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2014-02

続・バレンタインデー 3 - 2014.02.28 Fri

3
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栄嗣&漣バレンタイン9

3、

二年の夏休みには、漣とふたり、自転車で富士五湖巡りを楽しんだ。
ユースホステルやキャンプ場に泊まり、釣りやラフティングに挑戦したりと、何もかもが楽しかった。
夜、枕を並べて寝るまでの時間、お互いの心を素直に白状しあう。
俺はついに女子とつきあったことを漣に告白した。
漣は黙って聞いてくれた。
「別れてホッとしたよ。別にそんなに好きな子じゃなかったしさ。今は気になる女の子は居ないね」と言うと、漣は「僕もだよ」と、言う。
その言葉に、正直俺は胸を撫で下ろした。

何故だろう。
漣を誰かに取られたくないって、どうしても思ってしまう。
漣は男で、俺たちの間には、友情の絆しかないはずなのに…
それとも…
もっと違う感情が存在したりするのだろうか?


「栄嗣、僕ね、来年受験生なんだよね」
漣はこちらを見つめ、ふと漏らした。
「あ?ああ、そっか、三年生だもんな。普通はそうだよな」
高専は五年生まであるから、ピンとこなかった。
「それでね、一応進路を決めなきゃならないんだけどさ…あのさ、僕、ロボット工学科のある大学を受けようと思っているんだ」
「…え?」
「絶対に栄嗣の影響だね」
漣は愉快そうに笑う。
その声が俺の心を打つ。

「漣…」
「栄嗣に色んな話聞かせてもらって、そんでわからないことも教えてもらって、僕もロボット製作に興味を持ったってことだろうなあ~」
「だって、おまえ、文系だったんじゃねえ?」
「うん、そうだったけどね、真面目に勉強してみたら物理や数学が面白くなっちゃってさ。結構良い点取ったりするんだよ。先生も理系に進学したいって言ったら、応援してくれるってさ」
「…それでいいのか?」
「うん、これからも栄嗣と色んな話をしたい。ほら、共通の話題とか趣味とか持っていたら、ずっと友情が続くっていうだろ?あ、別に無理してるわけじゃないから、栄嗣は全然気にすることないんだよ。どっちかっていうと、未来の目標を見据えることができて、栄嗣に感謝してる。それまでは自分の将来とか真面目に考えた事なかったからさ」
「そっか、漣が俺と同じ機械技術者になるのか…なんか、なんかすげえ…うれしいよ」
「栄嗣の目指すロボット製作に、僕もちょっとでも関われたら…なんてさ、夢みたいなこと思っていると、すごくやる気が沸いてくるんだ…って、ちょ…栄嗣、なに、泣いてんのさ…」

漣の言葉に俺は感動して泣いてしまった。
漣は困っていたけれど、その涙は漣への感謝だったりもするから、止まるわけがない。
嬉しくて、嬉しくて…
毛布にくるまって寝ている漣をギュッと抱きしめた。
漣は「栄嗣って泣くと赤ん坊みたいになるんだね。新しい発見だよ」と、俺の頭を撫でながら笑ってくれた。


三年になり、俺は全国高専ロボットコンテストに出場する為のロボットのデザインと設計作りに取り掛かった。
校内の選抜を得て、校内代表としての資格を得ることになる。
勿論、俺の提案したロボット設計に協力し合うチーム作りから始まる。
信頼できる仲間を得る為に、説明会を開き、強力なサポートメンバーを募ることになる。
俺は先輩らとは組まず、同期の連中と試行錯誤しながら、作り上げることにした。
平岡はもちろん、その他4人との綿密な設計、戦略等を練り、並み居る校内のライバルに打ち勝ち、地区予選に出場する権利をなんとか勝ち得た。

しかし、それからが大問題だ。
設計通りに作り上げることができても、思い通りに動きまわる完全なロボットの完成までは難しく、失敗の度にへこたれそうになった。
思い通りに動かないロボットにヤキモキし、仲間同士の険悪な雰囲気、本気の口げんかなど、何回ぶちきれそうになった事か…。

その度に、俺は漣に泣き事や愚痴をぶちまけた。
漣は少しも嫌がらず、俺を励まし続け、「栄嗣ならやれるよ」と背中を押し、ちょっとした代案を勧めてくれたり、面白い発想を聞かせてくれたりする。
漣の助言や励ましで俺はどれだけ救われただろう。
その度に、漣は「親友だろ?栄嗣が辛い時は、僕が支えになるよ。いつだって僕は栄嗣の味方だからね」と、言ってくれるんだ。

今まで俺はこんなに誰かを必要としただろうか。
漣のように誰かの為に、必死に支えたことがあっただろうか…

俺は…漣の為に何をしてやれるんだろう。


ロボット製作には平岡のクラスの本田もチームの一員として参加してくれた。
本田は制御システムコンポジションに長け、上手い具合にロボットを調教してくれる。
平岡から俺のクラスの風間と付き合っていると聞いていたから、最初は少しだけ意識してしまう時もあったけれど、彼のロボット製作に携わる真摯な姿勢と取り組みに、信頼を置くようになった。

そして、ロボット製作も大詰めを迎えた。
夏休みも返上してのロボットの試運転が繰り返され、俺たちは手ごたえを感じていた。
ある昼下がり、たまたま本田とふたりきりになる機会があった。
ふと、俺はどうしても本田に聞いてみたくなり、心に引っかかっていたことを打ち明けた。

「なあ、本田」
「なに?」
「あのさ、おまえ…うちのクラスの風間と付き合っているって…聞いたんだけどさ。ホント?」
「…」
本田は鬱陶しそうな顔で俺を睨み返した。

「ひやかしとか好奇心…じゃないんだ」
「じゃあ、なんだよ。俺が男と付き合うこととロボット制作に関係があるのか?」
「違うよ。たださ…俺も悩んでいることがあって…」
「…」
「親友がいてさ。すげえ大事な奴なんだ。もし、奴が誰かと付き合ったりしたら、俺はきっとすげえ落ち込むだろうなあ~って、思う。そういうのは変なんだろうか?親友としておかしいのかな?…自分の気持ちが…わからないんだよ。だから…本田がどんなふうに、風間と付き合うことになったのか…知りたいと思ったんだ。気分を害したのなら、謝るよ」
俺の言葉に本田は少しだけ固くなった顔を和らげ、視線を目の前にあるロボットに移した。

「別に謝るこたあねえし…そうだな。俺も…初めは友情だって思ってたよ。一年の時、学生寮であいつと相部屋になって…風間は東北訛りがあってさ。最初何言ってるのかわかんなくて、すげえ、めんどくせえなあ~とか、思ってたんだけど、打ち解けてしまえば気のいい奴でさ。お互いの得意な科目、苦手な科目を教えあって、ヤマ勘が当たった時にはお互いめっちゃ喜んだり…楽しかったよ。あいつはすげえ情に厚くて、思いやりがあって…。卒業しても親友だな…なんてさ、言いあったり…。だけど、なんか…あいつがホームシックでちょっと落ち込んで、泣いてた時があって…なんだかすげえ愛おしく思えて…さ…。友情なのか、それ以外のものなのか…お互いわからなくなって…。怖かったよ。別に俺も風間もホモじゃないからな。男が好きなわけじゃないもの…」
本田は、持っていたペットボトルの炭酸ジュースを飲み干した。

