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2019-09

「破壊者のススメ」 1 - 2014.01.12 Sun

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この物語は過去の小説「Green House」に登場した嶌谷誠一郎と宗二朗の恋物語です。
凛一を大事にずっと支え続けた誠一郎が、どんな人生を送って来たのかを考えたくて、そして誠一郎を愛し続ける宗二朗を描きたくて、いつか書けたらと思いました。

凛一は1991年の四月十四日生まれなので、27歳年上の誠一郎は…そして、誠一郎より5つ下の宗二朗は…そしてその親たちの時代は…と、どんどん遡って行くと、昭和の高度成長期から始まる事に…
とか、言ってもさすがに私もそこらへんの時代は知らないので、適当に流して下さいませ。

ふたりの恋物語を、よろしければ見守って下さいね。

イラストはサムネイルでアップしております。
大きく見たい方は、イラストをクリックしてくださいね。

嶌谷兄弟

6、70年代に世の中を騒がせていた学生運動の最中に意気投合した父と母は、親、親戚の反対を諸共せず、駆け落ち同然に家を飛び出した。
港が見える山の手の、古い民家にふたりは暮らし、父は書きものに、母は貿易商社の通訳として働き始めた。
ふたりはすぐにかわいい赤子を授かった。
それが俺、嶌谷宗二朗(とうやそうじろう)だ。

学生時代は中二病的な左翼思想気味の父だったが、大学を卒業後は、何故かプロレタリアートへは進まず、自己の精神論を極めようとストア派の自然哲学に没頭し、一冊の本を出した。
一時的に話題となった問題作「破壊者のススメ」は、今は絶版となり、奇特な古本屋にあるか否かだろう。

父は、俺が四歳の頃に、俺と母を捨て、家を出た。
と、言うより放浪の旅へ出た。
もとより、世俗的な決め事などにこだわらなかったふたりは、戸籍上でも夫婦ではなかった為、父の旅立ちに関して、母は嘆くどころか、多少の旅費まで出してあげたのだから、不幸な出来事とは言えまい。
現実には母の給料で生活をまかなっていた所為もあり、父が居なくなったおかげで食いぶちが減った分、生活は楽になったとも言える。

それから一度も、父とは会っていない。
風の便りに、赤道付近の小島で農業を営んでいるとかいないとか…
それが彼の選んだ道なら、それはそれで良いのだろう。
兎にも角にも、父のおかげで俺はこうして生まれ、破天荒な人生を楽しんでいるのだから、感謝すべきだろう。

随分経って(8,9歳頃)、俺は母に尋ねたことがある。
「お父さんは、俺がいたから…家を出て行っちゃったのかなあ~」
母が外で働いている間は、父は家事と赤子の俺の世話で自分の仕事もままならぬ程だったらしい。
「どうしてそう思うの?」
「赤ちゃんの世話って大変なんだろ?それが嫌で出て行っちゃったのならさ、俺が居なけりゃ良かったのかなあ~って…」
「バカね、宗二が居たから、あの人、あそこまで頑張れたんじゃない。一生懸命にオシメ替えたり、ミルク作って飲ませたり、抱っこして、あやして…ね。いつもいつもあなたの事を、かわいいかわいいって、頬ずりして…物書きよりも育児の方が楽しくて仕方がないって…。もっとも頼まれた仕事もなかったからね。家を出たのは、きっと…あの本を書きあげたからだと思うわ」
「本?」
「宗二朗、人はね、何かをやり遂げた時、もう自分の人生はこれで終わりだって思う時があるのよ。でもその先も生きなきゃならない。だから、生きる為の何かを探しに、彷徨(さまよ)うの。おとうさんみたいに…」
小学生の俺に、母の話は半分も理解できなかったけれど、無鉄砲な父を責めなかった母が、偉大に見えた。

