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2013-01

輪舞曲4…「セレナーデ 第一曲」 - 2013.01.30 Wed

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jank.jpg

セレナーデ 第一曲

 セレナーデ…宵闇に、愛する人の枕辺で、切なる恋心、愛の告白を謳う楽曲。


桜散る四月の花冷えの夜だった。

その夜は、親しいお客さんを招いての夜桜見物で、セッティングした二次会の小料理屋での散会を期待していたのに、三次会まで誘われた。
お得意様の命令には逆らえず、市街から離れた街の見知らぬクラブに連れて行かれた。

適当に客と上司に合わせて飲んでいると、店のBGMが消え、隅に置かれたグランドピアノの音が鳴り響いた。
へえ~、この店は生演奏のサービスがあるのか…。

一度はチェリストを目指した俺の耳を満足する演奏を期待したわけでもなかったが、おのずとピアニストの姿が気になった。
肩まで髪を伸ばした若い青年だ。痩せた身体に黒いジャケットが似合っている。顔は…横顔しか見えず、仄暗いライトに照らされた顔色は青白く、いかにもアーチストの様相だ。
だが俺の興味はその男の弾くピアニストとしての技量だった。

…様様なアレンジを奏でるスムーズジャズの音律。優男の姿には似合わない、しっかりとしたアクセントの付け方…そして、ブルージーな余韻を醸し出す音色。
ペダルの音やリズムに少し癖があるのは…本来はクラシック弾きなのかもな…。

今までざわついていた店内のお客が次第に彼の演奏に聞き入っていく様子が手に取るようにわかる。
誰もが僅かな緊張と奏でる旋律の波間に漂う快感に浸っている。

半時間ほどの演奏が終わり、ピアニストも席を立った。

「どうだい?神森くん。良い店だろう?」
「そうですね。生の演奏を楽しめる高級クラブはあまり知らないものですからね。いいお店を紹介いただきありがとうございます」
「神森くんは音楽にうるさいと、社長から聞いたものでね。ヴァイオリンを弾くんだよね?」
「昔…少しばかりやってただけで(ヴァイオリンじゃなくてチェロだけどな)、今は全く手にしていないんです。もう弾くこともないでしょうけど…」
「もったいない気もするけど…まあ、そういうものは趣味程度で楽しむのが一番ですよ」
「そう…ですね」

上司の言う社長とは、俺の親父のことだ。
親父は「嶌谷財閥」の縁者であり、グループの不動産企業の代表取締役に就いている。
その時期の極めて困難な就職活動の末、親父のコネクションでなんとか当企業に職を得た俺は、親父の息がかかっている所為なのか、周りからも気を使われ、こちらも構えて気を遣い、なんとか平穏な社会人生活を営んでいる。

…情操教育の一環として、幼い頃にピアノ教室に通い、中学からはチェロに興味を持ち、レッスンをするようになった。
大学もそれなりの音楽大学に通い、将来はどこかの楽団でプロのチェリストとして、一生音楽に携わっていきたいと、ぼんやりとだが夢見ていた。
だが、現実は甘くなく、どの管弦楽団の試験を受けても合格はできなかった。
それまで俺に対して何一つ口を挿まなかった親父が、初めて俺に音楽の道を諦めるように諭した。親父の言葉は重く、俺の描いた夢がいかに甘かったのか、また自分の技量や天性の貧しさを改めて目の前に叩きつけられた気がした。
俺は音楽家としての道を歩くことを諦め、親父に土下座をし、就職させてくれるように頼み込んだ。

親父は甘くない人だった。
最初は息子だと見くびられないように、故意に厳しい部署へ送り込まれた。
負けず嫌いの俺は、とにかく懸命に働き、そして周りを認めさせることに成功した。
二十七歳で営業促進部長という職責は昇進の早い方だろう。

今の生活に不満はない。
だけど、時々…こんな夜は餓えてしまうのだ。
音楽に…メロディに…音色に…響きに…

店の便所は、狭くもなく、ピカピカに磨き上げられた大理石で囲まれていた。
俺は何気に手を洗っている先客を見た。
あ…あのピアノを弾いていた男だ。
こちらも見ずに石鹸で懸命に洗っている仕草を見ると、相当に神経質な気がする。
…確かに、最後の方は気が焦ったのか、少し繊細すぎる音だった。

