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2019-09

愛し子 7 - 2013.11.23 Sat

7
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天国へ

7、

アーシュとジョシュア、そして、僕は「天の王学園」の学長であるトゥエ・イェタルの最後の火が消えてしまう時を、静かに見守った。

身体と精神を傷めつけられているのだろう。
苦し気な呼吸を続けるトゥエの苦痛を少しでも和らげようと、僕は持てる限りの癒しの魔法で頑張ってけれど、トゥエの苦しみは、到底理解できるものではなかっただろう。
「ごめんなさい。僕の力が足りなくて…」
「…大丈夫だよ。ありがとう、スバル」
涙が止まらない僕に、トゥエは力の無い声で礼を言い、トゥエの胸に置いた僕の手に、痩せた手をそっと重ねてくれた。
段々と弱まっていくトゥエの心臓の音に、僕は伸弥さんが味わったであろう苦しみが重なってしまい、とうとう涙が止まらず、ひきつった嗚咽を繰り返した。

トゥエは途切れ途切れになりながらも冷静な声音で、僕らに感謝の言葉と、これから生きる希望を、それぞれに残してくれた。
トゥエの言葉をもらったジョシュアは、ふいにその場から立ち上がり「俺、見張っているから…」と、言い残し、部屋を出ていった。
きっと、泣いている顔を見られたくないのだろう。
それとも…トゥエとアーシュの聖なる輝きに、耐えられなかったのかもしれない。

アーシュは、泣くことも、憐れむ表情も見せず、ただトゥエの頬を優しく撫で、時折頷きながら、微かに微笑んでいた。
その姿は、まるで死に行くトゥエを導く死神か、女神のように…僕には見えた。
アーシュもトゥエも、すべてを受け入れているのだ。

そして、アーシュはトゥエの口唇に、ゆっくりと口づけた。
「ありがとう、トゥエ…親父殿。あなたが俺を生んでくれたから、俺はここに在る…」
「…あ…アーシュ……」
「…大好きだよ、トゥエ。愛してる。…さよなら…。死があなたを安らかな場所へ導きますように…。ね、会いにいくよ。…いつだって、俺にはそれができるんだから…」

アーシュの言葉を聞いたトゥエは、笑みを浮かべ、目を閉じ、そして、呼吸を止めた。

僕は号泣した。
トゥエが死んでしまった悲しみと、こんな風に…アーシュみたいに、伸弥さんを見送ってやれなかった自分への後悔と、してあげたかった想い…が胸を締めつけて、どうしようもなかった。

「スバル、泣いてるところ、悪いが、ジョシュアを呼んできてくれ。…天の王に帰ろう。みんながトゥエを待っているからな」
「う…うん」
冷静なアーシュを少し恨めしく思いながらも、僕は泣きじゃくりながら立ち上がり、ジョシュアを呼びに行った。


ジョシュアはまだ温かいトゥエの亡骸を背負い、僕はその後ろを、アーシュは先頭を歩きながら、甲板を目指した。

「甲板に出たら、ワープして、この船から離れよう。スバル、携帯魔方陣は持ってきたか?」
「うん」
「じゃあ、外に出たらそれを使って、ジョシュアとトゥエを港まで運んでくれ」
「おまえはどうするつもりだ?」
アーシュを案じたジョシュアが言う。
「俺は…まあ、ボスと会ってみるよ。どうしてトゥエがこんな風に死ななきゃならなかったのか、俺には奴らに聞く義務があるからな」
「で、俺達だけで逃げろってか?…そんなの俺が素直に聞くとでも?」
「…」
ジョシュアの言葉にアーシュは振り向き、驚いた顔を見せた。
「忘れた~。ひねくれ具合では俺同様のジョシュアが、素直に聞くわけないよなあ~」
「当たり前だ」
「じゃあ、トゥエとスバルと一緒に、俺の超絶かっこいい姿を、眺めていてくれ」
「…だから、自分で言うなって言ってんだろ!」
ジョシュアは呆れながらも、少しだけ笑ってみせた。
そんなふたりのやりとりが、僕には切なくて、また涙が溢れてしまった。

いくつかの階段を昇り、やっと甲板への出口が見えた。
薄灯りの点いた艦内と違い、真っ黒な夜空が見える。
「誰にも気づかれなくて良かったね」
「そう簡単にいくもんかっ」
僕の暢気な言葉に、苛立ちを隠さないジョシュアが言い放つ。

ジョシュアは魔法使いではないけれど、どうやら僕よりもよっぽど、先見は鋭いらしい。
予感は的中。
僕たちが甲板に上がった瞬間、船のサーチライトが僕たちを照らしだし、いくつもの銃を構える引き金の音が聞こえた。
その音が思ったよりもずっと激しくて、僕は絶体絶命の気がして、思わずジョシュアの腕にすがりついた。
「…なにビビッてんだよっ!」
「だって…」
「こんな事ぐらい、予想はついてただろ?」
「…だって」
「おまえは一応ホーリーなんだろ?アーシュの力になる為にここに居るんだろ?しっかりしろよ」
「…」

だって、僕は…危険だってわかっているから、来たくなかったのに、アーシュに無理矢理連れてこられて…でもそんな弱音吐いてる場合じゃないって、わかっているけれど、足が震えて、仕方ないんだもの…

