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topimage

2016-06

トップ絵の遍歴 - 2016.06.24 Fri

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このテンプレートになってからのトップ絵を並べてみました。
以前の奴は、大きさ関係なく貼っていたので、まちまちでしたね。

Greenhouseが終わってからだったので、sensoの…しかもアーシュが中心だったりしますね。
愛情ですね。

top-1.jpg
この頃はsensoがどこに向かっているのが、私も全くわからず書いてました。
まさかルゥにとってかわってイールが生まれてしまうとは…なんともルゥが不憫でした。
つか、この時までルゥがヒロインだったのにな('ε`汗)

アーシュモデル99
かっこいいアーシュを目指してました。
絵の描き方は、その時の気分で全く違う形になってますけど、この辺りは線画を太くしてますね。
ジョジョの影響ですかね…

アーシュモデル100
これはアスタロトなんだけど、日出処の天子の表紙をモデルにしてます。
処天の表紙は、どれも立ち姿がかっこよくて…まあ、あれも絵画や仏像がモデルなんだけどね…勉強になります。

アスタロト手11
イールとアーシュが出会うことだったけど、トップにするには少しエロかったので、短い期間だけでした。
ここに初めて来られた方が、いきなりこの絵じゃ、引くわ~ってなるかもしれんなあ~って思ったので。

top7
ふたりの肖像画的な感じです。
神殿の参拝客が初めて見る二神のイメージですかね。

top9
消えてしまったアスタロトを想うイールが、かわいくてたまりませんでしたね。
イールは初めはハーラル的な感じだったけど、段々優しい性格になっちゃたね。多分、アーシュが求めているものを探してたら、ああいうキャラに成長したってかんじだろうけど。

a-syumae8-6.jpg
これはもう、出来上がったアーシュですね。
アースでは魔王。クナーアンでは神様をやっていく決意ができた顔です。
私はこの絵が一番アーシュらしい気がして好きです。

top91jpg
人魚姫の長男のヴィンセントくん。
海の王子さまって感じ。
ヴィンセントは過去に色々やらかしてる気がするので、色んな話が書けそうなんだけど、もう気力がないwww

ray1-99.jpg
「銀色のRay」はアーシュを客観的に見るキャラが書きたかったのです。
あと、アーシュが居なくなった後を守る者が欲しかった。神也だけじゃちょっと不安だったから、彼を取り巻くガーディアンを増やそうと作ったキャラですね。
思ったよりレイにもセシルにも愛情が込められたので、良かったです。

i-ru99.jpg
この頃は若葉の季節だったので、それに合わせて爽やか系を目指してみました。
ドレスみたいだけど、長めnチュニックだから。ズボン穿いてるし~
木の上に居るアーシュを、見上げるイールの表情が大好きなんだよなあ~

アーシュとイール表紙3
アーシュとイールの最終ストーリーを考えてて描いたけど、まだ全然書けてないというね…。

新しいトップ絵はベルの息子のウィルアムだけど、まだイメージがはっきりしてなくて、髪型とか迷ってますなあ~
長めにしようか短めにしようか…
父親への反抗期なので、ちょっと不良がかってる感じにしたいんですけどね。

まあ、これからどうなるかわかりませんが、描きたい時に描けるように、常にアンテナを張り、向上心を持って頑張りたいですね。
スパイの心得は「とらわれないこと」らしいんですけど、私は常になにかに囚われ続けているみたいなので、スパイ失格ですかね。

最後に、若かりし結城中佐に締めてもらいましょう。
「貴様は馬鹿か」
結城中佐
ありがとーございまーす!


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夜を駆ける 10 - 2016.06.22 Wed

10
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  ヒロとアスラ最後

10
 ヒロと意識レベルでの会話が可能になった燿平が、己の瞼を開け、声を出したのはそれから一週間後だった。
 初めてヒロの顔を見た時、燿平は鏡を見ているのだと思った。
 ヒロは燿平の手を取って、「初めまして燿平。俺があんたのクローンだ」と、笑った。
 もう片方の手を握りしめ、喜びの涙を流していたのは、勿論、燿平と由良の最愛の娘、月華だった。
 
