超いいひと 16 - 2015.08.11 Tue
16
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16、
静岡に向かう途中のサービスエリアで、しばらくの間、信さんは携帯で奥さんと話していた。
俺は気にしないフリをして昼飯を食べていたけれど…
いきなり実家へ行こうなんて、ちょっと無鉄砲だったかもしれない。
信さんの気持ちも聞いておけば良かった…などと少し気落ちしていると、信さんがニコニコとしながら俺に近づいてくる。
「由宇くん、今から行っても大丈夫だって。羽月さん、由宇くんに会えるのが楽しみって、喜んでたみたいでした」
「え?俺の事、話してるの?」
「ええ、以前から時々メールで少しずつ…。実は先月初めに葉月さんが僕の社宅に来られて…。その時、由宇くんと一生一緒に居たいと告白しました」
「そ、それから?」
「羽月さんは心から喜んでくれました。彼女は…僕を他所に自分が幸せに暮らしているのが、心苦しいんです。だから僕の事も色々心配して、気を使ってくれる。…そんなことは必要ないって言っているんだけどね。なんか僕に負い目を感じているらしくて…」
「一理あるじゃん」
「でも…僕だって母を彼女に任せきりにしてしまっているし…どちらが悪いなんてことはないんだよ」
信さんの気持ちはわかる。
面倒を見なきゃならない母親を奥さんに任せきりなのは、大きな借りというものだ。迂闊にこの状態を壊すことは、母親を泣かせることになる。
でも、どっちみち、籍だけの夫婦であるなら、いづれは別れた方がお互いの為だと、俺は思うけれど…
掛川の家に着いたのは午後二時を過ぎた頃だった。
羽月さんの実家が経営する「結城総合病院」は、想像以上に立派な建物で、実家はすぐ隣に建てられていた。
信さんは病院の駐車場へ車を置き、そこから実家の正門へ回った。
勿論、2ケースのリンゴとアップルパイやらジャムやらのお土産もたっぷり抱えて。
セキュリティのある門内にも、ちゃんとした駐車場があるのに…と、言ったら「僕はこの家の者ではありませんから…」と、全く気にしていないように答えた。
信さんは俺が思うよりも、精神は強いのかもしれない。
鉄筋の二世帯住宅らしく、玄関は左右に別れ、右側の玄関の前に羽月さんらしい女性が待っていてくれた。
「お帰りなさい、信彦さん」
「ただいま帰りました」
「こんにちは。初めまして、由宇さん…って呼んでもよろしい?」
「あ、勿論です。初めまして、上杉由宇です。今日は突然にお邪魔することになりまして、申し訳ありませんでした」
「ずっとお会いしたかったんです。以前から信彦さんからお話だけじゃなく写メでお顔も拝見してて、信彦さんを幸せにしてくれた人に興味津々…って感じ?ふふ…良かった。信彦さん、ホントに幸せね」
羽月さんは俺が思ってた感じの人とは大分違っていた。
大病院のお嬢様っていうから、それなりにお金持ち風なのかと思ったけれど、綺麗に整った顔はナチュラルメイク、髪は後ろで三つ編みに束ね、服装は淡いピンクのポロシャツにジーンズ、そしてエプロン姿。それに声が…どこかで聞いたような…
「さあ、何もお構いできませんけどお入りください」
「はい、お邪魔します!」
なんせ元気と愛嬌だけが取り柄の俺なので、落ち着かない信さんを尻目に颯爽とお邪魔することにした。
羽月さん手作りのチーズケーキとコーヒーを頂きながら、リビングの様子を伺う。
「すいません。俺、仕事柄、建物の内装にも興味があって…」
「建築家でいらっしゃるのよね」
「まだまだ新人なんですけど…」
「信彦さんたら由宇くんは若いのに凄い!って電話で話す度に言うものだから、可笑しくって…。他の人の事をこんなに楽しそうに話す信彦さんを今まで見た事がないから、本当に由宇さんが好きなんだ~って、微笑ましくて」
「羽月さん、何も由宇くんの前でバラすことないでしょう…」
