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2019-09

「破壊者のススメ」 8 - 2014.03.30 Sun

8
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8.

一体、人を愛するとは、どういうことなのだろう。
俺の胸に巣食う誠一郎への焦がれるこの想いの正体が、未だに判らないなんて…。

多感な思春期の最中にあっても、俺には武道を続けていたおかげで、反抗的な態度やストレスを発散する相手が、家族に向けられることはなかった。
むしろ、居候の俺と母に、少しの負い目を感じさせることなく、家族同然に愛しんでくれる伯父や伯母の器量にただ感謝するのみであった。

日頃、多忙な晟太郎伯父がたまの休日には家族旅行をしようと、俺たちを誘ってくれる。
「せっかくなんだから、夫婦水入らずでゆっくりしてきなよ」と、俺と母は伯父夫婦だけの旅行を薦めるけれど、ふたりは「みんな一緒の方が賑やかでいいわ」と、結局、俺と母も同行させられる。
勿論、俺が小学生の頃は誠一郎も一緒だった。
旅館では男同士、女同士の部屋割りで、大浴場で伯父の背中を洗ったりするのが本当の親子みたいに思えて、俺は嬉しかったんだ。
誠一郎はどうだったのだろう…。
多分、誠一郎も俺たちの傍で笑っていたような気がする。

両親と居る時と、俺とふたりだけの誠一郎とは、どことなくだが雰囲気が違って見えた。
伯父と伯母の前では、誠一郎はいつも彼らの望む立派な息子であろうと心掛けていた。
伯父たちがそれを誠一郎に押し付けていたわけではなかったにしろ、誠一郎が彼らの理想の息子であろうとしたのは、俺も十分すぎる程理解する。

要するに家族愛なのだ。
誠一郎が両親の求める子供になる為に、本当の自分を隠すのも、俺が母や伯父たちの迷惑にならぬようにと心がけることも、彼らを思う家族愛だ。

ところが、誠一郎に向ける俺の愛は最初から違っていた。
初めて会った時から、誠一郎が欲しいと感じてしまった。
そして、誠一郎を抱き、長き想いが叶ったとしても、未だに満足せず、愛の行方に翻弄されるばかりなのだ。
会えない日々を苦悩し、会いたいと願い、やっと会えた喜びは天にも昇るほど昂揚し、誠一郎への欲望を思うがまま身体に押し付け、乱暴な愛をぶつける。
俺の与える欲望に苦悩する誠一郎の表情を恍惚と眺め、誠一郎の口からもっととせがむ言葉を引きだし、そして、これ以上ない程に優しいキスをする。
抱きたい、与えたい、滅茶苦茶にしたい、俺だけのものにしたい、誰にも見せたくない。
はっきりとわかるのは、この感情には家族愛は微塵もなかった。


誠一郎がいない家族旅行を四人で楽しむ時、俺は少しだけ誠一郎が居ないことにホッとする。
俺にとって家族ではないあの男には、家族団欒のこの場は相応しくない、と感じる。
あの男は俺が支配する恋人だ。
俺以外、自由にさせたくない。
誰にも…見せたくないんだ。

「ねえ、ジョー伯父さん」
「なんだい?宗二くん」
部屋付きの露天風呂にふたりで温まりながら、檜の浴槽に凭れ、夜空の星を眺めた。
「恋の話を、してもいい?」
「ああ、いいよ」
「今までにさ、由ノ伯母さん以外に、本気で誰かを好きになったことがある?」
「いきなりかい?…そうだな。由ノさんに出会う前なら、あるよ」
「その話を聞いてもいい?」
「そうだな…随分と昔の話になる。…学生時代…日本が高度成長期で浮かれていた所為もあるだろうけれど、僕たち学生も馬鹿みたいに自由を謳歌しようと、とにかくはしゃいでいた。恋も愛も欲望もごっちゃにして、出来ないことなんてひとつもないんだと、拳をあげてね。とんでもない自信家ばかりだ。でも本当の恋に出会った途端、臆病で純粋で、言葉にするのも気恥ずかしくて、告白するのも躊躇う次第…」
「へえ~。伯父さんが恥じらうなんて、想像つかないけどね」
「そうか?…そうだな。歳を取るってことは、外見も中身も良くも悪くも変わっていくことなんだろうけれど、変わらない恋も存在する」
「変わらない…恋…」
「そうだよ。変わらない恋を終らせたくなければ、互いが相当な努力と覚悟を続けていかなきゃならない」
「それって…伯父さんは、その人の事を…その人は伯父さんの事、今でもずっと想いあっている…ってこと?」
「そうだね…とても純粋にね」
「伯母さんに後ろめたくない?」
「少しも…。由ノさんへの想いとは最初から別ものだからね」
「…」
俺は由ノ伯母に対して、少しも悪びれない晟太郎伯父の心情を測り兼ねていた。だけど、同時に恋とはそういうものかもしれない…とも、感じていた。

