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2015-01

銀色のRay 15 - 2015.01.28 Wed

15
イラストはサムネイルでアップしております。
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アーシュ眼鏡-1-2


15、

 店から離れようとした時に、アーシュから連絡を受けた知り合いの公安特殊部隊の人が数人の警察官を連れて酒場へと乗り込んできた。
 一通りの説明をしたアーシュは「後は任せた」と言い、その酒場から離れた。
 すでにセシルはアーシュの腕から、俺の背中に背負らされ、俺はセシルを背負ったままホテルまで歩いて帰った。
 重さに慣れず、腰を曲げながら歩く俺にアーシュは「そうそう、こういうのは魔法を使わずにちゃんと己の力でやる遂げることに意味があるんだぜ。まあ、がんばれよ~。おまえが見つけた子なんだから、責任があらあなあ~」と、面白がって茶化す。
 言われなくても、セシルの世話は俺が全部やってやる。
 だって…
 俺の背中に負われたセシルは、意識が朦朧なのに俺の首を締めつけるほどの力で両腕を巻きつけて「助けて…誰か…」と、何度も苦しげな弱った声で繰り返すんだ。
 こんな可哀想な子を誰も救わなかったのかよ…と、俺はこの街の大人たちを悉く憎く思う。クナーアンの星だったら…サマシティの街だったら…どんな子供だって、こんなになるまでほっとくわけないのに…。
 セシルを犯した奴ら、全員死ねばいい…
 と、思った瞬間、ついさっき目の前で死んでいた男の姿が頭に浮かんできた。
 …本当にあれで良かったのだろうか…
 そりゃ、確かにセシルを苦しめた奴だけど、あんな形で死んでしまうほどの罪があったのだろうか…

「ほら、着いたぞ。…レイ、ぼけっとしてないで、セシルを風呂に入れてやるから、急いでバスタブにお湯を入れてくれ」
「う、うん、わかった」
 ホテルの部屋に帰り着いた俺達は、まずセシルを風呂に入れることにした。
 泡立つバスタブの中に朦朧としたセシルを二人がかりで念入りに洗う。身体を清浄にしてやることは、心の傷を癒す第一の治療になるのだと言う。
 洗い終えたセシルに少しずつホットミルクを飲ませながら、アーシュはセシルの身体の傷を魔法で癒していった。
 セシルはアーシュに触れられる度に「打たないで下さい」とか「なんでもするから殺さないで」とか…朦朧とした意識のままブツブツと呟いていた。
 その姿があまりにも可哀想で、俺はセシルを見ているうちに涙が止まらなくなってしまう。
「大丈夫だよ、セシル。なにもしないから安心してお眠り」
 アーシュの言葉にセシルは何度か瞬きをした後、そのまま寝入ってしまった。

 アーシュは俺の方を振り向き、呆れた顔で溜息を吐く。
「これくらいでおまえが感化されてどうするよ。おまえが見つけたんだぞ。同情じゃこの子は救えない。わかっているな」
「…うん」
「じゃあ、まず鼻水を拭け。それからホットミルクだ。ブランデー入りのな」
 アーシュが差し出したカップを一気に飲み干して、俺は深く息を吐く。

「これからあの子をどうするか、考えたか?」
 アーシュは酒に弱いから、なにも入れないホットミルクだけを飲む。
「…俺ができる事なんて…あの子の傍に居る事ぐらいしかないけれど…それだってアーシュや学園のみんなの力を借りるしかない。だから…お願いします。あの子を学園に置いてあげて下さい。俺が…セシルの面倒を見るから…」

 俺は天の王学園で生活する為の条件が、とても難しい事を知っていた。魔力を持つ者やカリスマ性の備わったイルトであることは当然だが、それなりの学費や生活費だって必要だ。
 俺だって、アーシュの保護がなけりゃ、ただの孤児でしかない。
 セシルの面倒をみたいって言い張る事が、俺の我儘だってわかっているから…。
 だから、俺はアーシュに頭を下げて頼むしかないんだ。

