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2018-12

或る冬の夜に - 2018.12.30 Sun

 イラストはサムネイルでアップしております。
 大きく見たい方は、イラストをクリックしてくださいね。

 
雪夜


  或る冬の夜に

 冬が来ると、俺は歳をひとつ取る。
 今年もその日が来た。

 十五年前の十二月四日、「天の王」の校門前に捨てられた赤子の俺を、学長のトゥエ・イェタルが拾ったから、その日が俺の誕生日ってわけ。
 いつ生まれたのか、俺の親が誰なのかも知らないトゥエが、拾った日を勝手に俺の誕生日に決めたのは、俺としてはいかんせん納得がいかない。
「でもね、誕生日が無いと、いつ歳を取ったのかはっきりわからないし、何より誕生日のお祝いができないじゃないですか。だから、生まれた日がはっきりしなくてもアーシュの誕生日は十二月四日ですよ」
 と、いつもの穏やかな笑みで俺をあやすトゥエを、俺は信用していない。
 だが、とやかく言ってもわからないものはわからないし、無理にトゥエに問いただしても、適当に誤魔化されるのがオチだ。
 どうせ、そのうち…俺がもっと大人になれば、魔力でもなんでも使って、聞き出すことだってできるはずさ。
 だから、今はまだ従順なフリでもしておこう。


 今年はそのお誕生日って奴があいにくの連休で、誕生日パーティをやりたがっていたベルは、家族に呼び戻され、渋々と実家へ帰省した。
 愛人のメルからの誘いは魅力的だったが、今晩はひとりでいたいからと、断った。
 夕食を終え、寮の舎監から手渡された手紙をコートのポケットに入れ、独り、構内の外れにある塔を目指し、早足で歩く。
 塔の門の鍵は、俺しか持っていない。
 急いで開け、屋上まで昇るエレベーターのボタンを押す。
 年寄りの骨の軋みのような金属が擦りあう音と共に、箱はゆっくりと天を目指す。

 屋上に出て辺りを見回す。
 陽はすでに落ち、地上と天空の稜線を曖昧に見せていた。
 空気が次第に研ぎ澄まされていく感覚に満足し、俺は屋上の真ん中へ足を運ぶ。

 真ん中に描かれた魔方陣は、ほとんど消えかかっていたものを、俺がテンペラで丁寧に描きこんだ。
 その中に座り込み、魔方陣のざわつく感触を味わいつつ、カンテラを付け、眼鏡を外した。

 トゥエの命で幼い頃から伊達眼鏡をしているが、視力が悪いわけでもない。
 トゥエは、俺の美貌が周りを狂わすから、とか適当にほざいているが、本当のところは…俺の魔力を抑える為のものだと、歳を取るに付け、わかってきた。
 本気で俺の魔力をトゥエが怖れているのかどうかは、知らない。
 俺は「魔王」とか「アルトの王」とか、手前勝手に言いふらしてはいるが、そんなもの、プライドのたたき売りみたいなもんだ。
第一、魔力は見せびらかすものじゃない。
 ただ、俺が特別な者であるとは、とっくの昔から気が付いていた。
 そして、特別な者に与えられた運命が、自分の思い通りに行くわけもなく、だからと言って、悲劇を想像して嘆く必要もなく、目の前に立ちはだかる困難を、智慧と技と信頼と魔力で乗り越えるしかないって事も。

