格は…あるのか」
「リョウ・アヤセの息子として生まれてしまった運命(定め)だ…」
「そう…そうなのか。フフ…俺は自分を哀れむことも許されないのか…。父も母も知らないと言うのに…」

 リュウ・エリアードの父、リョウ・アヤセは異母妹のキラ・アヤセと禁断の関係を持ち、キラはリュウを身ごもった。その事実すら知らずに、リョウ・アヤセは18歳を迎える日に突然この世から姿を消したのだ。
 そのリョウ・アヤセをユエが初めて見たのは、ユエが「ティラニス」に来たばかりの頃だった。
 孤児だったユエとフランシスはジャックに拾われ、「ティラニス」の施設に引き取られた。ユエもフランシスも9歳になっていた。
 都市の有力者を集めての寄付金パーティの際、孤児たちは同情集めにホストをして借り出される。その時、ユエはリョウ・アヤセを見た。
 最初で最後の出会いだった。
 リョウ・アヤセは幼い頃から神童と噂され、経済学と政治論に関して、的確な知識と予想を遥かに超えた展開の弁論を述べる12歳の子供に立ち打ち出来る大人はいなかった。
 リョウはまださほど突出した存在ではなかったシンジケート「ティラニス」のジャック・エリアードと手を組み、瞬く間に「ティラニス」を巨大企業にのし上げたのだ。
 リョウ・アヤセは当代の「伝説の英雄」だった。
 その伝説を幼いユエも聞き及んでおり、その覇者の姿をひと目見たいと心待ちにしていた。

「君が新しい子だね」
「え?」
 カクテルグラスを載せた盆を零すまいと必死で持っていたユエ・イェンリーの目の前に声をかける少年がいた。
 無邪気にニコリと笑う整った美貌にユエは呆気にとられていた。
「あの、カクテルをどうぞ…」
「ありがと」
 少年は面白そうにユエを眺め、両手に持つ盆を取り上げ、傍らのテーブルへ置いた。
「あ…あのあなたはもしかして…リョウ・アヤセ?」
「そうだよ」
 ユエは驚いた。
 17歳になるリョウ・アヤセは思ったよりもずっと若く見えたし(ユエには14,5歳にしか見えなかった)それでいて威圧感も幼稚さも無い。開放的で聡明なその眼差しに瞬時に惹きつけられた。
「ちょっと来てごらん」
 そう言ってユエの手を掴み、大勢の客の間をすり抜けて行く。
 振り返り微笑する容貌に見惚れた。
 動くたびに揺れる光沢のある黒髪。見つめる紫水晶(アメジスト)の輝き、精神の美しさが全身に立ち込めていた。
 リョウはユエを建物の屋上へ連れて行った。
「ねえ、ユエ・イェンリー。君はこのティラニスで何をしたい?」
「え?」
 ユエは自分の名前を知っていることを不思議に思ったが、そのことについて聞く意味などないのだと悟った。この少年がリョウ・アヤセならば、この世で知らぬ事は無いのだろうと…
「僕…まだここに来たばかりで…何も考えていません」
「そうなんだ…ここはあまり居心地の良いところではないかもしれないけれど…君ならやれるかもしれないね」
「え?なにを?」
「世の中を還ること」
「還る?」
「…ほら、見える?あの小高い森林」
 リョウが指差したのは北西に見える緑色をした小さな山だった」
「あの中心にね小さな湖があるんだよ。その湖に…君の宝物がある」
「…」
「ふふ…今はわからなくていいんだ。忘れてしまっていいんだよ、ユエ・イェンリー…。僕の事も、ね…」

 (忘れていた?
 湖のある森?…
 リョウ・アヤセは俺になにを言いたかったのだ…)

「どうした?ユエ」
「…」
 (そっくりだ…)
 今、ユエを見つめているのはリョウ・アヤセなのか?リュウ・エリアードなのか?
「おまえは何者なんだ?リュウ…」
「…おまえの……だよ」
 月光に消えてしまいそうに白く浮かぶ姿で、リュウは薄く笑った。
 
「楽になりたいのか?」
「おまえが楽になるのなら構わないさ…ああ、そうだな…殺す前にせめておまえの思い出ぐらい聞かせろよ。父親だけじゃなくさ。俺と会った時どうだった?可愛いと思ったか?」
「…そうだな。おまえはあの汚い砂漠の下町の市で俺の財布をすろうとしたな」
「即座に腕をねじ上げられた。それで俺はヤバイと思って走って逃げた」
「逃げ足だけは速かった」
「…すぐに捕まったけどな」
 クスクスと楽しげにリュウは笑った。まだこんな表情があったのだと、ユエはリュウに見惚れた。
 あれがリュウの本来の姿なのだろう。それを奪ったのはユエなのだ。

「…憎んでくれていい。俺がおまえをこんな風にしてしまった…運命なんかじゃないさ。俺がおまえを…壊してしまったのだから…」
 リュウへの懺悔と痛烈な痛みがユエの胸を埋め尽くした。罪悪感ですら、ユエには恍惚なる甘美な痛みに変わる。
 リュウへの想いとは常に痛みを伴い、自分を追い詰めることだと知ってしまったのだ。
 リュウはユエの手を取り自分の胸に置いた。
「傷つき壊れた俺をおまえは求めていた。ならば、俺に存在する意味はあるのだろう。違うか?」
「おまえを壊し続け、そして愛おしく思うのは俺の罪だ。この罪を裁くにはどうすればいい?」
「…殺すしかなかろう?おまえにとって俺は、希望のないパンドラの箱。壊して、そして捨てるしかない」
「それが望みなのか?」
「おまえの望みなんだよ、ユエ・イェンリー…さあ、やれ。終わりではない、始まりだと思え」
「…」
「だが、せめておまえの手で、俺の息の根を止めろ。そうしなければ、恨んで化けてでてやる」
「…それはまた一興…」
 今がその時なのだと、ユエもリュウも悟っていた。
 まるで胸に秘めた愛を告白するように、ふたりはお互いの胸へ手の平を当てた。

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 そしてユエ・イェンリーはリュウ・エリアードの心臓が止まるまで、その細首を己の両手で絞め続けた。
 リュウは苦しい顔など見せず、微かに笑い続けた。
 死ぬ間際、言葉にならない声でリュウは「愛している」と、口唇を動かした。
 その口唇にユエ・イェンリーは深い口づけをした。
 
 暁闇が部屋のベッドを照らす頃、リュウ・エリアードは息を絶えたのだった。


 ユエ・イェンリーは幹部を集め、前王ジャック・エリアードを殺害した罪により、リュウ・エリアードを処刑したと報告した。 
 リュウ・エリアードを王に持ち上げようと企てた派閥は求心力を失うことになるだろう。
 ユエ・イェンリーの足固めはすべて終わった。

 翌日、ユエ・イェンリーはひとりで車を走らせた。傍らに冷たくなったリュウを抱いたユエは、北西の森林に向かった。
 霧深い森の中を歩いていくと小さな湖が現れた。 
 その岸に一隻の古いボートがあった。 
 リュウをボートに乗せ、ユエ・イェンリーは湖へ漕ぎ出した。
 不思議なことに死骸となったリュウの身体は氷のように冷たかったが、硬直も死斑も見られなかった。
 生きた者の様に白い肌は輝き、薄く開きかけた赤い口唇は呼吸をしているようだった。
 湖の中心までボートを進めたユエは、裸のリュウの肢体をそっと水面へ浮かばせた。
「リュウ、おまえが眠る場所だ。リョウ・アヤセはここで宝物を見つけると言ったが…それは、おまえのことなんだろうな…なあ、リュウ、そうは思わないか?」
 リュウの身体が静かな波紋と共にゆっくりと澄んだ湖の中へ沈んでいく。
 
 
「なあ、あんた何者?俺こうみえてもスリには自信があったんだぜ」
「スリなんか下らんさ。もっと、いい事を教えてやるよ。一緒においで」
「…面白いのなら行ってもいいけどさあ。おまえ、名前は?」
「ユエ・イェンリー」
「そうか。俺は…リュウだよ」
 (眩しすぎたリュウの笑顔を、俺は独り占めにしたかった。誰にも触れさせず、俺だけのものに…それができないのなら壊してしまうしかなかったんだ…リュウ)

「あ、いしている…愛している。リュウ…」
 水面にユエの涙が落ちていく。
 その深い水の中で、リュウは瞼を開け、ユエを見て笑う。
 (やっと白状したな、ユエ・イェンリー…知ってたさ。初めから…俺もそうだったもの)
 
 湖の底は薄暗く、辺りの海草がリュウの肢体を見え隠れさせた。
 仰向けになったリュウの身体はそのまま動かず、髪は水の流れのままにたゆたい、その紫水晶の瞳がじっと水面を見上げていた。
 陽が落ち、辺りは黄昏れ、リュウの姿が暗闇へ消えるまでユエは湖の中を覗き続けた。

 
 五年後、「ティラニス」はS・C・Oの管理から離脱することを宣言し、独自の政治形態を持つ「ティラニス合衆国」を創る。
 ユエ・イェンリーは初代大統領に任命され、各州の治安維持と行政を整えるべき立法国家として身命を賭し、一生涯を国政に奉仕する為だけに生きた。
 


 時折、ユエ・イェンリーはあの湖へ行く。
 湖底にある唯一の宝物を確かめるために。
 届きそうなほど近いそれは、決して手に取ることはできない。
 ユエだけが見ることができる姿。
 ユエだけを見つめる魔の瞳。
 
 リュウ・エリアードはユエ・イェンリーの望む者になったのだ。


    終


リュウ。エリアード

6へ



え?なにこのホラーな終わり方。
エロさの追求は?と責めるなかれ。
まあなんか…ノスタルジーさ…テヘ
え~、ここがワケワカメという方は遠慮なく聞きたまえ。いちいち解説してやるよ。


そんでもって、この後の話の続きがこちら…

「彼方の海より…」序文 

転生したリュウ・エリアードのお話です。(;^ω^)
いやこっちが後づけなんだが、この「流れる星…」のリュウくんがすっかりグレて暴君サドになってしまいましたとさ。

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流れる星の彼方に…6 - 2012.03.15 Thu

こんにちは~
サイちゃんで~す。
いよいよ大詰め、クライマックスで~す!
大して盛り上がらないけどね~

今回はフランシスくんとユエくんの趣味を教えちゃいます。
彼らの趣味は…将棋で~す。
と、いうか、自分が好きなんですよ。するのは下手だけど、見てると面白いよね。最後とかじゃんじゃん攻めて、一手違いで勝ったときはもう興奮~。
BL的な萌えとして…
…裏返したら途端に役目が変わってしまう、受けから攻めへ…
駒を獲られたら、敵の駒になっちゃうとか…
うん、捕虜として敵に奪われた恋人が、突然敵兵として自分の目の前に現れたら…もう悲劇…
そんでその恋人も捕虜にされて、また一緒にいちゃいちゃしたりして…敵陣で…
とか考えたら…将棋って萌えるでしょ?なんか間違ってる?(;・∀・)

