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2019-11

銀色のRay 19 - 2015.03.06 Fri

19
イラストはサムネイルでアップしております。
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レイとセシル1
19.

 秋の夕暮れは早かった。
 愛を語るには抜群のシチュエーションだが、現実には今日の寝床すら見当たらない。
 セシルを見つけたらすぐに学園へ帰るつもりだったけれど、「レイ、今夜はふたりで過ごさない?」と、セシルが言う。
 勿論、俺もその誘惑を断るつもりはない。無いけれど…
「あまり持ち金がないんだ。どうにかして安宿を探さなきゃね」
「そうだね。でもこの島に旅人用の宿は見当たらないし…。一度、キャサックの港町に戻って、そこで探さない?」
「OK、そうしよう」
 
 俺とセシルは渡し船に乗り、対岸のキャサックまで渡った。
 サンローの島を離れる時、セシルは「もう二度とここに来ることはないって思った時もあったけれど…、今は本当に来れて良かったと思っているんだ」と、穏やかな顔で土手に並ぶ桃の幹を撫でた。
 そんなセシルがいじらしくて「今度はこの桃の花が咲く頃に、ふたりでセシルのお母さんに会いに来ようよ」と、肩を叩くと「…そうだね」と、セシルは短く答えた。

 キャサックの港は夕方の定期便が着いたばかりで、仕事帰りの人々で賑わっていた。宿を探そうと歩き回っていると、ふとセシルが足を止めた。
「ねえ、レイ。少しでいいからそこら辺をぶらついていてくれない?宿を探してくれてもいいよ。折角ふたりで泊まるのだから、少しぐらいは良い宿にしようよ」
「え?…いいけど。セシルは?」
「この理髪店で髪を切ろうと思う」
「え?短くしちゃうのか?」
「うん。もうずっと前から切りたかったんだ。でもレイがいつも僕の髪を褒めるからさ…なんとなく」
「…」
 勿体ないと言おうと思ったけれど、セシルなりに決するものがあるのなら、俺がとやかく言うことではない。

「半時ほどしたら、ここに戻ってくれる?」
「了解」
 理髪店に入るセシルを見送って、俺は宿探しに奔走した。
 安くて良い宿を探す苦労など、考えたことも無かったけど、港から少し外れたセシルの気に入りそうな煉瓦色のバルコニーの付いた部屋を見つけ、できるだけ値切って予約した。

 時間に遅れまいと急いで理髪店まで戻ってみると、店の前で短く髪を切ったセシルが立っていた。俺を見つけると手を振って笑う。
 豊かに波打っていた黄金の髪は、一本の大麦の穂のように散らばってしまったように見えた。
「どう?」
「…すごく切ったね…」
「おかしい?」
「いや、おかしくない…ただ見慣れないから驚いているだけだ」
 俺よりも短くなったセシルの髪は、もう風に揺らめいたりしない。でも、愛しさは変わらないから、別段嫌な気はしなかった。
「後ろ首がスースーするし、手持無沙汰になって変な気分。でも切った分だけ身も心も軽くなった気がする。それに…はい、コレ」
「え?」
 セシルは俺に何枚かの紙幣を差し出した。
「ほら、店の看板に小さく『ウイッグ用の髪を高く買います。』って、書いてあるでしょ?で、折角髪を切るのなら、お金になる方がいいかなって…。髪を切ってお金をもらえるなんて思いもよらなかったけれど、僕の髪、良い金髪だからって、高く買い取ってもらえたの」
「セシル…」
「だから、今日の宿賃は僕に出させてよね。このお金、ふたりの為に使いたいんだ」
「うん」
 色々な想いを胸にセシルは自分の髪を切り、お金にしたのだろう。その想いを拒む理由などない。

 セシルの髪代は宿賃よりも多く、豪華な夕食の分まで足りてしまった。
 少し高めの赤ワインと温かい鶏肉のシチューに舌鼓を打つと、俺達は部屋に戻った。
 今までふたりきりになる事なんか少しも緊張することなんてなかったけれど、今夜は目的があるから、胸がざわついて仕方ない。
 先にシャワーを終えたセシルに入れ替わり、俺も身体を丁寧に洗った。
 初めてのセックスをどんな風に迎えるかっていうのは、数学問題を解くよりも難しく、経験豊富なセシルに任せた方がいいのかもしれない…などと思ったけれど、それこそ、セシルに失礼になるのではないか…などと、五里霧中。

