FC2ブログ
topimage

2019-11

銀色のRay 1 - 2014.09.26 Fri

1
イラストはサムネイルでアップしております。
大きく見たい方は、イラストをクリックしてくださいね。


ray3.jpg

銀色のRay

  Prologre レイ・ブラッドリー

 初めての光は母の笑顔だった。
 次に私は暗闇の中にいた。
 光を失い、燃えさかる炎の中で、死が訪れる時を待っていた私の目の前に、彼は現れた。そして倒れて動かない私を両腕に抱き寄せて笑った。
「おいおい、なんだよ。ガキのクセにもう人生に絶望して死ぬ気でいるのか?そりゃ、ちょっとばかりもったいないぜ、銀色のレイ。喜びも楽しみも本当の苦しみも、未知なる世界って奴は、やばいくらいに面白いんだ」
 そう言うと、彼は私を抱きあげたまま炎の中を歩きだした。
「さあ、俺と一緒に行こう。おっと、クナーアンの神の名において、おまえの未来を予言してやるよ。おまえねえ、…レイ・ブラッドリーは決して降伏しない。…決してね」
「…」
 私の意識はそこで途切れてしまった。

 そして…
 このやっかいなおせっかいのおかげで…私は、今も生きている。



   第一章 No Surrender(降伏しない)

 朝、目が覚めて横を向くと、隣にはこの間まで同室だったセシル・エヴァンが俺の左腕を握りしめ、寄り添うように眠っていた。
 同学年の彼は、同室だった頃も俺の知らない間に俺のベッドに潜り込んで寝てしまう事がある。
「人肌が恋しいからだ」と言うが、単に寒がりなだけじゃないか、と俺は信じたい。

「おい、セシル。起きろよ」
 俺は気持ちよく眠るセシルの身体を揺する。
「う…う~ん…。あ、レイ、おはよう」
「おはようじゃねえよ。おまえ、昨晩はギルのところに泊まるからって…って、臭っ!おまえ、酒飲んだのか?」
「うん…。ギルに会いに行ったんだけど、レポートが忙しいからって相手にしてくれなくてさ…。いじけてひとりでワイン飲んで帰って来ちゃった」
「呆れた。今日から高等科の新一年生なのに…。酔っ払いと一緒に登校するのかよ」
「大丈夫だよ。シャワーを浴びれば、酔いも醒める。…そうか、僕達、とうとう憧れの高等科の生徒になれたんだねえ~。リボンからネクタイに変わるんだよ!感慨深いねえ~」
「別に制服のタイなんかどうでもいいけどさあ~。まあ、寄宿舎の部屋が一人部屋になったのは嬉しいわな」
「そう?僕は部屋でひとりぼっちで過ごすのも、ひとりで寝るのも嫌だね。だけど…レイの部屋は何故か二人用だよね。ベッドも机もクローゼットも二人分用意されてるし…。誰かここに入る予定があるの?」
「さあ、部屋の振り分けは寄宿館長の決定だし…。誰か入る予定なら新学期が始まる前には来るんじゃねえのかな。まあ、俺としてはひとりで二人分の部屋を使えるのはラッキーだけど」
「じゃあ、舎監にお願いして、僕がここに入ろうかな~。レイの隣だとよく眠れるし」
「おまえねえ…」
 俺は心底渋い顔を親友に見せた。

 甘えられたり頼りにされるのは嫌いじゃないけれど、どこまで責任を持てばいいのか不安になるから、他人の領域にあまり深く踏み込みたくないっていうのは俺の意気地の無さだと…アーシュならきっと鼻で笑うだろう。

「さあ、着替えて朝飯食いに行こうぜ。一日目から遅刻じゃシャレになんないからな」
「うん」


 サマシティはこの地上で格別に意味のある古い街だと伝えられ、その中心のインデペンデントスクール「天の王」学園は、もっとも権威のある魔術学校である。
 魔術…いわゆる超能力的な力を持つ人間を、人類は魔術師、魔法使いなどと呼んだ。
 現在この世界で魔力を持った人間をアルトと呼び、そうでないノーマルな人間はイルトと呼ばれることが多い。
 その比率は、二対八と圧倒的にイルトの支配が大きいが、サマシティの住人にはそれは当てはまらず、「天の王」学園では、その比率はほぼ半々になる。
 「天の王」学園では六歳から十八歳までの子供たちが共に生活し、学問に勤しむ寄宿学校だが…真の目的は別にあると言っていい。
 つまり、
 魔力を持つ者とノーマルな人間のより良い共存は、未来に生きる者たちの理想郷であり、その実験場としても世界の好奇…いや、期待と羨望がサマシティと「天の王」学園に寄せられているのだった。