「…夢中になったその頃、覚えたての和歌を手紙に書いて、相手に渡したんだ。『あさましや こは何事のさまぞとよ 恋せよとても生まれざりけり』…ってね。意味がわかるかい?宗二くん」
「なんとなく…でも、伯父さんはその和歌にどんな想いを込めて、渡したの?」
「その頃、僕は高校生だったけれど、将来、父の会社を継ぐことはすでに決められた道だった。それを不満には思わなかったよ。父の薦める部署に就職して、父の決めた相手と結婚して家庭を持つことが一番の自分に課せられた役割だと、理解していた」
「従順だね」
「会社を経営するって事は、従業員とその家族の人生を任されたと同じだ。重責を担うって奴だ。それを支えていける仕事に誇りを持ちたいって思っていた。恋愛なんて遊びでいいとさえ、思っていたんだ」
「でも、運命の人に出会ったんだ」
「出会ったと言うか…最初は口ケンカばかりしてたからね。でも、なんとなくお互いを意識し始めて、少し距離を取った。そのうち、一日中、相手を想うばかりの日が続いた。どうしてこんなに苦しい思いをしなきゃならないのか。もっと違う相手だったら良かったのだろうか。この想いがお互いを傷つけ合うことになるのならば、もう二度と口を利くまい。…勉学する気も失せ、成績も落ち込んでしまって、ダメになってしまう自分が心から情けなくて、こんな惨めな想いまでしても、僕はあの人を想っている。そして愛されたいと願っている…そんな自分にとことん呆れ果ててしまったんだな。そしたら、自分の気持ちのままを読んだ和歌に出会った。大昔の人も、同じような苦い恋を味わっていたのだなと、思ったら、なんとなく、救われた気がしたよ」
「それで…返事は、きたの?」
「相手は同じクラスの同級生だったからね。和歌を渡した翌日も、普段と変わらない挨拶で始まった。でもね、『返歌はしないよ。僕も同じ想いだからね』って、一言だけ返されて、…それで恋愛成就だ」
「幸せになれた?いくら好きあっても、いつかは別れが来るものでしょう?」
「恋愛は、一緒に住む事でも、肉体だけの関係を続けることでもないんだ。互いに相手を尊重し、恋しいと思い続けていれば、それだけで幸せなんだよ。愛する意味はひとつではないからね」
「…じゃあ、伯父さんは誠一郎にも同じことを言える?」
「…誠一郎が悩んでいることは、知っているよ。だけど、彼はもう子供じゃない。未来を決めるのは彼自身だ。うまく幸せを掴んでくれたら…と、思っている…。さあ、もう上がろうか。すっかりのぼせてしまったよ」
「うん」


晟太郎伯父の話は、俺と誠一郎が選ぶべき道を見極めるきっかけとなった。
俺もまた、とてつもない誠一郎への感情をふるいにかけ、いつかはお互いが幸せになる為の光を見つけ出さなきゃならないのだ。

数日後、晟太郎伯父を真似て、俺は誠一郎に教えてもらった和歌だけを書いた封書を送った。
だが、いくら待っても、誠一郎からの返事は来なかった。
悲しかった。
晟太郎伯父の時のように、ただ一言「同じ想いだ」と、応えてくれたら、俺は誠一郎をもっと深く理解しようとしたかもしれない。
だが、誠一郎は応えなかった。
俺は俺に心を許さない誠一郎を段々と憎み始めていた。
愛憎とはよく言ったものだ。
俺の愛は誠一郎の冷たさに比例するように熱くなるのに、あの男には俺の愛を理解せず、求めるモノはセックスであり、俺を心から愛してはくれないのかもしれない…と、言う妄想が恐怖に変わってしまうのだ。
どうしようもなくなった俺は、誠一郎を求めて京都へ会いに行った。

連絡もせずにマンションへ来た俺に、誠一郎は驚いたけれど、俺を拒まなかった。
「上がりなよ、宗。今晩は泊まっていくだろ?…」と、いつものように穏やかに俺の前に立つ誠一郎がたまらなく好きで、たまらなく憎くて仕方ない。
俺はもう半分自棄気味に誠一郎の不誠実さを詰った。
どうして返事をくれないのか、どうして俺の気持ちをわかってくれないのか、どうして愛していると言ってくれないのか…まるでヒステリー女のように喚き散らした。

誠一郎は俺の様子に呆れ、苦笑した。
その様子に俺は頭に血が上り、誠一郎に向かって拳を上げた。
その手を掴み、誠一郎は俺を抱きしめた。

「馬鹿だな、宗…。あんな…あんな恋文に、返事なんか出せるもんか…」
「誠…」
「どんな風に返していいのかわからなかったんだ」
「…」
「宗二朗を傷つけたなら謝るよ。でも…嬉しかった。ありがとう…」

そう言って、誠一郎は俺に口づけた。
今までにない位に熱くて激しいキス。
それから俺をベッドへ誘った。
誠一郎から求めてくるなんて、初めてだったし、これがあの和歌の返事なのだと、俺は素直に喜んだ。
絡みつく手足や、肌の感触、交錯する喘ぎと、登り詰める快感は、ふたりを同化し、そして別個の身体であることを快く認識する。
俺と誠一郎は交じり合ったまま、笑った。
これ以上、何も求めるものはないと、俺は自分の運命に感謝した。


