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2019-09

続・バレンタインデー 1 - 2014.02.14 Fri

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イラストはサムネイルでアップしております。
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漣11


続・バレンタインデー 1


転勤族の父親の所為で、俺「柊木栄嗣(ひいらぎえいじ)」は、生まれた時から社宅で育った。
社宅というのは、案外仲間意識が強く、すぐに打ち解けあい、家族同然の付き合いになったりする。
だけど、折角仲良くなった社宅の仲間や近所の友人とも、二、三年も経つと別れが来てしまう。
「ずっと親友だからね」と、涙を流して別れた友人も、最初は電話を掛けたり、繁盛に手紙を出したりするけれど、そのうちに年賀状だけの関係になってしまうんだよな。
当たり前に納得しなきゃならない事だろうけれど、俺はなんだが腑に落ちなくて、自分の性格が悪いのかもしれないと、真剣に悩んだりもした。
親の転勤で住む場所が変わるのは、現代じゃどこの家族にも当て嵌まることで、それを不幸なんて思う奴なんていないんだろうけれど、俺はずっと不幸だと感じていた。

だって、俺には親友がいない。
兄弟も居ないひとりっ子の俺には、心を開いて気兼ねなく何でも話せる兄弟のような親友がどうしても欲しかった。
幼い頃は親友が欲しくて、下校の途中、神社に寄り道をし、毎日のように「僕に親友を下さい」って拝んでいたくらいだ。
その願いが適うかも…と思う間もなく、親父の転勤でまた引っ越し…。
家族がようやく落ち着ける持家に住めるようになったのは、俺が小学五年生の春だった。

太平洋側の温暖な気候を持つ新興住宅地での新しい生活は、それまでの、次はどこへ引っ越すのだろうか…と言う不安が消えた所為か、毎日が明るくすべてが楽しかった。

学校生活にも直ぐに慣れ、沢山の友人たちが俺を慕ってくれた。
それまでに引っ越しが多かった所為もあり、俺は自然と人好きのするような振る舞いに慣れ、手っ取り早く信頼を得る為に、テストで良い成績を取り、僻む者たちへの心遣いも怠らず、誰にも好かれる真面目な生徒であるように心がけていた。
「女は愛嬌、男も愛嬌よ」とは、母の教えであったが、実践してわかるありがたい教訓だ。

クラス委員や生徒会委員なども嫌がらずにこなした結果、中学校に入学する際には、新入生代表の挨拶まで仰せつかった。
まあ、俺より勉強ができる奴も、スポーツが出来る奴も居るには居たけれど、先生たちに一番受けが良かった俺が選ばれたのだろう。
だからって自分が偉いなんて全く思えないんだけどね。逆に気に入らない先生たちに対しては徹底的に反論してみたり、意見を通す為にはこちらも戦力を練り、戦闘態勢を整えなきゃならない、とか、中坊らしく息巻いていたりしてね。

友人はみんな俺を支持してくれた。
でも、みんながチヤホヤしてくれる中で、俺はいつも孤独な自分を感じていた。
本当の俺を見せられる親友には、まだ巡り合えていなかった。

友達の中の、たったひとりの最高の友達…それが親友。
恋人よりも固い絆で、夫婦よりも正直に、家族よりも甘えられる…そんな親友なんて、お馬鹿な俺の絵空事なのかな…
だけど、ついに俺は俺の頭に描く親友になるべく権利を持った奴に出会った。

同じクラスで同じバスケ部で、この春、俺の家の近所に越してきた「仁井部(にいべ)漣(れん)」だ。
「漣」なんて、チャーミングな名前に似合った色白童顔の少年。
少し頼りない顔立ちをして、年の離れた姉ちゃんの所為か、甘えん坊なところもあるけれど、純粋で真面目で、誠実で。
くだらない話をしていても、漣の俺の目を見つめる眼差しが、なんとも愛おしくて、大好きなんだ。
ああ、勿論親友としてだよ。
親友への情愛は、見ようによっては恋人への愛情よりも深くて濃いものだと、俺は疑わないんだから。

