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2016-05

夜を駆ける 8 - 2016.05.22 Sun

8
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ヒロとアスラ表紙8


8、

 鹿児島の志布志港へ着いた後、冨樫は積み下ろしの時間が勿体ないからと、コンテナ船から小型の高速船にヒロとアスラを乗せ、種子島の港まで走らせた。
 二時間ほどで、ふたりは目的の種子島の港へ着いた。
 ヒロとアスラは何度も冨樫にお礼を述べ、何か自分たちにできる事はないものだろうかと、尋ねた。
「別にねえよ。気にするな。子供を世話してやるのは、大人の義務ってもんだ」
「こっちだって世話になった子供として、どうしても船長の役に立ちたいんだよ」
「まいったなあ」
 すがるように頼み込むふたりに冨樫は困った顔をする。
「なにか…そうだ!天上に居るお孫さんに伝える事ない?渡すものとかさ。俺、責任もって届けるよ」
「ありがとな。しかしなあ…まあ、いいんだよ、孫の事は。別に意地張ってるわけじゃねえんだ。血の繋がった者同士でも、いつでも互いを確かめ合いたいわけじゃない。必要な時に、頼る頼られる…そんな関係でいいんだよ」
「でもさ、そんなの寂しくない?オレだったら、いつでも大好きな家族と一緒に居たいなあ~って思うけどなあ」
 真正直なアスラの言葉に冨樫は苦笑いながら、アスラの頭を撫でる。
「そうだな。皆が皆、アスラみたいに真っ正直になれたら、諍いなんて少なくて済むかもしれねえな…。まあ、おまえらに免じて、今度、眞蔵に手紙でも書いてみるよ」
「うん、そうしなよ。船長たちの船や働いてる映像も一緒に送ってあげて」
「ああ、そうしよう。…ほら、お迎えがきたぞ。おまえらの姉さんだろ?」
 車から降りてきた見覚えのある姿に、ヒロとアスラは走り寄った。

「「月華っ!」」
「ヒロっ!アスラっ!あ、あなたたちったら…もう、どれだけ心配かける気なのっ!」
「ごめんなさい」
「このひと月の間、由良じいと種子島を行ったり来たりして、あなたたちを探して…。一昨日、冨樫さんに連絡貰って、本当に…。バカバカ…私も由良じいも死ぬほど心配したんだからねっ!」
 顔をぐちゃぐちゃにして泣き出す月華を見て、ヒロとアスラは自分たちの軽はずみの行動を深く反省した。
 アスラは月華の胸で泣きじゃくりながら、何度も「ごめんなさい」と、繰り返した。
 ヒロはアスラ以上に、自分の無責任さを後悔し、真っ青になりながら俯いていた。
 
「まあまあ、月華さん。ふたりもこんなに反省しているんだ。許してやりな。まだ怖いものなしのガキってだけさ。その上、こいつらには常人と違って才と能力がある。それを使ってなんでもやれる、お山の大将気分でのぼせてしまう。危険な未知の領域ってのがすげえ魅力的でなあ~。ま、子供っていうのはそういう時期を経験して、大人になるものさ」
「だけど…」
「ヒロ、アスラ。いいか、おまえらにはこんなに心配して泣いてくれる家族がいる。自分の思い通りに生きるのは素晴らしい事だ。だけど、まず家族に認められる男になれ。家族に頼られる男になれ。いいな」
「わかりました、船長。もう、月華を泣かせたりしない。由良じいを心配させたりしないよ」
「ああ、ふたりとも良い男になれよ。それから、ヒロ。天上にいるおまえの親父は、きっとおまえに会いたがっているだろうよ」
「そうかな…。まだ目覚めてないんでしょ?月華」
「うん…」
「人間ってのは意識が無くても、何も見えなくても、大事なものはちゃんとわかっているんだよ。おまえの親父さんは早く起こしてくれって言っているのさ」
「俺が…起こせるのかな…」
「さあ、そいつはおまえの頑張り次第だろうなあ」
「…」
 