「相手を好きだと理解するまで、何度も話し合ったし、ぶつかり合ったよ。でも…やっぱり友情とは違うんだって…寝てみて、初めてわかったんだ」
「…」
「そう言うことさ」
「…それって…寝てみないと恋か友情か、わからないってこと?」
「相手とキスしたい、セックスしたいって思うのが恋愛で、そうじゃないのが友情…と、決めてしまえば簡単だろうな。…まあ、そんな簡単に割り切れるかどうかは、それぞれだろうけどさ」
「…」

俺は想像してみた。
漣とキスする…できるかもしれない。
漣とセックスする……ちょっと、無理…かもしれない。

腕を組んで考え込む俺を見て、本田は声を上げて笑う。
「おまえ、本気で妄想してる?あはは…。柊木っておもしれえなあ~。超真面目~」
「…笑うことないだろ?結構マジに悩んでいるんだからな」
「そうだな。悩むことはいいことさ。悩まない恋なんて、つまらないからなあ~。俺たちだってこの先どうなるかわからねえよ。でもさ、あいつを好きになったってことは、一生後悔しない。そう信じることが出来る。それって結構上等な人生かもしれないってな…そう、思えるよ」
「ありがと。随分勉強になったよ」
「って、言うかさ。柊木、おまえの気持ちも大事だろうけれど、相手の気持ちがあってこその恋愛だぜ?相手に打ち明ける時は、覚悟しろよ。恋どころか友情も無くしかねないからな」
「わかった。よく考えてみるぜ!」

俺は立ち上がって、飲みかけのコーラを本田に差し出した。
本田は呆れた顔をして、ペットボトルを受け取り「頑張れよ」と、笑った。


俺は制作したロボットに「漣(さざなみ)号」と、名付けた。
俺なりに漣への気持ちをロボットに託してみたんだ。
もし、この漣号が全国まで勝ち進んで、良い成績を治められたら、俺は漣の気持ちを確かめてみよう、と、覚悟を決めていた。

地区予選を勝ち上がり、11月も終わる頃、国技館での本選を迎えた。
俺たちの「漣号」は三回戦の準々決勝で敗れたが、アイデア賞に輝いた。
俺たちは絶対優勝だと意気込んでいたから、中途半端な勝敗と、なんだか微妙な賞に、チーム内は変なテンションだったけれど、学校は久々の快挙と盛り上がり、先生も生徒も大喜びだった。
盛り上がる最中、俺は漣の姿を探した。
本選には必ず駆けつけると、俺に約束したからだ。
俺の作った「漣号」を、漣に見せてやりたい。
「漣号」で、優勝したかった。
チームのみんなだけじゃなく、漣の応援があったから、ここまで頑張れたんだ。
「ありがとう」って、漣に言いたかった。

だけど、その日、漣には会えなかった。
テレビの放送や雑誌関係のインタビューなどの関係者で会場も裏もごった返し、身動きが取れなかった。


二日後、学生寮に漣から小さな小包が届いていた。
開けてみると、小さな空の箱の中に、リボンと小さく畳まれたメモ用紙。
箱の中からは微かにチョコレートの匂いがした。

俺はメモ用紙を開いた。


  栄嗣、おめでとう。
  優勝は逃しちゃったけれど、とてもかっこよかったよ、栄嗣も「漣号」も。

  あの日、僕は君に告白するつもりだった。
  この空の箱には意味があるんだよ。
  三年前、君に渡せなかったバレンタインのチョコだ。

  ずっと前から、君が好きだった。
  中学の入学式の時から、栄嗣は僕の憧れだった。
  今もそうだよ。君が好きだ。
  だけど、その一方で、僕は君の親友であり続けたい。
  だから、君の望む「仁井部漣」であろうと、思っているんだ。

  もし、この告白が君の望むものでなかったなら、どうか忘れて欲しい。
  次に君に会う時は、僕は栄嗣の親友の漣でいるから。



「…」

これまでの漣の想いに気づかずにいた俺って…

「アホかっ!」

どれだけの想いで漣は俺を見つめ、親友として付き合ってくれて来たのだろう。

「はあ~…」

自分のふがいなさと、漣の告白の嬉しさに力が抜け、俺はその場にへたり込んでしまった。



2へ4へ


漣視点の「バレンタインデー」はこちらからです。 1へ 

漣から見たら、完璧でかっこいい栄嗣なんだけど、栄嗣はすごく普通の男の子って感じでかわいい。
次回は最終回です。



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続・バレンタインデー 2 - 2014.02.21 Fri

2
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柊木栄嗣

続・バレンタインデー 2


翌春、俺と漣はそれぞれに希望の高校へ進学することになった。
漣は地元の進学校。俺は東京の高専へ入学する。
自宅から通学できないことはないけれど、片道二時間程かかる為、俺は学校寮に入ることにした。
一年生は全員二人部屋でほとんどが寮生活は初めてだから、最初はお互いぎこちないけれど、他人行儀している暇もない程に授業や実技が厳しく、お互いに協力し合いながら、付き合いに慣れていく。
俺の選んだ機械工学科は一般授業の他に応用技術の実践の為の準備、レポートの提出、繁盛な校内テストなど、中学時代には考えられないハードさで、正直、自信を失うことも多い。
そんな時、頭に思い浮かべるのはいつだって漣の姿だった。

中学卒業と同時に、ふたりお揃いの携帯電話を買い、毎日のように今日あったことをメールする。
それでも足りない時は、電話を掛ける。
掛ける割合は俺が圧倒的に多く、喋るのも俺の愚痴が多いけれど、漣は真面目に聞いてくれ、落ち込んだり、苛立ったりする俺を宥め、励ましてくれる。

土、日にはできるだけ実家へ帰り、漣に会いに行く。
俺たちの住む住宅地から五分ほど歩くた場所に、小高い山がある。
その山頂までの遊歩道は狭く曲がりくねった坂道で、周りの木々や植物を楽しみながらゆっくりと登って行くんだ。
春は桜の花見、夏は虫取り、秋は紅葉と四季それぞれに楽しめる地元の隠れた名所でもある。
だけど今は初夏で、蒸し暑く、狭い山頂もベンチすらないから人影も少ない。
俺と漣は木造の小さな展望台の屋上に並んでしゃがみ込んだ。
ここからは俺たちの街が一望できる。
天気の良い日は遠くの海岸線まではっきりと見渡せ、爽快な気分になれる。

俺と漣は中学の頃から、この場所がお気に入りで、早朝や夜中にも、ふたりきりで寝転んで空を見上げて過ごすことも多かった。

「なあ、漣。高校生活ってどんな感じ?」
「うん、まあまあかな~。中一の時、同じクラスだった木山とバスケ部の矢内がたまたま僕と同じクラスになったんだ。だからそんなに気を使わないで済むよ」
「ふうん」
「まあ、最初の頃はみんな他所他所しいけど、この間体育祭があってさ。あーゆーのってクラス全員の団結意識が高まるじゃん。それで上手い具合打ち解けあって、今はいい雰囲気になってるよ」
「そっか…良かったじゃん」

良かった、とは言ってみても、なんだか素直に喜ぶ気分じゃなかった。と、言うより、わけのわからぬもやもやしたものが渦巻いて、段々と苛ついてくる。
理由はわかっている。
俺の知らないところで、俺の親友が俺じゃない誰かと親しくしていることが、気に入らないんだ。
馬鹿みたいだけれど…マジで悔しい。
…これって嫉妬って奴なのか?