 勿論、アルト(魔力を持つ者)の能力の幅は広く、天気予報や簡単な透視ができる者から、予知、テレパシー、サイコキネシスなどの上級能力を持つ者など様々だ。
 その力をより良い未来に役立てる為の教育を施していくのが、この「天の王」なのだ。
 それは選ばれた者だけに許された狭き門でもある。

 十年前に起こった聖光革命のテロ以降、「天の王」学園への入学希望者は増加の一方であり、年々その合格率も厳しいものとなっている。
 能力のない者(イルト)であっても、イルトの役割は大きい。
 アルトを支配する力(カリスマ)を持つイルトは、その精神性を育てなければ、テロの首謀者に成り下がってしまう現実を、世界はその耳で聞き、その目で見てしまったのだ。
 しかし、精神性を育てるとは一体どういうことだろう…。

 この学園の生徒の誰もが、選ばれたという自意識を持った血気盛んに明日を夢見る少年少女たちだ。
 そして、その力を誇示したいと思うのは当然だし、「その力は自分の為にではなく、世界の為に有意義に使うものだ」と、正しい大人達が声高に掲げる最もくだらない道徳に縛られる義理はない…」と、思い上がっている。

 俺もそのひとりだろうか…いや、きっと俺だけは違う。
 元からここは俺の居る場所じゃない…俺にとって、ここは時期が来るまでの仮宿でしかない。だから、誰かを本気で愛したり、何かに過分に執心したり…しないように、今まで気を配りながら生きてきた…つもりだ。


 新一年生にとって、寄宿舎も校舎も食堂も教師も目新しいものばかりで、その一日目ときたら誰もかれもが興奮を抑えきれない程に緊張と期待に紅潮している。それは俺も同じで、新しいクラスに馴染の友人が居ても、どこかぎこちない態度で挨拶をする。
 慣れないネクタイの結び方が変だとか、制服のサイズが合ってないだとか、慣れない一人部屋に眠れなかったと、愚痴ったり…
 それでも昼飯時になり、食堂に集まる頃になると、皆が一同リラックスした顔で今までにはなかったメニューの豊富さに歓声を上げながら味わっている。

「はあ、残念だなあ~。レイとクラス、離れちゃったねえ~」と、セシルはチキンシチューを食べながら溜息を吐く。
「五クラスあるんだから、一緒になる確率はそう高くないだろう。って言っても隣のクラスだし、用があればいつでも会えるじゃん」
「でも、親友の君が傍に居ると居ないとじゃ…なんだか心元なくてさあ…」
「…」
 そうは言っても俺よりも格段に人付き合いの上手いセシルは、充分上手くやっていくだろう。

 セシル・エヴァンは俺の一番信頼する親友だ。
 緩やかに波打つ亜麻色の髪と、生い茂る若葉が様々に重なったような深い緑色の瞳が印象的だ。
 三年前に「天の王」に入学したセシルは、人を寄せ付けなさそうなクールな美貌とそれに反した臆病な性格の所為で、最初は学園に馴染むことに苦労をしていたけれど、今ではそれも見当たらない。
 繊細な風情のくせにどこか鈍感なところも、人に与える印象は好感度を増すらしく、セシルは誰彼ともなく好かれていた。
一年前彼は恋人を持った。
 ふたつ上のギルバート・クローリーだ。
 ギルは高等科の三年生の中でも、目立つ存在だ。少々皮肉屋だが、成績優秀で人望も厚く、ホーリーでもある。
 「ホーリー」とは、「天の王」学園の学長から「真の名」を与えられた者の敬称だ。
 ホーリーの名を持つ者は、アルトの中でも際立った能力を持った類い稀な生徒であり、誰もが羨む存在となる。
 セシルがギルバートに交際を求められた時、俺はセシルから相談を受けたのだが、反対はしなかった。反対できるほどの欠点をギルバードに見いだせなかったからだ。
 そして、それまでより明朗快活になったセシルの様子からも見ても、ギルとの交際は正解だったのだと思う。

