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2019-11

銀色のRay 12 - 2014.12.18 Thu

12
イラストはサムネイルでアップしております。
大きく見たい方は、イラストをクリックしてくださいね。


セシル制服

12、

 セシルの一週間の外出届は学生係が正式に受け取ったものだった。
 他の生徒たちは休日になれば、自分の家へ帰省するのが当然だが、俺達のような孤児は帰る家がない。だから、せっかくの長期休暇でも学園内で過ごすことが多い。
 セシルは日頃から真面目で問題のない生徒で、休日さえも外出することがほとんど無かったからだろうか、修学中のこの時期のセシルの一週間の欠席は、生徒の親、親類の祝い事か葬儀と同等の異例の許可だった。

 俺はセシルをこのままほおってはおけなかった。
 セシルがどこへ行ったのを知りたくて、学生係の先生に問いただした。
 セシルは今まで居所が判らなかった遠縁の叔父の行方がわかったから、どうしても会いに行きたいと、外出の理由を述べたらしい。
 セシルに遠縁の叔父が居たことも疑問だが、それを鵜呑みにしてしまうこの学園の緩さにも呆れてしまう。
 本当は相談したくはなかったけれど(また甘ったれだと言われるに決まっているから)アーシュを尋ねた。

 面会の許可を取り、学長室を尋ねてみるとアーシュは学園一立派なデスクに積み重ねられた書類を前にして、真面目そうに目を通していた。
 必要のない伊達眼鏡もストライプのシャツに青磁色のネクタイも、紺のベストも普通の大人を演じるには良く似合っている。
 だが、この人の存在感、とりわけ醸し出す金色の輝くオーラ、そして尊大な態度は、大方の人間は近づき難いものであろう。
 勿論アーシュはこの地上では自分を「魔王」と自己紹介しているぐらいだから、他者がどう思おうと構わないんだろうけれど、俺はアーシュ程には強くない。
 好きな相手にどう思われているかとか、嫌いになって欲しくないとか、どうすれば心を掴めるんだろうとか…
そうなんだ。
 俺は初めてセシルにこんな想いを抱いていることを知ったんだ。
 これは恋なんだろうか?

「は?セシルに恋をしてるかって?…おまえねえ、自分の気持ちもよくわからないのか?」
「だって…俺はいつかクナーアンに戻るつもりだったし、この天の王で誰かを好きになっても不毛なだけな気がしていたから…」
「だから自分に魔法をかけていたわけか…」
「え?」
「魔術師が自分の術で罠に嵌るなんて二流もいいとこだが…まあ、レイはまだ子供だから仕方ないね」
「…」
 ぐうの音もでねえ…確かに俺は自分の気持ちに気づかない様に、自分に暗示をかけていたのかもしれない。
 でも何故今になってそれが解けたんだろう…。

「神也の存在が、おまえの魔術のベールを剥した…と、言えるかもしれない。神也は特別な魔力は持たないけれど、人の心をあからさまにすると言うか…。誰もあの子の前では嘘はつけないんだ。だから俗な人間はあの子を怖がる。見たくない自分の醜さを目の前に差し出されるからね」
「神也の力だったのか…」
「神也も己の力には気づいていないだろうね。はっきりと見える魔力でもないし、もっともそれぞれの心の問題だとも言えるだろうしね。アルトを惹きつけるイルトのカリスマ性と似ている特質なのだよ。だけどさあ…」
アーシュは少しだけ頭を捻り、眼鏡越しに俺を睨んだ。
「おまえ、ホントにセシルに恋してるの?セックスとかしたいとか思っちゃってるわけ?」
「…そりゃ…。セシルに会ってみなきゃ欲情するかどうかわかんねえけどさ…。セシルが何かを悩んでいるのなら力になりたいって…。それはセシルを愛していることにならないのかな…」
「同情ならセシルは喜ばない」
「そうじゃないと…思う。でも同情が混ざっているからって、真の愛情を否定できるわけじゃないだろう?」
「勿論だよ、レイ!それがわかっているのなら行って来いよ。セシルがどこに行ったのか、おまえにはわかっているのだろう?」
「…俺達が初めて会った街…だと思う」
 アーシュは伊達眼鏡を外し、机に置いた。そして椅子から立ち上がると、俺の前に立って、俺の両肩を掴んだ。

