FC2ブログ
topimage

2019-09

ダイヤモンドクリスマス 前編 - 2014.12.28 Sun

「人魚姫♂」の尚吾と乃亜の短い物語です。
クリスマス過ぎてしまったけどね…('ε`汗)

イラストはサムネイルでアップしております。
大きく見たい方は、イラストをクリックしてくださいね。


2014冬の尚吾と乃亜

ダイヤモンドクリスマス

前編

 乃亜は真面目だ、と恋人の瀬尾尚吾は思う。
 同棲を初めて一年半。知り合った頃の狂った熱情も醒め始め、相手を客観的に見始める頃だが、尚吾には未だに乃亜の欠点が見当たらない。
 確かにおっちょこちょいの乃亜は、あわてて皿を割ったり、テーブルの角にぶつけたりと粗相は絶えないけれど、尚吾にとってそれは欠点とは言わず、萌えでしかない。
「ドジらない乃亜なんて…シナモンの入っていないアップルパイのようなものだ」などと、甘党でもないのに自身に言い聞かせてしまう尚吾の恋は、まだまだ客観的ではないのかもしれないが…

 さて、乃亜のドジっ子萌えは置いといて…乃亜には尚吾が理解できない趣味がある。
 いや、趣味と言うレベルならまだ良しとするべきだろうが…
 欠点ではなく通常なら長所と呼ぶべきだからこそ、尚吾もなまじ忠告もできない。
 乃亜は主婦の鏡と言っていいほどの倹約家なのである。
 普段の買い物は勿論、色々と節約するのが生き甲斐と言っていいほど、生活にお金をかけない。いわゆるケチなのだ。
 無駄な出費は天敵とばかりに目を光らせ、食料の特売などを新聞の広告で見つけると、どんなに遠くても原付のバイクで買い物に行くし、自分の着る服はしま●らかユ●クロの特価ものしか着ない。しかもそれを尚吾用に買ったりする。
 尚吾は容姿端麗が自慢のダンディでおしゃれでノリの良いアラサーと他人から見られることを良しとする。姿形も仕事の利益になるし、商売繁盛には越したことがない。だから普段着でも安物は着ない主義だった。
 乃亜と暮らす前までは…。

 乃亜と恋に落ち、劇的な恋の成就を為した後、尚吾は以前ほどに自分の見栄えを気にしなくなった。
 乃亜の美貌は言うまでもなく、彼の五人の兄たちの派手な西洋の容貌に慣れるにしたがって、尚吾は自分の見目に自惚れることが少なくなったのだ。
 同時に恰好も昔に比べるとブランドにこだわることもなく、乃亜が買ったカジュアルな服も家の中では文句も言わずに着るようになってしまった。
 おかげで家計も安泰、ましては兄たちがいない時の平穏な日々に、尚吾はこの上ない安息を感じている。
 しかし、稀に乃亜のケチさ加減が行き過ぎる場合もある。


 その日も…馴染の客の家へ上がった時、ふと靴下の足先を繕った跡に気づいた。あわててスリッパで隠したのだが、尚吾はすぐに気がついた。
 ついこの間、尚吾が処分した絹の靴下だったのだ。それまでは気に入って繁盛に履いていた靴下だったが、指の先に穴が開き、ゴミ箱に捨ててしまったのだ。
 多分乃亜はゴミ箱からそれを拾い、自分で縫い繕ったのだろう。
 確かにその行為は褒められるものではあるけれど、尚吾を惨めったらしい気分にさせた。しかもその家の奥様にそれを見つけられ、尚吾の恋人の行為を嫌というほど褒められ、それが一層尚吾を落ち込ませた。
 尚吾は沈んだ気分で帰宅した。
 勿論その些細な事件を乃亜に報告はしなかった。ただ尚吾はその靴下を今度は乃亜に見つからない様にゴミ袋の底深く押し込んでしまった。