 部屋へ戻ってみると、セシルはバルコニーに佇んでいた。
「涼しむ季節でもないし、セシル、風邪引いちゃうよ」と、部屋へ戻るよう促した。

 セシルの鼻の頭が赤い。
 泣いていたのかと問うと、少しだけね、と言う。
 お母さんやお父さんの事?と問うと、ううん、違う、今はね…切った髪の事…なんだか寂しくなっちゃったんだ。大丈夫、少しだけだよ…と、鼻を啜る。
 かわいいなあと、セシルを愛おしく思った。
 短くなった髪を優しく梳き、頬を撫でた。
 キスを求めると嬉しそうに応えてくれる。
「初めてだから、期待しないでおくれよ」と、断った。
「レイが求めてくれるのなら、なんでもあげる。それが僕の喜びとなるだろうから」と、セシルは俺の身体を愛撫する。
 
 夜はまだ始まったばかりなので、ドアの外も窓の向こう側も騒がしい。
 どこかで赤ん坊が泣いている。子供の泣き声やら、それを怒る母親の大声やら、どこぞの飲んだくれの享楽の歌声やら…
 まるでここは楽園だね、と、セシルが囁く。
 答える余裕のない俺は、セシルの胸に顔を埋め、口唇を押し付けた。
 くすぐったいと笑うセシルが憎いけれど、次は俺以外何も考えられないほどに夢中にしてやるんだ、と、心に誓う。


 翌朝、一番早い定期船に乗りルオトの港町へ向かった。セシルは充分見たからと、寄り道をせずにサマシティ行きへの特急の汽車に乗り込んだ。
「夕刻にはサマシティへ到着予定だし、良かった。今日中には学園へ戻れるな。アーシュに早くセシルの無事な姿を見せたい」
「…」
 窓際に座ったセシルは、流れる風景をじっと見つめていた。
 そう言えば、朝から食欲も無かったし、どこか具合が悪いのだろうか。髪を切った所為で風邪でも引いたのかもしれない。それとも…俺のセックスの所為なのか?
 確かに巧いとは言えないまでも、セシルは気持ちよさそうにしてくれてた…と、俺が思いたいのかもしれないけれど…。

「どうした?セシル。どっか具合悪い?腹減ったなら、売店で何か買ってくるよ」
「違う…あのね…。本当は学長に会ってから話そうと思っていたんだけど…でも、…レイには隠し事はしたくないから…」
「なんでも言って欲しい。出来る事はなんでも叶えたいし、出来ないものがあるのなら、ふたりで話し合って解決したい。それがお互いを思いやるってことじゃないだろうか」
「うん。…僕ね、学長に会って、今までお世話になった事へのお礼を言ったら、天の王学園を出て行こうと思うんだ」
「え?…どうして?」
「だって、考えてもごらんよ。僕はハールート・リダ・アズラエルの息子だよ?…学長の…アーシュの育ての親だった前学長のトゥエ・イェタルを拉致し殺したのは僕の父だ。アーシュにとって僕は敵の息子だよ。…今まで何も知らなかったからアーシュに親代わりになってもらって、世話になっていたけれど…今までと同じようにアーシュに…学園に留まり続けることはできないよ。本当は…アーシュに真実を告げることさえ怖くて…アーシュに憎まれたらどうしよう…って。このまま、黙ってどっかへ行こうかと思ったり…でも一度はちゃんとお礼も言っておきたいから…」
「で、俺のことも置いてきぼりにして、また勝手に行っちまうつもりなのか?」
「レイはアーシュのお気に入りだし、それに今はもうこの星の住人じゃないってわかったから…昨日一夜、君に一杯愛されたから、僕はそれで充分なんだ…」
「もっと一杯セックスしたいって、言ってたじゃん。あれは嘘なのか?」
「それは…」
 顔を赤らませて、セシルは黙った。怒っていないことは俺の手に乗せたセシルの手のぬくもりで充分理解した。