そんなこんなで第六回目ですよ。次は絶対最終回…のはず…なんだがなあ~。


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6、
 リュウがフランシス・ユージィンの死を知ったのは、ホテルを飛び出した一週間後だった。

 テュラニスの王が暗殺されてひと月半、後継者として新しい王(キング)が誕生したと、街のあちこちで繰り返しニュース放送が続けられた。
 新しい王、ユエ・イェンリーの姿を、リュウはスラム街の街頭ヴィジョンで見た。その事には何の関心もなかった。が、捨てられたニュースペーパーに小さく載っていた記事を読んだリュウはさすがに動転した。
 テュラニスの王を暗殺した犯人は、組織を裏切ったフランシス・ユージィンであり、その犯人を捕獲し、処刑したとあった。
 (フランシスが投降したのか?しかも王を殺した犯人として処刑されただと?…一体どういう話になっているんだ。まさかフランシスは俺を庇う為に自ら罪を背負った、と言うのか…)
 何よりリュウが不信に思うのは、後継者であるはずのリュウ自身の事が何も書かれていないことだった。
 こうなると「ティラニス」がフランシスを王殺しの犯人として本当に処刑したのかさえ、疑わしい。
 (一体ユエ・イェンリーは何を考えている。俺をおびき出す囮としての情報ならば、迂闊には戻れない。フランシスにジャック・エリアードを殺す動機が無いのは誰もが承知している。ユエはジャック殺しの犯人は俺だと知っているはずだ。それでもフランシスを処刑したのか?見せしめの為に?もし…フランシスが本当に処刑されたのならば…それを下したのはユエ自身だろう。そしてユエにフランシスを殺させたのは…この俺ということになる)
 (…ユエ・イェンリーは、絶対に俺を許さない)
 リュウは「ティラニス」に戻ることを諦めざるを得なかった。


「…フランシスが本当に死んでいたのだと知ったのは、大分経ってからだ。だがフランの死を知ってもあの時の俺にはなにも…哀れみすら感じなかった。それよりも『ティラニス』に戻れない状況に愕然としたな…ユエは俺を本気で殺したいんだろうな…とかさ。今頃血眼になって俺を探し回っているんだろうな…ってね。組織の連中なんて馬鹿ばかりと侮っていたけれど、最低の下種は俺だったのかもな…」
 けだるそうに髪をかき上げたリュウは、人事のように嗤った。
 何故こんなにもリアルな人間としての存在感に欠ける男なのだろうか。
 手の届く距離にいるはずのリュウが、アルバートには虚ろな亡霊にしか見えない。だがその亡霊は確かに見た者を惑わす魔性の妖(あやかし)が纏わりつき、今にも理性の箍(たが)が外れそうになるのを必死で押さえつけなければ、この誘惑する者に襲いかかってしまう自分の幻覚を見るのだ。
 しかもそれには恋心ではなく、征服欲と粗暴な欲情でしかない。
 フランシスがリュウに狂わされた理由(わけ)を、アルバートは今になって初めて身体で感じていた。
 (リュウ・エリアードが魔性の者なのはこの男が望んだものではない。だが、誰しも心の奥底では、嗜虐的な快感を味わってみたい、美しく気高く高慢な者を自分の足で踏みつけたいと望む心が潜んでいる。そして、自分の中にそういうおぞましい感情がある事をこの姿を持って、嫌と言う程見せつけられてしまうのだ。だから、フランシスは…)

「僕は…君がここへ来た時、君を殺す、と言ったね」
「ああ、そうだったな」
「僕は…フランがユエに撃たれて死んでいくのを目の前で見たよ。彼は自分に銃口を向けるユエ・イェンリーに微笑んでいた。何故だかはわからない…その微笑みが僕には耐えられなかった。引き金を引いたユエは…号泣し続けた。僕にはわかる。だって彼らはあんなにも愛し合っていたじゃないか。何故、愛する者を殺さなきゃならない。何故、愛する者から殺されなきゃならない。ジャック・エリアードを殺したのは…フランじゃないって…わかっていたんだ。…なのに何故…」
「…すべては俺の所為だとおまえが思うのなら、俺を殺せばいい」
「リュウ。何故…ここへ戻ってきた。何故今更…君だったら逃げおおせたはずだ」
「そうだな……もう充分だと思ったからだよ」

 テュラニスから出奔した4年間、リュウはスラムの下町で暮していた。
 自分の存在を特別視しない環境に、リュウは驚き、日常を必死に生きることの意味をリュウは思い出した。
 (そうだった。あの組織に連れられる前は、ただ毎日を必死で生きていた。決して裕福ではなかったし、子供にしてはしんどい仕事をさせられていた。けれど人間らしい生活だった。俺は生きてる幸せを感じていた。たった…たった四年間で俺はあの頃の豊かな生活を忘れてしまっていたのか…)
 「ティラニス」で生きていた日々がどんなに異様だったのか、外の世界に生きて、改めてリュウは思い知らされるのだった。
 リュウは次第に感覚を取り戻し始めた。そして自分がしてきた過去をひとつずつ思い返していくのだ。
 すると奇妙なことに気づく。
 一体誰がこの社会を動かしている。
 「S・C・O」と「ティラニス」に二大勢力はこの世界をどこへ導くつもりなのだろう…と。
 リュウが継がなければならない「ティラニス」を、ユエ・イェンリーはどの未来に歩いて行こうというのだろう。
 外から見る景色は、中からとは違うものに見えた。
 正しい方向性など、誰にもわからない。
 わからないのだ…

「俺みたいな人間が何を言っていると笑うだろうが、世の中の誰もが未来を考えているのだと、俺は初めて知ったよ。そして、外で暮していくうちに、自分がフランシスに吐いた暴言を後悔したんだ。…ああ、ここへ戻った理由だったな…そうだな…もし、俺が言った言葉でフランシスが死のうと思ったのなら、俺は罰を受けなきゃならない。そんな気持ちもあった。だがな、いつだって俺の心を占めているのはユエ・イェンリーだったんだよ」
「…」
「身体が、心が疼くんだ。あの男をたまらなく欲しがる。抱いてくれと、滅茶苦茶に犯してくれと求める…どうしてなんだ?どうしてあの男にそこまで囚われなきゃならない。…21年生きてたったの4年だ。その4年で俺をこんなにしてしまったあの男が…憎い。だが、どんなに憎んでも俺はあの男に渇望する。どんなに自由で友人は優しく温かい言葉を貰おうと、ユエ・イェンリーの与える痛みに餓えてしまう。あいつでなければ俺は、眠ることすらできない…」
「リュウ…」
「あの男が憎い。だが、ユエ無しでは生きていけない。ならば、俺は殺されるしかない…だから、戻ったんだ」
 我が身を抱きしめ、震えるリュウの異様な姿に、アルバートは自身の恨みを忘れていた。これがリュウ・エリアードの本当の姿ならば、どうすれば救うことができる。
 (救う?僕が?…フランシスを殺した憎い男を…だけど、この男の罪は一体どこにある…リュウの存在が人を狂わせたとして、それが罪になるのか?ユエ・イェンリーだけを求めるこの男に…)

「…リュウ。僕は君を殺したいと思っていたよ。でもね…フランシスが銃殺された時、残された僅かな時間だけど、僕は言葉を交わすことができた。彼は『許して欲しい』と、言うんだ。それは、僕を残して死んでいくフランシスの詫びの言葉だと今まで解釈していたよ。でも、本当は…フランシスはリュウ、君に言ったんじゃないのかな」
「え?」
「僕個人の君への恨みを許すようにとの意味もあるだろう。けれどフランシスの一番の想いは…君を苦しめたことを、ユエ・イェンリーの元へ君を届けなかったことを、許して欲しいと言う事じゃないのかな…僕はそんな気がしてならないんだよ」
「…バカな。あの男はどこまでお人よしなんだ。何故、どうして…俺なんかに関わった。俺は…フランシスを信じていたかっただけだ…」
 リュウの後悔の念が、アルバートに流れていた。
 もういいのだと、リュウへの憎しみは消えたのだと、アルバートは目を閉じた。

「家庭教師の役目は終わったね。僕は君を許すよ。君を恨み続けたら、フランシスの二の舞になりそうだから」
「アルバート、俺は…」
「だけどね、君が危険な存在であることには変わらないよ。君がそうでなくても、君の魔性が人を狂わす。…ユエ・イェンリーを破壊してしまう」
「…どうすればいい」
「彼を、愛すればいい」
「…愛などいらない。俺が欲しいのはそんなものじゃない」
「君が欲しがっているのは…ユエ・イェンリーの『愛』だよ」
 リュウは驚いたようにアルバートの顔を見つめた。そして、眉根を顰め頭を抱え、俯いたまま何も言わなかった。
 しばらくしてリュウは搾り出すような声でひと言、吐いた。
「そんなもの…俺には与えられない」
 誰に言うでもない。ただリュウはすすり泣くのだ。
 伏せた顔から落ちた涙がテーブルに滲む。
 頭を抱えるリュウの姿は、艶かしく、その震える肩に今にも飛びつきたい欲望にかられる。
 アルバートは目を閉じ、逃げるようにその部屋から出た。
 
 結局、リュウ・エリアードは、手にした者を破滅に導く「禁断の実」でしかないのだ。



 ユエ・イェンリーが仕事の為に未開地へ赴くと聞いた時、フランシス・ユージィンはリュウ・エリアードも連れて行くものと思い込んでいた。 
 だがユエはフランシスに自分の代わりにリュウの世話を頼むと言うのだ。
「しばらくは手を焼くかもしれないけれど、おまえなら任せても大丈夫だろう」
「ユエ、どうしてそんな辺鄙な場所へ行く必要がある。君がやるべき仕事でもないはずだ。リュウを置いて行くと言ったが、あの子は君無しでは生きていけない。それは君が一番知っているはずだろう。…そんな風にしてしまったのは君自身なのだから」
「悪かったな。俺は根っからのサディストなんだよ。それにリュウを調教しろとの王(キング)の命だったのだから仕方が無いだろう。おまえは連れて行けというが、あの子はリョウ・アヤセの子供だ。ジャックは絶対に手放さない」
「だったら尚更あの子に傍にいるべきじゃないのか?」
「…後継者選びは熾烈を極めている。俺でさえその渦中に巻き込まれている。しばらく本部から離れて、今度の動きを見極めたいんだ」
「二年前のリュウを知っているはずだよ。あの子の精神状態はどうだった?今君が離れてしまったら彼が壊れてしまう」
「その壊れた心を救ったのはおまえだろう。だからあの子を頼んでいるんじゃないか」
「救ったのは、僕じゃないよ…」
 (リュウは人を殺す道具を使う喜びを知っただけだ。それは歪んだ嗜好でしかない。だが彼はそれをしがみつくしかなかった…)
 リュウに必要なことは、自分を解放する道具と、そして、縛り付ける力を持ったユエのような男なのだとフランシスは悟っていた。だが、フランシスには自信がなかった。
「僕はリュウを君みたいには扱えない」
「リュウを狂わせたのが俺ならば、おまえが元に戻してやればよかろう。無責任だと思われるだろうが、俺はリュウをああいう風にしか扱えない」
「君はあの子から逃げるのだね」
「…それが一番良い選択だと思うからだ」
「君の本音はもっと別なものだよ、ユエ。君は…リュウを本気で愛しているんじゃないのか?それが怖いからじゃないのか?」
「やめてくれ。俺があの子を愛するわけがない。俺が愛しているのはフランシス、おまえだけだ」
 その言葉を疑うフランシスではなかったが、リュウを請け負うには荷が重いと、正直うんざりとした気分になったのは確かだった。
 最後の夜、ふたりは存分に愛し合った。
 お互いがお互いを求めあい、余すところ無く楔を繋ぎ、それまでと同じように永遠に愛していると何度も誓い合ったのだ。

