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2019-09

超いいひと 12 - 2015.07.08 Wed

12
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吉良と浅野1

12、

 吉良さんと一夜を共にした翌朝、俺は一足先に目を覚まし、眠っている吉良さんを置いて、自分の部屋へ帰った。
 目覚ましのコーヒーを淹れて一息つくと、昨晩の一連の事の次第への不安が段々と募ってきた。
 これから吉良さんを含めた仕事仲間と一緒に進めていくプランニングにしても、お互いのプライベートな感情が現れるのはよくないはずだ。
 しかし、一番肝心なことは…
 俺があの人に少しでも惹かれているのか…と、言う事だ。
 俺は吉良さんに対しての感情を見極めようと、何度も自分の心を探ってみた。そして思わず笑ってしまった。
 自分でも驚くほどに、何ひとつときめきが見当たらなかったんだ。
 考えてみたら、俺は吉良さんとマトモなキスさえしていない気がする。
 俺があの人と寝たのは、浅野さんへの想いが俺の心の中にまだわだかまっていて、浅野さんが愛した吉良さんの身体を確かめたいという好奇心が大きかったからじゃないだろうか。
 これまでだって、恋愛感情無しに男と寝て、多少のときめきを感じたり、惹かれたりしたことはあった。けれど、吉良さんには哀れさを感じても愛し合いたいとは思わない。

「信さんに怒られるかな~」と、天上に向かって呟いてみた。
 怒った信さんを見てみたいと、思う俺は末期症状だろうか。だって、そんな信さんの顔を想像するだけで、身体が疼き始めるんだから。

 ともかく吉良さんには変な誤解をされる前に、俺の方から恋愛的な感情が全く無い事をはっきり告げた方がいいだろう…と、思い、濃いめに淹れたコーヒーのポットを持って、再び吉良さんの部屋を訪れた。

 吉良さんはまだ寝ていた。
 休日だとは言え、さすがに十時を過ぎていた為、無理矢理起こしてコーヒーを飲ませた。
 寝ぼけていた吉良さんも、コーヒーを飲み終える頃には、はっきりと思い出したらしく、青ざめた顔で「申し訳ない!」と何度も俺に頭を下げた。

「いや、そんなに謝ってもらわなくてもいいんですけど…吉良さん、他の男と寝る時も浅野さんの名前を呼んだりしてます?」
「あ、う…たぶん…」
 吉良さんは泣きそうな顔で頭を抱えながら俯いた。
「それ、やめた方がいいですよ。最中に違う男の名前呼ばれると、萎えるもんでしょ?普通は」
「…反省…してる」
「俺は別に構わないけど」
「え?」
「俺の憧れだった浅野さんの身代わり役で吉良さんと抱き合うなんて…倒錯的で萌えるし」
「そうなの?」
「嘘ですよ(半分は本当だ)」
「…」
「まあ、男の物理的性欲ってしょうがないもんだし、俺でいいのならたまになら付き合ってもいいですよ」
「そんな…悪いよ」
「じゃあ、やめます」
「…あ、…やっぱりお願いしたい…気はする」
「お互いに恋愛感情が無いから、気が楽でしょ?」
「…うん」
「実は俺、今、大恋愛中なんですよ」
「そうなの?」
「うん、奥さんのいる人で…お互い好き合っているんだけど、未来が見えないつうか…。好きだからこそ、いつも不安が付きまとってしまう。でも…別れたくないんです」
「…」
「男同士の恋愛って難しいですね。当事者だけの感情ではどうにもならなくなる。吉良さんはある意味、幸せなのかも知れませんね。別れて五年経っても、好きだった人の事を一途に想っていられる。それってなかなか味わえるもんじゃない」
「不毛だよ。結局は片思いでしかないもの。もう決して叶う事の無い…」
「そうかなあ~。案外浅野先輩も吉良さんの事、諦めてないかもしれないですよ」
「そんな…虫の良い話だよ。それに浅野は女にも男にもモテる奴だったし…今頃はきっと結婚して…」
 そこまで話すと吉良さんは鼻を啜った。
「心の底から俺は馬鹿だなあ~って…情けなくて腹を立ててるよ。浅野を想いながら他の男と寝るなんて、心底くだらないし、自分自身を軽蔑している。でも…どうにもならないんだ…」
 