大体、学校生活っていうのは家族といるよりもクラスの仲間といる時間が長い。
気の合った仲間と友情が深まるのは当然だ。
そんなことわかっていたんだ。
だけど、自分で決めた事なのに、今になって、漣と別々の高校を選んだことを後悔していた。

幼い頃、父の転勤で遠くに離れてしまえば、仲良しだった友達も、時間と共にただの知り合いになっていった。
遠距離の友情は続かないって、わかっていたのにさ…。

「あのさ、漣」
「なに?」
「親友…重く感じたりしたら、やめてもいいんだぜ」
「…え?」
「漣には漣の…新しい生活とか新しい友人とかさ…俺よりもっと気の合う奴が見つかったなら、俺に気を使わなくていいから」
「栄嗣…それって、もう僕は親友じゃないって…言ってるの?」
「違うっ!…違うよ。俺…漣と一緒にA校目指してたのに、俺が勝手に裏切って、地元から離れて…そんで漣が中学の連中と仲よくしてるって聞いて、めちゃくちゃ妬いているんだよ。…ったく、自分で嫌になる。こんな器のちっせい俺って、サイテーだよ。漣に甘えて愚痴ばっかだしさ」
「そんな事…ないよ。僕、栄嗣が愚痴ってくれるの、嬉しいよ。だってそれって栄嗣が僕を信頼して、甘えてくれているからだろ?…僕も栄嗣が僕の知らない学校生活を楽しんでいるのを聞くと、すごく辛くなる時がある。栄嗣はきっと沢山の共通の意思を持った友達に囲まれて、勉強して、一緒に生活しているんだなあ~って、考えたりするとさ。僕が栄嗣の親友でいいんだろうか…って、自信失くすよ。でもね、いつだって栄嗣の一番でいられるように、恥ずかしくない自分であろうって思っているんだ。同じ学校じゃなくても、一緒に居る時間が少なくても、ずっと親友同士、気持ちを分かち合いたい…栄嗣の愚痴や言いたいことを沢山聞いて、栄嗣を理解したい。栄嗣の力になりたい。勿論、僕も栄嗣に愚痴とか弱音とか聞いてもらうことになるけどさ。それはお互い様だよね」
「…漣」
「だから、毎日顔を合わせられなくても携帯で声を聞いたりメールしたりしてさ、今までと変わらないでいたいよ。少し大変かなって思っても、栄嗣が大好きだから…僕は栄嗣の親友を辞めたくない。これって僕の我儘なのかな?」
「違う!我儘じゃないよ。…漣…ありがとな。俺、これからも漣に甘えてもいいか?」
「もちろんだよ、栄嗣。だって僕たち親友じゃん」
そう言って笑う漣に、俺はどれだけ救われているんだろう。


二年生になると寮生活は一変し、一人部屋に移る。
相変わらず寮の掟は厳しいけれど、寮生活にも慣れ、同時にふたりでいたころの窮屈さから解放され、誰もが途端に変なテンションになりがちだ。
何処からともなく異性交遊の噂があちこちで聞こえてくる。

学校では二年生からは本格的な自作機械を製作することになる。
テーマを決めて、それぞれのポジションに合わせ、目的の精密機械を工作していくのだ。
ロボット的な機械を製作するには、色々な専門知識が必要になる。だから基本のアクチュエータやデザインは俺の担当で、人工知能や制御システムなど、機械工学科だけではなく、電気や電子工学科や情報科の学生と意見を交換しながら作り上げていく。
講師は目的の作業と期日を示すだけで、ロボットを一から作り上げていくのは俺たちだけで行うことになる。
示された目的に興味があるグループ同士、自然と仲間意識が強くなり、絆も深くなっていく。
電気工学科の山岡大輔とはとくに議論し合うことも多く、制作の事だけじゃなく、プライベートな話でも盛り上がる。
教師の悪口やら、エロ話やら、付き合っている彼女の話など…。
俺は恋愛にはあまり興味がなかったけれど、何事も経験は大事だと、都合よく同じクラスの子に交際を申し込まれ、付き合うことにした。

高専には女子生徒は少なく、貴重な存在でかわいい子はもてはやされたりするけれど、元々男を漁りに来ているわけもない目的を持った理系の女子であり、男っぽい子が多いから、こちらもあまり女子を異性の目で見る時は少ない。
さりとて、彼氏の居ない女子は僅かだ。
校内では一応男女交際は禁止されているし、学生寮も男女の行き来は隔絶されている。それでもこっそり夜這いを仕掛ける奴も多く、それで交際を始めたカップルもいると聞く。

俺も交際を求めて来た女子とはあまり喋ったこともなかったけれど、高校二年にもなればデートぐらいは当たり前だろうと何回か映画や買い物へ誘ってみた。
キスもしたことはしたけれど、そんなに心に残る程でもなかった。

或る日、観たかったSF映画に誘って、一緒に観てからの帰り、カフェで映画の感想なんかを喋っていたら、彼女が突然不機嫌そうな顔をした。
「E子ちゃん、映画面白くなかった?」
「…柊木くんってさ、思ったよりもつまらないんだね」
「え?」
「見た目があたし好みだったから、いいなって思っちゃって、二か月つきあってみたけど、…なんかさぁ、トキメキ感がないんだもの。がっかりしちゃった」
「…」
「悪いんだけど、あたし達、今日限りでつきあうの、やめにしない?」

はあ?つきあうのやめにしない?…は、まだいいとして…。
つまらない?…トキメキ感がない?…それって俺の事?
それって俺が残念な人ってハンコ押されたようなもんじゃん。
ちょっと、ひどくね?そっちから交際を申し込んでおいてさ。

今までそんなことを言われたことがなかったから愕然となった。
高校に入るまでは、俺、クラスの人気者だったんですけど…

唖然となりすぎて言葉がでない俺に、彼女は畳みかけた。
「柊木くんってさ、恋愛したことないでしょ?」
「え?…」
「そんな感じだよ。相手への思いやりとかさ、あんま感じられないんだよね」
「そ、かなあ~。俺、人付き合いが悪いとか、言われた事ないんだけど…」
「イケメンだし、それなりに人付き合いもいいし、割と頼れるし…完璧なんだけどねえ…。心はここに在らず…って感じ。つまり、愛されてる感じがしないの」
「そう…ですか…」

別に君を愛したことは一度もないんだけど、と、言い返したかったけれど、色んなダメージが俺を追い込んでいたので、その後も彼女の一方的な言いたい放題で、別れてしまった。


それを山岡に話したら、大いに笑われてしまった。
「おまえねぇ~、二か月もつきあっててキスだけってさ。そりゃ、愛されてないって思うわな~。ちゃんとセックスしてやれよ」
「だってまだ高2だぜ?」
「おまえ、もしかしたら童貞?…って、俺もそうですけど。まあ、なんやかんや言っても、女子は早熟だし、そういう意味でここは相手にも困らないし、向こうは初めてじゃないだろうから、おまえとやりたがったんだと思うぜ?」
「そうなのか?」
そう言われても、俺はE子とセックスしたいだなんて全然思えなかったんだ。
それを言ったら、山岡は「じゃあ、もしかしたら、柊木は男の方がいいのかもしれないね」と、思ってみないことを言いだす。
「はあ?」
思わず上ずった声を出した。
「そんなに驚くなよ。今時珍しくないし…ほら、おまえのクラスの風間と俺のクラスの本田、あいつら付き合っているんだってさ」
「マジかあ?」
「友達でいる分は良い奴らだけどさ、そういう目で俺らも見られていると思うと、気色悪くなる。…って、言ってる俺が一番ダサいんだけどな。彼女居ないし、童貞だし…」と、山岡は肩を落とす。
ゲイだからって彼らを見下すのは間違っている。けれど、モテないからって卑屈になる必要はないだろうと、俺は山岡を励ました。


