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2019-09

Silent Night・Holly Night 1 - 2015.12.30 Wed

1
イラストはサムネイルでアップしております。
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    竜之介-1

Silent Night・Holly Night

1、

 おれがサンフランシスコ国際空港に降り立ったのは、クリスマスイヴの夕刻、世界中のサンタクロースが慌ただしくプレゼントを運んでいた頃合いだったかもしれない。
 ざわめくターミナルの到着ロビーの人込みに、憧れの人の手を振る姿を見つけ、大慌てでその人に走り寄った。

「お~、久しぶり、竜之介!会いたかったぜ。元気そうで何よりだ」
「り、凛一さん…」
 お、おれに会いたかっただなんて…。お世辞でも嬉しすぎて心臓止まりそうだよ。

「じゃ、行くか」
 スーツケースを受け取ると凛一さんは、何のためらいもなくおれの腕をグイと掴み、そのまま左手をギュッと握りしめ、駐車場へと歩き出した。
「俺の手を離すんじゃないよ。おのぼりさんは悪党に狙われやすい。着いて早々さらわれでもしたら宗二朗さんに面目経たねえ」
「え?さらわれって…。ここってそんなに危ないとこ?」
「ふふ、嘘だよ」
「…」
「お坊ちゃんはかわいいねえ~」
 相変わらず子供扱いをする凛一さんには少しムカつくけれど、しっかりと繋いでくれる手が温かかったから勘弁してやる。
どちみち、凛一さんに勝てない事はわかっている。
 だって…すげえ好きなんだもの。


「コンドミニアムはユニオンスクエアの近くだけど、夕食はどうする?どっかのレストラン?それとも俺の適当な手作り料理で済ませる?」
「そ、そりゃもう…ぜひ凛一さんの手料理でお願いします」
 車は中心街に向って高速を北へ走る。
 陽は落ちて薔薇色の空が宵色に変わろうとする狭間。
 見たこともない初めての景色に見惚れてもいいはずなのに、そんな余裕はない。
 だってさ…おれの隣にはあの「宿禰凛一」が居る。
 ハンドルを握る凛一さんの助手席に自分がいるなんて、いまだに信じられない気分…。
 迎えにくるっていうメールもここに着いて知らされたから、心の準備も出来ないまま、今に至っている。
 夢幻かなんて思いつつ、ついつい凛一さんの横顔ばかりを見てしまう。
 美術品から出てきたような精巧な作り物のような横顔。だけどいつ何時でも彼からは命の輝きを見いだせる。
 身体中からキラキラと生命力が満ち溢れ、彼の傍に居るだけでそのオーラをおすそ分けしてもらったみたいに元気になれるんだ。
 「宿禰凛一」は、おれにとって特別な存在だ。

「凛一さんはいつも料理は自分で作るの?」
「いつもは仕事で無理。気が向いた時だけ。だからあんまり期待しないでよ。俺より慧一の方が料理は得意なんだけど、あいにく兄貴は仕事で明日以降にしか来られない」
「そう…」
「つうか、今晩は俺と竜之介のふたりだけなんだけど。青春人生相談ならいくらでもどうぞ」
「え?ふ、ふたりだけ…なの?」
「なに?気に入らない?」
「いえ…凛一さんとふたりきりで…嬉しい…かな~」
「じゃあ、俺と寝てみる?」
「え…えええ?」
「冗句だよ。嶌谷の跡取りに悪い遊び教えたら、親父はともかく、おまえの母上、お祖母様方に申し訳が立ちません」
「別に関係ないよ…。第一嶌谷の後を継ぐなんて、おれ、決めてないし」
「そりゃそうだ。十六の竜之介に決まった未来なんかありはしない」
 そう言って、凛一さんはおれの方を向き、意味深なウインクをくれた。
 う~ん、凛一さんとなら、童貞捨てても構わないんだけどね。
 
 2021年のクリスマスイブ、高校一年生の嶌谷竜之介(とうやりゅうのすけ)は、初めての海外旅行一人旅。
 目的のサンフランシスコで、大好きな宿禰凛一さんと一夜を明かすことになったわけです。

     ※
 
 おれの親父、嶌谷宗二朗は、日本でも指折りのゼネコンのCEOで幾つもの系列会社の筆頭株主で、なんかすげえ人…らしい。
 親父自体、家に居る事が稀で、親子の慣れあいは少ないから、互いの存在を疑心暗鬼ってとこ?
 まあ、親父の多忙さは理解できるよ。だって、一年中、国内外の関連会社に行き来しながら、新規事業へのモチベも半端なく、生まれついても仕事人って感じだもの。
 でも家庭も家族もあまり省みない親父が年に一度だけ、必ず家族と過ごす日がある。
 