 見送る冨樫にいつまでも手を振り続けながら、ヒロとアスラは月華に連れられ、宇宙港へ向かった。
 天上への宇宙船の中で、月華に凭れて眠るアスラを眺めながら、ヒロは今までの自分勝手な行動に落ち込んでいた。
 見かねた月華は「さっきは言い過ぎた。ごめんね、ヒロ」と、ヒロの頭を空いた片手で撫でた。
 ヒロは始めて涙ぐみ「ごめんなさい」と、呟いた。そして、カナリ女医の診たてたアスラの身体の状態を月華に説明した。
 月華はヒロの話を驚くことも無く黙って聞き、アスラを受け入れる施設の用意は出来ていると答えた。

「アスラの身体の事を思えば、少しでも早い方が良いに越したことはないけれど、アスラにとってはヒロとふたりで冒険した日々の方がずっと有意義に違いないから、もうヒロを責めないわ。だからこれからはアスラの身体の為に、ヒロも頑張ってちょうだい」
「わかったよ。何でも命じて。俺、アスラの為ならなんでもやるから」
「うん。それから…燿平の事だけど…。ヒロ、大丈夫?」
「ん?」
 月華に聞かれる前から、別れ際に冨樫が言った言葉が、ヒロの頭から消えなかった。

 本当に俺の力で葛城燿平を目覚めさせることができるんだろうか…。

「ああ、もう、燿平…父への拘りは捨てたんだ。俺が生まれたのは燿平のおかげだからね。まだ、眠っているの?」
「うん…。燿平の容態はさほど変わってないわ。脳神経に異常は見られないから、意識回復は可能なのに…どうしても目覚めてはくれないのよ。出来るなら、早く目覚めて欲しいの。由良じいの為に」
「由良じいの病気、酷いの?」
「今すぐにどうって事は無いと思う。本人は手術も治療も断って、痛み止めだけで凌げるからって…。燿平に会ってくれって頼んだんだけど、天上へ行く気は無いって…」
「由良じい、年取った姿を見せたくないんだって言ってたよ」
「ばかね、それだけじゃないわよ。由良じいは…怖いのよ。もし燿平が目覚めなかったら…もし目覚めて自分を覚えてなかったら…もし、自分の姿に燿平が失望したら…。愛するってね、愛されるってね、怖いのよ。お互いの気持ちを繋ぎ続けるエネルギーの重さに…疲れるものなの」
「月華もそう?」
「え?私?」
「そう、月華の恋人は、月華の病院とは別の研究所に居るんでしょ?」
「うん…。時々寂しくなるけど、私達はあまりお互いに依存し合わないようにしてるの。私も由良じいと燿平を見てるからね…。もしどちらかが、独りになった時、あんな風に悲しむのは嫌だから…」
「…」
「でも、ふたりを羨ましいとも思うのよ。…全く矛盾しちゃうわね。愛するって、難しいのよ。沢山欲しがってしまえば、手に入れた分、傷ついちゃうし、だからって、程よい愛情なんてそれなりの価値しか見いだせなくなるんだから…」
「…難しいね」
「うん、難しいわ」

 ヒロは窓の向こうに映る暗闇の宇宙を眺めた。
 その窓際に青く輝く地球が見える。
 息を呑むほどに美しい景色。
 十二年間を過ごしてきた地上。
 これからは見飽きる程に眺めるであろう姿。
 傍らに眠るアスラが起きたら、この宇宙を一緒に眺めようと思った。
 ふたりの未来を語りながら。
 

     ※
 
 月に一番近い医療コロニーに到着した三人は、アスラの容態を診てもらうために、ネオチルドレンの病院へ行った。
 アスラの精密検査は三日ほどかかる為、アスラはヒロと離れて入院する事になった。
「アスラ、ひとりで大丈夫か?俺が付いててやろうか?」
「大丈夫だよ。オレ、十四になったんだよ。もう子供じゃないやい。それよりヒロは燿平父さんを見舞わなくちゃならないんだろ?早く会いに行ってやれよ」
 ヒロにはアスラの強がりが愛おしく思え、益々傍に居てやりたい気持ちになったが、確かにアスラの言う通り、燿平の事も気になる。

