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2016-07

Horizon 1 - 2016.07.26 Tue

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horizon1.jpg

滅多に二次創作はしませんが…と、言うかこのブログでは初めてなんですが、アニメ「ジョーカー・ゲーム」に嵌ったので、記念に書いてみました。
一応、田崎視点で、あまたざですけど、BL臭は薄いです。
好みでは無かったらすみません。
前後編の予定です。
それでは、どうぞ。


Horizon

田崎が三好の死を知ったのは、欧州から帰国した結城中佐からの呼び出しの時だった。
D機関本部には田崎と神永、そして任務を終え、本部に帰り着いたばかりの甘利が居た。
三人が並んで中佐から具体的な三好の死に様を聞かされた時、田崎は顔には出さなかったが、自分でも驚くほどの衝撃を受けていた。
隣に立つ神永が、顔色一つ変えずに「三好は任務を遂行したのですね」と、平然と結城中佐に問うた。
中佐は黙って一度頷いた。
そして、田崎は後に続く言葉を持たなかった。

結城中佐の執務室を出た直後、甘利が「大丈夫か?」と、田崎の肩を叩きながら一言だけ声を掛けたが、田崎は当然のように「別に」と、返しただけだった。

スパイが任務により命の危険に晒され、もしくは「死ぬ」事など、珍しくは無い。況や、このご時世では尚の事、世界中どこにいても命の保証などあったものではない。だから三好の死も別段驚くものではないはずだ。
だが、「D機関」の基本理念は「死ぬな。殺すな」だった。
選ばれたエリートであるD機関員の中でも、飛びぬけて優秀だった三好の死は、田崎には簡単に受け入れかねる知らせだった。

その夜、本部の食堂で田崎、甘利、神永の三人は、三好を偲びながら飲んだ。
スパイ養成所で過ごした過去を懐かしみ、その時から、三年しか経っていない現実に驚き、そして刻々と変わっていく世界の状況に自分たちの任務が益々困難を極めるだろう未来に、頭を抱えた。
と、言っても、彼らは危険な状況を楽しむコツを知っている。
つまり危機が迫るほどに「腕が鳴る」わけだ。

問題は上が馬鹿な奴らしかいないって事だ!

と、神永がストレートのスコッチウィスキーを飲み干しながら喚いた。

おい、神永。声がでかい。どこに陸軍の諜報機関が聞き耳を立てているか、わからんぞ。

と、甘利。

俺は明日から、イタリア行きだ。三国間条約など、日本に何の得があるのかと思うがね。

いいじゃないか。イタリア女は陽気でいいぞ。

他人事だと思って、いい加減な事を言いやがる。

まあ、この状況じゃ、いつ日本がアメリカに宣戦してもおかしくない。

まさか。軍部もそこまで馬鹿じゃないだろう。

窮鼠猫を咬む…ってねえ。どうなるかわからんよ。

そう言えば、田崎の次の任務地は…シンガポールか?

何故わかる?

顔に書いてあるよ。おまえは自分で思うより、ポーカーフェイスじゃない。

昔から、甘利は人の顔を読むのだけは、上等だよな。

だけとは失礼だね。そういう神永は昔と違って、すっかり温厚になったものだ。

温厚と言うか…諦めるしかない事象が多すぎてね。いつ三好の二の舞になるかと考えると…頭が痛むわ。

三好は完璧なスパイマスターとして、誰にも気づかれずに死んでいった。簡単に真似できるもんじゃないさ。

死んで褒められても、三好が喜ぶものか。スパイだって死んだらおしまいなんだよっ!くそっ!なんで死んだんだよっ!三好の奴…ふざけるな!

