FC2ブログ
topimage

2019-09

Silent Night・Holly Night 4 - 2016.02.23 Tue

4
イラストはサムネイルでアップしております。
大きく見たい方は、イラストをクリックしてくださいね。
 

  凛一2016

4、

 俺にとってクリスマスは、昔からいわくつきのイベントだったりする。
 亡くなる前の母と過ごした最期のパーティや、梓と慧一と三人だけのイブの夜、誰もいないひとりぼっちの聖夜もあったなあ~。
 楽しかったり、嬉しかったり、寂しかったり…ねえ…。
 でも、ミナと出会い、そして別れてからは尚一層、想いが複雑化してしまってさ。
 この時期は、どうにも心が締めつけられる時間が多くなる。

 宗二朗さんから、クリスマスを家族と一緒に過ごそうって誘われた時は、正直メンドクサイ気分だった。
 嶌谷家の人たちは皆とてもいいひとだし、俺も大好きなんけど、今年のクリスマスは久しぶりに独りきりで過ごそうと思っていたんだ。それなのにさ、宗二朗の奴ときたら、有無も言わさず、「サンフランシスコでパーティやるから、来いっ!」とのご下知。俺はあんたの部下じゃねえし。
 だけど、まあ…誘ってもらえるだけ、有難いのかもなあ。
 仕事も新年まで休暇中で、別段計画もない俺には断る理由も見当たらないし、嶌谷さんも俺に会いたいって連絡くれたりもしたものだから、俺も「超楽しみ~」なんて、調子づいて答えてしまった。

 結局、宗二朗さんの長男の竜之介の世話まで買って出る事になる始末。
 面倒見の良い大人なんて、かっこわりいだけだと思っていた少年時代が懐かしい。
 誰かの役に立ちたい…なんて、世間体を気にするだけの狡い奴のやる事だなんて、決めつけてた頃もあったけれどね。


 嶌谷竜之介は、親父と違って素直で可愛い。
 高校一年生なのだが、高一ですでに相当にヤサぐれていた俺とはえらい違いだと、心から敬服する。
 俺の事を好いてくれてるようで、子犬がご主人に甘えるみたいな瞳で俺を見つめるから、ついかまってやりたくなる。
 そんな竜之介からミナの名前を聞かされた時は、本当に驚いたんだ。
 目の前の竜之介に悟られるのも癪だから、懸命に平静を装ったんだけどさ。

 「水川青弥」は、未だに俺にとって、サンクチュアリだった。

 ミナがいっぱしの画家として成功している事は、勿論知っているけれどね。
 まさか竜之介がミナと関わる機会があるなんて、予想も出来なかった。
 確かに宗二朗がミナの絵を買ったり、その絵が自宅に飾られていたりもするから、目に付いたり、気になったりはしていたんだろう。
 ミナの個展で、俺をモデルにした絵を見て、驚いた竜之介がそこに居合わせたミナと語り合ったそうなんだが…

 想像するに…
 ロクな話しかしてないだろう…。
 大体において、ミナは喋りベタだし、俺との思い出も結局は痛みが残るだけだし…。

 「『GLORIA』はおれの想いなんだ。リンに感謝している」と、ミナは語ったと言う。
 感謝なんて望んじゃいない。感謝されるぐらいなら、憎まれた方がマシだ。
 それでも…今でもミナがあの絵「GLORIA」を描き続けていると聞き、あいつの想いが切れずにいる事に、胸が締めつけられてしまうんだ。

 生涯ただ一度の「真実の恋」だった。
 青春の思い出だと割り切るには、あまりに純粋で深い恋慕だった。

 ミナと別れたことを悔やむ気持ちが無いとは言えないけれど、でも、あのままミナと恋物語を続けていたら、俺は自分の納得する人生や充実した建築家への道を歩く事は無かっただろう。