 吉良さんの浅野さんへの想いには感服するけれど、吉良さんの生き方は袋小路のような気がする。一生浅野さんへの想いを抱えて、生きていくつもりなんだろうか。
 それとも浅野さん以外の運命の男が、吉良さんを救うのだろうか…
 最もこの世の誰彼の人生が、すべて恋愛で成り立っているとは、俺も信じたくないけれど。


 付き合い始めて一年経った記念日にと、信さんとふたり、少しばかり奮発して海の見えるリゾートホテルに宿泊した。
 贅沢な海の幸に舌鼓を打ち、海を見ながらジェットバスで二人はしゃいで、それからいつものように精根尽き果てるまで抱き合った。
 不思議なのは…俺が信さんとのセックスに少しも飽きない事だ。何度やっても、十分に満ち足りていても、時間が経つとまたやりたくなる

「ねえねえ、どう思う、信さん。吉良さんの事、このままほおっておいていいと思う?」
 思う存分やったあとのヘトヘトになった信さんのだらしない顔を見て、こういう奴に惚れている自分は、吉良さんよりも随分と幸運なのかもしれない…と、思った。
「え~、それを僕に聞くんですか?」
 ほら、もう困惑している。
 その顔、どこかマヌケなゆるキャラっぽくてかわいいじゃん。
 ベッドの中で信さんの腹の中を探るのも、俺の趣味だと言っていい。素直な信さんの反応は面白すぎるのだ。

「だってさ、同じ職場の先輩なんだよ。スムーズに仕事したいじゃん。今、結構大事なプロジェクトを抱えてるんだよねぇ」
「そんな…知りませんよ、僕は」
 今度は精一杯に意地をはった顔。
 そんな顔はたまにしかしないから、それも新鮮。

「あ、妬いてる?ねえ、信さん、俺が吉良先輩と寝たから妬いてるの?」
「あ、…当たり前ですよ。好きな人が寝取られたのを喜ぶ恋人なんかいないでしょう」
「…うわ、なんかすげえ嬉しい気分。あ、でも俺が入れる方だから、寝取られる…とは意味違う気がするんだけど…」
「そんなの、違いません。由宇くんを誰にも渡したくないって気持ちは、僕だってあります」
「でも、別に吉良先輩に惚れたりは全然ないよ」
「だとしても…嫌なものは嫌ですよ」
「…」
 こんなにはっきりと俺に対する気持ちを表す信さんに俺は驚いてしまい、黙りこんだ。それから、段々とにやけてしまった顔を戻せなくなった。

「なんですか?いやらしそうに笑って」
「だって、信さんがそんなに嫉妬するだなんて、意外だったから。なんか俺、すげえ愛されちゃっているのかしら~と思っちゃうじゃん」
「あ…愛してますから…。由宇くんは僕の大事な恋人ですから」
「うわ、なんか信さんの口からそんな事言われると、すげえ欲情するんだけど。もっと言って言って~」
「もう、由宇くんったら…」

 信さんが嫉妬するのも、それに乗じて、激しいセックスを求めてくれるのもかなり意外な発見だったし、それはとても幸福な事だと感じていた。
 そして、ひとりぼっちで浅野さんを想い続ける吉良さんに同情した。
 俺は自分が一番大事だと思っている巷に溢れている多くの者と同じ考えの人間だが、俺が幸せなら、俺のまわりの人たちも同じように幸せであってほしいと願う一般的な善人でもあるのだ。


 その二週間後、ちょとしたドラマチックな修羅場?…が、待ち受けていた。
 日頃、丈夫な事だけが取り柄の俺が、珍しく風邪を引いてしまった。鬼の攪乱かと笑っていた上司もふらふらと倒れそうな俺を見て、さすがに早退を薦め、俺は滅多に行くことの無い内科のクリニックへ向かった。
 医師はインフルエンザと診断。他人にうつさない為にも一週間、自宅で安静にすることになった。
 これまでだって病気で寝込んだことだってあるけれど…熱の所為で身体が震え、頭痛で天井がぐるぐると回りだし、身体の節々の痛みに独り言の弱音を吐いた。
 震えながらひとりでこんな風に苦しんでいることが、突然、とても怖くなってしまったんだ。
 スマホから信さんに「会いたい」と、半べそ気味に甘えてしまった。
 俺の為に早めに仕事を切り上げてくれた信さんが両手にスーパーのビニール袋を抱えて俺の部屋へやってきたのは、約三時間後だった。