幾つかの罵倒を繰り返した後、酔いつぶれた神永はテーブルに突っ伏してしまった。

珍しいものだ。

と、田崎は思う。
「D機関」の者たちは相当に酒には強く、演技ならともかく、本気で酔いつぶれたりは絶対にしない。

三好の死が、神永を本気で酔わせたとするならば…

中佐の前での神永が、芝居だったというわけだ。
他人事じゃないけどな。

田崎と甘利は神永を抱え、寝室へ運んだ。
上着と靴を脱がせ、ベッドに寝かせると、神永はすぐに気持ちの良い寝息を立て始めた。その様子を眺めたふたりは、互いに顔を見合わせ、苦笑した。

共同の寝室は養成期間中と変わらず、十のベッドが置いてあるだけの殺風景な場所だ。
一年もの間、住み続けていたと言うのに、自分の趣味趣向で彩りを添えようとする者は誰も居なかった。
同じ訓練をし、同じ釜の飯を食っていても、皆、自分の趣向さえ見せることはしなかった。「何事にもとらわれるな」とは、孤独に生きる事なのか…と、田崎は幾度となく疑問視したものだが、それについては、誰とも論ずる事は無かった。
他人に何かを相談することは、自尊心を傷つけることだと、いつかの三好が言っていた。

背広を脱ぎ、夜着に着替えようとする甘利を横目に、田崎は「少し酔いを覚ましてくるよ」と、ひとり部屋を出た。

狭い階段を昇り、屋上へ出ると、十一月の乾っ風が酔った頬を一瞬で凍らせた。
真正面を見据えると、金星と火星が低い南の空に一際輝いてる。

田崎は煙草に火を付けた。

間もなく夜明けだな。

音もなく田崎の背後から、甘利の声が響いた。

なんだ。寝たんじゃなかったのか。

三好の事を考え始めると、眠れそうもないのさ。

貴様でも…そうなのか?

当然だ。仲間が死んだんだからな。

そう言って、柵にもたれながら煙草に火を付ける甘利を、田崎はじっと見つめた。




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待ちぼうけ - 2016.07.04 Mon

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待ちぼうけ1



  待ちぼうけ

天の川の向こう岸には、夏彦の許嫁、織姫が居る。
年に一度の七月の七日、織姫の母御、西王母の命によりカササギが天の川に橋を渡し、その橋を渡り、織姫と夫婦となるようにと、約束が交わされた。
そう伝えられて幾年が経ったのだろう。

「はあ~…」
岸辺の岩に座り、夏彦は深い溜息を吐く。

  織姫ってどんな顔してんだろ

会った事も無い許嫁の姿形を想像するのは、夏彦には少々難題過ぎる。
愛情が募るわけでもないが、憎く思う事も無い。
こちらの皇子として生まれついた夏彦には、隣国との政略結婚に異議を唱える事はできないのだ。
ただ…
見知らぬ向こう岸の世界が、若者の逸る思いを燃える恋心に変えてしまう魅力があるのは確かだった。

  早くあちらに行って、織姫に会いたいな。きっと芍薬のように嫋やかに美しい御方だろう

夏彦は右手に持った芍薬の花びらをそっと撫でた。それから、それが己の妄想に過ぎないことを覚った。

天上の年月は天上人に歳を取らせず、ただこうして何時かの約束を待つのみだった。
当の夏彦さえ、毎年七月七日を朝から日がな一日、天の川岸で待つだけの繰り返しに厭きてきたのは否めない現実だ。
父王と西王母の命なればこそ、夏彦も粛々と従っているだけなのだ。

「夏彦、そこに居るのか?」
背中から声が聞こえた。
「兄者」
樫の杖を付いた銀瑛が、足場の悪い岩場を用心しつつ夏彦に歩み寄る。
「玉砂利が滑りますから、足元に気をつけてください」
言うよりも早く、夏彦は銀瑛の手を取った。
「ああ、ありがとう。世話を掛けるね」
銀瑛を座りの良い岩に案内した夏彦は、その隣に寄り添うように軽く腰を掛けた。銀瑛に何かあった時にすぐに支えられる態勢を取っていたいのだ。
それを感じてか、銀瑛は「相変わらずの心配性だね」と、微笑む。
その微笑は夏彦を幸せにする。