同性愛か…
そんなこと考えたこともなかったけれど、山岡から言われて、何故か漣の顔が浮かんだ。
俺は漣をそんな目で見たことはなかったけれど、もしかしたら俺の望んでいる親友という絆は「恋」とか「愛」に近いのだろうか…と。


その後、漣と会っていても、E子との話は漣にはしなかった。
どうしても言う気にはなれなかった。

もし、漣に彼女が出来て、俺がその話を聞きたいだろうか…と、思うと、全く聞きたくないと思ったからだ。




1へ /3へ

漣視点の「バレンタインデー」はこちらからです。 1へ 

バレンタインデーの要素が今のところ、全くないですね('ε`汗)
山岡っていい奴で終わるキャラですね((人д`o)




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続・バレンタインデー 1 - 2014.02.14 Fri

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漣11


続・バレンタインデー 1


転勤族の父親の所為で、俺「柊木栄嗣(ひいらぎえいじ)」は、生まれた時から社宅で育った。
社宅というのは、案外仲間意識が強く、すぐに打ち解けあい、家族同然の付き合いになったりする。
だけど、折角仲良くなった社宅の仲間や近所の友人とも、二、三年も経つと別れが来てしまう。
「ずっと親友だからね」と、涙を流して別れた友人も、最初は電話を掛けたり、繁盛に手紙を出したりするけれど、そのうちに年賀状だけの関係になってしまうんだよな。
当たり前に納得しなきゃならない事だろうけれど、俺はなんだが腑に落ちなくて、自分の性格が悪いのかもしれないと、真剣に悩んだりもした。
親の転勤で住む場所が変わるのは、現代じゃどこの家族にも当て嵌まることで、それを不幸なんて思う奴なんていないんだろうけれど、俺はずっと不幸だと感じていた。

だって、俺には親友がいない。
兄弟も居ないひとりっ子の俺には、心を開いて気兼ねなく何でも話せる兄弟のような親友がどうしても欲しかった。
幼い頃は親友が欲しくて、下校の途中、神社に寄り道をし、毎日のように「僕に親友を下さい」って拝んでいたくらいだ。
その願いが適うかも…と思う間もなく、親父の転勤でまた引っ越し…。
家族がようやく落ち着ける持家に住めるようになったのは、俺が小学五年生の春だった。

太平洋側の温暖な気候を持つ新興住宅地での新しい生活は、それまでの、次はどこへ引っ越すのだろうか…と言う不安が消えた所為か、毎日が明るくすべてが楽しかった。

学校生活にも直ぐに慣れ、沢山の友人たちが俺を慕ってくれた。
それまでに引っ越しが多かった所為もあり、俺は自然と人好きのするような振る舞いに慣れ、手っ取り早く信頼を得る為に、テストで良い成績を取り、僻む者たちへの心遣いも怠らず、誰にも好かれる真面目な生徒であるように心がけていた。
「女は愛嬌、男も愛嬌よ」とは、母の教えであったが、実践してわかるありがたい教訓だ。

クラス委員や生徒会委員なども嫌がらずにこなした結果、中学校に入学する際には、新入生代表の挨拶まで仰せつかった。
まあ、俺より勉強ができる奴も、スポーツが出来る奴も居るには居たけれど、先生たちに一番受けが良かった俺が選ばれたのだろう。
だからって自分が偉いなんて全く思えないんだけどね。逆に気に入らない先生たちに対しては徹底的に反論してみたり、意見を通す為にはこちらも戦力を練り、戦闘態勢を整えなきゃならない、とか、中坊らしく息巻いていたりしてね。

友人はみんな俺を支持してくれた。
でも、みんながチヤホヤしてくれる中で、俺はいつも孤独な自分を感じていた。
本当の俺を見せられる親友には、まだ巡り合えていなかった。

友達の中の、たったひとりの最高の友達…それが親友。
恋人よりも固い絆で、夫婦よりも正直に、家族よりも甘えられる…そんな親友なんて、お馬鹿な俺の絵空事なのかな…
だけど、ついに俺は俺の頭に描く親友になるべく権利を持った奴に出会った。

同じクラスで同じバスケ部で、この春、俺の家の近所に越してきた「仁井部(にいべ)漣(れん)」だ。
「漣」なんて、チャーミングな名前に似合った色白童顔の少年。
少し頼りない顔立ちをして、年の離れた姉ちゃんの所為か、甘えん坊なところもあるけれど、純粋で真面目で、誠実で。
くだらない話をしていても、漣の俺の目を見つめる眼差しが、なんとも愛おしくて、大好きなんだ。
ああ、勿論親友としてだよ。
親友への情愛は、見ようによっては恋人への愛情よりも深くて濃いものだと、俺は疑わないんだから。

部活が終わり、ふたり家路まで帰る距離は、お互いの本音を暴露する時間だ。
学校や家での些細な苛ついたことから、怒髪天に来たこと、つまらない自己反省やら、エロ話や、真剣な未来への展望…様々なコミュニケーションは互いの信頼を認め合い、刺激し合い成長していく。

何故だかわからないけれど、やたらと目立つ俺に対して、漣は引っ込み思案の所為か比較的目立たず、いつも端っこでおっとりとしているようだが、俺にとってはなくてはならないパートナーだ。
バスケの試合なんかがいい見本で、ポイントガードの俺の指示に一番早く適格に動くのがスモールフォワードの漣で、パスを受け渡しなどは漣無しでは巧い試合運びが出来なかった。
大して期待されても居なかった俺たちが、獅子奮迅の体で市大会に準優勝したのは、中学時代の一番の思い出だ。

俺と漣はふたりでよく旅をした。
適当に目的地を決めて、チャリンコで走るだけの話なんだけど、方々の坂道を息を切らして走る気分は爽快だった。
漣はどんなにきつくても弱音を吐かず、俺の後ろを離れずに付いてくるんだ。
俺は振り返り、頑張っている漣の姿を確認し、まだまだやれるって頑張れる。

キャンプ場からふたりで眺める大空の青さや、星空の輝きを褒め称え、何時間も「すげえなあ~」と、同じセリフをバカみたいに交わしていた。

漣と居ることが嬉しかった。
俺はひとりぼっちじゃないって感じていた。

お互いに向上できる絆が、俺は嬉しくて、宝物みたいに思えて、漣と一生こうして付き合っていけたら…て、思った。


三年になって、進学する高校を決める時、俺はこの場所から離れた東京の高専を受けることを決意した。
一年前に起きた大震災の二次災害である原子力発電所の事故の復興が、予想よりも遅れていること。その原因が、放射能で汚染された建物の中に人が入れない事。作業ロボットが思い通りに動かなく、作業が進まない…などの深刻な問題を報道で知ったからだった。

