FC2ブログ
topimage

2019-09

スバル 10 - 2013.06.25 Tue

10
イラストはサムネイルでアップしております。
大きく見たい方は、イラストをクリックしてくださいね。


伸弥なみだ

10、

「『仁科伸弥(19歳)は完治不能な悪性の脳腫瘍の為、故郷の実家で療養中だったが、十二月二十日の朝、近くの河原にて遺体が発見された。
当時の状況により、事件性は無く、警察は自殺と断定した』…」

キリハラは手に持った電報を静かに読み上げた。
「君をここへ連れてきた天野咲耶さんからの電報だ。仁科伸弥…くんは、スバルの大切な人だと…天野さんから聞いていた。君たちが手紙のやり取りをしていたことも知っている。だから学長は、何かあった時にと、天野さんと連絡を取り合っていたんだよ」
「…」

スバルはただ茫然と、ふたりの姿を見つめていた。いや、目は開けていたが、まるで盲人のように目の前には何も映ってはいなかった。
キリハラの話す意味が理解できても、それを認めてはいけない、という強い意志が「伸弥の死」を受け入れられないものにしていた。
何か否定的な言葉を投げつけようとしても、それはむなしさと憤りを吐き出すだけであり、ふたりを困惑させるにしか過ぎないだろう。

「…スバル、大丈夫かい?」
トゥエ・イェタル学長の穏やかな声に、スバルはハッとし、小さく「わかりました」と、答え、立ち上がった。
「スバル、どうする?もし、君が…ニッポンに行きたいと望むなら、学長は認めるとおっしゃっているけれど…」
「…」
スバルは、キリハラの言葉の意味を探り、答えを出した。

「いえ、結構です。僕が行っても伸弥さんは…もういないんでしょ?じゃあ、意味がない」
「…」
「すみません。僕、これで。…気分が良くないから…しばらく部屋で休んでいます」

スバルは学長室を出ると、寄宿舎の部屋へ一目散に走った。
溢れ出る涙を誰にも見られたくなかった。

ベッドの上で涙が涸れるまで泣きじゃくった。
伸弥の死を認めたくはないのに、事実だと受け入れている自分が悔しい。
伸弥の病気さえ知らなかった。
自殺するほど悩んでいたこともなにも…知らなかった自分が許せない。

夕食もとらず、伸弥の死の悲しみと自分のふがいなさを責め続け、スバルは夜が来るのをひたすら待った。
深夜、スバルは片手に燭台を持って部屋を出た。
廊下を歩くと、どこからともなく恋人たちの甘い嬌声が聞こえてくる。

スバルはまだ性体験がない。接吻(くちづけ)さえ交わした事もない。
すべては伸弥にだけ捧げるものだと誓っていた。
伸弥への愛が、遠く離れ、独り暮らすスバルを支え続けていた。
その伸弥が今はいない…

『…伸弥さんがいないこの世界に、僕が生きる意味なんて、一欠けらでもあるのだろうか…』
その答えは決まっていた。

スバルは寄宿舎の最上階、屋上へ登りつめた。
凍てついた冬の空は澄み切った空間を天の空まで伸ばし、キラキラと降り注ぐ数多の煌きに飲み込まれるようだ。

スバルは一瞬だけ空を仰ぎ、そして足早に屋上の端まで歩き、下を覗いた。

『いつだったか、愛したイルトに捨てられたアルトが、ここから身を投げて死んだと聞く。まだ15歳だったって言ってたけれど….僕がここから飛び降りて死んだら、最年少になるのかな…』

スバルは身を投げる決心で、ルーフの淵に佇んだ。

「おい、スバル。そこから飛び降りるなんて止めてくれないか?死体を片づけるのが俺じゃなくても、飛び散った血しぶきやら内臓やらの後始末をする職員が可哀想だろ?」
振り向くと、アーシュが立っていた。
パジャマにコートを羽織り、それでも寒そうに肩を聳えさせていた。

「…君には…関係ないだろう。僕がどうなろうと…」
「まあね、関係ないっつーたらそうだけどさ。まあ、同級生じゃん。それにほら、お互い愛する者を失くしたばっかりだからさ、君に同情してやるよ」
「…君のルゥは両親に会いに行っただけで…すぐに帰ってくるんだろう」
「それがさ…そう簡単にはね、帰れない。遠い~遠~い異次元に行っちゃったからね」
「…」

本気なのか冗句なのかアーシュの様子からでは判断しにくい。しかし、この状況にアーシュのことなど知ったことではない。
スバルはアーシュを無視して、前を向き直した。

「あのなあ、スバル。おまえが自殺されると、俺が困るの。トゥエからも頼まれてるしさ」
「…うるさい。君に何言われても僕はここから飛び降りて死ぬんだから」
「おまえ、何で恋人が自殺したか、知りたくねえの?」
「…」