「おまえが面倒見るっていうんなら、まあ、いいさ。セシルはアルトではないが、カリスマ性の能力は充分備わっているよ。おまえがそれだけ感化されるんだからな。天の王の生徒になる資格はあるだろう」
「…」
「…おまえにだけあの子の声が聞こえたのも、何かの縁(えにし)なんだろうね。俺も昔…セキレイを見つけた時、運命の相手だって思い込んだものさ。おまえにとってセシルがそういう相手なら、俺が反対する道理でもねえし」
「…うん…ありがとう」
「だけどな、レイ。あの子がこれまで生きてきた過去は、かなり厳しいものがあるし、それを忘れさせるための魔法が必要だ。だから、おまえはここであった事は当分の間、セシルには話すんじゃないよ。あの子がマトモに生きていくには清浄な環境が必要だ」
「わかりました。絶対言わない」
「うん、良い子だな、レイは」
「…」
 俺はふと感じた。
 穏やかに笑いながら俺の頭を撫でるアーシュはこんなに優しいのに、どうして躊躇もなく人を殺せるんだろう。

「なんだ?何か聞きたいことがあるのか?」
 アーシュは俺の疑問をすでに感じ取っていた。
 きっと話さなくてもアーシュは俺が何を聞きたいのかを知っている。
 でも俺が聞かなきゃ、アーシュは答えないだろう。
 だから俺は俺の意志でアーシュに問わなくてはならない。

「あの、さ…あの男、死んじゃったよね」
「さっきのセシルを犯してた奴?」
「うん…。助けてもらっててこんな事言うのは変だと判っているの。でも…なぜ殺しちゃったの?アーシュの魔力なら殺さない選択もあったはずだ。なのにアーシュはあの男を死なせた。勿論、一番悪いのは俺だ。俺が力足らずだったから、アーシュに手を汚させた。…でもあの男が死ぬほどの罪を犯したのか…俺には疑問なんだ」
 アーシュはコップをテーブルに置くと、俺の前の長椅子に身体をゆったりと預け、両手を組んだまま、俺を見つめた。

「なあ、レイ、こういう神話を知っているか?天上には命を司る神様が居て、毎日毎日生まれてくる命と死んでいく命を天秤に乗せて、釣合が取れるよう、ちょうどいい具合に量っているんだとさ。少しでもどちらかに傾くと、必要でない命も生み出すし、死ぬ運命じゃない奴も死なせてしまうんだとさ」
「…」
「しかしこの御伽話には矛盾点が多い。地上の命は一定ではないし、戦争や災害で激減したり、医学が発達して寿命が延びたり…なあ~。だがこの話の根幹って奴はつまり、命の重さは誰も彼も同じって事なんだ。偉い王様も善人も極悪人もみんな同じ重さのひとつの命ってわけだ。わかるか?レイ、この話の重大なミスって奴が」
「…」
 アーシュの話は興味深いけれど、いつだって何層にもからくりがあって、ひとつの答えが出ても、また次の問題が用意されていることが多い。
 だから命の重さが同じってことと、あの男が死んだことがどう繋がるのが、俺は必死に考えなきゃならない。
 だって、答えを導き出すのは、結局俺でしかないから。

「…本当は命の重さは違う…ってことだと思う」
「そうだなあ。天上の神さまにとっちゃ善人でも悪人でも同じひとつの命でしかないんだ。クナーアンの俺の目線ってことだな…。だが地上の俺達にとっちゃ、自分の大切な人が一番守らなきゃならない存在で、それ以外の奴らの命とは比べ物にならないんだよ。目の前にどんなに素晴らしい聖人がいようとも、自分の恋人とどちらかを選べって言われりゃ、当然恋人を取る。それが人間の情だと俺は思う。…あの時、俺はレイを守りたかった。あの男の過去がどんなに酷いものでも、どんなに善人であろうと、俺には関係ない他人だ。まっさらに言えば、あの状況で俺はあの男を許せなかった。だから殺した。なぜなら、俺には殺す力も、その罪を背負う覚悟もあるからな。…まあ、神さま業をやってると色んなことに出くわすものだよ。クナーアンみたいなぬるま湯のような平和ボケした星でも、争い事や命のやり取りなんて相当なものさ。イールは法の神さまだから平等に裁くのが好きだが、俺は好みで決着をつける。つまりどっちがより大切に感じるか…だ。俺にとっては天秤に掛けてみたらレイはあの男よりも、随分と重く傾いたのさ。だから気に入らない奴を殺した。これが正しいかどうかなんて、誰もわからない。あの男を生かしておきたくなかったのは、俺の身勝手だろうしな。まあ、ついでに言えば、天の神様が困らない様に、あの時死ぬ命をちゃんと天秤に乗せてやっただけさ」
「…」
 違う…。アーシュは身勝手なんかじゃない。
 打ち砕く、そして撃たれる覚悟を知っているんだ。
 大切なものを守る覚悟は、自分が強くならなきゃ持つ権利なんてありはしない。
 俺はセシルを守る為に、どんな覚悟もしっかりと育てなきゃならないって事なんだ。