 ユエ・イェンリーが去った後のリュウは、フランシスが懸念したように少しずつ狂い始めていった。だが、ユエを求めて泣くリュウが愛おしいと思った。
 リュウにとってフランシスが安全な保護者であるという認識しかないことをフランシスもわかっていたし、その役目を務めようと努力した。
 売られたリュウを客室へ迎えに行くことも、世話係としてのフランシスの役目ではあったが、彼にとっては苦痛でしかなかった。
 散々と凌辱され、屍のようにベッドに横たわるリュウの姿を見ると同情や痛々しさを超え、怒りが募る。フランシスもユエも少年時代は嫌というほど客の相手をしてきた。だが、このように酷くいたぶられることは少なかった。
 なぜこの子がこんな目に合わなければならない。この子が何をした。
 だがフランシスにもわかっていた。
 この少年の「魔」がそうさせてしまうのだ。
 傷ついた身体を抱き上げ、部屋へ連れ、風呂に入れる。感情を出して泣くのならまだいい。リュウはロウ人形のように黙り、されるがままに身体を委ねてくる。
 どんなに痛めつけられた肌も、翌朝には輝く珠の肌に回復する。朝の気だるさがリュウを一層純粋でいたいけな供物にさせていた。
 フランシスは自分にユエのようなサディステックな部分があるとは今まで思ったことがなかった。だが確かにリュウを見ていると嗜虐的な気分になる自分がいることを認めざるを得えなくなっていた。
 (神からも悪魔からも選ばれた、あの高貴な姿と内部(なか)の妖艶さを味わってみたい…)
 
 リュウが王ジャック・エリアードの眉間にその弾丸を撃ち込み、王の死亡を確認したフランシスは、リュウを逃がすために組織から逃亡することを即座に決めた。
 呆然と立ち尽くすリュウの手から銃を離し、貫通した弾を拾い、ドアノブの指紋を拭いた。リュウを親殺しの罪人には出来ないと思った。
 リュウを車に乗り込ませ、ティラニスからできるだけ遠くに逃げることしか考えなかった。
 逃げた時点で自分達に疑いがかかることは百も承知していたが、リュウの意識は朦朧としたまま「ユエに会いたい」としか言わない。
 これ以上あの組織にリュウを置くことが、フランシスには出来なかったのだ。



5へ /7 最終回


なげえな…(;´Д`)
つうか終わらんな…・・・(゜_゜i)タラー・・・
正直、いいかげん終わりたいんだがね(; ・`д・´)
この後、ユエ・イェンリーの気持ちが延々続きそうで怖いんだよね:(;゙゚'ω゚'):
あの男、しゃべりだしたらとことん喋り倒しそうで、うぜえんだよ( ̄_ ̄ i)タラー



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流れる星の彼方に…5 - 2012.03.13 Tue

少し説明いたします。
この話は未来の地球を描いたものです。
が、この世界観は私ひとりで創作したものではありません。
この基盤はずう~と昔、創作漫画同人誌を友人たち四人と作っていまして、その中で合作漫画制作に当たり作り上げた世界観です。
学生時代からの漫研のノリのまま、社会人になっても同人誌制作を続けていました。
四人とも絵も漫画もストーリーも書いていたので、四人一緒にひとつのものを創りあげる事に関しては全く心配も違和感もありませんでした。
この四人の始めての作品は「緑焦点の影」と言う題名ですが、世界の様子や、政治体制 S・C・O(ソシアルコントロールオーガニゼーション)などは皆で考え出したものです。
内容は四人がひとりひとりキャラを出し合い、スパイ大作戦みたいなノリで描いていましたね。
大事なことを言い忘れていました。
この合作の漫画はBLじゃないです。
リュウはホモだけど、あとの3人のキャラはマトモですっ!キリッ(私以外の三人はそんなに腐っていなかったので~(;^ω^))

時代はリュウが「ティラニス」から出奔していた4年の間の話です。
S・C・O機関の秘密結社みたいなところから四人に仕事が舞い込んでくるんですな。
それで「ティラニス」(これは私が考えたんだよな)がロクなもんを造りあがったんで、それを壊滅させる為に四人が テュラニスの研究機関へ変装して(S・C・O の研究員になってたわww)忍び込んだ。
リュウ(ここではルーファスと名乗っているんです)は、 行きたくないテュラニスへ乗り込むんですな。…そら怖いわな~でも研究機関だがらまあ、知ってる奴はいねえし…とか能天気におもうわけなんですな。でもそんな楽な話はねえな…
そんで色々あって(はしょる)なんだかんだで無事仕事は終わるんですがね…
いや~、楽しかったです。土、日に泊り込みで描きに行ったり、本を売りに行ったり。
今みたいにでかいコミケはあんまりなかったけど、充実していましたねえ~
青春でした…
まあ、
そんなこたあどうでもいい。

この漫画の後、色々ルーファスの事を考え、この「流れる星の彼方に…」を描いたんです。
中二病的な話だし、古臭いし…どうしようもない内容ですが…
まずこの題名が中二ですな。今回変えようかなあ~と思ったんですけど、実は流れるとリュウをかけていたことを思い出し~そのままにしておきましたわ…
どうでもええがなwww

それではどうぞ、ごゆっくり~


hosi9.jpg



5、
 フランシス・ユージィンはリュウにとって、この「テュラニス」で唯一安全な居場所だった。
 フランシスはリュウを性的欲望の対象にはしなかったし、彼の接し方は良き指導者の域を決して超えなかった。
 孤児の頃から常に一緒だったフランシスとユエ・イェンリーが義兄弟であり、誰にも入り込むことを許さない確固たる絆で結ばれていることをリュウは知っていた。
 彼らはまた濃密な恋人同士であり、実際彼らが交わるのを目の当たりにもした。
 その時、ふたりの行為を眺めていたリュウは、ユエを抱くフランシスに嫉妬をしている自分自身に驚いたのだ。ユエが自分以外に誰かを求めている事実がいまいましく、リュウはそれまで以上にユエを憎んだ。
 
 フランシス・ユージィンがいつリュウに対して執拗な執着を持ったのか、リュウは全く気がつかなかった。
 ユエの悪趣味に付きあわされ、リュウを挟んで三人でプレイした時も、フランシスは乗り気ではなかった。リュウを犯すようにユエに強要され、フランシスは仕方なしにリュウを抱いたのだ。
 その時でさえ、リュウにはフランシスが自分に執着するほどの情熱があるとは思えなかったのだから。
 フランシスはユエ・イェンリーを愛している。
 だからリュウには絶対傾くことは無い…と、どこかで思い込んでいた。
 だが、性的な感情抜きでもフランシスはリュウに優しかった。
 リュウのすべてを奪い引き裂きながらも支配される心地良さをユエに覚えてしまった心と身体だったが、逆にフランシスはリュウを決して束縛しないし、甘すぎない優しさをくれる人だった。

「人を信じるなとユエは俺に教えた…だけど、俺はフランシスを信じてしまった。フランシスは俺をより良い場所へ導こうとしてくれていた…」
 リュウの言葉にアルバートは同調した。
 彼もまた、フランシスによって拾われ、保護され、慈しまれた者だった。アルバートの将来の為に、人を殺める道ではなく、またアルバートが売り物として扱われないように、彼を研究所(シンクタンク)へ薦めたのもアルバートを思ってのことだった。
 アルバートはフランシスを敬愛していた。彼ほどの高潔な人格はいないと信じていた。
 別な意味で今の主であるユエ・イェンリーもまた、アルバートにとって尊敬する王(キング)だった。
 今でも目に浮かぶ。
 ユエとフランシスがふたり並んで顔を寄せ合い微笑んでいた光景…美しい絵画のようだと、何度も思った。
 そのふたりが逃れられないのが、目の前にいる見目麗しき魔性の者リュウ・エリアードなのは、宿命なのだろうか… 
 アルバートは初めてリュウへの憎しみよりも、宿命の過酷さに項垂れた。
「何故…フランシスは君と一緒に『テュラニス』から出奔したのだろう」
「…」

 17になろうとしていたリュウに、突然ユエ・イェンリーは王(キング)の命を受け、開拓の為、まだ荒れ果てている西方へ行くと別れを告げた。
 しばらくは戻れないというユエの言葉にリュウはうろたえた。
「今後のおまえの世話は、フランシスに頼んでいるから…王の後継者として励めよ、リュウ」と、言い残しユエはリュウを捨てた。
 リュウは震えた。
「何故…俺から離れようとする。俺はおまえじゃなければ…おまえがいなければ息をすることもできない」
 愛ではなかった。
 リュウの心と身体の依存は、ユエ・イェンリーにより仕立てられたものだ。それが無いと生きてはいけないリュウにしたのはユエ・イェンリー自身ではないか。
 ユエ以外に抱かれてもリュウの身体は満足を得られない。
 ユエ・イェンリーでなければ飛翔することができない…

 いくら憎んでもユエは戻らない。リュウの身体を温めてくれない。
 誰かに抱かれながら、ユエを想ってもリュウには空しいばかりだった。
 何度も手紙を出したけれど返事は来ない。王にどれだけ頭を下げ、頼んでも聞き入れては貰えない。
 ジャック・エリアードは、リョウ・アヤセの代わりとしてのリュウを、愛玩する自分だけの所有物として傍らに置き、自由を与えなかった。
 故に…リュウは、ジャックを恨み、そして殺した。
 フランシスはジャックを撃ち殺した現場へいち早く赴き、呆然と立ち尽くすリュウをその場から連れ出し、かくまった。
 「ユエに会わなければ…ユエのいるところへ連れて行ってくれ」と、リュウはフランシスに泣きながら頼んだ。
 その言葉にフランシスは「わかったよ、リュウ。一緒に行こう」と、約束したのだ。
 それなのに…
 