 俺は孤独な人間だけど、だからこそ、自分を支える人を必要とする者だ。
 すべてを捧げ、導いてくれる慧一が傍に居てこそ、今の俺がいるのだ。
 あれもこれもと欲張る俺が選んだただ一つの選択は、慧一と共に生きる事だった。
 後悔はしない。

 ただね、一年に一度ぐらいは、ノスタルジーに身を任せても良いじゃないか…なんて、都合の良い解釈であいつを誘ってしまう。
 あいつも俺には弱いから、絶対に断らない…はずなんだけどね。

 ワインで酔った竜之介をゲストルームのベッドに寝かしつけた後、俺はベランダの桟に凭れ、夜空を仰いだ。
 携帯電話の灯りをかざして、零時になるのを待つ。
 零時と共に東京のミナへ電話を掛ける。

 コールが続く。
 七つ目で通話中の文字。
 『…あ、リン?』と、いつものように少し震えた声。
 寒いのか、緊張しているのか、それともトキメキ?だったら、嬉しいかも。

「メリークリスマス、ミナ。ちょうど零時なんで掛けてみた」
『…こっちはもう夕方。すっかり陽も暮れたところだよ』
「そう…忙しい?櫻井さんと一緒に過ごすの?」
『バカ、独りだよ。季史(きし)さんは、仕事で出張中で、おれはひとりで店番』
 ミナには櫻井季史という恋人がいる。
 櫻井さんは美術商と画材店のオーナーで、ミナはそいつと同棲中…なわけ。
 別れて十年以上経ってもさ、自分の事は棚に置いといても、ほどよいジェラシーは沸くものだ。

「へえ~、じゃあ、俺も東京に帰っていれば良かったな。遠慮なく聖夜にミナを誘えたのに」
『さ、そったって、靡くとは思うなよ…』
「靡かないつもり?」
『…ったく。どこに居てもリンはいつだってリンのままなんだよな。どうやっても勝てる気がしない』
 そういって、ふふと笑うミナの声を聞くだけで、俺も自然と口元が緩んでしまい、幸福のメロディが心に流れる気分。

 ああ、そうなんだな。
 ミナをこんなにも愛おしく思う気持ちは、すでに「宿禰凛一」と言う人間を構成する一部分に組み込まれているのだ。
 これを消したり、壊したりする意味など、微塵たりともあるはずもない。

「なあ、ミナ。今、暇なんだろ?折角だからなんか色々話さねえ?どうでもいい話とかさあ」
『おれは仕事中で、どうでもいい話をする暇はないよ』
「クリスマスに画材を買う客なんて来ねえよ。そうだ。個展どうだった?売れ残った絵は、俺が買ってやってもいいぜ」
『心配しなくてもちゃんと売れてる。それより、招待券を送ったのに一度も来てくれないのは気に入らないね』
「おまえの仕事と違って、俺はマジで多忙なんだよ。そうそう、新しく入った研修社員の話をしてやるよ。上杉って奴でちょっと俺好みの男なんだけどさ。こいつったらさ…」
『聞かせてくれなくていい。いくらそんな話しても、おれも三十路だからね。今でもおまえに執着しているからって、いちいち妬かないよ』
「そう?そりゃ、ざんね~ん。ミナのジェラシーは俺にとって、より高みへと舞い上がるおまえへの熱いパッションになる…なんてね」
『…嘘つき。どんな顔でそんな寝言を言っているのか、見てやりたいよ』
「顔見たいの?じゃあ、今度はTV電話にするよ」
『それより、直接会いに来い!』
「本音が出たね、ミナ。素直でよろしい。じゃあ、寂しがり屋のミナに今からクリスマスプレゼントを贈るよ」
『へ?…』
「天から舞い散る雪の代わりに、おまえの魂に俺の声が舞い落ちるんだ。ロマンチックだろ?」