「アーシュ、俺、頑張るよ。セシルを守れる男になれるように…頑張る。そして大切な人たちを守れる立派な魔術師になりたい」
「その言葉、イールが聞いたら喜ぶな。でもセシルはクナーアンには住めないからな。それも承知しろよ」
「…わかってる」
「それもまた、先の話だ。今はセシルの為に強くなれ、レイ」
 俺は黙って頷いた。
 アーシュはニッコリと笑ってくれた。

「さあてっと…俺はこれからセシルを起こして過去の話を聞きだす。そして彼の暗い過去に霧をかける魔術を施す。おまえはそこでじっとしてろよ。同情してもいいが、くれぐれも俺の魔術に惹きこまれるな。これ以上面倒見きれねえからな」
「うん、わかった。…アーシュ、頑張ってね」
 俺は心からのエールを送る。
 アーシュは苦笑いをしながら
「あ~あ、…ったく面倒臭えなあ~。俺は別に人助けが趣味じゃねえんだけどなあ~。結局はこうなっちまう。つくづく運の悪い男だよ。なあ、おまえもそう思うだろ?」
 天邪鬼のアーシュの愚痴は本音であって、本音じゃないから誰も本気にはしない。
 でも、俺は知ってるから。
 アーシュがかけがえの無いクナーアンの神さまで、そして強大な魔術師だってことを。


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この物語の最初のお話は左のカテゴリの「senso」からどうぞ。長いけど…
アーシュの過去の物語など、様々ございます。
山野神也のお話は「山の神・愛し子」からどうぞ。



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銀色のRay 14 - 2015.01.20 Tue

14
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セシル水彩1


14、

 店内に入ってすぐ左側に、受付のカウンターがあった。その先は暗くて様子はうかがえない。奥への入り口の両開きのドアの横には用心棒だろうか、ライフル銃を抱えた強面の男がぞんざいに足を組み椅子に座っていた。
 アーシュはそいつに一瞥もせず、窓口の中年の男に「こんばんは~」と、にこやかな挨拶をする。
 受付の男は座ったままアーシュの顔を下から覗きこむ。
 アーシュは紺のキャスケット帽をかぶり黒縁眼鏡でいつもの高慢なオーラを隠していた。けれど男はアーシュをひとめ見て怪訝そうな顔をした。

