FC2ブログ
topimage

2015-02

銀色のRay 18 - 2015.02.27 Fri

18
イラストはサムネイルでアップしております。
大きく見たい方は、イラストをクリックしてくださいね。


セシルの涙


18、

「セシルっ!…セシル…死ぬなっ!」
 大声でセシルの名を呼び、横たわる身体を揺さぶった。
見慣れた制服の背に、セシルの長い金髪がキラキラと揺らめいた。俺は華奢なセシルの背中を抱いた。
「セシル…お願いだから…俺を独りにしないでくれ…」
「…レイ…?どうしたの?」
 セシルの背中に寄り掛かるように顔を埋めて泣いていた俺に、セシルは寝ぼけた顔を少しだけ上げ振り向きながら俺を見る。
「……どうって…」
「ちょっと…重いよ、レイ」
「ごめん」
 俺は慌ててセシルの背中から身体をずらした。
 セシルはゆっくりと手足を伸ばし、深呼吸をする。そのあまりののんびりした様子に、こちらも呆気に取られる。
「あんまり天気が良いから、なんだかポカポカして良い気持ちになっちゃって…寝ちゃってた。ゴメン、驚かせた?」
「…」
 神也も天然キャラだが、こいつも相当じゃないのか…?
 でも、良かった。本当に良かった。セシルが無事で…。

「探したんだ。おまえ、急に居なくなるから…」
「自殺でもするんじゃないかって思ったの?」
「……少しだけ…考えた」
「僕ってそんなに弱い男に見えたんだ。ちょっとショックかな~」
「弱いとか…思ってない。ただ…」
「記憶が戻った所為で、思い出したくない過去を思い出して、落ち込んで死んじゃうかもって?」
「…ごめん…でも、心配だったんだ…」
「レイはあの時の僕の姿を知っているから、心配してくれたんだね」
「うん…」
「今までさ、自分の過去の記憶って霧がかかっているみたいではっきりみえなかったんだけどね、でも、なんとなくは気づいてた。レイが僕を恋人にしないのもきっと僕が汚い身体だったからだろう…とかさ」
「そんなこと、一度も思ったことないっ!」
「わかってる。君はそんな男じゃない。でもさ…わかっててもさ、こちらに後ろめたさがあると、そういう理由をつけて、自分を納得させなきゃ…なんで僕じゃ駄目なのか…わからないじゃない」
「…それは…」
 その時セシルの腹の虫がグーと鳴った。二人は顔を合わせ、学園に居た頃と同じ顔で笑った。
「昨日は教会にお世話になったんだけど、朝の奉仕を済ませて、すぐにここに来て、お母さんに色んな話をしてて…何も食べてなかったんだ」
 セシルは墓に向って膝を立てて座り直し、母親の魂に祈りを捧げた。俺もセシルに習って、セシルが見つかった事を感謝した。

「美味いパンがあるんだ。神也がおまえに食べさせろって持たされた」
「…山野くんが?」
「うん。実は…」
 俺は神也と来た成り行きとウルトの町中の変化をできるだけ詳しく話した。今のセシルならすべてを話しても大丈夫だろうと思ったからだ。

「そうだったの。…ごめんね、心配かけさせてしまって…。うん、ホント、このクロワッサン美味しい!」
「だろ?焼きたてはもっと美味かったんだけどね」
「充分だよ。それにこの桃のジュースも美味しいね」
「ここに来る途中で農家の方に教会の道のりを聞いてね。それで貰ったんだ。聞けばこの辺りは桃の産地だそうだね」
「そうなんだ。春になると桃の花がこの島中に咲き乱れる。それが散っていく様は今でもはっきり記憶に残っているんだ。お母さんと手を繋いで歩いた並木道やらね…」
「レイ…」
「僕は幸せだったんだ。母が死ぬまでは。だから…嫌な思い出も沢山あるけれど、過去の記憶を思い出して良かったと思うんだ」
「うん」
 セシルの言葉に嘘はなく、その表情も学園で別れた時よりも随分と明るかった。

 パンとジュースを食した後、ふたりは岬の先に並んで座り、遠い海に繋がる大河の流れを見つめた。

「…あの時、レイとギルと三人で山野くんの話を聞いていた時…なぜだかそれまではっきり思い出せなかった自分の過去のすべてがだんだんと見えてきたんだ。…あの夜あの町で…君と学長が僕を助けてくれた時のすべてを…。あんな惨めな姿を君に見られていたなんて…僕は恥ずかしさのあまり、あの場から消えてしまいたかったよ。君に投げかけた酷い言葉さえ、僕は一寸も悪びれなあった。…あの晩は眠れなかったんだ。後悔と怒りでね。…身体を売って生きていた僕なんかを助けて、そして惨めな記憶を忘れてしまった僕を、きっと君たちは心のどこかで憐れみながら、嗤っていたんだろう。なんであのままほっといてくれなかったんだろう。憐みなんかまっぴらだ…って。許せなくて…レイと顔を合わせるのも嫌で、学校を休んだんだ」
「セシル、俺は…」
「わかっているよ。僕を魔窟から救ってくれた君と学長…アーシュに感謝こそすれ、怒るなんてお門違いだし、冷静になって考えたら、僕は幸運だったんだ。でも、まだレイの前に立つ勇気はなかった。今まで通り親友でいようなんて…どのツラ下げてさあ…」
「ゴメン、セシル。おまえをそんな気持ちにさせたりしたくなかったから…今まで秘密にしていた。でもいつかは…いつかおまえの記憶が戻った時、セシルの傍に俺は居たいって…ずっと願っていた。俺はおまえをずっと守るってあの夜、自分に誓ったんだ」
「…レイの気持ちは嬉しいよ。でもね、レイに頼ってばかりじゃ嫌なんだ」
「セシル」
「僕はひとりで生きていける強さを持ちたい。自分の過去に向かい合いたいって…。それでお母さんと暮らしていた頃の事を思い出して…その場所へ行ってみようと思った。学園の図書館で色々と調べていくうちに、母の自殺の原因が…なんとなくだけど…わかる気がして。…それもはっきりさせたくて、旅に出る事にしたんだ。少し時間がかかったけれど、僕の父親のこともわかったよ…」
「父親?セシルのお父さんが?今、生きているのか?」
「多分ね…。多分、彼の居場所は…学長の方が詳しいだろう」
「学長…アーシュが?なんで?」
「…僕の父親は…ハールート・リダ・アズラエルと言う革命主義者だよ」
「ハールー…ト」

 自らをイルトの聖職者と名乗るハールート・リダ・アズラエルは、世に知られた革命家だ。そして、誰もが畏れる魔王アスタロト・レヴィ・クレメントを、心から憎悪する者だと自ら公言しているのも彼だ。
 だが、俺は彼の事を良く知らなかった。彼の名前を世界に広めたと言われる「聖光革命」の時には、俺はこのアースではなく、クナーアンで生きていた。
 