 長い間、眠っていた身体の感覚を取り戻す為のリハビリが始まった。
 思考の低下は無かったが、思うように動かない身体に、燿平は閉口した。
「早く動ける様になって、由良に会いに行かなきゃならない」と、燿平は何度も口にした。
 ヒロと月華は燿平の想いを地上の由良に伝えた。
 テレビ電話で燿平と話してくれるように頼んだが、由良はガンとして受け付けない。

「頑固も過ぎるとかわいくねえよ、由良じい」と、ヒロは呆れたように言う。
「可愛い老人など目指してない。燿平が私の目の前に来るまで、話もしないし、顔も見たくない」
 由良の言葉を恐る恐る燿平に伝えると、予想に反して燿平は声を上げて笑った。

「相変わらず可愛すぎて、たまらねえなあ、光流は。そんなに俺に会いたいんだ」
「…そうなの?」
 ヒロには些かふたりの会話が高難度過ぎて、意思疎通の意味さえ理解できない。
「歳をとってもいじっぱりは変わらないなら、こっちも変わらずにすげえ愛してるって言い続けるしかないんだよなあ~」
「…」
「あ~、早く地上に行って由良を抱きしめてやりてえよ。今度こそずっとあいつの傍にいてやるんだ」

 嬉しそうに微笑む燿平に、ヒロは由良の状態を話すべきか躊躇した。
 もし、由良には限られた時間しかないと告白したら、燿平は生きる気力を失ったりはしないだろうか。
 しかし、話さないわけにはいかない。
 由良はいつまでも待つと言っていたが、確実に彼の命の灯火は失われつつあるのだ。

 ヒロは月華に相談し、そしてふたり揃って燿平に話しを切りだした。

「あのね、燿平…。由良じいの事だけど、ずっと身体の具合が良くないの。すぐにどうこうなるわけじゃないけど、ドクターはもって二年ほどだと言うの。由良じいも覚悟を決めて、燿平に会うまでは頑張るつもりでいるのよ。だから…」
 月華はこれ以上言葉を続けられなかった。
 何も言っても、つまるところ、由良は遠からず死ぬ。

 月華の言葉を聞いた燿平はしばらく沈黙した後、大きく息を吐いた。
「そっか…。光流は死ぬのか…。じゃあ、俺もリハビリ頑張って、あいつが生きてるうちに会いに行かなきゃな」
 燿平は明るく笑いながら、ふたりにそう言った。

 ヒロにはわからない。
 恋人が死んでしまうのに、明るく笑っていられる燿平の気持ちが理解できない。
 愛していないはずはない。
 燿平と由良は誰よりも強く愛し合っている。
 こんなに長く離れても、少しも絆は緩んではいない。
 失うことが怖くないのか?
 ヒロは怖い。
 アスラを失うことが、恐ろしい。

 アスラは、この先もヒロと生きる為に選んだ脊髄遺伝子治療を続けている。

 人一人が入れるカプセルに一日六時間横たわり、治療を行う。
 酸素マスクを付けたアスラは裸のまま、長方形のカプセルに横たわる。
 そして外からも中からも一切光が通らぬ暗闇の中に、液状の治療剤が流し込まれ、海の底に漂う如く、静かに時間が過ぎるのを待つのだ。
 勿論アスラの意識はあるが、麻酔を掛けられる為、寝ていることが多いと言う。
 ヒロはその治療に赴くアスラを見送る度に、何とも言えない不安を感じる。
 真っ暗なカプセルに横たわるアスラは、まるで棺桶の中で眠りにつく死者のようだ。
 治療が終わり、アスラを待ち受ける時も、ヒロの心臓は不安の鼓動を打つ。
 波に呑まれ、海辺に流れ着いた溺死者のように、濡れそぼったアスラは儚い。
「アスラ」と名を呼ぶと、アスラはゆっくりと目を開け、ヒロの方を見て、なんとか笑顔を見せようと口元を歪ませる。
「大丈夫だよ、ヒロ。…オレ、頑張るからね」
 健気なアスラの言葉に、濡れた身体をしっかりと抱きしめるしかヒロにはできないのだ。

 それでも状態は思うように快方には向いてはくれない。
 いつ終わるかわからぬ治療に月華もヒロも焦り、不安が募る。
 一番辛いであろうアスラは、決して弱音を吐かない。それがふたりには余計に辛いのだ。