別れを告げ、俺は桜の散る様を眺めながら、東京へ帰った。
春は終わり、高三になった俺は、進学を決めなければならなかった。
母や晟太郎伯父とも相談し、関東の国立大学を目指すことにした。
大学を卒業したら、晟太郎伯父の経営する商社に就職して、誠一郎と共に嶌谷家の為に働くことが俺の望みだった。

受験勉強に明け暮れる夏休み、誠一郎が帰省した。

誠一郎とは春に会った以来で、飛びつきたくなる気持ちを抑えて、平然な顔で迎えた。
久しぶりの家族揃っての夕食の時、誠一郎は大学院を中退し、嶌谷商事のグループ会社に就職する決心がついたと話した。

「え?誠一郎、こっちへ帰ってくるの?」
「そうなのよ。結婚しても大学院を修了するまで向こうで暮らす予定だったんだけど、早く就職してお父さんを助けたいって、言ってくれたのよ」
「けっ…こん?」

え?
…そんな…こと…さ。
俺、全然、全く、一言も、聞いてねえんだけど…。



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● COMMENT ●

結婚、宗二朗驚いてますね。
でも、前回 話は聞いてたから、知ってるとは思うのに、まだまだ先のことと思ってたのかな?

福岡は9年くらい前に、友人の結婚式に招かれ、久しぶりに行きました。
凄く変わっていたので、驚きました。

京都は通勤範囲内なので、いつでも行けるからって数年前まで観光してなかったんです。
でも、あまりにも知らないことに気づいて、最近はよく観光しています。

いつかは来るのだと思っていても、やっぱり具体的なことになっちゃったら、ショックなんじゃないでしょうかねえ~。
宗ちゃん、まだまだ純粋だもん。

私も30年ぐらい住んでいるけど、ホントに町から街になった感じがします。
百道あたりで博覧会よかトピアって24年ほど前だったかな~下の子が一歳になってなかったと思うから。あの辺りから急激に街の風景が変わりましたね。福岡ドームやらシーホークやら…
まあ、食べ物がおいしいので、私はここが好きですね。テレビで言うほど、危ないことも全然ないし~。

そう、福岡が急に綺麗になる前か途中までしか居なかったので、残念です。

食べ物もおいしいし、物価も安いし、何より住んでいる人の人柄が素敵です。
大らかで純粋で乗りがいいし、優しいし。
九州・中国・近畿に暮らしたことがありますけど、地域によってカラーが違いますね。

恋愛も そうですが、人生においても 相談できる相手がいる宗二朗は、幸せですよね。
両親や兄弟は身近すぎて 適度な距離がある人、 私も 悩み苦しかった時 そんな人が 側に居てくれたら よかったのになと、思います。

所で 晟太郎伯父の恋愛話しは、「僕も‥」の件で (。 ・O・)ほほーっ!と(笑)
そっかー、晟太郎伯父さんも♪

突然に知らされた誠一郎の今後のこと
此処で 宗二朗は 大きな決断をするのかな?


やっと 桜の花も ちらほらと咲きはじました。
でも この時季だからでしょうか、梅と桃と桜が 一緒に咲いている所もあって それもそれで綺麗でしたよ。
冬定番の 手抜きだけど豪華に見え 食べ応えのある鍋料理も そろそろ 頻回に出来なくなるのが 辛い(苦笑)

東京に行かれる息子さんの準備は もう大分出来ましたか?
(〃⌒ー⌒〃)ノ゛゛゛゛~~~~~byebye☆ 

蝶丸さん>私は結婚してからは福岡市民なんですが、子供が小学生の頃、とにかく転勤される方が多くて、一年から卒業する間に、同級生が半分近く、変わってしまうんです。びっくりですよ。でもPTAで色んな方と話してみると、福岡はとっても住みやすいって皆さん言われるので、嬉しかったですね。
そういうわけで子供たちの友達も地元の友人は少ないですね。みんな変わってしまうから。勿論私も友人も少ないです~('ε`汗)

けいったんさん>こちらは桜は散り始めてます。今日あたりは天気も良いので、まだ花見で賑わってるかも~。

金曜日に荷物だけ引っ越しなんですが(遠いので三、四日かかるみたい)荷物はそんなに多くないので、もう片付いてます。下の子はこんなにしっかり用意しなかったのに、上の子は多いなあ~。車とか自転車とか大きいものが多いからね。

晟太郎さんの相手は…けいったんさんも知ってる人ですよ。
聖ヨハネ学園の学長、鳴海譲さんです。
これはもう鳴海先生を書く時から、決めてたんですよ。だから嶌谷さんの話でちらっと「君のおとうさんと知り合いだった…」とかの話があってたの。

良かったらこちらをどうぞ。
凛一編、「HAPPY」の14に鳴海さん、出てきます。
私としては、理想の恋人像のひとつなんです。


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