 信さんは弱り切った俺の手をぎゅっと握りしめ、
「もう大丈夫ですよ。僕が由宇くんを守りますからね」と、力強く答える。
いつもとは違った頼りがいのある言葉は、その時の俺が一番欲しかったものだ。

「インフルだからうつるかもしれないのに…ごめん。俺、自分がこんなに弱い奴だとは思わなかったよ…」
「誰だって病気の時は、心細くなるもんですよ。僕は予防接種をしてますから、平気ですよ。由宇くんが元気になるまで、ずっと傍にいますから安心して下さい」
 信さんの言葉に涙が出る程嬉しかったのだが、安心が先に立ってしまい、信さんの手を握りしめたまま眠ってしまった。

 夢を見た。
 不思議な夢だった。
 遥か彼方で浅野さんが昔のままの姿で、笑って手を振っているだけの夢だった。


 目が覚めたのは午後八時過ぎだった。目の前には長閑な顔をして俺を見つめる信さんが居てくれた。
「気分はどうですか?少しは良くなりました?」
「…うん。大分いいみたい」
「熱は…」
 信さんは自分の額を俺に額に当てて、熱を確認する。
「薬が効いているみたいだから、下がっていますけど、また上がりますから、今のうちに体力をつける為になにか食べておきましょうね」
「はい」
「お粥を炊きました。持ってきましょうか?」
「そこまでしなくても、テーブルで食べれるよ」と、俺は笑いながら起き上がった。
 笑ったのは、信さんが派手な花柄のエプロンを付けていたからだ。
 それに突っ込むと「慌てていたので、スーパーで見つけたエプロンを柄も見ずにカゴに入れたんですよ」と、恥ずかしそうに答えた。
「信さんに似合ってる」
「ホントですか?」
「うん、女神さまみたい」
「また茶化して」と、拗ねるふりをするが、弱っている俺にとって今日の信さんは守護神みたいに思えたんだ。

 信さんの炊いたお粥も、出し巻き卵も美味しかった…と、いうか、熱の所為で味はよくわからなかったけれど、一応用意された分は平らげた。

「じゃあ、由宇くんは薬を飲んでまた休んでください」
「うん」
 洗い物をする信さんの姿を見ておきたいけれど、今は身体がだるくてままならない。ベッドのある部屋に向おうとしたところ、玄関のベルが鳴った。

「宅急便かも知れない」と、俺が言うと「僕が出ますから、由宇くんは寝ていて下さい」と言う。
「わかった」と返事をして玄関に向かう信さんを見送ったけれど、宅急便なら印鑑がいると思い、俺は信さんの後を追った。
 
「信さん、印鑑…」と、呼びかけると玄関の扉を開けながら信さんは俺の方を振り返る。
「あ…」
「こんばん…は」
 玄関の先には見慣れた男が立っていた。
「吉良さん」
 吉良さんは俺と信さんを二度見し、信さんに軽く頭を下げ、しげしげと俺達を眺めた。
 女物のエプロンをした信さんと、パジャマに袢纏の俺が仲よく並んでいる様は、どっちにしても笑える光景だったと想像できることだが…

「え…と、あ、具合どう?」と、吉良さんは適当な言葉を探しながら俺に問う。
「インフルエンザなんで、しばらくは休業ですよ。うつるから俺に近づかない方がいいですよ」
「…」
 俺の言葉に吉良さんは納得できないような顔をして信さんの方を見たが、すぐにふっと笑った。

「そう…まあ、いいや。これ、今日の会議の報告。上杉君の提案したデザインも含まれているから、良くなったら見通してくれると助かる」
「わかりました」
 吉良さんは「こっちは差し入れ」と、書類とお見舞いの飲み物や菓子袋の入った袋を信さんに渡した。
「じゃあ、お大事に」と、手を振る吉良さんに「どうもわざわざありがとうございました」と、丁寧に頭を下げて見送る信さんの後姿が、良い具合にマッチしていて、俺は妙に感心してしまった。
 