「だって嬉しいんだもん。信くんが幸せを見つけたって思うと…ありがとね、由宇さん」
「…」
良い人だとは聞いていたけれど、羽月さんがこんなにいいひとじゃ、逆に俺が僻んでしまうじゃないか。
信さんはなんでこんないいひとを本気で好きにならなかったんだろう。
理由は言うまでも無いけれど…同性しか愛せないって自分が思うよりは罪深いものかもしれない。
「あ、駿くんは?」
「駿は多美ばあちゃまとスイミング教室よ。もう帰ってくる頃だわ」
「そう…か」
「駿と会うのも久しぶりでしょ?」
「ついに忘れられてるかもしれないね」
「大丈夫よ、いつも言い聞かせているから」
「気を使わせてごめんね」
信さんと羽月さんの関係って、間近で見るとなんだか…姉弟みたいだ。お互いを気遣い、相手の幸せを我が事のように喜べる。
だけど…やっぱり違和感を感じてしまうのは、俺が素直に認めたくないからなのかもしれない。
しばらくして駿くんが姿を見せた。
忘れ去られているかと心配していた信さんに一目散に「わあ、パパだあ!」と、駆け寄ってくる姿も愛らしく、信さんも駿くんを軽々と抱き上げ、「駿くん、大きくなったね」と、嬉しそうだった。
どこから見ても親子にしか見えないのに…と、信さんの恋人の立場で言うのも変だけど、不思議だと思う。
信さんが久しぶりに母親に顔を見せてくると言うので、俺は「近くの喫茶店で待ってるからゆっくり話しておいでよ」と、手を振った。
「じゃあ、うちの病院の喫茶室で待っててもらいましょうよ」と、羽月さんの提案で隣の病院に行くことになった。
信さんは駿くんと一緒に母親の居る隣の家へ、俺は羽月さんに案内されて、病院の喫茶室へ向かう。
「こちらの方が近道なのよ。夜間、患者さんから急に呼び出されることも多いから」と、羽月さんは正門とは逆の裏道の門をにこやかに案内する。
「あ!思い出した!」と、俺は思わず声を出す。
「え?なに?」
「羽月さんの声、どっかで聞いたことがあるなあと思っていたんです。そうだ、昔、親父が持ってたビデオで見たアニメ「めぞんなんたら」のヒロインの管理人さんに声と恰好がクリソツ…あ、気ぃ悪くしました?」
「いいえ、そんな昔のアニメ、よく覚えているなあって思って」
「いや、親父がこの声優さんが好きらしくて『ナウシカ』やら『小公女』のアニメ等、何回も見せられて…」
「ふふ…以前、初めて会った時に同じことを言う人が居たの。…兄なんだけど。私が高校になったばかりの頃に母が再婚して、この病院に越してきたんだけど、その時に初めて兄に会って、いきなり『お前、ナウシカみたいだな』って言われて、びっくりしたのよ。その後も、その声優さんの役名で私を呼ぶの。性格悪いでしょ?」
「…その義理のお兄さんが、駿くんの本当の父親…ですよね」
「…」
「信さんに聞いたからじゃない。信さんはそう言うことは一切話さない人だ。さっきリビングの棚に置かれてた家族写真のお兄さんの姿を見た時、直感で感じたんです」
「そう…うん、その通り。びっくりでしょ?…私の所為でずっと信彦さんに迷惑をかけているの」
「信さんは羽月さんの力になりたかったんだから、羽月さんだけの所為じゃない。でしょ?」
「…私と兄の責任には間違いないわ。ついこの間…ね…信彦さんから離婚しようかって言われたの。いつかはしなきゃならない話だし、わかっているんだけど…。なんだか怖いのよ。男女の関係じゃなくても、信くんは私の心の支えとなっている人だもの」
「…」
「でも、なんだか吹っ切れる気がする。由宇くんに会ってしまったからかな。信くんのあんな幸せそうな顔、ほんとに初めて見たのよ。…もう信くんを自由にしてあげなきゃね。…由宇さん、信くんの事、よろしくお願いします」
この人は、浅野さんが信さんに言った事と同じ事を言う。
でも浅野さんとこの人の立場は全く異なるものだ。
俺は羽月さんに答えられなかった。