「セシル、俺はもうセシルを離さないよ。セシルの行くところならどこへだって一緒に付いて行こう。死がふたりを分かつまでずっと一緒に居たいんだ。ホントだよ」
「…レイ」
「それに、おまえの心配だけどさ…アーシュがセシルの父親の正体を知らないってことは…九十九パーセント無いって」
「どうして、そんなことを言えるの?」
「セシル、君はアーシュを知らなすぎる。アスタロト・レヴィ・クレメントって言う奴はさ、本物の『魔王』で『神さま』なんだぜ?それも一等傲慢で一等慈悲深い馬鹿野郎で、愛おしい俺の師匠殿だ」
「…」
「アーシュはきっと俺とセシルの道標になってくれるよ」
 
 自信を持って言い切った手前、多少不安な気持ちで日没前に学園に到着し、俺はセシルを連れて学長室へ向かった。
 運よくアーシュは在室で、俺とセシルの帰宅を歓迎してくれた。
 見慣れぬ装いで…

「なんだよ、それ!」と、俺は叫んだ。
 アーシュの頭には見たことも無い被り物…大きな鳥の羽根が並べられた綺麗な飾りの着いたデカいカチューシャ的な…
「見て見て、カッコ良いだろ?スバルのお土産。ウォーボーンネットって言うインデアン酋長の王冠みたいなもんだとよ」
「…だから?」
「どう?似会うだろ?めっちゃかっこ良いだろ?」

 こいつ…
 とてつもない魔力を持った恐るべき魔術師なクセに、根っからの好奇心旺盛のガキと同じだと呆れながら、でもそんなアーシュが羨ましくて、憧れで…俺もそれを被ってみたいなどと心から願った事は、セシルには絶対に言わないでおこう。


アーシュ机


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この物語の最初のお話は左のカテゴリの「senso」からどうぞ。長いけど…
アーシュの過去の物語など、様々ございます。
山野神也のお話は「山の神・愛し子」からどうぞ。


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● COMMENT ●

ちょっと おセンチになりかけたけれど、アーシュの姿に…(*>ω<*)ププププ・プッーー♪です

これは、シンミリ~になりがちなレイとセシルの心を 軽くする為なものでしょ?
あーでも ただ単に 面白がっているのかもしれませんね!
何しろ アーシュですから♪v(`ゝω・´)キャピィ☆...byebye☆


セシルが 心機一転で 髪を切ったのを読んで 思い出しました。
小学生低学年まで ずっと ショートだった私、
私の髪は 一本一本が太くて固くて 量的には普通より少ない
そして 表面的にはストレートに見えるのですが、中奥の方は 大きくクネッタ癖毛があって ショートだと 毎朝 爆発状態だったんです。
それで 美容師さんは 髪の毛が多いと勘違いして 中奥の髪を剝いてしまう。
しかし その剝いた毛が中途半端に伸びて さらに爆発状態が激しくなったりと。
今 考えると 何て 悪循環な事を。。。+゚(pωq)゚+。エーン

それで 今は 肩より10㎝は 絶対に長めにしています。
柔らくて 癖の無い髪の毛の人に 憧れていましたねー
ダンナと息子が その髪質なんで 羨ましいったら ありゃしない!プンスコo(`ω´*)oプンスコ
まぁ 彼らは彼らなりに 髪の悩みが あるようですけどね(苦笑)


アーシュは面白がってるだけですね( -ω-)y─┛~~~

髪の悩みは私も小さい頃からあります。
柔らかくてゆるい天然なので、先がかならずハネテしまうんです。でもうまくセットすると内巻にも外巻にもなるという…なのでパーマはほとんどしたことないですね。
でも柔らかいので少なく見えてしまい、薄毛が気になります…
私もサラサラの直毛に憧れていました。ストレートパーマにしても、クセが強くてひと月もたずにまた先が跳ねるんです~
ダーは直毛なので、下の子が直毛で上の子は私似のゆるいクセ。
でも直毛は直毛でいろんな髪型にできず、いつも短めで…まあ、男だし…
上の子の方が色んなセットができるので、少しはクセがある方がいいのかもしれません。
しかし、他所の庭はよく見えるもので、自分が持ってないものにどうしても憧れてしまいますね('ε`汗)


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