そうして、俺は彼の精魂込めた哲学書なる本を、未だに読んでいない。



「破壊者のススメ」 1



父が出ていった後、俺は保育園へ預けられた。
まだシングルマザーが一般的ではなかった時代、保育園での俺の噂は決していいものではなく、その上、ガキ大将の俺は、気に食わないクソガキたちを悉く泣かせるものだから、ガキの親たちからはクレームの嵐。
が、それ以上に俺の母親は恐ろしく、クレームを垂れる親ひとりひとりに向かって、延々と持論をまくしたて、それでも聞かないと、英語、フランス語、イタリア語などで喚き散らすものだから、敵もタジタジとなり、捨て台詞を吐いて帰っていく…と、いう事を繰り返していた。

そんな母は料理も裁縫も掃除もいい加減で、決して家庭的ではなかったかもしれないが、夜はいつも小さな俺を抱いて一緒に寝てくれた。
あたたかい腕に抱かれ、母の子守唄を聴きながら寝る毎夜。
おかげで俺は少しも寂しい思いをしなかった。
だけど、母はたぶん…寂しかったのではないだろうか。

俺と母のふたりだけの生活は、俺が六歳の誕生日に終わりを告げた。
何故なら、母は俺を連れて、実家の嶌谷(とうや)家へ戻る破目になったからだ。


そのふた月前、晴天の日曜の昼だった。
よそゆき服を着た俺は、家の前の狭い坂に泊まった一台の黒のクラウンから出てきた男の人にいきなり抱き上げられた。
「やあ、宗二朗くんだね。わあ、大きくなったなあ~。何時以来だっけ?…ああ、そうだ。君が生まれてすぐに一度お祝いを持ってきたんだが、君のお母さんに追い出されたんだよなあ~。覚えていないかね?」
「バカね、生まれたばっかりの子が、覚えているわけないでしょ!大体、なんで兄さんが来るのよっ!私、自分で行くから、迎えはいらないって言ったでしょ?」
「…来たかったから、いいじゃないか。さあ、ふたりとも、つべこべ言わずに、早く車に乗りなさい」

母は不貞腐れた顔で俺を後部座席に乗せた後、自分は迷わず助手席に乗り込んだ。

「早く車を出しなさいよ、兄さん。ほら、隣りの奥さんが驚いてこちらを見ているじゃないっ!」
「まだ自己紹介もしていないのに、澪子(りょうこ)はせっかちだなあ~。宗二朗くん、僕は君のお母さんのお兄さんで、君の伯父さんの嶌谷晟太郎(とうやじょうたろう)と言うんだ」
「…伯父さん?」
「そう。かっこいいだろ?ジョーって呼びすてにしてもいいんだよ~」
「バカ兄、何言ってんのよ。いい?宗二朗、この伯父さんは、変な人だからかまわないのよ」
「変な人とは酷いなあ~。澪(りょう)だって、小さい頃は、ジョー兄さんってかっこいい~って言ってただろ?」
「うるさいわ。さっさと車出しなさいよ。お父さん、待ってるんでしょ!」
「そうなんだよ。澪子が孫を連れて来るからっていったら、あの偏屈親父が喜んじゃって。もう半月持たないって言われてるけど、まだまだ長生きしそうだよ…」
「…そこ、残念風に言わないのよ~、兄さん」

まるで漫談を聞いているようだった。
目的の病院までは一時間ほどだったけれど、ふたりはずっと、喋りつづけていた。
暢気な伯父さんの話に、すごい剣幕で突っ込みまくる母だったけれど、そんな母が見たことないぐらいにとても楽しそうで、俺はなんだか嬉しかったことを覚えている。

そうして、母と伯父の晟太郎と一緒に、総合病院の特別室に入院していた祖父嶌谷聡一郎(そういちろう)に初めて対面した。
始めた見た祖父は、病気の所為か痩せて、顔色も悪く、髪も髭も灰色で、絵本で見た外国のいかめしい偉い人のように見えた。
これまで祖父の存在を知らず、突然、病気の祖父を見舞うから、と、母に言われ、俺なりに年老いたお爺さんを想像していたけれど、実際の祖父は老人と呼ぶには若く、とてもかっこよく見えた。
祖父はまだ六十を過ぎたばかりだったから、当然だろう。