「じゃあ、明日また来るからね」
「いいよ。検査が終わる三日後で…。ひとりで大丈夫だもん」
 目を逸らし、口を尖らせ、少しだけ寂し気に俯くアスラをヒロは抱きしめた。
「絶対明日来るよ。アスラが大丈夫でも俺がアスラの顔を見なきゃ、不安になるからね」
「うん…わかった」
看護師に連れられて病室に向かうアスラは、一瞬心細げにヒロを振り返り、すぐに笑顔を見せ、「ばいばい」と手を振った。

「安心した」と、手を振るヒロの隣で同じようにアスラに手を振る月華は言う。
「何が?」
「アスラもヒロもちゃんと育ってくれて」
「由良じいの育て方が良かったんじゃね?」
「そうかしら?…ううん、きっとね、あなたもアスラもお互いを必要としているからだと思うわ。今のあなたたち、なんだか昔の燿平と由良じいを見てるみたいだったもの」
「そうなの?」
「そうよ。子供の私の前でもあのふたりはあんたたち以上にイチャついてたわよ」
 あの由良じいが恋人とイチャついてた姿を想像すると、笑いが込み上げてきた。

「さあ、行きましょうか。由良じいの大切な恋人の元に」
「そうだね」
 ヒロは覚悟を決めて、クローンである自分を作った葛城燿平の眠る病棟へ月華と向かった。

 アスラの小児専門病院とは別の区域にある高度治療センターまで、車で一時間ほどだ。
 初めて会う自分の産みの親に、ヒロは過大な期待はしていない。だが緊張が緩むことはなかった。
 セキュリティの厳しい集中治療室に眠る燿平の姿をガラス越しに見た時、ヒロは不思議な気持ちになった。
 確かにそこに横たわる男は、ヒロの姿に酷似していた。

「月華…。燿平に会ってもいい?」
「ええ、大丈夫よ」
 

 エアシャワーを浴び、入室したヒロは燿平の傍らに立ち、その顔をじっと見つめた。
 医療機器に囲まれ、何本ものカテーテルが繋がれている身体が痛々しくも哀れに見えた。
 昔、由良じいに見せてもらった写真よりはずっと痩せていて、顔色も悪く、生気も感じないけれど、まさしくヒロの遺伝子は、この人から貰ったものだ。
 二十年後の自分はこんな顔になるのか…と、ヒロは少しだけ変な気分になる。
 
 何も繋がれていない右手をそっと握りしめ、ヒロは「お…とうさん…。俺、葛城ヒロです。あなたのクローンです」と、小さく呟いてみた。勿論、返事は無い。

「燿平が生きてるってことは、奇跡なのよ」と、ヒロの傍らに立つ月華が言う。

 そうだ。
 この人が事故で死んだから、俺はこの人のクローンとして産まれおちたのだ。
 事故が無ければ、この人が死んだことにならなければ、俺は生まれてこなかった。
 由良じいや月華や、アスラと出会うこともなかったのだ。
 この人が一度死んで、それからこうして生き還って、クローンの俺と出会う事は、「奇跡」以外の何ものでもない。

「燿平、あんたのおかげで俺は今、ここに立っている。だから、あんたに言いたいんだ。俺を産んでくれてありがとうって…。ねえ、起きてよ。起きて俺を見てくれよ。あんたの大好きな由良じいが育ててくれた俺を…」

 取り付けられたモニターに変化はなかった。
 だが、ヒロにはわかっていた。
 ヒロの言葉が燿平に届いていることが。


ヒロ葛城


火星開発技術者の燿平ですけど…「テラフォーマーズ」じゃないから。Gくんにやられたわけじゃないから!