「スバル。携帯魔方陣で結界を張っておきな。弾丸ぐらいは弾き返せるように、十分魔力を込めてな」
「そ、そんなこと…」
やったことない!
「どうやらカメラも回っているし、全世界に生放送でもしてくれりゃ、こっちも助かる」
「え?なま…放送?」
「トゥエの処刑を見せつけるって言ってたしね。ほら、あそこのブリッジに影が見えるだろ?あれが例の俺たちの先輩のハールートなんとかっていう、クーデターの張本人だぜ。隣に居るのが魔術師か…。まあ、それなりの力はありそうだが…」
「おい、それよりも、俺達、囲まれてるぞ。どうするんだ?」
「ま、話し合えばなんとかなるでしょ?ジョシュア、おまえ知ってたか?昔の偉い人の言葉で『和を以て、貴しと為し、忤ふること無きを、宗とせよ』だってさ。スバルの故郷の人らしいぜ」
「…ごめん、知らない…」
「そんなもん、知るかっ!」
こんな時に、歴史の授業みたいなこと言ってくれるなよ、アーシュ。
…でも…なんとなく、アーシュの余裕を感じて、少しだけ安心しているのは確かなんだけど…

「で、アーシュ。俺らの先輩って奴を、どうする気だよ」
「まあ、痛めつけるのは最後の手段…って事で、あれでもトゥエの愛し子だし、きっとトゥエも彼の死を望まないだろうし…、どうにか話を付けてくるよ」
「…テロリスト集団に、話し合いが通じるのかよ」
「…彼の言い分を何も聞かず、片づけてしまっても、こちらも後味悪いだろ?それだけだよ、ジョシュア。君と同じ。誰だって、自分でもどうにもならないジレンマや想いを、どうしていいのかわからないでいるんだよ。だからって、俺がそれを理解してやるかどうかは、別の話なんだけどな」
「…」
「じゃあ、行ってくる」
「あ、アーシュ、僕…」
「大丈夫だよ、スバル。おまえは、この船の中じゃ、俺の次に強い魔術師だ。本当だぜ」
「…」
僕は無意識にジョシュアの顔を見た。ジョシュアは信じられるかよ、と言った顔をしている。僕もそう思ったけれど、アーシュのドヤ顔を見てたら、なんだか悩んでいるのが馬鹿らしくなってしまった。

「わかったよ、アーシュ。ここでトゥエとジョシュアを守って、君を待ってる」
「頼んだよ」

片手を上げ、黒のマントを翻らせ、アーシュはゆっくりと、甲板から舞い上がる。
僕もジョシュアも…銃を持った周りの兵士みたいな奴らも、一応に、ゆっくりと優雅に飛ぶアーシュの姿に、見惚れていた。

僕はあわてて、携帯魔方陣をポケットから出し、空に投げた。トゥエとジョシュアと僕を包むように、透明な膜のようなものが、僕たちの前に降り注ぐ。
ジョシュアはトゥエを甲板に下ろし、両腕の中に抱き寄せた。

「トゥエ、どうか、アーシュを見守っててください。あいつはやんちゃだから、何をしでかすかわかったもんじゃない。でも…俺じゃあ、何の役にも立てないんだ……」
トゥエに話しかけるジョシュアに、僕は彼の真の心に触れた気がした。
そして、アーシュが彼を信頼する意味も…

トゥエもジョシュアも僕も…みんな、アーシュを愛しているんだね。
それぞれの愛の意味は違っていても、アーシュが大好きで、彼の傍にいたくて、彼の役に立ちたくて、彼を守りたくて…
とても…とても大切な存在なんだよね。

「ジョシュア、僕、頑張るからね」
トゥエを抱きしめるジョシュアの手に、僕は自分の掌を重ねた。
少しだけ驚いたジョシュアは、「ああ、頼りにしてるぜ」と、笑った。



スバル18

ちょっと風邪気味が続いてて…ちょっとの頭痛~

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● COMMENT ●

トゥエ…
その最期の時は 望むものでは無かったかもしれない。
でも アーシュが告げた言葉で 幸せに その時を迎えた。と、思いたい。

そのまま 学園に戻る事も出来た筈なのに テロリスト集団の長 クーデターの首謀者 ハールートと話したいと思う所が、やっぱり アーシュは アーシュなんだと 感じます。
それが トゥエの為でもあると 思えますし...

この事が切欠で スバルは 自信を持ち 優れた魔術師と なるのでしょうか?

あーでも やっぱり スバルより アーシュに 目も 気も向いてしまう!
だから アーシュが、ハールートと対峙した時の様子や 話す内容が もっと気になる~~!!

サイアート様、風邪は 少し ましになりましたか?
体調が良くない時は、少しでも食べて ゆっくり寝て下さい。
このコメへの返事は不要で お気遣い無く~♪
お大事に… 余計に 眠れない(*・・)"ヾ('▽'*)良い子♪良い子♪眠れ~♪眠れ~♪...byebye☆

ありがとうございます。
風邪だったけど、食欲だけはあったので、パクパク食ってました。…その所為かなのか、お腹壊したけど…

アーシュはなんか…自分の我を通したがるというか、興味あるものに突っ込んでいくタイプなんだろうねえ~
たぶん、ハールートはアーシュみたいな奴に会いたくないし、毛嫌いしてると思う。

アーシュとハールートの話し合いは…まあ、ぶっちゃけると、スバルの位置からはあまり見えてないし、聞こえないので、書けませんwww

もうすぐ神也くんがでてくるので、そこを書けるのが楽しみ~
あと、スバルといちゃいちゃしてくれることを祈る。
まあ、スバルは手が出しにくいだろうけど…神也が…
結局スバルは精神的には受けなんだろうねえ~

神也はまだ私が描いたことのない性格なので、ちょっと楽しみなんですよ。
無垢なくせに、すごく冷静で、物事に動じないし、感情を見せないことをずっとやってきてるから、他人を無視してしまうし…割と欠陥のある子だけど、憎めないし…
まあ、アーシュは気にいるだろうけどねえ~


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