 不安な日々を過ごすアスラとは違い、燿平は持ち前の根性でリハビリを続行中だ。周りが思うよりも早く改善しつつあり、自分で上半身を起し、なんとか車椅子に乗れるまでになった。
 その様子を見る度にヒロには日毎悪くなるアスラと反比例している気がして、胸が痛い。

 何故死んだ者が生きかえり、こんなに元気になるのに、アスラの病気は良くなってくれないんだよ。いっそ燿平が…アスラの代わりに…

 ヒロは自分の浅ましい想いを憎く思う。

 燿平がアスラの代わりに苦しんだとして、何が良くなるわけでもない。
 由良じいが悲しむだけだ。
 誰だって大切な人が苦しむのを見たくはないし、早く救ってやりたいと思うのは当然だ。それを妬んでどうなるものでもないじゃないか…。
 
「ヒロ、聞いてくれよ。今日から歩くトレーニングを始めたんだぜ。自分の思い通りに足が動かなくて滅入るけど、まあ、光流の為だと思えばこれくらいなんともねえさ。あいつを簡単にお姫様抱っこできるくらいにはならねえとな」
 由良と生きる未来しか見ていない燿平の言葉に、ヒロはとうとう泣いてしまった。
「ど、どうした?ヒロ」
「アスラが…アスラが死んだら、俺…、どうしたらいいかわからねえよ…」
「死ぬって…。アスラが死ぬっていうのか?ちゃんと治療してるんだろ?」
「…経過が良くない。ちっとも元気になってくれない。アスラは…もう助からないかもしれない…」
 ヒロの涙がポロポロと車椅子に座る燿平の膝に滴る。
 燿平は一呼吸を置き、声も出さずに泣き続けるヒロの頭を撫でた。

「なあ、ヒロ。俺は預言者じゃないが、アスラは助かると思うんだ。何故なら、アスラには生きる理由がある。これがある奴はなかなか死神が近寄れねえんだぜ」
「…」
「信じられないってツラだな。よし、明日にでもアスラに会いに行ってやるよ。俺もかわいい息子の顔を見たいからな」
 自分と同じ顔がニコニコとヒロに笑うから、ヒロも釣られて笑いながら思った。
 アスラがヒロにそっくりな燿平を見て、困らなければいいが…


 翌日、治療を終え、カプセルから出てきたアスラを病室休ませている所へ、車椅子に乗った燿平が月華と連れ立ってやってきた。
「おまえさんがアスラかい?…めっちゃ可愛いな」
「燿平?…うわ…マジでホントに…ヒロにそっくりだ…」
 アスラは並んだ燿平とヒロを代わる代わる眺めながら、澄んだ薄緑目をパチクリとさせている。
 燿平は驚いた顔で見つめるアスラに満足気に笑い、アスラの頭を何度も撫でた。

「ヒロよりも良い男だろ?」
「ん?…そうだなあ~。燿平の方が大分おじさんだね」
「そりゃ、三十…いくつだっけ?月華」
「見かけは三十八、中身は五十八よ。アスラにとってはお父さんっていうより、お爺さんね」
「だとさ。寝てる間に歳はとるもんじゃねえな。損した気分になるよ」
「…燿平は面白いね」
 無邪気な顔でアスラは笑った。
 ベッドに座るアスラの隣に、車椅子から移動した燿平は、ズボンのポケットを探りつつ、世間話をするようにアスラに話しかける。

「まあ、死ぬ運命は神様が決めているとは言え、親より子供が先に死んだら、神様よりもこっちが許さない!…ってねえ。そういう事だから、アスラは生き延びるんだぞ」
「…うん」
「そんな顔しなさんな。大丈夫。ほら、幸運の指輪を持ってきてやった」
「指輪?」
「ああ、光流と誓った時のマリッジリングだよ。遭難した時、もう助からないって悟ったけれど、同時に絶対に生き延びてもう一度光流を抱きしめるんだって願ったのさ。どうやら俺の願いは叶いそうだから、今度はアスラの番だ。生き延びてヒロの元へ戻ってくるんだ。運命がおまえを呼んでも、おまえが一番欲しいものを望む事だ。わかったね」
「…うん。燿平、お父さん、って呼んでいい?」
「勿論さ。…しかし…光流が由良じいで俺がお父さんだと、また光流が僻まねえか?」
「あり得るわ」
「間違いなくね」
 四人は同時に笑った。
 久しぶりにアスラの病室に明るい声が響いた。

