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2015-10

夜を駆ける 1 - 2015.10.29 Thu

1
 イラストはサムネイルでアップしております。
 大きく見たい方は、イラストをクリックしてくださいね。

夜を駆ける2

「ヒロっ!真上に隙間があるよ」
 アスラが指を指す夜天は漆黒に包まれた闇。
 だけどアスラの眼には昼間のように明るく映る。
「よしっ!アスラ、俺につかまれ!」
「うん」
 俺の背中に飛び乗り、アスラは両腕と両足を俺の身体にしっかりと巻きつけた。
 アスラを背負った俺は険しい崖を昇る。
 闇の向こうから警務隊の声が響く。
 俺達を捕縛しようと声を荒げるけれど、この険しい崖に狭まれては追ってはこれまい。

 
 麻耶山頂上の林の奥にある根城まで辿りつき、街で仕入れた食料品と情報をタカトに伝える。
 タカトはこの根城で暮らす二十人程の少年、少女たちをまとめるリーダーだ。
 街の様子など一通りの状況を説明するとパンと果物をもらい、俺とアスラのネグラヘ帰る。

「わあ、ヒロ。このパン、ハムとチーズが挟んであるよ。豪華だね」
「良かったな。よく噛んで食べろよ。急いで食べると咽るからな」
「ヒロ、オレ、もう十四なんだよ。いつまでも子供扱いしないでよ」
「十四はまだ子供だ」
「じゃあ、幾つになったら大人なの?」
「…」
 
 俺にもわからないよ、アスラ…。
 だってさ、
 いつの間にか、この世界に生きる子供たちは未来を夢見ることを止めてしまったんだ。


  夜を駆ける 

  1.


 廃棄されていたキャンプ場のログハウスのひとつを借り、寝泊まるようになってからひと月ほど経つ。
「熱は下がったか?」
 ベットに寝るアスラの額に手を置き、確認する。
「まだ少し熱があるね」と、言うと、「大丈夫だよ」と、いつものようにアスラは笑う。
 俺はアスラを愛しているから、大切にしたいけれど、子供だからアスラを守る力が足りないのは否めない。

「今日はいっぱい収穫があったから良かったね」
 俺の掌を弄ぶアスラは、カンテラだけの僅かな光の中、輝く薄い瞳で俺を見つめる。
「港の闇市はストリートチルドレンにも甘いから、お金を払えば物が買える。タカトの言ったとおりだな」
「でも、警備のオジサンたちをまくのは、大変だったね」
「子供は捕縛の対象だからなあ」
「ねえ、ヒロ。そろそろここも発たないとダメだよね」
「アスラはそんな心配しなくていいよ」
「だってさ、お世話になりっぱなしだし…」
「そうだな。もう少しアスラが元気になったら、出発しようか。でもきつい時は言えよ。いつでも俺がおぶってやるからな」
「うん」
 真っ直ぐで艶のある白髪の頭を撫でると、アスラは嬉しげに眼を細めた。

「あ、誰か来るよ」
 アスラが口を開く前に俺は立ち上がってドアに近づいた。
 扉を引いて開けると、タカトが驚いた顔で立ちすくんでいる。

「驚いたな。マジで勘が良すぎるぜ」
「野生の勘は生き延びるのに必要だろ?」
「まあな。お邪魔するよ。ああ、アスラはそのまま寝てな」
 ベットから起き上がろうとするアスラを気遣うタカトに、アスラも素直に頷いて、また毛布に身体を潜り込ませる。

「夜分に悪かったな」
「いいえ、あ、なんか飲む?コーヒーあるよ。…タカトに貰ったヤツだけど」
「ありがと…」
 簡易コンロに人を付けてお湯を沸かす。
 ここのコーヒーはインスタントだけど、意外と飲める。勿論、由良じいが淹れた本物のコーヒーとは比べものにはならないけれど。
 