「確か彼は聖光革命でアーシュと戦ったんだよね」
「うん…。僕は八歳だったから…覚えてないけれど…あの船での事件…前の学長が処刑されたって…それがテレビやラジオで流れて…。母はその映像を観たんだ。それに衝撃を受けて…殺人者をずっと愛していた事を悔やんだんだ…」
「まさか…」
「母は自殺する前に、この教会の神父充てに手紙を出していたんだ。自分が死んだ後、僕の事を頼んだり、…僕が大人になるまで父親の正体を秘密にして欲しいって…。結局その手紙は僕がこの島を出てから届いたんだって…。残念だけど、父がハールート・リダ・アズラエルって事は間違いがない」
「…」
 俺は自分とセシルの境遇がこんなに似通っていることに驚いた。
「俺も…同じだよ、セシル」
「え?」
「俺の父親は…変わり者の伝道師で…民衆に異端者と言われて処刑されたんだ…」
「…」
「俺はね、このアースの星ではない、遠い…異次元のクナーアンって星で生まれ育ったんだよ…」
「…」
 言葉もなく驚いているセシルに、俺はすべてを話した。
 俺とアーシュはクナーアンから来た異星人で、アーシュはクナーアンの神さま。そして俺は出来そこないの魔法使いだってことを…。
 父や母や祖父の事。母が自殺した理由。死のうと思った俺を助けてくれたアーシュとイールさまの事…

「…不思議だね…。なんだか御伽話を聞いているようだよ。でも…確かに学長は人間離れをしているし…レイも他のアルトとは全然違うオーラをしているものね…。言われてみれば納得するかも…。それにサマシティは次元の狭間を行き交う場所とも語り継がれているから、この星以外の別な星への航法もあってもおかしくないよね」
「…ごめん、今まで黙っていて…」
「僕だって…気づかずにレイを傷つけることもあっただろうに…ゴメンね」
「…天の王に来る時にイールさまにね、学園を卒業したらクナーアンの星に戻るって約束したんだ。だから、俺は誰かを本気で愛したりしないって…自分に言い聞かせてきた。…ずっとセシルが好きだったけれど、いつか来る別れを思うと、言いだせなかった。親友でいる方が楽だと思っていたよ。…おまえがギルバートと付き合うことになった時も…随分落ち込んだよ。セシルに気づかれない様に必死だったけど…。でも俺と恋人になるよりもマシだと思うようにしたんだ」
「…ギルは恋人じゃない。そういう風にしてくれって、僕が頼んだんだ。…レイに嫉妬させたかったから…」
「うん、ギルもそう言ってたよ。…俺もおまえも随分と捻くれてるよな」
「…怖がりなんだ。嫌われたらって思うと、身体が竦んじゃう」
「俺もだ」
 顔を見合わせて、ふたり一緒に微笑んだ。
 太陽は西に傾き始め、金色のセシルの髪を少しずつ赤く染めはじめた。

「レイ、君の髪、とても美しい銀色の輝いているよ」
「そう?…別に魔法は使ってないけど」
「じゃあ、どうしてだろうね。瞳の色もきれいな黄金色だよ」
「きっと…セシルに高揚しているからかもね」
「え?」
「セシルが欲しいって…俺だけのものにしたいって。そういう魔法があるのなら…」
「それはきっと…恋の魔法って言う奴だよ、レイ」
「ホントに?」
「うん。間違いなく僕は今、君のその魔法にかかっているのだから…」
「キスしてもいい?君が欲しいってキス…」
「うん、僕もレイが欲しいな…」

 先の事なんて、なにもわからなかった。
 就中セシルの父親の事とか、俺が下すべき未来の事とか、これからの不安は満載だ。
 それでも今は幸せだと感じた。
 セシルの口唇は柔らかくて中はあったかいし、バターと桃の香りに溢れ、極上の味だったし、少しだけ口唇を離して互いに囁く「好きだよ」の言葉は、実に心地良かった。
 何よりも…俺のセシルは、クナーアンの神殿に飾られたイールさまの肖像画のひとつに似て、とても美しかったんだ。
 それを言うと「君はコンプレックスの塊だね」と、セシルは軽やかに笑うのだった。
 


銀色のRay 17へ /19へ

この物語の最初のお話は左のカテゴリの「senso」からどうぞ。長いけど…
アーシュの過去の物語など、様々ございます。
山野神也のお話は「山の神」「愛し子」よりどうぞ~


お気に召しましたらポチなどして頂ければ、嬉しく思います。


ブログランキング・にほんブログ村へ
にほんブログ村

銀色のRay 17 - 2015.02.21 Sat

17
イラストはサムネイルでアップしております。
大きく見たい方は、イラストをクリックしてくださいね。

ray1-22.jpg


17、

 ベーカリー「カンパーニュ」の中に入り、レジの店員に頼んで店主を呼んでもらった。この町の様子や、セシルが立ち寄ったかどうか、色々と聞きたいことがあったからだ。
 パン工房から出てきた恰幅の良い店主は、ニコニコと快く俺の質問に答えてくれた。

 店主の話によると、三年前に公安の検察により、このルオトの港町は一変した。
 時代を追いかける近代的な湾岸都市よりも、規律を守る平穏な田舎町を民衆は支持したのだ。施政が変わると同時に港を賑わす巨大な船舶は無くなった。その代わりに延縄業を営む漁船の群れが、海を賑わしているらしい。
 貨物船のコンテナ置き場も、今は地元一の卸売市場として、毎朝賑わっていると言う。
「ここらも三年前と比べたら…随分変わったねえ~。前は酒場や娼館がいくつもあってさ、飲んだくれの溜まり場だったけれど、すっかり様変わりだ。公安のお蔭だって言ってるけどさ、み~んな知ってるのさ。あの魔王の気まぐれの所為だって。町を荒らす掃き溜めのような奴らがとうとう、魔王アスタロトを怒らしちまったって。おれ達にとっちゃ、天からの思し召しみたいなものだけどな。ははは」
 豪快に笑う店主に、昔の闇は少しも見当たらない。
 アーシュは…
 俺の知らないところで、この町に戻ってきたのだろうか。そして、徹底的に破壊し、すべてを浄化したのかもしれない。彼ならやりかねない
 魔王アーシュは容赦しない。自分が決めた善悪の観念で動く者だ。
 だけど…もしかしたら…この町がアーシュを呼んだのかもしれない。多くの犠牲を払ってでも、選ばなければならない未来があるのだと…。

 セシルの事も聞いては見たが、結局は何もわからなかった。
 がっかりしている俺に、神也は暢気にパンを食べながら「レイ、この店のクロワッサン、とても美味しいんだ。一口食べてみないか?」と、言う。
「…別にいいよ」
「いいから、食べろ」と、神也は無理矢理俺の口にパンを突っ込む。仕方がなく口にしてみた。
 …確かに美味い。焼きたての香ばしさとサクサクしたパイ生地とバターの芳醇な食感…思わず「美味いな」と呟くと、真顔で俺を見つめていた神也の顔が綻んだ。
「なあ、本当に美味しいパンだろう。レイ、まずはお腹を一杯に満たしてやるといい。そしたら良い考えも浮かぶものだ」
どこから来るのかわからない神也の自信が、なんだか俺を勇気づけた。
「…そうだな」

 神也から受け取ったクロワッサンを口いっぱいにほおばる。ふっと心が軽くなる。
 …あんな顔をしていても、神也は神也なりに精一杯俺を心配しているのだろう。
 テーブルの席に座り、コーヒー付きの朝食を頼んだ。
 神也も満足そうにホットミルクを飲み干している。