 平穏な逃避行は一週間も続かなかった。
 「ティラニス」の追っ手から隠れるように安ホテルを転々とした。すると、ふたりだけでいる時間が多くなる。
 リュウはただじっとユエ・イェンリーに会えることだけを考えていた。
 或る夜、包まった毛布を剥がされたリュウは、襲い掛かるフランシスから強姦された。レイプなど男娼のリュウにとって珍しくもない。だが、リュウはそれまで信じていたフランシスからの裏切りを許さなかった。
 リュウが嫌がれば嫌がるほど、逆らえば逆らうほど、フランシスは狂い、リュウを犯し続ける。
 それでもリュウは、フランシスがユエ・イェンリーの元へ連れて行ってくれるのではないか、と信じていた。それを頼るしかリュウには無かった。
 凶暴なセックスが終わった後、フランシスはリュウに優しくなる。それを見計らって、リュウは尋ねた。
「いつになったらユエに会えるの?」と。
 フランシスは言った。
「ユエには会わせない。君は俺のものだよ、リュウ。誰にも渡さない」と。
 リュウは激怒した。
「何故?約束してくれたじゃないかっ!ユエのところに連れて行ってくれるって、そう、おまえは俺に言ったはずだっ!」
「君がユエに会っても、ユエ・イェンリーは君を幸せにはしてはくれない。あれは君よりも『ティラニス』と、言う組織を取る男だ。俺は君を大事にする。俺が君を守る。リュウ…愛しているよ」
 
 (バカな…)と、リュウは目の前の男を嘲笑った。
 (俺を愛しているだと?この男はなんて頭の悪い奴だろう。俺が欲しいのは「愛」ではなくユエとのセックスだ。ユエ以外の男に価値が無いことを、こいつはわかっていない)

「愛している。リュウ、愛しているよ」と、繰り返すフランシスを、リュウは憎み、罵った。
 結局は力ずくで犯す下らぬ男なのだと、リュウは悟った。
 フランシスを殺して逃げることも考えたが、殺し屋としてのフランシスに隙などない。その上、フランシスはリュウを監禁し、自分が出かける時はリュウを紐で拘束した。
 (この男のやることはユエ・イェンリーの二番煎じだ)と、リュウは苦々しく唾を吐いた。
 
 一方的なフランシスの愛欲に塗れた日々は、ひと月続いた。
 リュウはフランシスに犯されながら、ユエ・イェンリーが自分を助けにくるのではないかと妄想し、何度も部屋の戸を眺めた。
 (ジャック・エリアードが死んで、俺達が消えてひと月も経っているんだ。あいつらが動かないはずはない。絶対にユエは俺を助けに来る)
 そう信じたかった。
 
  いつものようにフランシスの凶暴な行為の後、リュウは圧し掛かったままのフランシスに切り出した。
「フラン…いつまでこうしている気だ。このまま組織から逃げおおせるわけでもない。…一度『ティラニス』へ一緒に戻ろう」
「無理だよ、リュウ。今、帰ったら僕らは殺される。君は王(キング)を殺したんだからね」
「どんな罰を受けても構わない。俺は…ユエに会いたい」
「…ユエは君を許さないよ」
「それでもいいんだ。ユエの奴隷でもなんでもいい。傍にいられるなら…」
「それほどまでに、君は…ユエを愛しているんだね」
「違う…何度も言ったろ?俺はユエに依存しなければ生きていけない様にされたんだ…だから…」
 フランシスは、その胸に抱いたリュウに見惚れながら、その頬を優しく撫でた。
「ユエが君から離れたわけを知ってる?」
「…知るもんか」
「ユエは…僕が君を愛してしまったことを知って、君を僕に譲ったんだよ」
「…え?」
「ユエは何も言わないよ。だけど言わなくてもわかる。…ユエ・イェンリーはそういう男だから。だからこれからは俺が君を愛し続けるよ、リュウ。約束する」
 (バカな…)
 またもや怒りしかない。
 (こいつらは俺に感情があるのを知らないのか?おまえらの勝手で好きにされる俺が、どれだけの憎しみを持って生きているのか…こいつらは…)
 (おまえらだって好き勝手な感情で動いているくせに。どうして俺にだけこれほどの苦痛を与える。その権利がある…おまえら、みんな…)
 (死ねばいい)

「フランシス…俺を殺してくれ」
「…リュウ」
「そうでなければ、今すぐに俺の前から消えてくれ。…おまえなんかちっとも好きじゃない。おまえのセックスなんか少しも気持ち良くない。俺はおまえの愛なんかいらないんだよ」
「…」
「フランシス・ユージィン、今すぐにここから立ち去れっ!…おまえなんか、消えて無くなればいい。死んでしまえっ。…死ねよ、フラン。…二度と、俺に触れるな」
 
 フランシス・ユージィンは呆然とリュウを見つめた。
 激昂するリュウの姿に見惚れていた。
 そして、リュウの言葉になにひとつ返さず、ベッドから降り、身支度を整え、部屋から出て行った。
 フランシスが消えるのを確認した後、リュウもまたそのホテルから逃げ出したのだ。



hosi3.jpg


4へ /6へ


いよいよ後一回…と、言うわけにはいかず、終わりが見えない…(;´▽`A``あと二回で終わると思うんだが~
ユエ・イェンリーは許してくれるんかいな~



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流れる星の彼方に…4 - 2012.03.08 Thu

花粉症が辛い時期になってきましたね。
皆さん、お変わりございませんか?
今回は悲しいお知らせがあります。
今回…エロ画はございません~
描いているんですが…そういうシーンが無いんですっ!キリッ
なので、エロ絵、もしくはエロシーンなど期待されたお客様はU~タ~ンでオネガイ。

では、エロくないお話のはじまりですわ~

ryuui3.jpg
4、
 「テュラニス」のオフィスビルは、ニューアレイの中心部に聳え立つ「S・C・O(社会統制機構)」の本部と競い合うように道を挟んだ真向かいに建てられている。
 機能的にデザインされた無機質な外観は、人々の目を惹き、その威圧的な重圧感に頭を垂れる者も多い。
 ビルの屋上に配された空中庭園(アトリウム)はすべて最新式のOSで管理され、開閉式の円形硝子に覆われた天上や、天候や室温で庭園の常緑樹までを自動で管理するシステムだ。

 ユエ・イェンリーはこの場所が好きだった。
 人工的に作られたとはいえ、硝子の天上から差し込む光の筋が、生きていく寄る辺のような気がしてならない。手にした温かな光に、まだ許される…と、思いたかったのだ。
「フランシス…俺はリュウを捨てきれずにいるよ。…おまえは俺を嗤うだろう。蔑むだろう…すまない。もう少しだけ…待ってくれ。必ずリュウを…おまえに返すから…」
 ユエ・イェンリーは手の平の僅かなともしびを、そっと胸に抱いた。


 アルバート・ルードは酷く不機嫌だった。
 それでなくてもリュウが戻ってからは、穏やかな心持ちになったことなど一度もないと言うのに。
 それを知っての上で、ユエ・イェンリーはアルバートにリュウのチューター(家庭教師)を命じのだ。無駄だと知りつつアルバートは必死で拒絶するも、一笑されただけで辞令書とコンドミニアムのキーカードを渡された。
「週に二、三度でいい。時間を決めて、部屋へ通ってくれ。一応基礎は学ばせているが、あの男は王になる気はないらしいし、俺相手では学習する気にもならないと言う。君は研究部門では特待生だし、内部の事情も良く把握している。適任だろう。指導方法は任せる」
「僕にリュウ・エリアードの指導だなんて。皮肉ですか?」
「君の怨恨を知らぬ者はいない」
「だったら…」
「フランシス・ユージィンはリュウになみなみならぬ執着があった。…おまえは何故フランシスがあれを愛したのか、知りたくはないのか?」
「それは…」
「リュウに聞けばいい。長年くすぶり続けた疑問に答えを出すのも悪くない話だろう」
「僕は…彼を殺すかもしれません。それでもいいと?」
「おまえはフランシスが信じていた数少ない男だ。…おまえの審判に任せるよ」
「…」
 「任せる」…と、言うユエ・イェンリーの本心はどこにある?
 アルバートはリュウへの未練など微塵も見せないユエ・イェンリーの表情に何が隠されているのか理解できなかった。
 いくつもの選択の中でどれを選ぶべきなのか…今すぐにでもリュウを殺したいと願うアルバートでさえ、それを選ぶことを迷うのだ。


 アルバートがリュウ・エリアードを一端の実業家として指導するように勤め始めて10日ほど経つ。
 リュウはアルバートの想像と反して、頭脳明晰だった。
 社会情勢などはアルバートよりも遥かに理解しており、この管理体制がそう長く続くはずもなく、また民衆の暴発するエネルギーを抑える手立ては無いと、綿密な情報と状況を見据えて結論を出した。
 ティラニスが生き残る為に必要なのは、民衆の求めるイデオロギーをよりわかりやすく説明し、開かれた政治体制を作ること。観念的な自由を彼らに与え、餓えない程度に満たすことが重要。それを管理するのがS・C・Oかティラニスかは、民衆が選ぶ話だと言う。
 アルバートとても考えない理論ではなかったが…民衆に権利を渡すことを、権威者は好まない。

「好き嫌いの問題じゃない。やるかやらないかだろう。俺はこの四年間、外で生きて民衆の生活がどんなものなのか見てきたつもりだ。生きている人間に必要なのは、権力じゃなく、明日の飯だ。飯を与えてくれる方に寄り添うのは当たり前だ。何を誰を味方につけるべきか…頭の良いおまえ等で考えろ」
「…」
「なんだ?その気持ち悪いものでも見るような顔は。抱き人形の俺が、セックス以外のことを喋るのが、そんなに気色悪いのか?」
「…い、いや…確かに君は、先王の養子だし、ユエ・イェンリーの後継者だからそれぐらいは当然だろうが…正直驚いたよ」
「昔は、セックスしながらでもあいつは俺に帝王学とやらを教え込んだからな。覚えなきゃ痛い目に合わせられるから、子供だった俺は必死に宿題をやるのさ」
「それで、本気でユエ・イェンリーの後を継ぐ気なのか?」
「いや…俺がユエの後継者になることは、ユエ自身の首を絞めることになるだろう」
「…」
 (そこまで知っているのか…)
 アルバートはリュウの推測に驚いた。

 確かに表面には先王の養子であり、リョウ・アヤセの遺児であるリュウが、ユエの後を継ぐのは一見理想的に思われる。
 ユエが王の座に就く際、彼に異を唱えるものが水面下で広がっていたのも事実だ。
 それはどこの馬の骨かも知らぬ孤児であり、先王の男娼であった男が、上に立つことを不快に思う先王の直属の部下達だった。
 彼等は血脈を重んじる人格であり、「ティラニス」の繁栄を導いた「リョウ・アヤセ」の崇拝者でもあった。その第一人者がジャック・エリアードだった。
 ジャックにとって、「リョウ・アヤセ」は神のごとく信仰するに値する少年であった。
 そのリョウの実の息子であるリュウをジャックは寵愛し、自分の後継者にと望んでいた。
 ジャックが死に、その直後にリュウが「ティラニス」を出奔したのは、ユエ・イェンリーが自身の恋人であったフランシス・ユージィンと企んだ所業だと、多くの者が噂し、信じていた。