 コーヒーをいれたマグカップをタカトに渡した俺は、タカトの正面に座った。
「それで?何か用があるんでしょ?」
「うん…。ケイコの情報なんだが…。公安がアルビノの子供を探しているとの事だ」
「…」
「アスラと決まったわけじゃないが、どうしたって目立つからな。気をつけた方がいい」
「オレ、帽子かぶっても目立つ?」
 頭だけを上げて、アスラが俺達を見る。
「アスラはかわいいからね。帽子ぐらいじゃそのキュートオーラは隠せない!…ってね」
「じゃあ、明日からヘルメット被るよ」
「そうだね、タダシに借りておくよ」
「アスラ、もう寝ろよ。熱、下がらないと明日は自宅待機にするよ」
「は~い。タカト、おやすみなさい」
「おやすみ」

 掌だけをパタパタと振るアスラの仕草に、俺とタカトは顔を合わせてクスリと笑った。
 全くもってアスラはかわいい。
 愛くるしさは万民の癒しだ…と、由良じいはよく笑っていた。

「…さっきの話だけど、近々ここを離れようと思っていたんだ。タカト達に迷惑かけても悪いから」
「迷惑だなんて思った事はないさ。おまえさんたちはよく働いてくれている。ここはまだ小さい奴も多いから、崖の昇り降りも安全とは言えないし、ヒロとアスラが買い出しを頼まれてくれるのは本当に有難いんだ。でもおまえらにも行くべき目的があるなら、無理に止める事はしないさ」
「はい」
「それでな、実は三日後、港に鹿児島行きのコンテナ船が入港する予定らしい」
「本当?」
「うん、おまえら南に行きたいって言ってただろ?」
「はい。でも…俺ら子供だけで乗船許可が貰えるんだろうか…」
「知りあいを当たってみてら、子供二人ぐらいならなんとかなるだろうって」
「え?」
「そいつが三等航海士さんに賄賂を渡して、こっそりと…ね」
「でも、そこまでお世話になるわけには…」
「仲間だろ?それに俺はおまえらよりもずっと大人だから、世話をするのは当然だ」
「大人ってたって、俺より二つ上なだけじゃん」
「昔は十八と言えば、責任ある大人として扱われたらしいぜ。俺達の生まれるずっと前の話だけど」
「じゃあ、甘えさせてもらいます。ありがとうございます」
「こっちこそ…。色々大変だろうけど、大切な人が待っているのなら、早く会いに行ってやらないとな」
「…そうですね」

 大切な人…アスラの病気を治してくれる人。
 待っている人…まだ見ぬ俺の父親。
 たぶん…

 この地上の遥か天上に居る大人たちに頼るしかない自身が歯がゆいけれど…
 アスラが未来を夢見ることができるのなら、そこが目指すべき場所なんだろう。






夜を駆ける表紙


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次回予定イラスト - 2015.10.20 Tue

まだ全然書いていませんが、イラストを描かないと始まらない性分です。

次回は「夜を駆ける」
近未来のお話です。

夜を駆ける1

主人公はヒロ・葛城、16歳
手前の子がアスラ。14歳。
まあ、ちょっとSFチックな世紀末冒険モノかな~。
ヒロくんは名前の通り、葛城燿平の子孫…かもしれない。天然の髪を似せてみた。