技術者の父の影響からか、小さい頃から玩具は車や飛行機の模型が多く、バラして作り変えたり、流行ったミニ四駆などはカスタマよりも、能力の向上を求めたりした。
何事も徹底的にやることが好きだった俺は、いつかは社会に役立つ技術者になりたいものだと漠然とは考えていた。
そして、その目的がはっきりと見え始め、俺が汚染された原発内の作業を的確に行える作業ロボットを作らなきゃらないんだ、と、心に決めた。
出来るなら専門的な学問を早く学んだ方が、自分の為になると思い、俺は心配する母親をなんとか説得し、先生にも願書を受け付けてもらった。
だけど、肝心の漣だけには冬が来ても、高専を受けるとは言えなかった。

漣と俺は地元でも優秀なA高を受験する予定だった。
それは二年生の頃から俺と漣が決めたことで、その頃はまだ漣の成績では危なかった為、漣は俺に追いつこうと必死に勉強し、成績を向上させていた。
「どうしても栄嗣と一緒にA高に行きたい。そして栄嗣と高校三年間を一緒に過ごしたい、その為になら、僕は三時間しか寝ないぞ!」
「おまえはナポレオンか?」
などと、茶化していたけれど、漣の本気は痛い程こちらにも伝わって、俺も一緒にA高を目指していたんだ。
だけどさ…やっぱり、俺は自分の思いを誤魔化したりしたくないんだ。
高校が別々だって、漣との絆が緩むなんて俺は思っていないから…。
きっと、漣ならわかってくれるさ。

そうは言っても、約束を違えて勝手に高専を受験するって言ってしまったら、今まで頑張ってきた漣のテンションを落ち込ませ、最悪A高受験失敗なんてことになってしまったら…と、俺もめちゃくちゃ迷い、ずっと言い出せなかった…。

そして思い切って東京の高専を受験すると、漣に告白した日。
俺は漣に口を挿む暇も与えず、自分の信念をもっともらしく偉そうに口上し、大いに自分に酔いながら自分は正しい道を選んだんだと講釈ぶった。
漣はきっと驚いていただろう。だけど、俺は漣の顔をまともに見る勇気はなかった。
自分の正義感は、結局漣との約束を裏切ったのだから。

俺の話を一通り聞いた漣は、怒りもせずに「栄嗣は凄いね。きっと栄嗣ならできるよ」と、俺を励ましてくれたんだ。
そんな漣の様子に俺はほっと胸を撫で下ろしたんだが、俯いた漣の頬に一筋涙が落ちてゆくのを垣間見て…。
漣は慌てて目を擦っていたけれど、その涙を見てしまった俺は、サーッと血の気が引く思い…。
その後も、漣は「栄嗣を応援するからね」「頑張れよ」と、約束を違えた俺を少しも責めることなく、笑ってくれた。

けれど、その夜、俺は眠れなかった。

俺が考えるよりも、俺は漣を酷く傷つけたんじゃないだろうか…
幾ら俺の想いが強く、それが崇高なものに思えても、高校三年間を一緒に過ごしたいという漣の気持ちが、それに劣っているとは思えない。
その漣の想いを、俺は自分の自己満足の為に、勝手に破ってしまった。
後ろめたいと思いつつも、自分を正当化しようと必死の言い訳で、素直な漣を言いくるめてしまった。

「離れていても親友でいような」なんて、都合のいい言い訳、こっちが勝手に押し付けているだけじゃないか。
そんなの…本当の親友じゃねえよなあ…漣。

翌日の朝、一緒に登校する漣はいつもと変わらなかった。柔らかい微笑みも、少し目を伏せながら「おはよう」と声を掛ける表情も。
だけど、漣の目元は赤く、瞼も少し腫れあがっていた。

俺はもう何も言えなくて…
どうしたら大切な親友の漣を失わずに済むのか…ばかりを考えていた。




2へ


漣視点の「バレンタインデー」はこちらからです。 1へ 


去年のバレンタインに書いた物語の続編です。と、いうか柊木栄嗣視点のお話です。
良かったらお楽しみ下さい。
続きは来週です。二月は嶌谷従兄弟は休みで、この二人の物語で終わるのかな~



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Harmony 3 - 2014.02.13 Thu

猫

3.

「ミナト。なんで…店ん中で待ってねぇんだよ。寒いだろ?」
「だってさ…わざわざハルくんが寒い中来てくれるのに、中で温まってるの、悪いし…」
「…ばか、おまえが風邪引いたら、もっと困るの」
「引かねーもん。…ほら」
「ん?」
「肉まんだよ。おまえ、ご飯食ってねぇかなって思ったの」
「さすがミナト。実は昼も食ってねぇの」
「俺も。だから一緒に食べようって思って買ったの」
「うん。じゃあ早いとこ帰ろうぜ」
「うん」

「…傘一本しか無いの?」
「うん。ミナトと相々傘したかったの」
「ほんと?ふふ…」
「ほら、濡れるからもっとくっ付こう」
「別に雨じゃねぇから…」
「くっ付いた方があったかいだろ?」
「うん…あっ、忘れないうちにあげとくわ。はいコレ」
「何?」
「チョコ。バレンタインだから」
「そうか…そうだった。バレンタインだったか…」
「やっぱ、気が付いて無かったかぁ」
「全然忘れてた」
「でもコレさ、今、ここのコンビニで買ったの。だから高級じゃねぇの」
「いや、嬉しい。ありがと…」

「ミナト、なんか…ごめんな」
「…ハルは、謝らなくていい」
「いや…ミナトがなんで怒ったんか、俺さ、よくは覚えてなくてホント申し訳無いんだけど、ほったらかしにしてたのは事実だから、俺が悪かった」
「…いいよ」
「良くねぇし…大体一週間も何の連絡もしねぇなんて…ゴメン」
「うん」
「淋しかった?」
「…ん」
「ミナト?」
「…すげぇ、淋しかった」
「…うん」
「ミナト、頬っぺた冷てぇ…」
「ハルくんもね」

「ミナト…俺の駄目な所が嫌なら、我慢できないって思う時とかさ…あったら、怒っていいから。俺、ちゃんと努力はすっから」
「いい、し…そういうとこも含めてのハルカだと思うし、俺もおまえにどうこう言えたもんでもねぇし…ねぇ、直したくても直せねぇ所って人間誰しもあるって思わねぇ?」
「うん」
「なんかさ…悪いとこ一杯直して、完璧な人間になったら…なんか凄い事でもあるの?神様からご褒美でも貰えんの?」
「…わかんねぇな」
「完璧な人間ってさ、只の…物凄い自己中なだけって気がすんの。要するに超マニアック人みたいな…」
「うん…言われてみればそうかもなぁ」
「それはそれで…まあ、素敵じゃん?だけどさ…なんかさ、まあ、どっか駄目なところがある方が、味があるってかさ。完璧な人間になんてなんなくていいやって俺は思うわけ。だから、俺は…今のハルカのままでいいって、さ…」
「…」
「そう言いたかっただけなん…けど…」
「うん…俺も今のミナトで、いいし…」
「…で?」
「…が」
「ん…ふふ」
「ほら、家着いた」
「やっぱ外は寒いな」
「早く風呂入ってあったまろ?」
「その前に肉まん食べたい」
「ん…ミナト、ちょっとね」
「ん?」

チュ…

「大好きだよ」
「…俺も」
「チョコありがと」
「うん」
「嬉しかった」
「俺も…ハルくんに会えて嬉しかった」

「雪積もるかな?」
「積もったら雪だるまでも作る?」
「うん…でも、まあ、それよかミナトとイチャイチャしたいかな」
「…お、俺も…」


手を握りあった瞬間の、お互いの指先の冷たさに顔を合わせて驚き、そして同時に微笑んだ。
冷たさもこうして握り合っていれば、ぬくもりに変わる時が来ることを、ふたりはずっと昔から、知っているんだ。





      終



2へ

ハルミナはいつもこんな感じなんです(*'ω`*)ゞ

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次回は「バレンタインデー」の栄嗣と漣のお話の予定です。お楽しみに。


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Harmony 2 - 2014.02.12 Wed

haruka.jpg


2.