「俺はあの時セシルを一時的な記憶喪失にさせた。生きる気力を捨てていたセシルに、現実を抱える力は無かったからだ。おまえと同じような立場ではあっても、あの時のセシルには耐えられないと俺は判断した。だが記憶は自分の生きた証でもある。セシルが神也の傍にいたことをきっかけに、思い出したとしても何の不思議もない。それに立ち向かうために旅に出たのなら、セシルの成長を歓迎しよう。だがセシルの過去はセシルのものだ。たったそれだけの事だと他者が思おうとも、セシルがそれを許せないのなら、自分を殺してしまうかもしれない。だからセシルには愛が必要だ。誰かの為に生きようとする慰め、救いがあれば、過去への見方も変わってくるだろう。レイがセシルの『それ』になる覚悟があるなら…俺は喜んで送り出すよ。行って来いよ、レイ」
「…うん、絶対にセシルと一緒にここに帰ってくるよ」
 アーシュは旅費や宿代などのお金を自分の財布から俺に渡した。
 勿論それは無くてはならないありがたいものだ。日頃、余分な金銭を持っていない俺にとって、汽車代すら危うくなる状況なのだから。

 保証人にアーシュの名前を書いた外出届を学生係に出した俺は、一旦部屋に帰って神也に事の次第を話すことにした。
 神也は神妙な顔で俺の話を聞き、「わかった」と頷くと、自分のクロゼットからコートと帽子を取り出し「さあ、行こう」と、俺に言った。
「は?なんで?」
「レイと一緒にセシルを探す旅に出る。私はスバルとよく旅に出るから慣れているのだ。きっとレイの役に立つ」
「いや…あの…有難いけれど、気持ちだけ受け取っておくよ」
「遠慮はいらない。レイは私の初めての親友だ。親友の為に骨を折るのは当然の友情の証だ。さあ、行こうか。今からなら、夕方の寝台列車に間に合うはずだ」
 そう言って俺より意気揚々と部屋を飛び出す神也を止める術もなく、俺も取り敢えずコートを掴むと、慌てて神也の後を追いかけた。

 サマシティのグランドターミナル駅には五面のプラットホームが並んでいる。
 その一番奥のターミナルには線路が無い。
 そこはここからどこか違う次元行きの列車が入り、そして旅立つホームだと言う。もし、それが本当なら、クナーアン行きの列車が欲しいな。それがあれば、いつでも行き来できるのに…と、想像する。
 俺と神也は三番線の北行きの寝台列車を待った。
 二人用のコンパートメントにはベッドも用意され、すぐに休むこともできたけれど、腹が減った俺達は車内販売のベーグルとホットミルクで夕食を取った。
 燻製ハムが挟まれたベーグルに満足した俺に、神也はデザートだと言って、貝の形をしたマドレーヌを差し出した。
「昨日、リリから貰ったものだ。私の好物だからと、学園に来るたびに私に届けてくれるのだ」
「おまえ、愛されてるな」
「私もそう思う。時々彼らの期待に応えることができるのだろうかと、不安に思うこともある。私が山の神だった頃、私はただ狭い祠の中で、村人たちの祈りや苦しみ、悩みを聞くだけの存在だった。誰かの病気を治したり、死んでいく者を助けたり、貧しさや飢えを救う力など私には無かったのだ。だが、誰も私を恨んだり罵ったりはしなかった。彼らは何があっても私に感謝の祈りを捧げてくれたのだ。私が居ても居なくても彼らは祈りを止めなかっただろう。だが私は彼らの祈りを聞くことができた。そして彼らの祈りが叶うように、天に祈った。…私は彼らの救いに、少しはなったのだろうと信じている」
「うん」
「だから、私はレイの傍にいる。力はなくても、レイの言葉を聞くことはできる」
「…神也」
「人の心とは、話すことで少しずつ明快になっていくものなのだ」

