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2019-02

Again 11 - 2019.02.10 Sun

11
 イラストはサムネイルでアップしております。
 大きく見たい方は、イラストをクリックしてくださいね。


 ルスラン7

ルスラン 7

 言葉を失い呆然としている僕を一寸だけ睨みつけ、アーシュはすぐに踵を変え、あっとう間にさっきまで居た林檎の木に飛び上がった。
 その細く若枝のような肢体から、僕は一時も目が離せない。
 と…
「おおい、おにーさん。俺が林檎を落とすからさっきみたいに受け止めて」と、叫ぶ声。
 言い終らぬ内から、僕に向って次々と投げつけられる林檎を、僕は命じられるままに、傷つけないように受け取り、足元に置く。
 彼もお構いなしではなく、熟した林檎を餞別しながら、ポイポイと投げよこしてくる。
 綱渡りのように細い枝に向かう足取りに、いらぬ心配とは言え、少しばかり肝を冷やしたが、彼は鮮やかに枝から枝に飛び移り、お目当ての実を捥ぎ取っていくのだ。

「これぐらいで良いかな~」
 林檎の木から降りたアーシュは、足元に置かれた相当な量の林檎の山を見て、満足そうだ。
 一体どうやって消化するのだろうと、聞こうとすると、当の本人の姿が無い。
 慌ててキョロキョロと辺りを探すと、古びた手押し車をすごい勢いで押してきた。

「はい、これに入れて!」
 命じられるままに、僕は収穫した林檎を載せていった。
 するとまた、彼の姿が見えなく、一時して壊れかけたブリキのバケツを手に走り寄ってくる。
「こっちはおにーさんの分。手伝ってくれたからさ」
「…」
 いや、これは元々僕の林檎の木なのだが…と、言おうと思ったが、すっかりアーシュのペースに乗せられた手前、彼を不機嫌にだけはするまいと心掛けた。

「こんなに沢山、どうするんだい?」と、彼の機嫌を見ながら問う。
「保育院に持っていくんだ。エダは料理が趣味だから、リンゴジュースにリンゴジャム。コンポートにアップルパイ。ガキ共はいつもお腹すかしているからね。寮の奴らにも分けてやるけどさ」
「君も…保育院の子?」
「そうだよ」
 僕の顔を見もしないで、一心不乱に林檎を運ぶアーシュは、さっきの乱暴でクセのある子には見えなくて、まるで純粋無垢な羽の生えた天使にも似て。
 あまり見つめてはまたドヤされると思い、チラリと盗み見するだけでも、この子の特殊な輝きに魅せられる。
 白磁のような肌に、仄かに紅く染まった頬、ギュと結んだ赤い唇、柔らかくくねった黒髪の跳ね具合の愛らしさ。少しばかり綻んだ藍色のケープも、一見してお古と思える学生服も、彼の輝きを少しも損なってはいない。

 リノが言ってた通りだな。
 保育院で育つ子は特別な子ばかり居るって言ってたっけ。だからこの子もこんなに…。

「あの林檎の木、実は僕の友達で…君のいる保育院出身の先輩が植えたんだ。それを彼が卒業する時に譲り受けてね。知らないかな。リノって言ってね、君より随分上にはなるけれど…ああ、保育院に良くお菓子を持って行くって言ってたんだけど」
「知らない」
まるで興味ないとでも言った風にアーシュは僕の話を一言で片づけてしまったものだから、僕はその先を話せなくなった。

「じゃあね」
 僕の分だと言い、バケツからはみ出すぐらいの林檎を積み上げた後、アーシュは急いで帰ろうと押し車に手を掛けた。
「待って!アーシュ!」
 彼の名を呼んだ僕の声が、何だか少し変な気がした。
 なによりも、鼓動が早い。
 こんなのはおかしい…
 
 呼ばれたアーシュは不機嫌に振り向き、僕を見上げる。
「まだなんか用?林檎足りない?それとも、俺のこの美貌にイカれて、犯したいとでも思っているわけ?」
「い、いや…そんな事…」
「じゃあ、何?」
「…」
 言葉が出なかった。
 なんというか…天使と思ったら小悪魔のようでもあり、それでいて、見事な整合性を持った自意識。
 惹きこまれる。
 もっと一緒に居たいと願った。
 なのに、彼と共有する話のネタすら思い浮かばない。

「あのな!リノって奴があんたの初恋の相手でも、俺には関係ねえし。大体黒髪に眼鏡の男なんてそこら中にいるだろ。おにーさんは俺が視て、いいひとだから、林檎を分けてやったんだ。それで満足しとけよ」
「!!」
 驚いたどころじゃない。
「き、君は…僕の思念を読んだのか?」
「ああん?読まねえよ。メンドクサイし。あんたの見てるものがちらりと映っただけ。言ったろ?俺、天才魔法使いで、魔王だって」
「…」
 そんな事って…
 僕だって一応は優秀なアルトのつもりだ。昔ならいざ知らず、簡単に他人に自分の思考を読ませるようなヘマはしない。
 確かにこの子は魔力は強い。でも僕の思考を探った感じは、全くしなかった。
 まだ十かそこらの少年なのに?