 リュウ・エリアードのシンパサイザーが台頭することは、ユエ・イェンリーにとって脅威となる。
 
 アルバートは物憂げに椅子にもたれるリュウの姿に囚われた。
 これだけ雄弁に語っていながら、リュウの身体からは妖艶さが漂い、その色香に惑わされぬように、必死に勤めなければならないのだ。
 この男が四年間、どこでどのような生活をしていたのかは知る由もないが、さぞやユエ・イェンリーは口惜しかろうと、哀れな感情が去来した。
「リュウ…聞きたいことがある。フランシス・ユージィンのことだ。僕は彼の舎弟であり、愛人だったんだ」
「ユエに聞いた。フランシスの口からおまえの名前を聞いたことが無かったから、俺は…知らなかったんだ」
「フランが君と出会った頃は、僕はテュラニスの研究機関(シンクタンク)に居た。だから君には会っていない。…フランとは、ずっと離れ離れだったんだ。最後に会ったのは、フランが死んだ時だった…」
「俺を、憎んでいるのだろう…フランシス・ユージィンを死に追いやった俺を。だが真実を知ったら、おまえは後悔する」
「そうかも知れない…」
 リュウの言葉は虚ろ気に彷徨うものでもなく、からかうような虚偽の妄想でもなかった。だからこそ、リュウの話す内容が恐ろしくも、決してこの気を逃すべきでないと、アルバートに決意させていた。

「それでも知りたい…あの頃の僕にとってフランシスはすべてだった。彼に拾われ、僕を本物の弟のように慈しみ可愛がって…愛してくれたんだ」
「俺は真実しか話さない」
「すべて話してくれ」
「…フランシス・ユージィンは俺を愛していると何度も繰り返した。勝手にここから俺を連れ出して、あの穏やかな顔で俺を滅茶苦茶に強姦し、一方的な愛情で縛りつけ…誰にも触れさせないと、俺を監禁し続けたんだ」
「…嘘だ」
「…本当だ…」

 フランシス・ユージィンのことを思い出すのは、リュウにとって苦痛でしかなかった。
 彼と出会った時、リュウは15歳だった。
 神経衰弱で拒食症になり、また毎晩のように続く男相手のセックスで不感症になりかかっていた。
 リュウを誰に売るのかは、王の命で決まる。
 リュウを貰い受けたとは言え、ユエ・イェンリーにリュウの相手を決める権限はなかった。
 客の相手をし終え、死んだようにベッドに沈むリュウを連れ帰り、身体を洗い寝かしつけるのもユエの仕事だった。だがユエ自身さえ、そのような仕事は当たり前に経験してきたことだった。さしてリュウへの哀れを感じることもなく、懐かないペットを調教しているのだと思っていた。
 だが、ユエが思うよりも、リュウは忍耐強くなかった。
 リュウにはセックスを楽しむ余裕が無かったのだ。
 リュウの精神が壊れ始めた時、ユエはジャックに頼み、リュウに生きる糧を与えることを提案した。
 ジャックはそれを許し、ユエはフランシス・ユージィンにリュウを指導するように頼んだ。

 フランシス・ユージィンは一流の狙撃手(スナイパー)であり、ティラニスの殺し屋(アサシン)だった。その上、ユエとフランシスは孤児だった頃から親密な関係にあり、揺るがぬ愛情と信頼に満ちた恋人同士だった。
 フランシスはユエの指導力を疑っていなかったし、ユエがティラニスを導く権力者になるのなら、自分がユエの背後は守りぬく役目だと、決めていた。
 だから、ユエ・イェンリーが王の養子であるリュウ・エリアードを与えられたと知ると、嫉妬よりもユエの将来の明るい道筋に喜んだ。
 そのユエ・イェンリーがリュウを自分の元へ連れて来た時、フランシス・ユージィンは妙な胸のざわめきを感じていた。

 精神が病み、弱り果てたリュウは、敏感で扱いにくい子供だった。
 信頼に値する奴など誰もいないと心を閉ざし、泣く事も耐えていた。
 フランシスは自分が危険な人物ではないと教え込むのに数ヶ月をも要した。
 リュウの精神的な病が急激に良好に向かいだしたのは、誰の力でもなかった。
 人を殺す為に在る銃がリュウを正気に戻していった。
 リュウにとって銃を扱うことは、子供がプラモデルに夢中になる事と同じで、分解し、仕組みを知り尽くして、また組み立てる事を一日中繰り返した。
 どの銃がどれだけの殺傷力を持っているのか、どう扱えば効果的に狙えるのか、銃に関しての知識と技術のすべてをフランシスから学んだ。
 一年も経たずに、リュウ・エリアードはただの男娼ではなく、狙撃手(スナイパー)として、テュラニスに必要な兵器に成長していったのだ。
 リュウもまた男娼として生きるより、殺し屋として生きる方が楽だった。
 いたぶられた身体と精神は、銃を撃つことで解放された。的がモノであろうと人であろうと、リュウにはシューティングゲームぐらいにしか思えなかったのだ。

 人の命の重さなど、それまでリュウに教える者はいなかったし、自分の手が血に染まっていることすらリュウにはわからなかった。




furann1.jpg

3へ /5へ


あと、一回で終わらせようとしてみたが…相変わらず先をかんがえないで書いているので、あと二回は確実にある。
と、いうかもう二十年前だから、恥ずかしい~とか言えない。
原文殆ど無視して、今の自分の思考で書いてます。
性格も書きたい方向性も完全に変わってしまった。
エロシーンなどどうでも良くなった。
リュウとユエの愛の行方を徹底的に追及する。
あと、二回で…たぶん、…終わり…たい(;´▽`A``

明日から小旅行でしばらくお休み~で~す。



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流れる星の彼方に…3 - 2012.03.05 Mon

オッス!おらサイアート!おめーら元気か?
この間はエロい絵につられていっぱいきやがったな。
ああいうのを釣り絵っていうんだぞ。いいか、気をつけなきゃダメだぞ。
じゃあ、今日もいっちょうやってやっかっ!


時代背景は非常に適当で、パソはあるけど携帯はねえのかよっ!と突っ込みたくなるんですが…
ほら、二十年前は携帯持ってなかったしね。

しかし
この時代なかなかどうして面白い byギルガメッシュ
的な気分で楽しんでくださいませ。

では、どうぞ~

yue.jpg

3.
 大手資産家のファベル氏のその日の夜会の一番の話題をさらったのは、ティラニスの王(キング)、ユエ・イェンリーが同伴したパートナーだった。
 パートナーとは、一生の誓いを立てた公的な恋人と同じ意味を持つ。
 ユエ・イェンリーがパートナーを同伴したのはこれが初めてだった。
 その相手が四年間、行方不明だった先王の養子、リュウ・エリアードだったことも一同を驚かせた。
 リュウ・エリアードがこの世界でどういう存在であったのかは…言うまでもなかった。
 彼は最高級の男娼であり、芸術品だった。
 多くのマーケットでも彼だけは王に直接売値を伺い、一晩だけの悦楽を味わうのだ。
 むろん、リュウ・エリアードが先王の愛人であり、あのリョウ・アヤセの実の遺児と承知の上だった。

リュウ14歳

 
 四年前のリュウなら、躊躇いもせず売品としての自分を魅せ、高値を吊り上げる術を楽しむ余裕さえあったかもしれない。
 自分の運命を諦めたリュウには、憎悪と快楽を得ることしか生きる道は許されなかったからだ。
 だが今のリュウに、昔と同じ気分で振舞えるはずもない。
 広間を歩くリュウの身体を品定めするように嘗め回す人々の眼差し、囁く声と薄笑い。
 思わせぶりな接触、殊更に慇懃な社交辞令、溜息と嚥下が交錯する。
 そのひとつひとつが、身震いするほどおぞましいものに感じた。
 リュウはユエの腕を掴んだまま離さない。
 そうでもしなければ一歩も歩けなかったのだ。


 帰りの車の中でリュウは向かい合うユエを責めた。
「よくも…俺を晒し者にしやがったな、ユエ・イェンリー。あの豚どもに俺を売るつもりでいるのか」
「幾人かのオーナーがおまえの売値の交渉を伺ってきたがね。おまえが望むなら話を進めるが…」
「やめろよ。俺を幾つだと思っている。21の男が商品になるかよ。…冗談じゃない」
「そうだな。俺もおまえを売り物にする気はないさ。だが四年前と同じく、あいつらのおまえを見る目つきはひとつも変わりはしない。物欲しげで今にも飛びつきそうなハイエナの群れそのものだったな。傑作だよ」
「…楽しそうでなによりだな、王様」
 舌を打ち、煙草に火をつけようとするリュウの手を押さえ、ユエは咥えた煙草を取り上げた。
「今夜おまえを見世物にしたのはおまえが次代のティラニスの王だと知らしめるためだ」
「…なに、考えてる。本気でこの俺を玉座に座らせる気か?…俺にやれると思っているのか?」
「ただの抱き人形の傀儡で構わない。血塗られた権力と悪名高き名誉…そのたおやかな顔にはふさわしかろう。だが…おまえがただの馬鹿ではないと知っている。おまえに帝王学を学ばせたのはこの俺なんだからな」
「昔のことなんぞ、忘れたね」
「ビューロクラシー(官僚主義)の崩壊は近い。テュラニスがこの惑星に王国を創るのはそう遠くない」
「おまえがそこまで傲慢な野心家だとは知らなかったよ。…S・C・Oを侮るな。足元をすくわれるぞ」
「S・C・Oのネズミが、大そうな口を利く。おまえたちを野放図にしてきたのは、おまえをおびき寄せる罠だと気づかなかったか?…あの連中を皆殺しにするのは簡単なことだ」
「…やめろ」
「おまえがおとなしく俺の奴隷でいる限りは、おまえの友人は生かしておく。そう肝に銘じておけ」
「…」
 リュウはユエの本当の恐ろしさを今更ながら知った。
 掴まれた手が震えている。
 (何も知らぬまま俺を信頼し、四年間、共に笑い懸命に生きてきた人達だけには、手を出させるわけにはいかない。…絶対に)
 
「変わらずに細く白い美しい指で、俺も嬉しいよ、リュウ…」
 ユエ・イェンリーは冷たくなったリュウの両手を取った。
「おまえのこの指は人殺しの兵器にもなりうる。だがそれも必要あるまい。これから先、俺はおまえに人殺しをさせるつもりはないのだから」
「…」
 ユエはリュウの右の人差し指を掴み、反対側に反らせた。
「昔話に戻るが…先王を暗殺したのはフランシス・ユージィンと公表されている。王が亡くなって半月後,逃げ回っていた本人が本部に戻り、そう自白したのだから。だが、あの男はおまえを庇う為にすべての罪を負った…そうじゃないのか?リュウ・エリアード。真実は…おまえが先王を殺し、己の逃亡の為にフランシスを陥れた…」
「…違う」
「何が違うんだ」
「俺は…」
 確かに先王、ジャック・エリアードを殺したのはリュウ自身であった。が、その意味をユエは知らない。
 だが、あの頃の想いを告白したとしても、ユエは許さないだろう。ユエ・イェンリーにとってフランシス・ユージィンは「特別な男」だったのだから。