「なあ、レイ。一度アーシュに聞いてみたらどうだ?三年前、アーシュもここに居たのなら、何か知っているはずだ」と、神也。
「それは考えたけど…なんだか悔しい気がしてさ」
「レイにもプライドがあるんだな」
「まあ…一応」
「アーシュは自分を必要としてくれる者を求めている。…私にはそんな様な気がする。あれは人の役に立ちたくて仕方がない人種なのだ」
「人種って…」
「私はアーシュは孤独だと思う。だから人が好きでたまらない。好きな人の役に立ちたいと思う事は尊い心だ。それを理解している限り、私達はいつまでもアーシュを必要としていいのだ」
「…」
 アーシュとそっくりの漆黒の澄んだ瞳に、デカい星がひとつ輝いている。山野神也はアーシュが選んだ本物の王なのだ。

 食事を終えた俺は店の中にある電話ボックスから、アーシュに連絡してみる。勿論アーシュの部屋に直通するダイヤルで、だ。
 案の定すぐには出るはずもなく、十二回目のコールでやっとアーシュは寝ぼけた声を出す。
『…なんだ、レイか。早いな。…で、なんか用か?』
「全然早くない。もう八時だ。授業は無くても一応学長なんだから、シャンとしろよ」
『…うるせ~、昨夜は遅かったんだから…つうか、セシルは見つかったか?』
「いいや、ルオトの町には居なかったんだ」
『ふ~ん』
「あんた、知ってたんじゃないのか?」
『知るかよ。俺は万能の神じゃねえし』
「(似たようなもんじゃねえか)…じゃあ、セシルはどこに行ったんだよ」
『それ考えるのはおまえの愛の力だろ?』
「…わかんないから、聞いているんじゃないか。…ねえ、セシルの故郷…お母さんとの思い出…育った…海の近く…田舎町…」
 目を瞑ってあの時のセシルの思い出を辿ってみた。あの頃のセシルは幸せだったんだ…

「入り江…ここから近い…」
『ああ、ルオトの沿岸部を沿った入り江からの川を上っていくと、パテュラ島という中州がある。その島のサンローという田舎町がセシルの故郷だ。陸からの道は途中に険しい峰があるから、港から船で行く方が早い』
「サンローだね、わかった。ありがとう、アーシュ」
『セシルが本当にそこに居るのかは保証しないぜ』
「うん、わかってるよ」
『じゃあ、行って来い。あ、そこに神也居るか?居るなら変わってくれ』

 こんな時でもアーシュの興味が神也であることに少し嫉妬しながら、俺はまだクロワッサンをぱくついている神也を、手招きして受話器を渡した。
「アーシュがおまえにってさ」
「わかった」
 神也と電話ボックスを交代した俺は、店員に定期船の船着き場を聞いた。店員は親切にサンローへの行き方と、その近くの港までの定期船の時間を教えてくれた。
 サンローへの直接の定期船は無く、キュサックという港町まで定期船で行き、そこからサンローへ向かう渡し船で行くらしい。
 キュサックまでの定期船は一日三回で、次の便は正午ちょうどになる。
 到着までに二時間程かかるとしても、今日中にはセシルを見つけたい。

「レイ、大変だ」
 電話ボックスから駆けだした神也は頬を紅潮させて俺の腕を取った。
「スバルが今日の午後に学園に帰ってくるんだ」
「そりゃ、良かったな」
「うん。だから私は今すぐに学園に戻らなきゃならない」
「…え?」
「一刻も早くスバルに会いたいのだ」
「わかるけど…まだセシルを見つけてないんだぜ?」
「それはレイの仕事だ。私の仕事はすでに終わっている」
「は?」
「レイの話を沢山聞いてあげたじゃないか」
「…はあ」
「だから私は今すぐに帰らなきゃならない。スバルを待たせたくないのだ。スバルが帰って来た時に、私が学園に居ないと知ったら、きっとスバルはがっかりするだろう。こんなに長い間、離れて過ごしたのは初めてなのだ。きっと私と同じようにスバルも寂しかったに違いないのだ」
「…わかったよ」
 スバル先生への一途な神也の想いが微笑ましいのと同時に、羨ましくもなった。
 どうすれば俺とセシルも彼らのように、互いに信じあい、想いを通わせることができるのだろう。
「そうだ。ここのパンを買っていこう。きっとスバルも喜ぶ」
「…」
 店のクロワッサンをまんまと独り占めした神也は、満足そうに焼きたてのクロワッサンを入れた紙袋を両手にぶら下げ、駅に向って走り出すのだ。

 方向音痴の神也の為に、駅まで送ることにした俺は、間違いのないようにサマシティまでの切符を買い、神也に渡した。
「本当にひとりで大丈夫か?」
「大丈夫だ。特急の汽車に乗ってさえいれば、夕方には着くのだから、間違うはずはない」
「いまいち不安なんだがな…」
「私の事より、レイ、必ずセシルを見つけ出して一緒に戻ってくるんだぞ。多分セシルはレイが来るのを待っている」
「それは神也のお告げみたいなものかい?」
「いや、私の願いだ。レイの親友として、レイの幸せを願っているのだ」
「…ありがとう」
「それから…」
 神也は左手に持った紙袋を俺に渡した。
「美味しいものを食べると、心も腹も豊かになるものだ。セシルに食べさせてくれ」
「うん…きっと、セシルも喜ぶよ」
「私もそう思う」

 神也の親切が、バカみたいに素直に心に響く。
 彼を見送った後、少し涙ぐんだ。
 きっと、汽車の窓から手を振る神也の姿がなんだか眩しすぎて、感傷的になったのだろう。

 
 キュサックまでの船旅は二時間ほどだったけれど、蒸気船のような大きな船に乗るにはクナーアンでもこちらの星でも初めての経験だったから、高揚した。時々になる汽笛の音が辺りに響くと、こちらの心臓も騒ぎ出す。
 多分…魔法を使って飛んでいけば、もっと早くセシルを見つけ出せるのかもしれない。けれど、俺もセシルも学園以外の世の中をもっと自覚する必要が、きっとあるのだろう。
 未知なるものへの恐怖やそれに対峙する勇気…セシルと一緒に乗り越えられたら…と、願う。

 キャサックはルオトから比べたら、小さな港町だったけれど、人々の顔は明るかった。港から少し離れた橋桁へ向かい、パテュラ島行きの渡し船に乗った。
 サンロー村のあるパテュラ島はキャサックの港の真向かいに位置し、十分程度で着いた。

 小さな島だった。
 土手の周りに民家が数件ある。農作業をする住民に教会の場所を聞き、そこへ向かった。
 きっとセシルはお母さんの眠る墓地へ向かったはずだ。
 そう思うとじっとしてはいられなかった。丘の上の十字架に向って駆け足で急いだ。
 緩やかな丘を登った先に小さな白亜の教会があった。墓所はその裏手にあり、共同墓地はそこから離れた林の奥だと、牧師から案内された。
 林を抜けると石段があり、それを登った先に小さな墓地がある。その向こうには岬が見えた。
 そして…
 墓地の前に倒れ込んだ人影が見えた。
 間違いない……天の王の制服を身に着けたセシルが、墓地の石に凭れる様に倒れている。
 まさか…まさか…死んでいる…なんてことは…。

 俺は悲痛な声でセシルの名前を何度も叫び、駆け寄った。



銀色のRay 16へ /18へ

この物語の最初のお話は左のカテゴリの「senso」からどうぞ。長いけど…
アーシュの過去の物語など、様々ございます。
山野神也のお話は「山の神・愛し子」からどうぞ。

少しずつ少しずつ春が近づいているのだけど、恐怖の花粉症を思うと憂鬱になります…(;゚Д゚i|!)