勘当同然で家を出た後、母は一度も祖父には会っていなかったらしく、久しぶりに会った実の父親を前に、緊張した面持ちで、ベッドの祖父と向かい合っていた。
俺の祖母、母にとっての実母は早くに亡くなっていたが、祖父には本妻である祖母以外に妾が三人居り、それぞれに子供がふたりずつ居た。
母はそれも気に入らなかったらしく、父である祖父とは、昔から気が合わなかったらしい。
一言も喋らないふたりに飽きたのか、伯父の晟太郎は俺を抱き上げ、祖父のベッドへ近づけた。

「ほら、お父さん。この子が澪子の子供の宗二朗だよ。かわいいだろ~。なにかしら澪子の小さい頃よりずっとかわいいよなあ~」
「兄さんったらっ!」
「…そう、じろう?」
「そう、嶌谷宗二朗くんだよ。そういや、お父さんと同じだね」
「…」
「全然違うし。聡一郎じゃくて、宗二朗!べ、別にお父さんの名前をもらったわけじゃないわ。単なる偶然。漢字も違うんだから」
「そこ、必死になるところでもないだろ?澪子は相変わらず素直じゃないなあ」
「…兄さんったら、ホントにイケズなんだから」

伯父の采配で張りつめた空気が幾分和らいだのか、祖父は手を振って、俺を招いた。
「宗二朗は何歳だ?」
「もうすぐ六歳。来年の四月には小学一年生になるよ」
「そうか。では、お祝いをしなくちゃなあ。何か欲しいものはあるか?」
「…あのね」
「うん」
「僕ね、家族が欲しいの。いつもお母さんと僕とふたりだけだから。僕は保育園で友達がいっぱいいるから平気だけど、お母さんはひとりで頑張っているの。褒めてくれる家族がいないのって、さみしいでしょ?だから、お祖父ちゃんやジョー伯父さんが、僕の家族になってくれたら、嬉しいな」

誰もが羨む可愛い器量を武器に、我ながらなんてあざといガキだったのだろうと、思い返すほどによくもやってくれたものだと思うが、半分は本気だった。

母の寂しさや心細さを、俺はなんとなく感じていたし、母とふたりきりの生活にも、俺は大概飽きていた。
それに始めて会った祖父や晟太郎伯父が、たまらなく面白く、また頼もしく思えて、本当に気に入ってしまったのだ。

祖父は俺の言葉を聞き、初めて優しく微笑んだ。
「…オレの家族になるか?宗二朗」
「違うよ。お祖父ちゃんが、僕の家族になるんだよ」
「ほう、おまえの家族になるのか…」
「そうだよ。大きくなったらお金持ちになって、僕がみんなを食べさせてあげるよ」

三人の大人たちは一瞬の沈黙の後、大いに笑った。

当時、俺は嶌谷家が鉄鋼業で一代を築いた有名な資産家の家柄だとは知らなかったのだ。


その日は、病院を出た後、晟太郎伯父と昼食を取り(行ったこともない高級なレストランだった)、帰りは駅まで送ってもらった。
伯父との話し合いで、母は実家へ帰ることを決心し、俺もそれを了承した。