「ここは子供の来るところじゃねえぞ」
「おいら、ちょうとばかり若く見えるけど子供じゃねえのよ。これでも二十七。マジだぜ。証明書見せようか?」
「…」
「なあ、ここには良い子が居るって噂を聞いたんだけど…。若くて可愛い男の子がいいんだ。連れと3Pでめちゃくちゃ楽しみたいのさ。わかるだろ?昨夜、この港に外国船で着いたばかりなんで色々と溜まってんのさ。こいつをそこで拾って、で、もう一人は慣れた子とさ…ねえ、そういう子、居るんだろ?」
 アーシュは窓口に小さく畳んだお札を差し出し、受付の男に黙ってそれを握らせる。
 椅子に座る用心棒の男は俺とアーシュを見てせせら笑う。
「どういう子がいいんだい?」と、受付の男がアーシュを見てニタニタと笑う。
「そうだな…」と、アーシュは言いながら、俺の手をしっかりと握った。
その途端、俺の身体中の血液が逆流するみたいにざわめく。思わず「うっ…」と、声が漏れた。
アーシュは魔力で俺の頭をスキャンして、あの子の情報を得ているのだ。
「…そうそう、綺麗な金髪で、目は濃いグリーン。…こいつと同じ年頃で、名前はセシルって奴がいい」
 アーシュの言葉に驚いた。確かにあの子の声は俺の耳にも残っているけれど、姿形、それに名前なんて…知るわけもない。
 …あの子の名前は本当に「セシル」って言うのだろうか。と、言うより、アーシュの言う事が真実なら、アーシュって…マジすげえ…。
「ア…シュ…」
 恐々と見上げる俺に、アーシュは「心配するな」とでもいう様な穏やかな笑みを返した。

「はあ?」
 受付の男はアーシュをまじまじと見つめた。
「居るだろ?セシルって言うかわいい子」
「おめえ誰だ?ここに着いたばかりの奴が、なんで売り子の名前を知ってるんだ?」
「…いいからさあ、セシルはどこに居るんだ?早く言えよ」
「…」
 アーシュの暗示はすでに男にかけられてた。
 受付の男は瞬きを何度もしながら、手元の書類を調べ始めている。

「セシルは…ただ今、客を取っておりますので…」
「で、何号室?」
「え~と、八号室…です」
「じゃあ、マスターキー、貸してくれる?」
「…はい」
 アーシュは男からマスターキーを受け取ると、俺に渡した。
「先に行ってろ。部屋は地下室にある。レイ、おまえがあの子を見つけるんだ」
「うん」
「一応公安に連絡しとくか。取締り強化月間に協力してやろうじゃねえか、なあ」
 なんで俺に向かって、ピースサインで可愛くウインクするんだよ。二十七のおっさんが。それより…
「公安?」
 ほうら…座っていた用心棒が早速立ち上がり、銃を構えて俺とアーシュを睨んだ。
「レイ、こちらは俺に任せて、さっさと行きな」
「う、うん」
「おい、ガキ、ちょっと待てっ!」
 男の手を掻い潜って俺は、店の中に飛び込み、右手の階段を走って降りた。
 ばかデカい用心棒をアーシュがどう叩きのめすのかを見たかったけれど、今はセシルを探すことが先決だ。
 「待て、クソガキッ!止まらんと撃つぞっ!」と、後ろから男の叫ぶ声が聞こえたけれど、俺は足を止めなかったし、それっきり男の声も銃を発砲する音も聞こえてこなかった。
 きっとアーシュがやっつけてくれたんだ。

 階段を降りた地下の廊下は狭く、片側の壁にはそれぞれの部屋の扉が並んでいる。その奥から、まだ年若いすすり泣く声や喘ぎ声が漏れ聞こえていた。
 品の無い天井の赤いランプが俺の影を赤黒く照らす。
 八号室の部屋の前に立った。
 ここにあの子が居る。俺に助けを求めたセシルと言う少年が居る。
 俺はドアを開けるのが怖かった。この部屋の中であの子がどんな姿をしているのか、俺にだって想像できる話だ。
 だけどあの子をこのままほっておけるわけがない。
 マスターキーを使って、俺は部屋の鍵を開け、ドアを開いた。
 狭い部屋にきつめのムスクとアルコールの匂いが立ち込めていた。
 寝台に蹲る金髪の少年は両腕を縛られうつ伏せになっている。その子に馬乗りになった男は、腰を振りながら酒を煽っていた。
「なんだ?おまえ…。店の者じゃねえな…」
「…」
 あの子が俺に助けを求めた少年なのか?
 あんな惨めな恰好をさせられた子が…