「悲しい性だよねえ~」
 自嘲しつつ、ポケットにしまい込んだ手紙を取り出す。

 一枚目はベルの叔父、エドワードからのバースディカード。
 乱暴なメッセージだけど、ひとりぼっちの俺を見内の様に思ってくれる慈愛に溢れたエドワードの優しさは、ベルにそっくりだ。
 それから、俺が「天の王」から追いだした、元不良のジョシュアからの手紙。
 彼は親しみを込めて、俺を「ろくでもねえ魔王」と呼んでくれる。
 俺が追い出したのは事実だけど、ジョシュアは、過去に囚われていた自分を自由にしてくれたのだと、言葉にしないけれど、俺を好きでいてくれる。
 今は、写真家として世界中を旅している。
 度々送られてくる旅先での近況報告は、「天の王」という籠の鳥から出られない俺に、異国の香りを届けてくれる。
だけどね、そこには自分を忘れないでくれと言う、懇願にも似た甘えが垣間見えて、なんだかとても愛おしくなってしまうんだ。
 そして、最後の一枚は…差出人の無いカード。
 俺はそれが誰からの者か、知っている。
 銀色の天狼(シリウス)。
 彼と出会ったのはずっと前の事。
 俺が十歳で、彼は高等科の三年生だった。
 小一時間だけ会話しただけなのに、見事なまでの彼の哀れな魂の美しさに、驚いてしまったんだ。
 アルトの中にもこんなに誠実な人間が居るのかと、俺は同情した。
だってねえ、魔力を持つアルトなんて、欲と虚栄心の塊で、魔力と言う毒牙で弱者を蔑んで楽しんでいるような低能な奴らも多いし。そのクセ、そういう奴らこそが、カリスマの強いイルトの隷属になったりするもんなのさ。馬鹿馬鹿しいにもほどがある。
 だけど、彼はあまりにも善人過ぎて、俺はその未来に同情した。
 「シリウス」とは俺が勝手に付けたあだ名。
 彼の「真の名」の存在に気づいてはいた。
 だけど、彼の魂を覗いてまで、探す気にはならなかった。
 彼がもっと本気で俺を求めてくるまでは、俺は待っていようと思う。
 名をしたためない俺へのカードが、本当の欲望を見せるまでは…


 俺の魔力は、歳を追う毎に段々と強くなっている気がするけれど、それをこの「天の王」が必要としているのかと言えば…今は、その時ではない。
 一年前、俺は恋人のルシファーを、魔力で彼の故郷へ送り去った。
 ちょうどこの魔方陣の中で消えゆくルシファーの手を離し、俺から自由にしてやったんだ。
 四歳の頃、記憶を失ったルシファーを俺が見つけた時、生涯を共に生きる番いの恋人と信じていた。だけど、そのすべてが俺の魔力の所為であり、ルシファーの運命を支配しているとしたら…
 俺は自己顕示欲の塊みたいな男だけど、誰かの運命を弄ぶ神にも悪魔にもなりたくはない。それが愛しい人であるなら尚更だ。

 本当はね、ずっと俺の傍に居て欲しかった。でもルシファーの人生は彼自身が決めるべきだから…

「だからってねえ~、一年も何の連絡もねえって、どういうつもりなんだよ!俺は怒っているんだぜ、ルゥ!」

 ルシファーの誕生日も、俺と同じ十二月四日。 
 何故なら、その日に、俺がルシファーを拾ったから。
 本当はルシファーの誕生日も、本当の歳も知らない。
 今は…遠く離れた、どこか知らない彼の生まれた場所で、両親に甘え、幸せに暮らしている事だろう。
 俺の事すら忘れて…

 忘却とはなんて残酷な性なのだろう。
 離れて一年を経ても、忘れられない俺の想いと、何の伝手もないルシファーの心の距離は、一体何故なんだろう。
 方法が無くても、想いぐらいは、俺の心に伝わってもよかろうに。
 夢にも出てこないなんて…

 そういえば、近頃、変な夢を見る。
 見知らぬ声で、「アーシュ」と呼ぶ。
 俺はその切ない声を、怖れているんだ。
 返事をするのさえ、怖くて…
 怖くて、耳を塞ぐ。
 それなのに、起きている時は、何度もその声を思い出そうとする。
 彼は一体誰なのだろう。
 何故、俺の名を呼ぶのだろう。
 いくら魔力を使っても、深い霧がかかったままで、一歩も近づけやしないなんて…
 黄泉のほとりにさえ、行くことの出来る俺なのに…
 

 カンテラを消し、仰向けに寝てみる。
 天は…あいにくの曇りの夜空。
 星は見えない。

「アルトの王、魔王アーシュが命じる!今すぐに天の雲よ、消え去れ!」
 適当な呪文と魔力を送ってみても、自然をどうこうできるはずもない。

「ああ、いいさ。好きにしろよ。帰って来なくてもいいさ。どこか知らない星で、好きに生きればいいさ。俺だってねえ~、ルゥなんか忘れてやるし…」

 目を閉じた。
 その瞼の裏に、ルゥの姿が見える。
 青空を写した水の色の瞳で、愛おしそうに俺をじっと見つめる。

「そう、まだ俺の事を覚えているんだね。…こうやって離れても君を支配する俺を、君はきっといつか、嫌になるんだろうけれど…」

 冷たいものが俺の右頬に触れた。
 目を開けると、天から降り続く柔らかい雪。
 道理で寒いはずだ。

「このままここで一夜を明かしたら、凍死するかもな」
『君が死ぬわけがない。馬鹿は死なないっていうだろ?』
「…このアーシュ様を、バカ呼ばわりするのは、君ぐらいなものさ。言っとくけどね、俺はバカじゃない。大馬鹿なんだよ!この混沌とした醜く支離滅裂な世界を、心から『うつくしい』と、思うぐらい大馬鹿なんだ!悪かったな!」
『そんな君が…僕は大好きなんだ。頑張れよ、アーシュ…』
「…」
 