部活が終わり、ふたり家路まで帰る距離は、お互いの本音を暴露する時間だ。
学校や家での些細な苛ついたことから、怒髪天に来たこと、つまらない自己反省やら、エロ話や、真剣な未来への展望…様々なコミュニケーションは互いの信頼を認め合い、刺激し合い成長していく。

何故だかわからないけれど、やたらと目立つ俺に対して、漣は引っ込み思案の所為か比較的目立たず、いつも端っこでおっとりとしているようだが、俺にとってはなくてはならないパートナーだ。
バスケの試合なんかがいい見本で、ポイントガードの俺の指示に一番早く適格に動くのがスモールフォワードの漣で、パスを受け渡しなどは漣無しでは巧い試合運びが出来なかった。
大して期待されても居なかった俺たちが、獅子奮迅の体で市大会に準優勝したのは、中学時代の一番の思い出だ。

俺と漣はふたりでよく旅をした。
適当に目的地を決めて、チャリンコで走るだけの話なんだけど、方々の坂道を息を切らして走る気分は爽快だった。
漣はどんなにきつくても弱音を吐かず、俺の後ろを離れずに付いてくるんだ。
俺は振り返り、頑張っている漣の姿を確認し、まだまだやれるって頑張れる。

キャンプ場からふたりで眺める大空の青さや、星空の輝きを褒め称え、何時間も「すげえなあ~」と、同じセリフをバカみたいに交わしていた。

漣と居ることが嬉しかった。
俺はひとりぼっちじゃないって感じていた。

お互いに向上できる絆が、俺は嬉しくて、宝物みたいに思えて、漣と一生こうして付き合っていけたら…て、思った。


三年になって、進学する高校を決める時、俺はこの場所から離れた東京の高専を受けることを決意した。
一年前に起きた大震災の二次災害である原子力発電所の事故の復興が、予想よりも遅れていること。その原因が、放射能で汚染された建物の中に人が入れない事。作業ロボットが思い通りに動かなく、作業が進まない…などの深刻な問題を報道で知ったからだった。

技術者の父の影響からか、小さい頃から玩具は車や飛行機の模型が多く、バラして作り変えたり、流行ったミニ四駆などはカスタマよりも、能力の向上を求めたりした。
何事も徹底的にやることが好きだった俺は、いつかは社会に役立つ技術者になりたいものだと漠然とは考えていた。
そして、その目的がはっきりと見え始め、俺が汚染された原発内の作業を的確に行える作業ロボットを作らなきゃらないんだ、と、心に決めた。
出来るなら専門的な学問を早く学んだ方が、自分の為になると思い、俺は心配する母親をなんとか説得し、先生にも願書を受け付けてもらった。
だけど、肝心の漣だけには冬が来ても、高専を受けるとは言えなかった。

漣と俺は地元でも優秀なA高を受験する予定だった。
それは二年生の頃から俺と漣が決めたことで、その頃はまだ漣の成績では危なかった為、漣は俺に追いつこうと必死に勉強し、成績を向上させていた。
「どうしても栄嗣と一緒にA高に行きたい。そして栄嗣と高校三年間を一緒に過ごしたい、その為になら、僕は三時間しか寝ないぞ!」
「おまえはナポレオンか?」
などと、茶化していたけれど、漣の本気は痛い程こちらにも伝わって、俺も一緒にA高を目指していたんだ。
だけどさ…やっぱり、俺は自分の思いを誤魔化したりしたくないんだ。
高校が別々だって、漣との絆が緩むなんて俺は思っていないから…。
きっと、漣ならわかってくれるさ。

そうは言っても、約束を違えて勝手に高専を受験するって言ってしまったら、今まで頑張ってきた漣のテンションを落ち込ませ、最悪A高受験失敗なんてことになってしまったら…と、俺もめちゃくちゃ迷い、ずっと言い出せなかった…。

そして思い切って東京の高専を受験すると、漣に告白した日。
俺は漣に口を挿む暇も与えず、自分の信念をもっともらしく偉そうに口上し、大いに自分に酔いながら自分は正しい道を選んだんだと講釈ぶった。
漣はきっと驚いていただろう。だけど、俺は漣の顔をまともに見る勇気はなかった。
自分の正義感は、結局漣との約束を裏切ったのだから。