お気に召しましたらポチなどして頂ければ、嬉しく思います。


ブログランキング・にほんブログ村へ
にほんブログ村


うそつきの罪状 後編 - 2015.02.15 Sun

この作品は以前「掌の物語」で書いた「傷心」の続編です。

イラストはサムネイルでアップしております。
大きく見たい方はイラストをクリックしてください。

竜朗と遠流


うそつきの罪状 後編

浅野竜朗に案内された部屋は、シングルでも十分な広さだった。
クィーンサイズのベッドにちらりと目をやり、あわてて窓の外の夜景に目を移した。
見慣れているビルの灯りとスカイツリーの紫の光が、今夜は嫌に目にまぶしく映る。
「なんか飲むか?」と、尋ねられおれは「別にいい」と断る。
そんなことより…
早くおまえと寝たい…なんて言ったら浅野は引くだろうか…
昔は…
恋人だった頃は、自分から浅野を求めるなんて言動は、ほとんどしなかった。どんなに欲しい時だって、浅野が求めてくるまで待っていた。その方が気が楽だったから。
愛することより、愛されることで自分に自信が持てた気がした。
今となっては本当にくだらない自尊心であり、浅野を焦らすことで、求めない自分の立場の方が上だと勘違いしていただけだ。
五年経ったんだから、今更かわい子ぶってもしょうがねえし…
それよりも浅野と夜を過ごせるって思うだけで身体の方が…なんだか…

「おれ、シャワー浴びてくる」
自分のコートとおれの脱ぎ捨てたコートとスーツのジャケットをクローゼットに片づける浅野に言い残して、おれはバスルームへ向かった。
バスルームと洗面所の仕切りは全面のガラス張りになっていて、おれは服を脱ぐとすぐにシャワーを浴びた。
もうすぐ、浅野と抱き合える…そう想像するだけで、おれは興奮した。脈拍も鼓動も耳まで鳴り響いて五月蠅いし、このままじゃ浅野に触れられただけでイッちまいそうだ。
別れて五年も経つのに、こんなにあいつに餓えてるなんて知られたら、恥ずかしくて死にたくなるし…

「もう…バカじゃないのか、落ちつけったら…」

そう思ったらなんだか今度は心配になってきた。
五年ぶりに浅野と抱き合って、おれ大丈夫だろうか…。浅野を満足させられるんだろうか。
もう三十二だし、若さも肌のハリも絶対老化してるし…。なにより…
浅野に付き合っている奴はいないって言ったけど、別れた後だって色々と遊んでいるし…浅野が求めているのが新鮮味のある身体なら…敏感に感じたフリとか…するべきなのか?
それとも三十越えてるのに慣れてないフリも、ウンザリされたり…
…わかんねえよ、今の竜朗の好みってのが…

頭がパニくっている時に、いきなり洗面所のドアが開いて浅野の姿が見えた。
おれの方をチラリと見た浅野は、さっさと服を脱いで裸になると、おれの居るバスルームの扉に手をかけた。
は、入ってくる気なのか?
ちょっと待てっ!

おれはあわてて扉の鍵をかけ、浅野を阻止した。
「…なにしてんだよ、遠流」
「…ちょっと待ってくれ。まだ心の準備ができてないんだ」
「身体の準備は出来てんじゃんよ」
「…言うなっ!」
「いいから、開けろって。俺もシャワー浴びたいんだよ。ついでに、久しぶりに風呂のセックスでも楽しもうぜ。おまえ、好きだったじゃん。風呂でやるの」
「あーあーあー…聞こえない~」
「…何言ってんだよ。ガキか」
「…」
わかってるけど…

ガラス越しに裸同士でドアを押し合って…、バカなことをしていることはわかっているけれど、もし、このままセックスして浅野がおれに失望したらと思うと…怖くて浅野に触れられない。

「ふう…わかったよ…」
溜息を吐いた浅野は呆れたように扉を離し、バスローブを羽織って洗面所を出ていく。
「…」
なに?その不貞腐れて怒った顔…。
え?マジで怒ったのか?

まさかこのままおれを置いて出て行ったりしないよな。もう抱く気が失せたなんて言わないよな。
いやだよ、そんなの!

バスルームの鍵を開け、おれは急いで浅野を追いかけた。
「待ってくれ、竜朗っ!」
「なんだよ、今度は…。…たく、もう…濡れたまま裸で出てくるなよ」
「だって…ゴメン…おれ…おれさ…」

浅野は黙って自分のバスローブを両手で広げ、おれを包み込み抱きしめてくれた。
「震えてるじゃん。…怖かったんだろ?俺に嫌われたりしないかって、色々と考えるんだよな。遠流のそういうところ、少しも変わってないんだな」
「…ゴメン」
「謝る必要はない。俺はそういう遠流が好きだったんだから」
「…」
そこ、過去形になるのが嫌なんだけど…。
「今の遠流も相当好きだよ」
「…」
おれの欲しいもの、ちゃんとくれる竜朗が…おれも好きだ。
「それに、怖いのは遠流だけじゃねえよ。俺だって、おまえを満足させられるか…自信ねえんだから、さ」
「…竜朗」
「馬鹿…これ以上焦らせるな。お互いこんなになってんのにさ。早くおまえの中に入れさせろよ」
すでに互いの肌の熱さはひとつになっていた。
俺達は五年ぶりのキスをした。

ふたりの夜は明るかった。
お互いを見ていたかったから、灯りは消さなかった。
他の男とは暗闇の中でしか寝ないのに、おれを抱く浅野の顔を、身体の隅々までを…すべてをずっと見ていたかった。
それに、最初は浅野から見られるのが恥ずかしかったけれど、俺を求める浅野の眼差しは、昔よりもずっと優しく、おれを愛おしそうに見るから、おれも、おれで気持ち良くなるあいつの表情が見たかったんだ。

おれ達は我を忘れるほどに、互いを貪りあった。
昔も今も浅野は臆病に震えているおれを引きずり出し、何が欲しいのかを自覚させてくれる。
「竜朗」と、何度震えた声で呼んだだろう。そして何度「遠流」と応えてくれただろう。
あれほど欲しがっていた腕が、肉体が、浅野が、おれとひとつになっている感覚に陶酔した。
すすり泣くおれに「泣くほど良かったか?満足しただろ?」と、浅野が茶化すから、おれは胸に凭れながら「全然足りない」と、欲張った。
もう誰にも気兼ねせずに竜朗の名を呼ぶことが出来る。
暗闇に竜朗を想像することもない。
神様がくれたこの夜の奇跡に感謝せずにはいられなかった。