ミナトと随分話してない。顔見てない。触ってない…と、気付いたのは、ほんの少し前で…。
えっ?会ってねえって?…
え~と、どんくらい経ってるだ?
…クソッ、わっかんねぇ…

駄目だ。
ここんとこほとんど寝てねえから、今が何日かもわかんねぇし。
周りを見回すと、辺り一面、特にテーブル周辺の汚さに閉口しながらも、今更ながら驚いてため息を吐く。
はぁ~…つくづく俺は駄目な奴だ。
日頃から常識が欠けてんのは認めてる。
それがこんな風に、制作期間に入ると半端なく酷い状態に陥る。
ホントに良く生きてられんなぁって思う。
半分以上はあいつらのお蔭だとわかってるけど。
そろそろ世間の空気吸わないと、マジヤバイか…

で、なんだ?
そう、ミナトだ。
…あいつ、いつ来たっけ…
えーと…ミナトが来て、なんか色々愚痴ってて、そんで、ひとりでキレて…出てった。
それきり…連絡取ってねぇ。
普通なら俺がしなくても、ミナトの方から電話なりメールなり、してくんのに…
なんか俺、あいつに悪い事したかんな~。
…なんか…
言った気が…
しない訳でもない…。

…ヤバイ…
酷い事言ったか、俺。
あの日は特に俺、向こうの世界に行っちゃってた気がする。
意識があんまり定かじゃなかった…
やべぇ、全然覚えてねぇ。
記憶もなんかあやふやだ…
あいつを傷つけた?
ひぃ、ふぅ…一週間もほっといた?
…ひでぇ…
ここ暫く頗る平穏だったし仲良かったから、安心してた。
つうか慢心?


…今何時?
…十時二十分…まだ寝てねぇよな。
よっしゃ、電話だ!

即効携帯を開いてミナトを呼び出す。
…驚いた事に、1回目のコールが鳴るか鳴らないかの間に通じた。

「ミナト?」
『…ハルくん』
「あ…今、どこ?」
『…外』
「外って…」
『歩いてんの』
「ひとりで?」
『うん…』

俺は立ち上がり、窓を開けベランダに降りた。
暗闇の中、舞い散る雪の白さにドキリとする。
手を伸ばして、幻ではない冷たさに触れた。

「雪…降ってんじゃん」
『ね、キレイだよね』
馬鹿、キレイという前にさ、
「寒いだろ?おまえ風邪引くし」
『大丈夫だって。それよりさ、おまえの方が…』
「えっ?」
『風邪引いてない?』
「いや、引いてねぇけど…ミナト、おまえどこにいんの?」
『…あのね』
「うん」
『こっからね、ハルくんのマンション、見えるよ』
「…」
『いつものコンビニのね、灯りまでねぇ…五十メートルぐらいのとこ』

見慣れたコンビニの看板は見えたけれど、辺りにミナトらしい人影は見つけられなかった。
「ミナト、コンビニで待ってろ。すぐ行くから」
『いいよ。寒いし…』
「いや、行くし。待ってて?」
『…うん』
「じゃあ」
『あっ、ハル?』
「なに?」
『…ごめんね』
「ん?」
『うん。じゃあ待ってる』
「うん」

急いでジーパン穿いてジャケットとマフラーを掴んで玄関のドアを開けた。
外を見て気付いた。
そっか、雪…
玄関に置いてある傘を取り、ドアを閉めた。

エレベーターのボタンを押して考える。
何故ミナトが謝ったのか、そこが引っかかった。
たぶん…十中八九あの時の、ミナトが怒って出て行った時のことを指すのだろう。
生憎と俺の中では、記憶に残るほどでも無かったんだ。
…にしろ、ミナトがそのことをずっと気に病んでいたとするなら、なんにも考えていなかった俺の方が謝るべきなのかも知れない。
全くもって、俺って奴はいつもこれだ。
ミナトの優しさに甘えっぱなし。
何でも許してくれるからって、それに胡坐掻いていたわけでもねえんだけど…。

駄目な自分を責めつつ、俺はミナトの待つコンビニへ走った。

コンビニの外、建物の角の隅に立っている影を見つけた。
その影が…ミナトが、俺に向かって手を振ってくれている…。



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Harmony 1 - 2014.02.11 Tue

バレンタインデーも近いので、今日から三日間、「Harmony」という小品をお送りいたします。

久しぶりのハルカ、ミナトのお話です。

minato.jpg


Harmony



二月半ばの寒い夜だった。
ついこの間までは、あったかくなりかけていたのにね。
今夜に限ってこんなに寒くなるなんて、神様も粋な計らいをするもんだね。
恋人達があったかくなる方法はひとつしかないからね。
いい口実ができる。

急な寒風にひとしきり身震いして、急いでマフラーに鼻を埋めた。
舗道を歩けば、明るいウィンドウの前にパタパタとはためく旗が目に留まった。
バレンタインデーの宣伝文句だった。
まだ開いてるお菓子屋さんを覗けば、ちらほらと女性のお客さんが見える。
みんな嬉しそうにガラスケースを覗いては、指差して注文してる。
…いいよな。幸せそうで…

ふと、空を見上げた。暗闇の空を見つめた。

ずっと…思っていた「好き」をチョコや贈り物に込めて、この日に告白する女の子達。
この空を数え切れないほどの思いが、飛び交っているだろうね。
みんな、うまくいくといいんだけどね。

「寒い…」と、呟く。
誰も聞いてはいない。
雪でも降りそうな寒い…寒い夜。



一週間前に喧嘩した。
些細な事で。
発端は俺の方。

その日、仕事で嫌な事があった。前から苦手だった人にキツイ事言われてけっこう凹んだ。
ハルカはその場には居なかった。だから夜、ハルんちに行って愚痴った。
かなり酷い口調で。
ただ「気にすんな」と、言って欲しかっただけだったんだ。
それで俺の気は済むはずだった。
なんだけど…その日に限っては、ハルカの方もなんだか苛立っていた。
創作中だと判っていたし、だから俺が来るのが間違ってたし、愚痴なんか言わなきゃ良かったのにさ。
判っていたはずだったけど…
けど遅かった。

俺が一気に吐露した後、ハルカは不機嫌極まりない態度で煙草を灰皿にもみ消しながら、
「んな事、俺に言っても何も解決にはならねぇだろうが」から始まって…そんで…「いちいちそんな事で落ち込んでて何が面白いんだよ」とか「大体おまえの方にも問題があんじゃねぇのか?」とか「そいつの言ってる事も一理ある」とか…極めつけは「ミナトは人の忠告とか聞いても全然直そうとしねぇから成長しねぇじゃん」と、言い放たれた。
…そこまで言わなくてもいいじゃん、って、俺も本当に腹立って、憎くなって、
「わかった。もうハルには何にも言わないから」って、吐き捨てて家を出た。

あれからずっと会ってないし、連絡も取ってない。
製作の引きこもりは今に始まった事じゃないから、一週間会わないなんて事も珍しくはないんだけどね。
それでも電話とかメールとかのやり取りは必ずしてたから、アキラやカイもハルカの様子は俺に聞いて来る。でも、マジでこの一週間のハルに関して、俺は知らないし、だからって「知らない」って言えば「おまえらケンカでもしたの?」って絶対詮索されるから、それもなんだか気が引けてさ。
だから適当に「大丈夫みたい」と、誤魔化した。

実際のところは知んない。
…知らないよ。ハルカの事なんかさぁ。俺別に嫁さんでもなんでもねぇもん。ご飯食べてなくったって、風邪引いてたって、俺の知った事じゃねーもん。


…寒い
…クソ馬鹿
…せっかくのバレンタインなのに…おまえが居ないんじゃ意味ねぇし…

会いたい…のかなあ…
…マジかぁ?