「君…先程のピアノを弾いていた方ですよね」
俺はその男が手を洗い終え、乾かすのを待って話しかけてみた。
男は黙って俺の方を向き、関心の無い笑みをうっすら浮かべ会釈した。
「クラシックを演ってたの?とても音楽的だった」
「バイエルを演らないピアニストは少ないと思います」
優しげな顔に似合わない少し低く抑揚のない声だ。人付き合いは良い方ではないらしい。まあ、芸術家っていうのは大方高慢でナルシストだ。
男は俗世間とは関わりたくないと言った風な雰囲気で目を合わせる事もなく俺の傍を通り抜けた。

ドアを開けて出て行こうとする男の背中に、俺はもう一度話しかけた。
「次の演奏は?」
「三十分後です」
「リクエストしてもいい?」
乗り気もなく彼は「なんでしょう」と、言った。
「あなたのシューベルトを聞きたいんだ」
俺の言葉に彼は少し驚いたような顔をこちらに向けた。
そして「わかりました」と、顔色も変えずに答えた。


彼の演奏が始まった。
耳触りの良いジャズが続いた後、最後に俺のリクエストに彼は応えてくれた。
シューベルトの即興曲三番をジャズ風に、そして歌曲「白鳥の歌」のセレナーデを正当なクラシックモードで弾き終えたのだった。

多くのシューベルト作品の中で、彼の選ぶ曲目を、期待と期待外れの怖れの緊張感を持って、俺は彼の演奏を見守った。
そして…
俺の魂は彼に奪われてしまったのだ。
彼の選んだ曲は俺を喜ばせ、彼の指から奏でられる一音一音に圧倒された。
特に「セレナーデ」の表現には、…息を呑んだまま、聞き入った。呼吸さえすることさえもどかしいほどだった…
そして、認めざるを得なかった。
こんな地方のナイトクラブで、ピアニストとしての資質と力量を兼ね備えている人に出会う残酷な時。音楽家を夢見ていた者にとって、もう歩くことさえできない…絶対的な敗北をこんな場所で再び味わうことになろうとは…。

それでも…俺は彼の奏でる音色に酔い、それを味わうことができたこの夜に高揚していた。
だから店を出た後、上司が帰りのタクシーの同席を薦めたのに、俺はそれを断った。

このまま帰るなんて…孤独なマンションに…あの侘しい部屋のベッドで疲れた身体を横たえるなんて…なあ、これ以上惨めな生身ではいたくない。

そぞろ歩く川沿いの土手。
桜並木が続く両側には、深夜になっても花見見物で酔いつぶれた連中がヘタクソな歌を歌っている。
ああ、謳えや踊れ。
音楽はすばらしい。
ただひたすらに楽しめばいい。

だが音楽家を目指すなよ。
地獄を見る羽目になる。
偉大な音律の系譜は、天国へのラビリンスだが、音を踏み外せば地獄が待ち受けている。
俺は…それを味わった。
メロディの美しさを知っても、それを奏でる者にはなれぬ。

ああ、桜の花びらが風にあおられ夜風に舞うさまは、あの五線譜の音符のようだ。
花弁は知っている。
自らが一片の散っていく淡く儚いものであっても、絶対的な美しき表現者であるということを…


「すみませんが…」
「え?」
土手の道端に座り込み空を見上げていた俺に、正面に立ち止まった男がいた。
さっきのピアニストの男だ。
今はニットキャップとジーンズ。カーディガンを羽織ったどこにでもいる青年にしかみえない。
「あなた…さっきの『バイロン』に居た方でしょう?僕にリクエストした…」
さっきの店、そんな店名だったのか…
道理で詩人面してしまいたくなるはずだ。
しかし、こんな場所であのピアニストに出会うとは…

「…ひとりで花見ですか?」
先程の芸術家気取りの雰囲気とは違い、親しげに話しかけてくる様子がなぜか俺を不審がらせた。こいつ本当にあのピアニストか?
「そうです。せっかくの花見日和ですしね」
「…もう夜中ですよ。それとも…酔っぱらっていらしゃるのかなあ~。そんな風には見えないけれど…」
「あなたの演奏に酔ってしまい、ここで余韻を楽しんでいるのです」
「…」
「しかし…このまま浮かれていても現実は浮世の荒波。明日も残酷な仕事が僕を待ち構えている」
大げさな俺の身振りに、彼はふふと、笑った。

「あなたの言うとおりです。このままここに居たら風邪をひきそうだ。すみませんが近所にビジネスホテルかネットカフェはありませんか?」
「…この土手を二十分ほど歩けば、ありますけど…」
「そうですか。じゃあ、急いで見つけますよ」
「あの…」
「はい?」
「うちで良かったら…来ませんか。ここから歩いて五分かかりませんし…」
「ええっ?いいの?」
思わずタメ口になってしまった。
まさか誘われるなんて思いもよらなかったから…
微笑みながら軽く頷く彼を、俺は訝しく見つめた。
本当にあの愛想のないピアニストと同じ男なのか?