 親父の誕生日、十二月二十六日は、前日のクリスマスも兼ねて、夜を明かしての自宅でのパーティを催す。
 人の迷惑そっちのけの身内だけの祝宴…。
 まあ、一年に一度だけだから、皆何も言わないけれどさ。

 嶌谷家の親類は数多く、大邸宅での新年会やらの年中行事に費やされることも少なくないけれど、父はこのパーティだけは家族水入らずの食卓を囲みたいらしく、母や祖母たちが作った心のこもった料理を味わいながら、各自の催し物を出しあい(かくし芸みたいなもんも含む)一晩中家族と語り明かすのが常だった。

 父は本家筋ではない。
 父の母、つまり俺の祖母は嶌谷家の長女だが、跡取りは長男の兄、晟太郎と由ノの息子の誠一郎伯父だった。本来ならこの伯父が嶌谷家を継ぐのが筋だったけれど、事情があり父の宗二朗が嶌谷家の養子に迎えられ、嶌谷家当主になった。
 だから,おれの家族は両親とふたつ上の姉、詮子(あきこ)、父の実母の澪子(りょうこ)、祖母の兄、晟太郎おじいちゃんと由ノおばあちゃんの七人だ。
 
 内輪のパーティには、親父の従妹の八千代叔母さん一家がたまに交ったりはする。八千代おばちゃんは陽気で優しいし、長男の聡良さんもチェロを弾いてるとかっこいい…とかは思うけどさ、ときめいたりした事は一度も無い。
 大体さあ…
 誠一郎伯父さんがゲイってばれて、嶌谷家を捨てたっていう本末転倒な噂話が本当かどうかは知らないけれど、責任逃れのような気がして、おれは相当に気に入らない。それでいて、たまにうちに来て、未だにうちの家族たちにちやほやされているのも勘に触る。
 一番気に入らないのは、親父が伯父さんと居る時、滅多に見ないくらいの優しい顔をする事だ。
 こういうの、嫉妬って言うのかしら。
 
 凛一さんと初めて出会ったのは、小六のクリスマスの自宅でのパーティの時。
 誠一郎伯父さんが凛一さんを連れて来たんだ。
 おれは誠一郎伯父が苦手だったから、連れてきた男もきっとあやしい人だと決め込んでいたけれど、ひと目凛一さんを見た時、なんだか彼のオーラに吸い寄せられたって言うか…
「メリークリスマス、竜之介君」って、少し屈みながら微笑み、おれと握手してくれた瞬間、生まれて初めてのすごいトキメキを感じてしまったんだ。
 こいつは男だぞ!男なんだぞ!好きになったりしちゃダメな奴だぞ!と、自分に言い聞かせたりしたけれどさ、惹きこまれるっていうのは自分の理性がいとも簡単にぶち壊されるってことなんだよなあ~…。
 それまで、同性愛なんて全然認めるはずもなく、とても汚いものだと感じていたはずなんだけどさ、現実ってのはまさに思い通りにはいかないって初めて知ったよ。

 別段、その夜もその後も凛一さんとの仲が急速に深まったりすることも無かったんだけど、あのクリスマスの夜、一晩中、凛一さんと一緒に居られた幸せっていうの?ふわふわした気持ちがずっと今でも忘れられなくて、片思い中って事。
 まあ、正直両想いになりたいっては思わない。
 凛一さんは大人の男性だし、彼がおれに本気になる確率なんてゼロに近い…つうか、ゼロだし。
 だから、俺は凛一さんのコアなファンでいいんだ。
 と、言ってもやっぱりふたりきりの聖夜なんてさ、どんな贅沢なクリスマスプレゼントよりも最高ってのは間違いないわけだよ。
 
 着いた先のコンドミニアムってのも、日本のマンションとかとは比較にならない広さで、ゲストルームも多く、西海岸での仕事の時は、凛一さんもこの部屋に泊まったり、親父の会社の人もホテル代わりに使うらしいんだ。
 バルコニーから坂を下りた先の海の景色を眺めていると、本当に海外に来たんだ~って、不思議に思うけれど、キッチンに立つ凛一さんの姿が一番不可思議な気がして、思わず笑いたくなった。

 夕食はおれが思うよりも豪華なメニューで、蟹のオーブン焼き、焼きたてのスコーンとクラムチャウダーにカニみそのパスタと海鮮サラダ…。え?これふたり前?多くね?と、思ったけれど、ワインを傾けつつゆっくりとディナーを楽しみつつ味わうものだから、いくらでも食べられた。
 食後のコーヒーをクッションの良いソファに向かいつつ凭れる。
 いつのまにかおれの学校生活の話から、恋の話になったり。
 凛一さんは楽しそうにおれの話を聞きながら、自分の青春の体験も交えたりしてさ。