 俺はもっと冷静になるべきだった。だけど男とセシルの姿が、山賊らに無残に凌辱された母の姿と重なり、怒りを抑えることができなかった。
「その子から…離れろ。今すぐにだ…」
「はあ?」
「死にたくなかったら、その子からどけって言ってるんだっ!」
 俺はその男の身体をベッドから引きずり下ろそうと、そいつの腕を引っ張った。けれど、そいつは俺を片手で床にたたきつけ、どこから出したのか短銃を取り出し、俺に向かって銃口を突きつけた。
「おい、ガキ。金を払って気持ちよく遊んでいる所に、勝手に入り込んで何言ってやがる。死にてえのか?…もしかして、こいつの知り合いか?一緒に楽しみたいのか?」
「早く…その子から離れろ…。じゃないと…俺はおまえを殺す…」
「なにとち狂ってるんだ?」
「どちみちすぐに公安が来る。おまえなんか公安に掴まっちまえ!」
「公安ねえ…。おまえ馬鹿か、公安が取り締まれるわけねえ。ここは街公認の売春宿だ」
「五月蠅いっ!今すぐその子からどけって!」
 ベッドに倒れたままのセシルに近づこうとした俺の耳に引鉄の音が鳴り響き、俺の足元の床に銃痕と煙が舞う。
「勝手に動くな、ガキ。俺はガキでも躊躇なく殺す。一歩でも動いたら撃つ。そこでこいつで遊んでいるのを見てろよ。こいつはこの店で一番高い、とっておきの男娼だからな…なあ、セシル」
 いやらしい男の顔がセシルの顔に近づく。いやだ…我慢ならない。
「やめろっ!セシルに触るなっ!」
 撃たれてもいい。そのまま死んでも構わない。
 俺はセシルに走り寄った。
 
 ズギャンと鈍い音と「ギャッ」と、男の短い声がした。
 目の前でセシルに跨った男の身体がスローモーションのように寝台から転げ落ちていく…
 男はこめかみから血を流して、死んでいた。手に持った短銃の銃口からは、硝煙が流れている。
 自分で自分を撃った…のか?

「間に合って良かったな」
 後ろからアーシュの声が聞こえた。
「…」
「俺はおまえにセシルを助けろとは言ったが、命を捨てろとは言ってない」
「…」
「あの男の銃口はおまえの眉間を狙っていた。わかってるな。俺の魔法でも時間は戻せねえぜ」
「…ご…めんなさい」

 アーシュは俺の横を抜け、裸のままベッドに横たわるセシルを抱き起こした。
「…意識が朦朧としている。薬を飲まされたな。このままホテルに連れて行くしかなさそうだ。公安が来てからじゃ、説明やらなんやらでうるせーからな。行くぞ、レイ」
「う…ん」
 
 俺は床に転がった男を振り返り、そして毛布にくるんだセシルを抱えて部屋を出ていくアーシュの後を追った。
 


アーシュほのぼの漫画
↑キャスケットをかぶったアーシュを描きたかっただけですわ('ε`汗)

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この物語の最初のお話は左のカテゴリの「senso」からどうぞ。長いけど…
アーシュの過去の物語など、様々ございます。
山野神也のお話は「山の神」「愛し子」よりどうぞ~

次回はアーシュのありがた~い命の重さのお話…が語られる予定です( -ω-)y─┛~~~


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銀色のRay 13 - 2015.01.13 Tue

13
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アーシュ年賀状2015ブログ


13、

 俺がセシルと出会ったのは、十二の頃だ。
 クナーアンからこのアースに移り住んで四年が過ぎていた。
 「天の王」学園での生活にも、魔力の扱いにも少しずつ慣れてはいたけれど、心の内を曝け出せるような友人にはまだ出会わないままだった。
 原因は俺の性格だと判っている。他者よりも優れた魔術師だと自惚れた上目線の俺に、真の友情を捧げる者は居ない。
 俺は自ら孤独な為政者を気取っていただけなんだ。本当は俺だって、気の置けない親友が欲しかった。