「…殺せよ。おまえは俺を殺したいんだろう」
「ああ、じっくりといたぶって地獄に突き落としてやろう。だが今はこの指…おまえは右も左でも狙った的を外すことは滅多になかったなあ。上等の殺し屋だがこれまでだ。引き金を引けないように…十本の指をすべて折ってやろうか…」
「…」
 ユエの言葉にリュウは背中が震えた。
 この男なら本気でやるかもしれない。
 殺されても構わないと覚悟したはずの心が恐怖に強張るのだ。
 ユエ・イェンリーはリュウの目を見つめたまま、その指一本一本をじっくりと舐めた。
 ユエが少しでもその気なら、簡単に折ってしまうだろう。
 リュウは凶暴に渦巻くユエの瞳から目を逸らすことができなかった。目を逸らせば、ユエ・イェンリーは確実にリュウの指を折ってしまう、と、知っていたからだ。

 震えながらも目を逸らさぬリュウを「愛おしい」…と、ユエ・イェンリーは思った。
 「殺せ」と、言うリュウの本性は、昔と変わらずに生きる事に執拗だったからだ。
 (これを俺が、殺せるわけがない…)
 (だが、許すわけにはいかない。だから…)
「苦痛にあがくおまえが、愛しいよ」
 引き攣った顔を撫で、その首筋の動脈を押さえた。
 震える口唇をユエのそれと重ねた途端、涙を流すリュウを見たユエは嗤った。
 リュウは泣いているのも気づかずに、ただ「許してくれ」と、繰り返すのだった。



 車は出かけた時の建物ではなく、超高層ビルの玄関へ到着した。
「おまえと俺の背徳の城だ」と、ユエはリュウの手を取る。
 拒めるはずもないリュウは、ユエの身体に寄り添うように最上階へのエレベーターに乗り込んだ。
 42階のコンドミニアムはセキュリティが厳しく、ふたりの指紋を確認しなければドアは開かないと説明するユエに、リュウはいぶかしんだ。

「なぜそこまでする必要がある」
「おまえを監禁するために決まっている」
「今更、おまえから逃げる気はない…」
「手負いの虎は気を抜くとこちらがやられる。俺は先王やフランシスのように、おまえを見縊ったりしない」
 
 通されたリビングはシンプルだが、細部に行き届いた建具とモダンなデザインで構成され、レトロな間接照明の淡い灯りが、緊張したリュウの気分を幾分和らげてくれた。
 首都ニューアレイの街並みが一望できるインテリジェントシティであるオールトの街は高台にある。その高層ビルの窓枠のないはめこまれた硝子越しから見る景色にリュウは見惚れた。
 色とりどりのイルミネーションライトと夜空の闇色が奇妙に交じり合い、その境界線がオーロラの儚い輝きのようだった。
 
 上着を脱いだユエはソファに座り、カシャッサを飲んでいる。
 カシャッサはアルコール分が強く、先王の好んでいた酒だ。そしてフランシス・ユージィンも好きだった。
 (あの男と同じように飲みやがる)
 スーツを脱ぎ捨て、シャツを羽織っただけのリュウは、ユエの姿を苦々しく思った。
 (俺とおまえだけでいいはずだ。なのに、何故、今更…)
「ユエ・イェンリー、何故それほどまでにジャック・エリアードの死を惜しむ。おまえだって…俺と同じようにあの親父にいたぶられ続けていたくせに…憎んでいたくせに。あの男の肩を持つとは思わなかったよ。王の座を譲られたからか?だから忌まわしい過去は捨てたというのか?」
 リュウの詰問を聞いたユエはグラスの氷を鳴らし、飲み干した。
「ジャック・エリアードは行き倒れの孤児だったの俺を拾い、育ててくれた。リュウ、おまえは死ぬほどの餓えを味わったことがあるか?雨風をしのげる家と、寒さを防げる服、飢えることもない毎日の食事、あらゆる高等教育を彼は受けさせてくれた。それまでの泥の中を這い蹲り、やっとのことで生きてきた俺には信じられぬほどの恵まれた生活を彼はくれた。玩具にされようが人に売られようが、恩義に報いるのは当たり前だ。…その王をおまえが殺した。俺への情念の為に…」
 ユエの最後の言葉に、リュウは驚愕した。
「知って…いたのか?俺がおまえにどれ程焦がれ、会いたいと願ったのか」
「ああ、おまえが俺を欲しがるように調教したのは俺だからな」
「…ジャック・エリアードはおまえを俺から無理矢理離し、会わせなかったんだ。俺は…王におまえに会わせてくれと何度も頼んだ。だけど…王はそれを許さなかった…」
「だから、殺した。ジャック・エリアードを」
「…そうだ」
「ではまずはその罪を購ってもらう。そして、フランシス・ユージィンへは罪はその後に聞く」
「…」
「こちらへ…」
 リュウは言われるままに、ユエの足元に這いつくばった。
「両手を後ろへ」
 廻したリュウの両手を絹の細い組み紐できつく縛る。
 ユエは道具は使わない。鞭で打つ事さえしない。
 ただ縛りながら責めるのだ。
 「瞬時に痛めつけるのは二流。時間をかけて苦痛を味あわせる方が何事にも面白みが増す」と、言う。その言葉通り、ユエ・イェンリーの拷問とも言えるリュウへの罰は肉体よりも精神的苦痛が大きい。
「あっ…う…うっ…」
 頭と腰を掴まれ、繋ぎとめられたまま、達することも許さないユエの責め苦に、リュウは啼く他はないが、こうまでもしてもリュウはこの男に蹂躙されることを望んでいた。
 リュウにとって罰は褒美でもある。
 リュウを縛りつけるユエ・イェンリーもまた、リュウに縛られているのだから。

「アルバート・ルードに会ったか?」
 何度かの失神の後、ベッドに移されたリュウは半場意識を失いつつも、ユエ・イェンリーの言葉の意味を理解しようと思考した。 
「?…ああ、あのインテリ男か。おまえの第一秘書らしいな。おまえの趣味も変わったもんだと思ったが…」
「あれはフランシスが特別に可愛がっていた舎弟だよ。いずれはパートナーにと話していた。おまえに会わせる前までは…な」
「…だとしたら…全部、おまえの所為だな、ユエ・イェンリー。俺とおまえ、どちらが悪魔なのか、神にでも聞いてみるか?」
「聞く必要はない。神は俺達など、とうに見捨てている」
 (そうかもしれない)と、リュウは思った。
 
 昔、テュラニスに連れられる以前の太陽神を崇めていた生活が懐かしい。貧しくても日一日の穏やかさは仰ぐ空のように清清しいものであった。しかし、今は、陽の眩しさから目を瞑り、光から影へと逃げ、蜉蝣のように足元さえ心もとない。
 与えられる苦痛だけを生きる糧にし、快楽を味わいつくそうと媚を売る。
 堕ちるところまで行き着けば、いつかは這い上がる時が来るのか…
 (いや、いつか俺の身体に厭きた時、ユエは俺を殺すだろう…それまでこの朽ち果てた部屋でふたり、ただの淫獣でいるのも悪くはない)

「ああっ…」
 リュウの悲鳴が無音の部屋に啼いた。
 絡み合うふたりのひとつひとつの行為が、部屋に散りばめられ、処刑の痕をたどっていた。


ryu2.jpg

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この頃の自分の作品は必ず無理矢理に凌辱するシーンがありましたね。
ジュネ的に言えばカタストロフ的な物語が好きだったんです。
Blは牧歌的なハッピーエンドを目指しているのが多い感じですかね。
と、いうか幸せというカテゴリを探しているのがBL。男同士の恋愛は祝福をもたらさないのがジュネ…みたいな感じ。
私は、男同士の結婚とか、女との三角関係や、子供が欲しいと思ったり、養子になったり…そういうのに全く興味はないです。
女と男でできないことがある、天から見放されている、それが同性の恋愛の醍醐味と、私は思っています。
もちろん作り物の恋愛小説であり、リアルなゲイさんがに幸せになることを祈ってはおります。
だけど私が書きたいのはリアルなゲイ小説ではなく、カタストロフのゲイ小説なんです。

私が好きな漫画家さんの作品にこういう台詞があります。
「非合理で非生産的な行為の果てに、何が得られるのか。無駄にしか思えないことが何を生むのか」
その真理を知りたい。
これが私の男同士の恋愛を描く理由ですね。

サイアートオタク賞は…当たった方には希望のイラストを描いてさしあげようと思ったのですが、無理ですね。
だって、70パーぐらい原文を書きなおしてしまいましたから。
誰でも当てることができるでしょ?(;´▽`A``


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流れる星の彼方に…2 - 2012.03.03 Sat

こんにちは、サイアートです。
二十年前の恥部をみせよう~会へようこそ。

R指定はなくてもいいかな~と助言を頂きましたので、ナシでいきますが…
第二回目も私にしては、それなりにいやらしくなっております。あは(;^ω^)

え~と、今回新人さんが出ます。この人本当はアルベルトさんなんですが、アルバートさんに変えました。なぜかというと「アルベルト」って自転車の名前があるんです。つうかうちにもあるし…
そんでチェーンがベルトになったのでベルトがあるよ~ってことでアルベルトなんですね。それ知ってから、ベルト付きの自転車はアルベルト~って自分の中でウケてしまうんですね。
そんなしょうもないわけで「アルベルト」くんは「アルバート」君に変わっちゃったよ**(/▽/)**
因みに…私の自転車はじょうぶな「ジョブナ」です…もうちょっと考えて欲しいと思わないかね(;´Д`)

絵もサービスでやらしくしてますわ。うふ。

ではどうぞ~

futari99.jpg


2、
 唯一の絶対者である「テュラニスの王(キング)」ユエ・イェンリーには、管理体制の伴わないS・C・O(社会統制機構)上層部を叩く事は、そう手を煩わすものではなかった。が、己の手の平で溺れる様を見ていたかった。
 在りし日を懐かしむ大老どもの足掻きを鼻で笑い、二度と浮かび上がる舞台の無いことを徹底的に知らしむ必要があった。
 役に立たない消す。それはこの「ティラニス」では当たり前のはずだった。が、…
 (捨て切れぬものがある…)
 眉を寄せたユエ・イェンリーはフィオーレに火を付けた。
 リュウを想った。
 じっくりと味わった肢体の感触の余韻が未だに指に口唇に残り、消えることは無かった。
 リュウの身体は、四年前からは成長し、少年の荒々しさよりも、しっとりと艶めかしさが目立つようになり、より極上のものになったと言えよう。
 生まれついての器量と線の細い肢体、きめこまやかな光沢をもった白い肌は、より一層の色香を増し、彼自身の心のように、決して大人の男へとは成長しないことを示していた。