不思議と足は勝手にハルカの家に向かって歩いていた。
なんだろ…
一人で笑ってしまった。
ねぇ、俺って…そんなにハルに会いたいの?
そんなにハルのこと好きなの?
…チョコも持ってねぇよ。
会う理由なんてあんの?
仲直りの頭下げに?
もっと素直に、ただ会いたかったって言えばいいの?

足を止めて見上げた空から、雪が…頬に落ちた。


最初に降る雪に出会いたい。
神様の優しさに触れたみたいに感じたい。
もっと…優しくなりたい。
なんでも許せる人になりたい。
人の汚さも浄化できる様に。
人の情けを隅々まで気がつける様に。
ねぇ、ハルくん。
おまえ元気?
風邪引いてない?

ポケットに突っ込んだ携帯を握り締め、出してみる。
開けると液晶が輝き、そこだけ光が集まったみたいに輝いた。

「ハルくん」と、呼んでみた。
何も言わない携帯をじっと見つめる。
勇気を出して掛けてみようか。でも、仕事中かも知れない。迷惑かも知れない。
俺の声なんて聞きたくないかも知れない…
それでもねぇ…

おまえに会いたいんだよ。だから…

ただ会いたいとそれだけ言おう。
断られてもいい。俺の想いを伝えたいだけ。
素直な我儘を通したいだけ。


2へ

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「破壊者のススメ」 5 - 2014.02.07 Fri

5
イラストはサムネイルでアップしております。
大きく見たい方は、イラストをクリックしてくださいね。


katana のコピー


5、

翌年の春、誠一郎は無事志望大学へ合格した。
東京とは遠く離れた京都での初めての一人暮らしに、傍目から見ても浮かれている誠一郎が、俺は気に入らない。
晟太郎伯父も由ノ伯母も、我が子にはとことん甘く、「寂しくなるわね…」と、本音を漏らしながらも、誠一郎に御小言なんか一言も言わないでいやがる。
「おばさん、もっと厳しく言わなきゃ駄目だよ」と、俺が嗾けても、「だって卒業しちゃったら、誠ちゃんは嶌谷の会社を一生背負わなきゃならなくなるんだから、大学くらいは大目を見て、自由にさせてあげたいじゃない」などと、柔らかい口調で恐ろしい事を言う。
全くもって、誠一郎の未来を思いやると、ゾッとするような絵図しか見当たらない。


誠一郎が京都へ引っ越す当日は、俺と由ノ伯母は手伝い人として同行した。
御所近くの町屋と近代ビルが混在する細道の新築五階建てのマンションが、誠一郎の秘密の花園になるわけだ。
1LDKへの引っ越しを一日掛かりで三人でなんとか片づけ、外で夕食を摂り終わると、由ノ伯母は嵐山近くにある実家へ一晩お世話になるからと、帰ってしまった。

その後ろ姿を見送りながら、誠一郎はぽつりと言う。
「宗二朗もお袋と一緒におばあさまのお屋敷へ行けばよかったのに」
「縁もゆかりもない家に?それよか誠の方が、挨拶でも行ってくればいいのにさ。一応はあんたの身内じゃないか」
「別に今更、懇意になる必要はないからね。それに…おれに関わってもあちらさんに良い事なんかないさ」
「勝手だな」

公家の出を誇りとし、成金の嶌谷家を見下す態度を隠す様子もなくひけらかす由ノ伯母の実家とは、今までも然したる交流はなかったから、祖母とは言え、疎遠になる誠一郎の気持ちもわかる気がする。

近くのスーパーで必要な買い物をし、ほどなく俺と誠一郎は新しい部屋へ戻った。
疲れたからと風呂に入り、お互い早々に寝る支度をした。

Tシャツとスウェットを貸してもらった俺はあくびをしながら、当たり前のようにシングルのベッドへ潜り込んだ。そして、ふと佇んでいる誠一郎に気がつく。

「あ、ごめん。俺のベッドじゃなかったね」
「いいよ。宗二朗はベッドで寝なさい。おれは居間のソファで寝るから」
「一緒に寝ようよ。つめれば寝れるよ」
「…無理だろ?宗も小さい頃のままじゃないし、ふたりで寝るには狭いよ」
「ああ、心配なんだ。一緒に寝たりすると、俺に欲情したりしてさ、やばいんだろ?」
「…」
俺の挑発に誠一郎は何も言わず、ベッドに横になる俺から少し離れた端に腰かけた。

「宗二朗がおれの事をどう思おうが構わないけれど、おれはおまえを傷つけたくないんだ」
「だから、俺から離れるためにこんな所へ来たの?それとも親の目を盗んでやりたい放題に遊ぶため?」
「…」
「大体誠一郎はいつからホモセクシャルになったんだよ?以前は一過性のもので、時期が来たら卒業して、普通の大人になるって言ってなかった?」
「…あれは嘘だよ。おれは…一度も女性に欲情したことはない」
「そ…なの…」

誠一郎の言葉は、それなりに衝撃でもあった。
誠一郎の告白を聞くまでは、俺は誠一郎が真正のゲイだとはあまり信じていなかった。
だって、俺は誠一郎が好きだけれど、女のエロ雑誌やビデオで抜くことはあっても、男の裸を見て興奮したことはない。それが普通だと信じ、世の中の男もそんなものだろうと、思い込んでいた。

「誠だって…一回女の人とセックスしたら、変わるかもしれないよ。どう見ても女の子の方が、かわいいし、触り心地だって良さそうだしさ、第一入れたら気持ち良さそうじゃん」
「…宗二は、ノーマルで良かったよ。俺は駄目だ。出来そこないなんだ…」
「…」
「女性が嫌いとかじゃない。ただ、セックスの対象に見れないだけだ。致命的にね。…おれは男にしか性欲を感じない。サイアクなのは、恋愛感情がなくても、好みの男を見たらやりたくてたまらなくなるってことだ。…軽蔑してくれていいよ。おれは…欠陥人間だ。こんな奴が、多くの人を抱える嶌谷財閥の後を継がなきゃならないなんて…罰ゲームもいいとこだろ?社員だって可哀想さ…そう思わないか?宗」
「…」
自分をとことん卑下し、俺に告解するかのような誠一郎を、どう慰めていいのか、十四にも満たない俺にはわからなかった。

「俺…誠一郎とセックスしたいよ。大好きだから。それが悪いことだとは思えない。俺は女を抱けるかもしれないけれど、それと誠への想いは違う」
「宗…」
「誠は俺のだって約束しただろ?男とセックスしたいのなら、好きにやってもいい。でも誠は俺のもんだから。…どんな誠でも、俺は絶対に誠を見捨てないから。だからジョー伯父や由ノ伯母さんを悲しませちゃ駄目だ。誠は嶌谷家の跡取りにならなきゃならないんだ。俺が誠の片腕になるから…」

