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2019-11

「破壊者のススメ」 4 - 2014.01.31 Fri

4
イラストはサムネイルでアップしております。
大きく見たい方は、イラストをクリックしてくださいね。

soujirou99.jpg
4、

あれは、俺が小五、誠一郎が高校一年生の頃だった。
それまで一緒に風呂に入ったり、ひとつのベッドで寝たりするのは当たり前であり、お互い楽しんでいるものだと思っていたけれど、梅雨の続いた夜、誠一郎はベッドに潜り込もうとする俺に「宗二は五年生になるんだから、ひとりで寝れるだろ?」と、俺をベッドから追い出した。
「どうしてさ。この間までは一緒に寝てたじゃない。それにいつも一緒に寝てって言ってるわけじゃないよ。今日は…さっきテレビで観た映画が怖かったからさ…」
「宗二の弱虫」
「違うよ。いつもは誠一郎も怖いから、一緒に寝てって俺に頼むじゃないか」
「今まではね。でももう…おれも大人なんだよ。だから宗もひとりで寝ておくれ。おやすみ」
と、誠一郎は力づくで俺をベランダに追い出したのだ。

なんだよ、今までは怖がって震えながら俺を抱き締めて寝てたクセに。それに、急に自分の事を「おれ」って言ってみたりしてさ。
…ムカつく。

誠一郎の心変わりはなんとなく気づいていた。
高一になってから、誠一郎は校内のペンパルクラブに入部した。
ペンパルっていうのはいわゆる文通のことで、世界中の外国の学生たちと文通することで、外国語も学べるからと、誠一郎は楽しんでいた。
部活動で毎晩遅くなるのは、珍しくはないだろうけれど、手紙を書く部活で夜十時を過ぎるなんておかしい。
大体、誠一郎は感情を表情にはあまり見せたりしないけれど、彼の弾くピアノの音にはそれがダイレクトに反映され、楽しかったら弾み、落ち込んだ時は悲しい音になる。
ここのところ、ピアノの音は弾みっぱなしだった。

因みに居間にあるグランドピアノとは別に、誠一郎の部屋には練習用のアップライトピアノがある。
暇があればそれを弾いていた誠一郎だったけれど、彼の部屋を覗いたりすると、机に立てた両肘に顎を乗せて、ぼーっとしたり、溜息を吐いたりしている姿をよく見た。

なんだかとても不安になった。
俺の知らない誠一郎が居て、俺からどんどん離れて行ってしまいそうで…

「誠は好きな人がいるの?」
いつものように誠一郎の部屋で勉強を見てもらっている時、俺は彼に聞いた。
「え?…まあ、いるよ」
「部活で一緒の人?」
「…よくわかるね」
「だってさ、部活から帰って来た時、誠、いつも嬉しそうな顔してる」
「そう?…うん、三年生の先輩なんだけどね、すごく親切で優しいんだ…」
「誠一郎は男の人が好きなのか?」
「…」
「だって、誠一郎の学校は男子校じゃないか」
「…」
「そういうの、ゲイっていうんだよな。だけど…男同士じゃ結婚はできないぜ、誠」
「け、結婚だなんて…考える方がおかしい。宗は小学生だから、誰かを好きになる気持ちがわからないんだよ。それに…好きになるのに、男子も女子も関係ないし…」
「男とセックスしても子供はできないんだよな。誠一郎が男の人しか好きにならなかったら、嶌谷家は誰が継ぐんだよ。誠は嶌谷財閥の跡取りなんだろ?誠一郎がそんなんじゃ、ジョー伯父さんが可哀想だよ」
「…うるさい。子供のクセに…知ったかぶりして…。別に…今だけだよ。大人になる過程での一種の過渡期の感情だよ。そういう風に小説にも書いてあるし…」
「ふ~ん。じゃあ、好きにしろよ。俺は知らない」

俺は乱暴に机のドリルを片づけ、立ち上がった。
誠一郎は不安な顔で、俺を見上げている。
彼の不安はすぐに理解した。

「誠が男の人を好きだなんて、伯父さんと伯母さんには言わない」
「…」
「だから…口止め料、五千円」
俺は手を差し出した。
誠一郎はあわてて、机の抽斗を開け、お年玉袋から五千円を出し、俺に渡した。