 乃亜の節約は本人が楽しんでいるから益々指摘しにくい。それに乃亜は、何よりも尚吾の為に貯蓄をしているのだ。
 尚吾には小さくてもいいから自分の設計事務所を立ち上げたいという夢がある。それを実現させたくて乃亜は節約に励んでいるのだ。
 尚吾は資金の心配はしなくても大丈夫だからと乃亜に言い聞かせても、乃亜は自分のやりくりで少しでも助けたいと思っている。
 実はもうすでに乃亜の長兄であるヴィンセントから事務所の設立資金の援助の申し出はあったのだが、尚吾はそれを断っていた。
 できるだけ自分の力で立ち上げたいし、何より…ヴィンセントに恩を売るのが怖い。
 身体だけじゃなく、人生までも切り売りするつもりはない。勿論ヴィンセントも乃亜を不安にさせる程の要求はしないだろうが…。


 恋人へのクリスマスのプレゼントを迷うのは、幸せ者の証拠だと思う。
 去年は五人の兄たちが家へ押しかけ、ロマンチックの欠片もない聖夜になってしまったけれど、今年は今のところその予定もない。ふたりだけの甘い夜になることを願うばかりだ。
 仕事の合間に普段なら気にも止めない有名宝飾店へ尚吾は足を向けた。

 ボーナスも出たことだし、乃亜の為にちょっと贅沢なジュエリーでも買ってやりたい。それが自己満足であろうと、高価なお代は愛情の大きさに比例しないか?
 店内は思っていたよりも混みあっていた。
 クリスマスイブなのだから当然だ。
 尚吾はうろつきながらダイヤモンドの指輪が飾られたショーケースを眺めた。
 乃亜には一度真珠の指輪をプレゼントしたけれど、あれは恋の成就に焦った尚吾が、とっさに母の形見を渡したものであり、尚吾自身がお金をかけたものではない。
 偽物だとは思わないけれど、尚吾は自分の愛情を形にしたいと思っていた。
 しかし…
 ダイヤモンドと言っても多種多様で値段もピンキリ。宝石の評価が良いほど高価になるのは当然で、自分の財布と格闘しながら乃亜に似合いの指輪を選ぶのは至難である。
 店の女性スタッフが愛想よく「お出しいたしましょうか?」と、いくつかの指輪をトレイに載せ、目の前に並べる。
「大切な方へのクリスマスプレゼントでしたら、これなんかきっと喜ばれますよ」
 目の前に差し出された指輪は一粒物のブルーダイヤモンドで、値段はというと…せっかくの冬のボーナスがすべて吹っ飛ぶ額だ。
「お値段は少しお高くなりますけれど、今なら金利手数料なしの三十六回払いで、ひと月二万円でお買い求めやすくなっております。この品質でこれだけのものは早々ないものですからね。きっとお客様の大切な方も、喜ばれると思いますよ」
「そ…ですね~」
 ニコニコと笑顔のサービスに尚吾も仕事用の笑みで応えたが、正直こちらの方が不利だった。
 尚吾はその指輪を手に取りながら、乃亜の喜ぶ顔を想像してみた。



   後編



お気に召しましたらポチなどして頂ければ、嬉しく思います。


ブログランキング・にほんブログ村へ
にほんブログ村

● COMMENT ●


管理者にだけ表示を許可する

ダイヤモンドクリスマス 後編 «  | BLOG TOP |  » メリークリスマス!

プロフィール

サイアート

Author:サイアート
イラストと駄文を更新しております。

少年愛を中心としたシリアス重視なオリジナル作品でございます。

ゆっくりしていってね~

サイズを記憶するフォントサイズ変更ボタン

文字を大きくする 文字を規定のサイズに戻す 文字を小さくする

ツリーカテゴリー

Script by Lc-Factory
(詳細:Lc-Factory/雑記)

最新記事

FC2カウンター

リンク

このブログをリンクに追加する