「任せてください」なんて言えるわけがない。
俺が信さんに今以上の幸せな家庭を与えられる保障など、どこにも無いからだ。
羽月さんが案内してくれた喫茶室は、運悪く空いた席が無かった。
「休日はお見舞いの方が多いから、混んじゃうのね。どうしましょう。近くに喫茶店もないし…」
「大丈夫ですよ。適当に時間つぶしますから」
「じゃあ、屋上はどうかしら。景色が良いって評判なのよ。冬だから寒いかな…」
「今日は晴れていて風も無いから大丈夫です。行ってみます」
「じゃあ、信くんに伝えておくわ」
「よろしくお願いします」
羽月さんと別れて、病院のエレベーターに乗り最上階へ向かう。
小高い丘に建てられた十二階建ての屋上から見る景色は、思った以上に爽快だった
「富士山あっちかな~」
独り言を言いながら、あちこち歩いてみると白衣を来た男性が片隅のベンチに座って煙草を喫って居た。
少し近寄ってそっと顔を覗き見ると…あ…さっきの写真で見た…羽月さんの義理の兄…駿くんの実の父親…つまりはすべての元凶の親玉…だった。
触らぬ神に祟りなし…
俺は踵を返しその親玉から離れようとした。
「おい、おまえ、ちょっと待て」
低い不機嫌な声が俺を呼び止めた。
「逃げる事はなかろうよ」
「べ、別に逃げてはないです」
「おまえ、信彦の男だろ?」
「え?」
「羽月から写メを見せられた。それにさっきから、信彦が来てるから会いに来いって、催促のメールが五月蠅い」
「…」
もしかしたら、この人がここに居ることをわかって、俺を屋上に?
だとすると、羽月さんも案外、悪党なのかもしれない。
だけど俺もただのいいひとでいるつもりは全くない。
俺は姿勢を正し、その親玉に向き直り、頭を下げた。
「初めまして。上杉由宇と申します。只今、三門信彦さんと真剣に付き合っております」
「…気持ち悪っ!」
「は?」
「俺がこの世の中で一等嫌いなものは、泣き騒ぐガキと気色悪いホモ共だっ!」
…
え~と…
うん、こういう人、居るよね。
でも、医者のあんたが言うセリフかよ。
俺を見るその視線も、いわゆる一般の常識人と言われる者たちが俺達を蔑む目線と同じだ。
言わずもがな、結城誠人との初対面の印象はお互いに最悪なものだった。
「超いいひと」はこちらから… 15 /17へ
浅野と吉良のお話はこちらから…
傷心
うそつきの罪状 1
ゲイじゃない鬼畜男もたまにはいいけど…これ以上、ホモ的な事は起こらないからなあ~( -ω-)y─┛~~~
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静岡に向かう途中のサービスエリアで、しばらくの間、信さんは携帯で奥さんと話していた。
俺は気にしないフリをして昼飯を食べていたけれど…
いきなり実家へ行こうなんて、ちょっと無鉄砲だったかもしれない。
信さんの気持ちも聞いておけば良かった…などと少し気落ちしていると、信さんがニコニコとしながら俺に近づいてくる。
「由宇くん、今から行っても大丈夫だって。羽月さん、由宇くんに会えるのが楽しみって、喜んでたみたいでした」
「え?俺の事、話してるの?」
「ええ、以前から時々メールで少しずつ…。実は先月初めに葉月さんが僕の社宅に来られて…。その時、由宇くんと一生一緒に居たいと告白しました」
「そ、それから?」
「羽月さんは心から喜んでくれました。彼女は…僕を他所に自分が幸せに暮らしているのが、心苦しいんです。だから僕の事も色々心配して、気を使ってくれる。…そんなことは必要ないって言っているんだけどね。なんか僕に負い目を感じているらしくて…」
「一理あるじゃん」
「でも…僕だって母を彼女に任せきりにしてしまっているし…どちらが悪いなんてことはないんだよ」
信さんの気持ちはわかる。
面倒を見なきゃならない母親を奥さんに任せきりなのは、大きな借りというものだ。迂闊にこの状態を壊すことは、母親を泣かせることになる。