まだちょっと時間がかかるかもしれませんが、目標を掲げた方がやる気が出るので。
来週あたりから始められたら良いんですけどね。



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告白 後編 - 2015.10.14 Wed

この間の中秋の名月です。
うちのバルコニーでデジカメで撮りました。
意外と綺麗に撮れたので、マジ嬉しかったっす。
2015927月-2

告白

 翌日は、文化祭の最終日。
 俺達のクラスは中庭ブースで焼き鳥の販売。
 仕入れた生の焼き鳥を炭火焼で焼くのだが、当然ながら全員初めての経験で、タオルで口を押え、涙目になりながらも煙に耐えつつうちわを煽ぐ。
 うちのクラスは理系の特クラで、いわゆる国立理系なので、女子が五人しかいない。その貴重な五人の女子も性格ブスばっかで(俺が言ったわけではなく、周りの評価)滅多に喋らない。
 女子だから焼き鳥焼くぐらい手伝えと協力を求めても、「煙臭くなるから嫌だ」とか「女子が焼き鳥売るなんてナンセンスだわ」と、居直られた。
「あいつらマジでかわいくねえ~」と、頭にタオルを巻いた委員長の永田がぼやく。
「まあ、いいんじゃない。彼女たちが校門で呼び込みをやってるから、売り上げも順調だし」
「そりゃそうだけどさ。なんつうか…可愛げがねえよなあ」
「おまえらがJKに期待し過ぎっていうの。つうかさあ、…由良、見てねえ?」
「ああ、なんか体調悪いから、今日は来ないかもってメールあった。昨日は由良にずっと店番任せてたし…。マジで悪かったわ。葛城の方には連絡なかったのか?おまえら、仲良いじゃん」
「え?…あ…うん。今日はまだ顔合わせてねえな」
「会ったら謝っててくれないか。あいつ、顔良いし、愛嬌もあるからお客の評判も良くてさあ~、つい無理強いさせてしまった~」
「わかった。伝えておく」

 昨日別れた後、俺は光流(ひかる)にメールも電話もしていない。
 告白もだけど、あいつがくれたメールを読んだ時、今まで光流の想いに気づかずにいた自分に罪悪感を感じた。
 だからと言って、光流の想いに応える自信もない。
 どう考えても俺はノーマルで…男とどうこうしたいなどとは思えないからだ。
 だけど、光流は大事な親友でさ…
 だから、気まずいままこれからを過ごす、なんて嫌だし…。

 地学部の催し物は、手作りのプラネタリウムで、お客さんも教室の四角い天井に映る偽物の星空を楽しんでいる。
 だけど、ここにも光流の姿はない。
 途方にくれながら廊下を歩いていると、担任の三瀬が声を掛けた。

「葛城、さっきロンドンの大使館から連絡が来たよ。UWC留学決定だそうだ」
「え?マジで?」
「マジです。良かったなあ。宇宙飛行士なんて夢見すぎだと思っていたけど、おまえならマジでなれるかも知れないなあ。俺もおまえの夢の一旦を担う役目を貰った気がするよ。もし叶った時は恩師として俺の名前を忘れずに出してくれよ」
「了解です。先生、本当にありがとうございました」
「出発は十二月か…。クラスのみんなと一緒に卒業できないのは残念だけどな」
「そう、ですね」

 留学の事はクラスメイトは知らない。だが、光流だけには話していた。
もし決まったら、十二月にはUWCに留学することも…。
 宇宙飛行士になる為には、英語やロシア語は当然ながら必須で、外国で勉強するのが一番効率が良い。国際バカロニア資格を得たらどの国の大学にも入学できるし。
 一歩ずつ歩き出す…そうやって確実に夢を現実に近づけさせていきたいんだ。
 光流も「応援してるから、頑張れよ」って…言ってくれた。
 …
 俺は思い違いをしていたのかなあ…。
 俺の夢に付き合わせて、同じ宇宙(そら)を見上げて、それであいつの事を理解していたつもりになっていたのかもしれない…。

 陽が暮れた東の空にはまんまるの月が昇りはじめた。
「そういや今夜はスーパームーンだったな」
 いつだって晴れた満月の夜は光流と望遠鏡を覗き込んだ。
 月面のクレーターを見ながら、俺達が降りる場所を見つけようと話したっけ…。