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まあ、イラストです… - 2016.05.13 Fri

五月ですなあ~。
晴天の空を見てると、ホント長閑だな~って思いながら、つい寝ちゃいますけど…。
はい、そういうわけで、続きまだです。

なので、さっき描いた墨絵など、どうぞ…

つうか、とうらぶしてて、髭切さんをおむかえしたはいいけど、なんかこの人、私の好みなんですよ。
弟には全く興味ないんですけどねえ~
ついつい描いてしまいますねえ~

higekiri4.jpg

数珠丸さんは相変わらずきません。
課金は全くしないので、仕方ないですけど、いつかはお迎えできたらいいですね。

jyuzumaru9.jpg

墨で描くのは難しくは無いけど、なんせ一発勝負なので、失敗も多くてねえ…

薬売りさんは何を描いても絵になってくれるので、大好きですね~。

kusuriuri.jpg

もうちょっと上手くなりたいです…

来週こそは、文章の方を更新できますように…



夜を駆ける 7 - 2016.05.01 Sun

7
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  夜を駆ける7


 7、

 冨樫と別れたヒロは、高鳴る胸を押えながら医務室へ戻った。

 なぜ、こんなに鼓動が激しいのかはわからない。
 なぜこんなに口元が緩んでくるのか、わからない。
 でも、一刻も早くアスラの顔を見たい。
 そして、「俺の一番大切なアスラ」と、伝えたいんだ。
 
 医務室では目が覚ましたアスラが、扉を開けたヒロの姿を見て思わず「ヒロっ!」と声を上げた。
「アスラ、気分はどう?」
「うん、大丈夫よ」
 ヒロは急いでベッドのアスラに近寄った。

「目が覚めたはいいけど、ヒロくんはどこに行ったのかって五月蠅かったのよ」
「すみません、カナリさん」
 ヒロは女医のカナリに丁寧に頭を下げた。
「じゃあ、後は任せたわね。今夜は特別にここで寝ることを許可するわ。ゆっくりお休みなさい」
「ありがとうございます」

 ふたりきりになった医務室で、アスラはホッとした顔をヒロに見せた。
 ヒロは部屋の灯りを消し、Tシャツとパンツになりベッドに寝るアスラの隣に寄り添った。アスラは嬉しそうにヒロの左腕に両手を回して、額を擦りつけるように顔を埋める。
 ひとつの寝床で寝る時は、アスラはいつだってそうだ。ヒロの腕を離さない。
 昼間は甘えたがりではないアスラが、寝付く時にヒロを欲しがるのが、ヒロには嬉しいけれど心配にもなる。
 昔、由良じいが言っていた。
 「本当に愛情に満たされていたら、どんなに離れていても、怖くはないんだ」って…

 暗闇の中、アスラの瞳はヒロを見て、僅かに瞬き光る。それがアスラの不安を示すようで、ヒロはアスラの身体を優しく抱きしめた。
 アスラは嬉しそうにクスリと笑い、また顔を埋めた。

「ホントの事言うとさ、ヒロに置いて行かれちゃったかと思って、ちょっぴり焦ったの」
「俺がアスラを置いてどこに行くって言うのさ」
「うん…。だけどさ、やっぱオレはお荷物じゃん。今日も熱出ちゃって、迷惑かけたし…」
「迷惑だなんて思わない。それより、もっと早くアスラを天上に連れて行くべきだったって、反省してる」
「どうして?」
「…」
 ヒロはアスラの病気を正直に言うべきか悩んだ。
 カナリの見立てでは、難しい病状であることは確からしい。だが、弱ったアスラに話して、もっと負担になると思わせたくない。

「アスラの身体、時々熱が出るだろ?天上でちゃんと治療をしないと良くならないんだって。あ、治療すれば治るから心配いらないんだけど、もっと早く天上に連れてけば、アスラを辛くさせることもなかったのに…ってさ」
「でも、ヒロとふたりでタカトのアジトで暮らしたの、楽しかったよ。すごく楽しかったもん」
「そうだね。でもさ、さっき居た女医さんとか、この船の船長さん、冨樫さんって言うんだけれど、見かけは怖いけれど、とても心優しい人なんだ。そういう大人たちがこの世には沢山いる。そういう大人たちを信じて頼るのも、必要なんだと思ったよ」
「…ヒロ、少し変わった?」
「うん、天上に居る葛城燿平…俺を生んだ人に、なんだか会いたくなった…かな」
「ふ~ん、良かったね」
 ただ一言だけアスラはそう言った。その言い方があまりにもアスラらしいので、ヒロは思わず声を出して笑った。