 この四年間の間、必死に探していたわけではなかった。それど頃ではないほどに、ユエ自身が忙殺した日々を送っていた。だが忘れられるわけがない。
 あのリュウ・エリアードのことを。
 そして、やっと手に入れた。
 再会の感慨は思いもかけぬほどに熱かった。
 ユエの差し出した手を掴み、自ら身体を開いたのはリュウの方だったのだ。
 四年間の空白を埋めるように、湧き上がる情欲のままに、際限なく求めあった。
 光に透ける絹のようなやわらかにゆるく流れる白金の髪。透きとおった薄紫の水晶の双眸。少女めいた清楚な美貌。
 開きかけた口唇を合わせ、まさぐると身体を小刻みに震わせた。時折見つめあう瞳が、言葉の代わりに甘い睦言を語りかけていた。

「伸びたな…」
 掬い取った指にゆるく絡む金の髪に口づけた。
「…おまえと同じ長さにしたかっただけだ」
 ユエの胸に頭をもたげたまま、リュウは甘えるような仕草でその肌に口唇を押しつけた。
 顔を上げ、ユエの顔を見つめたリュウは髪を弄ぶユエの指に自分の指を絡ませた。
「知ってる?俺の髪、おまえの髪に交わると、消えてしまうんだ。おまえに吸い込まれるみたいに…さ」
 蠱惑な媚態にそそられ、細い身体を組み敷く。
「あ…ん」
 ぞっとするほどの微笑。悪魔の目がユエを捉える。
 (これは…俺のものだ。もう二度と誰にも手出しさせるものか…)
 自ら足を開いてユエの身体に絡みつくリュウを、ユエは怖れはしなかった。 ただ、この天使の顔をした悪魔の男に、決して心を許すべきではないと、刻み込まねばならない自分自身が、酷く空しく、いつまで辛苦を舐めたら気が済むのかと、己をあざ笑うのだ。
 
「リュウ…おまえを連れ戻した理由を知らないとは言わせない。どんな罰でも受ける覚悟はあるんだろうな」
「…」
 黙ったまま目を逸らすリュウを嗤い、ユエは汗の滲むリュウの身体を容赦なく凌辱した。
 泣き叫び、「許してくれ」と、哀願しても許さなかった。
 刑罰のようなセックスに意識を失ったリュウを、ユエは決して許さなかった。頬を叩き痛めつけ、ユエの気力が続く限り、貪り続けるのだった。


 窓の外に目をやったまま動かないユエ・イェンリーの横顔は、いつもより艶めいて見えた。
 机の上のキーボードにはICカードが散乱している。
 眺めの金髪を目深に下ろした眉目の整った若者はユエ・イェンリーの第一秘書、アルバート・ルードと言う。
 彼の敬愛する王の一挙手一投足を見のがさぬ様、薄青の瞳でただ一心に注き続けた。
「…それで奴の動向は判っているのか」
 かき上げる漆黒の長髪の奥に、冷徹な光が宿る。
 見つめられたアルバートは思わず目を伏せた。
「…はい。モーロックはレーヴィタル島鉱山の膨大なアクセスチャージを要求しています」
「一端のテレポート気取りめが…。怖いもの知らずの新参者にはそれなりの躾が必要のようだな。徹底的に締めあげろ。この世界で息をしたいのなら、礼儀をわきまえてもらおう」
「 S・C・Oのネットワークと手を結び、秘密裏に動いている気配がありますが…」
「…ほう。 S・C・Oも相変わらず呑気なものだ。そろいも揃って頭上のハエも払えぬおいぼれどもが…まあいい。モーロックは叩き潰す。ティラニスの許可なくして S・C・Oとの関係を保とうとする馬鹿者を見過ごすわけにはいくまい。だが S・C・Oには構うな。こちらで圧力をかける。『力の均衡』は必要だが、主導権は常にこちらが手にしておくのが我が定石だ」
「わかりました。それから…」
 躊躇いがちにアルバートは続けた。
「システムバンクのファベル様の夜会のご招待はいかがなさいますか?」
「今夜だったな。お招きに預かろう。丁度いい。リュウを連れて行く」
 返答もしないままに訝しげにユエを見つめるアルバートを、ユエは楽しんだ。
「どうした?何か言いたいことがあるのか?」
「…」
「構わない。言ってみろ」
「王(キング)は本当にリュウ・エリアードを王の後継者になさるつもりですか?僕は納得できません。あの一件にあの男が関与していたのは周知の事。リュウ・エリアードの不始末で誰よりも苦労なされたのは王であるあなたです。僕には理解できない。何故今更彼を…」
「リュウ・エリアードは先王のただひとりの養子である。当然の権利を有すると思うが…まあ、本人は不本意のようだが…」
「ですが…」
「あれの身体を捨てるのが惜しいからだ。…そう言えばおまえは納得するのか?」
 あいまいな微笑さえ、今までに無い色香が潜んでいる。
 (本気で…惹かれているのか?あの裏切り者に…)
 戸惑いと嫉妬がアルバートの胸をざわめかせ、制御できないほどに痛みを感じた。
 その口唇の震えを見たユエ・イェンリーは、クスリと嗤う。


 閉ざされたカーテン越しに差し込む光でさえ、この薄暗い一室の澱んだ空気を暖めてはくれない。
 ベッドに肢体を投げ出したまま、リュウは枕元の煙草に手を伸ばした。たったそれだけでも身体のどこかが悲鳴を上げる。傷ついた身体は泥底深く沈んで、引きずり上げる術がないほど、朽ちていた。
 震える手で火を点け、肺の奥まで染み渡るように、深くゆっくりと吸い込んだ。
 フィオーレの強い苦みに眉を顰めながら、頭を振る。

 ここへ来てどれくらい経ったのだろう。リュウには判らなかった。外出はおろか、部屋から一歩も出るなと、命じられたまま、一日中部屋でじっと息をこらし、夜が来るのを待った。
 夜はユエ・イェンリーを呼ぶ。
 今やユエ・イェンリーだけがリュウの生きる糧だった。
 (これが俺の望んだ生き方だったのか…)
 幾度となく繰り返してきた自問。
 リュウは己を呪いながら嗤う。
 だが、たとえ抱き人形でしかない堕ちた自分を嘲笑うには、この想いはあまりにも切なすぎた。
 
 この四年間、リュウは望んだ自由を手に入れた。
 確かに望んだものだったのだ。
 真の自由とは…なにひとつ枷のない個の実体であり続ける事。
 しかし心は乾ききっていた。途方もなく心もとない夜。
 日中の楽しさなど跡形もなく消してしまう喪失感。
 手に入れた自由とは一体…
 
 鬱屈した心のひだを隠し、ただ世間の陽を煌々と浴びていた。それと同時に心と身体に繋がれた糸を自らの手で断ち切る覚悟さえなかったことを、嫌と言うほど見せつけられた。
 あの時、ユエ・イェンリーの姿を見た時、彼の手が差し伸べられた時、その胸にしがみついた時に…リュウは答えを出してしまったのだ。 
 心臓を鷲掴み、息をも止めてしまうその手が欲しかった。縛りつけ、自分の薄汚れた欲望を突きつけられることを、望んだのだ。
 (あれほどに憎み、この手で殺してやりたいと…思っていたのに…) 
 リュウは己の心変わりが不思議でならなかった。


 初めて抱かれたのは13の時だった。
 それまで、砂漠の町にひっそりと隠れるように住んでいたリュウは、突然「テュラニス」という組織に連れ去られ、アジトを焼かれたばかりではなく、仲間を殺された。
 「テュラニス」の王(キング)の前に差し出されたリュウは、養父と言うジャック・エリアード、即ち王の命により、ユエ・イェンリーに差し出されたのだ。
 いたぶられ、意地も誇りも剥ぎ取られ、屈辱だけを与えられた。ユエ・イェンリーの足元に這い蹲るしか許されなかった。そして淫らな色情魔に仕立て上げたユエを、リュウは心から憎悪した。
 僅かな反抗さえ許されぬのなら、残された感情は憎しみしかない。
 ほどなくリュウは王の愛玩物になった。
 (いつか殺してやる…王もユエ・イェンリーも、いつか、きっと…)
 苦悶に喘ぐ様を楽しむ王とユエ・イェンリーの残虐な技が続く中、止める事のできない叫びの声を上げながら、リュウは復讐を誓うのだった。

 しかし、今のリュウに昔の憎しみなどどこにもなかった。
 (あれほど泣き叫んだ痛みが、今では甘い痛みに変わる。ユエ・イェンリーとのセックスが俺の救いになってしまうのは…どういうことなんだ。なぜ俺はユエを求める…)
 胸に疼く想いがユエ・イェンリーへの愛だとは、リュウには到底思えなかった。だが、締めつける胸の痛み、湧き上がる熱い感情を抑えることができないのだ。
「馬鹿な…」
 リュウはベッドに埋めた身体を縮め、自分を抱きすくめた。
 理解できない感情が恐ろしい魔物に見えた。

 突然、開けられたカーテンの間から差し込んだ光に、閉じた目を薄く開けた。
「夕刻が近いのに、裸のままなのか?連日連夜のご公務にさぞやお疲れなんだろうけれど…」
 逆光の影に映し出された男の姿に見覚えはなかった。身体を捩らせ、リュウは眩しげにその男の顔を見た。
「誰?」
「三日前、自己紹介したはずだけど…忘れたのか?…覚える気もないか」
「…」
「ユエ・イェンリーの第一秘書のアルバート・ルードだよ」
 名前を聞いても思い出せない。しかしその薄青の瞳が暗く輝き、明らかに敵意の込められた眼差しというのは理解できた。

「そのあんたがここに何の用がある」
 リュウは裸の身体を起こし、ベッドの端に腰掛けた。
「支度をしろよ…今夜、夜会へ出席するようにと王からの命令だ」
「俺が?」
「君がだよ、リュウ・エリアード。ユエ・イェンリーは君を正式なパートナーと認めた。…おめでとう。君は次代の王(キング)となる」
 アルバートの言葉に、リュウは肩を竦めた。
「そんなもん…」
「そう、君には相応しくない。この世界を統べる我がティラニスの王にはね。だがユエ・イェンリーが決めたことに僕らが意義を唱えることはできまい?」
「くだらねえな…」
 片膝を抱え込んだリュウは、窓からの光を眩しそうに浴びた。
 その酩酊した揺らぐ紫水晶(アメジスト)の幻惑。
 紅光を浴びたリュウの裸体に、アルバートはギクリとした。
 たおやかに艶めいた姿態。けだるい、朽ちていく瀬戸際の、しかし無辜なる美にさえも愛でられた、性など超越してしまう…聖物が在った。