「…これ以上無理だわ」と、浅野はおれを胸に抱いて笑った。
「おれも…」と、答えた。
身体中が痛かったけれど、心は幸福で舞い上がっていた。乙女のように、朝が来なければいい…などと口走ってしまいそうに酔い痴れていた。
「疲れただろ?少し寝ろよ」
おれの瞼にキスを落とす浅野におれは頭を振った。
眠るのが惜しいんだよ。おまえの体温を感じている意識を離してしまうのが…

不思議なことに、この部屋に来てから、おれも浅野もお互いの過去の話や、未来の夢なんてひとつも語らなかった。
だから、折角出会ったおれ達がこれから先どうなるのかしら、全く探れないままだった。

おれが「また会いたい」と、言えば、その望みは叶えられるのだろうか。それとも浅野はただの偶然の再会を楽しんだだけで、この先、おれと付き合っていこうなどは思っていないのだろうか…
そもそも、浅野には奥さんも子供もいて…常識で考えれば、この状態は浮気なわけで、向こうにしてみれば、非常識…なんだよなあ~。おれが男でも…ますます非常識か…
ああ…おれから「また会いたい」なんて…とても言えない。

いつもの臆病な迷路に嵌っていく…

堂々巡りをしているうちに、いつのまにかおれは浅野の腕の中で眠ってしまっていた。


目が覚めた時、隣りで寝ているはずの浅野の姿はない。
あわてて起き上がったら、身体が悲鳴を上げた。
確かに昨日はちょっとやりすぎた。でも、幸せな痛みだからずっと残っていればいいと思う。
「竜朗…」と、少し擦れた声で呼んだ。
折よく浅野は洗面所から出てきた。
すでにシャツもズボンも身に着けていた。
「おはよう」と、言いながらクローゼットから自分のコートを取り出す。
「も、もう出るの?」
「ああ、名古屋で商談の仕事。十時の新幹線に乗らなきゃ間に合わねえし…。おまえはまだゆっくりしてろ。部屋、延長にしとくから」
「お、おれも一緒に出るよ」
「大丈夫か?身体痛いだろ?」
「大丈夫だ」
強がりを言ってもベッドから降りた足はガタガタで、思わずその場にしゃがみ込む。
浅野は豪快に笑って、おれを引き起こしてくれた。
「だから、言ったろ。…まあ、こんなにしたのは俺の所為だろうけど、半分は遠流の責任だから、謝んねえぞ」
「当然だ」
そうは言っても、おれの着替えを浅野は手伝い、十分後に整えたふたりは部屋を後にした。

エレベーターに向かう浅野の背中を見つめながら、おれはこのまま別れた後、一体どうするのか…そればかりを考えていた。
もう一度やり直したい。でも、浅野の負担にはなりたくない。それの繰り返しだ。
浅野がエレベーターのボタンを押す。
これに乗って、ホテルから出てしまえば、おれ達はもう二度と…

「あのさ」と、徐(おもむろ)に口を開き、浅野が俺を見た。
「…なに?」
「結婚したって話、あれ、嘘だから」
「………?…はあ?」
「ちょっと嘘ついてみた」
「つ、ついてみたって…嘘って何?…嘘。嘘だろ?」
「嘘じゃなくて、嘘だって…あれ?嘘じゃねえ嘘って…あはは、笑える…」
「わ、笑っている場合かっ!だ、だって、こ、子供の写真だって…」
「あ、あれ。姉ちゃんの末っ子の四男。俺に似てかわいかっただろう?」
「…嘘って…」
力が抜けてしまって、マジで頭がまっしろになる。

「嘘つきは俺だけじゃねえだろ?遠流だって、俺に嘘を吐いているだろう」
「え?」
「付き合っている奴はいないとか、嘘を吐いたじゃねえか」
「…」
「そんなの抱きあえばわかる話だろ?」
「…」
「抱かなくてもわかってたよ。隠してるおまえが気に入らなくて、俺も嘘を吐いてみたんだよ」
「…ごめん」
「二度と後悔はしたくなかった。けど…おまえの気持ちを知りたかった。俺が妻子持ちってわかっても、遠流が俺を欲しがるのかを、試してみたんだ。…悪かった。それから…嬉しかった。忘れられない夜になった。ありがとう、遠流」
「竜朗…あの…」

エレベーターが到着しドアが開いた。
先客が居た所為で、おれは口を噤んだ。
そして、何も会話がないまま、おれと浅野はホテルのロビーから玄関の外へ揃って出ていく。
「じゃあな、遠流。元気で」
「…竜朗…」
本当に…もう会えないのか?おれはまだおまえに…
「神様がくれた偶然の再会に感謝してるよ。またいつか…会えるといいな」
「…」
「天に祈るしかねえかな」
「…」
「じゃあな」
おれに背を向けて二、三歩離れた浅野は「あ、そうだった」と言いながら自分のコートから長方形の箱を取り出し、おれの傍に近寄った。
「今日はバレンタインだったよな。昨日、仕事でデパート行っててさ。すげえチョコが一杯でさあ。そんで…おまえの為に買っておいたんだ。なんかすげえパティシエの高級チョコだってさ。これやるから泣くなよな、遠流」
「…」
俯いたまま答えられなかった。本当に泣きそうだったから…。


え?
ちょっと待て。
今、おまえ変なこと言わなかったか?
おれの為に買った…おれの為に?
…それって…
それって…
おれと会うってわかってた…ってことじゃないのか?
え?
偶然じゃないってこと…なのか?


「竜朗!」
顔を上げて前を見る。浅野の姿はもはやどこにもない。
歩道の向こうにキャメル色のコートをはためかせながら走る浅野の姿が、人ごみに紛れて行った。

「…なんだよ。おまえの方が何倍もタチの悪い嘘つきじゃないか…」

チョコの箱をじっと見つめ、そして裏に返してみると、包み紙にボールペンで文字が書いてあった。
携帯電話の番号と「いつでもご注文に伺います(ハートマーク)」の一言。

呆れて言葉もない。そして…安堵感と嬉しさに胸が詰まる。


きっとおれ達はまた恋をするのだろう。
大人になった分、一度目よりは巧く、そしてたまにずるい嘘を吐きながら…

ふたりで生きていけたら…いいな。




2015.2.15


五年前のお話は、こちらからどうぞ~
傷心

うそつきの罪状 1

バレンタインデーには間に合わなかったけど…なんとか終わった((人д`o))
ふたりとも五年前よりは、ずっと大人になった気がするよ。




お気に召しましたらポチなどして頂ければ、嬉しく思います。


ブログランキング・にほんブログ村へ
にほんブログ村

うそつきの罪状 前編 - 2015.02.11 Wed

この作品は以前「掌の物語」で書いた「傷心」の続編です。

イラストはサムネイルでアップしております。
大きく見たい方はイラストをクリックしてください。


吉良と浅野



満員電車に揉まれ、家と職場を行き来する変わらない毎日。繰り返すことに息苦しさを感じても、やめようとはまだ思わない自分を褒めたいぐらいだ。

明日はバレンタインデー。女性が男性に想いを告白する日だが、今は自分へのご褒美とか、義理チョコを渡すのが主流らしい。
一応おれも職場の女性社員からいくつかの義理チョコは貰った。今は義理って言っても高そうなブランドチョコをくれるものなんだな…。来月返すのが大変そうだ。
ひとり、本命チョコと本気の告白をくれた総務の若い女の子がいたけれど、謝って勘弁してもらった。
さすがに正面切って「おれはゲイだから女は無理なんだ」とも言えないし…。