「ホントに伺ってもいいの?俺、本気ですよ?」
「ええ、どうぞ。もちろん何もサービスはしませんけれど…」と、彼は座り込んでいる俺に手を差し出した。
「ではお言葉に甘えて…」

彼の細く長く節の膨らんだ指…ピアニストの指先を俺は見つめた。
そして、その手を傷つかないようにと、そっと掴んだ。
しかし彼は、こちらが驚くほどの力強さで引き上げ、俺の腰を立ち上がらせたのだ。

そうだった。
芸術家って奴は、自分自身には、いちいち気を使わないものだ。


その夜、俺の手を取った男は、能見 響(のうみ なる)と、名乗った。
なるほど、芸術的な名前だと、俺は心の底から彼に嫉妬したのだった。







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野ばら - 2013.01.22 Tue

「野ばら」

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千葉啓介23


野ばら

まだ春遠い冬の一夜のお話。


いつもなら積もるほどの雪なんて降ることもないのに、今年に限って何故か車が動けない程降り積もって…
引っ越しの予定が一週間伸びてしまった。

狭い部屋が積み重ねた段ボールで益々狭くなり、比較的でかい図体の俺には、居心地が良いわけないけれど、引っ越しが伸びた所為で、梱包したコタツをまた出して、ほっこり温まる。
うん、悪くない。
そう思ってコクリコクリと眠り始めた時、玄関のチャイムが鳴った。

眠いのと、あったかいコタツから出たくなくて、しばらく様子を見ていたが、鳴りやみそうもないので立ち上がり、狭い廊下を歩き、狭い玄関に立ち、ドアを開けた。

「こんにちは!…じゃなかったこんばんは!」
目の前には誰もいない。いや、目線を下げたら見知らぬ子供が俺を見上げていた。
5つか…6つくらいだろうか…
近所の子だろうか…
近所付き合いには自信があったはずの俺だが、見たことのない子供だ。
自分の家と間違ったのなら、俺の顔を見ればあわてるはずだろうが、そんな素振りはなく、その子はにこにこしながら俺の顔をじっと見ている。
「あ、の…なにか用事かな?」
少し屈んで優しく訪ねてみた。耳当てのある赤い毛糸の帽子が懐かしい。
俺も小さい頃は、こんな帽子を被っていたものだ。

「ねえ、寒いからおうちに入れてくれる?」
真っ赤な頬と白い息を見て、無下に断れるはずもなく、俺はその見知らぬ子を狭い我が家へ招いた。
その子は躊躇いもせずにブーツを脱ぎ、「さむ~い」と連呼しながら、早足に廊下を歩き、リビングのコタツに素早く潜り込んだ。
「うわ、あったか~い、きもちい~い」
無邪気な声に、俺の警戒心も薄れる。
「何か飲むかい?ココア…と、ダンボールに片してしまった…」
「箱、たくさんあるねえ~」
「引っ越しするんだ」
「おひっこし?」
「うん」

なにかお菓子でもないものかと辺りを探すが、こんな時に限って何もない。
「ごめん、なにもないみたい」
「プリン食べたい」
「プリン?」
「うん。ボク、プリン好きなんだ」
「…」

近くのコンビニに行けば望みは叶うけれど、この子を置いて出かけるのも、一抹の不安が残る。
「ねえ、プリンがいい」
「今はうちにはないんだ」
「あるよ、冷蔵庫にきっとあるよ」
「…」

仕方がない。一応冷蔵庫を覗いて、無かったことをこの子に確認させ、それでも強請られたら、ひとっ走りコンビニまで行ってこよう。
もう雪も降ってないし、走れば五分で戻れるし…
そう思って冷蔵庫を開けてみると…あった。プリン。
しかもふたつ…

…そっか…昨晩、一緒に食べようって紫乃が買ってきてくれたんだっけ…
今日も仕事が終わったら来てくれるって言ってたけど…
ひとつ、この子に食べさせても許してくれるよね。

「あったよ、プリン」
「わあ、良かった~」
プラスティックのさじと一緒にプリンを差し出した。
「あれ?これぷっちんってするやつじゃないね」
「そうだね。これはもう少し高級な…ちょっと大人なプリンだね。クリームブリュレって言うんだよ」
「…うん、上のところがカリカリしてて中がふわふわだあ~。ぷっちんよりもおいしいかも~」
「そう、良かったよ」
「本当はね、おかあさんの作ったプリンが一番好きなんだ。でもお仕事いそがしいから、わがまま言っちゃだめなの」
「そう…なんだ」