 アルバートは湧き上がる己の情欲が信じられなかった。
 (見てはいけない)
 だが視線を逸らすこともできぬまま、吸い込まれるようにリュウのベッドへ近づいてしまう。
 それと判る赤い痕が、リュウの身体中に残されていた。それを恥じらいもせず、むしろ誘うようにリュウは胸を広げ、髪を掻きあげる。
 その姿に誘われたアルバートは、リュウの顔を撫でた。
 次第に嗜虐的な感覚が、身体中を襲う。
 (このまま凌辱し、こいつを泣かせたい…)
 おかしい話だった。アルバートにはリュウへの思慕は一切無いというのに…

「覚えておくがいい、リュウ・エリアード。ここへ還ってきたことを後悔させてやる。僕は…君を殺すよ」
 アルバートの告白に、薄紫の目は涼やかに、楽しげに笑うのだった。



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原文をやっとのことで読み直しましたよ。
一話はあまりに恥ずかしくて、あまり改訂しないまま、アップしてしまいましたが…
原文があまりに酷い有様なので、段々と今の自分の文章で書きなおしつつ進めています。
そんで最後には…原文無視してストーリーが変わってしまう可能性大ですな。
まあ、やっとこの内容に自分が慣れて、直す余裕ができたっていうことだね。
まだまだ恥ずかしい部分があるけどさ~
この部分が新しく書きなおしているなあ~と、思ったあなたは「サイアートオタク賞」を差し上げよう。


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流れる星の彼方に…1 - 2012.03.01 Thu

これは私が二十年以上前に書いたオリジナルBLです。

正直…ド下手で稚拙。
忘れたい黒歴史でもある。と、言うかすっかり忘れていましたよ。
この頃は、商業BL小説を必死で読んでいたころでもあるから、BLにエロは絶対必須だなあ~と思って、苦手なエロを追求して書いた必死の作品でもあります。
ワープロで書かれており、そのメモリも手元になかったし、印刷していたものも捨ててしまいました。気に入らないものはすぐに捨てて後になって後悔するんですよねえ~。実はこのシリーズの漫画もあったんですがねえ~。探しても無かったので多分捨ててるわなwww

かろうじて友人にあげていたものが残っており、ちょっと前にそれを貸してもらいました。
正直…読めませんでした。もう火が出るくらい恥ずかしくて。
でも、ちょっと頑張って読んで、それでそれをワードに写したものがこれです。

頑張ってエロを追求したは良かったが、どうも中途半端。
エロより、この世界感を構築するのが大変でしてねえ~
辛かった。
この終わりも難しかったよ~

この主人公リュウ・エリアードは私が作り上げたキャラの中で二番目の古株で、このキャラの性格は後の色んなキャラの基盤になっています。
最近で言えば凛一やアーシュはこのリュウの性格を受け継いでいます。
次回作品のアスタロトなどはリュウの性格丸写しかもしれませんね。
リュウ・エリアードは最近の作品「彼方の海から…」でも読めますが、この作品とはかなり違っています。この「流れる星…」のリュウは徹底的にマゾにしてますからね。
後になって、このリュウを転生させて、魔者のリュウ・エリアードにしたんですよ。そして人間のリュウの親はサイアート(綾瀬良)と言う少年でして…まあ、こういう一連の物語を作っていたんですね。

この物語はその中のホンの一部です。

呆れるぐらい支離滅裂ですが、若気の至りと思ってお読みください。
長いので何回かに分けて、更新しますね。
たまに18禁になりますから、ご注意ください。
では、どうぞ。

09.jpg



「流れる星の彼方に…」
1、
 硝子越しに見る夜空は、リュウの心の様だった。
 何も見えない…
 月も星も今夜はリュウを迎えるために、その輝きを顰めているのだろうか…
 リュウは溜息を吐いた。
 己の不安を隠せないまま、早鐘を打つ胸を知らず知らずのうちにそっと抑えた。
 絶え間なく続くエンジン音とその振動は、決して不快なものではなかった。だが、彼を見つめる黒い双眸がリュウの身体を慄わせていた。
 決して逸らさない痛いほどの熱い視線が、魂を疼かせた。
 リュウは重い沈黙をはぐらかすために、ポケットの煙草を取り出し、口にした。
 「フィオーレ」と言う花の名には程遠い苦々しい味が、口腔に、肺に広がる。
 空っぽになったケースを捻り潰す。
 (あんたに教えられたんだ…この煙草の味も、何もかも…そして、奪われた…)

 伏せた目を上げ、目の前に座る男を見つめた。艶やかな髪は胸まで流れ、穏やかに艶めかしい美貌は昔と変わらない。
 その顔に残酷な影が潜んでいるのもリュウは知っている。
 サンドベージュの肌に黒曜石の瞳、リュウを縛りつけるその宝石は、餓えた狼のごとく輝く。
 四方八方探しつくし、やっと手に入れた獲物を、どう味わおうかと舌なめずりをする狩人のごとく。
 リュウは堪え切れず目を逸らした。抗う事のできぬ視線…
 リュウの服も肉も通り越し、その魂だけを掴み取る。

 (ユエ・イェンリー…おまえを恐れ、おまえから逃げ、この四年間、おまえだけを待っていた…)

「リュウ…」
 右手を差し伸べ、低く俺を呼ぶ…
 夜を飛行する小型ジェット機の室内は暗く澱み、それと溶け合うかのようなユエ・イェンリーの姿は決して正しき道へと導きはしない。だが差し伸べられた手こそが、逃げ隠れ続けたリュウの本当に求めるものではなかったか…
 ゆっくりと腰を上げ、ユエ・イェンリーの足元に跪き、リュウはその手に口づけた。
 王(キング)への忠誠の証である。
 当然のごとく、そして、抗えぬユエ・イェンリーへの想いを抱いたまま、リュウ・エリアードは還ってきた。

 軽く押し付けられた唇を離し、ユエの右手はリュウの細顎を引き上げる。
 深い口づけ…魂が焼けつくほどの熱い痺れ…まさぐるユエの舌は優雅にリュウの口腔を支配し、次第に理性を失わせ、翻弄する。
 ユエの背に腕を廻し、リュウは満足のいくまでそれを味わった。
 四年ぶりに感じるユエ・イェンリーの官能…求めていたのはこれでしかない。
 身体中に燃え上がる熱い餓えは、お互いを貪りつくすほどに貪欲だ。
 止める術を失ったリュウは、彼を支配する男に呟いた。
「抱いてくれ…」と。

 高鳴る鼓動は、抑えが効かぬほどに膨れ上がっている。
 ドクン、ドクン…
 鼓動がユエにも聞こえたのか、ユエはその胸に耳をあてたまま、動かない。その間にも彼の指はリュウの身体を這うようにすべり、身体の奥に潜む魔物を揺すぶり起こす。
 身体中の触官を震えさせる完璧な愛撫。
 すべてを委ねるだけで得られる快感と苦痛は何ものを差し置いても、この身に与えられたい。
 リュウは身体を震わせ、弓なりに胸を反らした。
 張り詰めた四肢は感覚を奪われ、時折痙攣を起こした。噛みしめた口唇から途切れ途切れにもれる喘ぎは、よりいっそうの高みへと燃え上がらせる。

「うっ…ああーっ…」
 ユエ・イェンリーの激しいナイフを突き立てられたリュウは、その苦痛の果てに来る悦楽の扉をこじ開けようと、ユエにしがみつき、自ら身体を激しく揺らした。
「くっ…」
 直後、リュウはユエの胸で啜り泣いた。
 自由だった四年間を想い、泣いた。
 その月日が砂漠に彷徨う蜃気楼のように感じたのだ。そして、それはやがて遠い記憶の果てに、跡形もなく消え去るのだろう。


 五世紀前、私利私欲を尽くした人類は、この惑星をも食い尽くし、滅亡へと導くのみであった。 自然破壊、食糧危機は言うに及ばす、精神荒廃が引き起こした核戦争は、決定的な打撃を地上すべてに打ちつけた。
 自らの手により、自らの運命を葬っていく儚い運命…
 そして、今世紀初頭、60億の人口は粛清され、およそ15億となり、人類は新しい岐路に立たされたのだった。
 国々の境界線は消え、人々は理想理念を掲げ、新しい社会を作り上げようとする。
 そこには確かに生きのびる為に必要な未知への改革と、あくなき復興を手がける気力に満ち溢れていた。
 「惑星全体の統一」
 「資本主義でも社会主義でもない。そのどちらにも通じ、どちらにも属さない社会」
 人々の声の元、選ばれた代表者により、S・C・O(ソシアルコントロールオーガニゼイション)即ち、社会統制機構が創立される。
 それにより、地球は完全なる一個の連邦国となる。
 
 諸手を挙げて人々の喝采を浴びた政治体制も、半世紀も経てば腐敗が始まる。
 新しい秩序は古めかしい規律と成り果て、慢性的な経済不況が広がった。
 S・C・Oの管理体制は確かに浸透しつつあったが、その一方で国の端々で起こるテロなどの暴力行為の多発、飢餓や貧困の広がりは彼らさえ止める事が出来なかった。
 今や覇権的能力の無い不安定な行政機関と成り果てた。
 彼らが嫌々ながら頭を下げ、その力を借りたのは、前世紀の遺物と卑しまれたエクセレント・カンパニー「テュラニス」であった。
 
 「テュラニス」…情報、技術研究事業団。
 この絶対資本主義シンジケートは、外見上は経済融資、技術開発が主な事業である。が、その真の姿は軍事産業、武器、兵器の開発ブローカー、そして大規模なテレポート(情報、通信処理システム)を持っていた。
 S・C・Oでさえ持て余す地球唯一の絶対君主「僭王(ティラント)」…その力は、政治干渉さえ可能であった。

 ユエ・イェンリーが「テュラニス」の総帥、通称「王(キング)」の地位に座したのは、今から四年前であった。
 先代が暗殺された為、急遽後を継いだ形とはなったものの、彼の能力を疑うものはおらず、また先王の遺志でもあったため、多くの後継者の中からユエ・イェンリーが選ばれた事は、至極当然と受け止められていた。また、ユエ・イェンリーはその力を如何なく発揮し、この四年の企業の伸びは「ティラニス」始まって以来の隆盛ぶりであった。

 今や「S・C・O」と「テュラニス」の癒着はすさまじく、二頭の統治者等は表と裏を完全に掌握した。
 しかし、その力の均衡(バランスオブパワー)は奇妙な形を映し出していた。
 食うか食われるか、いつの世にも弱者は強者に跪くしかない。

 お互いの駆け引きの緊張の糸は、この惑星の未来を賭ける程に引き合い、慄えていたのだ。



2へ

 え~と、少しずつ更新していきますが…これホントに大丈夫なのか?
 全く自信ないんだか…(;´∀`)

 私はこの文章をワードに写しながら、小型ジェット機の中でそんなに激しくやったら、飛行機そうとう揺れるんじゃないのかな~、墜ちるかもしれんな。そしたらこの話ここで終わるんじゃねえ?と、突っ込み入れましたけどね。
 しかし、これでもやっぱり18禁とか、入れとくべきなのか?(;^ω^)



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