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2019-09

Silent Night・Holly Night 3 - 2016.02.12 Fri

3
イラストはサムネイルでアップしております。
大きく見たい方は、イラストをクリックしてくださいね。
 

竜之介自転車

3、
 席に戻ったおれに、水川さんは「まだ時間は大丈夫かい?」と、おれに気を使うので、期末テストが終わったから後は冬休みを待つだけだと答えた。

「冬休みにはアメリカに行くんです。家族が集まってサンフランシスコ?…なんか親父が勝手に決めちゃって、そこでクリスマスを過ごす予定なんだけど、久しぶりに凛一さんにも会えるから、今から楽しみなんです」
「そう…うらやましいな」
「そうかな?これでも親父の我儘に振り回されるのも大変なんですよ」
「そうじゃなくてさ…」
 言い淀んで目の前のコップの水を飲む水川さんに、おれはてんで場違いな返事をした事に気がつく。
 水川さんはおれの家族の事じゃなくて、凛一さんと会えるおれをうらやましいと言ったのだ。そんな事にも気づかないおれも、親父に違わず能天気だと言わざると得ないと自虐するけどね。

「竜之介君は、宿禰凛一を…好きかい?」
 新しく頼んだグレープフルーツジュースの氷をストローで突きながら、水川さんはおれの方を見ずに真剣な声で言うから、おれも早々に嘘はつけなくなってしまう。
「…好き…って言うか…なんなんでしょうね。人間って見かけや性格で相手を好きかどうかって判断するんだろうけど…凛一さんはなんか違うんだよなあ。憧れやあんな風にかっこよく生きてみたい…的なものもあるけど。たぶん…凛一さんという人間に魅了されているんだと思います」
「…高校の時もそうだったな。あいつは上級生も下級生も、先生たちからも注目されていた。そこら辺のアイドル以上に人気者だったよ。羨望の眼差しで眺める者は勿論、妬む者もいたけれど、それでも結局はリンに魅了されてしまうんだ」
 学園のアイドル、宿禰凛一か…。
 これ程安易に目に浮かぶ情景もないだろう。

「たまにね、…十年以上経ってもさ、どうしてリンがおれを選んだのか、考え込んでしまうんだ。こんな平凡なおれのどこが気に入ったんだか…さっぱりだ」
「そ、れって凛一さんが水川さんに告白した…って事ですか?」
「信じられないだろうけど…ねえ。当時、おれは本当に頭でっかちのガリ勉野郎でつまらない男だったし、男子校だったけれど、男と付き合うなんて考えは持ち合わせていなかったから、正直困惑してね。リンに言い寄られても、うっとうしいって何度も断ったんだ」
「そう…なんですか」
 なんて羨ましい話だ。
 あの凛一さんから一方的にアプローチされるだなんて…。
 かなり羨ましいけれど、ノーマルな人だったら当然の反応かも。

「でも、リンの魅力には抗えなかったよ。と、言うより、おれも最初からリンに惹かれていたひとりだった。だけどリンがおれなんかを本気で相手にするわけないって思ってて…。すべてに自信が無かった。リンはそんなおれに自信をくれた。それから色んな輝ける未来がある事を教えてくれた。おれが絵描きになったのだって、彼が示してくれた道だ。彼を描きたいと思ったし、絵を描くことの楽しさや意義を知り得た。リンが居なかったら…今のおれは無かっただろうね。だから、別れてしまってもおれの中からリンを消すことはできないんだ」
「別れた…んですか?何時?」
「高校を卒業する時だよ。リンがおれをふったんだ。勝手だろ?あれだけシツコクおれを追い回しておいて、おれを夢中にさせておいて、いきなりアメリカに行くから別れようって…。その時は納得できなくて彼を憎んだりもしたけれど、随分経っておれも大人になって、やっとリンの選択を理解したよ。彼も彼なりに悩んだ末の選択だったしね。結果的には俺も画家を目指して生きる気概?っての?そういうものが生まれたんだから、結果オーライってとこだけど」
「でも…本当は別れなくなかったんでしょ?無理矢理自分を納得させてるだけじゃないんですか?水川さん、今でも未練タラタラですよね。あの絵を見てたらわかります。おれだったら絶対諦めないけどな。だって本気で愛し合っていたんでしょ?」
「竜之介くん、恋愛はひとりでするものじゃないんだ。相手の気持ちやその時の状況とかさ。大人になると自分の事だけじゃなく、家族や仕事や周りの沢山の人達との関係を無視しては動けなくなる。時には恋愛よりも大事にしたいと思うものもあるんだ。それを選んだあいつを責める権利がおれにあるのか…多分無いんだろうね。リンの一番になれなかった…それが事実だ」
「そんなの…」
 間違っている…とはおれが言うべき立場じゃないってわかっているけれど…。

「あの絵、『GLORIA』はね、おれの想いなんだ。今でもずっと輝き続けているあいつへの想いだ。誰の為でもない。自分の為の絵だよ。でもね、それはおれの想いであって、リンには関係ないひとりよがりの気持ち。要するに片思いって奴。それでも…それでもねえ、おれにとって、それは生きる力になる。だから、リンには感謝しているんだ」
「…」
 それって不毛過ぎやしませんか?と口に出そうと思ったけれど、目の前の水川さんの表情はすっきりと晴れやかに見えたから、何も言えなかった。


「時間を取らせて悪かったね、竜之介君。君と話が出来て楽しかったよ。楽しいクリスマスを。リンにもよろしく」
「あの、何か…言伝でも…凛一さんに…」
 用事があればメールでも電話でも出来る話なんだけど、この人の為に何か役に立ちたくて、伝票を手に取り、先に立ち上がる水川さんに声を掛けた。