 燿平がくれたプラチナのリングは、アスラの指には大きすぎて余った。アスラは指輪をチェーンに通し、首からかけた。
 苦しい時や不安な時も指輪を握りしめ、一刻も早くヒロと一緒に居られるように祈った。

 早く良くなってヒロを安心させたい。ヒロと一緒に生きて行きたい。それから、由良じいや燿平と一緒に笑って暮らしたい。
 もう一度、ヒロとふたりだけの冒険を試したい。
 今度はもっとヒロの役に立てるようになるんだ。
 
「運命は受け入れるんじゃなく、常に自分が選んでいくことなのさ。生きることが辛いと思ったら、それまでだ。辛くても生き続けたいと思わなきゃ、受け入れるしかないんだ。だが与えられたものを黙って受け取るなんて、癪だろ?本当に欲しい運命(もの)は自分で奪い取るしかないんだよ」
 アスラに贈られた燿平の言葉を、アスラは何度も胸に繰り返した。

 そうだ。負けられない時は今までだって何度もあった。
 いつだってヒロのおかげで生き延びてきたオレだけど、今度はオレの為だけじゃなく、ヒロの為に絶対負けたりしないんだから。


 指輪の効果か、アスラの意志の強さが勝ったのか、それから少し経ってアスラの病状は好転し始めていく。
 月華も燿平も大いに喜んだが、ヒロは少しだけ気に入らない。

 なんで俺の存在よりも燿平の指輪の方がアスラを元気づけるんだ?
 全くもって気に入らない。鳶に油揚げだ。

 しかし、アスラが今回の治療を克服しても、ネオチルドレンである限り、短命である事は変わらない宿命だ。
 乗り越えなければならない険しい道が待ち受けている。
 運任せといわれる選択がある限り、どんなに望んでも、祈っても、叶わない未来はあるだろう。
 それでもアスラは負けない未来を望む。
 アスラの傍にヒロが居る限り、それを信じることができる。



 医療コロニーの宇宙港から地上へ一隻の船が出港する。
 ヒロとアスラは展望室から、その船を見送った。

 燿平が目覚めてから半年、歩けるまでに回復した燿平は地上で待つ由良光流と再会を果たす為に旅立つのだ。
 まだ杖を付きながらの歩行だ。
「お姫様抱っこはちょっと無理だが、セックスはできる」と、燿平は笑った。
「由良じいに拒否されない事を祈るよ」と、呆れながらヒロが言う。
「オレも早くヒロとセックスしたいんだけど、まだ無理させたくないからって、焦らすんだよ。ひどくねえ?」と、真顔で責めるアスラは、ヒロを慌てさせる。
「そりゃ、つれないよなあ。ヒロ、アスラをちゃんと満足させる男になれよ」
「いいから…俺達の事は構わないでくれ。あんたこそ由良じいに嫌われないようにな。二度と由良じいの傍を離れるな」
「わかってるさ。残りの人生、光流の為に尽くすさ。まあ、あいつがそれを望んでいるかどうかは…天邪鬼加減によるけどね」
 そういってウィンクして手を振る燿平を見送り、ヒロは思った。

 由良はきっと残された自分の命よりも、燿平の未来を思うだろう。
 そして、燿平は由良に何も言わせない。
 きっと、償うことより、愛しさが募るから。

「行っちゃったね」
「うん」
「もうここには帰って来ないのかな」
「戻る理由がないからね。でも、俺達には地上に帰る理由があるよ、アスラ」
「え?何?」
「冒険の続きがあるだろ?山も海もまだまだ俺達が知らない場所ばかりだ」
「ヒロと冒険?また行けるの?冨樫船長にも会える?」
「ああ、勿論だ。いつだってアスラをおぶって、どこにだって連れて行ってやるよ」
「え~、おんぶはちょっと恥ずかしいけどさあ…。でもヒロの背中あったかいからな」
「アスラをおぶってやる為に、俺の両腕はあるって思えばいい」
「じゃあ、お願いがあるの」
「なに?」
「ヒロの背中で、瞬く星空を見たい。いつかの夜みたいに走りながらさ。ふたりだけで夜の世界を駆けるみたいに」
「…」