家路へ向かう急な坂道を、手を繋いで登りながら、母は俺に言った。
「宗二があんなに猫かぶりだなんて、知らなかったわ。自分の事を『僕』とか言っちゃってさ。お母さん、吹き出しそうになっちゃった」
「だってえ~」
「あ~あ、せっかく宗二とふたりだけでかっこよく生きていこうって思っていたのに…。よくもやってくれたわね。おかげで出戻りのお邪魔蟲になっちゃったじゃないのっ!」と、母は拳固で俺の頭を軽く叩いた。
「いてっ!…だって、ふたりよりたくさんの方が、面白いじゃん。ジョー伯父さん、すごくいい人だし、お母さんだって嬉しそうだったし…」
「…」
「でも嫌なら、辞めていいよ。俺、お母さんとふたりでも大丈夫だから…」
「バカね、嫌じゃないわよ。でもね、宗二朗。伯父さんにも家族があるし、今みたいに好き勝手にしてちゃ駄目よ」
「伯父さんの…家族?」
「そうよ。伯父さんの奥様と息子。あなたより五つほど年上の従兄殿。誠一郎くんよ」
「誠一郎…」

それは、俺がこれからの一生を賭けて愛し続ける男の名前だった。





2へ

ふたりがチラリと登場する「Green House」はこちらからどうぞ。大概おっさんですけど((* ´艸`))
目次へ
登場するのは主に凛一編だけです。

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● COMMENT ●

誠一郎と宗二朗…
あーすみません。
最近 ポンコツ度が増している私の脳では、...凛が よく行ってたバーのマスターでしたっけ??
間違っていたら ごめんなさい┏○))ペコ

今日の成人式は、去年と違って 各地の天気は良かったのでしょうか?
過去、デートを優先し 式には出席しなかった私は その事に 今も後悔は無いのだけど、
毎年 成人式の日が来ると、母が 「せっかく作った着物が、勿体ない」と、必ず愚痴ります(苦笑)
まぁ 片手でも余るほどの回数しか着てないからねー
いつか 生まれて来る孫娘に 大事に取っておくつもりです。
まだ先は遠い...(; = =) 。o 0...byebye☆
 

覚えていなくてもこのお話には、影響ないですから、大丈夫ですよ。
なんか、この歳になると、若いぴちぴちしたお話もいいけど、たまにこういう渋い話を書きたくなったりして。
と、いうか、若い頃の話なので、ぴちぴちはしているんですけど。

成人式…一応、行きましたけど、うちの市は華美にならないように着物は駄目だったので、ふつ~にスーツ着て行きましたね。でもちっとも楽しいものじゃなかったわ。息子たちも大して面白くなかったって言ってたけど…
必要あるのかねえ~
いつもTDLの成人式はうらやま~って思うけどさ。

私は着物は結構着ましたよ。結婚式の色打掛にも使ったし、知り合いの娘さんや姪にも貸してあげたし。
すごく気に入っているので、死んだらこの振袖着せて、御棺に入れてくれってダーに言ってるけどね。

今年もよろしくお願いします

Green House をまた読んで、復習しなきゃって気になりました。

更新楽しみにしています。

成人式の話に乗っかって、うちの息子は久しぶりに会えた友達に喜んでました。

1次会は某ホテルで市内の成人式、2次会はまた違うホテルで高校の成人式、3次会はまた違うところで・・・と。
今年ではないですけどね。


こちらこそです(*^▽^*)

蝶丸さん、こんにちは( ´ ▽ ` )ノ
あけましておめでとうございます。今年もよろしくね。

嶌谷兄弟(従兄弟同士だけど)は、GHを書いていた時から、とても気になっていたのです。だから若い頃のふたりを見たかったの。
良かったら楽しんでくださいね。

そうですね~。成人式は同窓会のようなものですからね~。
うちは上の子は友人が少ないので、割とさっさと帰ってきたけど、下の子は朝に帰ってきたかな~
私はというと…私も二次会まで行ったけど、楽しいって感じはしなかったなあ~
小、中学の同級生は今でも付き合ってる友人は省いて、そんなに話が合うって感じでもなく、また自分も合わせる気がないっていうか…女性より男性の方が、お酒で盛り上がるっていうのかしら。
成人式の面白い思い出ってのがないんですよねえ~( `^ω^)=3


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