誠一郎は俺の言葉に微かに笑い、俯くと独り言のように「もう、遅いよ」と、呟いた。
そして、部屋の灯りを消し、居間へと消えた。

暗くなった部屋に一人残された俺は、しばらく眠れなかった。それでも昼間の疲れにいつの間にか眠り、そしていつもと同じ夢を見た。

幼い頃から夢はよく見た。
別れた父の面影や、ふたりで暮らしていた頃に夜中こっそり泣いていた母の横顔や、一度しか会えなかった祖父の手のぬくもり…だか、誠一郎を好きだと認識してからは、俺の夢には誠一郎ばかりが出てくる。
いつだって俺が好き勝手に誠一郎を犯しているんだ。誠一郎は気持ち良いと声を上げ、何度も俺の名前を呼ぶんだ…
単なる思春期の欲望には違いないだろうけれど、天然色のはっきりとした映像に、俺は興奮し、声を上げ…目が覚める。
夢精をした後の何とも言い難い情けなさに、嫌気を差しながら、俺はトイレに向かう。
居間はぼんやりと暗かったけれど、スタンドの灯りがソファに眠る誠一郎の影を浮かばせていた。
俺は起さないように静かにソファに近づき、誠一郎の寝顔を覗いた。
眠る誠一郎の横顔は、見惚れる程綺麗だった。

誠一郎は晟太郎伯父と由ノ伯母の見目の良いところをうまく合わせた整った上品な面差しだった。
黒目がちな二重瞳、くっきりと弧を描いた眉、我を見せない鼻梁とふっくらとした口唇が繊細な笑みを浮かべ、小さなえくぼを見せる頬…。
そのすべてが俺には無いものばかりで、嫉妬よりも憧れを抱くものだった。

「段々と酷薄気な笑みが父親に似てきたのね」と、俺を見て苦笑いをする母は、悪びれも無く俺に言うけれど、その度に、「おかーさんが産んだんじゃないか」と、責めた。
だけど母はさっきとは違う笑みを浮かべ、「あの人のそういう冷たい美貌に惚れたのよ」と、言い、また「宗二朗は父親のようになっちゃ駄目だからね」と、寂しげに呟くのだ。

誰も彼も勝手三昧だが、俺は気にしない。
このツラも外見も俺は可愛がっているし、俺とは正反対の誠一郎を心から愛しいと思える自分が気に入っている。
だが、誠一郎は自分の性癖を罪だと言い、自己嫌悪している。
なぜそんな風に自分を責めるのだろう。あの悲痛とも言える孤独癖は一体なんなのだろう。
男しか性欲を持てないことが、罪になるはずもない。そりゃ、伯父や伯母は真実を知ったら驚くし、嘆きもするかもしれないが、それを罪とは言えまい。

少しだけ口唇を開け、ソファに眠る誠一郎の瞳が震え、ふと涙が零れた。
「誠…」
切なくなり、俺は跪き、誠一郎の口唇に口づけた。
誠一郎はゆっくりと目を開け、俺を見た。

俺は再び誠一郎の口唇に触れ、左手で誠一郎のTシャツを剥いで、肌を撫でた。下腹部からそのまま誠一郎自身へと手を伸ばした。
まだ勃ち上がっていないものを掴むと、誠一郎は俺の手を止めた。
「やめろよ、宗…」
「誠が好きだよ。本気で好きだから、欲しいって言っているんだよ」
「…」
眼を開けた誠一郎の瞳から、また涙が流れる。
「どうして泣くんだよ、誠。俺が誠を守るって…そう言ってるだろ?誠は俺のものになるのは嫌なのか?」
「…宗は…綺麗だ。おれなんかの為に、おまえが汚れちゃ駄目だよ」
「俺より誠の方が…」
ずっと綺麗に決まっているじゃないか…

横になったままの誠一郎は両腕を広げ、俺の背中をゆっくりと、抱く。
「いいかい、宗二朗。君は豊かで素晴らしい子なんだ。おれなんかと比べられない程の頭脳や感性に優れ、どんな世界でも己を壊さずに、生きぬくことができる。…だから、僕や嶌谷家に縛られるなんてつまらないよ。君が自由に飛び立る様を、僕は仰ぎ見ているだけ…。僕には羽ばたいていく宗二朗の姿が見えるんだ…」
「誠…」
「宗は…おれみたいになっては駄目だ。絶対に、こちら側に来ちゃ駄目だよ…いいね」

穏やかな言葉とは裏腹の俺を抱く誠一郎の腕の強さに、俺はもう何も言えなくなってしまった。
誠一郎の孤独の穴を、俺が埋めることはできないの?

翌日、俺は、「誠一郎の傍に居られなくても、俺は誠を諦めなし、今度会う時は、絶対に誠を俺のものにするよ」と、言い残し東京へ帰った。

あの頃の俺はまだ誠一郎の本当の孤独をわからずに、独りよがりの愛情を振りかざしていたのだろう。


中学二年生になった俺は、誠一郎を抱く為にも早く大人になりたがった。
中学ではラブレターや交際の申し込みも多かったけれど、清らかな交際などを望んでいるわけでもない俺には、14,5の女子を相手にはできない。
できれば、それなりの経験をした大人の女性がいい、と、思っていた。
そのチャンスが夏休みに巡ってきたのだ。

その頃、俺は本格的な武術を習い初め、発情期の憂さ晴らしとばかり、電車で30分もかかる道場へ、週三回ほど通い続けていた。
或る日の宵、近道に使う酒場の多い裏道を歩き、駅へ向かっている途中、喧騒の中、女の悲鳴が聞こえた。いつもの事だと気にも留めない俺だったけれど、その日は俺も虫の居所が悪かったのだろう。本気で木刀を振り回したかった。
悲鳴のする方へ走って向かうと、四人のチンピラに抑え込まれ、強姦されようとしている女が必死にもがいている。
ワンピースも肩から剥され、片方の乳が見えていた。
勿怪の幸いとばかり、俺は木刀を構え、四人の強姦魔に本気で振り下ろしてやった。
チンピラどもの情けない悲鳴と骨の砕ける鈍い音が同時に狭い袋小路に響く。
四人が蹲っている様を見届け、俺は女に「逃げるぞ」といい、女の腕を掴み走って逃げだ。

「あいつらの仲間が追っかけてくるかもしれないから、どっかに隠れた方がいいと思うけど…ねえ、あんた、いい場所知らねえ?」
俺の言葉に女は少し考え、「あれぐらいしか思いつかないわ」と、ほんの数十歩先にあるラブホテルを指差した。
「OK、そこへ逃げよう]

全くもって願ったり、叶ったりだ。
彼女は「助けてもらったお礼は何がいい?」と、尋ね、俺は「君とのセックス」と答えた。
そういう訳で、その夜、俺は無事童貞を卒業した。
助けた女性は亜子と言い、十九歳の音大生だった。
彼女は初体験の俺にとって文句のつけようのない指導者で、俺は一晩でそれなりの技巧者の合格点をもらえることができた。

彼女との縁は深く、この先も音楽を通して付き合いを続けていくことになるが、俺の初体験の相手だということは、ふたりだけの秘密である。




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ふたりがチラリと登場する「Green House」はこちらからどうぞ。大概おっさんですけど((* ´艸`))
目次へ
登場するのは主に凛一編だけです。

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