 「天の王」では同性との付き合いは珍しくない。
 その理由は、女生徒が全学生全体の三割未満だからとも言えなくはないが、結局、同性同士が気兼ねなくお互いを曝け出せるから…と、いう結論に至っている。真実はどうかはわからないけどね。
 俺はと言うと…まだ特定の恋人はいない。と、いうか探す気があまりない。
 まあ、いつまでここに居られるかもわからないから、あまり心残りになるものを形成したくないという理由が大きい。
 よって、未だに男も女も経験がない。セシルは「遊びでいいから一度は経験した方がいいよ。僕でよければ相手になるし…」と、不憫に思ってくれるけれど、人様のものを味わうわけにはいかないよ、と、申し出を断った。


「あ、そうだ!」と、食事を終え、寄宿舎に帰ろうと立ち上がったセシルが突然俺の方を向く。
「ギルからの伝言を忘れてた。今日の午後三時から『イルミナティバビロン』の集会があるから遅れないように、って」
「了解した。新学期だしな。いよいよ俺達も本格的にメンバーの仲間入りなんだな」
「そうだね。責任重大だね」

 「イルミナティバビロン」とは、「天の王」の現学長であるアーシュことアスタロト・レヴィ・クレメントがここの生徒だった頃に再結成した「魔法力を巧く使うための勉強倶楽部」との言う名目の研究部であり、生徒会とは違った裏の支配権を持つ秘密結社でもあった。
 と、言っても現実の活動は生徒間のいざこざや問題を魔力で脅かして処理する片付け屋みたいなもんだけどな。
 だが、「イルミナティバビロン」のメンバーに選ばれることは生徒たちの憧れだ。
 ギルバートはこの「イルミナティバビロン」の一員であり今年度のリーダーに選ばれた。
 リーダーだからって特段偉いわけではないけれど、自分の恋人がリーダーになったとセシルは嬉しそうだ。

「きっと再来年はレイが『イルミナティバビロン』のリーダーだね」と、セシルは言う。
 少し早いが、俺とセシルは集会場の高搭に向かって構内の至る処に茂る樹林を潜り抜けながら歩みを早める。
「別に俺はなりたいなんて思ってないけどね」
「だってさ、レイはこの学園で一番凄い魔術師じゃないか。絶対リーダーだよ」
「…」
 確かに、
 俺は自他共に認める高等魔力の持ち主だ。だがホーリーの名を持たない俺に、その理由を何も知らない学生たちは怪訝な顔をする。
 本音を言えば、俺もホーリーの名は欲しかった。だがそれを決めるアーシュは俺を呼んで「おまえに『真の名』はやらんよ。だって、おまえはここじゃなくて、クナーアンの人間だもん」と、嫌味な笑いを湛えながらわざとらしく言う。

 あんたがここに連れてきたクセに、それを言うかっ!クソバカ!

 見かけ上は十八歳だが、この星で二十七年間を生きているアーシュの根性は捻くれていて頭に来る。だけど…命の恩人だから反抗できないし、本気で刃向う気はない。だって、アーシュの本気は…俺のことを考えてくれてるから。それがわかっているから。

 アーシュはこの地上とは異次元のクナーアンと言う惑星の神さまで、このアースという星では最高の魔術師で魔王と呼ばれている。
 クナーアンで生まれた俺にとって、彼は神さまであり、この学園では絶対権威の学長であり、俺を守ってくれる親代わりでもある。
 結局、俺はこの人に守られているから、安心して自由に生きられるのだと思う。


 樹木の林を潜り抜けた所にひっそりと立つ搭の門を開き、エレベーターのボタンを押し、揃って乗り込んだ。ガタンと不安定な音をたて、エレベーターは屋上を目指して上がっていく。
 屋上へ降り立つと、その景色はどの場所から観るよりも素晴らしい景色が待っている。
 俺は屋上の中央の床に描かれた魔方陣に寝転がり、空を仰ぐ。
 魔方陣が放つチリチリとした電気的な刺激が心地良く、俺は目を閉じて故郷を想う。
 アーシュはこの魔方陣は、クナーアンへ還れる「門(ゲート)」だと言う。いつか俺が自由に(それはとても難しい)魔力を使いこなせるようになったなら、ここから還ることもできるのだ、と教えてくれた。
 俺は帰りたいのだろうか…俺の生まれた星に…。
 今はまだ故郷が恋しいとは、感じない。
 変だな。
 ここが自分の居る場所だと少しも思わないのに、生まれた場所にも帰りたいとは思わないなんて…