 アスラの願いをヒロはいとも簡単に叶える気でいる。
 ヒロは黙ってアスラの身体を抱き上げ、その口唇にキスをした。
 何も言わなくても、ふたりには通じ合うテレパス。

 ずっと傍にいるよ。いつの日か、死がふたりを分かつまで。



  終

                                    2016.6.22


なんとか終わりました~。この半年、色々あったなあ~。色々疲れました…
まあ、次はまだ考えられないけど、ひと月以上書かないと、宣伝が煩わしいから、イラストだけでも更新します。
どうもありがとうございました。


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夜を駆ける 9 - 2016.06.04 Sat

9
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yurajii.jpg

9、
 その夜、ヒロは月華が用意したマンションの部屋へ帰り、地上の由良にテレビ電話を掛けた。
 ひと月半ぶりに見る由良の姿は、ヒロが想像するよりも衰弱しているようには見えなかったから、安心したのは確かだ。
 由良はひと月以上も音信不通のままだったヒロを酷く叱った。
 今まで由良はヒロ達を躾ける時も、大声で叱りつけたりしなかったけれど、さすがに滅多に見ない険しい顔で怒る由良じいを見て、今まで以上に深く反省した。

 息巻いた所為か、由良は眉間に皺をよせ、続けざまに咳をした。
 ヒロは少し慌てたけれど、無駄な心配を事さら嫌がる由良を思い、息が整うまでじっと待った。

『それでアスラの様子は?』
「今、医療センターで精密検査を受けてる。結果が出たらまた知らせるよ。それより…由良じい、具合どう?」
『私の事など構うな。どうせ老い先短いじじいだ。おまえが心配することでもない。すきにするさ』
 投げやりな由良の言葉に、ヒロはどうしたものかと悩む。心配している気持ちを伝えたくても、どうせ由良は取り合わない。

「あのさ…。俺、今日、葛城燿平に会ったよ」
『…そうか』
「あんまり俺に似てたから、びっくりしたよ」
 言うべきか迷いながらも、ヒロは口にした。
 いや、由良に電話を掛けようと考えた時点で、当然燿平の事を伝えようと思っていたのだ。
 ヒロの言葉を聞き、由良は少しだけ黙り、そして少しだけ笑った。

『似てて当たり前だ。おまえはアレのクローンなんだから』
「うん、でもね…俺が声を掛けても、目を覚ましてはくれなかったんだ。…由良じいだったら…由良じいが燿平に会ってくれたら、目を覚ましてくれるかもしれないよ。だって、燿平が一番会いたいのは由良じいだろ?」
『…』
「ねえ、由良じい、身体キツイだろうけど、こっちに来ない?月華もいるし、皆で一緒に暮らそうよ」
『…』
「その方が燿平も…」
『五月蠅い!』
「…由良じ…」

『五月蠅い、五月蠅い!今更…今頃になって生きかえるなんて…自分勝手も過ぎる話だ。あいつは、私が止めるのも聞かず、危険な開発地域を殊更に志願して…。地球の為だ、人々が安心して暮らせる土地を早く作りたいから、などと理想だけを掲げて、勝手三昧だった。私がどんなに心配したか、どんなに心細かったかなんて、一寸も考えてはいない。…ずっと一緒に生きて行こうって…誓い合ったのに、自分だけ先に死んでしまいやがって…。終いまで私の気持ちなんぞ、知らぬふりだ…。やっと、居ないことに慣れた頃に、生き返っただと?…そんな事知るか…。好き勝手に死にやがったんだ。好き勝手に生きかえればいい。…私はあいつに会いになど絶対に行かない』
「…由良じい…」
『もし、アレの眼が覚めて、私の事を覚えているのなら、「おまえが会いに来い」と、伝えろ。当然だ。今まで散々待たされたきたんだ。これくらいの報いを与えても罰は当たらんよ。それで、来る気がないならそれまでだ。私の命はもう残り少ないのだから、今度は残される辛さをあいつが味わえばいい。…?…なんだ?何が可笑しい?ヒロ』
「…いや、なんかさ…由良じいがそんなに他人を罵倒するのって初めて見たから、すげ~びっくりして、そしたら、それ突き抜けて可笑しくなった」
『…あいつへの恨みなら一晩中でも話せる。ただ言う相手が居ないから、言わなかっただけだ』
 少し頬を赤らませ不機嫌そうに横を向く由良じいが、ヒロには可愛くて微笑ましくて、いじらしかった。出来る事ならすぐにでも燿平を目覚めさせ、地上に居る由良の元へ連れて行きたい。