「あのさ、冨樫船長の好意でなんとか種子島の港まで行けそうなんだ。明日、月華に連絡取って、なんとか上手く天上へ帰れるように頼んでみるよ」
「マジでホント?うわ~、やった~。でもこれでふたりだけの冒険も終わりなんだね」
「バーカ、これからだって俺とアスラはずっと一緒だよ」
「ホントに?…絶対?」
「絶対ホントに約束する。俺はアスラと幸せになるよ。だから早く病気治そうな」
「わかった」
 ヒロはアスラの額にキスをした。
 できるならもっと…恋人らしい事もしたいと思わない事も無かったけれど、アスラを興奮させて具合を悪くさせる方が怖い。
 
 アスラを胸に抱いたまま、暗がりの天井を見上げた。
 何もないはずの天井にさっきデッキで見た夜空の星空が、ヒロの瞳には見える気がした。

「星が綺麗…」
 何も見えない天井を仰いで、アスラが呟く。
 この薄いアメジストの瞳には、鉄の壁を越えて、夜空の景色が見えるのだろうか…
 ヒロはアスラと並んで自分には見えない天井に指を指す。

「あれがスピカ、こっちがアークトゥルス、アスラと俺の星だよ」
「なんで?」
「夫婦星って言うんだって。それにスピカはアスラに良く似ているしね」
「そうなの?オレには眩しすぎて、長く見続けられないんだよね」
「そっか…でも似てるんだ。アスラみたいにまっ白に輝いてる」
「あのオレンジ色のが、ヒロのアークトゥルスだね。…うん、良く似てる。オレ、あの星大好きだ」
 ヒロと同じものを見ていても、きっとアスラの瞳は違う輝きに映るのだろう。それなら、それを教えあえばいい。違いを知る喜びは二倍になるだろう、と、ヒロは思った。

「アスラ、ずっと一緒に星を探しあおうな。約束だ」
「うん、天上へ行ってもずっと一緒にいよう」

 ふたりはお互いの鼓動の音を聞きながら眠りにつくのだった。
 その夜、ふたりが見た夢は、宇宙空間に漂うふたりの姿だった。
 大きな比翼の羽根で、どこまでも飛んでいく。

   ※

 ヒロとアスラの種子島までの船旅は、これまでとは違い、心休まる時間だった。
 確かにタカトの居た子供たちだけのアジトでは自由を味わうことが出来たが、この船では大人たちに守られて過ごす安心感を、ヒロはひとしきり感じていた。
 それは由良じいと三人だけだった長く平穏な日々とも違う、活気づいた船上での時間だった。
 冨樫船長を柱にした船員たちは、ガラは悪いが、皆精一杯に働くことを生き甲斐にしている。目の前にどんな荒波が来ようとも、経験と頭脳で切り開いていく。
 ヒロはただじっと待つ事も、危険であっても進んでいかなければならない時がある事も大切だと感じた。

 どちらを進むにも、選択するのは自分でしかない。
 大事な事は、未来を怖れてはいけない事じゃないのかな。

「なんだか段々と楽しみになってきたよ」
「なにが?」
 どこまでも真っ直ぐに広がる海原を眺めながら、ヒロは呟いた。傍らのアスラはゴーグルをしたままでヒロを見上げる。

「燿平父さんに会えることだよ。由良じいの代わりに俺が燿平を起こしてやるんだ」
「キスしてみたらいいよ。ほら、昔、由良じいが読んでくれた絵本にあったじゃん。魔法で眠ったお姫様が王子様のキスで目覚めるって。ヒロは由良じいの代わりに王子様になるんだね」
「いいのか?俺が別の奴の王子様になっても?」
「…?」
 アスラは何度も瞬き、首を傾げた。
「ヒロは馬鹿だね。お父さんを王子様とは言わないだろ?オレはそんなに心は狭くないぞ」
「それは畏れ入りました」
 ヒロはわざとらしく丁寧に頭を下げる。
「それにさ、ヒロを産んでくれたお父さんだもん。オレも会って話してみたいなあ」
「そうだな。…早く目覚めてくれるといいな」

 ヒロは由良じいの事を思った。
 燿平を想う由良じいを思った。

 人は誰かを愛したら、喜びも切なさも悲しみも幸せも背負う事になるのだろう。



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サクサクと書けたらどんなに楽だろうと思うこの頃。老化との戦いのように思える…((人д`o)

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