 運動場では積み上げられた焚き木に火が点され、明るい炎が暗闇に映え渡る。
 それぞれに肩を組んだ生徒たちが大声で校歌を謳い、文化祭のクライマックスとも言えるフォークダンスが始まる。
 誰とも構わずに踊り明かすフォークダンスは、最初は恥ずかしがって輪の中に入りたがらないものだが、次第に焚き木を囲んで手を繋ぎ合う。
 なんだか不思議な光景だ。
 昼間はうるさがっていた女子たちも楽しそうに男子と踊っている。
 ぼやいていた委員長も女子の手を取り、ご機嫌な様子だ。

「葛城君、踊らない?」と、クラスメイトの内野さんが手を差し出し誘ってくれた。
 その手を握ろうとするその時、彼女の向こう側にちらりと光流の姿が見えた。
「まさか…」
「どうしたの?」
「悪い。俺、ちょっとはけるわ。教室に大事な忘れ物してた」
 そう言い残した俺は、すでに見失ってしまった光流の姿を探した。

「あいつの行きそうな場所は…まあ、わかるけどさ」
 ふたりで夢を語り明かした校舎の屋上って決まっている。
 
 五階までの階段を飛ぶように駆け上がって、屋上へ着くと、予想的中って奴で、光流が望遠鏡の近くに佇んでいた。
「光流~。今日一日、おまえを探したんだぜ」
「悪い。なんか、さ。燿平に顔合わせづらくて…さ」
「…うん、わかる」
 俺達はどちらともなく近づき、同時に夜天を見上げた。
 満月の近くで金星が鋭い光を放っていた。

 互いに顔を天に向けたまま、光流が口を開いた。
「あのさ」
「ん?」
「昨日、燿平にあんな告白をしてさ。帰宅して思い返してみたら、どうにも居たたまれなくなった…。それにあんなメールまで…。読んだ?」
「読んだよ」
「ゴメンな。迷惑だったよな。…ゴメン、あんまり気にしないでくれ。ほら、満月の時って動物も人も興奮状態になるって言うだろ?…その所為だと笑ってくれ」
「笑わないさ。まあ、ちょっぴり困りはしたけれど、光流の告白もメールも嫌じゃなかった」
「え?」
「おまえの求めるものに応えられるかどうかはわからんけどさ、このまま光流との友情を終わりにはしたくねえし…」
「俺の告白に燿平が応えられるものじゃないってわかっていたんだ…。わかってておまえを困らせて悪かったって反省してる」
 
 光流が俺を見つめるから、俺も光流を見つめた。
 目が合ったまま顔を見合わせていると、何故だか気恥ずかしくて仕方がない。
「光流、俺、留学決まったんだ。今日、連絡が来た。十二月には…この学校を離れる」
「…そう、か…。おめでとう、燿平」
「ありがと…」

 フェンスに近づいて、赤く輝く運動場に目を下ろす。
 フォークダンスの曲が繰り返し流れ、それに合わせて皆漂うように踊っている。
 
「そうか、とうとう行くのか。…燿平が夢に近づいたのなら、俺も置いていかれないように頑張るしかないな」
「筑波大の理工学部だろ?おまえなら大丈夫さ」
「卒業したら国立天文研究所、それからすばる天文台、月探査計画、JAXAと協力しながら、月に向かう燿平を助ける」
「うん、頼りにしてる」
「…」
 口にしてしまうと軽く、でも現実は遠い俺達の夢…。
 でも俺と光流なら叶えるさ、きっと。

「ありがとう」
「なにが?」
「精一杯の告白だったんだ。嫌われても仕方ないのにさ」
「嫌うもんかよ。…俺はおまえが好きだよ」
「…うん」
「キスでもする?」
「え?」
「スーパームーンの記念。その気になるかも」
「いいよ。無理にするもんじゃないし」
「そうか?俺は光流とならキスぐらいしてもいいかな…なんて思い始めてますけど」
「…」

