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2019-09

僕の見る夢 17 - 2008.12.08 Mon

10.

ゾクッと寒気がして目が覚めた。
雨の音が聞こえた。
桜の花びらが目の前をひらひらと落ちていった。

帰ってきたんだ、あの時に。

俺は座り込んだまま目を閉じた。
たぶん…もうすぐ…やって来る。
ほら、足音が近づいてきた。

「君…大丈夫、ですか?」肩を揺さぶりながら、俺に声を掛ける。
俺はゆっくりと目を開けた。
目の前には見慣れた、大好きな顔がある。

「こんなところで寝てると、風邪引くよ…それとも、具合悪い?救急車呼ぼうか?」
「…いや、大丈夫…です。ちょっと寝てちゃってて…」
「こんな雨ん中?」香月が呆れたみたいに苦笑した。
「…そう…です」…そんなに俺を凝視するなよ…恥ずかしいだろ。
「…立てる?」
「うん……?」立ち上がろうとすると、香月の手が俺の目の前に差し出された。
俺はそれを見つめながらも、そのままひとりで立ち上がった。すると香月はその手を引っ込めて、少しだけバツの悪そうな顔をして自分の鼻を掻いている。

「大丈夫そうだな」
「はい…」
「じゃあこれで…」
「どうも」
俺が頭を下げるとあいつは少し笑って、そして自分の行く道に戻っていく。

…これでいい…これで彼の人生に俺の記憶は残らない。何の傷も負わせなくて済むんだ…
俺は彼の後姿を見送った。
と、すると、彼は立ち止まって踵を返し、元の道を引き返す。
小走りに俺の前まで来ると、差していた傘を畳んで、俺に差し出した。
「これ」
「えっ?」
「いや…この雨まだ止みそうもないし、おまえ傘持ってなさそうだから、貸すよ」
「…いや、でも、おまえが濡れるからいいし…」
あっ、おまえって言っちゃたよ…
「俺ん宅ここから近いから、濡れても大した事ねえの」
「…返せないかもしれねえし…」
「いいよ。返してくれなくていい。安物だからおまえにやるよ」って、無理矢理俺の手を掴んで押し付けた。
触れた瞬間、ヤバイと思った。だって俺、すげえビクッってしたから、麗乃も驚いて俺を見たし…
「あ…ありがと…じゃあ貰っとくね…」そう言うのが一杯だった。
「…あ、…おまえも早く帰った方がいいと思うよ。今日は寒いし…おまえ身体弱そうだから、家帰ったらちゃんとあったまんな」
「…うん」
「…じゃあ」
「…さよなら」
そして麗乃は駆け足で来た道を戻り、雨の中を走ってゆく。
もう二度と…会うことは無いその背中が視界から消えてゆくまで、俺は見送った。

そして、
俺の手に残ったあいつの傘をじっと見つめ続けた。

…なんだよ?今の遣り取り。
いつもの俺とおまえじゃん。
今初めて会ったはずだ。
なのに…あんまり普通すぎるだろう…
昔から知ってるみたいに…
麗乃とずっと一緒みたいに…

…泣きたかった。でもこれだけじゃ終われないのも判っていたから…
俺は傘を脇に抱えて、携帯を取り出す。

今度は…この世界の異次元ともいえる俺の世界の時間を同じように戻す。

そしたら…


時刻は2005年4月8日を示している。俺が桜の木に手を押し付けると、…2006年4月23日AM六時五分、俺が向こうを発った時間を指した。
俺はひとつだけ深呼吸をする。
そしてまた歩き出す。

2005年4月8日に向かって…




そして、俺は一年前の俺の世界に戻ってきた。


麗乃の家の玄関を開けようとしたら、その本人が飛び出してきた。
「…びっくりした…」
「麗乃…なに急いでんの?」
「何って…急に雨降って来ただろ?おまえを迎えに行こうとしてたの。ユキ、濡れなかった?」ドアを閉めながら麗乃が俺の様子を伺う。
「あ…うん。土手のところでね、すげえいい人が傘貸してくれたの」その傘を傘立てに仕舞いながら、大切に使おうって思った。
「いい人?男か?」
「うん…麗乃に良く似た人だった」
「おまえ…浮気すんなよ」
「しねえよ。俺が好きなの、レイくんだけだもん」
「…どうしちゃたの?ユキ」
「バカ、誕生日だからサービスだよ、サービス!」
「うん…でもなんか…おまえ、感じが変わった…髪切った?」
「あ?そ、そうだよ」
「…ちょ…これ、どした?」俺の手首の包帯を見た麗乃が慌てて言う。
「…紙で切ったんだよ。紙もあなどれねえな。めちゃ痛かったし…」
「おまえ…気をつけろよ。ユキが傷つくの、俺、嫌だからな」
「…」わかってるよ。
そんなこと俺だっておんなじだよ。

リビングに向かう麗乃の背中を見て、急に切なくなった。
「レイ…」
「あ?」
「レイくん…あの…ごめん、ごめんね、麗乃…」
「な、何?なにがだよ、由貴人」
「…」
おまえの一年分のすべてを消してしまった事。
謝っても許してもらえないけれど…ごめん…
「…ユキ?」
「おまえにね…なんかあやまりたかったの」
「だから何を?」
「…理由はねえの」
「ねえの?」
「うん」
「…わかんねえな、ユキは」そう笑って麗乃は俺を抱きしめてくれた。
ただ何も聞かず抱きしめてくれる麗乃が大好きで…仕方が無かった。

そして俺は二回目のそれを言う。

「レイくん、26歳の誕生日おめでとう」







「髪切った?」のとこで、おまえはタモさんかっ!と、いつも笑ってしまいますわ~www
あと2回で終わります。

● COMMENT ●

ああ、

とうとう禁じ手をやっちゃいましたか、ユキくんは。
あと2回。
どう幕引きするのか楽しみにしてます!

いや~

もうまとめだけで、何起こらないからね~
しかし…地味な話でしょ?
こういう話が多いんですが…大丈夫かね~
試しにめっちゃ鬼畜なもんもあげるかな~
って言っても私の書いたのじゃ、大した事ないしな~www


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