俺の話を一通り聞いた漣は、怒りもせずに「栄嗣は凄いね。きっと栄嗣ならできるよ」と、俺を励ましてくれたんだ。
そんな漣の様子に俺はほっと胸を撫で下ろしたんだが、俯いた漣の頬に一筋涙が落ちてゆくのを垣間見て…。
漣は慌てて目を擦っていたけれど、その涙を見てしまった俺は、サーッと血の気が引く思い…。
その後も、漣は「栄嗣を応援するからね」「頑張れよ」と、約束を違えた俺を少しも責めることなく、笑ってくれた。

けれど、その夜、俺は眠れなかった。

俺が考えるよりも、俺は漣を酷く傷つけたんじゃないだろうか…
幾ら俺の想いが強く、それが崇高なものに思えても、高校三年間を一緒に過ごしたいという漣の気持ちが、それに劣っているとは思えない。
その漣の想いを、俺は自分の自己満足の為に、勝手に破ってしまった。
後ろめたいと思いつつも、自分を正当化しようと必死の言い訳で、素直な漣を言いくるめてしまった。

「離れていても親友でいような」なんて、都合のいい言い訳、こっちが勝手に押し付けているだけじゃないか。
そんなの…本当の親友じゃねえよなあ…漣。

翌日の朝、一緒に登校する漣はいつもと変わらなかった。柔らかい微笑みも、少し目を伏せながら「おはよう」と声を掛ける表情も。
だけど、漣の目元は赤く、瞼も少し腫れあがっていた。

俺はもう何も言えなくて…
どうしたら大切な親友の漣を失わずに済むのか…ばかりを考えていた。




2へ


漣視点の「バレンタインデー」はこちらからです。 1へ 


去年のバレンタインに書いた物語の続編です。と、いうか柊木栄嗣視点のお話です。
良かったらお楽しみ下さい。
続きは来週です。二月は嶌谷従兄弟は休みで、この二人の物語で終わるのかな~



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● COMMENT ●

去年の続きなんですね~
攻め視点で読んで見たかったので、嬉しいです。
ハピエンで終わってなかったので、きちんとハピエンにして欲しいです。

蝶丸さん、こんにちは~(*^▽^*)

はい、今回はハッピーエンドを目指していますよ~。
栄嗣君はとても真面目なノンケなので、ちょっと大変なんですけどね。
頑張ります( ´ ▽ ` )ノ

栄嗣視点のバレンタィン・ストーリー♪
漣視点の奥床しい感情の揺れは微塵も無く 俺様で 面白かったです(笑)

俺様なのに 面白かったと嫌悪もなく 私が言えるのは、最後の文章が救いとなっているので!
栄嗣は栄嗣なりに 漣の事を考え悩んでくたりしてたんだねー

サイアート様、いっぱいチョコを貰ったんだね。
私は、自分チョコ用に ウイスキーボンボンを買ったんだ!
だけど、最近 チョコを食べても 胃もたれがするので 一日一個にしてます。

雪かきして 腰と腕と肩は痛いわ、胃も もたれ易いわ、で 最近の自分の体力と体の変化に 凹むわ~~
ユキカキ、ガンバロ,,,,,(;´・ω・)o―E∴‥:*: O=(_ _;; バタッ、ツカレタ...byebye☆



大阪はそんなに雪が凄いんですか…
こちらは寒いけど全く降りません。いつもの年よりも少ないくらいです。
これから降るかもしれないけど、積もらないだろうなあ~

雪かき…経験ないですねえ~
雪だるまは作ったけど、雪かきはしたことないかも。

チョコはホントにバレンタインの時だけ食べたくなりますね~
トリュフとか普通は食べないもんねえ~

栄嗣くんはこれから色々と考えたり悩んだりするんですよ。彼らしい悩み方なので、漣はちょっとはあ?ってなったりするかもしれないけど、漣は惚れた弱みで栄嗣がなんであっても好きだからねえ~


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