金曜日の夜、帰りの電車を待つ構内でいきなり後ろから肩を叩かれ「よお、久しぶり」と、呼ばれた。
振り返ってみると、キャメルのモッズコートにサングラス、背の高いぼさぼさ頭の男が居た。
見覚えがあるはずもなく「人違いじゃないですか?」と、答えたら、男は苦笑してサングラスを外した。
「俺の顔、忘れてしまった?吉良」
「え?……た、竜朗?」
「元気そうだな、遠流(とおる)」
「…」

五年前、思いを残したまま別れた元恋人、浅野竜朗が目の前に立っていた。


 うそつきの罪状  前編


会社の同僚だった浅野と付き合っていた三年間は、今でもおれにとって一番大切な思い出だ。いや、正直に言えば、まだ完全に思い出にはなっていない。
五年前、浅野が札幌に転勤が決まり、おれ達は別れた。
別段嫌いになったわけでもなく、ただ遠距離恋愛が面倒だからという理由だった。
別れてしまった後、おれは後悔した。
浅野への想いは自分でも驚くほどに深く、募る恋しさの辛さと言ったら…。
どうにもならずに会社を辞めようとした頃、浅野が退職したと聞いた。
おれだけが辛かったんじゃないのか、と、感じたおれは、もう一度仕事に打ち込むことにしたのだった。

それから五年間、おれは浅野がどこでどうやって生きているのか、全く知らなかった。

「なんだよ、鳩が豆鉄砲食ったみたいな顔してよ。そんなに驚くか?…つうか。俺そんなに変わったか?五年ぶりだから見間違うか。まあ、いいけどさ。なあ、遠流、飯まだだろ?なんか食わねえ?」
目の前の一見浮浪者か、芸術家…的な浅野の恰好に呆れてしばらくは声が出なかった。
「え?…ええ?」
「だから晩飯食わねえかって。ふたりで…さ」
「…」
声は出さずに少しだけ頷く素振りを見せると、浅野は俺の腕を掴んで迷わずに駅の改札口へと向かった。
その腕の力強さに、おれを「遠流」と呼んだ声の響きに…おれの胸は馬鹿みたいにときめき始めている。
…こいつへの想いは…まだ少しも醒めてはいなかった。

行先は浅野の宿泊しているホテルの最上階のイタリアレストランだった。
この後の成り行きが見えなくはないけれど、おれもそれは充分に承知の上だった。って言うか…食べてる最中だって、身体が疼いて仕方がないぐらいだ。

仕事を辞めてから今までのいきさつを、浅野はさほど大したこともない笑い話のように話す。勿論おれも聞きたいことだったけれど、それよりもこの思いもよらない慶事に目の前の料理の味もよくわからないまま、昔よりも日に焼けて健康そうな浅野の顔をずっと眺めていた。
そんなおれの眼差しに浅野は苦笑して「そんなに俺変わったか?まあ、お互い三十路超えたしなあ」と言う。
「うん…。なんか…色々変わりすぎて…」
でも、強さや包み込むようなあったかさとか…おれを見つめる目とか…変わらないから、嬉しいんだよ。

浅野は五年前、会社を退職した後、故郷の長野へ帰った。
母方の祖母は広大なリンゴ園を経営していたが、その後を継ぐべき息子、つまり母の弟が事故で亡くなり、祖母はリンゴ園を孫の浅野に託したいと頼んできた。浅野は祖母の養子となり、リンゴ園の経営を続けている…と、言う。

「今はインターネットでも地元の新鮮な産地物って売れるし、あちこちのデパートやらにマネージメントしたりさ。元々営業職だったからノウハウとか、色んな伝手もあるし…。そんなこんなでちょいちょい東京にも、仕事で足を伸ばしてるんだ」
「そう…だったんだ」
「連絡しなくて、悪かったな」
「いや、いいんだ。おれとおまえの関係はあの時に終わったんだから、気にする必要もないだろう」
おれの言葉に浅野はしばらく黙り込んで、残ったワインを飲み干した。

「…おまえと別れた事…後悔したよ」
浅野の告白に、おれはぎくりとなる。
「お…おれも…同じだ…」
「大事なものって失って初めてわかるっていうけれど…本当にあの時は参った…」
「…うん」
「もう元には戻らねえけどな」
「…」

「デザートはいかがいたしましょうか?」
レストランの給仕が皿を片づけながら、尋ねる。
浅野は「コーヒーをふたつ」と、迷いなく答える。そういうとこ、変わっていないんだな。

コーヒーが来た時も、バレンタインのサービスとかで、コーヒーとは別の皿にトリュフチョコレートが添えられていたのだけれど…。
男同士でチョコ食べるって…変に卑猥で、手が付けにくい気がしたんだが、浅野はすぐに口に入れ「う~ん、さすが生チョコって感じ?わかんねえけど、ビター味で美味いぞ。ここのシェフの手作りだって。遠流も食べてみろよ」
「うん」
こういう浅野に引きずられる感覚が、おれは好きだったんだろうなあ。
一緒にいるだけで楽しくてたまらない。
なんだか可笑しくて笑いが込み上げた。
「なんだよ」
「いや、なんか竜朗、見かけは変わっても、中身は変わんないなあって…」
「おまえはどうなんだ?変わったか?」
「え?」
「好きな奴とか、付き合っている奴とか…居るのか?」
「…別に…いないよ」
「ふ~ん、そうなんだ…」

意味深な顔つきが気になる。
嘘だと気がつかれただろうか…


付き合っている男は…居る。セフレだけど…
三つ下の職場の後輩だ。
半年前から付き合い始めた。
竜朗と別れた後、色んな男と付き合っては見たけれど、長続きはしなかった。原因はおれにある。ゲイの付き合い方っていうのは、大方身体の関係から始まるものだけれど、おれはその最中に極まると、どうも竜朗の名前を呼ぶらしいのだ。無意識のうちに…
最初は笑ってすましていても、それが続くと無神経にも程がある…と、大抵の男たちは言う。
全くもってその通りなので、謝って別れる事となる…。

浅野の事があったから、会社関係の男とは付き合うつもりはなかったのだが、飲み会でたまたま酔っぱらった時に、介抱してくれた後輩の上杉に求められて、その夜、寝た。
案の定、浅野の名前を呼んだらしく、朝、素面になったおれに上杉は思いがけないことを話したのだった。
「竜朗…ってもしかしたら浅野竜朗さんのことじゃないんですか?」
「…浅野の事知ってるのか?」
「ええ、札幌でお世話になりました。少しの間でしたけど、慣れない営業の仕事も丁寧に教えてくれて、浅野さんが会社辞めた後も、俺が落ち込んだ時とか色々と相談にも乗ってもらっていたんですよ」
「そ、そうなのか?」
「浅野さん、酒飲んで酔っ払った時、東京に大切な人を置いてきたって言ってたんですよ。後悔してるって何度も…。俺、浅野さんがお仲間だってわかって…こういうのってなんかわかるんですよね…で、抱いてもらおうとお願いしたんですけど、その人に悪いからって、断られたんです。…そうか、吉良さんが浅野さんの恋人だったんですか。なんか名前だけでも縁が切れなさそうですもんね」
「…縁は切れてるよ。もう五年も音沙汰無しだもの…」
「そうですか…。俺もここ何年かは連絡ないですね。携帯の番号も変わっているみたいですし…。力になれなくてすみません」
「上杉君が謝る事じゃないよ。こっちこそ、気分悪かっただろ?やってる最中に違う男の名前を呼んだりして…」
「いえ、別に。吉良さんと恋愛する気はないですから。ちょっと寝てみたかっただけですから。俺、別に本命の彼氏いますもん」
「あ、そうなの」
「でも、それでも良かったらこれからも相手になりますよ。たまにタチになるのも新鮮だし、割り切った付き合いってお互い楽でしょ?」
「はは…よろしくお願いします」