俺はそれを掴み、一瞥して彼の部屋を出た。

金を無心したのは、それきりだった。
俺は、誠一郎を脅迫したことを、とことん後悔した。
あれから、誠一郎は俺を警戒するようになったのだ。
表面上は変わらない。
同じ屋根に暮らす弟のように、接してくれたけれど、冗談で笑いあう時も、どこか、引け目のあるような笑みを浮かべる。

俺は後悔した。
あの時、誠一郎を責めずに、彼の味方になるべきだったのだ。
だけど、どうしても俺は許せなかった。
誠一郎が男を好きになるということよりも、俺以外の奴を好きになることが…


夏休みの半ば、誠一郎は部活の合宿があると言い、外泊をした。
三日後の昼、帰宅した誠一郎を見た時、その様子が変わってしまったことを理解した。

目元が赤く腫れていたり、声が少し翳んでいたり、首元の薄く痣がついていたり…
こいつ…

誠一郎は例の男と寝やがったのだ。

俺は自室のベッドで横になる誠一郎に近づいた。
誠一郎は俺を見て、目を逸らした。
「なに?…おれ、疲れてて、眠いんだ。出て行けよ」
「…誠は汚い」
「…」
「きっと、そいつに捨てられるんだ。そしてまた前みたいに、泣くに決まっているんだ」
「…うるさい」
「なんで…なんで…」

俺は叫びたかった。
どうして、俺じゃ駄目なんだ。俺と寝てくれりゃ、俺だって…。
だけど、誠一郎が選んだのは、俺の知らない男だった。
知らない男と…。

「男と寝たんだろ?誠」
「…」
「嶌谷家の跡取り息子が、男とセックスしたなんて…バレたら、大騒ぎだよな」
「そ、宗二っ!」
「ばらされたくないんなら…そいつと別れろ」
「…できない…」
「じゃあ、俺にも同じことをさせろ」
「…バカなことを言うなよ。宗二はまだ子供だろ」
「セックスをさせろって言わないし…。でも、誠は俺のものだから…約束…してよ」
「…宗…」
「誠が誰と寝ても、俺は誰にも言わない。でも、誠は俺の言うことを聞かなきゃ駄目だ」
「宗二朗…」
「誠…俺のものになってよ」
「…」

誠一郎は黙って頷いた。
彼がどう思って俺の告白に頷いたのかは、その時はわからなかった。
子供の独占欲と我儘だと理解したのかもしれない。
もとより、彼はかなり混乱していたのだ。
初体験の甘さと苦さと痛みに…
俺は無意識で、誠一郎を追い込み、約束を取り付けたのだ。

彼は後になって後悔したが、俺は後の祭りだと詰り、絶対に破棄しなかった。
約束の証として、俺たちはその時に、くちづけを交わしたのだから…


翌春、付き合っていた男が高校を卒業すると同時に、誠一郎はまたもや、捨てられた。
「別に捨てられたわけじゃないさ。遠距離恋愛なんてめんどくさいから…お互いに納得して別れただけだよ」と、誠一郎は強がってみせたが、二か月ほどは食欲がなく、ピアノの音も沈みっぱなしだった。
そのピアノも誠一郎が高二の夏になると、受験勉強に集中したいからと、自ら、レッスンに通うことも辞めてしまった。
音楽好きの由ノ伯母さんは、悲しんでいたし、俺も誠一郎の弾くピアノが大好きだったから、何度も引きとめたけれど、そういうところは頑なな誠だった。
「両親には内緒だけど、大学は関西の国立を目指しているんだ。どうせ、大学を卒業したら、嶌谷グループに入社させられるんだから、それまでは自由にさせてもらうよ。独り暮らしも味わいたいしね」
「…」