「おにーさんは俺の特別になりたいのか?」
「え?」
 真っ黒い闇の中に、無数の光を散りばめた大きな瞳が、僕を射る。
 何と言う力強さだ。
 眩暈がする。

「じゃあ、名前をやるよ。そうだな…ああ、その髪、飢えた銀狼みたいで綺麗だし、夜空の星にも似てるから、シリウス。どう?」
「どう…って」
「ああ…真名は別にあるみたいだけど…よく見えないな。でもまあ、じじいの付けた名前より、シリウスの方がかっこよくね?」
「じじい…学長の事?」
「他に誰が居るって言うんだよ」
「学長はまだ四十代だと思うけれど…」
「充分じじいじゃんか。偉そうに聖人ぶって、拾って育ててやったって恩着せがましいんだよ」
「…」
 なんだが昔リノが言っていた言葉を思い出して、思わず笑ってしまった。
「なにが可笑しい」
「いや、リノも同じ事言ってたから。学長に恩があるけど、それが癪だって…」
 軽い笑いに変えようとしたが、アーシュは僕を睨みつけたまま…
「…あんた、リノって奴に入れ込んでいるみたいだけどな。いいか!この俺様とそいつを比べるんじゃねえよっ!」
「…ゴメン」
 勢いに呑まれて、思わず謝った。
 全く…こんな子供に、僕が慌てふためいているなんて、ミカやハルが見たら、どう思うだろうか。いや、そんな事はどうでもいい。
 この子が僕を見てくれている事が、僕は嬉しいんだ。

「確かに保育院出身は悪目立ち過ぎるけど、根が僻んだ奴らばかりだから、あんたみたいな善人はすぐに騙される」
「僕は善人なのかい?」
「どこもどう見ても善人だよ。自分じゃわかんねえの?…ったく、これだから、普通のアルトって面倒臭いんだよなあ~」

 善人だなんて、こんなにはっきりと面と向かって言われた事が無い。なんだかくすぐったい気もするが…
「僕は、褒められているのかな…」
「褒めてねえし!しっかりしろって言ってるじゃないか。保育院出の奴らを簡単に信じるなって、わざわざあんたに教えているのがわかんない?…呆れた聖人君子だぜ。やってらんねえ~。俺、帰るわ」
「ま、待ってくれ、アーシュ。また君に会えるかな?」
 何が彼を怒らせたのか、僕には理解出来なかったし、彼を怒らせたまま、別れるのが嫌だったから、僕は思わず彼の腕を掴んだ。
 その細さに驚きつつも、彼の脈動が、強く伝わるのを感じだ。

 彼は…
 本物だ。
 僕らとは違う…
 本物の…

 アーシュは僕の手を振り払い、上目使いで凄味を聞かせた声で(もちろんソプラノではある)僕を罵った。
 
「勝手に俺に触るんじゃねえの!もう、盛りの付いたオスはこれだから嫌なんだよなあ~。俺に会いたがる男も女も五万といる。そんなのいちいち相手にしてられるかっていうの!つうか俺、番いの相手がいるから、諦めろ」
「つが…い…」
「そう!ルシファーってすげえ可愛い同い年の子でさ。まあ、なんつうか、相思相愛?運命の恋人?って感じなの。だからおにーさんの相手は無理」
「いや、君とどうかなりたいわけじゃない。ただ…友達に…」
「その友達というワードに、下心は無いと誓えるか!」
「…」
 思わず黙った事は、僕の最大のミスだ…

「あはは!マジでいいひとだ!気に入ったよ、シリウス!じゃあね!」
 満面の笑みを僕に返したアーシュは、押し車を物凄い勢いで押しながら、保育院のある建物の方へ走り去っていった。
 
 残された僕はなんというか…
 段々と腹の奥底から笑いが込み上げ、どうにも止まらなくなってしまった。
 こんなに陽気に楽しい気分を味わったのは、何年振りだろう…

 アーシュ、君は一体何者なんだ?
 母さんの予言した僕を導く者?
 そうであったら…
 そうであってくれるなら、
 僕は幸せになれる気がする。


Again 10へ /12へ

次もルスラン編、つうかアーシュ編?(笑)
人の魅了されるってこんな感じなのかな~って思いながら書いてみた。ルスランはきっと、アーシュよりも純粋何だと思う。


このお話は「senso」の世界に繋がっています。
色々なお話がありますので、それぞれ左のカテゴリから、どうぞ~


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2月表紙イラスト - 2019.02.01 Fri

明日海りお風イラストで、毎月扉絵を飾っております。

今月は「スタジオ54」のZ-BOYです。

まず下書き

ザック1

Z-BOYはロックスターさんなので、劇中歌歌ってます。
「スパイダーラブ~」とか叫びつつ、とっても色っぽくてかっこいいっす。
それを描きたくて、こんな感じに。

完成~
ザック-4

難しくは無かったけど、まだ五十肩が痛くて、長い時間描けないのが辛い…(;´Д⊂)

物語の方も頑張りたいです…

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Author:サイアート
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