昔を思い出すな。
俺も同じだった。
共働きで自営業を営んでいる両親の姿は、子供の俺から見ても忙しそうで、我儘を押し通すことはなかなかできなかった。
でも俺には姉貴が居てくれたから、さみしい思いをせずに済んだんだ。

「おいしかった、ごちそうさまでした」
「おそまつさまでした」
「…おにいさん?」
言いにくそうだったから「俺は千葉啓介って言うんだよ。啓介って呼んでいいよ」と、進めた。
「…啓くんは、どこにおひっこしするの?」
「…」

すぐに答えられなかったのは、俺自身の気まずさがあるからだろうか。
この春、無事大学を卒業することになり、そして希望の「聖ヨハネ学院高等学校」の教員として就職することになった。
付き合っている恋人の藤宮紫乃は、もともとヨハネの教員で、俺の教育実習の指導教員だった。俺は彼に一目惚れをし、そして俺の想いを紫乃は受け取ってくれた。

ヨハネの教員になって、紫乃と一緒に机を並べて、仕事もプライベートもいちゃいちゃしたい!ってのが俺の願望で、その為に一生懸命に勉強して、採用試験に合格したんだ。
ふたりで話し合って、この横浜のアパートから、紫乃の住む鎌倉のマンションに引っ越して、一緒に住むことに決めた。
憧れの同棲生活だ。
でも…まだ両親にはカミングアウトしていない。
姉ちゃんには俺がゲイだってことも、紫乃の事も打ち明けてて、力になるって言ってくれているけれど…
親の…特に母親の顔を見たら、なかなか男が好きで一緒に生活します、とは面と向かって言えないものだ。
まあ、こうなると札幌に居る親たちと距離があるのが救いなんだけれど。

「啓くんは好きな人いるの?」
「え?あ…うん、いるよ。とっても大事な…死ぬまでずっと一緒に居たいって思う人…紫乃って言うんだよ」
「ふうん」
俺、何言っているんだろ。こんな見知らぬ子供に。
親に告白できない代わりをしているのだろうか…
俺は紫乃の良いところを、この見ず知らずの子供に話し聞かせていた。子供はニコニコと面白そうに聞いている。

「じゃあ、啓くんはしあわせなんだね」
「…うん。…ああ、とっても、とても幸せなんだよ」
「良かったね、啓くん」
「あ、ありがと…え~と、ボクの名前聞いてなかったね」
「たぁくんって呼んでね」
「…たぁくん」
「うん。じゃあ、ボク、そろそろ帰るね。おかあさんが心配してるから」
「う…ん」

こたつから勢いよく立ち上がったその子は、脱いだ帽子とコートを羽織り、足早に玄関に走っていく。
俺は追いかけながら「そこまで送って行こうか」と。声を掛けた。
「大丈夫。来た道はちゃんと覚えているから」
慣れた手つきでブーツを履き、立ち上がるとくるりと俺の方を向き「啓くん、プリンおいしかったよ」と、笑った。
「クリームブリュレだよ」
「そうだったね、クリームブ…りゅれ、ふふ…」と、恥ずかしそうに笑う。

「じゃあ、ばいばい。啓くん」
玄関の戸を開け、手を振るその子に俺は聞いた。
「ねえ、たぁくん…君は、しあわせかい?」
その子は少し驚いた顔をして、そして屈託ない笑顔を見せた。
「うん、とってもしあわせだよ。だから心配しないで、ね」
「…」
「ばいばい、啓くん。紫乃って人とずっとなかよくね」
「ありがとう…ばいばい」

アパートの外廊下を走り、階段を降りる姿を見送り、俺はすぐさま携帯から母親へ電話をする。
『あら、啓介。珍しい。どうしたの?』
「母さん、驚かないで聞いてくれ。今ね…俺、公孝(きみたか)兄さんに会ったよ」
『…』
「確か…今日が命日だったよね」
『…そうよ。今日が23回忌だったの』
やっぱり…そうだったのか…

「…兄さん、俺のことが心配で来たのかな」
『そうね、啓介のことは、啓くん啓くんってそりゃあこちらが引くぐらいに、ものすごく可愛がっていたから』
「小さい頃、俺がしていた赤い毛糸の帽子、母さんが兄さんに編んであげたんでしょ?」
『…うん…たぁくんに。いつも忙しくしてて、あなたのことも公孝と小緒里にまかせっきりで…』
小緒里(さおり)姉さんと公孝兄さんは二卵性双生児だった。
六歳の時、バイクに跳ねられ、公孝兄さんは亡くなっていた。
俺はまだ二歳だったから、兄さんのことはほとんど覚えていない。
仏壇に飾られた小さな写真の兄さんしか…