実際、恋愛の面倒臭さの無い性欲だけの関係は楽だった。
上杉は下手ではなかったし、身体の相性も悪くなかったから。
おれが浅野の名前を呼ぶことにも気にしなかった。その代りにとばかりにおれは上杉の彼氏の愚痴話を聞かされた。
上杉の彼氏は妻帯者で、彼なりに忍ぶ恋を続けているのだ。


「そうか、遠流はフリーなのか…。俺は三年前に結婚したんだ」
おれの顔をじっと見た後、浅野は目を逸らしてそう言った。
「…え?」
「見合い結婚だよ。ばあさんがどうしてもっていうから…。幼馴染みの近所の娘とさ…一歳半になる息子がいる。写真見るか?」
「いや、いい…」
「まあ、見ろよ」と、スマホの画像をおれの目の前に差し出した。
浅野に抱っこされた可愛い子供の笑顔があった。どことなく浅野に似ている。親子なら当然の話だ。
……
別段驚くことじゃない。
そりゃ、浅野が結婚しているなんて…かなりショックだけど、ゲイ同士が付き合う場合に限っては、あまり関係ない、はずだ…たぶん。
別におれと浅野は元恋人同士で、現在付き合っているわけでもないから、浅野が結婚してても問題はない。問題…ない。けど…
やばい…おれ、なんかすげえ…
…なんか奈落に突き落とされてる気分だ…。

「おい、遠流…聞いてる?」
「え?…なに?」
「これから俺の部屋に来ないか?」
「は?」
「つまり…おまえを誘っているわけ」
「…いいよ」

既婚者のゲイは多いし、セックスだけの関係なら、別段問題じゃない…と、思う。
なによりも、おれの身体は竜朗を欲しがっていたのだ。



五年前のお話は、こちらからどうぞ~
傷心

後編へ

バレンタインはあまり関係ないけど、後編が間に合うと良いと思う…('ε`汗)



お気に召しましたらポチなどして頂ければ、嬉しく思います。


ブログランキング・にほんブログ村へ
にほんブログ村

銀色のRay 16 - 2015.02.05 Thu

16
イラストはサムネイルでアップしております。
大きく見たい方は、イラストをクリックしてくださいね。

レイ手33

16、

 セシルの眠るベッドの端に座ったアーシュは、セシルの頬を優しく撫でた。
 眠っていたセシルがゆっくりと目を覚ます。
「気分はどうだい?セシル」
 アーシュの声はいつになく優しい。
「…ここは…どこ?」
「安全な所だよ。もうセシルを苛める者はいないから、安心しなさい」
「…本当に?」
「うん。で、だ。セシルにちょっと聞きたいことがあるんだ」
「…」
「そんなに警戒しなくてもいい。俺はこの世の中で一番すげえ魔術師なんだぜ。…いや、マジホント。で、セシルを助けるためにここに居る」
「…魔術…師って…魔法で人を殺したりするって…お母さんに聞いたことある…」
 上半身を起こしたセシルは、目の前のアーシュから逃げるような仕草をした。
「まあ、時と場合にはよるなあ。確かにアスタロト・レヴィ・クレメントは皆に怖れられる魔術師だけれど、セシルみたいな可愛い良い子には味方になるのさ」
「…僕、良い子じゃない…」
「セシルは良い子だ。ちゃんとお母さんの言いつけを守って、人を罵ったり、盗んだり,いじわるしたり、さ…ひとつも悪い事をしてないじゃないか」
「お、母さんの事…知ってるの?」
「知らなくてもわかるのが、すげえ魔法使いの能力なのさ。言っただろ?俺はこの星一番の大魔術師だって」
「お…お母さん…と約束したの。お母さんが…死んじゃう時、お母さん、絶対悪い子にならないでって…僕にゆったから…。でも僕、悪い子だ。だってみんな僕を打ったり、痛いことを一杯する…。僕が悪い子だって、みんな怒るんだ…」
 声も立てずにセシルは泣いていた。零れ落ちる涙が薄い毛布を濡らした。
 アーシュはセシルの涙を迷いもせずに拭き、顔を上げさせた。

「セシル、さあ、俺を見てごらん」
「…」
「セシルは良い子だ。この俺が言うんだから間違いないのさ。いいかい、もう苦しい事は忘れていいんだ。セシルはこれから光の中で暮らすんだよ」
「ひかり…」
「そうだよ。俺はセシルが望めば君の親代わりになれる。そして、セシルの事をもっと知りたいと思っているんだ。ねえ、今まで過ごしてきた君の幸せな日々を、少しでもいいからさ、俺に聞かせてくれないかい?」
「僕の…」
「そうだよ。君の話を聞きたいんだ」

 俺はアーシュとセシルから距離を置いたソファでふたりの様子を見ていた。アーシュの邪魔だけはしないようにと、出来るだけ客観的にセシルの話を聞こうと努力した。
 アーシュの導きに、セシルも最初は戸惑ってはいたけれど、次第にリラックスした顔つきになり、微笑みさえも時折垣間見せた。


 幼かったセシルは海の見える小さな町で、母親と二人で暮らしていた。
 働き者の母親は、評判の仕立て屋で繕い物の仕事を一日中こなしていた。
父親とは会ったことも無かったけれど、母はいつもセシルに「お父さんはとても立派な人なのよ」と、話し聞かせていた。
 貧しかったけれど、母と子の暮らしは幸せだった。
 だが、その幸せな日々はあっけなく終わりを告げる。
 セシルが八つになるかならないかの頃の、寒い朝だった。
 突然母親が自分の手首を切り、自殺してしまったのだ。原因はわからない。
 ただある時から、母は仕事をしなくなり、食事もセシルの世話もせずに、ただ泣いてばかりいた。あまりにも悲しい泣き声で、セシルがどんなに母を慰めても、その涙が止まる事はなかった。
 そして、セシルの母親は、セシルをひとり残して死んでしまったのだ。
 自殺した者を、弔う者はいない。
 誰一人の祈りもなく、母親の身体はひっそりと共同墓地へと埋められた。
 そして、身寄りのないセシルは孤児院へ送られることになった。その途中、人買いに浚われたセシルは娼館へ売られてしまったのだ。


 俺は愕然としていた。セシルと自分の境遇がこんなに似通っていることに…。
 父親が死んだこと、母親が自殺したこと…ひとりになってしまったこと…
 偶然だろうか、それとも、こんなにも似てるから、俺にだけセシルの声が聞こえたのだろうか…
 それでもセシルに比べれば、俺は随分と幸せだ。アーシュとイールさまのおかげで、俺は今も前を向いて生きていられる。