「あ、おい、下見ろよ。永田の奴、常盤っちと見つめあってデレてる」
「ここから見えるのか?相変わらず眼だけは異常に良いなあ」
「宇宙飛行士候補生としては当然だろ?」
「さすがだね」
「あ、ほらほら、あいつら今にもキスしようとしてるぜ?」
「燿平…」
「え?」

 俺の両頬を掴み、光流はすばやく顔を寄せ、俺に口づけた。
 光流の乾いた口唇が俺の口唇に触れた…。
 目の前に光流の顔がある。
 そして、ゆっくり俺から離れた光流は、柔らかく微笑む。

「やっぱりおまえとのキス、貰っておく」
「おまえねえ…。する前に言えっ!こっちも準備ってものがあってな…」
「ありがとな」
 
 そう言って笑う光流がかなりかわいいと思えたのは、きっと夜天に輝く満月の所為なのだろう…。


       2015.10.14
 



告白 前編

今の高校生でも、ウブや奴もそうでない奴もいるんです。
淡いコイバナでも良いじゃないか。
明日、温泉行ってくる!



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告白 前編 - 2015.10.07 Wed

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  告白2
 右が光流(ひかる)で左が燿平(ようへい)。


 それは突然の、だけど、いつもと同じような下校途中の出来事だった。
「俺、燿(よう)が好きなんだけど」
親友の光流(ひかる)からの突然の告白に、俺は光流の顔を凝視した。
「え?…うん、俺も好きだよ。おまえ、いい奴だし」
 校内一のクールガイともてはやされている光流だが、時々突拍子もない冗談を言う奴だから、俺も何も考えずに笑って答えた。
 だが、光流は笑うでもなく、整った顔を崩さずに…
「…性的な感情を含んでいる。つまり毎晩のようにおまえでシコってる…って言えば、理解する?」
「……はあ?」
 なんだ?新手の冗句か?
 …せい、てき?
 …俺に?

「無理無理無理~。光流、冗談が過ぎるよ。俺、彼女居るし~」
「先月別れただろ。受験勉強忙しくなるからって」
「そりゃそうだけど…。だからっておまえと付き合うなんて…冗談でも無理だから」
「そうか…」
 明らかに落ち込んだ声音で光流は少し残念そうに眉を顰めた。
 そ、そんな顔したら、本気なのかって勘違いするじゃねえか。

「マジで本気なのか?」
「うん」
「つうか、なんで今日?おまえねえ、告白するんなら、もっとこう…誕生日とか出会った記念日とか、卒業の日とか…あるんじゃね?」
「敢えて言えば…満月だったから…かな?」
「…」
 意味わからん…つうか、
 確かに今日は中秋の名月だった。
 俺達地学部にとっては最高の天体観測日和なのだが、今日と明日は高校の文化祭でめちゃくちゃ忙しく、のんびり観測するどころじゃない。
 
「まあ、いっか。断られるのわかってたし…」
「いやいやいや、わかってるなら、口に出すなよ~。俺達の友情にヒビが入るだろ?」
「わかってたけどさ…。我慢できなかったんだ」
「光流…」
「じゃあな」
「あ?」
「明日、晴れるといいな」
「あ?…ああ、キャンプファイヤー楽しみだな」
「耀はマジ…ば~か」
 そう言って、光流は横断歩道を走り去っていく。
 俺はその後ろ姿を見送りながら、一体光流と何を話してたのだろう…と、しばらく腑抜けたままに立ち止まっていたんだ。


 告白 (前編)


 俺、葛城燿平(かつらぎようへい)が由良光流(ゆらひかる)と出会ったのは、高校に入学したばかりの地学部の入部の日。たまたま廊下で見学していた光流に声を掛け、一緒に入部することにした。
 宇宙の話でたちまちに意気投合した俺達は、校舎の屋上に設けられた小さな天体望遠鏡を夜遅くまで覗き込んでは、煌く星々のように心を輝かせていたのだ。
 