スバルは振り返ってアーシュを見た。
さっきと違い、アーシュはスバルの目の前に立っていた。
「突然、愛する者を失って死にたくなるのはわかるけど、おまえ、そいつの気持ちとか何も知らないんだろ?どんな風に死んでいったのか、何を思って自殺したのか…」
「違う!自殺じゃない。…伸弥さんは…自殺するような弱い人じゃないっ!」
「…じゃあ、なにが真実か…おまえは知る必要があるんじゃないのか?本気で愛していたんだろ?本当の理由を知ってから、死んでも遅くないんじゃない?…飛び降りだけは勘弁して欲しいけどね」
「…どうやってそれを知ることができる。伸弥さんはもうこの世界にはいないんだ。どうやって伸弥さんの本当の気持ちを聞くことができる…」
「…本人に会って聞けばいいじゃん」
「…」

スバルは訝しい顔でアーシュを睨んだ。
「あのさ、俺を誰だと思ってるの?『天の王』始まって以来の天才カリスマ魔術師様だぜ。おまえを死んだ恋人に会わせることぐらい、訳ねえし」
「…え?…会える?し、伸弥さんに会えるの?」
「いくつかの条件が必要だけど…まあ、スバルは優秀なアルトでホーリーだし、大丈夫だろう」
「条件って?」
「俺に対する、愛、友情、敬意を払わなくてはならない。つまり全面的に信頼しろってことだ。スバルに出来るか?」
「…君とセックスしろってこと?」
「…いや、それはこっちもあんまり望まない。スバルはかわいいと思う時もあるけど、おまえの為にはならないだろうからね。つまり俺に身を委ねられるかって話」
「伸弥さんに会えるなら、命を捨てても構わない」
「…捨てる必要ねえし…。まあ、いいや。じゃあ、こっちに来て俺の手を取って…」
スバルは言われた通りにアーシュと向き合い、お互いの両の手を絡めた。

「俺にキスしろよ。口唇にだぜ。愛が無ければ、敬意を払え。おまえの恋人に会わせてやれるのは、俺だけだと信じろ」
「…」
スバルはアーシュの言葉を信じた。
アーシュの瞳を見つめたまま、アーシュに聖なる接吻(キス)をする。

お互いの口唇は冷たく、欲情など芽生えることはなかったが、舌を絡め合わせると、次第に少しずつ温もりを感じていった。

スバルはアーシュの瞳に輝く天の星々を見つめた。
それは、いつか伸弥と眺めたあの夜空の星の煌きに似ている…





アーシュパジャマ



9へ /11へ

思ったよりも長くなってしまい、次回最終回です~((人д`o)


お気に召しましたらポチなどして頂ければ、嬉しく思います。


ブログランキング・にほんブログ村へ
にほんブログ村



● COMMENT ●

スバルと共に生きて行く!と、強く強く思いを抱いていた伸弥
いくら 助からない病気と分かっていても 闘わずして 自らを死に追いやるなんて 到底 考えられないです。

アーシュの言う通り スバルは 伸弥の真実を知るべきですね。
私も すっごく 知りたいですし~!

お久し振りのアーシュが 相変わらずの俺様主義に 可愛く微笑ましく感じます。

今日の此方は 朝から大雨で 夕方 やっと警報が解除さらましたが、まだ 雨は降っています
サイアート様の所も まだ降っていますか?
///雨///…(。´_`。)=3...byebye☆ 

こちらも午前中は雨でしたねえ~
ここ2,3日雨が酷いので、山や河川が心配ですね。うちは全然大丈夫の土地なんですけどねえ~
去年も集中豪雨で大変な地域もあったりしたから、梅雨時期は皆さん大変だと思う。だと言って、雨が降らないと水不足になったりするからねえ~

アーシュはなんか出てくるだけで、勝手にしゃべってくれるんで楽ですね。可愛いし(*^▽^*)

次が最終回にしたいけど、長くなるかも…
ふたりの会話中心になるけれど、愛がいっぱいで終わりたいです。


管理者にだけ表示を許可する

スバル 最終話 «  | BLOG TOP |  » スバル 9

プロフィール

サイアート

Author:サイアート
イラストと駄文を更新しております。

少年愛を中心としたシリアス重視なオリジナル作品でございます。

ゆっくりしていってね~

サイズを記憶するフォントサイズ変更ボタン

文字を大きくする 文字を規定のサイズに戻す 文字を小さくする

ツリーカテゴリー

Script by Lc-Factory
(詳細:Lc-Factory/雑記)

最新記事

FC2カウンター

リンク

このブログをリンクに追加する