でも、どっちみち、籍だけの夫婦であるなら、いづれは別れた方がお互いの為だと、俺は思うけれど…
掛川の家に着いたのは午後二時を過ぎた頃だった。
羽月さんの実家が経営する「結城総合病院」は、想像以上に立派な建物で、実家はすぐ隣に建てられていた。
信さんは病院の駐車場へ車を置き、そこから実家の正門へ回った。
勿論、2ケースのリンゴとアップルパイやらジャムやらのお土産もたっぷり抱えて。
セキュリティのある門内にも、ちゃんとした駐車場があるのに…と、言ったら「僕はこの家の者ではありませんから…」と、全く気にしていないように答えた。
信さんは俺が思うよりも、精神は強いのかもしれない。
鉄筋の二世帯住宅らしく、玄関は左右に別れ、右側の玄関の前に羽月さんらしい女性が待っていてくれた。
「お帰りなさい、信彦さん」
「ただいま帰りました」
「こんにちは。初めまして、由宇さん…って呼んでもよろしい?」
「あ、勿論です。初めまして、上杉由宇です。今日は突然にお邪魔することになりまして、申し訳ありませんでした」
「ずっとお会いしたかったんです。以前から信彦さんからお話だけじゃなく写メでお顔も拝見してて、信彦さんを幸せにしてくれた人に興味津々…って感じ?ふふ…良かった。信彦さん、ホントに幸せね」
羽月さんは俺が思ってた感じの人とは大分違っていた。
大病院のお嬢様っていうから、それなりにお金持ち風なのかと思ったけれど、綺麗に整った顔はナチュラルメイク、髪は後ろで三つ編みに束ね、服装は淡いピンクのポロシャツにジーンズ、そしてエプロン姿。それに声が…どこかで聞いたような…
「さあ、何もお構いできませんけどお入りください」
「はい、お邪魔します!」
なんせ元気と愛嬌だけが取り柄の俺なので、落ち着かない信さんを尻目に颯爽とお邪魔することにした。
羽月さん手作りのチーズケーキとコーヒーを頂きながら、リビングの様子を伺う。
「すいません。俺、仕事柄、建物の内装にも興味があって…」
「建築家でいらっしゃるのよね」
「まだまだ新人なんですけど…」
「信彦さんたら由宇くんは若いのに凄い!って電話で話す度に言うものだから、可笑しくって…。他の人の事をこんなに楽しそうに話す信彦さんを今まで見た事がないから、本当に由宇さんが好きなんだ~って、微笑ましくて」
「羽月さん、何も由宇くんの前でバラすことないでしょう…」
「だって嬉しいんだもん。信くんが幸せを見つけたって思うと…ありがとね、由宇さん」
「…」
良い人だとは聞いていたけれど、羽月さんがこんなにいいひとじゃ、逆に俺が僻んでしまうじゃないか。
信さんはなんでこんないいひとを本気で好きにならなかったんだろう。
理由は言うまでも無いけれど…同性しか愛せないって自分が思うよりは罪深いものかもしれない。
「あ、駿くんは?」
「駿は多美ばあちゃまとスイミング教室よ。もう帰ってくる頃だわ」
「そう…か」
「駿と会うのも久しぶりでしょ?」
「ついに忘れられてるかもしれないね」
「大丈夫よ、いつも言い聞かせているから」
「気を使わせてごめんね」
信さんと羽月さんの関係って、間近で見るとなんだか…姉弟みたいだ。お互いを気遣い、相手の幸せを我が事のように喜べる。
だけど…やっぱり違和感を感じてしまうのは、俺が素直に認めたくないからなのかもしれない。
しばらくして駿くんが姿を見せた。
忘れ去られているかと心配していた信さんに一目散に「わあ、パパだあ!」と、駆け寄ってくる姿も愛らしく、信さんも駿くんを軽々と抱き上げ、「駿くん、大きくなったね」と、嬉しそうだった。
どこから見ても親子にしか見えないのに…と、信さんの恋人の立場で言うのも変だけど、不思議だと思う。
信さんが久しぶりに母親に顔を見せてくると言うので、俺は「近くの喫茶店で待ってるからゆっくり話しておいでよ」と、手を振った。