『今もね、あの子がプリンが好きだったから、仏様にお供えしていたのよ』
「そう…でもね、母さん。兄さんは俺んちのプリンを食べて行ってくれたよ。おいしそうにさ。でもおかあさんの作ったプリンが一番美味しいってさ」
『…』
しばらくの沈黙の後、電話の向こうで、母の嗚咽が聞こえた。

「ねえ、母さん。兄さんね、向こうで幸せだから、心配するなって、笑っていたよ」
そして俺は公孝兄さんと話した一部始終を、詳しく母親に話し聞かせた。
勿論、紫乃の事も。



俺も幸せになるよ。
兄さんを心配させないように。
しっかりと自分の道を歩いていくからね。



         2013.1.22



Greenhouseのエピソードはまだまだ沢山あるので、色んなキャラバージョンで描きたいと思います。


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輪舞曲3…「二十歳」 - 2013.01.15 Tue

二十歳

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戦士2013


二十歳


成人式に興味はなかったが、式の後、中学時代の同窓会があるから来いと、世話好きの幼馴染みが五月蠅く誘うので、仕方なく出席してみた。

ホテルの会場に集まった懐かしい面々…
と、いうか…
俺は中学は市外の私立中だったから、正直、ここにいる連中の半分ぐらいしか、面識はなく、そのうち仲の良かった者なんか、数える程しかいない。
と、言っても…
小学時代は頭脳明晰で誰からも好かれる好少年。毎年クラス委員をやらされ、非の打ちどころもない優等生だった俺は、自分で思っているよりも顔が知られているようで、誰彼ともなく挨拶をされる。
勿論、相手が誰かはよくわからない。
女子は化粧と恰好でまるっきり面影もクソもないし、男子は名前を聞いたらなんとかわかる気がするが、それとて過去の想い出話に花が咲くわけでもない。

適当に相手に合わせて談笑してみても、心から楽しめるわけでもない。
次第にここに来たことを後悔し始めた頃、俺の名前を呼ぶ男がいた。

「砂原(さはら)元気だったか?」
「…」
金色に染めた髪と、洒落たダブルブレストのスーツを着こなした痩躯の男の姿に見覚えはない。
俺の名前を知っているから、きっと同級生だったのだろうが…
俺が黙って見つめると、その男はキョトンとし、そしてクスリと笑った。
「忘れちゃった?俺、崎村哲(さきむらてつ)だよ」
「…哲?おまえ、哲なのか?」
絶句した。
いがぐり頭がトレードマークだった芋臭いガキだった哲が…こいつ?

「わ、るい…いやあ、すっかりあか抜けて…わからなかったよ」
「小坊の頃は、確かに俺、ダサかったからなあ~」
頭を掻きながら苦笑する顔すら、俺にはまだ信じられない。あの哲が、目の前のイケメン優男になるなんて…

「砂原は…あんまり変わらないな」
「そうか?」
「うん。俺の想像どおりの二十歳の男になったって感じかな」
「そう…喜んでいいのかな」
「ああ」
懐かしげに優しい笑みを浮かべる哲を前に、俺は不可思議な気持ちで一杯になった。
そもそも…

俺とこの崎村哲の間に、友情と呼べる信頼関係はない。
どちらかというと、俺にとって哲の存在は目の前にたかるハエのようなものだった。
何もできないくせにぶんぶんと五月蠅くうろついてまわる口だけの軽薄な勉強のできない男子だった。
文武両道で優等生で非の打ちどころのない俺を妬み、つまらない言いがかりで文句をたれ、俺をイラつかせた。
俺も子供だったから、そういうガキっぽい哲を見下し、軽蔑した態度を取っていたのだろう。
哲の俺に対するつまらない苛めはエスカレートしていた。

とは言え、彼の味方はなく、クラスのヒーローだった俺が、あいつの行動に怯むわけもない。
ただ、隣りの席になった時、やたら俺の筆箱の鉛筆やら消しゴムが無くなり、哲に疑惑の目を向けても現行犯で締め上げられなかったことが悔やまれる。