俺は別れた男とまだ繋がっているのか…と、訝んだけれど、調べたところ、男は北大の学生だったから、目的は親の目を盗んで、好き勝手に遊ぶつもりなのだろう。

「新しい男を探しにいくのか?」と責める俺に「…宗はちっともおれに優しくないね。そんなんじゃ、宗と恋の話はできない」と、返した。

誠一郎の言う恋ってなんだよ。
俺がずっとおまえを好きなのは恋じゃないのか?
俺のものになれって言うのは、恋の告白じゃないのか?
わかってないのは誠一郎じゃないか…


高三の夏休み、前の年の冬から誠一郎の家庭教師をしていた東大の四年生との情事を、俺は誠一郎の部屋のベランダで盗み見た。
俺は、さっそく忍び込み、カメラで現場を盗撮し、次に家庭教師が家へ来た時に現像した写真を見せた。
家庭教師のFは、一見真面目そうな見た目と裏腹に、黒縁眼鏡の奥の瞳が狡猾そうで、俺は吐き気がするほど嫌いだった。
こいつが誠一郎と…と、思っただけで殴りたくなる。

Fは差し出した写真を見て慌てたけれど、誠一郎が誘ったのだと言い張った。
俺は、すぐさま家庭教師を辞め、二度と誠一郎には手を出すなと言った。
Fは黙っていた。
それで俺は最後通牒を叩きつけた。

「先生、あんたさ、嶌谷グループの主力企業に内定決まったんだってな。いくらなんでもやばいんじゃない、跡取り息子の誠一郎に手を付けちゃあさあ…。関係をばらしてやってもいいんだぜ?どうみてもあんたが強姦している写真だよなあ、コレ。晟太郎伯父さんに見せたら…折角決まった就職先がどうなるのかな~…」
Fは真っ青な顔をして、何度も頭を下げた。
二度と誠一郎には近づかないと、誓約書を書かせ、俺はそいつを嶌谷家から追っ払ってやった。

来なくなった家庭教師を、誠一郎は俺の仕業だと知っていたが、何も言わなかった。
ただ一言「宗は容赦ないね…」と、しおらしく呟いた。

どちらが誘ったのか、誘われたのか、そんなものはどうでも良かった。
あの日、足を抱えられ、Fに乱暴に突き上げれる誠一郎を…そして泣きながら果てる誠一郎を、俺は揺れるカーテン越しに眺め続けていた。

Fの名前を呼び、喘ぐ誠一郎を見た時、俺はFよりももっと誠一郎をめちゃくちゃにしてやる、と決心した。

中学一年の夏は、俺を破壊者へと導いていった。




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破壊者と言うのは、壊れた者ではなく、壊す者なのである。


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● COMMENT ●

4話を読んだ感想を言うとしたら 「まぁ 何て 恐ろしい子!」でしょうか(笑)
幾ら 幼かろうが、人間は 酷く残酷な一面を持つ生き物
それは 分かっていても 大人は 幼い者を 純心無垢だと信じたい節があって…
だから 恐ろしい出来事があった場合でも 大人が行ったより いっそう酷く衝撃を受けたりしますものね!

宗二朗にとって 誠一郎への感情は、恋だと言う
でも 私には 愛着か執着に思えて… 大好きなオモチャと誠一郎は 同等?

今の様に 自分の感情を 相手にぶつけ 押し付けるだけは無く 思い遣る事の大切さを知った時こそ 本当の恋ではないのかな?
破壊者宗二朗が、それに気付いた時 どうなっているのだろう。。。
そして 誠一郎も!
(。-`ω´-)ゞ...ンー...byebye☆




コメありがとございます~(*^▽^*)

この物語は、もう結果がわかっていての、宗二朗の伝記的なものなのですねえ~
若い頃は俺もやんちゃでした~テヘ…みたいな~
まあ、自分が破壊しちゃった人を、今もがんばって支えています…(介護的な…((* ´艸`)))
でも誠一郎は、それほど感謝していない…みたいな…。
どこまでも自己中なあたり、ふたりとも駄目な大人…。

そんなかわいいおっさんたちの、ダメな話ですかね…('ε`汗)

バレンタインには、かわいい…まあ、昔書いた奴なんですけど…それをちょっといじったのをうP予定です。
ひさしぶりのハルカ×ミナトです。


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