 きっと、俺には…どこにも居る場所がないのかもしれない。

「レイ、僕も隣に寝てもいい?」
「勿論だよ、セシル」
 何も知らないセシルが俺の隣に寝転がる。
 俺達は並びながら、青く澄んだ空を見上げた。

 セシルの右手が俺の左手に重なった。
 何も知らないクセに、セシルは俺を安心させる。
 ひとりじゃないって、思わせてくれるんだ。



自己紹介

この物語の最初のお話は左のカテゴリの「senso」からどうぞ。長いけど…
アーシュの過去の物語など、様々ございます。

銀色のRay 2へ

始まりましたね、新作。
どうなるかわからんけど、頑張ります。




お気に召しましたらポチなどして頂ければ、嬉しく思います。


ブログランキング・にほんブログ村へ
にほんブログ村


● COMMENT ●

新連載、始まりましたね。

アーシュが学長になっているとは…
凄く当て嵌まっている様で 全くもって異質に感じる~~!(笑)

でも アーシュ好きな私は、どんなアーシュでも また会えた事が嬉しい♪
ε=ε=(/*~▽)/キャー、アーシュ♡...byebye☆


「小説家になろうサイト」で 10万HIT超えたそうで おめでとう御座います。
これからも 私たち読者を魅了する 素敵な作品を じっくりゆっくりと書いていって下さいませね♪
(o^∀^)ノ☆゚+。*゚PAN!!★゚+。*゚☆゚*。Congratu★lations。*゚☆ヽ(^∀^o) ...byebye☆

ありがとうございます。

sensoのお話ってリアルじゃないから、あんまり一般受けしないと思うんです。
それにアーシュってキャラは…結構好き嫌いがあると思うんです。私は大好きなんだけど、あの自信過剰なところが鼻につくとかねえ~
けいったんさんがアーシュ好きで良かった~(*´ω`*)
アーシュ、今回もちょこちょこ出てきますよ。単に出たがりじゃないかと思ったり~

「なろう」での10万って…他に比べたら全然大したことじゃないのはわかっているんですが、私にしてみたら…こんなに読んでくれてありがたい~って思うんです。

そうですね~。ゆっくりしか書けなくて…今日もダーがゴルフに行ってくれたから書けたの…( ノД`)
やっぱり普段は集中できないねえ~。次がいつになるのか…全く計算できないのが困りものです。

アタシ、カタカナの名前が苦手で
アーシュは読めてないんです。ごめんなさい~
ばれてるとは思うけど。

でも、今回のは、読めそうかな?

義父が脳梗塞になって入院してもう2週間。
色々大変です。

脳梗塞も色々なので、軽かったら心配ないんですが…
うちの義父も脳梗塞で何度も入院しました。繰り返してしまうんですよねえ~。
入院する度、症状が酷くなっていくみたいです。
うちは年が年なので、もう諦めているんですけどねえ…
養生されてください。

アーシュの話は…世界観がちょっと変わっていて、入りにくいかもしれませんが…暇な時にでも。
うちのダーもカタカナが駄目で、名前が全然頭に入らないって言うんです。世界史が嫌いみたいね。
私は世界史の方が好きだったので、それも西洋史が好きなので、色んな名前を考えるのが楽しいんですよ。
ソロモンの72柱なんて、楽しいですよ~


管理者にだけ表示を許可する

銀色のRay 2 «  | BLOG TOP |  » 俺の出番無しかよっ!

プロフィール

サイアート

Author:サイアート
イラストと駄文を更新しております。

少年愛を中心としたシリアス重視なオリジナル作品でございます。

ゆっくりしていってね~

サイズを記憶するフォントサイズ変更ボタン

文字を大きくする 文字を規定のサイズに戻す 文字を小さくする

ツリーカテゴリー

Script by Lc-Factory
(詳細:Lc-Factory/雑記)

最新記事

FC2カウンター

リンク

このブログをリンクに追加する