卒業が近くなった頃、ある事件が起きた。
俺と同じクラス委員をしていた女子の金子円(かねこまどか)が、昼休み時間に俺を校舎の屋上に呼び出したのだ。
頭のいい金子とは塾も一緒だったし、勉強も教えあう仲の友人だった。
その彼女が少し頬を染め、俺に言うのだ。
「手紙、読んだわ。私も砂原くんのこと…ずっと前から好きだったの。付き合ってもいいわよ」
「…は?」
俺には何のことかさっぱりわからなかった。
「悪いけど、何の話?」
「え?…なんのって…手紙…ラブレターくれたじゃない。四年の時から好きだって…」
「待ってくれ。俺はラブレターなんて知らないし、好きだなんて…思ったことない」
「…ウソ…」
「嘘なもんか。なんで俺が金子を好きにならなくちゃならないんだよっ!」

今から思えば、もうちょっと違う言い方をすれば、彼女もあんなに傷つくはなかっただろう。だが、俺も小学生、まだ12歳だったんだ。
いきなり根も葉もないことを言われ、腹が立ってしかたなかったんだ。

金子もまた美人の優等生で、プライドが高かった。だから、嘘のラブレターにも、告白したにも関わらず断ったことに対しても、ショックだったのだろう。
青ざめた顔をして俺を睨んだ。
「じゃあ、これは…この手紙は砂原くんが書いたんじゃないのね」
目の前に突き付けられた手紙を俺は受け取り、中身を読んだ。

「私、塾で砂原くんの字を見慣れているのよ。それ砂原くんの字にそっくりだよね」
「…」
「内容だって…この間、塾で習った恋の和歌とか書いてて…絶対、砂原くんだって思うよね」
「…」
「砂原くんじゃなかったら、誰がこれを書いたって言うの?」

確かに、手紙の内容は俺が書いてもおかしくない内容だったし、なにより右肩上がりの筆圧の強いクセのある字が、俺にそっくりで、金子じゃなくても間違えるだろう。

「…わからない。誰かが俺のマネをしてこの手紙を書いたんだろう。だけど、そんなことをして誰か徳をするヤツがいるのか?」
「…ホントに…砂原くんじゃないのね?」
「当たり前だ!大体…俺、こんな手紙書かない。好きならちゃんと相手に言葉で言うよ」
「…」
「…ごめん」
「…いいわよ、もう…でも、これが悪ふざけなら…許せない」
「俺だって…でも、一体誰が…」

その手紙をもう一度見かえした時、俺の頭にふと崎村哲の顔が浮かんだ。

あいつなら…
俺のノートを何度も写させたこともあるし、俺の文章の特徴も知っている。
あの頭の悪い哲が、俺そっくりの字を覚え、俺が書くような手紙を書いたとは考えにくかったが、こんなことをする奴はあいつしか思いつかなかった。

俺は手紙を金子に返し、急いで教室へ戻った。
昼休み中の教室はまばらだったが、哲は仲の良い男子ふたりとカード遊びをしていた。
俺は何も問わず哲の胸倉を掴み、拳で思いきり哲の顎を殴ってやった。
哲の身体は後ろの壁にぶち当たった。

「どうして殴られたか、よおく考えろよ、哲。俺だけじゃなく他のやつまで傷つけたおまえを…俺は一生許さないからな」
「…」
口唇が切れ血が滲んだ哲は、何も言わず俺を睨みかえした。

その後、卒業まで哲とは一言も口を利かなかった。
金子円も手紙の件に関しては、一言も言わなかったし、俺も何もなかったように接していた。

後味の悪さだけが残った哲との思い出だったが、その後の俺の人生にあまり影響はなかったらしい。その証拠に、哲の顔を思い出すまですっかり忘れていた。

「砂原にはいつか謝らなきゃらならないって、ずっと思ってて…」
「え?」
「あん時、おまえのふりをして金子にラブレター出したのは、俺だった」
「…まあ、ああいうことをやるのは、おまえしかいねえもんなあ」
「悪かったよ。ごめん」
「もういいよ。でも…よくよく考えると、俺の字によく似てたし文章も巧かったし、おまえ、もしかしたら金子のこと好きだったのか?だから俺になりきってラブレターを書いたのか?」
「…は?…いや…そうじゃねえよ。俺は…自分で自分がわからなかったんだよ。頭悪いのに夢中になっておまえの字をマネして、おまえになりきって、手紙書いたりしてさ。…後になって…おまえがよその中学に行ってから…すげえ色々と考えてさ。それで…俺はおまえが好きだったんだと、わかったんだ」
「…はあ?」
「だから、色々とつまらないちょっかいだしたのも、おまえが気になって仕方なくて、それっておまえを好きだったって事だよ」
「…ちょっと…本気で言ってるのか?」
「二十歳にもなったから時効だろ?…俺はおまえが好きだったんだよ、砂原」
「…」
そんな真顔で断言されても、俺も困るのだが…