「由良じいの気持ちはわかったよ。俺、一日も早く燿平を起こして、そっちに連れて行くからね。約束するよ。だから、絶対に死なないで。約束だよ」
『それが余計な御世話というのだ。子供のおまえが、じじいの戯言に付き合う事はないよ。そんな事よりもおまえはアスラを守らなきゃならない役目がある。いいかい、ヒロ。何があってもアスラの傍から離れたりしては駄目だ。私の事は、気にするな。たまにこうして愚痴を吐くこともあるけれど、当て所の無い相手を待つ事ぐらいはなんとかなる。大丈夫、今までどうにか生きて来たんだ。あいつが会いに来るって言うのなら、気長に待っててやるさ』
 そうやっていつもの穏やかな笑顔でヒロに応える由良は、自ら電話を切った。

 ヒロは由良の燿平への真っ正直な想いを聞き、愛の深さを知った。
 幾歳月過ぎようとも、愛する者への想いは消えない事実を知った。

 俺はアスラを由良じいみたいに思い続けることができるんだろうか…

 答えはすぐに見つかった。

 何があっても俺はアスラを守る。死ぬまでふたり寄り添って生きて行くんだ。


 翌朝、ヒロは燿平の居る病室へ急いだ。
 燿平の手を握りしめ、昨晩の由良の話を聞かせた。

「ねえ、由良じいってかわいいよね。こんなにあんたの事を想っているんだよ。由良じいの事が好きだっただろ?大事にしたいって思ってたんだろ?ずっとあんただけを想って生きてきたんだ。その由良じいの想いが報われなきゃ男じゃないよね。葛城燿平、今度はあんたが由良じいを追っかける番だ!早く…ねえ、早く起きてよ!」

 燿平の瞼は動かない。
 だがヒロの頭に微かに聞こえる声がした。
 燿平の思念だ。
 普通の人間には理解できないテレパスを、ヒロは感じ取ることができる。
 今、ヒロは燿平の声を受け取った。

『…由良じい…由良…ひか…る…光流?…光流が居るのか?』
「燿平、聞こえてる?由良じい…由良光流はここには居ないよ。地上であんたを待ってるんだ」
『…地上…?日本?…どうして?』
「あんたは火星の探査事故でクレバスに落ちて行方不明になってしまったんだよ。捜索しても見つからず、皆あんたが死んだと思った。開発者の死亡事故者の遺族にはクローンを生み出す権利があるのは知ってるだろ?由良じいは…あんたのクローンを育てたんだ。それが俺だよ」
『俺の…クローン?』
「そう、俺は葛城ヒロって言うんだ。マジでホントそっくりなんだぜ。目を開けて確かめてみろよ」
『……』
「どうした?」
『…身体が動かない…。目も開けれない。指も動かない…』
「じゃあ、俺があんたの右手を握りしめているのはわかる?」
『僅かだが…温もりを感じる』
「じゃあ、大丈夫だよ。長い間、身体を動かしていないから、神経伝達が滞ってるだけじゃないかな。クマが冬眠から覚めるみたいに、少しずつ慣れていけばいい」
『まるで大人のような事を言う。おまえ…ヒロは幾つだ?』
「十七。由良じいは五十八。でもあんたは見た目は死んだ時の三十七歳の姿のままさ。コールドスリープって凄いね。細胞も成長を止めてしまうんだね」
『光流が五十…。信じられない』
「由良じい、年取った自分を見て、幻滅しないでくれって言ってた」
『するもんか』
「うん、そう、伝えるよ。だから早く目を開けてね」

 燿平の意識が目覚めた事を伝えると治療スタッフは、驚愕し、そして喜んだ。
 今後の治療の協力をヒロに求め、出来るだけ燿平の傍に居てくれるように頼んだ。
 ヒロは勿論そうするつもりでいると答えた。
 何よりも一刻も早く、由良に、そして月華やアスラに伝えなくてはならない。
 事情を説明し、ヒロはアスラのいる病院へ向かった。

 アスラの部屋のドアを開けると、ベッドに脇に立つアスラが月華に抱きしめられながら、泣いている姿が見えた。

「…アスラ、どうした?」
「ヒロ…別に…どうもしないよ」
 ヒロを見たアスラは慌てて両目を拭って、ぎこちなく笑う。
「どうもないわけねえし。…泣いてるじゃん」
「…月華、オレちょっと顔洗ってくるね」
「…うん、ひとりで大丈夫?」
「大丈夫だよ」
 そう言ってヒロと眼を合わさないように急いで部屋を出ていく。
 