「初めて会った時、竜之介は忍者になる為修行している、みたいな事言ってたな」
「そうだっけ?」
 そういやその頃流行ったアニメに影響されていたなあ。
「次に会った時は、ヴァイオリンを必死で弾いてたけど、褒められたものじゃなかった」
「はは…」
 凛一さんが初めてうちの家に来た時、凛一さんはピアノを弾き、姉のヴァイオリンとの二重奏で「アベマリア」を披露してくれた。
 それが何とも悔しくて、おれも次は凛一さんと一緒に奏でたくて、ヴァイオリンを習い始めたんだけど…結局中途半端で終わった。

「今はなんに興味あるんだ?」
「今は…絵、絵画かな」
「へえ~、竜之介が描くの?」
「いや、おれ、近頃気に入った画家が居るんだ」
「へえ~、なんていう人?」
「…」
 
 言おうか言わずにいようか迷っていたことがある。
 でもたぶんきっと…おれは凛一さんに告白する。
 彼の大事な人との話を…。

 少しの間を置いておれは、「水川青弥(みながわせいや)」の名前を出した。
 凛一さんは、水川さんの名前を聞くと少し驚いた顔をし、そして見惚れるぐらいの柔らかい嬉しそうな顔で「その理由を聞いていいかい?」と、俺に微笑んだ。



2へ

☆クリスマスに間に合わせたかったんですが、思うように書けませんでした。
 多分、四話ぐらいで終わる予定です。
 竜之介の親父たちの話は「破壊者のススメ」
 凛一の話は「greenhouse」
 それぞれのカテゴリから、どうぞ~

 今年もお世話になりました。
 来年もよろしくお願いいたします~

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● COMMENT ●

サイアートさま、こんにちは。
お店のママ?の蝶丸です(笑)
4話くらいで終わっちゃうんですか。
あ~残念。
りんが出てくるのなら、またミナも出てくるのなら、もっと読みたいって人多いと思いますよ。
でも、もっと読みたい~くらいがちょうどよいのでしょうかね。
一番は書き手が気持ちよく書いてもらえるのが、いいですね。

今日はうちのお店に何度か来て頂いた方がされている、お店の方に飲みに行ってきました。
色々お付き合いしないと・・・
でも、違う世界で楽しかったです。


蝶丸さん
こんにちは~
お返事遅くなってすみませんでした。

実は上の子がスノボで右手を骨折しましてwww
手術して入院…までは良かったんですけど、その後しばらく服もひとりで着れない状態なのに、仕事には行かなきゃならないし、飯も満足に食えない感じだったので、だ埼玉まで世話に行ってたんですよ。
昨日帰宅してきました~。超疲れた~
まあ、少しずつでも順調に治ってきたので、不自由ですけど後はなんとかやるでしょう。
私も滅多に独りで遠出をしないので、すっごく新鮮な気持ちになりました。
上も下も東京に居るので、今回も(実は初めて兄弟でスノボに行ってこの怪我www)下の子が傍にいてくれて本当に親としても心強かったですね~。
越谷のレイクタウンにも三人で行きまして…めちゃくちゃデカかったんで、ビックリ~。まあ、中身はこちらと一緒なんですけど、規模が違ってましたね。
買い物も出来て、私も楽しみましたけど、今日はどっと疲れが…

しばらく書き物も休みですかね…
はあ~疲れた~

スノボで骨折って、大変でしたね。
遠いと何かと心配ですよね。
でも兄弟が身近に居てくれて助かりましたね。
親としては2人とも遠いってのは悲しいですけど・・・
うちの息子もスノボ大好きなので、他人事ではないです。

越谷にはネットで知り合った友達が住んでいるんです。
東京に行った時に、2度会ったことがあるんです。
越谷には行ったことないんですけど。

息子達と買い物って、考えただけでも疲れてしまいそう~

ゆっくり疲れを癒して、また更新してください。
楽しみにしていま~す。

今日は節分でした。もう日付変わっちゃったけど。
節分まで運気が悪かったので、やっと厄明けで嬉しいです。

スノボも初めてじゃなくて、道具一式持ってまして、毎年滑ってたんですけどねえ。
雪質も硬かった所為か、手をついた時にやっちゃったみたいですね。
救急車にも初めて乗って、恥ずかしいのなんのって…って、兄弟で言ってました。
そうなんです。息子ふたりとも遠くに行ってしまうと、寂しいもんですよ~
でも、やっと独り立ちできたんだなあ~と、感慨深いものもあり…
まあ、こういう非常事態の時に、すぐに駆けつけられないのが難点ですけど。

越谷…田舎でした~( ´艸`)
いや、田舎もいいもんです。
こちらと違って夜中がめちゃくちゃ静か、車の音も聞こえないというね…。
治安のいいとこでした。

はい、なんとか妄想力を高めて、更新頑張ります。
でもなあ~スマホアプリゲームが忙しくて…
い、チェインクロニクルに嵌ってます。


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