 頭で描く妄想は、俺の勝手次第…。
 だって、君は居ないんだもの。

 俺は想う。
 俺のすべての魔力で、この世界が俺の想い通りに巡っていっても、俺は少しも満足はしないのだろうって。
 だけど、力を持ったままで、何もしないのも、とても馬鹿らしいから、俺は懸命に美しい世界を描くやり方を考えていくつもりだよ。少々乱暴であっても…
 
 人は成長と共に、生き方も考え方も変わると言うけれどねえ。
 俺も君を必要としなくなる時がくるんだろうか。
 別の誰かを、君以上に愛する事なんて、来るんだろうか…
 とても信じられないけれど、ほら、感情なんて危ういものだからさ。

 だからね、ルゥ、君がいつか俺の隣に還る時、君が好きな俺でいられるように、祈ってくれないか?
 この雪の降る、僕らの生まれた夜に。
 



☆この二年後、あっさりとルゥを裏切る軽薄なアーシュの黒歴史であった…



今年最後は、我が主、アーシュくんの愚痴で終わりますllllll(-ω-;)llllll
今年もお世話になりました。
来年もよろしくお願いします((∩^Д^∩))


このお話は「senso」の世界に繋がっています。
色々なお話がありますので、それぞれ左のカテゴリから、どうぞ~


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メリークリスマス! - 2018.12.25 Tue

今年ももう一週間しか残ってないんですね~
なのに…大掃除もやってない!
つうか、できないんですよ~
二か月ほど前から、じわじわと右肩が痛くなり、重くなり、五十肩か?と思いつつも、ほったらかしにしていたんですけど、腕が90度までしか上がらなくなり、しかも家事、パソ、お習字、お絵かきするのも、ままならぬ状態でして…
集中している時はいいんですけど、その後、めちゃくちゃ右腕が重くて痛い。
なので、小説もイラストも、今はほとんどやっておりません。
すみません(;´Д⊂)

今日、遅まきながら整形外科に行って、痛み止めを打ってもらいました。
治るまでには半年以上かかる…とか言われて、凹んでおります…

でもまあ…ぼちぼちとブログは続けていくつもりです。

とりあえず、メリークリスマス。
皆さまに、ステキなプレゼントが届きますように~

バレエ2

12月表紙イラスト - 2018.12.01 Sat

明日海りお風イラストで毎月綴っております、このブログ扉絵。
今月は、かの有名ミュージカル「エリザベート」のトート閣下であります。
はい、まず下書き~

トート表紙1
大体下書きは全体のバランスを考えて書くので、ごちゃごちゃしてしまう。
この下絵の顔も嫌いじゃないけど、みりおにはあんまり似てないな。

トート表紙1-2
みりおくんは、顔の稜線が非常に男前でシャープなので、美形に描きやすい。
写真で見ると、髪の色が結構藍色が多い事が、判明した。
舞台じゃ、ライトが当たってちょうどいい感じの銀色になるわけか~

トート表紙3
完成したもの。
クリックしたら、大きくなるよ。
羽は面倒だけど、自分で描きました。
その方がらしくなる気がしたので。

誰かがこのトートを「きれいなセフィロス」と言ってたけど、確かにセフィロスっぽい。
闇の帝王と言うより、王子さま。闇の公子…アズュラーンを演じてくれ!黒いみりおが観たい!

そんなわけで、来月はエドガーとかカサノヴァを予定してます。

ついでに「春の雪」の清さま。
清顕-2
この複雑なキャラを、よくもあそこまで舞台で表現できたな~と感心しました。
小説の方が、みりお清さまよりも、もっと静かで霞がかっている気がするけど、舞台だから、どうしても表現が大げさになるのはしかたない。それを引いても、ちゃんと清顕でしたね。
すばらしかったです。

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