 休暇になれば、ほとんどの生徒たちが帰省し、学園には僅かな先生と施設育ちの孤児しか残らない。俺にとっては何よりも滅入る原因のひとつだった。
 だって俺には帰る家も家族も無い。
 誰も居ない食堂で食べる飯ほど不味い物はない。居る時はくだらないことで騒いでいるあいつらをとことん馬鹿にしているのにさ…本当に馬鹿なのは俺の方なんだ。
 だから一人になって初めて、惨めな自分に泣けてしまうんだ。
 そんな俺にアーシュは大いに呆れ、そして少々の同情をくれた。
 彼は気が向くと出張先の仕事場へと、俺を誘ってくれた。
「レイ、暇なら一緒にくるか?」
 俺は少しだけ面倒臭そうに、でも大きく頷いて子犬のように走ってアーシュの後に付いていくのだった。

 建前は「天の王」の学長であるアーシュの裏の仕事は、世界各地で起こる暴動やテロや犯罪事件の制圧だった。治安を守るのは「公安警察」の仕事だが、犯罪に力を持った「魔術師」が絡むことになると、偉大な「魔王」であるアーシュの魔力(ちから)に頼るざるないらしい。
 アーシュは世界中の「公安」からのリクエストを、好みで選ぶ権利を固持している。
「俺が関われば、大抵の事件は惨事になるからね。まあ、やるからは徹底的に根絶やしてやりてえだろ?」と、悪党の顔で笑う。
 実際、公にはなっていないけれど、様々な惨劇をアーシュは悉く片づけている。
「血は見ない方がいいに決まっているさ。話が通じる相手は未来が見えるもんだからね。だが頭がイカレた奴らは自ら死神を呼ぶんだ。俺は迷わぬ様に奴らの道案内をしてるだけさ」
 アーシュはそういう現場を俺には見せない。
「人の生き死に関わる者は、冷酷な覚悟が必要だし、おまえのような子供にはまだ必要は薄いのさ」と、俺に言う。だけどいつか俺が大人になったらその覚悟は必要なの?と、問うと、アーシュは「レイがクナーアンで生きるのなら必要はないだろうがね」と、ニヤリと笑うんだ。
 そのニヤリがどんな意味なのか、あの頃は判らなかったけれど、今は少しだけわかりかけている。
 きっとアーシュは、どんな場所でも、生きていく意義を見つければ、そこが自分の居場所だと、教えていたのではないだろうか…。

 アーシュの仕事の現場にはアーシュだけじゃなく、多くの仲間が居た。
 プロの魔術師や、カリスマ性を持つイルト達だったけれど、彼らはアーシュを信頼し、そしてなによりもアーシュの良き友人達だった。
 俺はアーシュが心から信頼し合う仲間に囲まれている姿を見るのが好きだったし、何より誰からも頼られているアーシュが誇らしくて堪らなかった。

 俺もいつかアーシュのように、誰からも信頼され、そして信頼を寄せる仲間と共に生きてみたい。

 アーシュは時々俺に仕事をくれた。
 目くらましとか、仲間との連絡のテレパシーとか簡単な魔法を使っただけのものだったけれど、少しでも彼らの役に立つようにと、懸命に使命を果たすことを覚えた。
 大人に囲まれてはいたけれど、孤独よりも人の温もりの大切さを学んだ。
 どんな微力な魔力でも人を助ける事はできるし、魔法の有る無しには関係なく、魅力ある人間は大切な隣人となれるものだと理解できた。

 そして、俺はかけがえのない大切な人に出会えたんだ。

 セシルと出会った街は、北海の古びた港町ルオトだった。
 数十年前までは賑わいのある港湾都市だったと聞く。
 だが疲弊しきった薄汚い街並からは、かつての繁栄は見る影もなかった。
 勤労への活気も充実した人々の姿も無く、住民たちは褪せた日々の生活を仕方なく受け入れている様だった。だが、夜になると沖合の水上に浮かぶ船の派手なイルミネーションが、どこからともなく集まった退廃に慣れた人々を惹き寄せるのだった。
 アーシュたちの仕事は、武器や麻薬の密輸貿易に関わるもので、その主犯の潜伏先を見つけ、捕獲することだった。比較的簡単な仕事をアーシュが請け負ったのは、不思議だったけれど、アーシュは「気が向いたからさ」と、答えた。
 アーシュは嘘つきだから、本当の意味はきっと他にあるに違いない。