 いつしかセシルは言葉を切らし、嗚咽していた。
 アーシュは再び、セシルの涙を優しく拭いた。
「さあ、セシル、泣くのはこれで最後になるよ。今までの君の悲しみは君の胸の中で眠りにつくんだ。そして、新しい未来を見つけて生きる君には、自由を謳歌する権利がある」
「…」
「レイ、ここへ来なさい」
「うん…」
 俺はアーシュの言う通りに、立ち上がりセシルの居るベッドへ近寄った。

「セシル、彼が君の最初の友達だ」
「友…達?」
「レイ・ブラッドリーって言うんだ。よろしくね、セシル」
 俺はベッドの脇にしゃがみ込み、セシルを怖がらせない様に、できるだけ優しい声で話しかけた。手を差し出し握手を求めると、セシルは恐る恐る俺の手を力なく握った。
「大丈夫だよ、セシル。僕は君の味方だよ」
「…味方…レイ…」
「セシルはこれからレイと一緒に学校で暮らすことになる。俺はその『天の王』学園の一番偉い学長様で、レイとセシルの親代わりになるんだ。学園には沢山の仲間がいる。みんなと仲良く楽しく…まあ、そこらへんは適当でいいけど…。とにかく、学園で生活しながら、沢山勉強して、色んなことを経験するといい」
「…はい」
「わからないことはなんでもレイに聞きなさい。レイはセシルが大好きなんだから。なあ、レイ」
「会って間もないのに、誤解するようなこと…」
「…ホントに?僕の事、好き?」
「…す、好きだよ。何でも俺に頼っていいから…セシルの親友になってやるよ」
「…あ…りがとう、レイ」
 零した涙の痕が切なかった。俺に微笑み返す柔らかな表情がたまらなかった。
 すでにセシルの暗い過去は、アーシュの魔力で霧に隠れてしまっているらしく、セシルは先程までの怯えた顔つきとは確実に違って見えた。
 セシルは今、生まれ変わったのだ。
 でもアーシュはセシルの記憶を消したわけではない。
 いつか彼は全ての記憶を取り戻す日が来るだろう。その時は、今度は俺がセシルの悲しみを支えてやりたい。
 俺は…セシルを守れる強い男になろう。

「俺は…あの時からセシルに恋をしていたのかもしれない…」
 
 列車の鳴らす汽笛の音が、耳元に鳴り響いた。
 急カーブに車輪とレールが鋭い音を立てて軋む。同時に俺の身体も右に揺れた。
 窓の外は随分前から暗くて何も見えなかったし、いつの間にか列車内の灯りも赤々と揺れていた。
 俺は目の前に座る神也に目を向けた。
 俺の話に聞き入っているのか、神也は微動もせずに俯いたまま…
 俯いたまま…眠って…いる?
 安らかな寝息さえ立てて…
 ……
 はあ?
 これだけ俺に話をさせておいて、居眠りってどういう事?
 大体おまえが聞くって言ったから、一生懸命思い出しながら話してやったんじゃねえかよ。
 俺はすっかり頭にきて、神也の身体を乱暴に揺さぶった。
「おいっ!神也っ!起きろよ。馬鹿野郎!何寝てるんだよ」
「…ああ…話は終わったのか?うん…あんまり眠かったからつい眠ってしまった」
「…」
 もっともな理由で、こちらも力が抜ける。

「どうだ?話し終えて、少しはすっきりしたか?」
 神也は全く悪びれる様子もなく、力一杯に伸びをしながら俺に聞く。
「…ああ、聞いてると思った奴が寝てても、一応はな」
「それは良かった。それで、私は思ったのだが…」
「今度は何だよ」
「セシルは本当にレイと始めた出会ったという場所に向かったのだろうか…」
「どういう意味だ?」
「もし私がセシルだったら、すべてを思い出した時に、嫌な思い出しか残らない所にわざわざ行こうとは思わない、と、思ったのだ」
「…」
「私は今でも山の神として過ごした十二年間を良い思い出として心に留めている。だが…棺に閉じ込められ、土に埋められた恐怖だけは…どうしても拭えない。…あの場所に戻りたいとは、今はまだ思えないのだ」
「…」
 神也の言い分には十分な道理があった。
 セシルと俺が出会った場所が俺にとっては特別であっても、セシルには思い出したくもない嫌な所…そんな街にセシルの足が向かうとは考えにくい…。
 ああ、なんて俺は手前勝手なんだろう。
 マジで落ち込む…。

 足も十分に伸ばせない狭い寝台に揺れながら、俺は眠れない夜を過ごした。

 港町ルオトに列車が着いたのは、まだ朝日も昇りきっていない明け方だった。
 充分な睡眠を貪った神也は、すっきりとした顔で「さあ、セシルを探そう」と、張り切っている。だが、俺にはこの町にセシルの気配は感じられないし、そもそもセシルが居ると言う理由が見当たらない。
 それでも一応あの酒場を目指して俺は歩き出した。

 街の風景はあの頃とは一変していた。
 建物も石畳の小道さえも、目立った汚れも見あたらず,潮風を含んだ空気が、静かな朝の風景を包んでいた。
 あの頃の荒んだ空気は、今、この場所には感じることはない。
 記憶を辿って、セシルと巡り会った酒場の場所へと辿りついた。しかし酒場はすでに取り壊され、シンプルな店構えをしたベーカリーに姿を変えていた。
 朝早いベーカリーの店内はすでに何人かの買い物客の姿が見えた。
「レイ、このパン屋、カフェもあるみたいだ。お腹が空いたから朝食を取ってもいいか?」
 俺の答えを待つまでもなく、神也は扉を開けて、店内へと歩き出していた。
 俺は慌てて神也の後を追った。

 店の中は馨しいパンの香りが漂い、奥の方では朝食を楽しむ客の姿が見えた。
 三年前の歪んだ面影などは微塵も感じられない。
 それは俺にとって、全く不思議な感覚だった。

 良くも悪くも、人も町もすべては…時間と共に変わってしまうものなのだ…

 一応店主にセシルの写真を見せ、尋ねてはみたけれど、案の定セシルがここに来た形跡は無かった。
 俺はすっかり立ち往生。

 一体セシルはどこに行ってしまったのだろうか…

 


銀色のRay 15へ /17へ

この物語の最初のお話は左のカテゴリの「senso」からどうぞ。長いけど…
アーシュの過去の物語など、様々ございます。
山野神也のお話は「山の神」「愛し子」よりどうぞ~


お気に召しましたらポチなどして頂ければ、嬉しく思います。


ブログランキング・にほんブログ村へ
にほんブログ村

NEW ENTRY «  | BLOG TOP |  » OLD ENTRY

プロフィール

サイアート

Author:サイアート
イラストと駄文を更新しております。

少年愛を中心としたシリアス重視なオリジナル作品でございます。

ゆっくりしていってね~

サイズを記憶するフォントサイズ変更ボタン

文字を大きくする 文字を規定のサイズに戻す 文字を小さくする

ツリーカテゴリー

Script by Lc-Factory
(詳細:Lc-Factory/雑記)

最新記事

FC2カウンター

リンク

このブログをリンクに追加する