 そう言って、俺は「きよしこの夜」を囁くように唄い始めた。
 受話器の向こう側、ミナの吐息が少しだけ聞こえる。

 ふたりだけの「Silent Night・Holly Night」だ。


 好き合っていても手に入らない「恋」もある。
 それはそれで何ともしがたい苦くてじれったい想いもあるけれどね。

 こうやって繋がり続ける感傷やトキメキも、あの恋物語の続きなのかもしれない。
 それとも、俺達はもうすでに、新しい恋物語を描き始めているのだろうか…。

 なんてね…




リンクリスマス夜
 Silent Night・Holly Night 3へ
 竜之介の親父たちの話は「破壊者のススメ」
 凛一の話は「greenhouse」で、お楽しみくださいませ。
 左のカテゴリからどうぞ。

なんとか終わらせたけど、続きはありませんから…('ε`汗)
しかしリンはさらさらと描けるけど、ミナは描けないなあ~。愛情の重さかね。


お気に召しましたらポチなどして頂ければ、嬉しく思います。

ブログランキング・にほんブログ村へ
にほんブログ村

● COMMENT ●

やっと 来れました。。。(〃´o`)=3 フゥ
私の大・大・大好きなリンが出ているのに 中々 ゆっくり読める時間が無くて 泣くわぁ~(T▽T)

リンは、何をしても言っても 素敵でウットリです♪
見た目の容姿は勿論ですが、人を魅了する質は 天性のものでしょうね。
そんな人に 一度でもいいから 生で見たい!!(* ̄ω ̄*) ポッ

サイアート様の長男さんの骨折の方は、順調に治られているみたいで 良かったですね。
若さって スゴ━━━(*゚∀゚*)━━━イ!
私の方は、シャワー栓から水漏れがするだの 洗濯機が潰れただの 2階のエアコンを買い直したいだのと いつもの如く 母に振り回され放題の日常です。苦笑_〆(´Д`ll)ハハッ
2階なんて 洗濯物を干すときしか行かないのに 必要ないと言っても 兄や私の家族が泊まった時に 困るからと 言うしねー
まぁ 自分の家に 自分のお金を使うのだから 構わないんですけど…

暖かくなったり 寒くなったりと 体が付いて行かない此の頃 サイアート様の体調は どうですか?
風邪、インフルエンザ、そして 腰痛にも 気を付けてお過ごし下さい。
(〃⌒ー⌒〃)ノ゛゛゛゛~~~~~byebye☆ 


ありがとうございます~。
久しぶりにリンミナでも…って思ったけど、結局、何も変わらないというふたりなので、読む方はつまらないかもですね…。まあ、変わり様がないんですよね。もう決めちゃっているので。

息子の骨折事件は…色々考えても、大変だったけど結果的に良かった気がしますね。私も初めてのひとり旅行とか、思いもよらない体験したりしてねえ~

家電は壊れますからね。近くに娘が居たら、どれがいいかとか頼っちゃうもんね。
独り暮らしだとやっぱりさみしいから、なんやかんやと娘に甘えたいのかもしれませんね。
でも、娘の方は…大変ですよね…( ゚Д゚)⊃旦

そうなんです。昨日は寒くて、今日はあったかでしたよ。
朝起きた時と、外から帰って来た時のイソジンうがいで、喉は大丈夫ですね。ちょっとあぶないなあ~と思ったら葛根湯です。
今日はおでかけだったので、花粉症が気になったのでアレジオン飲みました。
しばらくは色々自己管理でなんとか凌ぎたいです。
早く春が来て欲しい~


管理者にだけ表示を許可する

02:45 «  | BLOG TOP |  » Silent Night・Holly Night 3

プロフィール

サイアート

Author:サイアート
イラストと駄文を更新しております。

少年愛を中心としたシリアス重視なオリジナル作品でございます。

ゆっくりしていってね~

サイズを記憶するフォントサイズ変更ボタン

文字を大きくする 文字を規定のサイズに戻す 文字を小さくする

ツリーカテゴリー

Script by Lc-Factory
(詳細:Lc-Factory/雑記)

最新記事

FC2カウンター

リンク

このブログをリンクに追加する