 アーシュの活躍で珍しく秘密裡に密輸組織の首領も荷物も拘束し、街での大方の仕事は無事片付いた夜、休もうとベッドに潜り込んだ俺の頭に微かな声が、突然響いた。
「誰か…助けて…」と、弱々しい子供の声が何度も聞こえてくる。
 俺は起き上がって、隣りのベッドで休もうとしているアーシュに声を掛けた。
「アーシュ、子供の声が聞こえるんだ。助けてって…」
 アーシュは俺の言葉を受け、目を閉じて耳を澄ませた。勿論、魔力を使ってテレパシーを試みているのだ。
「いや、俺には聞こえないが…」
「本当だよ。…今は止んだけど、助けてって…悲鳴みたいな声だった…」
「そうか…。じゃあ、おまえがその子を助けてやらなきゃな」
「え?」
「さっさと着替えて靴を履けよ。おまえが道案内しなきゃ、俺にはわからねえんだからな」
「うん!」
 アーシュの言う通りに急いで服を着替え、靴を履き、俺は部屋を出た。
 通りに飛び出し、声のした方角を指差す。するとアーシュは俺の身体を抱えて、安ホテルの屋上へ軽々と飛翔した。
「道を走るより、屋根伝いに飛んだ方が早いだろ?さあ、行こうぜ。俺はレイの後を付いていくよ」
「うん。…こっちだ!」
 アーシュの言葉に勇気をもらい、俺は月明かりに淡く光る屋根の峰を軽々と飛んでいく。
 あのかよわい声の主を救いたい。
 俺にも誰かを救える力があることを証明したいんだ。


 波止場に並ぶ倉庫群の横を走る貨車の線路を飛び跳ねながら伝って走ると、街外れの飲み屋街に出た。
 俺は立ち止まって耳を澄ませた。まだ微かに残るあの子の声を頼りに、その場所を探り当てる。
 曲がりくねった細い石畳の一番奥の、暗いイミテーションを掲げた酒場の前で俺は足を止めた。
 扉の上に飾られた彫金のガーゴイルが俺を睨んでいる。

「あの子の声、ここから聞こえてきた気がするんだけど…」
「へえ~。レイ、ここがどんなとこかわかるか?」
アーシュは意味深な笑みを俺に投げかけた。
「大人が愉快にお酒を飲むところだろ」
「表向きはね。ここは娼館だぜ。それも相当怪しい…」
「…」
「おまえ、娼館って何するとこか知ってる?」
「…知ってる」
「子供はまだまだ出入り禁止だね」
「十二歳は子供じゃないし」
「おまえは子供だろ?セックスしたことねえじゃん」
「うるせえよ。絶対にあの子はここに居るんだから、俺は入る」
「わかってる。もし子供相手の娼館ならば公安の管轄だ。ほっておくわけにもいくまい」
「…」
 俺はあの声の子供が、こんなところで商売をやっているとは思いたくなかった。けれど、段々と嫌な予感が込み上げてきて…

「俺の傍から離れるなよ」
「うん…」
 アーシュは店の扉を開け、足を踏み入れた。
 俺はアーシュのコートの裾を握りしめ、その影に隠れながら、あの声の主の姿を必死で探した。



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この物語の最初のお話は左のカテゴリの「senso」からどうぞ。長いけど…
アーシュの過去の物語など、様々ございます。
山野神也のお話は「山の神・愛し子」からどうぞ。

今年もダラダラ、遅筆ですが、よろしくお願いします('ε`汗)


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明けましておめでとう! - 2015.01.01 Thu

2015年の始まりですね。

今年もよろしくお願いします。

今年の年賀状のひとつは「少年ハリウッド」の舞山春くんのイラストでした。
水彩で描いております。

年賀状2015-2

今年もイラスト、小説、自分のペースで頑張って行こうと思います。
良かったら、楽しんでくださいね(*´ω`*)

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プロフィール

サイアート

Author:サイアート
イラストと駄文を更新しております。

少年愛を中心としたシリアス重視なオリジナル作品でございます。

ゆっくりしていってね~

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