 俺は宇宙飛行士、そして光流は天文学者。
 途方もない未来の夢を夢にしない為に、俺達はお互いを励ましながら、勉強に打ち込んできた。
 馬鹿話やエロ話もしないわけじゃなかった。
 付き合ってた彼女と最後まではいかなかったけど、デートしたり、キスしたりしたことまで光流には話していた。光流は…家庭事情やらで、その辺の経験は俺よりもずっと豊富だったから、教えてもらう事も多かった。
 一度だって、光流は俺にそういう素振りを見せたことが無かったし、俺だって男を好きになるなんて…考えたことも無い。

 今日、俺を好きだと告白した時の光流の顔を思い出す。
 どう考えてみても、本気だった…と、思う。
 そして、俺は非常に困っている。
 嫌いじゃない奴に…と、言うか、大好きな親友に告白される事は、好きでもない女からの告白を断るようにはいかない。
 親友だぞ?
 ずっと一緒に夢を追いかけようって誓った仲だぞ?
 …
 …
 なんか…
 段々と腹立ってきた。
 裏切ったのはあいつの方じゃねえか。
 
 腹立ちまぎれに夕食を掻きこんで、早々と自室に引きこもった。

「…ったく、光流の所為で好物のカツ丼をじっくりと味わえなかったじゃねえか。明日も文化祭の後片づけまでめっちゃ重労働させられるっていうのに」
 
 いつものようにパソコンの電源を入れ、一旦ベッドに寝転んだ。
 目を開けても瞑っても先程の光流の顔と言葉が目の前から離れてはくれない。
 あんなに簡単に断っても良かったのかな…。
 光流を傷つけたんだろうか…。
 俺が断った所為で落ち込んだりしてないだろうか…。
 そもそもなんで俺なんだ?
 あいつが男も女もイケる事は知っているけれど…。

 立ち上がり机の上のパソコンのメールを確認すると、珍しいことに光流からのメールが受信されていた。
 俺は急いでそのメールを開封し目を通した。


 『燿平。
  このメールは今朝、君が登校する時間を見計らって送っている。
  だから君がこのメールを読むのは、学校から家に帰った後だ。

  俺は今日、君に告白することに決めた。
  すでに結果は出ているだろうし、燿平の事だから、俺の告白は無残な結果に終わっているだろう。
  答えがわかっているのに、負け試合をしかける俺を君は笑うだろうか。
  そんな事はしまい。君は正義の人だ。

  高校入学の頃から、俺は君に惹かれていた。
  俺の家庭の事情は知っているだろうけれど、両親達の事業の成功の所為で俺の家は裕福だった。だけど両親はずっと不和で、それぞれに愛人を囲って楽しんでいた。それでも一人息子の俺の事はそれなりに可愛がってくれたものだから、俺も道を間違う事も無かったけれど、性格は相当に捻くれていたんだと思うよ。
  君には話した事もあると思うが、初体験も父や母の愛人たちが教えてくれた。
  今となっては彼らの同情心を有難く思う余裕もあるけれど、当時は両親に一矢報いてやりたい…なんて浅はかな考えもあったりね。

  君と出会って星空を崇めて、夢を語り合って…俺は燿平から未来への希望をもらった。
  そして、人を本気で好きになるときめきや喜びを初めて知った。恋の苦悩もね。
  君と温めた友情は本物だと思いたいけれど、やっぱり君への煩悩が多かったのも確かだ。

  このまま何も言わずに卒業するのが俺達の友情にとっては最良だとわかっているけれど、それでも告白しなければならなかった俺の恋熱を憐れんでくれよ。
  昨日までの俺と燿平には戻れないと思うけれどさ。
  できるなら、明日、顔を合わせた時に、笑ってくれると有難い。

                    由良光流 』


 はあ~?
 なんだよ、光流のバカヤロー!
 俺は…
 俺は明日が怖いよ。




告白…後編

短いコイバナです。
「宇宙兄弟」好きなんです。



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