「じゃあ、うちの病院の喫茶室で待っててもらいましょうよ」と、羽月さんの提案で隣の病院に行くことになった。
信さんは駿くんと一緒に母親の居る隣の家へ、俺は羽月さんに案内されて、病院の喫茶室へ向かう。
「こちらの方が近道なのよ。夜間、患者さんから急に呼び出されることも多いから」と、羽月さんは正門とは逆の裏道の門をにこやかに案内する。
「あ!思い出した!」と、俺は思わず声を出す。
「え?なに?」
「羽月さんの声、どっかで聞いたことがあるなあと思っていたんです。そうだ、昔、親父が持ってたビデオで見たアニメ「めぞんなんたら」のヒロインの管理人さんに声と恰好がクリソツ…あ、気ぃ悪くしました?」
「いいえ、そんな昔のアニメ、よく覚えているなあって思って」
「いや、親父がこの声優さんが好きらしくて『ナウシカ』やら『小公女』のアニメ等、何回も見せられて…」
「ふふ…以前、初めて会った時に同じことを言う人が居たの。…兄なんだけど。私が高校になったばかりの頃に母が再婚して、この病院に越してきたんだけど、その時に初めて兄に会って、いきなり『お前、ナウシカみたいだな』って言われて、びっくりしたのよ。その後も、その声優さんの役名で私を呼ぶの。性格悪いでしょ?」
「…その義理のお兄さんが、駿くんの本当の父親…ですよね」
「…」
「信さんに聞いたからじゃない。信さんはそう言うことは一切話さない人だ。さっきリビングの棚に置かれてた家族写真のお兄さんの姿を見た時、直感で感じたんです」
「そう…うん、その通り。びっくりでしょ?…私の所為でずっと信彦さんに迷惑をかけているの」
「信さんは羽月さんの力になりたかったんだから、羽月さんだけの所為じゃない。でしょ?」
「…私と兄の責任には間違いないわ。ついこの間…ね…信彦さんから離婚しようかって言われたの。いつかはしなきゃならない話だし、わかっているんだけど…。なんだか怖いのよ。男女の関係じゃなくても、信くんは私の心の支えとなっている人だもの」
「…」
「でも、なんだか吹っ切れる気がする。由宇くんに会ってしまったからかな。信くんのあんな幸せそうな顔、ほんとに初めて見たのよ。…もう信くんを自由にしてあげなきゃね。…由宇さん、信くんの事、よろしくお願いします」
この人は、浅野さんが信さんに言った事と同じ事を言う。
でも浅野さんとこの人の立場は全く異なるものだ。
俺は羽月さんに答えられなかった。
「任せてください」なんて言えるわけがない。
俺が信さんに今以上の幸せな家庭を与えられる保障など、どこにも無いからだ。
羽月さんが案内してくれた喫茶室は、運悪く空いた席が無かった。
「休日はお見舞いの方が多いから、混んじゃうのね。どうしましょう。近くに喫茶店もないし…」
「大丈夫ですよ。適当に時間つぶしますから」
「じゃあ、屋上はどうかしら。景色が良いって評判なのよ。冬だから寒いかな…」
「今日は晴れていて風も無いから大丈夫です。行ってみます」
「じゃあ、信くんに伝えておくわ」
「よろしくお願いします」
羽月さんと別れて、病院のエレベーターに乗り最上階へ向かう。
小高い丘に建てられた十二階建ての屋上から見る景色は、思った以上に爽快だった
「富士山あっちかな~」
独り言を言いながら、あちこち歩いてみると白衣を来た男性が片隅のベンチに座って煙草を喫って居た。
少し近寄ってそっと顔を覗き見ると…あ…さっきの写真で見た…羽月さんの義理の兄…駿くんの実の父親…つまりはすべての元凶の親玉…だった。
触らぬ神に祟りなし…
俺は踵を返しその親玉から離れようとした。
「おい、おまえ、ちょっと待て」
低い不機嫌な声が俺を呼び止めた。
「逃げる事はなかろうよ」
「べ、別に逃げてはないです」
「おまえ、信彦の男だろ?」
「え?」
「羽月から写メを見せられた。それにさっきから、信彦が来てるから会いに来いって、催促のメールが五月蠅い」
「…」
もしかしたら、この人がここに居ることをわかって、俺を屋上に?