「そう自覚したから、今の俺が居る」
「え?」
哲は俺の耳元に近寄り、声を低くして呟いた。
「俺、ゲイなんだ」
「…」
「気色悪い?」
「いや。今の世の中、そう珍しくもないだろう」
「そう、良かった。砂原にまた軽蔑されるのかと思って、少し怖かったんだ」
「しないよ。でも他の奴らには言わないほうが良さそうだけどな」
「うん」
安心した顔を俺に見せた哲は、胸元から名刺入れを出し、俺に一枚差し出した。

「今、この店で美容師をしてるんだ。これでも腕がいいって評判なんだぜ。何かのついでの時は砂原も来てくれよな」
「ああ、寄らせてもらうよ」
「…緊張してミスるかもしれないけど…」
そう言って笑う哲は、二十歳の顔をしていた。




「…やっぱ、とおりもんは美味いよな~。地元でしか買えないお土産さいこ~」
「そりゃ、良かったね」
「で、どうだった?成人式じゃなくて同窓会か」
「別に…どうってことなかった」
「昔、好きだった男には会えたかい?」
「…いねえよ、そんなもん。俺には静稀さんがいるもん」
「…だよね」

ふたつ上の先輩と同棲中の俺に、ゲイの哲を責める気なんか、あるはずもない。
二十歳の俺は、どうやら幸せだ。

君もまた幸せでありますように。



同窓会って不思議な気分になるよね~


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輪舞曲2…「願い」 - 2013.01.08 Tue

「願い」
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キス少年



 願い

午前零時、遠くで鳴る除夜の鐘を耳にしながら、実家を出る。
おーちゃんが俺に気づいて、犬小屋からのそりと出てきて尻尾を振る。
「寒いから出なくていいよ」
頭を撫でて抱き寄せてやると、遊んでくれると思ったのか、本気で甘えてくる。
連れてはいけないのが判っているから余計にかまってやりたくなる。

「奏(そう)」
静稀(しずき)の声だ。振り返ると門の外に立つ姿を見つけた。
「ごめんね、おーちゃん。しぃくん来たから俺、行くね」
ワンと、納得がいかないように吠えて、俺を睨むけど、仕方ないよ。静稀の方が先約なんだからさぁ。
立ち上がって門扉に向かい、後ろを向いてまだ尾を振っているおーちゃんを見る。
「ちゃんとあったかくしておやすみ」
帰るように促すと、クゥンと寂しげな声を上げて自分の寝床に戻っていく。
ちょっぴり可哀想になった。明日はちゃんと遊んでやるから勘弁してな。

「奏、行くよ」
「うん」
「オリオンも連れてくれば良かったのに」
「ん。でも、神社とか人ごみの多いとこで、あんまり迷惑かけられないしね」
「まあね。世の中全部が犬好きっつーわけじゃねぇしな」
「そうだね」
あたりまえだけど、世の中の誰彼もが同調するわけではない。俺と静稀だって、随分と長い付き合いだけど、おまえの心の中なんて俺にはわからないもの。

神社は思ったよりも疎らで並ぶ必要も無く、お参りができた。
賽銭を入れて拍手を打つ。
「ニ礼ニ拍手一礼って書いてあるよ」
賽銭箱の横に書いてある紙に気づいて隣りを見る。
「いいよ、もう。祈ったから」
踵を返す静稀の背中を見ながら、俺も慌てて祈って後を追った。

「あんまり込んでなかったね」
「うん。奏、おみくじ引く?」
「引く」
ちゃんと巫女さんのいるところで百円渡しておみくじを貰った。
「巫女さんかわいいな」
「おまえはあのコスプレに萌えてんだろ?」
「おまえもだろ?」
「…おみくじなんだった?」
「…中吉。おまえは?」
「小吉」
「微妙過ぎるな」
「全くだ」
用意されているしめ縄に括り付けながら、互いに笑った。

神社を出て、いつものように川の土手に向かって歩き始めた。
無茶苦茶寒くないし、風もないから真冬の夜中の散歩も悪くない。
「奏、何祈ったの?」
「えっ?しぃくんは?…ああ、志望大学合格!だよね」
「…まあ、そうだな。それと…奏と仲良くいられますように、かな」
「…」
そんなこと言ったって、おまえ、行くじゃん。ひとりで遠くに行っちまうじゃん。

「…なんだよ、黙り込んで」
「静稀はズルイ」
「なにが?」
「俺が追っかけられないところに、行っちまうから…」
「大学の事?」
「…そう…」
「遠くったって、新幹線で二時間じゃん。会おうと思ったら会える距離だよ」
「…そう、だね」