「そうだな…。こっち(日本)に居る時くらいは、一度くらいは顔を見せてくれないかって…そう伝えて。あいつ、おれに個展を勧めるクセに、自分では絶対観に来ないんだ。『GLORIA』を観るのが嫌なんだそうだ」
「…わかりました。伝えておきます。じゃあ、今日はありがとうございました。また水川さんの絵を観に来ます」
「ありがとう」

 水川さんはおれを美術館の玄関まで見送り、坂を下りるおれにずっと手を振ってくれた。
 おれはと言うと…
 一刻も早く凛一さんに会いたくてたまらなかった。
 水川さんに会った事や、恋愛の話、なにより、あの『GLORIA』の絵を凛一さんが見たくない理由を本人に問いただしたい。


       ※

「で、竜之介はミナのファンになったわけだ。あいつもちゃっかりしてるな」
 ワインを傾けながらおれの話を耳触りの良いBGMを聴くみたいに優雅に落ち着いた態度であしらう凛一さんに、ちょっぴりムカつく。

「あの、さ…水川さんの話って本当なの?」
「何が?」
「凛一さんが水川さんにしつこく迫ったって話」
「ホントだよ。あの頃のおれは気に入ったターゲットは絶対モノにする体質(たち)だったからね。でもミナに関しては…そうだな。驚くほど慎重だったよ。嫌われないようにゆっくりとさ。ミナは恋に臆病だったからね。だから交際のOKを貰った時はマジで有頂天に嬉しかった。なんかさ…こうして話してるだけで、あの頃の青春のトキメキって奴が、胸の奥から零れ落ちてしまうなあ…」
 そうやって嬉しそうに天上を煽ぐ凛一さんの表情は、凛一さんとの恋話をおれに話していた水川さんと同じだった。
 なんだ…凛一さんだって、今も水川さんに恋しているんじゃないか。
 じゃあ、なんでさ…

「凛一さんと水川さんは今でも両想いなんでしょ?」
「そうだよ」
 当然だよ、と言う風にあっけらかんと凛一さんは答える。
「は、離れ離れで寂しくない?ずっと会ってはいないんでしょ?」
「寂しいから良いんだ。会えない寂しさを募らせて、忘れられない感情を膨らませるとさ、たまに会う時、たまらない気持ちになる。俺にはおまえしかない!って勘違いに陥る。溺れる感情に身を任せる心地良さときたらさ…。わるい、高校生の竜之介には道徳的に問題ありだな」
「おれ、凛一さんが思うほどガキじゃないんだけどな」
「そうだな…。ガキじゃない。でも大人でもない。だから良いんだ」
「…」
「良い恋をしな、竜之介。それは人生を支える糧になる…」
 
 見惚れる程の笑顔を見せ、凛一さんはおれの腕を取って優しく抱きしめた。
 おれの胸は高鳴るけれど、この抱擁は愛でも恋でもなくてさ、慈愛にも似た家族愛ってわかってるからさ。
 まあ、今はそれで充分なんだけどさ。

「凛一さん、ひとつだけ聞いていい?」
「聞かなくても答えてやるよ。…本当に好きだったよ。でも、もう戻れない。だから、あの絵は今の俺じゃない。ミナが描くのはあの時の俺でしかない。それだけなんだ…。だから、あんなに美しいんだよ、きっと…」

 おれの背を抱く凛一さんの両手は温かく、おれは知らぬ間に泣いていた。
 うれしいのとさびしいのが、入り混じった感情。

 そう、いつだって涙が出るのはそんな時だったと、流した後に気づくんだ。


  凛肖像画3


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 竜之介の親父たちの話は「破壊者のススメ」
 凛一の話は「greenhouse」で、お楽しみくださいませ。
 左のカテゴリからどうぞ。

遅くなってしまい申し訳ございませんでした。
休み癖がつくといけませんなあ~
今期アニメの一押しは「昭和元禄落語心中」ですね。
落語はネタを知って、動画で見ると面白さが増します。
楽しみがひとつ増えました。



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● COMMENT ●

サイアート様、私にとっては リンに逢えて 素敵なヴァレンタインのプレゼントになりました。

ヴァレンタインと言えば・・・
チョコをプレゼントするのが、身内だけになって 十数年になります。
まぁ 社会人の時のように 義理チョコなんて買わないから 無駄な出費がなくなって いいですけどね♪

しかし 今日 衝撃的なことがぁ~~~!!
ダンナにあげたチョコが、半額になってました。
昨日の今日で 半額とは・・・いくら 違う店で買ったにしても これには ズ―――(-ω-ll)―――ンですわ(苦笑)

来年からは 一日遅れにしようかしら。。。ヽ( ̄▽ ̄)ノ ナハハ♪...byebye☆ 

けいったんさん>
翌日に半額ですか…ちょっとショックですよね。
うちも四、五年前まではちゃんとダーにも息子たちにもあげてたけど、近頃はそういうのもないなあ~
ロイズのチョコを私が食べたいから買ってくる…みたいな感じです。
まあ、私は恋愛もしてないので、好きな男にチョコあげる…的なものは一度もないですね。
全く興味なかったのでww
義理チョコはあげてましたけどね。
今でもですが…現実の世の男性にトキメク…というような事がないので、今話題の不倫とかをする奴らの気持ちがさっぱりわかりません。
芸能人も政治家も、ばれたら終わり…という想像ができないバカなのか?…と、思うんですよね。
公人であるなら、もう少し世間体を考えろ…と。

しかし、妄想のこういうBL話ではなんでもありなんですけどね~
次回はリンのひとりごと…的な展開で、このお話も終わりです。
もう少しだけお待ちくださいね!


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