 俺は神也から貰ったマドレーヌを口にした。
 舌の上で溶けるバターと甘い香りが、俺の心を優しくしていった。
 魔力なんかでは生まれない本当の人の優しさなのだと、俺は頭を垂れたのだ。


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この物語の最初のお話は左のカテゴリの「senso」からどうぞ。長いけど…
アーシュの過去の物語など、様々ございます。
山野神也のお話は「山の神」「愛し子」よりどうぞ~

めっちゃ寒い日が続きますが、皆さん風邪など引きませんように…


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● COMMENT ●

神也の存在って 凄いんだぁ!
と、アーシュの言葉で 今更ながら 知った私です。

「人に話す事によって 明快になる」と、神也は言う
そう言えば 学生時代に 好きな人の事を 女友達に話せば話すほど、その人への 思いが募っていった様な気がします。

ここ最近の冷え込みは、『光熱費★節約!』と、頑張っている私の意気込みを 完全に萎えさせました(笑)
今日は雨で 余計に寒く感じられますね
///雨///ブルブル ((;゚ェ゚;)) ブルブル...byebye☆

今日は昨日より気温が高いので、雨が降ってもそんなに寒くはなかったんですよ。
しかしこの一週間は…めっちゃ寒くて寒くて…マジでこんなに冬って寒かった?ってダーに何度も聞きましたよ。
これからも今日ぐらいだったら、いいんですけどね~

神也くんは山の神の時、ずっと人の話聞いていたから、言葉の大切さを知っているんですよね。この子の山の神として生きてきた12年間はとても貴重で、他に与える影響も大きいでしょうね。だから12になったら始末してしまうしきたりになっていたのではないでしょうかねえ~。と、後付けで考えたりする~(*'ω`*)ゞ

>魔術師が自分の術で罠に嵌る・・・
そういうことだったんですね。

思いがけず、2人で旅立つことになりましたが、神也がいい仕事をしてくれるんでしょうね。
間接的にかな?

脳梗塞のリハビリで入院している義父が、先日外泊許可が出て、帰宅しました。
もう全然見かけは以前と変わらないくらいです。
本人には色々違いがあるでしょうけど。

毎年のクリスマスのホテルディナーも一足早く済んで、楽しかった~っと思ってたところ、ディナーショーに夫婦で誘われました。
もう一回コース料理食べられると思ったら嬉しい~!!
奢りのショーなので、たいした人じゃないですよ。
歌手じゃないんです。
今までも、歌手はもちろんマジシャンとか、トークショーとかあったけど、今回は漫談なのかな?

毎年のクリスマスディナーは、着て行く服が大変なんです。
どんどん「何回も着れない~」ってドレスが溜まってます。
同じメンバーなので、去年と同じ服って思われたくないし~
女性は大変ですよね。
着物の人も多いです。
着付け教室に通ったけど、私にも無理かな~

そうですね、神也は助っ人ですね。神也くんは色々経験して、アーシュの後継者になる人だから、これでいいんです。スバルがいるしね。

うちも毎年クリスマスディナーに招待…と、いうかレクサスの奴ですね。でも一回行っただけです。すばらしいディナーとショーと二次会だったんですけど…ほら、私食べられないし飲めないしでめっちゃ損するんですよ。
ホントに結婚式みたいなフルコースディナーもちょっこしか食べられないと、すげえ落ち込みますからねえ~
パーティ用の服はそんなに何着も持ってても普段は着ないから、枚数は少ないですよね。でも今は一万代でデパートでも買えますし、普通のワンピースにちょっとファーのボレロとかを着たら豪華になるし…
着物もいいんだけど、着物きたら沢山食べられないからねえ~
頑張って下さい…

脳梗塞は再発が多くなるので気をつけてください。特に寒い冬は起りやすいです。でも元気になられて良かったですね~


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