出会ったのは小学一年の時。それからずっと学校も一緒で、高校は俺には少しレベルが高かったけれど、どうしても静稀と一緒に行きたくて、懸命にがんばってなんとか合格できた。
そして合格の日、それまでずっと心に抑えていた静稀への想いを、告白した。
親友という勲章を捨てることになるかもしれないけれど、これからも親友のままだけで一緒にいることの方が、俺には苦痛に思えたし、それで撃沈するのなら、仕方がないとの覚悟した。
だけど静稀は言った。
「奏は俺がおまえを嫌いになんかなれないってわかってるから、ワルなんだよ。かわいい顔してさ」
「え?」
「…悪かったよ。今までおまえの気持ちに気づかなくて…ごめんな」
「静稀…」
「俺もおまえが好きだよ。これからは親友プラス恋人ってことでいいか?」
「うん…うん」
あんまり嬉しかったから、思いきり声を出して泣いてしまった。

パートで夕方まで帰らない母をいいことに、あいびきは主にうちの部屋。やることはひとつで、静稀と色々エロ的なことに挑戦。ふたりとも初めての事ばかりで戸惑うことも多く、なかなか快感を掴むまでは難しかったけれど、静稀が好きだから、少しでも気持ちよくなって欲しいって思ったから、俺は頑張った。
頑張ったおかげでふたりともセックスを楽しめるようになった。それからは飽きる程やりまくり、馬鹿みたいだと笑い、ずっとこうしていような、と、誓い合った。

高三になり進路を決める時、静稀は自分の志望大学を国立理系に決め、俺は静稀程、成績も良くなかったから、早々に公務員試験を受け、市役所に就職が決まってしまった。

新幹線で二時間って言ったって、ここ田舎だし、もっと時間かかるよ。交通費だってバカにならないし…そんなに簡単に会える距離じゃない。

今までずっと離れずにいたから余計に不安になる。
静稀はそんなことはないのだろうか…

川岸に沿った土手は、まだ舗装されず、暗闇の中、乾いた土と枯れた草道を歩いた。
「奏、今、何考えてるか当てようか。…俺と離れる事が不安で仕方ない。俺が浮気するかもしれないから…だろ?」
「…うん、それとしぃくん、都会の色に染まっちゃうかもしれないし…ね」
「すげえ昔の流行歌みたいだな。変わってしまう俺が怖いか?」
「…」
「人は変わり続けるものだぞ。俺もおまえも変わっていくんだよ。まあ、言い方を変えれば成長っていうのかな。だからって俺が奏を好きでいることは変わらないから、安心しろよ」
「うん」
突然の静稀の言葉に、たまらなく不安になる。
変わっていく俺を、静稀は愛し続けてくれるのか?俺は静稀を愛し続けられるのか…

向こう岸の灯りが仄かに辺りを浮かび上がらせ、冬夜の川は静かなまま、闇色のきらめきできらきらと輝く。
「さすがに寒いな」
「うん」
初日の出を拝みたいけれど、とてもじゃないが立ってるだけじゃ寒すぎて、それまで待ちきれない。

「来年は、一緒にこの土手で初日の出を眺めような」
「うん」
そう言ってくれる静稀の優しさが、すごく好き。

こんな想いがずっと続くこともないのだろうか…
こんなに近くにいる静稀が、少し遠い気がする…
バカ、今からこんな弱気じゃもたねえぞ!

「ねえ、しぃくん。俺さ、神社で祈ったのは、しぃくんとずっと仲良しでいられるように…だったけどさ…変えるよ。俺がしぃくんをずっと好きでいられるように、って。それが俺の願いだから」
「奏…」
「元気でね、しぃくん。俺はどんなしぃくんも好きでいたいって思っている」
「…ありがと、奏」

それから俺たちは、約束のキスをした。
いつまでも互いを好きでいようと…

簡単じゃないけれど…
努力するよ。
おまえが、好きだから…



イラスト適当でごめんちゃい人(・ω・;) スマヌ
この後、ふたりがどうなったか…後々わかるだろう。(今の時点でなにもかんがえてはいないんですけどね(*・ω・*∩)
次はね~イールたんの冒険とか、書きたい。



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あけましておめでとう! - 2013.01.06 Sun

お正月からちょっと風邪をひいてしまいました~

去年は大晦日からノロで家族全員全滅だったので、それに比べれば、とっても平和な正月でした。

戦士2013-2

今年も好きな物語を、ゆっくり描いていけたらいいなあ~

いつも読んで頂いている皆さま、今年もよろしくおねがいいたします。

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