 リビングに戻った後、笑っている俺に信さんが不思議そうな顔を見せるので、「さっきのあれ、なんかテレビドラマの三角関係の修羅場みたいで面白かったね」と、言うと「由宇くんは当事者なのに、暢気な顔をして…正直腹が立ちます。由宇くんが病気じゃなかったら、一発殴っていたかもしれない」と、真顔で言う。
 俺はあわてて釈明しながら、果たして俺と吉良さん、どちらが信さんに殴られたのだろう…と、色々なシチュエーションが頭を巡ったのだ。


キッチン


「超いいひと」はこちらから… 11へ /13へ
 

表紙の浅野と吉良のお話はこちらから…
傷心
うそつきの罪状 1



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● COMMENT ●

体調が悪い時 不器用でも 一生懸命に 何かをしようとしてくれる姿は、心を ホッコリさせてくれますよね。
何もしないダンナに 信さんの爪の垢を呑ませてみようかしら(苦笑)

ずっと 良い雰囲気な2人ですが、順調過ぎて 悪い事が怒らないか心配です。
取り越し苦労だったらいいけど。。。

一昨日、昨日と 湿度がハンパない此方です。
不快指数83だってぇ~~~!Σ(=゚ω゚=;ノ)ノ
2階の息子とダンナは、早々と エアコンを稼働させていましたが、1階の私は 電気代節約の為に我慢していました。
でも とうとう晩御飯時に スイッチONで そのまま 就寝前まで!
今日も 2人は自室に居るので まだ稼働させてませんが、昼食時にはONでしょうね。
いったん ONしたら OFFできないなぁ
あー電気代が…(/T▽)/ ~”¥” ~”¥”~...byebye☆


うちも私が病気でも、お粥なんて作れませんよ。料理好きの旦那さんもよく聞くけど、うちは冷蔵庫すら開けない人です。
こちらも蒸し暑いんですけど、今日はずっと雨で気温は低いので、まだエアコンは動かしてないです。去年買ったばかりで、お掃除要らずのエアコンなので、すげえ楽ですね~。自分で風の方向も温度も決めてくれるし。
部屋が多いと大変ですよね。うちも子供がいる時は、ブレーカーが落ちないかと心配でしたよ~。ドライヤーつけると落ちるんだよなあ~

ドラマチックな修羅場?って、何かと思えば・・・・
当事者が暢気なので、緊張感がなかったですね(笑)
話しに聞くのと、顔みてしまうのとって、全く違ってくるので、引きずらなきゃいいけど。

私も昨日の昼からエアコン入れました。帰宅後部屋の温度は32℃。
1人だったら我慢したけど、夫が居たので(男は我慢しないから)入れる事になりました。
一度冷房入れると、もうそれからずっとになるんですよね~
PCの熱も熱いよ~。掌が熱すぎる~

今日もムシムシで身体がだるいですなあ~
まあ、本格的な夏に向っているということでしょうか。
あんまりだるいので、まだ続き書いてない…(;´Д⊂)つか、今から書くけど~

ここのお話のキャラはみんな大人で多少の遊びにも慣れている…というか…私も現実に浮気とかそういう騒動にお目にかかったことがない、凡人なんですけどね…それが普通と思っていたんですけどね…
三島由紀夫とかの小説を読むとですね。夫婦であってもお互いにもう浮気が当たり前~(大体お金持ちとかそういうのだが)嫁が舅と関係を持つとか…もうすげえ~って開眼されるんですけど…あれが世間の本当なんだろうか…と、言うか、ゲイの世界では多数の人と遊ぶのはごくごく普通みたいな…感じなんですよ。
で、私もああ、ゲイってそういう人たちなんだ…とか、ねえ~
実際、自分が見たり聞いたりしたわけじゃないので、そういう小説で世界観を築くしかないところはあるかな~

エアコン、うちは私が我慢しない人で、ケチなダーは扇風機でいいよ~とか、言います。
まあ、台所に立つ身としては…エアコンつけるぜ!って話ですけどね~


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