だとすると、羽月さんも案外、悪党なのかもしれない。
だけど俺もただのいいひとでいるつもりは全くない。
俺は姿勢を正し、その親玉に向き直り、頭を下げた。
「初めまして。上杉由宇と申します。只今、三門信彦さんと真剣に付き合っております」
「…気持ち悪っ!」
「は?」
「俺がこの世の中で一等嫌いなものは、泣き騒ぐガキと気色悪いホモ共だっ!」
…
え~と…
うん、こういう人、居るよね。
でも、医者のあんたが言うセリフかよ。
俺を見るその視線も、いわゆる一般の常識人と言われる者たちが俺達を蔑む目線と同じだ。
言わずもがな、結城誠人との初対面の印象はお互いに最悪なものだった。
「超いいひと」はこちらから… 15 /17へ
浅野と吉良のお話はこちらから…
傷心
うそつきの罪状 1
ゲイじゃない鬼畜男もたまにはいいけど…これ以上、ホモ的な事は起こらないからなあ~( -ω-)y─┛~~~
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● COMMENT ●
誠人(まさと)さんは、最初から羽月さんの義兄って考えていたのですが、由宇視点の話なので、ここまで隠していたんですね。
誠人さんはどうなんでしょう…。たぶん…いいひと…かも…しれない。
この話、悪い人いないのでww
でもなんつうか…ホントに同棲愛が気持ち悪いって人、案外多い気がするんですよ。
それが普通なのかもしれない…って思いながらも、私は自分が想像する話や二次元のキャラで、男と女で考えることができなくなってますねえ~…マジで病気です( `^ω^)=3
お盆ですが、うちも墓参りはするのですが、なにしろドドド田舎なもので、駐車場とか洒落たものがある霊園でもなく、お寺の横にズラズラ~っとあるだけなのです。
いつもは誰もいない霊園ですが、(納骨堂もふたつもあるww)お盆になると提灯などが沢山飾られ、それなりに人が一杯になりますねえ~
昔はそこで花火なんかもあってたけど、今はどうかな~
こちらでは精霊流しと言って、この霊園の真ん中に大きな船(村の初盆のところは一緒)を飾って、踊ったりして、その後で皆で川に送りだしたりしてたんですが、今は川が汚れるからと無くなってしまい、なんとも味気ないですね。
誠人さんはどうなんでしょう…。たぶん…いいひと…かも…しれない。
この話、悪い人いないのでww
でもなんつうか…ホントに同棲愛が気持ち悪いって人、案外多い気がするんですよ。
それが普通なのかもしれない…って思いながらも、私は自分が想像する話や二次元のキャラで、男と女で考えることができなくなってますねえ~…マジで病気です( `^ω^)=3
お盆ですが、うちも墓参りはするのですが、なにしろドドド田舎なもので、駐車場とか洒落たものがある霊園でもなく、お寺の横にズラズラ~っとあるだけなのです。
いつもは誰もいない霊園ですが、(納骨堂もふたつもあるww)お盆になると提灯などが沢山飾られ、それなりに人が一杯になりますねえ~
昔はそこで花火なんかもあってたけど、今はどうかな~
こちらでは精霊流しと言って、この霊園の真ん中に大きな船(村の初盆のところは一緒)を飾って、踊ったりして、その後で皆で川に送りだしたりしてたんですが、今は川が汚れるからと無くなってしまい、なんとも味気ないですね。
そして 羽月さんも 色々あるけど「まぁ いい人」と、いい人づくめだなぁ
と、思った他所に
゚+。゚☆デタ──*・゚・( ゚∀゚ )・゚・*──悪そうな人!!☆゚。+゚
皆 「いい人」の中で 結城誠人は、どんな役割をしてくれるのでしょうね!?
楽しみ~楽しみ~♪(@´゚艸`)ウフウフ
ずっと37℃近くの暑さが続いていたのも 今日は 少し ましに!
いつも とっくに済ませている お墓参りが あまりの暑さで まだ出来てません。
霊園って 陽射しを遮るものが無いし お盆休暇期間中は 霊園の駐車場も満杯で 数時間待ちですからねー
母は気になっているようですが、暑さの中では 体調も心配ですし・・・
後ちょっとすれば 少しは涼しくなるでしょうから 時期をずらして行く事になるでしょうね。
御先祖様、ごめんね~(人'ω`*)南無阿弥陀仏...byebye☆