 ヒロは月華に近寄って事情を聞こうとしたが、月華もまた濡れた目を指で拭いていたから、出掛った言葉を飲みこんでしまった。

「月華…」
「アスラのね、診断結果が出たの」
「…良くなかったの?」
「うん…。早々に脊髄遺伝子治療が必要なんだけど、アスラは元々ネオチルドレンだから、私達と同じような治療は、身体が耐えきれるかどうかわからないって…。それに…ネオチルドレンの寿命は短いわ…」
「……」

 優性遺伝子で作られた試験管ベイビーを、子供の無い夫婦が養子にすることが流行った時期があった。
 その中には、普通の人間にはない異能力を持つ子供たちが生まれてきた。
 彼らは「ネオ・チルドレン」と呼ばれた。
 人々は得体のしれない彼らの能力を怖れたが、その力と相まって多くのネオ・チルドレンが成人の年に届くことも無く、原因不明の高熱で死んでいった。
 彼らが生き残る確率は三割だと言われたが、今は五割程度だと言う。
 先天性の治療であるのなら生存率は高くなるが、後天性の治療は未だに無く、生き残る可能性は、運に任せるしかないと言われる。

「じゃあ、アスラは…アスラは大人になる前に死んじゃうって事?」
「そんな事、私にわかるわけないじゃない。何故ネオチルドレンが短命かなんて、今の科学でも解明できないんだから。それよりも問題は治療の方なのよ。辛い治療に三か月も耐えなきゃならないし、だからって成功する保証はないの。免疫治療が適合しないと、その時点ではアスラは…」
「何…?まさか、死ぬって言うの?…そんな簡単にアスラが死んじゃうの?そんな治療方法しかねえの?」
「…」
「…ねえ、月華は医者だろ?なんとかならねえの?」
「ヒロ…」
「だって…俺、さっき燿平を話したんだよ?身体はまた動かないけど、意識はあるんだ。ちゃんと話せたんだよ。俺の事も由良じいの事もわかるって、言ってたんだよ。一度死んだ人間が生きかえる時代だぜ?なんでアスラの病気が治せないんだよ!」
「ヒロ!」
 アスラの声がヒロの背中に聞こえた。
 ヒロは振り返った。そして、走り寄るアスラの身体を抱きしめた。

「アスラ…」
 いつのまにか泣いていたヒロの涙を指で梳い、アスラは笑った。
「ヒロ、大丈夫だよ。オレ、治療にも負けないし、大人になれる勝負にも勝つよ。オレね、自信あるの。だって、ヒロがいるからね。ず~っと一緒に生きて行くって約束したからね」
「アスラ…」
「大丈夫だから、泣くなよ。オレ、ヒロが泣くの嫌だ」
「うん、わかったよ。もう、泣かない」
 涙を拭ってヒロはアスラに笑い返した。
 アスラの苦しみに比べれば、ヒロが無理にでも笑うぐらいはどうってことはない。

「燿平、目覚めたんだね」
「うん、まだ瞼も開けれないけど、たぶん燿平なら大丈夫だよ。由良じいに会いに行くっていう目的があるから、きっと頑張ってくれる」
「じゃあ、オレも燿平に負けないくらい頑張る。燿平に伝えて。オレも早く会いに行くからって。ヒロのお父さんなら、オレのお父さんでもあるんだからね」
「わかったよ、アスラ。伝えておく。だから…ぜってえ良くなるって信じて頑張れよ。俺が付いてるからな」

 アスラは何度も力強く頷いた。
 この小さい身体はきっとすぐそこに近づいている不安や恐怖を知っているだろう。
 それを乗り越える気力と希望は、ヒロが導いてやれるはずだ。

 ヒロは強くアスラを抱きしめた。

 どうか、俺の神様。
 俺のアスラの命を奪わないでくれ。
 俺の生命力をアスラにわけてやるから。
 人はいつか死ぬ。
 そんなことは当たり前だ。
 だけど、どちらかが欠けるなんて、俺達にはまだ早すぎるだろ?
 なあ、神様。



アスラ顔

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