銀瑛は美しい。
その微笑みは誰をも幸福にする。
盲目でありながら、穏やかに、誰にも優しく、謙虚である。
夏彦は銀瑛を尊敬し、そして、兄として愛していた。

まだ歩くのもままならない頃、母は父の側室となった。
高位な女仙であった母は一人息子の夏彦を、第一皇子にすることを条件に王である父に嫁したのだった。
それまで皇太子であった兄、銀瑛は夏彦に皇位を奪われた形になった。
夏彦の後ろ盾には崑崙山の西王母が居る。その為、銀瑛の後見者は怖れを為し、彼の傍から離れて行った。
だが銀瑛は少しも僻む事も無く、幼い夏彦を純粋に可愛がった。
青年になるにつれ、病気の為に視力を失った銀瑛は、王の御所を去り、隠遁を決意するが、夏彦は「今度は自分が兄者を支える番だ」と、銀瑛と生活を共にする事にした。
それからどれくらい経ったことだろう。
今では、こうして岸で待つ事も、銀瑛が傍に居てくれることも、当たり前の風景に成り果ててしまった。
夏彦はそれに倦いている。
そんな風に考えるのは、夏彦の身勝手さなのだろうか。

「ねえ、兄者。いつものように笛を吹いてくれませんか?あれを聴くと、心が洗われます」
銀瑛は軽く頷き、腰に挿した龍笛を優雅な手つきで取り出し、その口唇に宛てた。
夏彦はそっと目を閉じて、鳴る笛の音に耳を傾けた。

澄み切った高音が夏彦の耳に、岸辺に、空に舞い上がる。
繰り返されるリズムと音階、それを裏切るような突然の緊張と緩和。
めくるめく奇妙な情念に、夏彦の身体は熱くなる。
身体が浮かび上がるような感覚と、落ちてゆく快感に、混乱と惑溺が一体化する。

やがて笛の音は静かに止んだ。
夏彦は目を開けて、銀瑛の横顔を見つめた。
銀瑛は少しだけ紅潮し、満足そうな顔でいる。

「見事でした。いつも兄者の笛には見惚れてしまうけれど、今日もすっかり囚われました…」
夏彦は感情の余りに涙した目を擦りながら、銀瑛を讃えた。
「おまえの為に奏でる時は、私も少し緊張するよ。だって、おまえは私の心を見透かすからね」
「そんな事…」

銀瑛は夏彦の手をやんわりと取った。
「そろそろ帰らないか?間も無く陽も暮れるだろう」
「そうですね。帰りますかね」
「…残念だったね、夏彦。気落ちして無いかい?」
「いいえ、年に一度の待ちぼうけは、そう嫌ではありませんよ。仕事も休めるし」
「それはそうだけど、私はおまえが不憫でならないよ。西王母さまもおまえの気持ちを少しは汲んでくれれば良いのにねえ」
「…でも、私がもしあちらへ行ってしまったら、兄者は独りになってしまわれます。お寂しくはありませんか?」
「夏彦が幸せなら、私の寂しさなど構わないさ。まあ、寂しくなった時などには、この岸辺でこうやって笛を吹こうかね」
「…」

夏彦は黙って銀瑛の手を握りしめ、立ち上がった。
「帰りましょう、兄者」
「承知した」

岸辺を去り際、夏彦はもう一度天の川を振り返った。
夕映えにキラキラと輝く水面は、夏彦の心を一瞬で奪い尽くす。
その圧倒的な輝きに眩暈がした。
今、ここにカササギが訪れ、あちら側への橋が掲げられれば、銀瑛と繋がったこの手を離し、一目散に向こうへ渡る事だろう。
もしも…

「どうかしたか?夏彦」
呼ばれた夏彦は銀瑛を振り返る。
彼の顔もまた紅く照り返し、美しい姿だ。
夏彦は嗤った。

  どっちにしろ、私は逃れられぬのだ。

「いえ、何でもないのです。ただ今夜は兄者に可愛がってもらわなければ、眠れそうもありません。待つ事には慣れたはずなのにね…」
夏彦はあざとく愚痴てみた。
真顔になった銀瑛は返す。
「おまえが欲しいものなら、なんでも与えるよ。それが私の愛だからね」
その応えは夏彦を満足させるものだ。

  明日になれば、あちらへの心躍る思いも好奇心も情熱も片恋も、天の川の流れのように流れ去ってゆくのだろう。
  兄者が私をそうしてくれる。

  そうして、私はまた次の七月七日を待つ楽しみを得るのだ。


                 2016.7.4


待ちぼうけ2

急に暑くなってきた~!
すでに夏バテです。
なんか「兄者~」って呼ばせたかったので、書いてみた。
だいたい兄者はズルいもの。


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